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JP2013206846A - 二次電池多孔膜用スラリー組成物 - Google Patents

二次電池多孔膜用スラリー組成物 Download PDF

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JP2013206846A JP2012077512A JP2012077512A JP2013206846A JP 2013206846 A JP2013206846 A JP 2013206846A JP 2012077512 A JP2012077512 A JP 2012077512A JP 2012077512 A JP2012077512 A JP 2012077512A JP 2013206846 A JP2013206846 A JP 2013206846A
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Abstract

【課題】出力特性に優れた二次電池を製造するために用いられる二次電池多孔膜用スラリー組成物を提供する。
【解決手段】二次電池多孔膜用スラリー組成物は、非導電性粒子、第一の重合体及び第二の重合体を含むバインダー、並びに分散媒を含み、前記第一の重合体がフッ素含有重合体であり、前記第二の重合体が、ニトリル基を有する重合単位、親水性基を有する重合単位、及び炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を含有してなる重合体である。
【選択図】なし

Description

本発明は二次電池多孔膜用スラリー組成物に関し、さらに詳しくはリチウムイオン二次電池の電極またはセパレーターの表面に形成され、柔軟性が高く、電池のサイクル特性の改善に寄与しうる二次電池多孔膜を製造するための二次電池多孔膜用スラリー組成物に関する。また本発明は、かかる二次電池多孔膜を備えた二次電池電極、二次電池セパレーター及び二次電池に関する。
実用化されている電池の中でも、リチウムイオン二次電池は最も高いエネルギー密度を示し、特に小型エレクトロニクス用に多く使用されている。また、小型用途に加えて自動車向けへの展開も期待されている。その中で、リチウムイオン二次電池の長寿命化と、安全性のさらなる向上が要望されている。
リチウムイオン二次電池は、一般に、集電体に担持された電極活物質層を含む正極および負極、並びに、セパレーターおよび非水電解液を備える。また、電極活物質層は、通常、平均粒子径5〜50μm程度の電極活物質と電極活物質層用結着剤とを含む。電極は、通常、集電体上に粉末の電極活物質を含んだ電極活物質層用スラリーを塗布して電極活物質層を形成して作製される。また、正極と負極とを隔離するためのセパレーターとしては、通常、厚さ10〜50μm程度の非常に薄いセパレーターが使用される。リチウムイオン二次電池は、電極とセパレーターとの積層工程や所定の電極形状に裁断する裁断工程等を経て製造される。
しかし、この一連の製造工程を通過する間に、電極活物質層から電極活物質が脱離し、脱離した電極活物質の一部が異物として電池内に含まれてしまうことがある。このような異物は、粒子径が5〜50μm程度であり、セパレーターの厚みと同程度であるため、組み立てられた電池内でセパレーターを貫通し、短絡を引き起こすことがある。
また、電池の作動時には、発熱を伴う。この結果、延伸ポリエチレン樹脂等の延伸樹脂からなる有機セパレーターも加熱される。延伸樹脂からなる有機セパレーターは、概して150℃以下の温度でも収縮しやすく、電池の短絡を生じやすい。また、釘のような鋭利な形状の突起物が電池を貫いた時(例えば釘刺し試験時)、瞬時に短絡し、反応熱が発生し、短絡部が拡大する傾向がある。
そこで、このような課題を解決するため、電極または有機セパレーターの表面または有機セパレーターの内部に、無機フィラー等の非導電性粒子とバインダーとを含む二次電池用多孔膜を設けることが提案されている。このような多孔膜を設けることで有機セパレーターまたは電極の強度が上がり、安全性が向上する。
前記のような多孔膜に関する技術としては、例えば特許文献1及び特許文献2に記載の技術が知られている。特許文献1には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びゴム系樹脂(スチレンブタジエンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム)をバインダーとして用いた多孔膜が記載されている。また、特許文献2には、PVDF、アクリル系ゴム粒子及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をバインダーとして用いた多孔膜が記載されている。
特開2009−54455号公報 特開2011−222537号公報
前記の多孔膜は、通常、多孔膜の材料を分散させたスラリー組成物を用意し、このスラリー組成物を塗布及び乾燥させて得られる。しかし、本発明者の検討によれば、特許文献1及び2に記載の二次電池用多孔膜は、十分な強度や柔軟性を有さないため、多孔膜の製造工程における多孔膜から非導電性粒子が脱離(粉落ち)することがあった。その結果、二次電池の出力特性等を低下させてしまうことがあった。
そこで、本発明は、出力特性に優れた二次電池を製造するために用いられる二次電池多孔膜用スラリー組成物を提供することを目的とする。
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕非導電性粒子、第一の重合体及び第二の重合体を含むバインダー、並びに分散媒を含み、
前記第一の重合体がフッ素含有重合体であり、
前記第二の重合体が、ニトリル基を有する重合単位、親水性基を有する重合単位、及び炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を含有してなる重合体である、二次電池多孔膜用スラリー組成物。
〔2〕前記バインダーにおける前記第一の重合体と前記第二の重合体との比率が、質量比で5:95〜50:50である〔1〕に記載の二次電池多孔膜用スラリー組成物。
〔3〕前記第一の重合体がポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の中から選ばれる少なくとも一つである〔1〕または〔2〕に記載の二次電池多孔膜用スラリー組成物。
〔4〕前記第二の重合体が、(メタ)アクリル酸エステル重合単位を含んでなる〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の二次電池多孔膜用スラリー組成物。
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の二次電池多孔膜用スラリー組成物を、膜状に形成、乾燥してなる二次電池多孔膜。
〔6〕集電体、電極活物質層、及び多孔膜をこの順に積層してなり、該多孔膜が、〔5〕に記載の二次電池多孔膜であることを特徴とする二次電池電極。
〔7〕有機セパレーター及び多孔膜を積層してなり、該多孔膜が、〔5〕に記載の二次電池多孔膜であることを特徴とする二次電池セパレーター。
〔8〕正極、負極、有機セパレーター及び電解液を含む二次電池であって、
前記正極、負極及び有機セパレーターのいずれかに、〔5〕に記載の二次電池多孔膜が積層されてなる、二次電池。
本発明の二次電池多孔膜用スラリー組成物によれば、特定のバインダーを含むため、非導電性粒子の分散性に優れる多孔膜を形成することができる。該多孔膜は、特定のバインダーを含むため、多孔膜の製造工程における多孔膜からの非導電性粒子の脱離(粉落ち)がほとんどなく、その結果、出力特性及び信頼性に優れた二次電池を得ることができる。
〔二次電池多孔膜用スラリー組成物〕
本発明の二次電池多孔膜用スラリー組成物(以下、「多孔膜スラリー」と記載することがある。)は、後述する二次電池多孔膜(以下、「多孔膜」と記載することがある。)を形成するためのスラリー組成物である。多孔膜スラリーは、非導電性粒子、特定組成のバインダー、及び分散媒を含み、固形分として該非導電性粒子、該バインダー及び任意の成分を、分散媒に均一に分散したものである。
(非導電性粒子)
本発明に用いる非導電性粒子は、二次電池(リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池など)の使用環境下で安定に存在し、電気化学的にも安定であることが望まれる。
非導電性粒子としては、例えば各種の無機粒子、有機粒子やその他の粒子を使用することができる。中でも、無機酸化物粒子または有機粒子が好ましい。
無機酸化物粒子は、電解液中での安定性と電位安定性に優れるため二次電池セパレーターの信頼性を向上させるという観点から、好ましく用いることができる。
有機粒子は、粒子中における金属イオン等のコンタミネーション(以下において「金属異物」と表すことがある。)が少ない。粒子中の金属イオンは、電極付近で塩を形成することがあり、電極の内部抵抗の増大や二次電池のサイクル特性の低下の原因となるおそれがある。つまり、二次電池のサイクル特性を向上させるという観点からは有機粒子を用いることが好ましい。
また、その他の粒子としては、カーボンブラック、グラファイト、SnO、ITO、金属粉末などの導電性金属及び導電性を有する化合物や酸化物の微粉末の表面を、非電気伝導性の物質で表面処理することによって、電気絶縁性を持たせた粒子が挙げられる。本発明においては、非導電性粒子として、上記粒子を2種以上併用して用いてもよい。
無機粒子
無機粒子としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化チタン、BaTiO、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物等の無機酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化硼素等の無機窒化物粒子;シリコーン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土微粒子等が用いられる。これらの粒子は必要に応じて元素置換、表面処理、固溶体化等されていてもよく、また単独でも2種以上の組合せからなるものでもよい。これらの中でも電解液中での安定性と電位安定性の観点から無機酸化物粒子が好ましい。
