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JP2024039503A - 多層多孔膜 - Google Patents

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JP2024039503A JP2022144104A JP2022144104A JP2024039503A JP 2024039503 A JP2024039503 A JP 2024039503A JP 2022144104 A JP2022144104 A JP 2022144104A JP 2022144104 A JP2022144104 A JP 2022144104A JP 2024039503 A JP2024039503 A JP 2024039503A
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渡 水谷
Wataru Mizutani
和史 三澤
Kazufumi Misawa
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Asahi Kasei Corp
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Abstract

【課題】本発明は、非水電解液電池用セパレータの薄膜化において耐熱性と非水電解液電池のサイクル性能を両立することができる多層多孔膜、並びにそれを含む非水電解液電池用セパレータ及び非水電解液電池を提供することを目的とする。【解決手段】ポリオレフィン微多孔膜と、前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に設けられた、無機粒子及び樹脂バインダを含む多孔層とを備える多層多孔膜であって、前記無機粒子の平均粒径D50が、0.01μm以上0.50μm以下であり、前記多孔層のジメチルスルホキシド(DMSO)接触角とN-メチル-2-ピロリドン(NMP)接触角から式:A=(NMP接触角)/(DMSO接触角)に従って算出される値Aが、0.010以上0.600以下である、多層多孔膜が提供される。【選択図】なし

Description

本発明は、多層多孔膜に関し、より詳細には、非水電解液電池内で正極と負極の間に配置されるセパレータとして好適に用いられる多層多孔膜に関する。
従来、非水電解液電池では、正極板と負極板との間にセパレータを介在させた発電要素に、電解液を含浸させていた。一般に、セパレータには、イオン透過性と、シャットダウン機能などの安全性とが求められるため、ポリオレフィン樹脂を含む微多孔膜を備えるセパレータが使用されている。さらに、熱暴走時の電気絶縁性、耐熱性、強度、非水電解液電池の安全性及びサイクル特性などの観点から、ポリオレフィン微多孔膜と、無機粒子及び樹脂バインダを含む多孔層とが積層された多層多孔膜もセパレータとして検討されている(特許文献1~5)。
特許文献1では、BET比表面積が3.0m/g以上6.3m/g以下の硫酸バリウム粒子と、ポリ(メタ)アクリルアミドなどの水溶性重合体と、水とを含む多孔膜用組成物をセパレータ基材に塗布することにより、セパレータを備える非水系二次電池の残存水分量を少なくして高温サイクル特性を向上させ、かつ塗布装置の摩耗を減らすことが検討されている。特許文献1に記載のBET比表面積の上限値からは、硫酸バリウム粒子の粒径が相対的に大きくなるため、塗工層を薄くし難く、また塗工層の強度を保つためには水溶性重合体が相対的に多量になるため、基材に対する塗工後の透気度上昇も大きいことが考えられる。
特許文献2では、多孔質基材の片面又は両面に設けられた耐熱性多孔質層において、平均一次粒径が0.01μm以上0.30μm未満の硫酸バリウム粒子の体積割合を50体積%~90体積%に調整することにより、電解液または電解質が分解し難く、非水系二次電池内部のガス発生を少なくし、かつ硫酸バリウム粒子とポリアクリルアミド等のバインダ樹脂との接触点が多くなり、非水系二次電池用セパレータの耐熱性に優れることが検討されている。特許文献2に記載の非水系二次電池用セパレータは、バインダ樹脂が、平均一次粒径0.30μm未満の硫酸バリウム粒子に適さず、耐熱性の向上と基材に対する透気度上昇の抑制との両立に改善の余地が残る。
特許文献3では、ポリオレフィン多孔質膜の少なくとも片面に設けられた、硫酸バリウム粒子及び合成樹脂バインダを含む耐熱性多孔層を備える二次電池用セパレータについて、硫酸バリウム粒子の平均粒径及び体積割合、ポリオレフィン多孔質膜に対する耐熱性多孔層の厚さ1μm当たりの透気度上昇の範囲、二次電池用セパレータの130℃での熱収縮率及び硫化水素濃度等を調整することにより、硫酸バリウム粒子が電極の金属箔と同様にX線を遮蔽するので、二次電池の製造におけるX線検査工程では電極との位置ずれの観察を可能とし、また比較的小さい平均粒径の硫酸バリウム粒子を耐熱性多孔層に充填できるので、熱収縮を抑制しながら含有水分量も少なくすることが検討されている。特許文献3に記載の二次電池用セパレータは、合成樹脂バインダが、平均粒径の小さい硫酸バリウム粒子に適さず、耐熱性を向上させるためには合成樹脂バインダを相対的に多量に要するため、耐熱性の向上と基材に対する透気度上昇の抑制との両立に改善の余地が残る。
特許文献4には、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に耐熱性多孔層を有する電池用セパレータにおいて、耐熱性多孔層が薄い場合にも耐熱収縮性に優れ、かつ耐熱性多孔層の脱落を少なくするという観点から、150℃/1時間の熱収縮率が5%以下であり、かつ耐熱性多孔層の脱落量が0.6mg以下である電池用セパレータが提案されている。特許文献4には、耐熱性多孔層に含まれるポリアクリルアミドだけでなく、硫酸バリウム粒子のBET比表面積も記述されているが、硫酸バリウムの表面親和性が不詳なので、バインダ樹脂との結着性の観点から、不十分な耐熱性またはイオン透過性の悪化が懸念される。
特開2015-162313号公報 国際公開第2019/146155号 国際公開第2021/029397号 特開2022-089292号公報
近年、非水電解液電池のエネルギー密度を高めるため、非水電解液電池用セパレータの薄膜化が求められている。また、非水電解液電池の安全性を確保するために、無機粒子または無機フィラーを含む層を基材表面に塗工した無機多孔層が設けられている。非水電解液電池のエネルギー密度向上およびセパレータの薄膜化の観点からは、無機多孔層の薄膜化も欠かせない。
しかしながら、近年はセパレータ基材の高強度化も進み、このような基材は熱収縮し易いため、単純に無機多孔層を薄くすると、無機多孔層の耐熱収縮性及び強度が低下し、セパレータ全体の熱収縮の抑制、すなわち安全性の確保が困難になる。そのため、熱収縮を抑えながら無機多孔層を薄膜化するためには、無機フィラーの粒径を小さくすること、および無機多孔層中のバインダ樹脂を増やすことが考えられるが、セパレータ全体の透気度も上昇してしまう。このように、セパレータ基材の高強度化に応じて無機多孔層や無機塗工層も薄くするという総合的なセパレータの薄膜化が、未だ実現していない。
上記の事情に鑑みて、本発明は、非水電解液電池用セパレータの薄膜化において耐熱性(すなわち、熱収縮抑制能力)と非水電解液電池のサイクル性能を両立することができる多層多孔膜、並びにそれを含む非水電解液電池用セパレータ及び非水電解液電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、ポリオレフィン微多孔膜と、その微多孔膜の少なくとも片面に設けられた、無機粒子及び樹脂バインダを含む多孔層とを有する多層多孔膜において、複数種の溶媒との接触角により多孔層の濡れ性または親和性を特定することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明の態様の一例を以下に列記する。
(1) ポリオレフィン微多孔膜と、前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に設けられた、無機粒子及び樹脂バインダを含む多孔層とを備える多層多孔膜であって、
前記無機粒子の平均粒径D50が、0.01μm以上0.50μm以下であり、
前記多孔層のジメチルスルホキシド(DMSO)接触角とN-メチル-2-ピロリドン(NMP)接触角から下記式:
A=(NMP接触角)/(DMSO接触角)
に従って算出される値Aが、0.010以上0.600以下である、
多層多孔膜。
(2) 前記多孔層中に前記無機粒子が占める割合が、90質量%以上100質量%以下かつ、70体積%以上100体積%以下である、項目1に記載の多層多孔膜。
(3) 前記多孔層の厚みが、0.1μm以上2.5μm以下である、項目1又は2に記載の多層多孔膜。
(4) 前記ポリオレフィン微多孔膜の目付換算突刺強度が、50gf/(g/m)以上である、項目1~3のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
(5) 前記無機粒子のBET比表面積が、3.0m/g以上100.0m/g以下である、項目1~4のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
(6) 前記多層多孔膜の150℃熱収縮率が、MD方向、TD方向共に、10%以下である、項目1~5のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
(7) 前記多孔層の透気度が、1sec/100cm以上50sec/100cm以下である、項目1~6のいずれか1項に記載の多層塗工膜
(8) 前記無機粒子が、硫酸バリウムである、項目1~7のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
(9) 前記多層多孔膜の少なくとも片面に、熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性ポリマー含有層が形成された、項目1~8のいずれか1項に記載の多層多孔膜。
(10) 前記熱可塑性ポリマーが、粒子状重合体を含み、かつ前記熱可塑性ポリマー含有層がドット状のパタンを有する、項目9に記載の多層多孔膜。
本発明によれば、驚くべきことに、非水電解液電池用セパレータの薄膜化において耐熱性と非水電解液電池のサイクル性能とを高度に両立可能であり、ひいては非水電解液電池の釘刺試験等における安全性も向上させられる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と略記する。)を例示する目的で詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。また、或る部材が特定成分を主成分として含有することは、特定成分の含有量が部材の質量を基準として50質量%以上であることを意味する。特に言及しない限り、本明細書に記載の物性又は数値は、実施例において説明される方法により測定又は算出されるものである。
<多層多孔膜>
本実施形態に係る多層多孔膜は、ポリオレフィン樹脂を主成分として含有するポリオレフィン微多孔膜(PO微多孔膜)と、上記PO微多孔膜の少なくとも片面に設けられた、無機粒子及び樹脂バインダを含む多孔層とを備える多層多孔膜である。
本実施形態に係る多層多孔膜は、非水電解液電池用セパレータ(以下、セパレータと略記することがある)として使用されることができ、多孔層について、後述する無機粒子の平均粒径、および複数種の溶媒との接触角から算出される値を特定することによって、セパレータの薄膜化において耐熱性(すなわち、熱収縮抑制能力)と非水電解液電池のサイクル性能とを両立することができる。
多層多孔膜の構造については、PO微多孔膜の片面又は両面に多孔層を有してよく、例えば、無機粒子及び樹脂バインダを含む第1多孔層と、ポリオレフィン微多孔膜(PO微多孔膜)とを含む二層構造、または第1多孔層と、PO微多孔膜と、無機粒子及び樹脂バインダを含む第2多孔層とを順に含む三層構造が挙げられる。
多層構造は、第1多孔層-PO微多孔膜の二層構造、および第1多孔層-PO微多孔膜-第2多孔層の三層構造に限定されるものではなく、所望により、例えば、第1多孔層とPO微多孔膜の間に、第2多孔層とPO微多孔膜の間に、又は多層多孔膜の少なくとも片面もしくは外側に、一つ又は複数の更なる層が形成されていてよい。更なる層としては、例えば、追加のPO微多孔膜、無機粒子及び樹脂バインダを含む追加の多孔層、ポリオレフィン(PO)以外の樹脂を50質量%以上含有する樹脂層、熱可塑性ポリマーなどの接着機能を有するバインダ成分を含む熱可塑性ポリマー含有層などが挙げられる。
本実施形態に係る多層多孔膜の構成要素について以下に説明する。
<多孔層>
多孔層は、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に設けられており、かつ無機粒子及び樹脂バインダを含む層である。
(多孔層の濡れ性または表面親和性)
本実施形態に係る多孔層のジメチルスルホキシド(DMSO)接触角とN-メチル-2-ピロリドン(NMP)接触角から下記式:
A=(NMP接触角)/(DMSO接触角)
に従って算出される値Aが、0.010以上0.600以下である。
本実施形態に係る多層多孔膜は、多孔層について、上記式で示されるようにNMPとDMSOによる接触角の比として定義される特殊な値Aが、0.010以上0.600以下であると、セパレータの薄膜化において耐熱性と非水電解液電池のサイクル性能とを高度に両立可能であり、ひいては非水電解液電池の釘刺試験等における安全性も向上させられる。
上記式に従って算出される値Aは、理論に拘束されることを望まないが、多層多孔膜において、PO微多孔膜の少なくとも片面に設けられた多孔層の独特な濡れ性または親和性を表すことが考えられる。特に、値Aは、PO微多孔膜に対して多孔層を塗工した場合には、塗工面の表面親和性または濡れ性を特定するための指標として見なすことができる。この指標のためには、NMP接触角およびDMSO接触角は、多孔層の露出面において測定されることが好ましい。より詳細には、0.010≦A≦0.600の範囲において、DMSOよりNMPに多孔層がなじみ易いことが導出される。
従来の多層多孔膜の一面での接触角は、水、有機溶媒、電解液などの多種の液体から選出された一種により測定され、検討されることが知られていた。これに対して、本発明によれば、NMP及びDMSOという二種の溶媒による接触角の比として特定された多孔層の濡れ性または表面親和性は、セパレータの薄膜化に際して熱収縮抑制能力と非水電解液電池のサイクル特性との両立に有意に関係することが見出された。0.010≦A≦0.600の範囲内での耐熱性とサイクル特性の両立は、多層多孔膜の総厚が有意に小さい場合、多孔層の厚み(T)が0.1μm~2.5μmである場合、多孔層中の樹脂バインダが有意に少ない場合、PO微多孔膜の厚み(TB)と多孔層の厚みTの比T/TBが0.05以上0.35以下である場合などに高度になる。
多孔層の値Aは、セパレータの熱収縮抑制能力と非水電解液電池のサイクル特性との高度な両立の観点から、0.100≦A≦0.580の関係を満たすことが好ましく、0.200≦A≦0.570の関係を満たすことがより好ましく、0.300≦A≦0.560の関係を満たすことが更に好ましく、0.400≦A≦0.550の関係を満たすことがより更に好ましく、0.450≦A≦0.500の関係を満たすことが特に好ましい。
多孔層のNMP接触角は、値Aの制御、及びセパレータの熱収縮抑制能力と非水電解液電池のサイクル特性の両立の観点から、好ましくは0.1°~50.0°、より好ましくは5.0°~20°、更に好ましくは8.0°~15°の範囲内である。
多孔層のDMSO接触角は、値Aの制御、及びセパレータの熱収縮抑制能力と非水電解液電池のサイクル特性の両立の観点から、好ましくは0.1°~50.0°、より好ましくは5.0°~50.0°、更に好ましくは10.0°~40.0°、特に好ましくは15.0°~30.0°の範囲内である。
多孔層の値A、NMP接触角、またはDMSO接触角は、例えば、PO微多孔膜若しくは基材への多孔層の配置プロセスまたはセパレータの製造プロセスにおいて、特定の溶媒を用いるNMR緩和時間による無機粒子原料種の選定、無機粒子の粒径制御、無機粒子と親和性の高い樹脂バインダの選定、水溶性高分子及び/又は非水溶性ラテックスバインダの使用、樹脂バインダに対する無機粒子の比率を有意に高めること(すなわち、多孔層を形成するための無機粒子含有スラリー中の樹脂バインダ量を抑制すること)等により上記で説明された数値範囲内に調整されることができる。
(無機粒子の粒径及び粒径分布)
