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JP6772952B2 - 燃料電池電極用触媒層及び燃料電池 - Google Patents

燃料電池電極用触媒層及び燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、燃料電池電極用触媒層及び燃料電池に関する。
燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応によって発電する燃料電池として固体高分子型燃料電池がエネルギー源として注目されている。固体高分子型燃料電池は、室温作動が可能であり、出力密度も高いため、自動車用途などに適した形態として、活発に研究されている。
固体高分子型燃料電池では、一般に、電解質膜である固体高分子電解質の両面に、それぞれ、触媒層からなる電極(空気極及び燃料極)を接合してなる膜電極接合体(「燃料極−固体高分子電解質膜−空気極」)(以下、「MEA」ともいう)が使用される。また、MEAの両面には、さらにガス拡散層が接合されることがあり、これは、膜電極ガス拡散層接合体(「ガス拡散層−MEA−ガス拡散層」)(以下、「MEGA」ともいう)と呼ばれる。
各電極は、触媒層から形成され、触媒層は、触媒層中に含まれる電極触媒によって電極反応をおこなわせるための層である。電極反応を進行させるためには、電解質、触媒及び反応ガスの三相が共存する三相界面が必要であることから、触媒層は、一般に、触媒(ここで、触媒とは、単独で作用する触媒だけでなく、担体に担持された金属触媒(以下、金属担持触媒ともいう)などの意味も含む)と、電解質とを含む層からなっている。また、ガス拡散層は、触媒層への反応ガスの供給及び電子の授受をおこなうための層であり、多孔質かつ電子伝導性を有する材料が用いられる。
例えば、特許文献1には、直径が10nm以下の細孔の容積が0.03乃至0.15cm/gの範囲内にあるカーボン担体と、前記カーボン担体に担持された触媒粒子とを具備し、比表面積当りの酸性官能基量が0.4μmol/m以上である燃料電池用担持触媒について記載されており、カーボン担体における直径が10nm以下の細孔の容積及び触媒の比表面積当りの酸性官能基量を上記範囲にすることによって、高い活性の触媒を得ている。
特開2012−129059号公報
しかしながら、特許文献1において規定するカーボン担体の細孔容積は小さく、特許文献1に記載の発明を細孔容積が大きいカーボン担体に適用することは困難である。また、細孔容積が小さいカーボン担体では、カーボン担体同士の凝集抑制及び電解質であるアイオノマーのプロトン伝導機能における液水の確保などの効果を得ることができない。
したがって、本発明は、最適な細孔容積を有するカーボン担体を含む燃料電池電極用触媒層及びそれを含む燃料電池を提供することを課題とする。
電解質であるアイオノマーは、少なくとも約5nmであり、通常10nm〜40nmである凝集体(クラスター)を形成している。これより、アイオノマーは、大きくても約40nmであり、通常数nm〜数100nmであるカーボン担体の一次細孔径に進入可能な大きさを有する。したがって、カーボン担体中の細孔において、細孔径がアイオノマーの凝集体のおよそ最小の大きさ(5nm)からアイオノマーの凝集体のおよそ最大の大きさ(40nm)までの範囲である細孔の細孔容積と、カーボン担体とアイオノマーの重量比とを最適化することによって、アイオノマーが細孔内外に被覆された状態を構築することができ、アイオノマー同士のネットワークと、アイオノマーと金属触媒(例えば、白金コバルト粒子)の接触とが両立され、金属触媒の利用率を向上させることができると考えられる。
しかしながら、従来技術では、アイオノマーが進入可能なカーボン担体の細孔における細孔容積の最適な指標が明らかになっていない。
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積が特定の範囲であるカーボン担体をカーボン担体とアイオノマーの重量比が特定の範囲になるように使用して燃料電池電極用触媒層を製造し、その燃料電池電極用触媒層を使用して燃料電池を製造したところ、得られた燃料電池が高い出力性能を示すことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)カーボン担体及び前記カーボン担体に担持されている金属触媒を含む金属担持触媒と、アイオノマーとを含有する燃料電池電極用触媒層であって、
カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積が、4.5ml/g〜9.3ml/gであり、
カーボン担体とアイオノマーの重量比が、1:0.50〜1:0.85である、
前記燃料電池電極用触媒層。
(2)カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積が、5.0ml/g〜8.0ml/gである、(1)に記載の燃料電池電極用触媒層。
(3)固体高分子電解質の両面にそれぞれ空気極と燃料極とを接合してなる膜電極接合体を具備する燃料電池であって、