無機粒子の形状は、特に限定はされず、針状、棒状、紡錘状、板状等であってもよい。電池内に異物が混入した場合に、異物(特に針状物)による多孔膜の貫通を有効に防止しうる観点からは、板状であることが好ましい。
無機粒子が板状である場合には、多孔膜中において、無機粒子を、その平板面が多孔膜の面にほぼ平行となるように配向させることが好ましく、このような多孔膜を使用することで、電池の短絡の発生をより良好に抑制できる。これは、無機粒子を前記のように配向させることで、無機粒子同士が平板面の一部で重なるように配置されるため、多孔膜の片面から他面に向かう空隙(貫通孔)が、直線ではなく曲折した形で形成される(すなわち、曲路率が大きくなる)と考えられ、これにより、リチウムデンドライトが多孔膜を貫通することを防止でき、短絡の発生がより良好に抑制されるものと推測される。
好ましく用いられる板状の無機粒子としては、各種市販品が挙げられ、例えば、旭硝子エスアイテック社製「サンラブリー」(SiO)、石原産業社製「NST−B1」の粉砕品(TiO)、堺化学工業社製の板状硫酸バリウム「Hシリーズ」、「HLシリーズ」、林化成社製「ミクロンホワイト」(タルク)、林化成社製「ベンゲル」(ベントナイト)、河合石灰社製「BMM」や「BMT」(ベーマイト)、河合石灰社製「セラシュールBMT−B」[アルミナ(Al)]、キンセイマテック社製「セラフ」(アルミナ)、斐川鉱業社製「斐川マイカ Z−20」(セリサイト)などが入手可能である。この他、SiO、Al、ZrOについては、特開2003−206475号公報に開示の方法により作製することができる。
無機粒子の平均粒子径は、好ましくは0.005〜10μm、より好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.3〜2μmの範囲にある。
無機粒子の平均粒子径が上記範囲にあることで、多孔膜スラリーの分散状態の制御がしやすくなるため、均質な所定厚みの多孔膜の製造が容易になる。さらに、バインダーとの結着性が向上し、多孔膜を巻回した場合であっても無機粒子の脱離が防止され、多孔膜を薄膜化しても十分な安全性を達成しうる。また、多孔膜中の粒子充填率が高くなることを抑制することができるため、多孔膜中のイオン伝導性が低下することを抑制することができる。さらにまた、本発明の多孔膜を薄く形成することができる。
なお、無機粒子の平均粒子径は、SEM(走査電子顕微鏡)画像から、任意の視野において50個の一次粒子を任意に選択し、画像解析を行い、各粒子の円相当径の平均値として求めることができる。
無機粒子の粒子径分布(CV値)は、好ましくは0.5〜40%、より好ましくは0.5〜30%、特に好ましくは0.5〜20%である。無機粒子の粒子径分布を前記範囲とすることにより、非導電性粒子間において所定の空隙を保つことができるため、本発明の二次電池中においてリチウムの移動を阻害し抵抗が増大することを抑制することができる。なお、無機粒子の粒子径分布(CV値)は、無機粒子の電子顕微鏡観察を行い、200個以上の粒子について粒子径を測定し、平均粒子径および粒子径の標準偏差を求め、(粒子径の標準偏差)/(平均粒子径)を算出して求めることができる。CV値が大きいほど、粒子径のバラツキが大きいことを意味する。
また、本発明に用いる無機粒子のBET比表面積は、無機粒子の凝集を抑制し、後述する多孔膜スラリーの流動性を好適化する観点から、具体的には0.9〜200m/gであることが好ましく、1.5〜150m/gであることがより好ましい。
有機粒子
有機粒子としては、後述するバインダーの有する官能基(例えば、後述する第二の重合体における親水性基等)と架橋し得る官能基を有する有機粒子が好ましい。このような有機粒子を用いることにより、バインダーとの反応性を高めることができるため、多孔膜スラリー中における非導電性粒子(有機粒子)の分散性が向上する。
本発明に用いる有機粒子において、バインダーの有する官能基と架橋し得る官能基とは、バインダーの有する官能基に由来するアニオンと化学結合を形成することのできる官能基のことをいい、具体的には、エポキシ基、N−メチロールアミド基、オキサゾリン基、アリル基、イソシアネート基、オキセタニル基、アルコキシシラン基などが挙げられる。中でもバインダーの有する官能基との反応性が高いために容易に架橋でき、架橋時の温度や時間を変化させることで架橋密度の制御も容易にできるので、エポキシ基、アリル基、アルコキシシラン基が好ましく、エポキシ基が最も好ましい。なお、上記の官能基の種類は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
バインダーの有する官能基と架橋し得る官能基を有するモノマーを、有機粒子を製造する際に用いることで、該官能基を有する重合単位を有機粒子中に導入することができる。
エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を含有する単量体やハロゲン原子及びエポキシ基を含有する単量体などが挙げられる。
炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を含有する単量体としては、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテル等の不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5−エポキシ−2−ペンテン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン等のジエン又はポリエンのモノエポキシド;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセン等のアルケニルエポキシド;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル等の、不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;などが挙げられる。
ハロゲン原子及びエポキシ基を含有する単量体としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリン;p−クロロスチレンオキシド;ジブロモフェニルグリシジルエーテル;などが挙げられる。
N−メチロールアミド基を有するモノマーとしては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のメチロール基を有する(メタ)アクリルアミド類などが挙げられる。
オキサゾリン基を有するモノマーとしては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
アリル基を有するモノマーとしては、例えば、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
イソシアネート基を有するモノマーとしては、例えば、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルメチルベンジルイソシアネートなどが挙げられる。
オキセタニル基を有するモノマーとしては、例えば、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−トリフロロメチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−4−トリフロロメチルオキセタンなどが挙げられる。
アルコキシシラン基を有するモノマーとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシトリエトキシシランなどが挙げられる。
有機粒子中の官能基の含有量は、有機粒子に対して、好ましくは0.003〜0.08mmol/g、より好ましくは0.005〜0.05mmol/gである。有機粒子中の官能基量を上記範囲とすることで、有機粒子中の官能基の運動性が十分に保たれるため、バインダーとの反応性が向上する。その結果、多孔膜の強度を向上させることができる。
有機粒子は、更に多官能(メタ)アクリレートの重合単位を含むことが好ましい。有機粒子における単量体合計重量中の多官能(メタ)アクリレートの重合単位の含有割合は、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは60〜95質量%、特に好ましくは70〜95質量%である。有機粒子中に多官能(メタ)アクリレートの重合単位を含むことで、有機粒子の架橋密度が高くなるため有機粒子の耐熱性が向上し、得られる二次電池多孔膜の信頼性も向上する。
多官能(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパンなどのジアクリレート化合物;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレートなどのトリアクリレート化合物;テトラメチロールメタンテトラアクリレートなどのテトラアクリレート化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパンなどのジメタクリレート化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレートなどのトリメタクリレート化合物などが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコールジメタクリレートまたはトリメチロールプロパントリメタクリレートを用いることが好ましく、エチレングリコールジメタクリレートを用いることが特に好ましい。エチレングリコールジメタクリレートを用いることで、架橋点が増えるため、優れた耐熱性を有する有機粒子を得ることができ、その結果、二次電池の高温サイクル特性が向上する。これらは、ジビニルベンゼンやエチルビニルベンゼンなどの他の架橋性モノマーと併用して架橋することが好ましく、架橋性モノマーと併用することで有機粒子の架橋密度をより向上させることができる。
有機粒子は、上記2種の重合単位に加えて、任意の重合単位を含んでもよい。任意の重合単位を構成する単量体(任意の単量体)としては、芳香族モノビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、共役ジエンモノマー、ビニルエステル化合物、α−オレフィン化合物、カチオン性単量体、水酸基含有単量体が挙げられる。これらの単量体から導かれる重合単位は、有機粒子中に2種以上含まれていてもよい。