本実施形態では、多孔層に含まれる無機粒子の平均粒径D50が、0.01μm以上0.50μm以下であると、多孔層が0.010≦A≦0.550の関係を満たし易くなり、そして平均粒径D50が0.50μm以下の水準で小さくなるほど、無機粒子と樹脂バインダの接着点や多孔層とPO微多孔膜の決着点や無機粒子同士の接点が増加して耐熱性が向上したり、多孔層が小孔径化して非水電解液電池の電流密度も均一化することによってサイクル性能が向上したりする。
0.01μm≦D50≦0.50μmの範囲内での耐熱性及びサイクル性能の向上は、多層多孔膜の総厚が有意に小さい場合、多孔層の厚み(T)が0.1μm~2.5μmである場合、多孔層中の樹脂バインダが有意に少ない場合、PO微多孔膜の厚み(TB)と多孔層の厚みTの比T/TBが0.05以上0.35以下である場合などに顕著である。
無機粒子の平均粒径D50は、セパレータ又は多層多孔膜の薄膜化に際して耐熱性及びサイクル性能を更に向上させるという観点から、0.01μm≦D50≦0.50μmの関係を満たすことが好ましく、0.10μm≦D50≦0.45μmの関係を満たすことがより好ましく、0.20μm≦D50≦0.40μmの関係を満たすことが更に好ましく、0.25μm~0.35μmの範囲内にあることが最も好ましい。
無機粒子の平均粒径D50に対する平均粒径D90の比D90/D50は、シャープな粒径分布の観点、およびセパレータ又は多層多孔膜の薄膜化に際して耐熱性又はサイクル性能を更に向上させるという観点から、1.6以上2.5以下の範囲内にあることが好ましく、1.7~2.3の範囲にあることがより好ましく、1.8~2.1の範囲にあることが更に好ましい。
無機粒子の平均粒径D50に対する平均粒径D10の比D10/D50は、多孔層において小粒径の粒子を相対的に減らして、多孔層によるPO微多孔膜の透気度上昇を抑制するという観点から、0.2以上0.8以下であることが好ましく、0.3以上0.7以下であることがより好ましく、0.4以上0.6以下であることが更に好ましい。
無機粒子の平均粒径D90は、セパレータの薄膜化における熱収縮抑制能力及び強度の向上ならびに非水電解液電池のサイクル性能及び安全性の向上の観点から、好ましくは0.016μm~1.5μm、より好ましくは0.085μm~1.15μm、更に好ましくは0.18μm~0.84μmの範囲にある。
無機粒子の平均粒径D10は、セパレータの薄膜化における熱収縮抑制能力及び強度の向上ならびに非水電解液電池のサイクル性能及び安全性の向上の観点から、好ましくは0.002μm~0.48μm、より好ましくは0.015μm~0.35μm、更に好ましくは0.04μm~0.24μmの範囲にある。
上記で説明された無機粒子の粒径および粒径分布は、例えば、微多孔膜若しくは基材への多孔層の配置プロセスまたはセパレータの製造プロセスにおいて、NMR緩和時間による無機粒子原料種の選定、無機粒子含有スラリー中の無機粒子の分散・攪拌・粒径制御等により達成され得る。
具体的には、無機粒子の粒径分布を上記のように調整する方法としては、例えば、ボールミル・ビーズミル・ジェットミル等を用いて無機粒子を粉砕し、所望の粒径分布を得る方法、複数の粒径分布の無機粒子を調製した後にブレンドする方法等が挙げられる。
(無機粒子)
多孔層に使用する無機粒子としては、特に限定されないが、耐熱性及び電気絶縁性が高く、かつ非水電解液電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。
無機粒子の材料としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、及び酸化鉄などの酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、及び窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム又はベーマイト、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、及びケイ砂等のセラミックス;並びにガラス繊維などが挙げられる。これらの中でも、アルミナ、ベーマイト、及び硫酸バリウムから成る群から選ばれる少なくとも1つが、非水電解液電池内での安定性の観点から好ましく、そして上記の値Aを制御して多孔層の塗工面について特定の親和性を実現し易くするという観点からは硫酸バリウムがより好ましい。硫酸バリウムは、限定されるものではないが、例えば、比重が約4.50でよく、そして表面処理の有無を問わない。また、ベーマイトとしては、非水電解液電池の特性に悪影響を与えるイオン性の不純物を低減できる合成ベーマイトが好ましい。無機粒子は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
無機粒子の形状としては、例えば、板状、鱗片状、多面体、針状、柱状、粒状、球状、紡錘状、ブロック状等が挙げられ、上記形状を有する無機粒子を複数種組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、透過性と耐熱性のバランスの観点からは、ブロック状が好ましく、硫酸バリウムの場合には概ね粒状であることが好ましい。上記形状を有する硫酸バリウムを複数種組み合わせて用いてもよい。
無機粒子のアスペクト比としては、1.0以上3.0以下であることが好ましく、より好ましくは、1.1以上2.5以下である。アスペクト比が3.0以下であることで、多層多孔膜の水分吸着量を抑制し、非水電解液電池のサイクルを重ねた時の容量劣化を抑制する観点、及びPO微多孔膜の融点を超えた温度における変形を抑制する観点から好ましい。
無機粒子のBET比表面積は、3.0m/g以上100.0m/g以下であることが好ましく、5.00m/g以上50.0m/g以下であることがより好ましく、6.00m/g以上30.00m/g以下であることが更に好ましく、6.00~20.00m/gの範囲内にあることがより更に好ましく、6.00~15.00m/gの範囲内にあることがなお更に好ましく、6.00~12.00m/gの範囲内にあることが著しく好ましく、6.31~6.99m/gの範囲内にあることが特に好ましく、6.31~6.49m/gの範囲内にあることが最も好ましい。無機粒子のBET比表面積が3.0m/g以上であると、多孔層が小孔径化し、非水電解液電池の電流密度が均一化することで、サイクル性能が向上する傾向にあり、かつ多孔層において無機粒子同士の接点が増加し、耐熱性が向上する傾向にある。無機粒子のBET比表面積が上記の範囲内にあると、本実施形態に適した粒径又は粒度分布を実現し易い。
NMPとDMSOのそれぞれに対して無機粒子を添加してパルスNMRを測定するときに、下記式:
B=Rsp(NMP)/Rsp(DMSO)
により算出される値Bは、上記で説明された無機粒子の粒径および粒径分布の調整の観点から、好ましくは1.70~4.00、より好ましくは1.80~3.60、更に好ましくは1.90~3.30、特に好ましくは2.00~3.00の範囲内にある。
無機粒子が多孔層中に占める割合は、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、93質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、97質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。なお、無機粒子が多孔層中に占める割合の上限は、樹脂バインダの固形分に応じて、例えば、100質量%未満または99質量%以下でよい。無機粒子が多孔層中に占める質量割合が上記の範囲内にあると、相対的に樹脂バインダの割合が少なくなり、上記の値Aまたは無機粒子の粒径を制御し易くなり、かつPO微多孔膜に対する多孔膜の透気度上昇や電池抵抗が抑制されて、サイクル特性が向上する。
多孔層の空隙を除いた体積を100体積%として、無機粒子の割合は、70体積%以上100体積%以下であることが好ましく、75体積%以上95体積%以下であることがより好ましく、80体積%以上93体積%以下であることが更に好ましく、85体積%以上92体積%以下であることがより更に好ましく、90体積%より大きく91体積%以下であることが特に好ましい。無機粒子が多孔層中に占める体積割合が上記の範囲内にあると、樹脂バインダに対する無機粒子の比率が増すため、上記で説明された値Aや無機粒子の粒径を調整し易くなり、かつ多孔層によるPO微多孔膜の透気度上昇を抑制して、多層多孔膜の電気抵抗を小さくすることができる。
(樹脂バインダ)
樹脂バインダは、多孔層において複数の無機粒子同士を結び付けたり、多孔層とPO微多孔膜を結び付けたりする材料である。樹脂バインダの種類としては、多層多孔膜がセパレータとして使用される際、非水電解液電池の電解液に対して不溶であり、且つ非水電解液電池の使用範囲で電気化学的に安定なものを用いることが好ましい。
樹脂バインダの具体例としては、以下の1)~7)が挙げられる。
1)ポリオレフィン:例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンラバー、及びこれらの変性体;
2)共役ジエン系重合体:例えば、スチレン-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びその水素化物;
3)アクリル系重合体:例えば、メタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド;
4)ポリビニルアルコール系樹脂:例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル;
5)含フッ素樹脂:例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体;
6)セルロース誘導体:例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース;
7)融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂あるいは融点を有しないが分解温度が200℃以上のポリマー:例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリルアミド。
短絡時の安全性をさらに向上させるという観点からは、3)アクリル系重合体、5)含フッ素樹脂、及び7)ポリマーとしてのポリアミドが好ましい。ポリアミドとしては、耐久性の観点から全芳香族ポリアミドなどのアラミド樹脂、中でもポリメタフェニレンイソフタルアミドが好適である。
樹脂バインダと電極との適合性の観点からは上記2)共役ジエン系重合体が好ましく、耐電圧性の観点からは上記3)アクリル系重合体及び5)含フッ素樹脂が好ましい。
上記2)共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物を単量体単位として含む重合体である。
上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換及び側鎖共役ヘキサジエン類等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、特に1,3-ブタジエンが好ましい。
上記3)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系化合物や(メタ)アクリルアミドを単量体単位として含む重合体であり、セパレータ抵抗の観点からポリフッ化ビニリデン(PVDF)やアラミド樹脂より好ましい。上記(メタ)アクリル系化合物とは、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルから成る群から選ばれる少なくとも一つを示す。
上記3)アクリル系重合体に用いられる(メタ)アクリル酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸を挙げることができる。
上記3)アクリル系重合体に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアメタクリレート;エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート;が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特に2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)、ブチルアクリレート(BA)が好ましい。
アクリル系重合体は、釘刺試験での安全性の観点から、(メタ)アクリルアミド、EHA又はBAを主な構成単位として含むポリマーであることが好ましい。主な構成単位とは、ポリマーを形成するための全原料に対して40モル%以上を占めるモノマーと対応するポリマー部分をいう。
上記2)共役ジエン系重合体および3)アクリル系重合体は、これらと共重合可能な他の単量体をも共重合させて得られるものであってもよい。用いられる共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特に不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体が好ましい。不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、上記2)共役ジエン系重合体は、他の単量体として上記(メタ)アクリル系化合物を共重合させて得られるものであってもよい。
本実施形態に係る多孔層において、樹脂バインダは、水溶性高分子または非水溶性高分子のいずれかであることが好ましく、水溶性高分子と非水溶性高分子の両方ともに(メタ)アクリルアミド骨格を持つことがより好ましく、アクリル系重合体のラテックスの形態であるか、またはポリ(メタ)アクリルアミドを含むことが更に好ましい。アクリル系重合体のラテックスは、常温を超えるような高温時でさえも複数の無機粒子間の結着力が強く、熱収縮を抑制するという観点から好ましい。一般に、ポリ(メタ)アクリルアミドは、水溶性高分子として分類されることが知られている。無機粒子の小粒径化に応じて、ポリ(メタ)アクリルアミド等の水溶性高分子を多孔層に含有させることによって、上記で説明された粒径分布を有する無機粒子に適合させることができる。
ポリ(メタ)アクリルアミドは、両性、カチオン性、アニオン性、またはノニオン性のいずれでもよく、中でもアニオン性が好ましい。
樹脂バインダは単独重合体または共重合体のいずれでもよいため、樹脂バインダがポリ(メタ)アクリルアミドを含むことは、樹脂バインダがポリ(メタ)アクリルアミドのみから成るか、樹脂バインダがポリ(メタ)アクリルアミドと他の高分子の混合物であるか、(メタ)アクリルアミドと他の単量体とが共重合されているか、または樹脂バインダのポリマー骨格の一部に、(メタ)アクリルアミドに由来する構成要素の繰り返し単位を含んでよい。
水溶性高分子の重量平均分子量は、複数の無機粒子間の結着力および熱収縮抑制能力の観点から、1,000~3,000,000の範囲内にあることが好ましく、その下限値としては、10,000以上がより好ましく、100,000以上が更に好ましく、150,000以上が特に好ましく、その上限値としては、2,000,000以下がより好ましく、1,000,000以下が更に好ましく、700,000以下が特に好ましい。
多孔層中に含まれる水溶性高分子の質量割合Waは、複数の無機粒子間の結着力および熱収縮抑制能力の観点から、0質量%を超えて5.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることが更に好ましい。
本実施形態で使用される樹脂バインダは、熱収縮抑制能力および透過性の観点から、非水溶性バインダを含むことが好ましい。非水溶性バインダは、上記具体例1)~7)から非水溶性の単数種または複数種を選択して構成されることができ、非水溶性バインダ粒子のラテックスの形態であることがより好ましく、非水溶性アクリル系重合体粒子のラテックスであることが更に好ましい。
ラテックスにおける非水溶性バインダ粒子の平均粒径D50は、0.01μm~0.50μmの範囲内にあることが好ましく、また、小粒径ほど熱収縮抑制の観点で好ましく、他方では、大粒径ほど透過性の観点で好ましい。熱収縮抑制能力と透過性の両立の観点から、ラテックスにおいて、粒径分布の異なる二種類の非水溶性バインダを使用することがより好ましい。
二種類の非水溶性バインダを使用する場合、相対的に小粒径の第一の非水溶性バインダは、熱収縮抑制の観点から、0.01μm~0.50μmの平均粒径D50を有することが好ましい。