前記空気極及び前記燃料極の少なくとも一方が、(1)又は(2)に記載の燃料電池電極用触媒層を含む、
前記燃料電池。
本発明により、最適な細孔容積を有するカーボン担体を含む燃料電池電極用触媒層及びそれを含む高い出力性能を示す燃料電池が提供される。
カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積の値とアイオノマーの被覆の関係を模式的に示した図である。 比較例1及び2並びに実施例1〜3のMEGAにおける、カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積に対する電圧を示す図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本明細書では、適宜図面を参照して本発明の特徴を説明する。図面では、明確化のために各部の寸法及び形状を誇張しており、実際の寸法及び形状を正確に描写してはいない。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法及び形状に限定されるものではない。なお、本発明の燃料電池電極用触媒層及び燃料電池は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者がおこない得る変更、改良などを施した種々の形態にて実施することができる。
本発明の燃料電池電極用触媒層(本明細書等(特許請求の範囲及び図面を含む、以下同じ)では、単に「触媒層」ともいう)は、カーボン担体及び金属触媒を含む金属担持触媒並びにアイオノマーを含有する。
本発明の燃料電池電極用触媒層における金属担持触媒のカーボン担体では、カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積が、4.5ml/g〜9.3ml/gであり、好ましくは5.0ml/g〜8.0ml/gである。
ここで、本発明の燃料電池電極用触媒層における金属担持触媒のカーボン担体中の、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積は、前処理されたカーボン担体を使用して、BET多点法による液体窒素温度での窒素吸着によって測定される。なお、カーボン担体の細孔容積を測定するための前処理は、カーボン担体中の水分などの揮発物質が十分に除去される条件下で実施され、例えば、カーボン担体を、真空下において、通常100℃〜125℃の温度、好ましくは110℃〜120℃の温度で、通常5時間〜8時間、好ましくは6時間〜9時間保持することにより実施される。
さらに、本発明の燃料電池電極用触媒層では、カーボン担体とアイオノマーの重量比(カーボン担体:アイオノマー)は、1:0.50〜1:0.85、好ましくは1:0.55〜1:0.75である。ここで、カーボン担体とアイオノマーの重量比を算出する場合、カーボン担体とアイオノマーの重量は、それぞれ、存在する揮発性物質を取り除いた固形分の重量、例えば、通常100℃〜150℃、好ましくは110℃〜130℃で、通常5時間〜8時間、好ましくは6時間〜9時間熱処理した後の重量を用いる。
図1に、カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積の値とアイオノマーの被覆の関係を模式的に示す。
カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積が、図1(A)に示すように、4.5ml/g未満では、カーボン担体とアイオノマーの重量比が最適値であったとしても、アイオノマーが金属担持触媒の細孔外のみを被覆することになり、細孔内中の触媒金属へのアイオノマーの被覆が少なくなり、触媒金属の有効利用率が低下する。
一方で、カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積が、図1(C)に示すように、9.3ml/g超では、カーボン担体とアイオノマーの重量比が最適値であったとしても、アイオノマーが金属担持触媒の細孔内のみを被覆することになり、細孔内に埋没するアイオノマーが増加し、カーボン担体表面部とのイオン伝導パスが中断され、触媒金属の有効利用率が低下する。
したがって、カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積が、図1(B)に示すように、4.5ml/g〜9.3ml/gになり、且つカーボン担体とアイオノマーの重量比が上記範囲になることで、アイオノマーが金属担持触媒の細孔内及び細孔外を被覆することができ、アイオノマー同士のネットワークと、アイオノマーと金属触媒の接触とを両立させ、金属触媒の有効利用率を向上させることができる。
本発明の燃料電池電極用触媒層における金属担持触媒のカーボン担体としては、特定の大きさの細孔が上記に規定するような細孔容積を有している以外は、当該技術分野で公知のカーボン担体を使用することができる。前記カーボン担体としては、例えば、以下に限定されないが、アセチレンブラック、サーマルブラックなどが挙げられる。