芳香族モノビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、フルオロスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
アクリル酸エステルモノマーとしては、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルエチルアクリレート、N,N’−ジメチルアミノエチルアクリレートなどが挙げられる。
メタクリル酸エステルモノマーとしては、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられる。
共役ジエンモノマーとしては、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
ビニルエステル化合物としては、酢酸ビニルなどが挙げられる。
α−オレフィン化合物としては、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。
カチオン性単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
水酸基含有単量体としては、(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オールなどのエチレン性不飽和アルコール;アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、マレイン酸ジ−2−ヒドロキシエチル、マレイン酸ジ−4−ヒドロキシブチル、イタコン酸ジ−2−ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアルカノールエステル類;一般式CH=CR−COO−(C2nO)−H(mは2ないし9の整数、nは2ないし4の整数、Rは水素又はメチル基を表す)で表されるポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;2−ヒドロキシエチル−2’−(メタ)アクリロイルオキシフタレート、2−ヒドロキシエチル−2’−(メタ)アクリロイルオキシサクシネートなどのジカルボン酸のジヒドロキシエステルのモノ(メタ)アクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−4−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−6−ヒドロキシヘキシルエーテルなどのアルキレングリコールのモノ(メタ)アリルエーテル類;ジエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレングリコール(メタ)モノアリルエーテル類;グリセリンモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリル−2−クロロ−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルエーテルなどの、(ポリ)アルキレングリコールのハロゲン及びヒドロキシ置換体のモノ(メタ)アリルエーテル;オイゲノール、イソオイゲノールなどの多価フェノールのモノ(メタ)アリルエーテル及びそのハロゲン置換体;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルチオエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルチオエーテルなどのアルキレングリコールの(メタ)アリルチオエーテル類;などが挙げられる。
上記の任意の単量体は、いずれか1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記任意の単量体の中でも、特に、スチレン、メチルメタクリレート、又はこれらの組み合わせが、ジビニルベンゼンやエチルビニルベンゼン等の架橋性モノマーとの反応性の観点から好ましい。
有機粒子における単量体合計重量中の任意の重合単位の含有割合は、好ましくは3〜80質量%、より好ましくは4〜70質量%、特に好ましくは5〜60質量%である。特に、任意の単量体として、スチレン及び/又はメチルメタクリレートを含む場合、その好ましい含有割合は、有機粒子を構成する単量体全量を基準として、4.5〜76.5質量%である。スチレン及びメチルメタクリレートの両方を含有する場合は、それらの合計がこの範囲であることが好ましい。スチレン及び/又はメチルメタクリレートの含有割合を76.5質量%以下とすることにより、有機粒子の分散性が低下することを防ぎ、多孔膜の強度を高めることができ、且つ膜均一性をも得ることができる。一方スチレン及び/又はメチルメタクリレートの含有割合を4.5質量%以上とすることにより、有機粒子の耐熱性を向上させることができるため、多孔膜の耐熱性を向上させることができ、ひいては高温における電池の短絡の発生を低減することができる。
(有機粒子の製造方法)
有機粒子の製造方法は特に限定されず、有機粒子を構成する上述した単量体及び必要に応じて他の任意の成分を分散媒に溶解又は分散させ、乳化重合法またはソープフリー重合法によって、かかる分散液中で重合する方法が挙げられる。
乳化重合においては、重合を、複数の段階に分けて行うことが、所望の粒子径及び平均円形度を得る上で好ましい。例えば、有機粒子を構成する単量体の一部を先に重合させることによりシードポリマー粒子を形成し、続いて、該シードポリマー粒子に他の単量体を吸収させ、その状態で重合を行い、有機粒子を製造することができる(シード重合法)。さらには、シードポリマー粒子の形成に際し、重合をさらに複数の段階に分けて行うことができる。
より具体的には、例えば、有機粒子を構成する単量体の一部を用いてシードポリマー粒子Aを形成し、かかるシードポリマー粒子Aと、有機粒子を構成する別の単量体とを用いてより大きな粒子径を有するシードポリマー粒子Bを形成し、さらに、かかるシードポリマー粒子Bと、有機粒子を構成する残りの単量体及び必要に応じて他の任意の成分とを用いて、さらに大きな粒子径を有する有機粒子を形成することができる。このように、シードポリマー粒子を2段階の反応で形成し、それからさらに有機粒子を形成することにより、安定して所望の粒子径及び平均円形度を得られるという利点がある。この場合、有機粒子を構成する単量体のうちの、バインダーの有する官能基と架橋し得る官能基を有するモノマーの一部又は全部(好ましくは全部)を、シードポリマー粒子A及びシードポリマー粒子Bを形成する際に用いることが、粒子の安定性確保のため好ましい。
このように複数の段階に分けて重合を行う場合も含まれるため、有機粒子を構成する単量体は、重合に際して、その全ての単量体が混合物となった状態とされていなくてもよい。重合が複数の段階に分けて行われる場合、最終的に得られる有機粒子において、有機粒子を構成する重合単位に由来する単量体の組成が、前述した有機粒子を構成する単量体の組成比を満たしていることが好ましい。
有機粒子を構成する単量体の重合に用いうる分散媒としては、水、有機溶媒、及びこれらの混合物を挙げることができる。有機溶媒としては、ラジカル重合に不活性でかつ単量体の重合を阻害しないものを用いうる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、シクロヘキサノール、オクタノールなどのアルコール類、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル類、シクロヘキサノンなどのケトン類、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、分散媒として水などの水性の媒体を用い、重合として乳化重合を行うことができる。
シードポリマー粒子と単量体とを反応させる際のこれらの量比は、シードポリマー粒子1質量部に対する単量体の使用量として、好ましくは2〜19質量部、より好ましくは3〜16質量部、さらにより好ましくは4〜12質量部である。シードポリマー粒子1質量部に対する単量体の使用量を2質量部以上とすることにより、得られる有機粒子の機械的強度及び耐熱性を高めることができる。また、シードポリマー粒子1質量部に対する単量体の使用量を19質量部以下とすることにより、効率よくシードポリマー粒子へ単量体を吸収させることができるため、シードポリマー粒子に吸収されない単量体量を少ない範囲に保つことができる。また、有機粒子の粒子径のコントロールを良好に行うことができるため、幅広い粒子径分布を持つ粗大粒子や多量の微少粒子の発生を防ぐことができる。
重合の具体的な操作としては、シードポリマー粒子の水性分散体に対して単量体を一時に投入する方法、重合を行いながら単量体を分割して又は連続的に添加する方法がある。重合が開始してシードポリマー粒子中において実質的に架橋が生ずる前にシードポリマー粒子に単量体を吸収させることが好ましい。
重合の中期以降に単量体を添加すると、単量体がシードポリマー粒子に吸収されないため、微少粒子が多量に生じて重合安定性が悪くなり、重合反応を維持することができない場合がある。そのためシードポリマー粒子に対してすべての単量体を重合開始前に添加するか、重合転化率が30%程度に達する前にすべての単量体の添加を終了させておくことが好ましい。特に重合の開始前にシードポリマー粒子の水性分散体に単量体を加えて撹拌し、シードポリマー粒子にこれを吸収させた後に重合を開始することが好ましい。
重合の反応系には、有機粒子を構成する単量体及び分散媒の他に、任意成分を加えることができる。具体的には、重合開始剤、界面活性剤、懸濁保護剤等の成分を加えることができる。重合開始剤としては、一般の水溶性のラジカル重合開始剤あるいは油溶性のラジカル重合開始剤を用いることができるが、シードポリマー粒子に吸収されない単量体が水相で重合を開始することの少ない点で水溶性のラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。水溶性のラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化水素、あるいは前記水溶性開始剤または後述の油溶性開始剤と重亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤の組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。また、油溶性のラジカル重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどを挙げることができる。油溶性のラジカル重合開始剤のなかでは、α,α’−アゾビスイソブチロニトリルを好ましく用いることができる。なお、重合反応においては、重クロム酸カリウム、塩化第2鉄、ハイドロキノンなどの水溶性の重合禁止剤を少量添加すると、微少粒子の発生を抑制することができるので好ましい。
