ぼくは五馬小学校に入学した。ぼくは、K村という中年の女の先生が担任の三組だった。二年間K村先生に持たれたが、あまり好きにはなれなかった。 あるときK村先生は、クラスの皆に紙を配って、 「男子女子一人づつ、好きな人の名前を書きなさい。」 と言った。突然のことだった。好きな異性など書けるはずがない。先生は、友達として好きな人を書けばよい、と考えたかもしれないが、ぼくたちは、好きな人と言われれば、恋とか愛とかを考えずにはいられなかった。ぼくたちには、恋愛を取り除いて”好き”という言葉は存在しなかった。 教室はざわめいた。ぼくには、N田さんという初恋の女の子がすぐに思い浮かんだ。しかし、女の子の欄には何も書かずに出した。 二年生のときK村先生は、一冊のノートを皆の間で回させた。ノートが自分に回ってくると、それに作文を書き次の朝皆の前で読まなければならなかった。ぼくはこれが大きらいだった。だいいち書