デスクリムゾンOX
【ですくりむぞんおっくす】
ジャンル
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ガンシューティング
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対応機種
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アーケード(NAOMI)
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販売元
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セガ
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開発元
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エコールソフトウェア
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稼動開始日
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2000年10月
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プレイ人数
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1人~2人
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判定
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なし
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ポイント
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まともな『デスクリムゾン』 デス様として見るか否かで評価が変わる エコールのテイストは健在
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デスクリムゾンシリーズ デスクリムゾン / デスクリムゾン2 メラニートの祭壇 / デスクリムゾンOX
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概要
あの『デスクリムゾン』がアーケードゲームとなって登場。
1999年に発売した『2』をベースに再構成した作品。
本作では初代『デスクリムゾン』と同じく、シューティングパートのみで構成されている。
セガのTHE HOUSE OF THE DEAD開発部署の協力を得て、『THE HOUSE OF THE DEAD 2』の改造キットという形で発売された。
タイトルの「OX」とは、ゼロ・エックスとかけており、「ガンシューティングの原点に帰る」という意味を込められて付けられた。
本作はAC版の他にも2001年にDC版『デスクリムゾンOX』が、2003年にPS2版『デスクリムゾンOX+』が発売された。
DC版はドリームキャストガン、PS2版はガンコン2に対応している。
当初ゲーム雑誌のインタビューで「PS2はVRAMが少ないハードなので移植は不可能」とPS2版は発売予定なしコメントしていた。
しかし、その後メーカーの方針転換によりPS2版も発売された。
プロローグ
2010年7月29日。サロニカの街が「ザザ提督」が率いる謎の組織「SMO」による襲撃を受ける。
SMOは各所に戦闘員「サブリミナー」を配備し、街の人達に対して弾圧を開始したのだ。
サブリミナーの攻撃から生き延びた人達はSMOに抵抗すべくレジスタンスを結成。
女性指導者「リリー」の指揮の元、SMOと激戦を繰り広げられていた。
そんな中、SMOの方針に疑問を抱いていたSMO構成員「八並康」は
武器庫から古代の超兵器である魔銃「クリムゾン」を二丁持ち出しSMOを裏切って逃亡。レジスタンスへ身を投じる。
リリーはSMOから追われる身となった康を匿っていたが、遂に康の身代わりになる形でリリーがSMOに拉致されてしまう。
康は捕らわれたリリーを救出すべく、リリーの娘「ユリ・ローゼンバーグ」と共にSMOに戦いを挑んだ…。
立ちはだかるSMOのサブリミナーたちを、クリムゾンで皆殺しだ。
特徴
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主人公は『2』と同じく八並康とユリ・ローゼンバーグ。1P側が康、2P側がユリとなる。
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ステージや登場人物は『2』と共通しているが、ストーリーや設定は大幅に変更されており、
キャラクターボイスが無くなっている。
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何故変更されているのかと言うと、本作は初代のとあるシーンから分岐したパラレルワールドという設定だからである。
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DC版ではグラフィックの向上がされており、新たな要素として「ミッションモード」と「ブリットモード」が追加されている。
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「ミッションモード」は本作のステージ一つずつ遊べるモード。「ブリットモード」はいかに少ない弾数で攻略できるかチャレンジするモードとなっている。
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『OX+』はDC版の要素に加え、新たなモード「タイムモード」が追加。その他、ゲーム内のフォントの変更やカメラワーク、ゲームスピードの調整がされている。
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「タイムモード」は、いわゆるタイムアタックモードとなっている。
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電源を入れると出てくる恒例の「ECOLEのロゴ演出」は、AC/DC版では『2』と同じ演出となっているが、DC版ではスタートボタンで飛ばせるようになっている。
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一方『OX+』では白背景をバックにロゴマークというごく一般的なものに変わった。
これはこれで寂しいような…。
評価点
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初代『デスクリムゾン』の照準確認はかなりし辛く、照準を合わせてもズレる仕様になっていたが、本作の照準確認は一般的なゲーム準拠となり(過去作と比べて)、とても照準確認がやりやすくなった。
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また、初代では「ステレオ/モノラル切り替え」しか存在しない充実したオプション(笑)であったが、移植版では「難易度」「開始時のライフ数」「ステレオ/モノラル切り替え」「クレジット数」「フラッシュの演出」が調整出来るようになり、本当に充実したオプションとなっている。