界面活性剤としては通常のものを用いることができ、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物などのアニオン系乳化剤を例示することができる。さらに、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノステアレートなどのノニオン系界面活性剤を併用することも可能である。好ましい懸濁保護剤としては、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウムあるいは微粉末無機化合物などを挙げることができる。
本発明において、重合時の系の安定性を確保しながら目的の粒子径で粒子径分布の狭い有機粒子を再現性よくコントロールして得るための最も好ましい重合開始剤と安定化剤の組み合わせは、重合開始剤として水溶性のラジカル重合開始剤を用い、安定化剤としてその重合系でのC.M.C.濃度(臨界ミセル濃度)以下でかつその近傍濃度(具体的にはC.M.C.濃度の0.3〜1.0倍)の界面活性剤を用いるものである。
(有機粒子の性状)
本発明に用いる有機粒子の形状は、球状、針状、棒状、紡錘状、板状等特に限定されないが、球状、針状、紡錘状が好ましい。有機粒子が高い耐熱性を有することが、多孔膜に耐熱性を付与し、後述する二次電池電極や二次電池セパレーターの信頼性を向上させる観点から好ましい。具体的には、熱天秤分析により窒素雰囲気下で昇温速度10℃/分で加熱したときの有機粒子の減量割合が10質量%に達する温度が、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上、特に好ましくは360℃以上である。一方、当該温度の上限は特に制限されないが、例えば450℃以下とすることができる。
有機粒子の平均粒子径は、好ましくは0.005〜10μm、より好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.3〜2μmである。有機粒子の平均粒子径を上記範囲とすることにより、多孔膜スラリーの分散状態の制御がしやすくなるため、均質な所定厚みの多孔膜の製造が容易になる。また、多孔膜中の粒子充填率が高くなることを抑制できるため、多孔膜中のイオン伝導性が低下することを抑制でき、優れたサイクル特性を実現できる。有機粒子の平均粒子径を、0.3〜2μmの範囲にすると、分散、塗布の容易さ、空隙のコントロール性に優れるので特に好ましい。平均粒子径は、電子顕微鏡観察を行い、100個以上の粒子について、その粒子像の最長辺をa、最短辺をbとし、(a+b)/2を算出し、その平均値から求めることができる。
有機粒子の平均円形度は、好ましくは0.900〜0.995、より好ましくは0.91〜0.98、特に好ましくは0.92〜0.97である。有機粒子の平均円形度を上記範囲とすることにより、有機粒子同士の接触面積を適度に保つことができるため、多孔膜の強度及び耐熱性を向上させることができる。その結果、該多孔膜を用いた二次電池の信頼性を向上させることができる。
また、本発明に用いる有機粒子のBET比表面積は、有機粒子の凝集を抑制し、多孔膜スラリーの流動性を好適化する観点から具体的には、0.9〜200m/gであることが好ましく、1.5〜150m/gであることがより好ましい。
有機粒子の粒子径分布は、好ましくは1.00〜1.4、より好ましくは1.00〜1.3、特に好ましくは1.00〜1.2である。有機粒子の粒子径分布を上記範囲とすることにより、有機粒子間において所定の空隙を保つことができるため、本発明の二次電池中においてリチウムの移動を阻害し抵抗が増大することを抑制することができる。なお、有機粒子の粒子径分布は、ベックマン株式会社製のレーザー回折散乱粒度分布測定装置(LS230)にて粒子径測定を行った後、得られた体積平均粒子径Vと数平均粒子径Nとの比V/Nで求めることができる。
また、本発明に用いる有機粒子においては、電池の性能に悪影響を及ぼす金属異物を低減する観点から、金属異物の含有量が100ppm以下の有機粒子を用いることが好ましい。金属異物または金属イオンが多く含まれる有機粒子を用いると、多孔膜スラリー中において、金属異物(金属イオン)が溶出し、これが多孔膜スラリー中のポリマーとイオン架橋を起こし、多孔膜スラリーが凝集し結果として多孔膜の多孔性が下がる。そのため、該多孔膜を用いた二次電池のレート特性(出力特性)が悪化する恐れがある。前記金属として、特にCa、Co、Cu、Fe、Mg、Ni、ZnおよびCr等の含有が最も好ましくない。従って、有機粒子中の金属含有量としては、これらの金属イオンの合計量で、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。上記含有量が少ないほど電池特性の劣化が起こりにくくなる。ここでいう「金属異物」とは、有機粒子以外の金属単体を意味する。有機粒子中の金属異物の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)を用いて測定することができる。
多孔膜スラリーの全固形分100質量部に対する非導電性粒子の含有量は、好ましくは70〜99質量部、より好ましくは75〜98質量部、特に好ましくは80〜98質量部である。非導電性粒子の含有量を、前記範囲とすることにより、高い熱安定性を示す多孔膜を得ることができる。また、多孔膜の製造工程における非導電性粒子の多孔膜からの脱離(粉落ち)を抑制することができ、高い強度を示す多孔膜を得ることができると共に、サイクル特性や出力特性等の電池特性の低下を防ぐことができる。
(バインダー)
本発明に用いるバインダーは、後述する第一の重合体と第二の重合体を含んでなる。本発明においては、第一の重合体及び第二の重合体を含むバインダーを用いることで、高い柔軟性と結着性を有し、強度の高い二次電池多孔膜を形成することができる。
第一の重合体
バインダー中の前記第一の重合体は、フッ素含有重合体を含有することを特徴とする。フッ素含有重合体を含むことで、電解液に対するバインダーの膨潤を抑制し、その結果、多孔膜の製造工程における非導電性粒子の多孔膜からの脱離(粉落ち)を抑制できる。そのため、高い強度を有する多孔膜が得られると共に、二次電池の出力特性を向上させることができる。
本発明に用いるフッ素含有重合体は、フッ素含有モノマーの重合単位を含む重合体である。具体的には、フッ素含有モノマーの単独重合体、フッ素含有モノマーとこれと共重合可能な他のフッ素含有モノマーとの共重合体、フッ素含有モノマーとこれと共重合可能なモノマーとの共重合体、フッ素含有モノマーとこれと共重合可能な他のフッ素含有モノマーとこれらと共重合可能なモノマーとの共重合体が挙げられる。
フッ素含有モノマーとしては、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、三フッ化塩化ビニル、フッ化ビニル、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどが挙げられるが、フッ化ビニリデンが好ましい。
フッ素含有重合体における、フッ素含有モノマーの重合単位の割合は、通常70質量%以上、好ましくは80質量%以上である。
フッ素含有モノマーと共重合可能なモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの1−オレフィン;スチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル(アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルの略記。以後同様。)などの不飽和ニトリル化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有ビニル化合物; アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有不飽和化合物;(メタ)アクリルジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノ基含有不飽和化合物;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸などのスルホン酸基含有不飽和化合物;3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパン硫酸などの硫酸基含有不飽和化合物;(メタ)アクリル酸−3−クロロ−2−燐酸プロピル、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパン燐酸などの燐酸基含有不飽和化合物などが挙げられる。
フッ素含有重合体における、フッ素含有モノマーと共重合可能なモノマーの重合単位の割合は、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
フッ素含有重合体の中でも、フッ素含有モノマーとしてフッ化ビニリデンを含む重合体、具体的には、フッ化ビニリデンの単独重合体、フッ化ビニリデンとこれと共重合可能な他のフッ素含有モノマーとの共重合体、フッ化ビニリデンとこれと共重合可能な他のフッ素含有モノマーとこれらと共重合可能なモノマーとの共重合体が好ましい。
上記のようなフッ素含有重合体の中でも、本発明に用いる第一の重合体としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が好ましく、ポリフッ化ビニリデンがより好ましい。
本発明に用いる第一の重合体のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによるポリスチレン換算値の重量平均分子量は、好ましくは100,000〜2,000,000、より好ましくは200,000〜1,500,000、特に好ましくは400,000〜1,000,000である。第一の重合体の重量平均分子量を上記範囲とすることで、非導電性粒子の多孔膜からの脱離(粉落ち)が抑制され、多孔膜スラリーの製造時に多孔膜スラリーを塗工しやすい粘度に調整することが容易である。
