2016.05.13更新 「人工知能と対戦してみたい思いはありますか?」 いつもの質問だ。 私は思った。 何度も繰り返された問いは、どこにも行き着かずに彷徨うことになるだろう。今までと同じように。 ところが、壇上の羽生善治は、照れ笑いと苦笑いを足して2で割ったような微笑を浮かべ、言った。 「えーっとですね。ちょっとタイミング的な問題が少しありまして、番組が放送されるのが5月15日なんですけど、その段階ではちょっとそのことについてはまだ何も言えないということなんです。まあ、あの...近々のうちに何かしらのアナウンスはあると思います。申し訳ありませんが、それ以上はまだ言えないんです」 解釈に幅はあるが、含みを持たせる言葉であることは間違いなかった。 羽生と人工知能(あるいはコンピュータ)の勝負という将棋界にとって極めて大きなテーマが動き始めていた。 5月9日、NHKスペシャル「天使か悪魔か 羽