本発明の燃料電池電極用触媒層における金属担持触媒のカーボン担体は、例えば、SN2A社製のYSカーボンから調製することが好ましい。例えば、YSカーボンを、カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積を上記範囲に調整するために、熱処理することができる。例えば、YSカーボンは、大気中、通常515℃〜545℃、好ましくは520℃〜540℃の焼成温度で、通常4時間〜6時間、好ましくは4.5時間〜5.5時間焼成される。
本発明の燃料電池電極用触媒層における金属担持触媒のカーボン担体の特性として、例えば、BET法による比表面積は、限定されるものではないが、通常400m/g〜500m/g、好ましくは430m/g〜460m/gである。
本発明の燃料電池電極用触媒層における金属担持触媒のカーボン担体の特性として、例えば、粒径は、限定されるものではないが、SEMにより測定した場合に、通常10μm〜50μm、好ましくは20μm〜40μmである。
本発明の燃料電池電極用触媒層における金属担持触媒のカーボン担体の特性として、例えば、結晶性は、限定されるものではないが、ラマン分光により測定した場合に、通常D/G比1.0〜1.5、好ましくは1.2〜1.4である。
本発明の燃料電池電極用触媒層における金属担持触媒の金属触媒は、前記カーボン担体に担持されている。前記金属触媒は、前記カーボン担体の表面や細孔中に担持されている。
前記金属触媒は、MEA又はMEGAの電極での反応
空気極(カソード):O+4H+4e→2H
燃料極(アノード):2H→4H+4e
において触媒作用を示すものであれば限定されるものではなく、当該技術分野で公知の金属触媒を使用することができる。前記金属触媒には、例えば、以下に限定されないが、例えば、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスニウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属、又はそれらの合金、例えば白金コバルトなどがある。
本発明の燃料電池電極用触媒層における金属担持触媒の金属触媒としては、白金コバルトが好ましい。
金属触媒の量は、限定されるものではないが、金属担持触媒の全重量に対して、通常10重量%〜50重量%、好ましくは30重量%〜40重量%である。
本発明の燃料電池電極用触媒層における金属担持触媒の量は、カーボン担体とアイオノマーの重量比が上記範囲内であれば限定されるものではないが、燃料電池電極用触媒層の全重量に対して、通常60重量%〜80重量%、好ましくは70重量%〜80重量%である。
本発明の燃料電池電極用触媒層において、アイオノマーは、陽イオン交換樹脂とも称され、アイオノマー分子から形成されるクラスターとして存在する。アイオノマーとしては、当該技術分野で公知のアイオノマーを使用することができ、例えば、以下に限定されないが、パーフルオロスルホン酸樹脂材料などのフッ素樹脂系電解質や、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレンなどのスルホン化プラスチック系電解質、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルケトン、スルホアルキル化ポリエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリスルホン、スルホアルキル化ポリスルフィド、スルホアルキル化ポリフェニレンなどのスルホアルキル化プラスチック系電解質などを使用することができる。
本発明の燃料電池電極用触媒層におけるアイオノマーとしては、フッ素樹脂系電解質である、炭素−フッ素からなる疎水性テフロン骨格とスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸樹脂材料、例えばナフィオンなどが好ましい。
本発明の燃料電池電極用触媒層におけるアイオノマーの特性として、例えば、陽イオン交換量は、限定されるものではないが、滴定法により測定した場合に、通常1.0×10−3〜1.5×10―3mol/g、好ましくは1.1×10−3〜1.2×10―3mol/gである。
本発明の燃料電池電極用触媒層におけるアイオノマーの量は、カーボン担体とアイオノマーの重量比が上記範囲内であれば限定されるものではないが、燃料電池電極用触媒層の全重量に対して、通常20重量%〜40重量%、好ましくは20重量%〜30重量%である。
本発明の燃料電池電極用触媒層は、固体高分子形燃料電池などの各種電気化学デバイスのMEA又はMEGAに含まれる空気極及び/又は燃料極として使用することによって、当該デバイスの電池性能を改善することが可能となる。
さらに、本発明は、固体高分子電解質の両面にそれぞれ空気極と燃料極とを接合してなる膜電極接合体(「燃料極−固体高分子電解質膜−空気極」)(MEA)を具備する燃料電池であって、前記空気極及び前記燃料極の少なくとも一方が、本発明の燃料電池電極用触媒層を含む、前記燃料電池に関する。
