JP6382051B2 - 蓄電デバイス用セパレータ - Google Patents
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Description
電気エネルギー貯蔵装置等に好適に用いられるセパレータに関する。
蓄電デバイスが異常加熱した場合に速やかに電池反応を停止する「ヒューズ特性」、
高温になっても当初の形状を維持して正極物質と負極物質が直接反応する危険な事態を防止する「ショート特性」
等が求められている。
近年、蓄電デバイスにおいて、充放電電流の均一化、リチウムデンドライトの成長抑制の観点から、電極とセパレータとの間の密着性を向上すべき要請が生じている。セパレータと電極との密接性を向上すれば、充放電電流が均一化し、リチウムデンドライトの成長が抑制されることが期待されるから、結果として、蓄電デバイスの充放電サイクル寿命が向上されることが期待されることとなる。
このような事情のもと、セパレータの密着性を向上させる目的で、ポリオレフィンからなる微多孔膜に接着性ポリマーを塗工する試みが行われている(例えば特許文献1及び2参照)。
この点、特許文献3には、電極との密着性と、セパレータ表面のべたつきの抑制とを両立するために、2種類以上の樹脂バインダーを混合使用する技術が;
特許文献4には、2種類以上の樹脂バインダーのマイグレーションをそれぞれ制御する技術が;
特許文献5には、2種類の樹脂バインダーを重ねて塗工する技術が;
特許文献6には、樹脂バインダーとしてフッ化アクリル共重合体を使用する技術が;
特許文献7には、樹脂バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を使用する技術が、
それぞれ開示されている。
特許文献7の技術によると、樹脂バインダーの融点が過度に高く、更に該樹脂バインダーと多孔質膜との間の接着が不十分であるとの問題が生ずる。
本発明は、上記の現状を打開しようとしてなされたものである。従って、本発明の目的は、電極との密着性、多孔基材層との接着強度、及び無機充填材の結着強度に優れるとともに、べたつきを生じず、ハンドリング性、撥水性、及び耐酸化性にも優れた蓄電用セパレータを提供することである。また、蓄電デバイスに具備した時に、高い容量を長期間維持することができる良好なサイクル特性を示す蓄電デバイス用セパレータを、優れた生産性で提供することである。
即ち、本発明は以下のとおりである。
無機充填剤(b−2)、フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)、及び非晶性樹脂バインダー(b−1−2)を含む多孔層(B)と
を有するセパレータであって、
前記多孔層(B)の表面軟化温度が30〜60℃であり、
多孔層(B)表面の水接触角が75度以上であり、そして
多孔層(B)の水接触角の全層領域平均が60〜80度であることを特徴とする、蓄電デバイス用セパレータ。
[3] 前記フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)の水接触角が80度以上であり、前記非晶性樹脂バインダー(b−1−2)の水接触角が70度以下である、[1]又は[2]に記載のセパレータ。
[5] 前記フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)が、フッ化ビニリデン及びフッ化エチレンから成る群より選択される1種以上を含むモノマーの重合体又は共重合体である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のセパレータ。
[7] 電極と、
[1]〜[6]のいずれか1記載の蓄電デバイス用セパレータと
が積層されて成ることを特徴とする、積層体。
[8] [7]に記載の積層体を具備することを特徴とする、蓄電デバイス。
本発明の蓄電デバイス用セパレータを具備する蓄電デバイスは、高い電池容量を示し、その寿命が長い。
本発明のセパレータは、例えばリチウムイオン二次電池、コンデンサ、キャパシタ等の蓄電デバイスのセパレータとして好適に使用することができる。
<多孔基材層(A)>
本発明における多孔基材層(A)について説明する。
上記多孔基材層(A)としては、電子伝導性が小さく、イオン伝導性を有し、有機溶媒に対する耐性が高く、孔径の微細なものが好ましい。
そのような多孔基材層(A)としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を含む多孔膜;ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂を含む多孔膜;ポリオレフィン系の繊維を織ったもの(織布);ポリオレフィン系の繊維の不織布;紙;並びに、絶縁性物質粒子の集合体が挙げられる。これらの中でも、塗工工程を経てセパレータを得る場合に塗工液の塗工性に優れ、セパレータの膜厚をより薄くして、電池等の蓄電デバイス内の活物質比率を高めて体積当たりの容量を増大させる観点から、ポリオレフィン樹脂を含む多孔基材層(A)膜(以下、「ポリオレフィン樹脂多孔基材層(A)膜」ともいう。)が好ましい。
中でも、電池用セパレータとした時のシャットダウン特性の観点から、ポリオレフィン樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの共重合体、並びにこれらの混合物が好ましい。
ポリエチレンの具体例としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等、
ポリプロピレンの具体例としては、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン等、
共重合体の具体例としては、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレンプロピレンラバー等、が挙げられる。
多孔基材層(A)は、上述した材料からなる単層膜であってもよく、積層膜であってもよい。
平均孔径は、組成比、押出シートの冷却速度、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、熱固定時の緩和率を制御することや、これらを組み合わせることにより調整することができる。
多孔基材層(A)の気孔率は、これがポリオレフィン樹脂多孔基材膜である場合には、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の混合比率、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、熱固定時の緩和率を制御することや、これらを組み合わせることによって調整することができる。