他方、相対的に大粒径の第二の非水溶性バインダは、透過性の観点、および多孔層の平均厚みより突出して、セパレータと電極との間に空隙を形成し、この空隙により、非水電解液電池の充放電等に伴い電極が膨張・収縮することの影響を緩和して、サイクル特性を向上させるという観点から、無機粒子の平均粒径D50以上の平均粒径D50を有することが好ましい。上記と同様の観点から、第二の非水溶性バインダの平均粒径D50は、好ましくは0.3μm~5.0μm、より好ましくは0.5μm~4.0μm、更に好ましくは0.50μm~3.0μmの範囲内にある。
多孔層中に含まれる非水溶性バインダの質量割合Wbは、熱収縮抑制能力および透過性の観点から、0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることが更に好ましい。
多孔層中の、水溶性高分子の質量割合が、非水溶性バインダの質量割合よりも高い(すなわち、多孔層中に含まれる水溶性高分子の質量割合Waと非水溶性バインダの質量割合Wbの比Wb/Waが、1.0未満)であることが好ましく、比Wb/Waは、0.0以上1.0未満であることがより好ましく、0.6より小さいことが更に好ましく、0.5より小さいことが特に好ましく、0.3未満であることが最も好ましい。多孔層に水溶性高分子が含まれ、かつ水溶性高分子の質量割合が非水溶性バインダの質量割合より大きいほど、無機粒子を樹脂バインダが被膜状に覆うため、両者の接触点数もより増加して、多層多孔膜又はセパレータの耐熱性が更に向上し得る。
多孔層中に含まれる水溶性高分子の体積割合Vaと非水溶性バインダの体積割合Vbの比Vb/Vaが、1未満であることが好ましく、0.8より小さいことがより好ましく、0.6より小さいことが更に好ましく、0.4より小さいことが特に好ましく、0付近または0であることが最も好ましい。多孔層に水溶性高分子が含まれ、かつ水溶性高分子の体積割合が非水溶性バインダの体積割合より大きいほど、無機粒子を樹脂バインダが被膜状に覆うため、両者の接触点数もより増加して、多層多孔膜又はセパレータの耐熱性が更に向上し得る。
(分散剤)
多孔層は、所望により、無機粒子及び樹脂バインダに加えて、分散剤を含んでよい。分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸塩などのポリカルボン酸塩、スルホン酸塩、ポリオキシエーテルなどが挙げられる。分散剤の含有量としては、多孔層の固形分を基準として、0.0質量%~5.0質量%の範囲内にあることが好ましく、0.0質量%を超えて1.0質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%~0.7質量%の範囲内にあることが更に好ましい。
(多孔層の諸物性)
多孔層の空隙を除いた体積を100体積%として、樹脂バインダの割合は、0.1体積%以上10体積%未満であることが好ましく、0.1体積%以上9体積%以下であることがより好ましく、0.1体積%以上4体積%未満であることが更に好ましい。樹脂バインダが多孔層中に占める体積割合が上記の範囲内にあると、樹脂バインダに対する無機粒子の比率が増すため、上記で説明された値Aや無機粒子の粒径分布が調整され易くなり、かつ多孔層による微多孔膜の透気度上昇を抑制して、多層多孔膜の電気抵抗を小さくすることができる。
多孔層の厚みTは、PO微多孔膜の少なくとも片面当たり、0.1μm以上2.5μm以下であることが好ましく、0.5μm~2.4μmの範囲内にあることがより好ましく、0.7μm~2.0μmの範囲内にあることが更に好ましく、1.0μm~1.5μmの範囲内にあることが特に好ましい。上記で説明された値A及び無機粒子の粒径分布を有する多孔層の厚みTが2.5μm以下であると、多層多孔膜又はセパレータの電気抵抗も低くなり、非水電解液電池のサイクル特性が向上することがある。
多孔層の透気度は、1sec/100cm以上50sec/100cm以下であることが好ましく、より好ましくは1sec/100cm以上40sec/100cm以下、更に好ましくは3sec/100cm~30sec/100cm、より更に好ましくは5sec/100cm~25sec/100cm、特に好ましくは10sec/100cm~20sec/100cmの範囲内にある。多孔層の透気度が40sec/100cm以下であることで、電気抵抗が低くなり、ひいては非水電解液電池のサイクル特性が向上する傾向にある。同様に、多孔層の厚み当たりの透気度は、好ましくは1~30(sec/100cm)/μm、より好ましくは1~25(sec/100cm)/μm、更に好ましくは3~20(sec/100cm)/μm、特に好ましくは3~15(sec/100cm)/μmの範囲内にある。
多孔層中の層密度は、1.0g/(m・μm)以上5.0g/(m・μm)以下であることが好ましく、より好ましくは1.5g/(m・μm)以上4.0g/(m・μm)以下、更に好ましくは2.0g/(m・μm)以上3.0g/(m・μm)以下である。多孔層中の層密度が1.0g/(m・μm)以上であることで、PO微多孔膜の融点を超えた温度における変形を抑制する観点から好ましく、5.0g/(m・μm)以下であることで多孔層のイオン透過性を維持し、サイクルを重ねた時の容量劣化を抑制する観点から好ましい。
多層多孔膜またはPO微多孔膜からの多孔層の180°剥離強度は、好ましくは100N/m~800N/m、より好ましくは200N/m~750N/m、更に好ましくは250N/m~700N/m、より更に好ましくは300N/m~500N/m、特に好ましくは400N/m~600N/mの範囲内である。「180°剥離強度」とは、被覆層の基材に対向する面が基材に対して180°の角を成すように被覆層を剥離したときの強度である。180°剥離強度が100N/m以上であることにより、電極との接着力が高まり、熱収縮が抑制される。
<ポリオレフィン微多孔膜>
ポリオレフィンを主成分として含有する多孔膜(PO微多孔膜)は、ポリオレフィンを含み、好ましくはポリオレフィンから構成される。ポリオレフィンの形態は、ポリオレフィンの微多孔質体、例えば、ポリオレフィンの膜、ポリオレフィン系繊維の織物(織布)、ポリオレフィン系繊維の不織布などであってよい。ポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテン等をモノマーとして用いて得られるホモ重合体、共重合体、又は多段重合体等が挙げられ、これらの重合体を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。ポリオレフィンは、セパレータとして使用可能なPO微多孔膜の溶融粘度、シャットダウン及びメルトダウン特性の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの共重合体からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましく、ポリプロピレンを含むことがより好ましく、エチレン-プロピレン共重合体、又はポリエチレンとポリプロピレンの混合物であることが更に好ましい。
ポリエチレンの具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、高分子量ポリエチレン(HMWPE)、及び超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等が挙げられる。
本願明細書において、高分子量ポリエチレン(HMWPE)とは、粘度平均分子量(Mv)が10万以上のポリエチレンを意味する。一般に、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)のMvは、100万以上であるため、本願明細書における高分子量ポリエチレン(HMWPE)は、定義上、UHMWPEを包含する。
本願明細書において、高密度ポリエチレンとは密度0.942~0.970g/cm3のポリエチレンをいう。なお、本発明においてポリエチレンの密度とは、JIS K7112(1999)に記載のD)密度勾配管法に従って測定した値をいう。
ポリプロピレンの具体例としては、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、及びアタクティックポリプロピレン等が挙げられる。
エチレンとプロピレンとの共重合体の具体例としては、エチレン-プロピレンランダム共重合体、及びエチレンプロピレンラバー等が挙げられる。
PO微多孔膜に含まれるポリオレフィン(PO)がポリエチレン(PE)を含む場合、PE含有量は、PO微多孔膜を構成する樹脂成分の全質量を基準として、50質量%以上100質量%以下であり、ヒューズ特性又はメルトダウン特性の観点から、好ましくは70質量%以上100質量%以下、より好ましくは80質量%以上100質量%以下、更に好ましくは90質量%以上100質量%以下、特に好ましくは93質量%以上100質量%以下である。
PO微多孔膜に含まれるPOがポリプロピレン(PP)を含む場合、PP含有量は、PO微多孔膜を構成する樹脂成分の全質量を基準として、0質量%以上50質量%未満であり、溶融粘度及びヒューズ特性の観点から、好ましくは0質量%以上30質量%以下、より好ましくは0質量%以上20質量%以下、更に好ましくは0質量%を超えて10質量%以下、より更に好ましくは0質量%を超えて7質量%以下である。
PO微多孔膜は、上記に挙げたポリオレフィンの他にも、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂を更に含んでもよい。
PO微多孔膜の190℃でのメルトインデックス(MI)は、製膜時にPO樹脂組成物の高粘度を抑制して不良品の発生を抑制するという観点から、0.01g/10min~0.70g/10minであることが好ましく、0.05g/10min~0.60g/10minであることがより好ましく、0.05g/10min~0.40g/10minの範囲内にあることが更に好ましく、0.05g/10min~0.30g/10minの範囲内にあることがより更に好ましく、0.05g/10min~0.20g/10minの範囲内にあることが特に好ましい。
PO微多孔膜の目付(g/m)に換算されたときの突刺強度(以下、目付換算突刺強度という。)は、50gf/(g/m)以上であることが好ましく、55gf/(g/m)以上であることがより好ましく、60gf/(g/m)以上であることが更に好ましく、70gf/(g/m)以上であることが特に好ましい。PO微多孔膜の目付換算突刺強度が、50gf/(g/m)以上のように高いほど、多層多孔膜をセパレータとして備える非水電解液電池の釘刺試験において安全性が向上し、かつPO微多孔膜又は多層多孔膜が緻密な孔構造となり、サイクル特性が向上する。目付換算突刺強度の上限は、限定されるものではないが、例えば、200gf/(g/m)以下、150gf/(g/m)以下、120gf/(g/m)以下、110gf/(g/m)以下、又は100gf/(g/m)以下でよい。
PO微多孔膜の目付に換算されていない突刺強度(以下、単に突刺強度という。)については、その下限値が、好ましくは100gf以上、より好ましくは150gf以上、更に好ましくは200gf以上である。100gf以上の突刺強度は、PO微多孔膜の破断を抑制する観点から好ましい。また、PO微多孔膜の突刺強度の上限値は、製膜時の安定性の観点から、好ましくは1000gf以下、より好ましくは600gf以下、更に好ましくは500gf以下である。下限値は、製膜および電池製造の安定生産できる値であれば用いることができる。上限値は他の特性とのバランスで設定される。
PO微多孔膜の厚みTBは、耐電圧性を確保するという観点から、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは2.0μm以上、更に好ましくは3.0μm以上、より更に好ましくは4.0μm以上、特に好ましくは4.5μm以上であり、また非水電解液電池の容量を確保するという観点から、好ましくは30.0μm以下、より好ましくは20.0μm以下、更に好ましくは16.0μm以下、より更に好ましくは12.0μm以下、特に好ましくは9.0μm以下である。PO微多孔膜の厚みTBは、例えば、ダイリップ間隔、延伸工程における延伸倍率等を制御することにより調整されることができる。
PO微多孔膜の気孔率は、透過性の観点から、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上、特に好ましくは40%以上であり、また膜強度の観点から、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましく60%以下、特に好ましくは50%以下である。PO微多孔膜の気孔率は、例えば、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の混合比率、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、及び熱固定時の緩和率等を制御すること、並びにこれらを組み合わせることにより調整されることができる。
PO微多孔膜の透気度は、複数の電極間にPO微多孔膜を介して過剰な電流が流れないようにするという観点から、好ましくは10sec/100cm以上、より好ましくは30sec/100cm以上、更に好ましくは50sec/100cm以上、特に好ましくは70sec/100cm以上であり、また透過性の観点から、好ましくは300sec/100cm以下、より好ましくは250sec/100cm以下、更に好ましくは200sec/100cm以下、特に好ましくは150sec/100cm以下である。
PO微多孔膜の粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは400,000以上1,300,000以下、より好ましくは450,000以上1,200,000以下、更に好ましくは500,000以上1,150,000以下である。PO微多孔膜のMvが400,000以上であると、溶融成形の際のメルトテンションが大きくなり、成形性が良好になると共に、重合体同士の絡み合いによって高い膜強度が得られる傾向にある。Mvが1,300,000以下であると、原料の均一な溶融混練が容易となり、シート成形性、特に厚み安定性に優れる傾向にあるだけでなく、非水電解液電池用セパレータとして使用した際に、温度上昇時に孔が閉塞され易く、良好なヒューズ機能が得られる傾向にもある。
PO微多孔膜の平均孔径は、好ましくは0.03μm以上0.70μm以下、より好ましくは0.04μm以上0.20μm以下、更に好ましくは0.05μm以上0.10μm以下、より更に好ましくは0.055μm以上0.09μm以下である。PO微多孔膜の平均孔径は、イオン伝導性と耐電圧性の観点から、0.03μm以上0.70μm以下であることが好ましい。平均孔径は、例えば、ポリオレフィンの組成比、ポリオレフィン又は可塑剤の種類、押出シートの冷却速度、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、及び熱固定時の緩和率等を制御すること、並びにこれらを組み合わせることにより調整することができる。
PO微多孔膜は、電子伝導性が小さく、イオン伝導性を有し、有機溶媒に対する耐性が高く、かつ孔径の微細なものが好ましい。また、PO微多孔膜は、単独でリチウムイオン二次電池用セパレータとして利用することができ、特にラミネート型リチウムイオン二次電池用セパレータとして好適に利用することができる。
<熱可塑性ポリマー含有層>
一実施形態に係る多層多孔膜の少なくとも片面又は外側には、所望により、熱可塑性ポリマー含有層を備えてよい。熱可塑性ポリマー含有層は、熱可塑性ポリマーを含む。熱可塑性ポリマー層は、所望により、粒子状重合体を含んでよく、かつ/又はドット状のパタンを有してよい。
(熱可塑性ポリマー)
熱可塑性ポリマーは、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、α-ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂とこれらを含むコポリマー;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンをモノマー単位として含むジエン系ポリマー又はこれらを含むコポリマー及びその水素化物;アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルなどをモノマー単位として含むアクリル系ポリマー又はこれらを含むコポリマー及びその水素化物;エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類;エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル等の融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。また、熱可塑性ポリマーを合成する際に使用するモノマーとして、ヒドロキシル基やスルホン酸基、カルボキシル基、アミド基、シアノ基を有するモノマーを用いることもできる。