本発明の燃料電池における固体高分子電解質としては、当該技術分野で公知の固体高分子電解質を使用することができ、例えば、以下に限定されないが、Nafion(デュポン社製)を使用することができる。
本発明の燃料電池では、本発明の燃料電池電極用触媒層を空気極、燃料極、又は空気極と燃料極の両方として含むことができる。
本発明の燃料電池は、カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積が最適化されることによって、出力性能が最適化されている。
本発明の燃料電池電極用触媒層は、金属担持触媒のカーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積及びカーボン担体とアイオノマーの重量比が上記で規定した通りであること以外については、当該技術分野における公知の方法により調製することができる。本発明の燃料電池電極用触媒層は、例えば、以下のように調製することができる。
(i)カーボン担体に金属触媒を担持させて金属担持触媒を調製するステップ
カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積が上記で規定した通りであるカーボン担体と、酸化状態である金属触媒前駆体とを、通常15℃〜30℃、好ましくは20℃〜25℃で、溶剤、例えば純水中に懸濁させて、懸濁液を得る。得られた懸濁液について、金属触媒前駆体を還元剤、例えばエタノールや水素化ホウ素ナトリウムなどにより、通常55℃〜95℃、好ましくは60℃〜90℃で、金属触媒に還元して、分散液を得る。得られた分散液をろ過し、得られたケーキを通常80℃〜100℃、好ましくは85℃〜95℃で、通常13時間〜17時間、好ましくは14時間〜16時間乾燥させて、粉末を得る。得られた粉末を、不活性雰囲気下、例えば窒素雰囲気下、通常600℃〜1000℃、好ましくは700℃〜900℃で、通常1時間〜6時間、好ましくは1時間〜3時間焼成して、金属担持触媒を得る。ここで、焼成は金属担持触媒の高温での使用における耐久性向上のために実施される。当該焼成は前記カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積が変化しない範囲内で実施される。
(ii)(i)で得られた金属担持触媒とアイオノマーとを混合して、触媒インクを調製するステップ、
(i)で得られた金属担持触媒とアイオノマーとを、上記で規定した通りのカーボン担体とアイオノマーの重量比になるように調整し、通常15℃〜30℃、好ましくは20℃〜25℃で、溶剤、例えば純水中に懸濁させて、懸濁液を得る。得られた懸濁液に、有機溶媒、例えばエタノールを加えて、さらに、公知の分散方法、例えば超音波分散を、通常5℃〜15℃、好ましくは5℃〜10℃で、通常30分間〜70分間、好ましくは50分間から60分間実施して、触媒インクを調製する。
(iii)(ii)で調製した触媒インクから触媒層を調製するステップ
(ii)で調製した触媒インクを、通常15℃〜30℃、好ましくは20℃〜25℃で、公知の散布・付着・塗布方法、例えば重力、噴霧力、又は静電力を利用する方法、例えばアプリケーターを使用して、剥離可能な基材、例えばテフロンシートなどの上に塗布して、触媒層前駆体を形成する。基材上の触媒層前駆体を、公知の乾燥方法、例えば送風乾燥機を使用して、通常60℃〜90℃、好ましくは75℃〜85℃で、通常1分間〜10分間、好ましくは4分間〜6分間乾燥することによって、溶剤などの揮発性物質を除去して、触媒層を調製し、基材から触媒層を剥離することにより触媒層を得る。
ここで、上記では、触媒インクを基材上に散布・付着・塗布させ、その後、乾燥・剥離することにより触媒層を得ているが、触媒インクを固体高分子電解質膜の表面上に直接散布・付着・塗布させ、その後乾燥させることにより、触媒層と固体高分子電解質膜とを接合した状態に調製することもできる。
上記(i)〜(iii)のステップにおいて、各材料の添加順序、添加方法などは制限されない。
さらに、本発明の燃料電池は、本発明の燃料電池電極用触媒層を使用して、当該技術分野における公知の方法により調製することができる。本発明の燃料電池は、例えば、以下のように調製することができる。
(iv)(iii)で調製した触媒層と固体高分子電解質膜とガス拡散層とを組み合わせてMEGAを調製するステップ
得られた触媒層を、空気極及び/又は燃料極として使用し、固体高分子電解質膜を中心に、一方の面に空気極を配置し、もう片方の面に燃料極を配置して、層集合体を得る。ここで、空気極及び燃料極は、使用する金属触媒などを変更することにより、各電極に適応するように調製される。さらに、空気極及び燃料極それぞれの外側に、ガス拡散層を配置する。
ここで、固体高分子電解質膜としては、以下に限定されないが、例えばゴアセレクト(日本ゴア製)を挙げることができる。
また、ガス拡散層としては、以下に限定されないが、例えばトレカ(東レ製)を挙げることができる。
前記の、ガス拡散層−空気極−固体高分子電解質膜−燃料極−ガス拡散層のように配置された層集合体を、ホットプレスにより、通常100℃〜150℃、好ましくは130℃〜140℃で、通常2MPa〜5MPa、好ましくは3MPa〜4MPaの圧力で、通常60秒間〜240秒間、好ましくは120秒間〜180秒間圧着させて、MEGAを得る。