本発明に用いる第一の重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以下、より好ましくは−20℃以下、特に好ましくは−30℃以下である。第一の重合体のTgの下限は特に限定されないが、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−40℃以上である。第一の重合体のTgが上記範囲にあることにより、非導電性粒子の多孔膜からの脱離(粉落ち)が抑制できる。また、第一の重合体のTgは、様々な単量体を組み合わせることによって調製可能である。なお、Tgは示差走査熱量分析計を用いて、JIS K 7121;1987に基づいて測定できる。
本発明に用いる第一の重合体の融点(Tm)は、好ましくは190℃以下、より好ましくは150〜180℃、さらに好ましくは160〜170℃である。第一の重合体のTmが上記範囲にあることにより、柔軟性と密着強度に優れる電極を得ることが出来る。また、第一の重合体のTmは、様々な単量体を組み合わせること、もしくは重合温度を制御することなどによって調製可能である。なお、Tmは示差走査熱量分析計を用いて、JIS K 7121;1987に基づいて測定できる。
本発明に用いる第一の重合体の製造方法は特に限定はされず、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。これらの中でも、懸濁重合法や乳化重合法が好ましく、乳化重合法がより好ましい。乳化重合法により第一の重合体を製造することで、第一の重合体の生産性を向上できると共に、所望の平均粒径を有する第一の重合体を得ることができる。重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの反応も用いることができる。重合に用いる重合開始剤としては、たとえば過酸化ラウロイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、α,α’−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、または過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
本発明に用いる第一の重合体は、分散媒に分散された分散液または溶解された溶液の状態で使用される(以下、「第一重合体分散液」と記載することがある。)。分散媒としては、第一の重合体を均一に分散または溶解し得るものであれば、特に制限されず、水や有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、エチルメチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのケトン類;メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素など塩素脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのアシロニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。
これらの分散媒は、単独で使用しても、これらを2種以上混合して混合溶媒として使用してもよい。これらの中でも特に、多孔膜スラリー作製時に工業上使用されていること、製造上揮発しにくいこと、その結果、多孔膜スラリーの揮発を抑えられ、得られる多孔膜の平滑性が向上することから、水、若しくはN−メチルピロリドン、シクロヘキサノンやトルエン等が好ましい。
第一の重合体が分散媒に粒子状で分散している場合において、粒子状で分散している第一の重合体の平均粒径(分散粒子径)は、体積平均粒子径で、好ましくは10〜2000nm、より好ましくは50〜1500nm、特に好ましくは100〜1000nmである。第一の重合体の平均粒径が上記範囲であると、多孔膜スラリーの分散性が向上し、得られる多孔膜の強度および柔軟性が良好となる。その結果、本発明の二次電池電極や二次電池セパレーターの信頼性が向上する。
第一の重合体が分散媒に粒子状で分散している場合において、第一重合体分散液の固形分濃度は、通常1〜25質量%であり、3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。第一重合体分散液の固形分濃度が上記範囲であると、多孔膜スラリーを製造する際における作業性が良好である。
また、第一の重合体を8%溶液となるようにNMPに溶解させた時の粘度は、好ましくは10〜5000mPa・s、より好ましくは100〜2000mPa・sである。第一の重合体の8%NMP溶液粘度を上記範囲とすることで、多孔膜スラリーの製造時に多孔膜スラリーを塗工しやすい粘度に調整することが容易である。第一の重合体の8%NMP溶液粘度は、第一の重合体を8%溶液となるようにNMPに溶解させ、これに対し25℃、60rpmで、B型粘度計(東機産業製 RB−80L)を用いて、JIS K 7117−1;1999に基づいて測定できる。
第二の重合体
バインダー中の前記第二の重合体は、ニトリル基を有する重合単位、親水性基を有する重合単位、及び炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を含有することを特徴とする。
前記第二の重合体中にニトリル基を有する重合単位を含むことで、多孔膜スラリー中における非導電性粒子の分散性が向上し、多孔膜スラリーを長期間安定状態で保存することができる。この結果、非導電性粒子が均一に分散した多孔膜の製造が容易になる。また、リチウムイオンの伝導性が良好となるため、電池内における内部抵抗を小さくし、電池の出力特性を向上させることができる。
前記ニトリル基を有する重合単位の含有割合は、好ましくは2〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは10〜25質量%である。第二の重合体中にニトリル基を有する重合単位を上記範囲含むことで、非導電性粒子の分散性が向上し、安定性の高い多孔膜スラリーを得ることができ、その結果、非導電性粒子が均一に分散した多孔膜を得ることができる。
前記第二の重合体中に親水性基を有する重合単位を含むことで、多孔膜スラリー中において、非導電性粒子を安定的に分散させることができるため、多孔膜スラリーのスラリー安定性が向上し、多孔膜スラリーのゲル化を防止できる。
また、第二の重合体は、親水性基を有する重合単位を好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは1〜8質量%、特に好ましくは1〜6質量%含む。第二の重合体中の親水性基を有する重合単位の含有割合を上記範囲とすることで、非導電性粒子間及び非導電性粒子と後述する基材との間の結着性が向上し、多孔膜の製造工程における多孔膜からの非導電性粒子の脱離(粉落ち)を低減できる。
本発明における親水性基とは、水性溶媒中でプロトンを遊離する官能基あるいは前記官能基におけるプロトンがカチオンに置換された塩のことをいい、具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基およびこれらの塩などが挙げられる。
前記第二の重合体中に、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を含むことで、多孔膜スラリー中の非導電性粒子の分散性が向上し、多孔膜スラリーを長期間安定状態で保存することができる。そのため、多孔膜スラリーを長期間保存した後であっても、均一な多孔膜を製造できる。また、前記直鎖アルキレン重合単位を導入することで、第二の重合体の電解液に対する安定性を高くすることができ、ひいては耐電解液性に優れた多孔膜が得られるため、二次電池の電池特性の向上が図れる。
上記の直鎖アルキレン重合単位の炭素数は4以上であり、好ましくは4〜16、さらに好ましくは4〜12の範囲である。
上記の直鎖アルキレン重合単位の含有割合は、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは30〜60質量%、特に好ましくは40〜60質量%である。
また、前記第二の重合体は、(メタ)アクリル酸エステル重合単位を含むことが好ましい。前記第二の重合体中に、(メタ)アクリル酸エステル重合単位を含むことで、多孔膜スラリー中において、第二の重合体が溶解し、安定性の高い多孔膜スラリーを得ることができる。さらには電解液に対する安定性も高く、耐電解液性に優れた多孔膜が得られるため、二次電池のサイクル特性に優れる。
第二の重合体は、(メタ)アクリル酸エステル重合単位を好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは20〜35質量%含む。
第二の重合体中の(メタ)アクリル酸エステル重合単位の含有割合を上記範囲とすることで、後述する第二の重合体の分散媒や多孔膜スラリーにおける分散媒(例えばN−メチルピロリドン、以下「NMP」と記載することがある。)中で第二の重合体が溶解し安定性の高い多孔膜スラリーを得ることができる。さらには電解液に対する安定性も高くなるので、二次電池は特に高温サイクル特性に優れる。
また、前記(メタ)アクリル酸エステル重合単位の非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数は、好ましくは4〜10、より好ましくは4〜8の範囲である。前記(メタ)アクリル酸エステル重合単位の非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数を上記範囲とすることで、第二の重合体が電解液に対して溶出しにくく、得られる多孔膜スラリーは高いスラリー安定性を示す。さらには、得られる多孔膜は均一性が高く、柔軟性に優れる。
