Portal
【ぽーたる】
ジャンル
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一人称視点パズルアクション
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対応機種
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Windows 2000/XP/Vista プレイステーション3 Xbox 360 Nintendo Switch
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開発元/発売元
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Valve Software
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国内版発売元
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【Win】サイバーフロント 【360】エレクトロニック・アーツ
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発売日
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【Win】 海外版:2007年10月10日 国内版:2008年4月4日 【360】 海外版:2007年10月10日 国内版:2008年5月22日 【Switch】 2022年6月28日(全世界同時配信)
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定価
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【Win】1,200円 【360】3,675円(税込) 【Switch】1,950円 |
レーティング
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CERO:B(12才以上対象) |
判定
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良作
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Portalシリーズ 1 (Still Alive) / 2 / The Lab / Bridge Constructor Portal Aperture Hand Lab / Aperture Desk Job
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Half-Lifeシリーズ
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ストーリー
突然、謎の施設の中で主人公は目覚めた。
何時、どうやって、何故ここに来たのかわからないまま、突然室内に機械音声が響き、「テスト」の開始を告げる。
主人公はワープ銃「ポータルガン」を手に、出口を求めて命じられるがままにテストをクリアしていくことになる。しかし初めこそ単純なものだったテストは、徐々に狂気をはらんだものになっていく。
果たして主人公は無事施設を脱出することができるのか。
概要
FPSの名作『Half-Life』シリーズの制作元・Valve Softwareが送るFPSパズルゲーム。
ポータルガンで2箇所を撃ち、それらをつなぐ穴「ポータル」を作ってワープ移動することで、テストチャンバーの障害をやり過ごして先に進んでいくゲームである。
(以後の記事中では撃った箇所をA・Bとして説明するのでご了承願いたい)
これを言葉で理解するのは少々難しいので、まずはこちらをご覧いただきたい。
なお、本作は『HL』とは世界観を共有しており、本筋と関係ないところに様々な小ネタが仕込まれている。本作をプレイするだけなら『HL』は未プレイであってもまったく問題ない。
基本システム
ポータルガンの操作
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左クリックで光弾を発射。光弾が白い壁面に当たるとポータルゲートが発生する。
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右クリックには何も割り当てられていないが、ゲームが進むとこちらでも光弾を撃てるようになる。
入り口と出口をプレイヤーがほぼ任意の場所に作れるようになるため、自由度が飛躍的に上昇。ここからが本番である。
ステージ:テストチャンバー
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Level00~Level19までの全20ステージ+α。最初は簡単だが、後半に行くほど頭を使うようになり一筋縄ではいかなくなる。
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ステージの始点には道中にある障害がアイコン形式で表示されており、視覚的にわかりやすい。
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ステージはいずれも密閉された空間で、壁面は白と黒のタイルだけの殺風景ながら清潔感のある空間。しかしステージが進むにつれ、チャンバー下部を埋め尽くす毒沼や、チャンバーの裏側を垣間見ることができる箇所が幾つか登場する。
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裏側は錆だらけの鉄筋や送風ファンがあるだけの殺伐とした場所。タイルで統一されたチャンバーとはまったく違った印象を受ける。
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そこには何者かが残した手書きのメッセージもある。内容は脱出経路の模索や実験の欺瞞を警告するもので、これを発見できるあたりからテストは異常さをはらみだすようになる。
キャラクター
キャラと言っても、本作では人間の敵は存在しない。怪物の類もいない。機械だけが相手。
会話する対象がいないためかその分いずれも個性的。Valveにも非生物を愛する手遅れな嗜好の人がいたのかもしれない。
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タレット (turret)
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終盤から敵として現れる自動銃座。転ばすだけで無力化できる。
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『HL2』にもいたコンバインのものと同じ機能だが、技術系列は大きく違っており曲面で構成された滑らかなデザインに言葉を喋るという特徴を持つ。
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人間を問答無用で射殺するという物騒な行動原理をもちながら可愛らしい音声で話すと言うギャップから、プレイヤーの人気が高いキャラ(?)である。
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加重コンパニオンキューブ
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なんてことはない、見た目はただの箱。普通の加重キューブと違うのは、表面にハートマークがついていることだけ。
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しかし
これが出現するステージは、このコンパニオンキューブを持ち運びながら進まねばならない構造が続く
ので、終わる頃にはなにやら愛着を抱くプレイヤーも多いはず。そしてそのステージの終点では…。
