関東の2市がコロナワクチン接種記録の保存期間を延長した理由
新型コロナウイルスのワクチン接種記録について、東京都小平市と千葉県我孫子市が国が法令で定める保存期間(5年)を独自に延長したことが両市などへの取材で判明した。小平市は30年、我孫子市は10年とした。過去の薬害では、医師の診療記録であるカルテの廃棄が救済の壁となったケースもあり、両市はワクチン接種で将来、健康被害が発生するような事態になった場合に備えての措置と説明している。
厚生労働省によると、市町村は予防接種法施行令に基づき、接種を受けた人の住所、氏名、生年月日、性別、接種実施日などを記載した「予防接種台帳」を作り、5年間保存しなければならない。国の「ワクチン接種記録システム」(VRS)が接種券から読み取ったデータや、接種を実施した医療機関から自治体に送られる「予診票」の情報が台帳の元データになる。
接種台帳の保存期間は各自治体の判断で延長できるが、同省は「延長した自治体は把握していない」としており、多くの自治体が5年保存で運用しているとみられる。また、VRSには接種を受けた人の氏名や投与されたワクチンのメーカーなどが、予診票には接種当日の体調やワクチン製造番号なども記録され、予防接種法や医師法に基づき「原本」となるこれらのデータも保存期間は5年間と規定されている。
こうした運用状況で、もし接種から5年を超えてワクチンの副作用による健康被害が発生しても、自治体や国、医療機関は法令に従い、5年で接種台帳やVRSのデータ、予診票を廃棄してしまっている恐れがある。同省は接種を受けた人に対し接種後に交付される接種済み証を各自で保管するよう呼び掛けているが、廃棄・紛失していた場合、接種を証明する公的資料がなくなる可能性がある。
小平市は6月に市議から接種記録の保存期間の問題を指摘され、市の公文書管理規則に基づき接種台帳の保存期間を課税台帳などと同じ30年とすることを決めた。また、我孫子市も同月に市議会で市議から受けた質問をきっかけに、医療機関から送られてくる予診票の保存期間を市の文書管理規定で「永年」の次に長い「10年」とした。同市は「何か起きた時のための保険」と説明する。
過去の薬害では、…
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