上記のように、本発明に用いるバインダーを構成する第二の重合体は、ニトリル基を有する重合単位、親水性基を有する重合単位及び炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を有し、さらに(メタ)アクリル酸エステル重合体単位を有することが好ましい。このような第二の重合体は、ニトリル基を有する重合単位を形成し得る単量体、親水性基を有する重合単位を形成し得る単量体、(メタ)アクリル酸エステル重合体単位を形成し得る単量体、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を形成し得る単量体を重合反応させて得られる。なお、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位は、不飽和結合を有する構造単位(炭素数4以上の共役ジエンモノマーを形成し得る重合単位)を有する重合体を得た後に、これを水素添加反応して形成することができる。
以下、本発明に用いる第二の重合体の製造方法について説明する。
ニトリル基を有する重合単位を形成し得る単量体としては、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体が挙げられる。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。これらのなかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
第二の重合体中への親水性基の導入は、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基およびこれらの塩などを有する単量体を重合して行われる。
カルボン酸基を有する単量体としては、モノカルボン酸及びその誘導体やジカルボン酸、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。
モノカルボン酸誘導体としては、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α―アセトキシアクリル酸、β−trans−アリールオキシアクリル酸、α−クロロ−β−E−メトキシアクリル酸、β−ジアミノアクリル酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
ジカルボン酸誘導体としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸などマレイン酸メチルアリル、マレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキルなどのマレイン酸エステル;が挙げられる。
また、加水分解によりカルボキシル基を生成する酸無水物も使用できる。
ジカルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。
その他、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸ジブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸ジシクロヘキシル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸ジブチルなどのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸のモノエステルおよびジエステルも挙げられる。
スルホン酸基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
リン酸基を有する単量体としては、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オールなどのエチレン性不飽和アルコール;アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、マレイン酸ジ−2−ヒドロキシエチル、マレイン酸ジ−4−ヒドロキシブチル、イタコン酸ジ−2−ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアルカノールエステル類;一般式CH=CR−COO−(C2nO)−H(mは2ないし9の整数、nは2ないし4の整数、Rは水素またはメチル基を表す)で表されるポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;2−ヒドロキシエチル−2’−(メタ)アクリロイルオキシフタレート、2−ヒドロキシエチル−2’−(メタ)アクリロイルオキシサクシネートなどのジカルボン酸のジヒドロキシエステルのモノ(メタ)アクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−4−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−6−ヒドロキシヘキシルエーテルなどのアルキレングリコールのモノ(メタ)アリルエーテル類;ジエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレングリコール(メタ)モノアリルエーテル類;グリセリンモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリル−2−クロロ−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルエーテルなどの、(ポリ)アルキレングリコールのハロゲン及びヒドロキシ置換体のモノ(メタ)アリルエーテル;オイゲノール、イソオイゲノールなどの多価フェノールのモノ(メタ)アリルエーテル及びそのハロゲン置換体;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルチオエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルチオエーテルなどのアルキレングリコールの(メタ)アリルチオエーテル類;などが挙げられる。
これらの中でも、後述する電極活物質層または有機セパレーターへの結着性に優れることから、親水性基は、カルボン酸基またはスルホン酸基であることが好ましく、特に正極活物質から溶出することがある遷移金属イオンを効率良く捕捉するという理由からカルボン酸基であることが特に好ましい。したがって、親水性基を有する単量体としては、上記の中でも、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボン酸基を有する炭素数5以下のモノカルボン酸や、マレイン酸、イタコン酸などのカルボン酸基を2つ有する炭素数5以下のジカルボン酸が好ましい。さらには、作製した多孔膜スラリーの保存安定性が高いという観点から、アクリル酸やメタクリル酸が特に好ましい。
第二の重合体中への直鎖アルキレン重合単位の導入方法は、特に限定はされないが、共役ジエンモノマーを形成し得る重合単位を導入後にこれを水素添加反応させる方法が簡便であり、好ましい。
共役ジエンモノマーとしては、炭素数4以上の共役ジエンが好ましく、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3−ブタジエンが好ましい。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
(メタ)アクリル酸エステルを有する重合単位を形成し得る単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステル;などが挙げられる。
これらの中でも、電解液に溶出せずに多孔膜スラリーの分散媒として好ましく用いられるNMPへの溶解性を示すこと、多孔膜の柔軟性や結着性が向上し、該多孔膜を用いた二次電池の特性(サイクル特性や出力特性等)に優れることから、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が4〜10のアクリル酸アルキルエステルが好ましく、その中でも、具体的には、好ましくはブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびラウリルアクリレート、より好ましくは、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、さらに好ましくはブチルアクリレートである。
また、本発明に用いる第二の重合体は、上記重合単位以外に、これらの重合単位を形成する単量体と共重合可能な他の単量体の重合単位を含有していてもよい。このような他の単量体の重合単位の含有割合は、全単量体単位に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
このような共重合可能な他の単量体としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどの非共役ジエン化合物;エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン化合物;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチルなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステル;ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物;エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリル酸エステル類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのトリメタクリル酸エステル類;などの多官能エチレン性不飽和単量体のほか、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチロール(メタ)アクリルアミドなどの自己架橋性化合物;などが挙げられる。
その中でも、電解液に溶出せずに多孔膜スラリーの分散媒としてNMPを用いた場合にNMPへの溶解性を示すこと、加えて非導電性粒子の分散性に優れ、均一な多孔膜が得られることからスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物が好ましい。
さらに、本発明に用いる第二の重合体は、上述した単量体成分以外に、これらと共重合可能な単量体を含んでいてもよい。これらと共重合可能な単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物;が挙げられる。これらの単量体を、適宜の手法により、グラフト共重合させることにより、前記構成の第二の重合体が得られる。