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デスクリムゾンシリーズといえば、不条理かつ不安定なゲームシステム、非常にぶっ飛んだストーリーが醍醐味であったが、今作はHODのエンジンを利用している為、ごく普通のガンシューティングと化している。
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それでも所々デスクリムゾンらしさはあり、HODではクレジット待ちの表示が「HOLD YOUR FIRE」と表記されているが、今作はそれに倣って「HOLD YOUR CRIMSON」となっている。
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またステージ上に出てくる民間人(通称:佐藤・女佐藤)も『2』では
こちらをからかっているとしか思えないかなりエキセントリックな動きで逃げていたのに対し、今作では悲鳴を上げて普通に逃げていく。
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元がHODだけあり、演出面も前作までとは比較にならないほど派手で迫力のあるものとなっている。ガンシューティングとしての爽快感とスピード感は十分。
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ゲームクリア後も恒例のSTUFFロールでは無く、ごく普通のスタッフロールが流れる。
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『2』ではどこまで狙っているのか分からない程の破綻したストーリー且つ、最後は未完で終わってしまっていたが、今作では比較的綺麗に纏まっている(もちろんツッコミどころはあるが)。
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作中のBGMは『2』で使用された物のほか、初代の楽曲のアレンジが流れる。
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どちらも好評で、初代では単に音と使い所が悪かっただけでメロディ自体は良かった事を証明している。
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終盤のシリーズを象徴する
かもしれないある物が絡むシーンでは、もちろん「あの曲」のアレンジが流れる。
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難易度に関しては同時期の他社のガンシューと比べ、比較的簡単に調整されている。また、『2』ではボスが存在しなかったステージにもしっかりボス戦が用意されている。
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大抵のガンシューが1回の装填につき6発なところを本作では1回の装填で10発と多く撃てる事。
ライフゲージ式なので比較的被弾許容数が多めなこと、ライフ回復がアイテムだけでなく敵やオブジェクトを破壊すると上昇する「経験値ゲージ」が満タンになった時でも行われると回復できる機会が多い事が理由である。
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回数式の溜め撃ちが一定時間自動連射する「マシンガン」で、連射が苦手なプレイヤーでもある程度補うことができる。
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一方、安定してクリアできるような上級者でもハイスコアを狙いだすと非常に歯ごたえのあるゲームに変化する(後述)。
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スコア稼ぎ要素満載
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『2』で搭載された「部位によるダメージの違い」がさらに分かりやすくなった。人型の敵は、基本的に頭を打つと容易に倒すことができるが、股間を撃つと小ダメージ+怯みで、倒れるまで追い打ちして得点を稼ぐことができる。
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さらに、一部のステージにいる「攻撃してこない敵」を全滅させるとボーナスが入ったり、ステージ2と3のマップに隠れている
「信楽焼のタヌキ」
を追い打ちしての稼ぎもできる。
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ライフゲージが1目盛以下になると点数倍率が急激に跳ね上がる「狂気モード」が発動。
点数倍率を上げるには残りのライフと残弾数をギリギリにした状態で進めなくてはならなくなる為、相応の高い腕と集中力が求められる。
賛否両論点
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コンバット越前の扱い。
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『2』では思念体としてしか登場しなかった初代主人公のコンバット越前こと越前康介が今作では直接再登場するのだが、あまりにも衝撃的な形での登場である。
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その壮絶な扱いに衝撃を受けて唖然とするか、笑撃を受けて爆笑するかはクリムゾナーの感性に委ねられるだろう。
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ちなみに真鍋社長曰く、正史(『1』から『2』の歴史)では越前は1998年に死亡しているとの事。だがこちらの歴史でも健全な姿を見せる事は出来なかった。
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一部のボスも含め敵は怯みやすい。ボスは特定部位を撃つと一発で攻撃をキャンセルできるが、後半からその範囲がかなり両極端。
特に
4面ボスは全身が弱点・ラスボスは胴体が股間撃ち扱いになるため、容易に得点・ライフを稼ぎながらハメ殺せる。
逆に最難関は撃つたびにランダムで肘・足のどれか4つに弱点が変わる上に足の弱点が非常に狙いにくい+暗転前から攻撃モーションが始まっているのでノーダメージ不可能な6面最初のボスとされる。
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全く普通に遊べるようになっており、結果としてデスクリムゾン独特の芸術性が薄らいだ感は否めない。
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ストーリーは『2』のはっちゃけ具合が無いシリアス路線で良くも悪くも無難な内容。登場人物も異様にエキセントリックなキャラ付けだった『2』のような強烈な印象は無い。ボイスが無い点もより印象を薄れさせている。
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康は狂人じみていた『2』と比べれば割りと正統派の主人公となり、その他の登場人物も『2』に比べれば至ってまともになっている。
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これらは本来なら評価点にあたるはずだが、旧作で描かれていた「狂気の世界」のコンセプトを考えるとコレジャナイ感が出てしまっている。