(v)(iv)で調製したMEGAから燃料電池を製造するステップ
得られたMEGAを単セルとして、複数組み合わせることによって燃料電池を製造する。
本発明の燃料電池電極用触媒層を使用して調製された燃料電池は、優れた電池性能を有する。
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
1.サンプル調製
1−1.原材料
1−1−1.カーボン担体の原料
SN2A社製のYSカーボン(比表面積約110±10m/g、純度99.5%以上、抵抗値0.5〜0.6オーム(Ω)
1−1−2.貴金属
白金(Pt) (ジニトロアミン白金水溶液(Ptとして60重量%以上))
コバルト(Co) (硝酸コバルト水溶液(Coとして65重量%以上))
1−2.膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)の調製
比較例1 カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容量が3.5ml/gであるカーボン担体を含む金属担持触媒と、アイオノマーとを含有する燃料電池電極用触媒層を使用して調製したMEGA
(1)貴金属担持触媒PtCo/C(PtCo担持カーボン)の調製
(i)SN2A社製のYSカーボンを、大気中において、1.5時間かけて510℃に昇温し、510℃で5時間維持して焼成することで、カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容量が3.5ml/gであるカーボン担体を調製した。ここで、カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容量は、カーボン担体を、真空下において、150℃の温度で、2時間以上保持することにより前処理した後に、島津製作所製TriStar3000型を使用して、BET多点法により求めた。
(ii)2000mlのビーカーに、0.1N濃度硝酸350gと、(i)で調製したカーボン担体20gとを添加し、25℃で、一昼夜撹拌混合して、懸濁液を得た。
(iii)(ii)で得られた懸濁液に、25℃で、白金前駆体として最終生成物の総重量に対して38重量%の白金担持量になる白金仕込量(5.72g)のジニトロアミン白金水溶液(Ptとして60重量%)を添加して、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。
(iv)(iii)で得られた分散液を濾過して、得られたケーキを80℃で、15時間乾燥させて、粉末を得た。
(v)(iv)で得られた粉末を、アルゴン雰囲気下、800℃で、2時間焼成して、38重量%貴金属担持触媒Pt/Cを得た。
(vi)(v)で得られた38重量%貴金属担持触媒Pt/Cとカーボン担体の総重量に対して80倍の純水を添加し、25℃で、5分間撹拌混合して、懸濁液を得た。
(vii)(vi)で得られた懸濁液に、25℃で、コバルト前駆体として白金とコバルトのモル比が7:1になるように硝酸コバルト水溶液を添加して、コバルト前駆体を硝酸コバルトのコバルトに対して1〜6mol当量の水素化ホウ素ナトリウムを添加することによりコバルトに還元して、分散液を得た。
(viii)(vii)で得られた分散液を濾過して、得られたケーキを80℃で、15時間乾燥させて、粉末を得た。
(ix)(viii)で得られた粉末を、アルゴン雰囲気下、800℃で、2時間焼成して、40重量%貴金属担持触媒PtCo/Cを調製した。
(2)触媒インクの調製
(i)50mlのビーカーに、超純水8gと、(1)で調製した貴金属担持触媒PtCo/C 1gと、エタノール6gとを添加し、25℃で、5分間撹拌混合して、懸濁液を得た。
(ii)(i)で得られた懸濁液に、25℃で、アイオノマー溶液(交換量が1.11×10−3mol/gであるアイオノマーと溶媒とを含む10重量%溶液)を、アイオノマー固形分とカーボン担体の重量比(アイオノマー固形分/カーボン担体)が0.75になるように添加し、5〜10℃で、超音波分散を55分間実施して、混合液を得た。
(iii)(ii)で得られた混合液を、室温で、プライミクス社製薄膜旋回型高速ミキサー(フィルミクス)にて30m/sで15分間分散後、均一な触媒インクを調製した。
(3)触媒層の調製
(i)(2)で調製した触媒インクを、テフロンシート上に、膜厚が10μmになるように、ドクターブレードを使用して均一に塗布して、テフロンシート上に触媒層前駆体を得た。
(ii)(i)で得られたテフロンシート上の触媒層前駆体を、送風乾燥機を使用して、80℃で、5分間乾燥させて、テフロンシート上に触媒層を形成した。
(iii)テフロンシートから触媒層を剥離して、触媒層を調製した。
(4)MEGA(単セル)の調製
(i)空気極(カソード)として(3)で調製した触媒層を使用し、燃料極(アノード)として(1)において(vi)〜(ix)の工程を除き、(3)で調整した触媒層を使用し、空気極と燃料極の間に固体高分子電解質膜としてゴアセレクト(日本ゴア製)を配置して層集合体(空気極−固体高分子電解質膜−燃料極)を作製した。得られた層集合体をホットプレスにより140℃で180秒間圧着させて、MEAを調製した。