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アナウンス
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主人公を誘導する機械音声。プレイ中、何度となく主人公を評価したり、報酬を約束したりする。
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ただし、生命に関わるものばかりなテストの報酬はただのケーキ。発言もどこかおかしく、一部が欠落していたりする。
+
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ラスボス
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GLaDOS(グラドス)
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本作のラスボスである、施設を管理する巨大AI。アナウンスの主。
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テスト中にたびたび見せる冷血な発言、子どものような思考、女性的な機械音声という不安定さが独特の存在感を生み出している。
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先の加重コンパニオンキューブの顛末とラストバトルの攻略法は表裏一体をなしており、プレイヤーは以前受けた仕打ちをそのままお返しすることになるのだ。
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ちなみに、その最中にケーキのレシピを読み上げるパーツが登場するが、明らかに食用に適さないものが含まれているので…。
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声を担当したEllen McLain氏は、他のValveゲームである『Half-Life 2』と『Team Fortress 2』でも作中に流れるアナウンスを担当している。
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BGM
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基本的に環境音を演出するBGMが流れるのみ。だが、かえってそれが無機質な世界観の統一に貢献している。
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終盤など盛り上がるシーンでは派手なBGMが挿入され、ゲームへの没入度を深める。『HL2』に引き続き、少ない楽曲の使い方が秀逸。
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EDテーマである“still alive”は穏やかな曲調の名曲としてプレイヤーの間で人気が高い。
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サラウンドサウンドシステムにも対応しており、対応環境を有しているなら音響の臨場感もさらに高めることができる。
評価点
「ポータル」という斬新なゲームシステム
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Valveらしい丁寧なゲームデザインと、「まずシンプルなチュートリアル的マップをクリアさせ、然る後にその応用を課す」という基本に忠実なスタンスは健在。
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段階的に攻略を考える知識を身に着けていくことができ、クリアできたときの快感も大きくなる。
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重要なのは、ポータルは単なるプレイヤーのワープ穴に留まらない事。パズルらしく、実に多くの活用法が存在する。
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道をふさいでいて通れないタレットの足元にポータルを作り、落下させて転がす。
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タレットの頭上または背後にBポータルを開け、Aポータルから死角に移動するor投げ込んだ箱をぶつけて転がす。
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下側の足場にAポータルを作り、高所から飛び降りてAポータルをくぐると、Bポータルから落下した分加速して飛び出す。
この際Bポータルが垂直な壁面や斜面などに作られていれば、普段よりも遠くへジャンプすることができる。
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こうしたトリックを組み合わせてプレイヤーは先に進んでいくことになる。
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意図的にやらないかぎりまず起きないが、ポータルを駆使して時限式の扉に自ら閉じ込められてしまうことも可能。
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しかも、この「詰んだ場合」の認識・処置とメッセージすら用意されており、特例として復帰専用の扉が開いたりする。
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うまくポータルの位置を調整することで、他のFPSではまずあり得ない、自分の姿を自分自身で視認することもできる。
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これを見るかぎりプレイヤーはアジア系ないしアフリカ系の女性であることがわかる。ただし、その正体はゲームをクリアしても一切不明。
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謎解きの自由度自体も高く、一見しただけでは思いつかないような常識外れな解法まで行える。
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やりこみ要素も豊富に用意されている。
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クリア後は最も少ないポータル数でクリアする「最少ポータル」や、最も少ない歩数でクリアする「最少歩数」に加え、短時間でクリアする「最短タイム」など、豊富なチャレンジに挑戦できる。歯ごたえは充分。
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実績も用意されており、ゲームが進むと自動的に取得するものから、「1回も着地せずに30000フィートを落下する」「一回も着地せずに300フィートをジャンプする」「各ステージのほとんどに存在するあるものにあることをする」といった変わったものも。
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ユーザーが独自に作成したマップをネット上で配布し、プレイすることも可能。『HL2』と同じSourceエンジンが使われており、熟達者はこのゲームでもMOD制作を行っていた。
無いようで実はあるストーリー
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ネタバレになるため詳しい言及は避けるが「無機質な部屋、唯一聞こえるのはロボット声のアナウンス」というミニマム環境ながら、先に進むにつれて状況は少しずつ変化していく。それにつれて、感じ取ることの出来る世界観も徐々に深まっていくことだろう。