本発明に用いる第二の重合体は、分散媒(水または有機溶媒)に分散された分散液または溶解された溶液の状態で使用される(以下、「第二重合体分散液」と記載することがある。)。分散媒としては、第二の重合体を均一に分散または溶解し得るものであれば、特に制限されない。本発明においては、上述の第一の重合体で例示した分散媒などを用いることができる。
第二の重合体が分散媒に粒子状で分散している場合において、粒子状で分散している第二の重合体の平均粒径(分散粒子径)は、体積平均粒子径で、好ましくは50〜500nm、より好ましくは70〜400nm、特に好ましくは100〜250nmである。第二の重合体の平均粒径が上記範囲であると、上記の非導電性粒子の結着性が良好になるため、得られる多孔膜の柔軟性が向上すると共に、多孔膜から非導電性粒子が脱離(粉落ち)することを防止できる。その結果、該多孔膜を用いた二次電池は優れた安全性及びサイクル特性を示す。
第二の重合体が分散媒に粒子状で分散している場合において、第二重合体分散液の固形分濃度は、通常15〜70質量%であり、20〜65質量%が好ましく、30〜60質量%がさらに好ましい。固形分濃度がこの範囲であると、多孔膜スラリーを製造する際における作業性が良好である。
本発明に用いる第二の重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは25℃以下、より好ましくは15℃以下、特に好ましくは0℃以下である。第二の重合体のTgの下限は特に限定されないが、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−45℃以上、特に好ましくは−40℃以上である。第二の重合体のTgが上記範囲にあることにより、本発明の多孔膜が優れた強度と柔軟性を有するため、多孔膜の製造工程における粉落ちを抑制し、該多孔膜を用いた二次電池のサイクル特性や出力特性を向上させることができる。なお、第二の重合体のガラス転移温度は、様々な単量体を組み合わせることによって調整可能である。
また、後述する電解液に対する第二の重合体の膨潤度は好ましくは100〜500%、より好ましくは110〜400%、さらに好ましくは120〜300%である。第二の重合体の膨潤度を上記範囲とすることで、電解液に対する第二の重合体の溶解を抑制でき、耐電解液性および結着性に優れた第二の重合体が得られるため、二次電池のサイクル特性や出力特性の向上が図られる。
ここでは、膨潤度の指標として、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを20℃での容積比がEC:DEC=1:2となるように混合してなる混合溶媒に、LiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解した溶液に対する膨潤度を採用する。
第二の重合体の電解液に対する膨潤度は、第二の重合体を構成する全重合単位の種類やその比率を調整することにより、上記範囲に調整することができる。例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合単位でいえば、当該重合単位中の非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル鎖の長さ等を調整する方法が挙げられる。
第二の重合体の電解液に対する膨潤度は、第二の重合体を構成する全重合単位の種類やその比率を調整することにより上記範囲に調整可能であるが、第二の重合体の溶解度パラメータ(以下、「SP値」という。)をその指標として用いることもできる。例えば、溶解度パラメータ(以下「SP値」という)を好ましくは9.0(cal/cm1/2以上、11(cal/cm1/2未満、より好ましくは9〜10.5(cal/cm1/2、さらに好ましくは、9.5〜10(cal/cm1/2である重合体または共重合体を第二の重合体として用いる方法が挙げられる。前記SP値を、上記範囲にすることにより、第二の重合体に、後述する第二の重合体の分散媒や多孔膜スラリーにおける分散媒への溶解性を維持しながら、電解液への適度な膨潤性をもたせることができる。それにより、得られる多孔膜における非導電性粒子やバインダーの分散性がより向上し、それを用いた二次電池のサイクル特性や出力特性を向上させることができる。
ここで、SP値は、J.Brandrup,E.H.ImmergutおよびE.A.Grulk編"Polymer Handbook" VII Solubility Parameter Values,p675−714(John Wiley & Sons社、第4版1999年発行)に記載される方法に従って求めることができる。この刊行物に記載のないものについてはSmallが提案した「分子引力定数法」に従って求めることができる。この方法は、化合物分子を構成する官能基(原子団)の特性値、すなわち、分子引力定数(G)の統計と分子容とから次式に従ってSP値(δ)を求める方法である。
δ=ΣG/V=dΣG/M
ΣG:分子引力定数Gの総計
V:比容
M:分子量
d:比重
前記第二の重合体のヨウ素価は、好ましくは3〜60mg/100mgであり、より好ましくは3〜20mg/100mg、さらに好ましくは8〜10mg/100mgである。ヨウ素価が60mg/100mgを超えると、第二の重合体に含まれる不飽和結合により酸化電位での安定性が低く、二次電池の高温サイクル特性に劣ることがある。また、ヨウ素価が3mg/100mg未満であると、第二の重合体の柔軟性が低下することに起因して、バインダーの柔軟性が低下することがある。その結果、電極を捲回・プレス時に多孔膜の欠け、粉落ち等により非導電性粒子の一部が脱離しうる。粉落ち等が発生すると、脱離した塊(非導電性粒子)がセパレーターの破損・正極/負極間のショート等の原因となり、安全性、長期特性が低下するおそれがある。第二の重合体のヨウ素価が上記範囲に含まれることにより、高電位に対して第二の重合体が化学構造的に安定であり、長期サイクルにおいても電極構造を維持することができ、二次電池のサイクル特性に優れる。ヨウ素価はJIS K 6235;2006に従って求められる。
本発明に用いる第二の重合体のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによるポリスチレン換算値の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜700,000、より好ましくは50,000〜500,000、特に好ましくは100,000〜300,000である。第二の重合体の重量平均分子量を上記範囲とすることで、結着力に優れたバインダーを得ることができるため、多孔膜からの非導電性粒子の粉落ちが防止され、二次電池のサイクル特性の低下を抑制できる。また、多孔膜に柔軟性を持たせることができ、更に多孔膜スラリーの製造時に塗工しやすい粘度に調整が容易である。
本発明に用いる第二の重合体の製造方法は特に限定はされず、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの反応も用いることができる。重合に用いる重合開始剤としては、たとえば過酸化ラウロイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、α,α’−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、または過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
直鎖アルキレン重合単位は、炭素数4以上の共役ジエンモノマーを形成し得る重合単位を導入後に、これを水素添加反応させて形成される。水素添加反応させる方法は特に限定されない。水素添加反応により、上記重合法により得られた不飽和重合体(ニトリル基を有する重合単位、親水性基を有する重合単位及び共役ジエンモノマーを形成し得る重合単位を含んでなる重合体)中の共役ジエンモノマーを形成し得る重合単位に由来する炭素−炭素不飽和結合のみを選択的に水素化し、本発明に用いる第二の重合体を得ることができる。また、水素添加反応により、本発明に用いる第二の重合体のヨウ素価を上述した範囲とすることができる。本発明に用いる第二の重合体は、親水性基を有する重合単位を含有する水素化アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(以下において「水添NBR」と記載することがある。)が好ましい。
不飽和重合体中の共役ジエンモノマーを形成し得る重合単位に由来する炭素−炭素不飽和結合のみを選択的に水素化する選択的水素化方法としては、公知の方法によればよく、油層水素化法、水層水素化法のいずれも可能であるが、得られる第二の重合体中に不純物(例えば、後述する凝固剤や金属等)の含有量が少ないことから、水層水素化法が好ましい。
本発明に用いる第二の重合体の製造を油層水素化法で行う場合には、次の方法により行うことが好ましい。すなわち、まず、乳化重合により調整した不飽和重合体の分散液を塩析により凝固させ、濾別および乾燥を経て、有機溶媒に溶解する。次いで、有機溶媒に溶解させた不飽和重合体について水素添加反応(油層水素化法)を行い、水素化物とし、得られた水素化物溶液を凝固、濾別および乾燥を行うことにより、本発明に用いる第二の重合体を得る。
なお、乳化剤として、カプリン酸アルカリ金属塩を用いる場合には、不飽和重合体の分散液の塩析による凝固、濾別および乾燥の各工程において、最終的に得られる第二の重合体中におけるカプリン酸塩の量が0.01〜0.4質量%となるように調製することが好ましい。たとえば、分散液の塩析による凝固において、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウムなど公知の凝固剤を使用することができるが、好適には、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩;または、硫酸アルミニウムなどの第13族金属塩;を用いることにより、不飽和重合体中に含有されるカプリン酸塩の量を低減させることができる。そのため、凝固剤として、アルカリ土類金属塩または第13族金属塩を用いることが好ましく、アルカリ土類金属塩を用いることがより好ましく、その使用量や凝固温度を制御することにより、最終的に得られる第二の重合体中におけるカプリン酸塩の量を上記範囲とすることができる。凝固剤の使用量は、水素化する不飽和重合体の量を100質量部とした場合に、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜50質量部、特に好ましくは10〜50質量部である。凝固温度は10〜80℃が好ましい。