(1)ポリオレフィン樹脂組成物と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形後、必要に応じて延伸した後、孔形成材を抽出することにより多孔化させる方法、
(2)ポリオレフィン樹脂組成物を溶融混練して高ドロー比で押出した後、熱処理と延伸によってポリオレフィン結晶界面を剥離させることにより多孔化させる方法、
(3)ポリオレフィン樹脂組成物と無機充填材とを溶融混練してシート上に成形した後、延伸によってポリオレフィン樹脂組成物と無機充填材との界面を剥離させることにより多孔化させる方法、
(4)ポリオレフィン樹脂組成物を溶解後、ポリオレフィンに対する貧溶媒に浸漬させてポリオレフィンを凝固させると同時に溶剤を除去することにより多孔化させる方法
等が挙げられる。
延伸処理としては、一軸延伸又は二軸延伸のいずれも好適に用いることができるが、得られる多孔基材層(A)の強度等を向上させる観点から二軸延伸が好ましい。シート状成形体を二軸方向に高倍率延伸すると、分子が面方向に配向し、最終的に得られる多孔基材層(A)が裂けにくくなり、高い突刺強度を有するものとなる。延伸方法としては、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延伸、多段延伸、多数回延伸等の方法を挙げることができる。突刺強度の向上、延伸の均一性、シャットダウン性の観点からは同時二軸延伸が好ましい。また面配向の制御容易性の観点からは遂次二軸延伸が好ましい。
緩和操作は、膜のMD及び/又はTDへの縮小操作のことである。緩和率とは、緩和操作後の膜の寸法を緩和操作前の膜の寸法で除した値のことである。なお、MD、TD双方を緩和した場合は、MDの緩和率とTDの緩和率を乗じた値のことである。緩和率は、1.0以下であることが好ましく、0.97以下であることがより好ましく、0.95以下であることが更に好ましい。緩和率は膜品位の観点から0.5以上であることが好ましい。緩和操作は、MD、TD両方向で行ってもよいが、MD或いはTD片方だけ行ってもよい。
この可塑剤抽出後の延伸及び緩和操作は、好ましくはTDに行う。延伸及び緩和操作における温度は、ポリオレフィン樹脂の融点(以下、「Tm」ともいう。)より低いことが好ましく、Tmより1℃から25℃低い範囲がより好ましい。延伸及び緩和操作における温度が上記範囲であると、熱収縮率低減と気孔率とのバランスの観点から好ましい。
樹脂バインダー(b−1)及び無機充填材(b−2)を含む多孔層(B)について説明する。
前記多孔層(B)に使用する無機充填材(b−2)としては、特に限定されないが、耐熱性及び電気絶縁性が高く、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。
無機充填材(b−2)としては、例えば、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、その他化合物が挙げられる。
マグネシウム化合物としては、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
その他化合物としては、酸化物系セラミックス、窒化物系セラミックス、粘土鉱物、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂、ガラス繊維等が挙げられる。酸化物系セラミックスとしては、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等が挙げられる。窒化物系セラミックスとしては、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等が挙げられる。粘土鉱物としては、タルク、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト等が挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、複数を併用してもよい。
樹脂バインダー(b−1)の種類としては、セパレータとしたときにリチウムイオン二次電池の電解液に対して不溶であり、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定なものを用いることが好ましい。
1)ポリオレフィン:例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンラバー、及びこれらの変性体;
2)共役ジエン系重合体:例えば、スチレン−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びその水素化物;
3)アクリル系重合体:例えば、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体;
4)ポリビニルアルコール系樹脂:例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル;
5)含フッ素樹脂:例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体;
6)融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂あるいは融点を有しないが分解温度が200℃以上のポリマー:例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル。特に、耐久性の観点から全芳香族ポリアミド、中でもポリメタフェニレンイソフタルアミドが好適である。
中でも、電極とのなじみやすさの観点からは上記2)共役ジエン系重合体が好ましく、耐電圧性の観点からは上記3)アクリル系重合体及び5)含フッ素樹脂が好ましい。
上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換及び側鎖共役ヘキサジエン類等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、特に1,3−ブタジエンが好ましい。
上記3)アクリル系重合体に用いられる(メタ)アクリル酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸を挙げることができる。
