連載
木語
ボーン・上田記念国際記者賞受賞、核や国際問題への取材が豊富な会川晴之・専門編集委員のコラム
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リーダーは「お尋ね者」=会川晴之
2024/12/19 02:01 1029文字<moku-go> シリアのアサド政権を倒した反体制派。中核は、国際テロ組織アルカイダが源流のハヤト・タハリール・シャム(HTS)だ。 日米欧やロシアはHTSをテロ組織に指定、米国はジャウラニ指導者のクビに1000万ドル(約15億円)の報奨金をかけている。 1982年生まれのジャウラニ氏は2003
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そして誰もいなくなった=会川晴之
2024/12/12 02:01 1030文字<moku-go> まるで羽柴秀吉の「中国大返し」を見ているような鮮やかな進軍劇だった。それも倒したのは「三日天下」の明智光秀ではなく、50年以上も独裁を続けたシリアのアサド政権だ。反体制派は、戦闘開始からわずか12日間で首都ダマスカスまでの道を駆け抜けた。 アサド政権のあっけない崩壊は、後ろ盾の
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「魔法使い」がFBIに=会川晴之
2024/12/5 02:00 1026文字<moku-go> ちょうど4年前、再選を逃し失意のどん底にあったトランプ米大統領は、気にいらない政府高官をクビにして、忠誠心ある人物に置き換える作業に熱中していた。 最初に国防長官を解任、続く標的はジーナ・ハスペル米中央情報局(CIA)長官だった。 シナリオはこうだ。まず、たたき上げのCIA副長
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ラストベルトの副大統領=会川晴之
2024/11/28 02:00 1030文字<moku-go> 「ラストベルト(さび付いた工業地帯)」と呼ばれる米中西部オハイオ州出身のJ・D・バンス上院議員(40)が来年1月、副大統領に就く。2016年、ラストベルトの悲哀と半生を描いた「ヒルビリー・エレジー」を執筆した。 幼い頃に両親が離婚。母は新たなパートナーを見つけては別れを繰り返す
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「小さな悪」を選ぶ=会川晴之
2024/11/21 02:00 1033文字<moku-go> 「より小さな悪を選びなさい」。フランシスコ・ローマ教皇は9月、米大統領選に臨む信者への助言を問われ、こう答えた。 教皇は「移民を追い出す者も、赤ちゃんを殺す者も、どちらも生命に反している」と指摘。候補者名には触れずに移民排斥を訴えるトランプ候補、人工妊娠中絶容認を掲げるハリス候
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報復と粛清の嵐=会川晴之
2024/11/14 02:00 1016文字<moku-go> 「テロリストの尋問に(拷問の一種である)水責めを復活させたい。どう思うか?」 今から8年前、米大統領選で当選を決めたばかりのトランプ氏は、国防長官候補のマティス退役海兵隊大将と向き合っていた。 マティス氏はこの問いに「自分ならたばこと数本のビールがあればうまくやれる」と答え、水
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バイデン氏のレガシー=会川晴之
2024/11/7 02:02 1033文字<moku-go> 米国で大統領を務めた人は、現職のバイデン氏を含めて45人いる。だが、バイデン氏は第46代大統領である。あれ? 数が合わない。 そのワケは、クリーブランド大統領にある。1885年に第22代大統領に就任したが、再選に失敗する。再起を期した4年後の選挙で当選を果たし、第24代の大統領
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楽しみは月2回のキムチ=会川晴之
2024/10/31 02:00 1029文字<moku-go> ポーランド北部の港町グダニスクには、1980年代初頭に自主管理労組「連帯」が誕生した造船所がある。北朝鮮の出稼ぎ労働者が、そこで働いていると聞き、2006年秋に取材で訪ねた。 約30人の労働者が、市内の一軒家で共同生活を送っていた。「ツバメ」と名乗るリーダーは「腹いっぱい食べら
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米大統領選と東欧票=会川晴之
2024/10/24 02:02 1020文字<moku-go> 短期決戦の日本の総選挙はあと3日、長丁場の米大統領選も投票日まで2週間を切った。 ハリス副大統領と、トランプ前大統領の戦いは、大接戦が続いてきたが、最終盤に入りハリス氏が失速気味と伝えられる。 焦点は七つある激戦州だ。中でも中西部のウィスコンシン、ミシガン、東部のペンシルベニア
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核をめぐる二つのタブー=会川晴之
2024/10/17 02:00 998文字<moku-go> 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が今年のノーベル平和賞に選ばれた。1956年の結成以来、国内外で「ノーモア・ヒバクシャ」を訴え、核兵器の使用は、道徳的に容認できないとする「核のタブー」を確立したと高く評価された。 ただ、ノルウェーのノーベル賞委員会は、このタブーが現在、
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中露とインドの三角関係=会川晴之
