某月某日。 男たちが東京の南のはずれ、大田区大森に集まった。テーマは「翻訳の現実と理想」。呆れるぐらい、具体性に欠けるテーマである。だが実はこれには理由がある。 そもそも、「翻訳者のライフスタイル研究」は編集協力者・加藤氏の、「理想の翻訳者像を追い求めていきましょう」という言葉によって始まった企画であった。 だがしかし、この「理想の翻訳者」という言葉が、インタビューを重ね、翻訳者たちの苦闘の現実を目の当たりにするに従い、加藤氏の上に重くのしかかって来るようになってきた、いやそう見えるのである。 <理想の翻訳者って何?> <翻訳の世界に成功者っているの?>と。 そこで挙行したのがこの対談である。 翻訳者の理想像とは何か? では現実に、翻訳を生業にするということはどういうことなのか。 さて、我々は何かを見つけることが出来たのであろうか?