これらの熱可塑性ポリマーのうち、電極活物質との結着性及び強度や柔軟性に優れることから、ジエン系ポリマー、アクリル系ポリマー又はフッ素系ポリマーが好ましい。
(ジエン系ポリマー)
ジエン系ポリマーは、特に限定されないが、例えば、ブタジエン、イソプレンなどの共役の二重結合を2つ有する共役ジエンを重合してなるモノマー単位を含むポリマーである。共役ジエンモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエンなどが挙げられる。これらは単独で重合しても共重合してもよい。
ジエン系ポリマー中の共役ジエンを重合してなるモノマー単位の割合は、特に限定されないが、例えば、全ジエン系ポリマー中40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
上記ジエン系ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリブタジエンやポリイソプレンなどの共役ジエンのホモポリマー及び共役ジエンと共重合可能なモノマーとのコポリマーが挙げられる。共重合可能なモノマーは、特に限定されないが、例えば、後述の(メタ)アクリレートモノマーや下記のモノマー(以下、「その他のモノマー」ともいう。)を挙げることができる。
「その他のモノマー」としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β-不飽和ニトリル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸類;スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物;メチルアクリレート、メチルメタクリレート等のアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル化合物;β-ヒドロキシエチルアクリレート、β-ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシアルキル基含有化合物;アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸などのアミド系モノマーなどが挙げられ、これらを1種あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(アクリル系ポリマー)
アクリル系ポリマーは、特に限定されないが、好ましくは(メタ)アクリレートモノマーを重合してなるモノマー単位を含むポリマーである。熱可塑性ポリマー含有層が、熱可塑性ポリマーとしてアクリル系ポリマーを含む場合、(メタ)アクリル酸エステル単量体の単量体単位を含む共重合体を含むのが好ましい。熱可塑性ポリマー含有層の熱可塑性ポリマーが、(メタ)アクリル酸エステル単量体の単量体単位を含む共重合体を含むと、多層多孔膜又はセパレータが低目付の場合での接着力が向上するので、好ましい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸又はメタクリル酸」を示し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を示す。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート;アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート(GMA)等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリレートモノマーを重合してなるモノマー単位の割合は、特に限定されないが、全アクリル系ポリマーの例えば40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリレートモノマーのホモポリマー、これと共重合可能なモノマーとのコポリマーが挙げられる。
共重合可能なモノマーとしては、上記ジエン系ポリマーの項目で列挙した「その他のモノマー」が挙げられ、これらを1種あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(フッ素系ポリマー)
フッ素系ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、フッ化ビニリデンのホモポリマー、これと共重合可能なモノマーとのコポリマーが挙げられる。フッ素系ポリマーは、電気化学的安定性の観点から好ましい。
フッ化ビニリデンを重合してなるモノマー単位の割合は、特に限定されないが、例えば、40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアクリル酸、パーフルオロメタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸のフルオロアルキルエステル等のフッ素含有エチレン性不飽和化合物;シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル等のフッ素非含有エチレン性不飽和化合物;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のフッ素非含有ジエン化合物等を挙げることができる。
フッ素系ポリマーのうち、フッ化ビニリデンのホモポリマー、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー等が好ましい。特に好ましいフッ素系ポリマーは、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーであり、そのモノマー組成は、通常、フッ化ビニリデン30~90質量%、テトラフルオロエチレン50~9質量%及びヘキサフルオロプロピレン20~1質量%である。これらのフッ素樹脂粒子は、単独で又は2種以上を混合して使用しても良い。
また、上記熱可塑性ポリマーを合成する際に使用するモノマーとして、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、アミド基、又はシアノ基を有するモノマーを用いることもできる。
ヒドロキシ基を有するモノマーは、特に限定されないが、例えば、ペンテンオール等のビニル系モノマーを挙げることができる。
カルボキシル基を有するモノマーは、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のエチレン性二重結合を有する不飽和カルボン酸、ペンテン酸等のビニル系モノマーを挙げることができる。
アミノ基を有するモノマーは、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸2-アミノエチル等を挙げることができる。
スルホン酸基を有するモノマーは、特に限定されないが、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリススルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
アミド基を有するモノマーは、特に限定されないが、例えば、アクリルアミド(AM)、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミドなどが挙げられる。
シアノ基を有するモノマーは、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル(AN)、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-シアノエチルアクリレート等を挙げることができる。
熱可塑性ポリマーは、ポリマーを単独で又は2種類以上混合して使用してもよいが、ポリマーを2種類以上含むことが好ましい。熱可塑性ポリマーは、溶媒と共に使用されてよく、溶媒としては、熱可塑性ポリマーを均一かつ安定に分散できるものでよく、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、水、エタノール、トルエン、熱キシレン、塩化メチレン、ヘキサン等が挙げられ、中でも水系溶媒が好ましい。また、熱可塑性ポリマーは、ラテックスの形態で使用されることができる。
(熱可塑性ポリマーのガラス転移温度)
熱可塑性ポリマー含有層を構成する熱可塑性ポリマーは、基材への結着性とブロッキング抑制及びセパレータの電極との接着力を発現しつつ、非水電解液電池において電極とセパレータ間の距離を確保でき、かつ電解液の注液時間を短くするという観点から、少なくとも二つのガラス転移温度を有し、ガラス転移温度のうち少なくとも一つは20℃以下の領域に存在し、かつガラス転移温度のうち少なくとも一つは30℃以上120℃以下の領域に存在するという熱特性を有することが好ましい。
ここで、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)で得られるDSC曲線から決定される。なお、本明細書では、ガラス転移温度をTgと表現する場合もある。
具体的には、DSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の変曲点における接線との交点により決定される。より詳細には、実施例に記載の方法を参照することができる。
ここで、「ガラス転移」はDSCにおいて試験片であるポリマーの状態変化に伴う熱量変化が吸熱側に生じたものを指す。このような熱量変化はDSC曲線において階段状変化形状又は階段状変化とピークとが組み合わさった形状として観測される。
「階段状変化」とは、DSC曲線において、曲線がそれまでのベースラインから離れ新たなベースラインに移行するまでの部分を示す。なお、ピーク及び階段状変化の組み合わさった形状も含む。
「変曲点」とは、階段状変化部分のDSC曲線のこう配が最大になるような点を示す。また、階段状変化部分において上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点と表現することもできる。
「ピーク」とは、DSC曲線において、曲線がベースラインから離れてから再度ベースラインに戻るまでの部分を示す。
「ベースライン」とは、試験片に転移及び反応を生じない温度領域のDSC曲線のことを示す。
一実施形態では、用いる熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうち少なくとも一つが20℃以下の領域に存在することにより、微多孔膜との密着性に優れており、かつ、ブロッキングが抑制される結果、セパレータと電極との密着性に優れるという効果を奏する。ガラス転移温度は、ハンドリング性及び耐ブロッキング性の観点で-100℃以上が好ましく、又は-50℃以上がより好ましく、又は-40℃以上がさらに好ましく、又は-6℃以上が特に好ましく、微多孔膜との密着性の観点で20℃以下が好ましく、又は10℃以下がより好ましく、又は0℃以下が特に好ましい。
一実施形態では、用いる熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうち少なくとも一つが30℃以上120℃以下の領域に存在することにより、セパレータと電極との接着性及びハンドリング性に優れ、さらには非水電解液電池において電極表面とセパレータ基材表面間の距離を維持でき、かつ電解液の注液時間を短くすることができる。ガラス転移温度は、ハンドリング性及び耐ブロッキング性の観点で30℃以上が好ましく、又は40℃以上がより好ましく、又は70℃以上が更に好ましく、又は95℃以上が特に好ましく、接着力の観点で150℃以下が好ましく、又は130℃以下がより好ましく、又は120℃以下が特に好ましい。
熱可塑性ポリマーが2つのガラス転移温度を有することは、例えば、2種類以上の熱可塑性ポリマーをブレンドする方法等によって達成できるが、この方法に限定されない。
特に、ポリマーブレンドは、ガラス転移温度の高いポリマーと低いポリマーを組み合せることにより、熱可塑性ポリマー全体のガラス転移温度を制御できる。また、熱可塑性ポリマー全体に複数の機能を付与できる。例えば、ブレンドの場合は、特にガラス転移温度を30℃以上の領域に持つポリマーと、ガラス転移温度を20℃以下の領域に持つポリマーを2種類以上ブレンドすることで、耐ベタツキ性とポリオレフィン微多孔膜への塗れ性を両立することができる。ブレンドする場合の混合比としてはガラス転移温度を30℃以上の領域に持つポリマーと、ガラス転移温度を20℃以下の領域に持つポリマーとの比が0.1:99.9~99.9:0.1の範囲であることが好ましく、より好ましくは、5:95~95:5であり、さらに好ましくは50:50~95:5であり、よりさらに好ましくは60:40~90:10である。また、粘性の高いポリマーと弾性の高いポリマーとを組み合わせて粘弾性の制御をすることもできる。
一実施形態において、熱可塑性ポリマーのガラス転移温度、すなわちTgは、例えば、熱可塑性ポリマーを製造するのに用いるモノマー成分及び各モノマーの投入比を変更することにより適宜調整できる。すなわち、熱可塑性ポリマーの製造に用いられる各モノマーについて一般に示されているそのホモポリマーのTg(例えば、「ポリマーハンドブック」(A WILEY-INTERSCIENCE PUBLICATION)に記載)とモノマーの配合割合から概略推定することができる。例えば約100℃のTgのポリマーを与えるスチレン、メチルメタクリレ-ト、及びアクリルニトリルなどのモノマーを高比率で配合したコポリマーは高いTgのものが得られ、例えば約-80℃のTgのポリマーを与えるブタジエンや約-50℃のTgのポリマーを与えるn-ブチルアクリレ-ト及び2-エチルヘキシルアクリレ-トなどのモノマーを高い比率で配合したコポリマーは低いTgのものが得られる。
また、ポリマーのTgはFOXの式(下記式(1))より概算することができる。なお、本願の熱可塑性ポリマーのガラス転移点としては、上記DSCを用いた方法により測定したものを採用する。
1/Tg=W/Tg+W/Tg+・・・+W/Tg+・・・W/Tg (1)
{式(1)中において、Tg(K)は、コポリマーのTg、Tg(K)は、各モノマーiのホモポリマーのTg、Wは、各モノマーの質量分率を各々示す。}
(熱可塑性ポリマー含有層の構造)
熱可塑性ポリマー含有層において、多層多孔膜の最表面側に、30℃以上120℃以下のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂が存在し、かつ、ポリオレフィン微多孔膜と熱可塑性ポリマー含有層の界面側に、20℃以下のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂が存在することが好ましい。なお、「最表面」とは、多層多孔膜又はセパレータと電極とを積層したときに、熱可塑性ポリマー含有層のうち電極と接する面をいう。また、「界面」とは、熱可塑性ポリマー含有層のうちポリオレフィン微多孔膜又は多孔層と接している面をいう。
熱可塑性ポリマー含有層において、多層多孔膜の最表面側に、30℃以上120℃以下のガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマーが存在することにより、微多孔膜との密着性により優れ、その結果セパレータと電極との密着性に優れる傾向にある。また、ポリオレフィン微多孔膜と熱可塑性ポリマー含有層の界面側に、20℃以下のガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマーが存在することにより、セパレータと電極との接着性及びハンドリング性により優れる傾向にある。セパレータは、このような熱可塑性ポリマー含有層を有することにより、セパレータと電極との接着性及びハンドリング性がより向上する傾向にある。