上記3)アクリル系重合体に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等が;
エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が
それぞれ、挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)と、
非晶性樹脂バインダー(b−1−2)と、
を含んでいる。
燥過程によって多孔層(B)を形成する工程において、溶剤(例えば水)の蒸発・多孔層(B)の乾燥により、塗膜中の樹脂バインダー(b−1)が多孔層(B)中の外表面側へ移動する現象である。
ここで、逐電デバイスとした時に、多孔層(B)の外表面は、電解液と直接接し、導電性イオンのやり取りに伴う酸化還元環境にさらされる。従って、該領域は高度の耐酸化性を有すべき要請から、高い撥水性を示す必要があるから、水接触角が高い方が好ましい。一方、多孔層(B)のうちの多孔基材層(A)との界面近傍の領域では、多孔基材層(A)との接着性を高くして粉落ち防止性能を高めるべき要請から、水接触角が低い方が好ましい。
多孔層(B)の外表面近傍の領域ではフッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)の特性が色濃く現れ、
多孔基材層(A)との界面近傍の領域では非晶性樹脂バインダー(b−1−2)の特性が色濃く現れる。
前記フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)の水接触角が80度以上であり、そして前記非晶性樹脂バインダー(b−1−2)の水接触角が70度以下であることが好ましい。フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)の水接触角は、75〜115度であることが;
非晶性樹脂バインダー(b−1−2)の水接触角は30〜75度であることが、
それぞれより好ましい。
ここで、フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)及び非晶性樹脂バインダー(b−1−2)の水接触角とは、それぞれの樹脂バインダーを個別に成膜した時の水接触角をいう。このときの測定膜厚は、測定精度の確保と成膜の容易性との兼ね合いから、0.1〜5mmとすることが好ましく、例えば1mm程度とすることができる。
フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1):前記の5)含フッ素樹脂
非晶性樹脂バインダー(b−1−2):前記の2)共役ジエン系重合体及び3)アクリル系重合体から成る群より選択される1種以上である。
フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)が、フッ素原子含有モノマーの共重合体である場合、共重合モノマーとしては、例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸、メタクリル酸、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、等を挙げることができる。
フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)のフッ素原子含有モノマーの共重合体割合は、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
これらの具体例としては、
官能基含有モノマーとして、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有モノマー;
グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマー;
アクリルアミド、メタクリル酸アミド等のアミド基含有モノマー
等が、
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー;
スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;
ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート等の不飽和カルボン酸アルキルエステルモノマー;
ビニルシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニルモノマー
等が、それぞれ挙げられる。これらの官能基含有モノマー、及び官能基非含有かつ非架橋性モノマーとしては、それぞれ、上記の例示のうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。
架橋性モノマーとしては、ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているモノマー等が挙げられる。
ラジカル重合性の二重結合を2個有するモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等を;
ラジカル重合性の二重結合を3個有するモノマーとして、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等を;
ラジカル重合性の二重結合を4個有するモノマーとして、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等を、
それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。
官能基含有モノマーの、全モノマーに対する使用割合が、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは3〜7質量%であり;
官能基非含有かつ非架橋性モノマーの、全モノマーに対する使用割合が、好ましくは75〜99.4質量%、より好ましくは85〜98.7質量%、更に好ましくは90〜96.5質量%であり;そして
架橋性モノマーの、全モノマーに対する使用割合が、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜5質量%、更に好ましくは0.5〜3質量%である。
フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)が樹脂バインダー(b−1)中に占める割合{(b−1−1)/(b−1)}は、5〜95質量%であることが好ましく、15〜75質量%であることがより好ましく、更に好ましくは25〜50質量%である。