2024/10/10 02:00 1019文字<moku-go> ロシアにとって中国とインドは頼もしい同志だ。両国とも、ロシアのウクライナ侵攻に中立を保つが、ロシア産原油などを大量に購入し、ロシアの戦費を賄う。 中でもインドは、ロシアからの原油輸入を2022年以降、大幅に増やした。侵攻前はロシア産原油の輸入シェアは約2%だったが、23年には3
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負けぬが勝つには不十分=会川晴之
2024/10/3 02:02 1023文字<moku-go> 米大統領選まで1カ月あまり。トランプ氏が政権復帰を果たせば、世界に激震が走るのは確実だ。 被害を受ける筆頭は、ウクライナだろうか。戦争を「終わらせる」と語るトランプ氏は、「プーチン露大統領とは大変良好な関係」とも公言する。ロシア優位の形で決着を図るとの観測が強まる。 そんな事態
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トロイの木馬と古タイヤ=会川晴之
2024/9/26 02:00 1024文字<moku-go> 兵士を入れた巨大な木馬を戦地に残して退却、相手は戦利品として自陣に運び込む。だが、深夜、中に潜んでいた兵士が木馬から抜け出し、援軍を引き入れて相手を倒す。ホメロスの叙事詩に描かれたトロイの木馬だ。 戦いの場では、古代ギリシャの時代から、敵をあざむく技術が使われてきた。ロシアとウ
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カーター氏の1世紀=会川晴之
2024/9/19 02:02 1024文字<moku-go> ジミー・カーター元米大統領が来月1日、満100歳の誕生日を迎える。約4カ月年長のブッシュ(父)元大統領が2018年11月に94歳で亡くなり、19年3月以後は史上最高齢の米大統領経験者として記録更新を続ける。 昨年2月からは、生まれ故郷の米南部ジョージア州プレーンズの自宅で、ホス
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アフガン発のテロ懸念=会川晴之
2024/9/12 02:01 986文字<moku-go> 米国は11日、同時多発テロから23年を迎えた。 今年7月31日には、キューバのグアンタナモ米軍基地にある特別軍事法廷で大きな動きがあった。 テロ計画を企画・立案した国際テロ組織アルカイダ幹部、モハメド被告らが、公判前手続きで、死刑を免れる代わりに殺人などの罪を認める司法取引に応
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江戸の敵を長崎で=会川晴之
2024/9/5 02:00 1032文字<moku-go> 砂嵐による中断をはさみ、戦いは3日間に及んだ。サハラ砂漠の真っただ中に位置する西アフリカのマリで今年7月下旬、政府軍と反政府勢力が一戦を交えた。 政府軍は、反政府勢力が仕掛けた待ち伏せ作戦にまんまとはまり、敗北を喫する。政府軍47人が死亡、用心棒役を務めるロシアの民間軍事会社ワ
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「アイスマン」も溶けた夏=会川晴之
2024/8/29 02:01 1034文字<moku-go> 「地球沸騰の時代」。昨年夏、地球温暖化に警鐘を鳴らした国連のグテレス事務総長は7月、今年の暑さを「致命的」と表現した。 猛暑が襲うのは日本だけではない。欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」によると、世界の平均気温は、今年6月まで13カ月連続で過去最高を
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ロシアの「レッドライン」=会川晴之
2024/8/22 02:01 1017文字<moku-go> 「この画期的な戦いでの勝利は、いくら評価してもしすぎることはない」。1年前の8月23日、ロシアのプーチン大統領は西部クルスク州で、誇らしげに語った。 ソ連軍がナチス・ドイツ軍を打ち負かし、第二次世界大戦の転換となった地。そこで開かれた80周年式典での演説だ。 だがその1年後、そ
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高まる核軍拡の足音=会川晴之
2024/8/8 02:00 1013文字<moku-go> 広島は6日、79回目の原爆の日を迎えた。「過ちは繰返しませぬから」。平和公園の碑文に刻まれた言葉とは裏腹に、約30年続いた核軍縮の時代は終わりを告げ、核軍拡の足音が高まっている。 「核兵器の役割を減らす」。そんな目標を掲げ3年半前に米大統領に就任したバイデン氏。だが、政権幹部は
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テロの温床、「虎の穴」=会川晴之
2024/8/1 02:00 1006文字<moku-go> パリ五輪開幕の直前、フランス高速鉄道の設備が破壊される事件が起きた。列車運行に支障が出たが、幸い人的被害はなかった。 過激派組織「イスラム国」(IS)や、国際テロ組織「アルカイダ」に往時の勢いはなく、ついついテロのことを忘れがちだ。 だが、アフガニスタンを拠点にするISの分派「
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毎日新聞朝刊2面に毎週月曜に掲載するコラム。2024年4月から下桐実雅子記者が担当します。
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中国と韓国、そして北朝鮮。地理的には近くにありますが、理解しにくいことも少なくありません。専門家の力を借りつつ、自分なりに謎解きに挑みたいと思います。また、機会がある度にふらっと各地を訪ねるつもりです。
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海外特派員がそれぞれの赴任先の「街角」で感じたことを届けるコラム。