上記のような構造は、(a)熱可塑性ポリマーが、粒状(particle)熱可塑性ポリマーと、粒状熱可塑性ポリマーが表面に露出した状態で粒状熱可塑性ポリマーをポリオレフィン微多孔膜に接着するバインダ樹脂と、から成り、粒状熱可塑性ポリマーのガラス転移温度が30℃以上120℃以下の領域に存在し、ポリオレフィン微多孔膜と熱可塑性ポリマー含有層の界面側には20℃以下のガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマーが存在すること、(b)熱可塑性ポリマーが積層構造であり、セパレータとしたときに最表層となる部分の熱可塑性ポリマーのガラス転移温度が30℃以上120℃以下の領域に存在し、ポリオレフィン微多孔膜と熱可塑性ポリマー含有層の界面側には20℃以下のガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマーが存在すること等によって、達成できる。なお、(b)熱可塑性ポリマーは、Tgが異なるポリマー毎の積層構造になっていてもよい。
(熱可塑性ポリマーの平均粒径)
熱可塑性ポリマーの構造は、特に限定されないが、例えば、粒状に構成されることができる。このような構造を有することにより、セパレータと電極との接着性及びセパレータのハンドリング性により優れる傾向にある。ここで、粒状とは、走査型電子顕微鏡(SEM)の測定にて、個々の熱可塑性ポリマーが輪郭を持った状態のことを指し、細長形状であっても、球状であっても、多角形状等であってもよい。
粒状熱可塑性ポリマーの粒径分布及びメジアン径については、レーザー式粒度分布測定装置(日機装(株)製マイクロトラックMT3300EX)を用いて測定できる。必要に応じて、ベースラインとして水又は樹脂バインダの粒径分布を用いて、粒状熱可塑性ポリマーの粒径分布を調整できる。累積頻度が50%となる粒径をD50とし、粒状熱可塑性ポリマーのD50をDとする。
粒状熱可塑性ポリマーの平均粒径Dは、セパレータの電極との接着力を発現しつつ、セパレータを介した複数の電極間の距離を維持でき、かつセパレータを備える非水電解液電池への電解液の注液時間を短くするという観点から、100nm以上1000nm以下であることが好ましく、130nm以上700nm以下であることがより好ましく、320nm以上590nm以下であることが更に好ましく、400nm以上550nm以下であることが最も好ましい。
(熱可塑性ポリマー含有層の片面当たりの目付)
一実施形態に係るセパレータにおいて、熱可塑性ポリマー含有層の片面当たりの目付は、接着力の観点から、0.03g/m以上0.3g/m以下であることが好ましく、0.04g/m以上0.15g/m以下であることがより好ましく、最も好ましくは、0.06g/m以上0.10g/m以下である。熱可塑性ポリマー含有層の目付は、塗工する液のポリマー濃度やポリマー溶液の塗布量を変更することにより調整することができる。本実施形態の効果を妨げない範囲で、電極の膨張収縮に伴うセル形状の変形を抑制して電池のサイクル特性を良好にする観点では、0.08g/mを超える範囲が好ましい。
(熱可塑性ポリマー含有層の形態,熱可塑性ポリマー含有層による基材表面の被覆割合)
熱可塑性ポリマー含有層の存在形態(パタン)は、例えば、多層多孔膜の全面に亘って熱可塑性ポリマーが相互に分散して存在する状態でもよく、海島状に存在する状態でもよい。熱可塑性ポリマーが海縞状に存在する場合、その配置パタンとしては、例えば、ドット状、ストライプ状、格子状、縞状、亀甲状、ランダム状等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。中でも、熱可塑性ポリマー含有層は、ドット状のパタンを有することが好ましい。
ドット(dots)状とは、ポリオレフィン微多孔膜上に、熱可塑性ポリマーを含む部分と熱可塑性ポリマーを含まない部分とが存在し、熱可塑性ポリマーを含む部分が島状に存在することを示す。なお、熱可塑性ポリマー含有層は、熱可塑性ポリマーを含む部分が独立してよい。
熱可塑性ポリマー含有層のドットの直径は、PO微多孔膜または電極との接着性、多層多孔膜の強度の向上、またはPO微多孔膜に対する透気度上昇の抑制の観点から、好ましくは20μm~1,200μm、より好ましくは30μm~1,100μm、更に好ましくは40μm~1,000μmの範囲にある。
熱可塑性ポリマー含有層のドット間距離は、PO微多孔膜または電極との接着性、多層多孔膜の強度の向上、またはPO微多孔膜に対する透気度上昇の抑制の観点から、好ましくは100μm~3,500μm、より好ましくは120μm~3,300μm、更に好ましくは140μm~3,000μmの範囲にある。
一実施形態において、基材表面に対する熱可塑性ポリマー含有層の総被覆面積割合は、多層多孔膜又はセパレータの電極との接着力を維持しつつ、電池の抵抗を低くするため、かつ、セパレータを備える非水電解液電池への電解液の注液時間を短くするという観点から、3%以上、又は4%以上、又は5%以上、又は10%以上、又は20%以上、又は30%以上、又は40%以上が好ましく、90%以下、又は80%以下、又は75%以下、又は70%以下であること好ましい。熱可塑性ポリマー含有層の被覆面積が小さいと、セパレータと電極界面の距離が不均一化することにより電流分布が不均一化するので、(加熱)安全性試験において温度上昇し易くなる。また、熱可塑性ポリマー含有層の被覆面積が大きいと、電池の抵抗が上昇し、レート試験の悪化につながる。基材表面に存在する熱可塑性ポリマー含有層の総被覆面積割合Sは、以下の式から算出される。
S(%)=熱可塑性ポリマー含有層の総被覆面積÷基材の表面積×100
基材表面に対する熱可塑性ポリマー含有層の塗工パタンの総被覆面積割合(%)は、マイクロスコープ(型式:VHX-7000、キーエンス社製)を用いて測定する。サンプルであるセパレータを30倍(同軸落射)で撮影した後、計測モードの自動面積計測を選択して、熱可塑性ポリマーの総被覆面積割合を測定する。各サンプルにおける被覆面積割合は、上記測定を3回行い、その相加平均値とする。
熱可塑性ポリマー含有層の形態または総被覆面積割合は、塗工する液のポリマー濃度やポリマー溶液の塗布量及び塗工方法、塗工条件を変更することにより調整することができる。
<多層多孔膜の特性>
本実施形態に係る多層多孔膜は、本発明の作用機序の観点から、次の関係(i)および(ii)の少なくとも一方を満たすことが好ましく、関係(i)および(ii)の両方を満たすことがより好ましい:
(i)PO微多孔膜の厚みTBと多孔層の厚みTの比T/TBが、0.05以上0.35以下である;
(ii)多層多孔膜の150℃熱収縮率が、MD方向、TD方向共に、10%以下である。
次の関係(i)および/または(ii)を満たす多層多孔膜は、セパレータの薄膜化を可能にして生産性の向上に寄与するだけでなく、薄膜セパレータとして非水電解液電池に組み込まれたときにサイクル特性および釘刺試験における安全性の向上にも寄与する。
上記の関係(i)については、厚みの比T/TBは、0.05以上0.35以下であることが好ましく、0.05以上0.25以下であることがより好ましく、0.07以上0.23以下であることが更に好ましく、0.10~0.20の範囲内にあることがより更に好ましく、0.10~0.14の範囲内にあることが特に好ましい。厚みの比T/TBの計測および算出は、PO微多孔膜の片面当たり又は両面当たりのいずれでもよく、そして本発明の作用機序および厚みの測定原理の観点からは、PO微多孔膜の両面当たりの計測および算出が好ましく、具体的には、多層多孔膜に配置された多孔層の合計厚みをTとして計測および算出する。
上記の関係(ii)については、多層多孔膜の150℃熱収縮率が、MD方向、TD方向共に、10%以下であることが好ましく、0%以上8%未満であることがより好ましく、0%以上5%以下であることが更に好ましい。
多層多孔膜の130℃での熱収縮率は、MD方向、TD方向ともに、0%以上10%以下であることが好ましく、より好ましくは0%以上8%以下、更に好ましくは0%以上5%以下である。130℃熱収縮率がMD方向、TD方向ともに10%以下であると、電池の異常発生時の多層多孔膜の破膜が抑制され、短絡を抑制する観点から好ましい。
130℃及び150℃での熱収縮率が、プロピレンカーボネート(PC)などの溶媒又は非水電解液の非存在下で測定されるDry熱収縮率であるのに対して、溶媒又は非水電解液の存在下で測定される多層多孔膜の140℃でのWet熱収縮率は、MD方向、TD方向ともに、0%以上10%以下であることが好ましく、より好ましくは0%以上8%以下、更に好ましくは0%以上5%以下である。140℃Wet熱収縮率がMD方向、TD方向ともに10%以下であると、電池の異常発生時の多層多孔膜の破膜が抑制され、短絡を抑制する観点から好ましい。
多層多孔膜の透気度は、多層多孔膜を介して複数の電極間に過剰な電流が流れないようにして非水電解液電池の安全性を確保するという観点から、好ましくは50sec/100cm以上、より好ましくは80sec/100cm以上である。また、多層多孔膜の透気度は、イオン透過性の観点から、好ましくは250sec/100cm以下、より好ましくは200sec/100cm以下である。
PO微多孔膜に対する多層多孔膜の透気度増加率は、非水電解液電池の釘刺試験における安全性と多層多孔膜のイオン透過性との両立の観点から、好ましくは0.07~0.25の範囲内であり、より好ましくは0.10~0.23の範囲内である。
多層多孔膜の総厚は、耐電圧性を確保するために、1.5μmを超えることが好ましく、2.5μm以上であることがより好ましく、4.0μm以上であることが更に好ましい。また、多層多孔膜の総厚は、30.0μm以下であると、多層多孔膜が実装される非水電解液電池の特性が悪化し難くなるため好ましく、26.0μm以下であることがより好ましく、24.0μm以下であることが更に好ましく、20.0μm以下であることがより更に好ましく、15.0μm以下であることが特に好ましい。
多層多孔膜は、セパレータの薄膜化において耐熱性と非水電解液電池のサイクル性能とを高度に両立させて、非水電解液電池の釘刺試験等における安全性も向上させるという観点から、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及び/又はアラミド樹脂を含まないことが好ましく、PVDF及びアラミド樹脂を含まないことがより好ましい。なお、アラミド樹脂は、芳香族ポリアミド系樹脂の総称である。
<多層多孔膜の製造方法>
本実施形態に係る多層多孔膜は、既知の方法により製造されることができ、例えば、PO微多孔膜を形成した後に、PO微多孔膜の少なくとも片面に多孔層を配置することにより製造されることができる。
多層多孔膜は、所望により、例えば、PO微多孔膜を形成した後に、PO微多孔膜の一面に第1多孔層を配置し、かつPO微多孔膜の他面に第2多孔層を配置することにより製造されることができる。代替的には、PO微多孔膜と多孔層を共押出しにより製造したり、PO微多孔膜の両面に第1多孔層及び第2多孔層をそれぞれ押出したり、個別に製造されたPO微多孔膜と多孔層を接着したりすることができる。
さらに、多層多孔膜の製造方法は、所望により、PO微多孔膜の少なくとも片面に多孔層を配置することにより多層多孔膜を得て、得られた多層多孔膜の少なくとも片面に熱可塑性ポリマー含有層を形成する工程を含んでよい。
(ポリオレフィン微多孔膜の製造方法)
ポリオレフィン微多孔膜(PO微多孔膜)の製造方法としては、特に制限はなく、既知の製造方法を採用することができる。例えば、
(1)ポリオレフィン樹脂組成物と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形後、必要に応じて延伸した後、孔形成材を抽出することにより多孔化させる方法、
(2)ポリオレフィン樹脂組成物を溶融混練して高ドロー比で押出した後、熱処理と延伸によってポリオレフィン結晶界面を剥離させることにより多孔化させる方法、
(3)ポリオレフィン樹脂組成物と無機充填材とを溶融混練してシート上に成形した後、延伸によってポリオレフィンと無機充填材との界面を剥離させることにより多孔化させる方法、
(4)ポリオレフィン樹脂組成物を溶解後、ポリオレフィンに対する貧溶媒に浸漬させてポリオレフィンを凝固させると同時に溶剤を除去することにより多孔化させる方法、
等が挙げられる。
以下、PO微多孔膜を製造する方法の一例として、ポリオレフィン樹脂組成物と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形後、孔形成材を抽出する方法について説明する。
まず、ポリオレフィン樹脂組成物と上記の孔形成材を溶融混練する。溶融混練方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂及び必要によりその他の添加剤を押出機、フィーダー、ラボプラストミル、混練ロール、バンバリーミキサー等の樹脂混練装置に投入することで、樹脂成分を加熱溶融させながら任意の比率で孔形成材を導入して混練する方法が挙げられる。
孔形成材としては、可塑剤、無機材又はそれらの組み合わせを挙げることができる。可塑剤としては、特に限定されないが、ポリオレフィンの融点以上において均一溶液を形成しうる不揮発性溶媒、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。可塑剤の中でも、流動パラフィンは、ポリオレフィン樹脂がポリエチレン及び/又はポリプロピレンの場合には、これらとの相溶性が高く、溶融混練物を延伸しても樹脂と可塑剤の界面剥離が起こり難く、均一な延伸が実施し易くなる傾向にあるため好ましい。無機材としては、特に限定されず、例えば、アルミナ、シリカ(珪素酸化物)、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;ガラス繊維が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの無機材の中でも、電気化学的安定性の観点から、シリカ、アルミナ、チタニアが好ましく、抽出が容易である点から、シリカが特に好ましい。
次に、溶融混練物をシート状に成形する。シート状成形体を製造する方法としては、例えば、溶融混練物を、Tダイ等を介してシート状に押出し、熱伝導体に接触させて樹脂成分の結晶化温度より充分に低い温度まで冷却して固化する方法が挙げられる。冷却固化に用いられる熱伝導体としては、金属、水、空気、又は可塑剤等が挙げられる。これらの中でも、熱伝導の効率が高いため、金属製のロールを用いることが好ましい。また、押出した混練物を金属製のロールに接触させる際に、ロール間で挟み込むことは、熱伝導の効率がさらに高まると共に、シートが配向して膜強度が増し、シートの表面平滑性も向上する傾向にあるためより好ましい。溶融混練物をTダイからシート状に押出す際のダイリップ間隔は200μm以上3,000μm以下であることが好ましく、500μm以上2,500μm以下であることがより好ましい。ダイリップ間隔が200μm以上であると、メヤニ等が低減され、スジ、欠点等の膜品位への影響が少なく、その後の延伸工程において膜破断等のリスクを低減することができる。一方、ダイリップ間隔が3,000μm以下であると、冷却速度が速く冷却ムラを防げると共に、シートの厚み安定性を維持できる。
また、シート状成形体を圧延してもよい。圧延は、例えば、ダブルベルトプレス機等を使用したプレス法にて実施することができる。圧延を施すことにより、特に表層部分の配向を増すことができる。圧延面倍率は1倍を超えて3倍以下であることが好ましく、1倍を超えて2倍以下であることがより好ましい。圧延倍率が1倍を超えると、面配向が増加し最終的に得られる多孔膜の膜強度が増加する傾向にある。一方、圧延倍率が3倍以下であると、表層部分と中心内部の配向差が小さく、膜の厚さ方向に均一な多孔構造を形成することができる傾向にある。
次いで、シート状成形体から孔形成材を除去して多孔膜とする。孔形成材を除去する方法としては、例えば、抽出溶剤にシート状成形体を浸漬して孔形成材を抽出し、充分に乾燥させる方法が挙げられる。孔形成材を抽出する方法はバッチ式、連続式のいずれであってもよい。多孔膜の収縮を抑えるために、浸漬、乾燥の一連の工程中にシート状成形体の端部を拘束することが好ましい。また、多孔膜中の孔形成材残存量は多孔膜全体の質量に対して1質量%未満にすることが好ましい。
孔形成材を抽出する際に用いられる抽出溶剤としては、ポリオレフィン樹脂に対して貧溶媒で、かつ孔形成材に対して良溶媒であり、沸点がポリオレフィン樹脂の融点より低いものを用いることが好ましい。このような抽出溶剤としては、例えば、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、1,1,1-トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン等の非塩素系ハロゲン化溶剤;エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。なお、これらの抽出溶剤は、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。また、孔形成材として無機材を用いる場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を抽出溶剤として用いることができる。