前記元素マッピング法としては、例えばEDX(エネルギー分散型X線分光法)を、それぞれ採用することができる。これらの分析において、無機充填材(b−2)の主成分を構成する金属元素に着目して断面方向にマッピングすることにより、当該無機充填材(b−2)の存在位置を知ることができる。無機充填材(b−2)が例えばベーマイト又はカオリンである場合、その主成分を構成するAl(アルミニウム)元素の断面方向のマッピングにより、その存在位置を知ることができる。
水接触角が好ましくは80度以上のフッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)、及び水接触角が好ましくは70度以下の非晶性樹脂バインダー(b−1−2)の双方を含有する。そして、多孔層(B)を形成する際の樹脂バインダー(b−1)のマイグレーションにより、
多孔層(B)の外表面側(多孔基材層(A)との接触面の反対側)には、フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)が多く存在し、
多孔層(B)の多孔基材層(A)との接触面側には、非晶性樹脂バインダー(b−1−1)が多く存在することとなる。従って、多孔層(B)の外表面における樹脂バインダー(b−1)の水接触角は、多孔層(B)の水接触角の全層領域平均値よりも大きいこととなる。
一方、多孔層(B)の水接触角の全層領域平均は、60〜80度であり、62〜78度であることが好ましく、65〜75度であることがより好ましい。
また、「多孔層(B)の水接触角の全層領域平均値」とは、形成された多孔層(B)について、厚み方向に全部の領域を掻き取り、よく混合したうえで熱プレスにより成膜して得た膜表面について測定した値である。このような手法によって成膜すると、樹脂バインダー(b−1)がマイグレーションする余地がないから、領域内の樹脂バインダー(b−1)の平均的な水接触角を知ることができる。
多孔基材層(A)と、無機充填材(b−2)及び樹脂バインダー(b−1)を含む多孔層(B)とを有する上記セパレータは、耐熱性に優れ、シャットダウン機能を有しているので電池の中で正極と負極を隔離する電池用セパレータに適している。
特に、上記セパレータは高温においても短絡し難いため、高起電力電池用のセパレータとしても安全に使用できる。
本実施形態におけるセパレータは、耐酸化性が高い。
セパレータの耐酸化性は、セパレータの黒色化の程度で判断できる。黒色化は、正極における還元反応に伴うバインダーポリマーのラジカル的酸化反応に起因するポリエン化が原因とされている。そして、黒色化が生じると、多孔基材層(A)の強度劣化が引き起こされる。本実施形態におけるセパレータは、樹脂バインダー(b−1)の一部に耐酸化性の高いフッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)と使用しているため、耐酸化性が極めて高く、セパレータの黒色化が極めて抑制されている。
正極材料としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、スピネル型LiMnO4、オリビン型LiFePO4等のリチウム含有複合酸化物等が、負極材料としては、例えば、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、複合炭素体等の炭素材料;シリコン、スズ、金属リチウム、各種合金材料等が挙げられる。
なお、上記外装体としては、電池缶や袋状のフィルムを用いることができる。
(1)多孔基材層(A)の気孔率(体積%)
多孔基材層(A)から10cm×10cm角の試料を切り取り、その体積(cm3)と質量(g)を測定し、膜密度を0.95(g/cm3)として、下記数式を用いて計算した。
気孔率(%)=(体積−質量/膜密度)/体積×100
JIS P−8117に準拠し、(株)東洋精機製作所製のガーレー式デンソメータG−B2(商標)により測定した透気抵抗度を透気度とした。
カトーテック製のハンディー圧縮試験器KES−G5(商標)を用いて、開口部の直径が11.3mmの試料ホルダーにて多孔基材層(A)を固定した。25℃雰囲気下で、前記固定された多孔基材層(A)の中央部を、先端の曲率半径が0.5mmの針を用いて、突刺速度2mm/secにて突刺試験を行った。この時の最大突刺荷重を突刺強度(g)とした。
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さい時はポアズイユの流れに従うことが知られている。そこで、多孔基材層(A)の透気度測定における空気の流れはクヌーセンの流れに、多孔基材層(A)の透水度測定における水の流れはポアズイユの流れに、それぞれ従うと仮定する。
平均孔径d(μm)及び曲路率τa(無次元)は、空気の透過速度定数Rgas(m3/(m2・sec・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m3/(m2・sec・Pa))、空気の分子速度ν(m/sec)、水の粘度η(Pa・sec)、標準圧力Ps(=101,325Pa)気孔率ε(%)、及び膜厚L(μm)から、下記数式を用いて求めた。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×106
τa= (d×(ε/100)×ν/(3L×Ps×Pgas))1/2
Rgas=0.0001/(透気度×(6.424×10−4)×(0.01276×101,325))
Rliq=透水度/100
透気度及び透水度は、それぞれ、次のように求められる。
[透気度]
ここでいう透気度は、多孔基材層(A)について前記「(2)セパレータの透気度」の記載に準拠して測定することにより、透気抵抗度として得ることができる。
[透水度]
直径41mmのステンレス製の透液セルに、予めエタノールに浸しておいたポリオレフィン微多孔膜をセットし、該膜のエタノールを水で洗浄した。その後、約50,000Paの差圧で水を透過させ、120sec経過した際の透水量(cm3)より、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量を計算し、これを透水度とした。
また、空気の分子速度νは、気体定数R(=8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、及び空気の平均分子量M(=2.896×10−2kg/mol)から、下記数式を用いて求められる。