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一方で、作中のカメラワークや登場キャラクターのモーションは相変わらず独特。これ以外にも「Stage Cleared」の文字が虹色、家庭版のロード画面が無駄にキラキラしている、と色々とおかしい演出がちらほら。
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設定面でも、最初のボスの弱点が剣でしかもその弱点でガードする、新キャラである敵の女幹部の名前が「かりん」などと突っ込み所は決して少なくない。
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また、キャラクターボイスが無くなったとはいえ、主人公側がやたら「皆殺し」と物騒なワードを用いたり、「一般人」のことを敵味方問わず「一般ピープル」と呼ぶ
『Get Ride! アムドライバー』ではない、など台詞は相変わらずぶっ飛んでいる。
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ただ、これらの点は「良く訓練された
クリムゾナー
」から出ている声であって、多くの一般ピープルにとっては
「ちょっと変だけど、他より遊びやすいガンシュー」
という認識が多かったことを付記しておく。
問題点
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ボイスが大幅に減ったこと。
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今作はストーリーのボイスが存在しない。やはり『2』ではアドベンチャーパートにボイス付きであったため、寂しく感じる。
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ダメージを受けた時のボイスも、ハチコウとユリに3つずつ、計6種類に半減となっている。
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ハチコウのウザボイスも、ザザ提督の無駄にエフェクトが掛かった声も無く、緊張感が壊されないという意味では良いかもしれないが、デスクリムゾンとしては物足りなさの方が大きい。
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上述した通り、ストーリー中で越前は再登場しても新しいセリフは楽しめないが、男の民間人のボイスに越前の「オーマイガッ!」などが流用されている。
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その割にステージクリア後のリザルトでは結果に応じて5種類のボイスが流れるのだが、そのうち3つは新規だったりする。
人間……辛抱だぜぇ?
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一方で民間人の悲鳴ボイスの中には
音割れしそうなレベルのやたら迫真な叫びが混じっている。人によっては五月蠅く感じるかもしれない。
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一方、2面ボス、5面ボスなど、ゲーム全体で音量が異常に大きい場面がいくつかある。
総評
『HOD2』のシステムを流用し、純粋なガンシューティングゲームになったことにより、初代や『2』と比べると非常に遊びやすく、万人受けするゲームとなったと言える。
さらに初代作のアレンジ楽曲が流れたり、迷名セリフ「上から来るぞ!気をつけろ!」などの過去作のオマージュも使われており、ファンサービスも惜しまない姿勢は評価できる。
とはいえ「デスクリムゾン」特有の混沌とした空気感が薄れてしまったのも事実であり、その空気感に惹かれたよく訓練されたクリムゾナーから惜しむ声が見られた。
他の作品では純粋な評価点となる点が、「デスクリムゾン」のシリーズ作として見た場合は問題点に変わるというなんとも奇妙な立ち位置の作品である。
もしかしたらエコールが初代の時から本当にやりたかった事とは今作のようなガンシューティングの事かもしれない…。
余談
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ドリームキャスト・ガン対応のガンシューティングを発売したのは、セガの他にはエコールだけだった。
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シリーズで唯一、サミーにより海外でも発売されている。特にDC版は北米でもヒットしたとのこと(真鍋社長談)。
その後の展開
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残念ながら『デスクリムゾン』シリーズは、2003年発売の『デスクリムゾンOX+』を以って、シリーズが停止している状態である。
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2009年には『デスクリムゾン3外伝 忌獣戦紀 ~スピアクロゥ編~』というタイトルと
全然イメージに合わない一枚のイラストが発表された。
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しかし、ジャンルが「ガンシューかFPSかTPSかノベル」と全く決められていない上に、対応機種も「これから考えます」で、挙句は発売予定時期も「発売するかどうかわかりません」などという
随分と適当な発表であった。
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2019年には真鍋社長は「最後に1作品、代表作といえる儲からないゲームを作りたい」「ガンシューティングとパズルの要素がリンクする作品」「もし完成するなら2022年頃」と語っている。
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だが、それが『デスクリムゾン3』なのかも未だ不明である。
そもそも本当に作る気があるのかどうかも大分怪しい物だが…。
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なお、『3』自体は発表から13年以上経った2023年現在も続報は一切無い。
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先述の「完成するなら2022年頃」と言われていた新作ゲームの発表も今のところ全く無く、完成しないまま2023年を迎えてしまった。
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それとは恐らく無関係と思われるが、2023年には真鍋社長が『DEAD OR ALIVE』や『NINJA GAIDEN』で知られる板垣伴信氏と組んで何やら妙な企画を始めた。以前発表された『フリーズ!ーデスクリムゾン・レゾナンスー』的なネタ読み物のようだが…。
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ちなみに板垣氏は第8回を以って世界ニンジャ連合のアフリカ司令を務めるためにヨハネスブルグへ旅立ったという体で企画から外れた。
最終更新:2024年04月28日 09:35