また、上記シート状成形体または多孔膜を延伸することが好ましい。延伸は前記シート状成形体から孔形成材を抽出する前に行ってもよい。また、前記シート状成形体から孔形成材を抽出した多孔膜に対して行ってもよい。さらに、前記シート状成形体から孔形成材を抽出する前と後に行ってもよい。
延伸処理としては、一軸延伸又は二軸延伸のいずれも好適に用いることができるが、得られるPO微多孔膜の強度等を向上させる観点から二軸延伸が好ましい。シート状成形体を二軸方向に高倍率延伸すると、分子が面方向に配向し、最終的に得られる微多孔膜が裂け難くなり、高い突刺強度を有するものとなる。
延伸方法としては、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延伸、多段延伸、多数回延伸等の方法を挙げることができる。突刺強度の向上、延伸の均一性、シャットダウン性の観点からは同時二軸延伸が好ましい。また面配向の制御容易性の観点からは遂次二軸延伸が好ましい。
ここで、同時二軸延伸とは、MD(PO微多孔膜連続成形の機械方向)の延伸とTD(PO微多孔膜のMDを90°の角度で横切る方向)の延伸が同時に施される延伸方法をいい、各方向の延伸倍率は異なってもよい。逐次二軸延伸とは、MD及びTDの延伸が独立して施される延伸方法をいい、MD又はTDに延伸がなされているときは、他方向は非拘束状態又は定長に固定されている状態とする。
延伸倍率は、面倍率で20倍以上100倍以下の範囲であることが好ましく、25倍以上70倍以下の範囲であることがより好ましい。各軸方向の延伸倍率は、MDに4倍以上10倍以下、TDに4倍以上10倍以下の範囲であることが好ましく、MDに5倍以上8倍以下、TDに5倍以上8倍以下の範囲であることがより好ましい。総面積倍率が20倍以上であると、得られるPO微多孔膜に十分な強度を付与できる傾向にあり、一方、総面積倍率が100倍以下であると、延伸工程における膜破断を防ぎ、高い生産性が得られる傾向にある。
PO微多孔膜の収縮を抑制するために、延伸工程後、又は、PO微多孔膜形成後に熱固定を目的として熱処理を行うこともできる。また、PO微多孔膜に、界面活性剤等による親水化処理、電離性放射線等による架橋処理等の後処理を行ってもよい。
PO微多孔膜には、収縮を抑制する観点から熱固定を目的として熱処理を施すことが好ましい。熱処理の方法としては、物性の調整を目的として、所定の温度雰囲気及び所定の延伸率で行う延伸操作、及び/又は、延伸応力低減を目的として、所定の温度雰囲気及び所定の緩和率で行う緩和操作が挙げられる。延伸操作を行った後に緩和操作を行っても構わない。これらの熱処理は、テンター又はロール延伸機を用いて行うことができる。
延伸操作は、膜のMD及び/又はTDに1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上の延伸を施すことが、さらなる高強度かつ高気孔率なPO微多孔膜が得られる観点から好ましい。
緩和操作は、膜のMD及び/又はTDへの縮小操作のことである。緩和率とは、緩和操作後の膜の寸法を緩和操作前の膜の寸法で除した値のことである。なお、MD、TD双方を緩和した場合は、MDの緩和率とTDの緩和率を乗じた値のことである。緩和率は、1.0以下であることが好ましく、0.97以下であることがより好ましく、0.95以下であることがさらに好ましい。緩和率は膜品位の観点から0.5以上であることが好ましい。緩和操作は、MD、TD両方向で行ってもよいが、MD或いはTD片方だけ行ってもよい。
この可塑剤抽出後の延伸及び緩和操作は、プロセスコントロールの観点及び400℃はんだ試験における穴面積の制御の観点から、好ましくはTDに行う。延伸及び緩和操作における温度は、ポリオレフィン樹脂の融点(以下、「Tm」ともいう。)より低いことが好ましく、Tmより1℃から25℃低い範囲がより好ましい。延伸及び緩和操作における温度が上記範囲であると、熱収縮率低減と気孔率とのバランスの観点から好ましい。
一実施形態では、PO微多孔膜の製造プロセスを通じて、セパレータの薄膜耐熱性と非水電解液電池のサイクル性能とを高度に両立させて、非水電解液電池の釘刺試験等における安全性も向上させるという観点から、PVDF及びアラミド樹脂の不使用が好ましい。
(多孔層の配置方法)
PO微多孔膜の少なくとも片面に多孔層を配置する方法としては、既知の配置方法、塗工方法、積層方法、押出方法などを採用することができる。例えば、PO微多孔膜に、上記で説明された無機粒子及び樹脂バインダを含む塗布液又はスラリーを塗布して、多孔層を形成する方法が挙げられる。
ポリオレフィン微多孔膜(PO微多孔膜)の一面に第1多孔層を配置し、かつPO微多孔膜の他面に第2多孔層を配置する方法としては、既知の配置方法、塗工方法、積層方法、押出方法などを採用することができる。例えば、PO微多孔膜の両面に、上記で説明された無機粒子及び樹脂バインダを含む塗布液又はスラリーを塗布して多孔層を形成する方法などが挙げられる。
塗布液中の樹脂バインダの形態としては、水に溶解または分散した水系溶液であっても、一般的な有機媒体に溶解又は分散した有機媒体系溶液であってもよく、水溶性高分子または非水溶性高分子のいずれかであることが好ましく、水溶性高分子と非水溶性高分子の両方ともに(メタ)アクリルアミド骨格を持つことがより好ましく、アクリル系重合体のラテックスの形態であるか、またはポリ(メタ)アクリルアミドを含むことが更に好ましい。ポリ(メタ)アクリルアミド等の水溶性高分子は、多孔層の構成要素として上述されたものでよく、無機粒子の小粒径化に適合することができる。「樹脂製ラテックス」とは樹脂が媒体に分散した状態のものを示す。樹脂製ラテックスをバインダとして用いた場合、無機粒子とバインダとを含む多孔層をPO微多孔膜の少なくとも片面に積層した際、イオン透過性が低下し難く、高出力特性が得られ易い。加えて異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性が得られ易い。
樹脂製ラテックスバインダの平均粒径は、50nm以上1,000nm以下であることが好ましく、より好ましくは60nm以上500nm以下であり、更に好ましくは65nm以上250nm以下であり、特に好ましくは70nm以上150nm以下である。平均粒径が50nm以上である場合、イオン透過性が低下し難く、高出力特性が得られ易い。加えて異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性が得られ易い。平均粒径が1,000nm以下である場合、無機粒子と樹脂バインダとを含む多孔層をPO微多孔膜の少なくとも片面に積層した際、良好な結着性を発現し、セパレータとした場合に熱収縮が良好となり安全性に優れる傾向にある。平均粒径は、樹脂バインダを製造する際の重合時間、重合温度、原料組成比、原料投入順序、pH、撹拌速度等を調整することで制御することが可能である。
樹脂製ラテックスにおいて、粒径分布の異なる二種類の非水溶性バインダを使用する場合、第一の非水溶性バインダの平均粒径D50を熱収縮抑制の観点から0.01μm~0.50μmの範囲内に調整することが好ましい。他方、透過性の観点、および多孔層の平均厚みより突出して、セパレータと電極との間に空隙を形成し、この空隙により、非水電解液電池の充放電等に伴い電極が膨張・収縮することの影響を緩和して、サイクル特性を向上させるという観点から、樹脂製ラテックスにおいて第二の非水溶性バインダの平均粒径D50を、無機粒子の平均粒径D50以上に調整することが好ましく、より好ましくは0.3μm~5.0μm、更に好ましくは0.5μm~4.0μm、特に好ましくは0.50μm~3.0μmの範囲内に調整する。
塗布液又はスラリーに含まれる無機粒子の質量割合は、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、93質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、97質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。なお、塗布液又はスラリーに含まれる無機粒子の質量割合の上限は、樹脂バインダの固形分に応じて、例えば、100質量%未満または99質量%以下でよい。塗布液又はスラリーに含まれる無機粒子の質量割合が上記の範囲内にあると、相対的に樹脂バインダの割合が少なくなり、上記の値Aまたは無機粒子の粒径を制御し易くなり、かつPO微多孔膜に対する多孔膜の透気度上昇や電池抵抗が抑制されて、非水電解液電池のサイクル特性が向上する。
塗布液又はスラリーに含まれる、無機粒子と樹脂バインダとの合計を100体積%として、無機粒子の体積割合は、70体積%以上100体積%以下であることが好ましく、75体積%以上95体積%以下であることがより好ましく、80体積%以上93体積%以下であることが更に好ましく、85体積%以上92体積%以下であることがより更に好ましく、90体積%より大きく91体積%以下であることが特に好ましい。無機粒子が塗布液又はスラリー中に占める体積割合が上記の範囲内にあると、樹脂バインダに対する無機粒子の比率が増すため、上記で説明された値Aおよび無機粒子の粒径が得られ易くなり、かつ多孔層による微多孔膜の透気度上昇を抑制して、多層多孔膜の電気抵抗を小さくすることができる。
無機粒子含有スラリーの粒径分布は、多層多孔膜の熱収縮抑制能力及び非水電解液電池のサイクル特性を更に向上させるという観点から、次に示される関係のうち少なくとも1つを満たすことが好ましい:
・平均粒径D50について、0.01μm≦D50≦0.50μm、0.05μm≦D50≦0.50μm、または0.10μm≦D50≦0.40μm;
・平均粒径D50に対する平均粒径D90の比D90/D50について、1.6≦D90/D50≦2.5、1.7≦D90/D50≦2.3、または1.8≦D90/D50≦2.1;
・平均粒径D50に対する平均粒径D10の比D10/D50について、0.2≦D10/D50≦0.8、0.3≦D10/D50≦0.7、または0.4≦D10/D50≦0.6以下;
・平均粒径D90について、0.016μm~1.5μm、0.085μm~1.15μm、または0.18μm~0.84μm;
・平均粒径D10について、0.002μm~0.48μm、0.015μm~0.35μm、または0.04μm~0.24μm。
無機粒子含有スラリーの粒径分布を上記のように調整する方法としては、例えば、ボールミル・ビーズミル・ジェットミル等を用いて無機粒子を粉砕し、所望の粒径分布を得る方法、複数の粒径分布の無機粒子を調製した後にブレンドする方法、樹脂バインダとしてポリ(メタ)アクリルアミドをスラリーに含有させる方法等が挙げられる。
無機粒子含有スラリーまたは塗布液の形成において、樹脂バインダと無機粒子の接触点数の増加、無機粒子同士の結着点の増加、および多層多孔膜又はセパレータの耐熱性の観点から、スラリーまたは塗布液に含まれる水溶性高分子の質量割合Wa’と非水溶性バインダの質量割合Wb’の比Wb’/Wa’が、1未満であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.6より小さいことが更に好ましく、0.4より小さいことが特に好ましく、0付近または0であることが最も好ましい。同様の観点から、無機粒子含有スラリーまたは塗布液の形成において、水溶性高分子の体積割合Va’と非水溶性バインダの体積割合Vb’の比Vb’/Va’が、1未満であることが好ましく、0.8より小さいことがより好ましく、0.6より小さいことが更に好ましく、0.4より小さいことが特に好ましく、0付近または0であることが最も好ましい。
一実施形態では、無機粒子含有スラリーまたは塗布液の形成において、多孔層の値Aを上記の数値範囲内に調整するという観点から、特定の溶媒を用いるNMR緩和時間による無機粒子原料種の選定、無機粒子原料と親和性の高い樹脂バインダの選定などが好ましい。
無機粒子含有スラリーまたは塗布液には、分散安定化又は塗工性の向上のために、界面活性剤等の分散剤を加えてもよい。分散剤は、スラリー中で無機粒子表面に吸着し、静電反発などにより無機粒子を安定化させるものであり、例えば、ポリアクリル酸塩などのポリカルボン酸塩、スルホン酸塩、ポリオキシエーテルなどである。分散剤の添加量としては、スラリー又は塗布液の固形分を基準として、0.0質量%~5.0質量%の範囲内にあることが好ましく、0.0質量%を超えて1.0質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%~0.7質量%の範囲内にあることが更に好ましい。
塗布液には、分散安定化又は塗工性の向上、さらに多孔層の表面部の接触角の調整のために、増粘剤;湿潤剤;消泡剤;酸、アルカリを含むPH調整剤等の各種添加剤を加えてもよい。これら添加剤の総添加量は、無機粒子100質量部に対して、その有効成分(添加剤が溶媒に溶解している場合は溶解している添加剤成分の質量)は20質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
添加剤については、アニオン性界面活性剤として、例えば、高級脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルファスルホ脂肪酸メチルエステル塩、メチルタウリン酸塩などがある。ノニオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグルコシドなどがある。両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルアミンオキシドなどがある。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などがある。その他、フッ素系界面活性剤やセルロース誘導体、ポリカルボン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩などの高分子界面活性剤がある。
無機粒子含有スラリーまたは塗布液の粘度は、B型粘度装置(60rpm時)で測定した際に、10mPa・sec以上200mPa・secであることが好ましい。より好ましくは40mPa・sec以上150mPa・sec、さらに好ましくは50mPa・sec以上130mPa・secである。粘度は、10mPa・sec以上であることで、塗布液中の無機粒子の沈降抑制の観点で好ましく、200mPa・sec以下であることで、塗布液の分散安定化及び塗布液をPO微多孔膜に塗布した後の多孔層表面模様の抑制の観点で好ましい。
塗布液の媒体としては、無機粒子及び樹脂バインダを均一かつ安定に分散又は溶解できるものが好ましく、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、水、エタノール、トルエン、熱キシレン、塩化メチレン、ヘキサン等が挙げられる。
無機粒子と樹脂バインダとを、塗布液の媒体に分散又は溶解させる方法については、塗布工程に必要な塗布液の分散特性を実現できる方法であれば特に限定はない。例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌等が挙げられる。
無機粒子含有スラリーまたは塗布液をPO微多孔膜に塗布する方法については、必要とする層厚又は塗布面積を実現できる方法であれば特に限定はなく、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等が挙げられる。
一実施形態では、無機粒子含有スラリーまたは塗布液のPO微多孔膜への塗工は、PO微多孔膜の透気度上昇の抑制、強固な多孔層の形成、得られる多層多孔膜又はセパレータの薄膜化、及び耐熱性(すなわち熱収縮抑制能力)の観点から、PO微多孔膜の少なくとも片面当たり多孔層の塗工厚みが、好ましくは0.1μm以上2.5μm以下、より好ましくは0.5μm以上2.4μm以下、更に好ましくは0.7μm以上2.0μm以下、特に好ましくは1.0μm以上1.5μm以下になるように行われる。
所望により、無機粒子含有スラリーまたは塗布液の塗布に先立ち、PO微多孔膜を表面処理に供してよい。PO微多孔膜に表面処理を施すと、塗布液又はスラリーを塗布し易くなると共に、塗布後の硫酸バリウム含有多孔層とPO微多孔膜表面との接着性が向上することがある。表面処理の方法は、PO微多孔膜の多孔質構造を著しく損なわない方法であれば特に限定はなく、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ放電処理法、機械的粗面化法、溶剤処理法、酸処理法、紫外線酸化法等が挙げられる。