ν={(8R×T)/(π×M)}1/2
孔数B (個/μm2) は、下記数式より求めることができる。
B=4×(ε/100)/(π×d2×τa)
(5)−1 多孔基材層(A)及び蓄電デバイス用セパレータの厚み(μm)
多孔基材層(A)及び蓄電デバイス用セパレータから、それぞれ、10cm×10cm角のサンプルを切り出し、格子状に選んだ9箇所(3点×3点)の膜厚を、微小測厚器(東洋精機製作所(株)、タイプKBM)を用いて室温23±2℃において測定した。9箇所の測定値の平均値を、多孔基材層(A)又は蓄電デバイス用セパレータの厚み(μm)とした。
(5)−2 多孔層(B)の厚み(μm)
多孔層(B)の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S−4800、HITACHI社製」を用い、セパレータの断面観察により測定した。サンプルのセパレータを1.5mm×2.0mm程度に切り取り、ルテニウム染色した。ゼラチンカプセル内に染色サンプル及びエタノールを入れて液体窒素により凍結させた後、ハンマーでサンプルを割断した。サンプルをオスミウム蒸着し、加速電圧1.0kV、30,000倍にて観察し、多孔層の厚さを算出した。この時、SEM画像において、ポリオレフィン微多孔膜断面の多孔構造が見えない最表面領域を、多孔層(B)の領域とした。
樹脂バインダー(b−1)含有ラテックスをアルミ皿に適量とり、130℃の熱風乾燥機中で30分間乾燥して、乾燥皮膜を得た。得られた乾燥皮膜約17mgを測定用アルミ容器に詰め、DSC測定装置(島津製作所社製、DSC6220)を用いて、窒素雰囲気下におけるDSC曲線及びDDSC(DSCの微分)曲線を得た。測定条件は下記の通りとした。
(1段目昇温プログラム)
70℃スタート、毎分15℃の割合で昇温。110℃に到達後5分間維持。
(2段目降温プログラム)
110℃から毎分40℃の割合で降温。−70℃に到達後5分間維持。
(3段目昇温プログラム)
−70℃から毎分15℃の割合で300℃まで昇温。この3段目の昇温時にDSC及びDDSCのデータを取得。DDSC曲線のピークトップ温度をガラス転移温度とした。
セパレータの表面と黒ラシャ紙を合わせて、カレンダーを用い、ロール温度20℃、カレンダーロール間線圧10kgf/cmの条件下で圧着させた後、両者引き離して、黒ラシャ紙のセパレータへの転写有無を確認した。転写が確認されなかった場合、カレンダーのロール温度を5℃上昇させ、同様の試験を実施した。以降、5℃刻みでロール温度を上昇させつつ同様の試験を繰り返し、黒ラシャ紙のセパレータへの転写が見られた時の温度を、多孔層(B)の表面軟化温度とした。
(8)−1 多孔層(B)表面及び樹脂バインダー(b−1)の水接触角
多孔層(B)表面の水接触角は、得られた多孔層(B)の表面に脱イオン水の滴を乗せ、23℃において1分間放置した後、日本国協和界面科学製、CA−X150型接触角計を用いて測定した。
樹脂バインダー(b−1)の水接触角は、ガラス表面上に樹脂バインダー(b−1)を含有するラテックスをクリアランス1mmのアプリケーターにより塗工、乾燥して得られたフィルムについて、前記多孔層(B)の場合と同様の装置及び方法を用いて測定した。
(8)−2 多孔層(B)の水接触角の全層領域平均
マニピュレータを用いて、セパレータより、多孔層(B)を掻き取った。得られた粉体試料をよく混合した後、第1の樹脂バインダー(b−1−1)の融点((6)と同様の方法によって検出された高温側の融点)+30℃の温度において100kgf/cm2の圧力で熱プレスすることにより、厚み約100μmのフィルム状に成膜した。このフィルムについて、上記(8)−1と同様の方法によって水接触角を測定し、得られた値を多孔層(B)の水接触角の全層領域平均とした。
上記(8)で得られた多孔層(B)表面及び樹脂バインダー(b−1)の水接触角、並びに多孔層(B)の水接触角の全層領域平均の値を用いて、多孔層(B)外表面から0〜50%の厚み範囲におけるフッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)の存在比率、及び多孔層(B)外表面から50〜100%の厚み範囲における非晶性樹脂バインダー(b−1−1)の存在比率を、以下の仮定のもとに計算により求めた。
仮定1:2種の樹脂バインダー(b−1)の混合物の水接触角は、該2種の樹脂バインダー(b−1)それぞれの水接触角の算術平均と一致する。
仮定2:無機充填材(b−2)及びその他の添加剤は、水接触角に影響しない。
仮定3:フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)及び非晶性樹脂バインダー(b−1−2)それぞれの存在比率は、多孔層(B)の厚み方向に直線的に変化する。
セパレータと電極(負極)との密着性は、以下の手順で評価した。
(負極の作製)
負極活物質として人造グラファイト96.9質量%、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%(固形分換算)、及びスチレン−ブタジエンコポリマーラテックス(粒径80nm、ガラス転移温度−40℃)1.7質量%(固形分換算)を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚み12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗工し、120℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成形することにより、負極を得た。この時、負極の活物質塗工量は106g/m2、活物質嵩密度は1.35g/cm3になるようにした。
上記方法により得られた負極を、幅20mm、長さ40mmにカットした。この負極上に、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを2:3の比率(体積比)にて混合した電解液(富山薬品工業製)を負極が浸る程度にたらした上にセパレータを重ね、積層体を得た。この積層体をアルミジップに入れ、80℃、10MPaの条件で、2分間プレスを行った。
その後、積層体を取り出し、セパレータを電極から剥がして目視による観察を行い、以下の基準により評価した。
○(良好):セパレータ面積の30%以上に負極活物質が付着した場合
△(可):セパレータ面積の10%以上30%未満に負極活物質が付着した場合
×(不良):セパレータ面積の10%未満に負極活物質が付着した場合