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「ご褒美にケーキをあげましょう」は有名なセリフとなった。
問題点
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ボリュームが非常に薄く、大抵4時間でクリア可能。
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上記のカスタムマップを導入すれば長く遊べるには遊べるが、上級ユーザー任せとも言える。
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2004年発売の『Half-Life 2』のシステムやアセットを流用しているため、グラフィックや演出はやや地味。
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環境音や効果音なども『Half-Life 2』のものが流用されており、新鮮味に欠ける。
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基本的に画面上にはポータルガンと目の前の光景しか映らず、作中にはポータルガンを使わない操作はほとんど語られないのでFPS未経験者にはつらいと思われる。
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自由にポータルを作れるが、こちらと向こうでは重力の向きが違っていたということもしょっちゅうなので頭が混乱しやすい。
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作中では高速移動中に、正確な位置にポータルを発生させ素早く飛び込むというシーンもいくつかあり、FPSの操作・性質に慣れていないときついものがある。
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発射された光弾が壁面に接触してからポータルがワンテンポ遅れて開くことも、難易度を高める要因になっている。
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中盤から登場するオブジェクト「エネルギー球」の扱いが難しい。
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接触すると即死してしまう。また別のオブジェクトなど、わずかに角度のついた面に接触すると予想もつかない場所に反射していく。
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FPSの宿命である「3D酔い」が本作にも存在する。フリングでの高速移動など、床や天井に作ったポータルを通った際の方向転換が文字通り目まぐるしいため、本作は特に酔いやすい。
総評
シンプルながら移動の楽しさと、ワープ装置を交えた数多くのギミックにより奥深いゲーム性を獲得したゲーム。やってみればわかる「百聞は一見にしかず」を体現した作品である。
余談
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360版はタイトルを『Portal: Still Alive』に変更し、Xbox Live Arcadeでオンライン配信された。
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『The Orange Box』収録版とは「日本語字幕が収録されていない」「実績が別」「14の追加ステージ」「チートコードが使用できない」といった違いがある。
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一旦クリアすると各ステージにラジオが新たに一個ずつ配置される。
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本作に設置されているラジオは特定の場所に持っていくと謎の信号音を受信するのだが、『Still Alive』では追加ラジオでの信号音を解析すると続編のティザー画像が現れるようになっていた。
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本作の続編として『F-STOP』というゲームが企画されていた。
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Portal銃開発前のAperture社が舞台の、本作の前日譚であったが、世界観だけが引き継がれた別ゲーであったため、経営陣からはファンが望むものとは異なっていると判断され『F-STOP』の開発は放棄された。
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2020年に『F-STOP』のプレイ動画が流出。その後、2022年に無料配信された『Aperture Desk Job』のデータフォルダ内にSteam Deck版『F-STOP』の開発データが含まれていることが明らかになった。
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2022年12月9日より、Steam版限定で無料DLC「Portal with RTX」がリリースされた。
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このDLCを導入することで、『Portal』がリアルタイムレイトレーシングに対応し、より美麗な映像で『Portal』をプレイすることが可能となる。
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しかし、この「Portal with RTX」は厳密には、フルレイトレーシングとも言われる技術「パストレーシング」によって光源処理を行っているようで、処理負荷が途轍もなく高い。
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フルHD解像度ですら、ハイエンドクラスのGPUであるNVIDIA GeForce RTX3080以上で、かつTensorコアによるAI超解像度技術「DLSS」を有効にしてやっと60fpsを安定して出せるか出せないか程度という程である。
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4K解像度になると、2023年4月時点で最高性能を有するGPU「NVIDIA GeForce RTX4090」で「DLSS3(従来のAI超解像度技術に加え、AIが独自にフレームを描画する機能を追加したもの)」を有効化してやっと快適に遊べるという程である。
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この「Portal With RTX」の開発はオリジナルの開発元であるValveではなく、NVIDIAグループ主導の元で行われている。
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そのためか、「RTX4090のグラフィックボード」や「NVIDIA社のロゴが入ったQRコード」が登場すると言った遊び心が随所に見られる。
その後の展開
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2011年4月18日に続編『Portal 2』が発売された。
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ストーリー性の強化・新たなギミック・協力プレイモードやインゲームマップエディタが搭載されている他、エネルギー球の差し替えやカメラワークの改善による3D酔いの低減など、本作で既にあった要素も遊びやすく変更されている。詳細は作品ページを参照。
最終更新:2024年11月16日 10:54