塗布後に塗布膜から媒体を除去する方法については、PO微多孔膜に悪影響を及ぼさない方法であれば特に限定はなく、例えば、PO微多孔膜を固定しながら、その融点以下の温度で乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、抽出乾燥等が挙げられる。また非水電解液電池の特性に著しく影響を及ぼさない範囲においては、溶媒を一部残存させてよい。PO微多孔膜と多孔層を積層した多層多孔膜について、MD方向の収縮応力を制御する観点から、乾燥温度、巻取り張力等は適宜調整することが好ましい。
(熱可塑性ポリマー含有層の形成方法)
基材としてのPO微多孔膜又は多孔層に熱可塑性ポリマー含有層を形成する方法は、特に限定されず、例えば熱可塑性ポリマーを含有する塗布液をPO微多孔膜又は多孔層に塗布する方法が挙げられる。
熱可塑性ポリマーを含有する塗布液をPO微多孔膜又は多孔層に塗布する方法については、必要とする層厚や塗布面積を実現できる方法であれば特に限定はない。例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法、スプレーコーター塗布法、インクジェット塗布等が挙げられる。これらのうち、熱可塑性ポリマーの塗工形状の自由度が高く、好ましい面積割合を容易に得られる観点でグラビアコーター法又はスプレー塗布法が好ましい。熱可塑性ポリマー含有層のドット状のパタン形成については、グラビアコーター法、インクジェット塗布、及び印刷版の調整が容易な塗布方法が好ましい。
PO微多孔膜に熱可塑性ポリマーを塗工する場合、塗布液が微多孔膜又は多孔層の内部にまで入り込んでしまうと、接着性樹脂が孔の表面及び内部を埋めてしまい透過性が低下してしまう。そのため、塗布液の媒体としては、熱可塑性ポリマーの貧溶媒が好ましい。
一実施形態では、熱可塑性ポリマー含有塗布液の形成において、セパレータの薄膜耐熱性と非水電解液電池のサイクル性能とを高度に両立させて、非水電解液電池の釘刺試験等における安全性も向上させるという観点から、PVDF及びアラミド樹脂の不使用が好ましい。
塗布液の媒体として熱可塑性ポリマーの貧溶媒を用いた場合には、微多孔膜又は多孔層の内部に塗工液は入り込まず、接着性ポリマーは主に微多孔膜の表面上に存在するため、透過性の低下を抑制する観点から好ましい。このような媒体としては水が好ましい。また、水と併用可能な媒体は、特に限定されないが、エタノール、メタノール等を挙げることができる。所望により、熱可塑性ポリマー含有塗布液には消泡剤を加えてよい。
熱可塑性ポリマー含有塗布液(以下、単に塗料ともいう)については、セパレータの電極との接着性の観点、セパレータの温度上昇の起こり難さとサイクル劣化の起こり難さとを両立しながら高温保存試験にさらに適合させるという観点から、塗料粘度が30以上100cP以下の範囲内であることが好ましく、50以上80cP以下の範囲内であることがより好ましい。同様の観点から、塗料のpHは、5~7.9の範囲内であることが好ましく、5.5~7.7の範囲にあることがより好ましい。
さらに、塗布に先立ち、セパレータ基材としての微多孔膜に表面処理をすると、塗布液を塗布し易くなると共に、微多孔膜または多孔層と接着性ポリマーとの接着性が向上するため好ましい。表面処理の方法は、微多孔膜の多孔質構造を著しく損なわない方法であれば特に限定はなく、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、機械的粗面化法、溶剤処理法、酸処理法、紫外線酸化法等が挙げられる。
コロナ放電処理法の場合には、基材表面のコロナ処理強度は、1W/(m/min)以上40W/(m/min)以下の範囲内にあることが好ましく、3W/(m/min)以上32W/(m/min)以下の範囲にあることがより好ましく、5W/(m/min)以上25W/(m/min)以下の範囲にあることが更に好ましい。
塗布後に塗布膜から溶媒を除去する方法については、微多孔膜又は多孔層に悪影響を及ぼさない方法であれば特に限定はない。例えば、微多孔膜及び/又は多孔層を固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、接着性ポリマーに対する貧溶媒に浸漬して接着性ポリマーを凝固させると同時に溶媒を抽出する方法等が挙げられる。
塗布膜の乾燥では、乾燥速度は、0.03g/(m・s)以上4.0g/(m・s)以下の範囲内にあることが好ましく、0.05g/(m・s)以上3.5g/(m・s)以下の範囲内にあることがより好ましく、0.08g/(m・s)以上3.0g/(m・s)以下の範囲内にあることが更に好ましい。塗布膜の乾燥では、熱可塑性ポリマー含有層の粒子形状を損なわない程度に、加温または加熱などにより昇温することも好ましい。
<非水電解液電池用セパレータ、および非水電解液電池>
本実施形態に係る多層多孔膜は、非水電解液電池用セパレータとして使用されることができる。非水電解液電池は、正極と、セパレータと、負極と、非水電解液とを備え、具体的には、リチウム電池、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、ナトリウム二次電池、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池、マグネシウムイオン二次電池、カルシウム二次電池、カルシウムイオン二次電池、アルミニウム二次電池、アルミニウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスフロー電池、リチウム硫黄電池などが挙げられる。これらの中でも、実用性の観点から、リチウム電池、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、又はリチウムイオンキャパシタが好ましく、リチウムイオン二次電池がより好ましい。
非水電解液電池は、例えば、正極と負極とを、上記で説明された多層多孔膜から成るセパレータを介して重ね合わせて、必要に応じて、捲回又は九十九折りして、積層電極体又は捲回電極体又は九十九折り体を形成した後、これを外装体に装填し、正負極と外装体の正負極端子とをリード体などを介して接続し、さらに、鎖状又は環状カーボネート等の非水溶媒とリチウム塩等の電解質を含む非水電解液を外装体内に注入した後に外装体を封止して作製することができる。
非水電解液電池は、円筒缶、パウチ型ケース、ラミネートケース等の外装体内に、上記で説明された積層体、積層体が捲回されている捲回体、又は積層体が九十九折りされている九十九折り体を非水電解液とともに備える。本実施形態に係る多層多孔膜をセパレータとして用いた非水電解液電池は、安全性に優れるだけでなく、エネルギー密度及びサイクル特性にも優れることがある。
非水電解液電池が二次電池である場合には、正極集電体と正極活物質層から成る正極積層体の端部に正極端子を溶接し、かつ負極集電体と負極活物質層から成る負極積層体の端部に負極端子を溶接することによって、端子付き正極積層体及び端子付き負極積層体を含む二次電池の充放電を行うことができる。
さらに、端子付き正極積層体と端子付き負極積層体を、セパレータを介して積層し、所望により捲回又は九十九折りして、得られた積層体、捲回体又は九十九折り体を外装体に収納し、外装体に非水電解液を注入し、外装体を封口することによって、二次電池を得ることができる。
本実施形態に係る多層多孔膜をセパレータとして用いて、非水電解液二次電池を製造する場合には、既知の正極、負極及び非水電解液を使用してよい。
正極材料としては、特に限定されないが、例えば、LiCoO、LiNiO、スピネル型LiMnO、オリビン型LiFePO等のリチウム含有複合酸化物等が挙げられる。
負極材料としては、特に限定されないが、例えば、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、複合炭素体等の炭素材料;シリコン、スズ、金属リチウム、各種の合金材料等が挙げられる。
非水電解液としては、特に限定されないが、電解質を有機溶媒に溶解した電解液を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等が挙げられる。電解質としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF等のリチウム塩が挙げられる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
試験及び評価方法
<粘度平均分子量(Mv)>
ASTM-D4020に基づき、デカリン溶媒における135℃での極限粘度[η](dl/g)を求めた。
ポリエチレン及びポリオレフィン微多孔膜のMvについては、次式により算出した。
[η]=6.77×10-4Mv0.67
ポリプロピレンのMvについては、次式により算出した。
[η]=1.10×10-4Mv0.80
<PO微多孔膜、多層多孔膜、及び多孔層の厚み(μm)>
東洋精機株式会社製の微小測厚器「KBM(商標)」を用いて、室温(23±2℃)でポリオレフィン微多孔膜及び多層多孔膜の厚みを測定して、それぞれの厚みから多孔層の塗工厚みを算出した。また、多層多孔膜からの検出の観点から、断面SEM像を用いて各層の厚みを計測することも可能である。
<ポリオレフィン微多孔膜のメルトインデックス(MI)(g/10分)>
JIS K7210:1999(プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR))に従って、ポリオレフィン微多孔膜(PO微多孔膜)のメルトインデックス(MI)を測定した。190℃で21.6kgfの荷重を膜に加えて、直径1mm、長さ10mmのオリフィスから10分で流出した樹脂量(g)を測定し、小数点以下第一位を四捨五入した値をMIとした。
<多孔層中の、無機粒子のアスペクト比>
多層膜の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)「HITACHI(商標) S-4800」(日立ハイテク製)を用いて撮影倍率1万倍で撮影し、B層中の無機粒子を画像処理することにより、アスペクト比を求めた。無機粒子同士が相互に結着している場合でも、無機粒子単体としての縦及び横の長さを明確に認識できるものを選択し、これらに基づいてアスペクト比を算出した。具体的には、上記縦及び横の長さを明確に認識できるものを10個選択し、各々の無機粒子の長軸を短軸の長さで割算した値の平均値をアスペクト比とした。縦及び横の長さを明確に認識できるものが1視野上に10個に満たない場合は、複数視野の画像から10個を選択した。
<無機粒子の平均粒径及び粒径分布>
無機粒子分散液又はスラリー塗工液の粒径分布及びメジアン径(μm)について、レーザー式粒度分布測定装置(日機装(株)製マイクロトラックMT3300EX)を用いて、無機粒子分散液又はスラリー塗工液の粒径分布を測定した。必要に応じて、ベースラインとして水又は樹脂バインダの粒径分布を用いて、無機粒子分散液又はスラリー塗工液の粒径分布を調整した。累積頻度が50%となる粒径をD50とした。
<パルスNMRによるRsp値、および比>
米国マジェリカ社製パルスNMR測定装置MagnoMeterXRSを用いて、溶媒の緩和時間測定を行った。溶媒のみでのブランク測定および、溶媒に対して無機粒子を質量濃度10%になるように添加し、超音波処理後、室温25℃条件下にて、緩和時間T2を、ブランクおよび無機粒子添加時、それぞれ測定した。
下記式より、各溶媒におけるRsp値を算出した。
Rsp=(ブランクT2/無機粒子添加T2)-1
またNMPとDMSOそれぞれのRsp値から、下記式の通り値Bを算出した。
B=Rsp(NMP)/Rsp(DMSO)
<透気度(sec/100cm)、及びポリオレフィン微多孔膜に対する多層多孔膜の透気度比率>
JIS P-8117に準拠した透気抵抗度を透気度とした多層多孔膜の透気度及びPO微多孔膜の透気度の測定は、JIS P-8117に準拠し、東洋精器(株)製のガーレー式透気度計「G-B2(商標)」を用いて、温度23℃、湿度40%の雰囲気下で、多層多孔膜及びPO微多孔膜の透気抵抗度を測定することにより行われた。
また、多層多孔膜の透気度からPO微多孔膜の透気度を引いた値を、多孔層透気度として算出した。さらに、下記式:
透気度増加率=多孔層透気度/PO微多孔膜の透気度
に従って、透気度増加率を算出した。
<多孔層中の、無機粒子の含有量(質量%および体積%)>
塗布液を調製する際の、構成材料配合比から、多孔層中の無機粒子の含有量を算出することができる。
また、多層多孔膜からの検出する観点から、TG-DTAを使用して、有機物と無機粒子のそれぞれの重量変化を測定することも可能である。具体的には、多層多孔膜から、ガラス板で多孔層部位を削り、8mg~10mg採取する。採取した多孔層の試料を、試料を装置にセットして、Air雰囲気下で、室温から10℃/minの昇温速度で600℃まで上げていき、重量変化を測定し、算出する。なお、無機粒子の比重に基づいて、無機粒子の質量含有割合と体積含有割合とは、互換可能である。
<多孔層のDMSO接触角、NMP接触角及び接触角比>
協和界面科学社製接触角計(CA-V)(型式名)を用いてセパレータの接触角を測定した。スライドガラス上に、皺が入らないように平滑に固定したセパレータの表面に、所定溶媒を2μl滴下し、40秒経過後における接触角を測定した。測定は25℃環境下で実施し、接触角は3回測定した平均の値を採用した。
セパレータとしての多層多孔膜の多孔層露出面に対するDMSOおよびNMPの接触角を接触角計で測定した。測定されたDMSO接触角及びNMP接触角から、下記式:
A=(NMP接触角)/(DMSO接触角)
に従って値Aを算出した。
なお、多層多孔膜のうち、多孔層の上に、熱可塑性ポリマー含有層が存在する場合、多孔層の表面露出面積が50%以上であれば、熱可塑性ポリマー含有層が存在した状態で測定を行い、接触角の比を算出した。
<気孔率(%)>
10cm×10cm角の試料を微多孔膜から切り取り、その体積(cm)と質量(g)を求め、それらと膜密度(g/cm)より、次式を用いて気孔率を計算した。
気孔率(%)=(体積-質量/密度)/体積×100
<突刺強度(gf)及び目付換算突刺強度(gf/(g/m))>
カトーテック製のハンディー圧縮試験器「KES-G5(商標)」を用いて、開口部の直径11.3mmの試料ホルダーで微多孔膜を固定した。次に、固定された微多孔膜の中央部に対して、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secで、温度23℃、湿度40%の雰囲気下の突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として生の突刺強度(gf)を得た。得られた突刺強度(gf)を目付に換算した値(gf/(g/m))も算出した。
<130℃、150℃でのDry熱収縮率(%)>
サンプルとして、多層多孔膜をMD方向に100mm、TD方向に100mmに切り取り、130℃、又は150℃のオーブン中に1時間静置した。このとき、温風が直接サンプルに当たらないように、サンプルを10枚の紙に挟んだ。サンプルをオーブンから取り出して冷却した後、長さ(mm)を測定し、下式にて熱収縮率を算出した。測定は、MD方向、TD方向で行い、両数値それぞれの平均を熱収縮率として表示した。
熱収縮率(%)={(100-加熱後の長さ)/100}×100
<140℃でのWet熱収縮率(%)>
セパレータをMD方向に50mm、TD方向に50mmに切り取り、テフロン(登録商標)シート(厚み100μm、60mm四方)で挟んだ。この積層体をアルミニウム製ラミネートフィルムで構成される包装体(厚み35μm、100mm四方)に収納し、プロピレンカーボネートを0.5mL注入し、セパレータをプロピレンカーボネートで浸し、残りの一片を封口し、サンプルとした。サンプルを24時間静置保管したのち、140℃のオーブン中に1時間静置した。サンプルをオーブンから取り出し冷却した後、セパレータの各方向の長さ(mm)を測定し、以下の式にて熱収縮率を算出した。測定はMD方向、TD方向で行い、両数値それぞれの平均を熱収縮率として表示した。
熱収縮率(%)={(50-加熱後の長さ)/50}×100。
<180°剥離強度>
2mm×7mmに切り出した多層多孔膜の、測定する被覆層と反対側の面をガラス版に両面テープで貼り付け、被覆層にテープ(品名「メンディングテープMP-12」、3M社製)を貼り付けた。テープの先端を5mm剥がし、引張試験機(型式「AG-IS、SLBL-1kN、島津製作所社製)にて、多層多孔膜の面方向に対しテープが180°の角度で剥がれるようにテープ先端をチャックで挟んだ。引張速度は50mm/秒、温度は25度、相対湿度は40%として引張試験を行い、引張強度(N/m)を測定した。