被着体として正極集電体(冨士加工紙(株)アルミ箔20μm)を30mm×150mmに切り取ったものを、セパレータと重ね合わせて積層体を得た。得られた積層体を、2枚のテフロン(登録商標)シート(ニチアス(株)ナフロンPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート TOMBO−No.9000)により挟み、プレス条件を下記のように変量してそれぞれプレスを行うことにより、プレス条件の異なる2種の試験用サンプルを得た。
条件1)温度25℃、圧力5MPaで3分間加圧
条件2)温度80℃、圧力10MPaで3分間加圧
得られた結果に基づいて、下記の評価基準でセパレータの剥離強度を評価した。
条件1)のプレス後のサンプルについて、
○(良好):剥離強度が6gf/cm以下であった場合
△(可):剥離強度が6gf/cmを超えて8gf/cm以下であった場合
×(不良):剥離強度が8gf/cmを超得た場合
とし、ベタつき性及びハンドリング性の指標とした。
条件2)のプレス後のサンプルについて、
○(良好):剥離強度が15gf/cm以上であった場合
△(可):剥離強度が10gf/cm以上15gf/cm未満であった場合
×(不良):剥離強度が10gf/cm未満であった場合
とし、電極との密着性、多孔基材層(A)との接着強度、及び無機充填材(b−2)の結着強度の指標とした。
(11−1)評価用サンプルの作製
[電極の作製]
負極を前記「(9)セパレータと電極との密着性」における「(負極の作製)」と同様にして作製した。
正極は、以下のようにして作製した。
(正極の作製)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を92.2質量%、導電材としてリン片状グラファイト及びアセチレンブラックをそれぞれ2.3質量%ずつ、並びにバインダーとしてポリフッ化ビニリデン3.2質量%(固形分換算)をN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体となる厚み20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターで塗工し、130℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成形することにより、正極を得た。この時、正極の活物質塗工量は250g/m2、活物質嵩密度は3.00g/cm3になるようにした。
[非水電解液の調整]
非水電解液は、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=2/3(体積比)からなる混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0mol/Lとなるように溶解させることにより調製した。
[セパレータの作製]
実施例及び比較例で得られた各セパレータを60mmに切断して帯状にすることにより、評価用セパレータを作製した。
[電池の組立て]
(11−1)で得られた、電極及びセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータの順に重ね、巻取張力を250gf、捲回速度を45mm/秒として、渦巻状に複数回捲回して、電極積層体を作製した。ここで、セパレータは、多孔層を形成した面を負極側として積層した。この電極積層体を、外径18mm、高さ65mmのステンレス製容器に収納し、正極集電体から導出したアルミニウム製タブを容器蓋端子部に、負極集電体から導出したニッケル製タブを容器壁に溶接した。その後、真空下、80℃で12時間の乾燥を行った。アルゴンボックス内において、組立てた電池容器内に前記の非水電解液を注入し、封口することにより、評価用電池を作製した。
前記のように組立てた電池につき、1/3Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧充電を8時間行い、その後1/3Cの電流で3.0Vの終止電圧まで放電を行った。次に、1Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧充電を3時間行い、その後1Cの電流で3.0Vの終止電圧まで放電を行った。最後に1Cの電流値で4.2Vまで定電流充電をした後、4.2Vの定電圧充電を3時間行って、前処理を終了した。
なお、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表す。
上記前処理を行った電池につき、温度25℃の条件下で、放電電流1Aで放電終止電圧3Vまで放電を行った後、充電電流1Aで充電終止電圧4.2Vまで充電を行った。これを1サイクルとして充放電を繰り返し、初期容量に対する200サイクル後の容量保持率を調べ、以下の基準でサイクル特性を評価した。
(評価基準)
○(良好):容量保持率が95%以上100%以下であった場合
△(可):容量保持率が90%以上95%未満であった場合
×(不良):容量保持率90%未満であった場合
上記と同様の前処理を行った電池につき、電圧4.2Vまで1Cの電流にて定電流充電した後、70℃の環境温度下で4.2Vの定電圧充電を100時間行った。この電池からセパレータを取り出して、ジメトキシエタン、エタノール、及び濃度1Nの塩酸中で各15分間超音波洗浄を行った後、空気中で乾燥した。そして、乾燥後のセパレータについて、正極接触面側表面の黒色変化の面積割合を調べ、耐酸化性の度合いを以下の基準で評価した。
黒色変化した面積割合が10%未満であった場合:○(耐酸化性「良好」)
黒色変化した面積割合が10%以上であった場合:○(耐酸化性「不良」)
(製造例1a)アクリル系ポリマーラテックスの製造
撹拌機、還流冷却器、滴下槽、及び温度計を取り付けた反応容器に、イオン交換水70.4質量部と、「アクアロンKH1025」(商品名、第一工業製薬株式会社製、25質量%水溶液)0.085質量部(固形分換算)と、「アデカリアソープSR1025」(商品名、株式会社ADEKA製、25質量%水溶液)0.085質量部(固形分換算)と、を投入し、反応容器内部温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(2質量%水溶液)を0.15質量部(固形分換算)添加した。