(ii)(i)で調製したMEAの両極側に、ガス拡散層としてトレカ(東レ製)を配置して層集合体(ガス拡散層−MEA−ガス拡散層)を作製した。得られた層集合体をホットプレスにより140℃で180秒間圧着させて、MEGAを調製した。
比較例2 カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容量が12.8ml/gであるカーボン担体を含む金属担持触媒と、アイオノマーとを含有する燃料電池電極用触媒層を使用して調製したMEGA
比較例1の(1)(i)において、SN2A社製のYSカーボンを、大気中において、1.5時間かけて550℃に昇温し、550℃で5時間維持して焼成することで、カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容量が12.8ml/gであるカーボン担体を調製し、その後調製したカーボン担体を使用した以外は、比較例1と同様にMEGAを調製した。
実施例1 カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容量が4.5ml/gであるカーボン担体を含む金属担持触媒と、アイオノマーとを含有する燃料電池電極用触媒層を使用して調製したMEGA
比較例1の(1)(i)において、SN2A社製のYSカーボンを、大気中において、1.5時間かけて520℃に昇温し、520℃で5時間維持して焼成することで、カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容量が4.5ml/gであるカーボン担体を調製し、その後調製したカーボン担体を使用した以外は、比較例1と同様にMEGAを調製した。
実施例2 カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容量が7.0ml/gであるカーボン担体を含む金属担持触媒と、アイオノマーとを含有する燃料電池電極用触媒層を使用して調製したMEGA
比較例1の(1)(i)において、SN2A社製のYSカーボンを、大気中において、1.5時間かけて530℃に昇温し、530℃で5時間維持して焼成することで、カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容量が7.0ml/gであるカーボン担体を調製し、その後調製したカーボン担体を使用した以外は、比較例1と同様にMEGAを調製した。
実施例3 カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容量が9.3ml/gであるカーボン担体を含む金属担持触媒と、アイオノマーとを含有する燃料電池電極用触媒層を使用して調製したMEGA
比較例1の(1)(i)において、SN2A社製のYSカーボンを、大気中において、1.5時間かけて540℃に昇温し、540℃で5時間維持して焼成することで、カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容量が9.3ml/gであるカーボン担体を調製し、その後調製したカーボン担体を使用した以外は、比較例1と同様にMEGAを調製した。
2.サンプル評価
実施例4 電流−電圧(I−V)測定
比較例1及び2並びに実施例1〜3で調製したMEGAについて、東陽テクニカ製の燃料電池評価システムを使用して、MEGAの温度を45℃に加熱した後に、カソード電極及びアノード電極に、55℃に加熱したバブラーを通過させた加湿空気(2ml/分)及び加湿水素(0.5ml/分)を供給することでI−V測定を実施し、165%相対湿度での、電流密度2.5A/cmにおける電圧値を測定した。
結果を表1及び図2に示す。
Figure 0006772952
表1及び図2より、カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容量が、4.5ml/g〜9.3ml/gであるカーボン担体を使用して調製したMEGAは、165%相対湿度での、電流密度2.5A/cmにおける電圧が大きくなることが分かった。

Claims (2)

  1. カーボン担体及び前記カーボン担体に担持されている金属触媒を含む金属担持触媒と、アイオノマーとを含有する燃料電池電極用触媒層であって、
    カーボン担体中の細孔において、細孔径が5nm〜40nmである細孔の細孔容積が、4.5ml/g〜9.3ml/gであり、
    カーボン担体とアイオノマーの重量比が、1:0.50〜1:0.85である、
    前記燃料電池電極用触媒層。
  2. 固体高分子電解質の両面にそれぞれ空気極と燃料極とを接合してなる膜電極接合体を具備する燃料電池であって、
    前記空気極及び前記燃料極の少なくとも一方が、請求項1に記載の燃料電池電極用触媒層を含む、
    前記燃料電池。
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