<熱可塑性ポリマーのガラス転移温度(℃)>
熱可塑性ポリマーの塗工液(不揮発分=30%)を、アルミ皿に適量取り、130℃の熱風乾燥機で30分間乾燥した。乾燥後の乾燥皮膜約17mgを測定用アルミ容器に詰め、DSC測定装置(島津製作所社製、DSC6220)にて窒素雰囲気下におけるDSC曲線及びDDSC曲線を得た。測定条件は下記のとおりとした。
(1段目昇温プログラム)
70℃スタート、毎分15℃の割合で昇温。110℃に到達後5分間維持。
(2段目降温プログラム)
110℃から毎分40℃の割合で降温。-50℃に到達後5分間維持。
(3段目昇温プログラム)
-50℃から毎分15℃の割合で130℃まで昇温。この3段目の昇温時にDSC及びDDSCのデータを取得。
ベースライン(得られたDSC曲線におけるベースラインを高温側に延長した直線)と、変曲点(上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点)における接線との交点をガラス転移温度(Tg)とした。
<ドット直径とドット間距離>
熱可塑性ポリマー含有塗工液について、塗工パタンのドット直径は、マイクロスコープ(型式:VHX-7000、キーエンス社製)を用いて測定した。サンプルであるセパレータを100倍(同軸落射)で撮影し、複数(5点)のドットについて計測モードで各直径を測定し、それらの平均値をドット直径として算出した。また、或るドットの外縁部から最近接の別のドットの外縁部までの距離を「ドット間距離」として、5点の観察箇所について計測モードで測定し、それらの平均値をドット間距離として算出する。
<電極への接着性>
各実施例及び比較例で得られた多層多孔膜又はセパレータと、被着体としての負極(enertech社製、負極材料:グラファイト、導電助剤:アセチレンブラック、L/W:両側について20mg/cm、Cu集電体の厚み:10μm、プレス後の負極の厚み:140μm)とをそれぞれ幅15mm及び長さ60mmの長方形状に切り取り、多層多孔膜又はセパレータの熱可塑性ポリマー含有層と、負極活物質とが相対するように重ね合わせて積層体を得た後、その積層体を、以下の条件でプレスした。
プレス圧:1MPa
温度:90℃
プレス時間:5秒
プレス後の積層体について、(株)イマダ製のフォースゲージZP5N及びMX2-500N(製品名)を用いて、電極を固定し、多層多孔膜又はセパレータを把持して引っ張る方式によって剥離速度50mm/分にて90°剥離試験を行い、剥離強度を測定した。このとき、上記の条件で行った長さ40mm分の剥離試験における剥離強度の平均値を電極との接着力として採用した。この接着力の測定について、上記の積層体をプロピレンカーボネート(PC)に浸す前後で行って、PC含侵前の接着力をDry接着力、PC含侵後の接着力をWet接着力として、それぞれ表示した。本手法により得られた接着力として2.1N/m以下を達成するセパレータを非水電解液電池に用いた場合には、対向する正極、及び負極との接着力が良好となる。
<釘刺試験>
(正極の作製)
正極活物質であるリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉末(LiNi1/3Mn1/3Co1/3)とリチウムマンガン複合酸化物粉末(LiMn)を質量比率70:30で機械混合した混合正極活物質:85質量部、導電助剤であるアセチレンブラック:6質量部、及びバインダであるPVdF:9質量部を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を溶剤として均一になるように混合して、正極合剤含有ペーストを調製した。この正極合剤含有ペーストを、アルミニウム箔から成る厚さ20μmの集電体の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、ロールプレス機で圧縮成形を行って、全厚が130μmになるように正極合剤層の厚みを調整した。短辺95mm、長辺120mmの長方形状シートに、短辺上部に長さ20mmの活物質未塗工のアルミニウム箔をリードタブとした正極を作製した。
(負極の作製)
負極活物質である黒鉛:91質量部と、バインダであるPVdF:9質量部とを、NMPを溶剤として均一になるように混合して、負極合剤含有ペーストを調製した。この負極合剤含有ペーストを、銅箔から成る厚さ15μmの集電体の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、ロールプレス機で圧縮成形を行って、全厚が130μmになるように負極合剤層の厚みを調整した。短辺95mm、長辺120mmの長方形状シートに、短辺上部に長さ20mmの活物質未塗工の銅箔をリードタブとした負極を作製した。
(非水電解液の調製)
非水電解液については、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1.0mol/リットルとなるように溶解させて調製した。
(セル作製)
上記の正極シート27枚、負極シート28枚を交互に重ね、それぞれをセパレータとしての多層多孔膜にて隔離することで電極板積層体を作製した。セパレータは125mm幅の帯状のセパレータで、これを交互に九十九折に折り畳むことで電極板積層体を作製した。この電極板積層体を平板状にプレス後、アルミニウム製ラミネートフィルムに収納し、3辺をヒートシールした。なお、正極リードタブと負極リードタブをそれぞれラミネートフィルム1辺から導出させた。さらに、乾燥後、この3辺シールされたラミネートフィルム内に上記の非水電解液を注入し、残りの1辺を封口した。こうして作製されるラミネート型リチウムイオン二次電池は、容量が10Ahとなるように設計された。
(釘刺評価)
ラミネート型リチウムイオン二次電池を、温調可能な防爆ブース内の鉄板上に静置した。ラミネート型リチウムイオン二次電池の中央部に、防爆ブース内の温度を40℃に設定し、直径3.0mmの鉄製釘を、2mm/秒の速度で貫通させ、釘は貫通した状態で維持した。釘内部に、釘が貫通した後にラミネート電池内部の温度が測定できるように設置した熱電対の温度を測定し、発火の有無および最高到達温度を以下のように評価した。
A:発火せず、最高到達温度が300℃未満
B:発火せず、最高到達温度が300℃以上
C:試験開始15秒以後に発火
D:試験開始15秒未満に発火
<電池評価>
(a.正極の作製)
正極活物質としてリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(Li[Ni1/3Mn1/3Co1/3]O)を91.2質量部、導電材としてりん片状グラファイトとアセチレンブラックをそれぞれ2.3質量部、樹脂製バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を4.2質量部用意し、これらをN-メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターを用いて、正極活物質塗布量が120g/mとなるように塗布した。130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機を用いて、正極活物質かさ密度が2.90g/cmとなるように圧縮成形し、正極とした。この正極を面積2.00cmの円形に打ち抜いた。
(b.負極の作製)
負極活物質として人造グラファイトを96.6質量部、樹脂製バインダとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量部とスチレンーブタジエン共重合体ラテックス1.7質量部を用意し、これらを精製水に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ16μmの銅箔の片面にダイコーターを用いて負極活物質が53g/mとなるように塗布した。120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機を用いて、負極活物質かさ密度が1.35g/cmとなるように圧縮成形し、負極とした。これを面積2.05cmの円形に打ち抜いた。
(c.非水電解液の調製)
エチレンカーボネート:エチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1.0ml/Lとなるように溶解させて、非水電解液を調製した。
(d.電池組立)
正極と負極の活物質面が対向するように、下から負極、多層多孔膜、正極の順に重ねた。この積層体を、容器本体と蓋が絶縁されている蓋付きステンレス金属製容器に、負極の銅箔、正極のアルミ箔が、それぞれ、容器本体、蓋と接するように収納することによりセルを得た。このセルを、減圧下、70℃で10時間乾燥を行った。その後、アルゴンボックス中でこの容器内に非水電解液を注入して密閉し、評価電池とした。
(e.サイクル試験)
上記(d.電池組立)において組み立てた電池を、温度25℃、電流値3mA(約0.5C)で電池電圧4.2Vまで充電し、さらに4.2Vを保持するようにして電流値を3mAから絞り始めるという方法で、合計約6時間、電池作製後の最初の充電を行い、その後、電流値3mAで電池電圧3.0Vまで放電した。
次に、25℃において、電流値6mA(約1.0C)で電池電圧4.2Vまで充電し、さらに4.2Vを保持するようにして電流値6mAから絞り始めるという方法で、合計約3時間充電を行い、その後、電流値6mAで電池電圧3.0Vまで放電して、その時の放電容量を1C放電容量(mAh)とした。
次に、25℃において、電流値6mA(約1.0C)で電池電圧4.2Vまで充電し、さらに4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法で、合計約3時間充電を行い、その後、電流値60mA(約10C)で電池電圧3.0Vまで放電して、その時の放電容量を10C放電容量(mAh)とした。
その後、電池を、温度25℃の条件下で、放電電流1Cで放電終止電圧3Vまで放電を行った後、充電電流1Cで充電終止電圧4.2Vまで充電を行った。これを1サイクルとして充放電を繰り返した。そして、初期容量(第1回目のサイクルにおける容量)に対する300サイクル後の容量保持率を用いて、以下の基準でサイクル特性を評価した。
A:83%以上の容量維持率 B:80%以上83%未満の容量維持率
C:75%以上80%未満の容量維持率
D:75%未満の容量維持率
[実施例1]
タンブラーブレンダーを用いて、粘度平均分子量(Mv)70万のホモポリマーのポリエチレン(PE)46.5質量%とMv25万のホモポリマーのPE46.5質量%とMv40万のホモポリマーのポリプロピレン(PP)7質量%のポリマー混合物を形成した。ポリマー混合物99質量部に対して、酸化防止剤としてペンタエリスリチル-テトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-5/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
混合物を溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィン量比が68質量%(樹脂組成物濃度が32質量%)となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃であり、スクリュー回転数70rpm、吐出量145kg/hで行った。
続いて、溶融混練物を、T-ダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、厚み1350μmのゲルシートを得た。
次に、ゲルシートを同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸を行った。設定延伸条件は、MD倍率7.0倍、TD倍率6.38倍、設定温度122℃とした。次に、塩化メチレン槽に導き、塩化メチレン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後、塩化メチレンを乾燥除去し、多孔化体を得た。
次に、多孔化体をTDテンターに導き、熱固定を行った。熱固定温度は132℃で、TD最大倍率を1.85倍、緩和率は0.784とし、厚さ12.0μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。得られたポリオレフィン微多孔膜の樹脂組成および上記の測定結果を表1に示す。
次に、表2に示される平均粒径及びBET比表面積を有する無機粒子を使用して、無機粒子に対して、表3に示されるとおりに、水溶性バインダ及び非水溶性バインダ樹脂バインダを混合し、さらに適量の水とポリカルボン酸ナトリウム(固形分換算)を混合して、攪拌・分散した。その際、必要に応じて、ビーズ径0.1mm、ミル内の回転数2000rpmの条件下でビーズミル処理を行った。処理後の混合液に、必要に応じて、増粘剤としてのキサンタムガムを添加して、塗布液を調製した。
ポリオレフィン微多孔膜の表面に、コロナ放電処理を実施した後、その処理表面にグラビアコーターを用いて塗布液を塗布した。その後、ポリオレフィン微多孔膜上の塗布液を60℃にて乾燥して、水を除去し、ポリオレフィン微多孔膜の片面に、無機粒子を97.4質量%(89.9体積%)含有する厚み1.5μmの多孔層を形成して、多層多孔膜を得た。得られた多層多孔膜の膜物性及び、多層多孔膜をセパレータとして備える電池評価結果も表3に併記する。
[実施例2~22及び比較例1~8]
ポリオレフィン微多孔膜の製造条件および物性と、無機粒子種と、多孔層の構成成分の種類、塗布液組成及び塗工条件とを、それぞれ表1~3に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、多層多孔膜を形成した。得られた多層多孔膜、及びそれをセパレータとして備える電池の各種特性を上記方法により評価した。評価結果を表3に示す。
なお、実施例19~21では、接着性樹脂(アクリルポリマー、ガラス転移温度90℃、平均粒径380nm、電解液膨潤度2.8)を80質量部と、異なるガラス転移温度を有する接着性樹脂(アクリルポリマー、ガラス転移温度-6℃、平均粒径132nm、電解液膨潤度2.5)を20質量部とを混合し、イオン交換水を加えることで接着性樹脂含有塗布液(接着性樹脂濃度3質量%)を調製した。多孔層を備えるポリオレフィン微多孔膜の片面または多孔層上に接着性樹脂含有塗布液をグラビアコーターでドット状に塗布して、表3に示されるドット直径及びドット間距離を有するドット状パタンを形成した。その後、60℃にて乾燥して水を除去した。

Claims (10)

  1. ポリオレフィン微多孔膜と、前記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に設けられた、無機粒子及び樹脂バインダを含む多孔層とを備える多層多孔膜であって、
    前記無機粒子の平均粒径D50が、0.01μm以上0.50μm以下であり、
    前記多孔層のジメチルスルホキシド(DMSO)接触角とN-メチル-2-ピロリドン(NMP)接触角から下記式:
    A=(NMP接触角)/(DMSO接触角)
    に従って算出される値Aが、0.010以上0.600以下である、
    多層多孔膜。
  2. 前記多孔層中に前記無機粒子が占める割合が、90質量%以上100質量%以下かつ、前記多孔層の空隙を除いた体積を100体積%として70体積%以上100体積%以下である、請求項1に記載の多層多孔膜。
  3. 前記多孔層の厚みが、0.1μm以上2.5μm以下である、請求項1又は2に記載の多層多孔膜。
  4. 前記ポリオレフィン微多孔膜の目付換算突刺強度が、50gf/(g/m)以上である、請求項1又は2に記載の多層多孔膜。
  5. 前記無機粒子のBET比表面積が、3.0m/g以上100.0m/g以下である、請求項1又は2に記載の多層多孔膜。
  6. 前記多層多孔膜の150℃熱収縮率が、MD方向、TD方向共に、10%以下である、請求項1又は2に記載の多層多孔膜。
  7. 前記多孔層の透気度が、1sec/100cm以上50sec/100cm以下である、請求項1又は2に記載の多層塗工膜
  8. 前記無機粒子が、硫酸バリウムである、請求項1又は2に記載の多層多孔膜。
  9. 前記多層多孔膜の少なくとも片面に、熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性ポリマー含有層が形成された、請求項1又は2に記載の多層多孔膜。
  10. 前記熱可塑性ポリマーが、粒子状重合体を含み、かつ前記熱可塑性ポリマー含有層がドット状のパタンを有する、請求項9に記載の多層多孔膜。
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