過硫酸アンモニウム水溶液を添加した5分後に、メタクリル酸メチル85質量部、アクリル酸n−ブチル5.4質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル2質量部、メタクリル酸0.1質量部、アクリル酸0.1質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル2質量部、アクリルアミド5質量部、メタクリル酸グリシジル0.4質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(A−TMPT、新中村化学工業株式会社製)0.7質量部、「アクアロンKH1025」(商品名、第一工業製薬株式会社製、25質量%水溶液)0.75質量部(固形分換算)、「アデカリアソープSR1025」(商品名、株式会社ADEKA製、25質量%水溶液)0.75質量部(固形分換算)、p−スチレンスルホン酸ナトリウム0.05質量部、過硫酸アンモニウム(2質量%水溶液)0.15質量部(固形分換算)、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3質量部、及びイオン交換水52質量部の混合物を、ホモミキサーにより5分間混合させて、乳化液を作製した。得られた乳化液を、滴下槽から反応容器に150分かけて滴下した。
乳化液の滴下終了後、反応容器内部温度を80℃に保ったまま90分間維持し、その後室温まで冷却し、エマルジョンを得た。得られたエマルジョンに水酸化アンモニウム水溶液(25質量%水溶液)を加えて、pH=9.0に調整することにより、濃度40質量%のアクリル系ポリマー(1a)を含有するラテックスを得た。
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、アクリル系ポリマー(1a)は、粒子径161nmの球形、単分散であることがわかった。また、得られたアクリル系ポリマー(1a)の水接触角は57度、ガラス転移温度は90℃であった。
以下の成分の使用量を以下に記載したとおりに変更した他は、前記製造例1aと同様に操作することにより、固形分濃度40質量%のアクリル系ポリマー(1b)を含有するラテックスを得た。
[初期仕込み]
アクアロンKH1025(25質量%水溶液):0.45質量部(固形分換算)
アデカリアソープSR1025(25質量%水溶液):0.45質量部(固形分換算)
過硫酸アンモニウム(2質量%水溶液):0.15質量部(固形分換算)
[乳化液中のモノマー]
メタクリル酸メチル:30.5質量部
アクリル酸n−ブチル:60.8質量部
アクリル酸2−エチルヘキシル:2質量部
メタクリル酸:1質量部
アクリル酸:1.5質量部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル:2質量部
アクリルアミド:0.2質量部
メタクリル酸グリシジル:2質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート:0.7質量部
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、アクリル系ポリマー(1b)は、粒子径121nmの球形、単分散であった。また、得られたアクリル系ポリマー(1b)の水接触角は58度、ガラス転移温度は−20℃あった。
特許第3824331号明細書の実施例記載に参考に、低分子量ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ラテックス(1c)を、以下のとおりに製造した。
パドル攪拌器を備えた7.5リットルのステンレス鋼製の水平反応器内に、4,375gの脱塩水、及び50℃〜60℃で溶融する炭化水素ワックス4gを導入した。反応器を密閉し、窒素気流で脱気し、排出した。その後、2.99gのパーフルオロオクタン酸アンモニウムを含む脱塩脱気水1,000gを添加した。次いで、反応器を120℃まで加熱し、気体のフッ化ビニリデン(VDF)によって、650psigの圧力とした。更に、連鎖移動剤として、8.0mlのメチル−tert−ブチル−エーテルを添加した。そしてここに、19.1mlのジ−tert−ブチル−ペルオキシドを導入して、反応を開始した。約15分間の導入期間の後、系圧力が低下し始め、反応の開始が確認示された。その後、VDFを連続的に供給し、圧力を650psig、温度を120℃に保持した。3時間後、モノマーの供給を停止した。ここまでで、合計1,898gのVDFが供給された。
反応器の圧力が150psigに減少するまで待ってから反応器を冷却し、未反応のVDFを排出することにより。ポリフッ化ビニリデン(1c)を25質量%含有するラテックスを得た。
得られたポリフッ化ビニリデン(1c)の水接触角は82度、融点は170℃であった。
特許第5348444号明細書の実施例を参考に、フッ化アクリルポリマーラテックス(1d)を、以下のとおりに製造した。
電磁式撹拌機を備えた内容積約6Lのオートクレーブの内部を十分に窒素置換した後、脱酸素した純水2.5L及び乳化剤としてパーフルオロデカン酸アンモニウム25gを仕込み、350rpmで撹拌しながら60℃まで昇温した。次いで、単量体であるフッ化ビニリデン(VDF)70質量%及び六フッ化プロピレン(HFP)30質量%からなる混合ガスを、内圧が20kg/cm2に達するまで導入した。
その後、重合開始剤としてジイソプロピルパーオキシジカーボネートを50質量%含有する1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225cb)溶液10.0gを、窒素ガスを使用して圧入して重合を開始した。
重合中は内圧が20kg/cm2に維持されるように、VDF60.2質量%及びHFP39.8質量%からなる混合ガスを逐次圧入した。また、重合が進行するに従って重合速度が低下するため、3時間経過後に、前記と同じ重合開始剤溶液同量を窒素ガスを使用して圧入し、更に3時間反応を継続した。
その後、反応液にメタクリル酸グリシジル5質量部を添加し、更に3時間反応を継続した後、反応液を冷却すると同時に撹拌を停止し、未反応の単量体を放出した後に反応を停止して、重合体粒子を40質量%含有するラテックスを得た。
次いで、セパラブルフラスコの内部を十分に窒素置換した後、メタクリル酸メチル20質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル25質量部、及びメタクリル酸5質量部を加え、40℃において3時間ゆっくり撹拌して、これらのモノマー成分を重合体粒子に吸収させた。その後、反応系の温度を75℃に昇温して3 時間反応を行った後、更に85℃において2時間反応を行った。その後、冷却した後に反応を停止し、2.5N水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調節することにより、フッ化アクリルポリマー(1d)の粒子を40質量%含有するラテックスを得た。得られたフッ化アクリルポリマー(1d)の水接触角は68度、ガラス転移温度は−5℃あった。であった。
体積平均分子量70万のホモポリマーのポリエチレン47.5質量部と体積平均分子量25万のホモポリマーのポリエチレン47.5質量部と体積平均分子量40万のホモポリマーのポリプ口ピレン5質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたポリマー混合物99質量部に対して、酸化防止剤としてペンタエリスリチルーテトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)フロピオネー卜]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマ一等混合物を得た。
得られたポリマ一等混合物は、窒素置換した後に、窒素雰囲気下でフィーダーにより、二軸押出機へ供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10−5m2/s)を、プランジャーポンプにより押出機シリンダーに注入した。溶融混練して押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの量比が67質量%(ポリマー等混合物濃度が33質量%)となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃、スクリユ一回転数100rpm、及び吐出量12kg/hとして、混練を行った。
これら一連の処理の結果、膜厚17μm、気孔率60%、透気度84秒/100cc、平均孔径d=0.057μm、曲路率τa=1.45、孔数B=165個/μm2、突刺強度が25μm換算で5,679fのポリオレフィン樹脂多孔膜(A1)を得た。
次に、無機充填材(b−2)として、焼成カオリン(カオリナイト(Al2Si2O5(OH)4)を主成分とする湿式カオリンを高温焼成処理したもの、平均粒径1.8μm)を92.5質量部と、
樹脂バインダー(b−1)として、
前記製造例1cで得たポリフッ化ビニリデン(1c)ラテックスを固形分換算で2質量部、及び前記製造例1bで得たアクリル系ポリマー(1b)ラテックスを固形分換算で5質量部
と、
ポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製、SNディスパーサント5468、40質量%水溶液)0.5質量部(固形分換算)と
を180質量部の水に均一に分散させることにより、塗工液を調製した。
前記[多孔基材層(A)膜の製造]で得たポリオレフィン微多孔膜(A1)の片面に、前記[塗工液の調製]で得た塗工液を、マイクログラビアコーターにより塗工した。得られた塗膜を、60℃において乾燥して水を除去し、多孔基材層(A)の片面に厚み7μmの多孔層(B)をそれぞれ形成することにより、セパレータを得た。
得られたセパレータについて、上記方法により評価した。得られた結果を表1に示した。
前記実施例1において、樹脂バインダー(b−1)として、表1に記載のものを、固形分換算値としてそれぞれ表1に記載の量にて使用した他は、実施例1と同様にして塗工液を調製し、セパレータを製造した。
なお、比較例1については、非晶性バインダー(b−1−2)を2種類併用した。
得られたセパレータについて、上記方法により評価した。得られた結果を表1に示した。
表1の表面軟化温度欄における「100<」及び「<20」とは、それぞれ、表面軟化温度が100℃を超え、或いは20℃未満であったことを示す。
本発明のセパレータを具備する蓄電デバイスは、高い容量を長期間維持することができる。
従って、本発明のセパレータは、例えば非水系電解液二次電池等の電池;コンデンサ;キャパシタ等の蓄電デバイス用セパレータとして、好適に利用できる。
Claims (9)
- 多孔基材層(A)と、
無機充填剤(b−2)、フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)、及び非晶性樹脂バインダー(b−1−2)を含む多孔層(B)と
を有するセパレータであって、
前記多孔層(B)の表面軟化温度が30〜60℃であり、
多孔層(B)表面の水接触角が75度以上であり、
多孔層(B)の水接触角の全層領域平均が60〜80度であり、そして
前記多孔層(B)表面の水接触角が、前記多孔層(B)の水接触角の全層領域平均よりも大きいことを特徴とする、蓄電デバイス用セパレータ。 - 前記多孔層(B)の水接触角の全層領域平均が60〜72度である、請求項1に記載のセパレータ。
- 前記フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)と前記非晶性樹脂バインダー(b−1−2)との水接触角差が10度以上である、請求項1又は2に記載のセパレータ。
- 前記フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)の水接触角が80度以上であり、前記非晶性樹脂バインダー(b−1−2)の水接触角が70度以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセパレータ。
- 前記フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)の溶融温度が100℃以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセパレータ。
- 前記フッ素系結晶性樹脂バインダー(b−1−1)が、フッ化ビニリデン及びフッ化エチレンから成る群より選択される1種以上を含むモノマーの重合体又は共重合体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセパレータ。
- 前記セパレータの透気度が10〜500秒/100ccである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
- 電極と、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータと
が積層されて成ることを特徴とする、積層体。 - 請求項8に記載の積層体を具備することを特徴とする、蓄電デバイス。
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