油層水素化法の溶媒としては、不飽和重合体を溶解する液状有機化合物であれば特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサノンおよびアセトンなどが好ましく使用される。
油層水素化法の触媒としては、公知の選択的水素化触媒であれば限定なく使用でき、パラジウム系触媒およびロジウム系触媒が好ましく、パラジウム系触媒(酢酸パラジウム、塩化パラジウムおよび水酸化パラジウムなど)がより好ましい。これらは2種以上併用してもよいが、ロジウム系触媒とパラジウム系触媒とを組み合わせて用いる場合には、パラジウム系触媒を主たる活性成分とすることが好ましい。これらの触媒は、通常、担体に担持させて使用される。担体としては、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、珪藻土、活性炭などが例示される。触媒使用量は、水素化する不飽和重合体の量に対して、水素化触媒の金属量換算で、好ましくは10〜5000ppm、より好ましくは100〜3000ppmである。
油層水素化法の水素化反応温度は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃であり、水素圧力は、好ましくは0.1〜30MPa、より好ましくは0.2〜20MPaであり、反応時間は、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜25時間である。
あるいは、本発明に用いる第二の重合体の製造を水層水素化法で行う場合には、乳化重合により調製した不飽和重合体の分散液に、必要に応じて水を加えて希釈し、水素添加反応を行うことが好ましい。
ここで、水層水素化法には、水素化触媒存在下の反応系に水素を供給して水素化する(I)水層直接水素化法と、酸化剤、還元剤および活性剤の存在下で還元して水素化する(II)水層間接水素化法とがある。
(I)水層直接水素化法においては、水層の不飽和重合体の濃度(分散液状態での濃度)は、凝集を防止するために40質量%以下とすることが好ましい。
また、用いる水素化触媒としては、水で分解しにくい化合物であれば特に限定されない。水素化触媒の具体例として、パラジウム触媒では、ギ酸、プロピオン酸、ラウリン酸、コハク酸、オレイン酸、フタル酸などのカルボン酸のパラジウム塩;塩化パラジウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)パラジウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムなどのパラジウム塩素化物;ヨウ化パラジウムなどのヨウ素化物;硫酸パラジウム・二水和物などが挙げられる。これらの中でもカルボン酸のパラジウム塩、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウムおよびヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムが特に好ましい。水素化触媒の使用量は、適宜定めればよいが、水素化する不飽和重合体の量に対して、水素化触媒の金属量換算で、好ましくは5〜6000ppm、より好ましくは10〜4000ppmである。
水層直接水素化法における反応温度は、好ましくは0〜300℃、より好ましくは20〜150℃、特に好ましくは30〜100℃である。反応温度が低すぎると反応速度が低下するおそれがあり、逆に、高すぎるとニトリル基の水素添加反応などの副反応が起こる可能性がある。水素圧力は、好ましくは0.1〜30MPa、より好ましくは0.5〜20MPaである。反応時間は反応温度、水素圧、目標の水素化率などを勘案して選定される。
一方、(II)水層間接水素化法では、水層の不飽和重合体の濃度(分散液状態での濃度)は、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは1〜40質量%とする。
水層間接水素化法で用いる酸化剤としては、酸素、空気、過酸化水素などが挙げられる。これら酸化剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比(酸化剤:炭素−炭素二重結合)で、好ましくは0.1:1〜100:1、より好ましくは0.8:1〜5:1の範囲である。
水層間接水素化法で用いる還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、酢酸ヒドラジン、ヒドラジン硫酸塩、ヒドラジン塩酸塩などのヒドラジン類またはヒドラジンを遊離する化合物が用いられる。これらの還元剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比(還元剤:炭素−炭素二重結合)で、好ましくは0.1:1〜100:1、より好ましくは0.8:1〜5:1の範囲である。
水層間接水素化法で用いる活性剤としては、銅、鉄、コバルト、鉛、ニッケル、鉄、スズなどの金属のイオンが用いられる。これらの活性剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比(活性剤:炭素−炭素二重結合)で、好ましくは1:1000〜10:1、より好ましくは1:50〜1:2である。
水層間接水素化法における反応は、0℃から還流温度までの範囲内で加熱することにより行い、これにより水素化反応が行われる。この際における加熱範囲は、好ましくは0〜250℃、より好ましくは20〜100℃、特に好ましくは40〜80℃である。
水層での直接水素化法、間接水素化法のいずれにおいても、水素化に続いて、塩析による凝固、濾別、乾燥を行うことが好ましい。塩析は、前記油層水素化法における不飽和重合体の分散液の塩析と同様に、水素添加反応後の第二の重合体中におけるカプリン酸塩の量を制御するために、上述したアルカリ土類金属塩または第13族金属塩を用いることが好ましく、アルカリ土類金属塩を用いることが特に好ましい。また、凝固に続く濾別および乾燥の工程はそれぞれ公知の方法により行うことができる。
また、本発明に用いる第二の重合体の製造方法は、水素添加反応を2段階以上に分けて実施する方法が特に好ましい。同一量の水素化触媒を用いても、水素添加反応を2段階以上に分けて実施することにより、水素添加反応効率を高めることができる。即ち、共役ジエンモノマーを形成し得る重合単位を直鎖アルキレン構造単位へ転換する際に、第二の重合体のヨウ素価を、より低くすることが可能となる。
また、2段階以上に分けて水素添加反応を行なう場合、第1段階の水素添加反応率(水添率) (%)で、50%以上、より好ましくは70%以上の水素化を達成することが好ましい。即ち、下式で得られる数値を水素添加反応率(%)とするとき、この数値が50%以上となることが好ましく、70%以上となることがより好ましい。
水素添加反応率(水添率)(%)
=100×(水素添加反応前の炭素−炭素二重結合量−水素添加反応後の炭素−炭素二重結合量)/(水素添加反応前の炭素−炭素二重結合量)
なお、炭素−炭素二重結合量は、NMRを用いて分析することができる。
水素添加反応終了後、分散液中の水素添加反応触媒を除去する。その方法として、例えば、活性炭、イオン交換樹脂等の吸着剤を添加して攪拌下で水素添加反応触媒を吸着させ、次いで分散液をろ過又は遠心分離する方法を採ることができる。水素添加反応触媒を除去せずに分散液中に残存させることも可能である。
また、本発明に用いる第二の重合体は、親水性基を有する重合単位を有する。第二の重合体中に親水性基を有する重合単位を導入する方法は、特に限定されず、上述した第二の重合体の製造工程において、第二の重合体を構成する重合体中に親水性基を導入する方法(親水性基を有する単量体を共重合させる方法)や、上述のニトリル基を有する重合単位、および上述の共役ジエンモノマーを形成し得る重合単位を含んでなる不飽和重合体に水素添加して水素添加反応を行った重合体(以下において「水添重合体」と記載することがある。)を得、その後、水添重合体とエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物とを混合する方法(水添重合体を酸変性する方法)が挙げられる。この中でも、親水性基を有する単量体を共重合させる方法が、工程上簡便であり好ましい。
以下において、水素添加反応終了後の重合体(水添重合体)にエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物を混合して本発明に用いる第二の重合体(以下において、「酸変性された第二の重合体」と記載することがある。)を製造する方法(水添重合体を酸変性する方法)について詳述する。
酸変性された第二の重合体を製造するために用いられるエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物は、特に限定されないが、その炭素数が4〜10のエチレン性不飽和ジカルボン酸またはその無水物、特に無水マレイン酸が好適である。
エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸:
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸:
無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物:
マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノ−n−ブチル、マレイン酸モノイソブチル、マレイン酸モノ−n−ペンチル、マレイン酸モノ−n−ヘキシル、マレイン酸モノ−2−エチルヘキシル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノイソブチル、フマル酸モノ−n−ペンチル、フマル酸モノ−n−ヘキシル、フマル酸モノ−2−エチルヘキシル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノ−n−ブチル、イタコン酸モノイソブチル、イタコン酸モノ−n−ペンチル、イタコン酸モノ−n−ヘキシル、イタコン酸モノ−2−エチルヘキシル、シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノ−n−ブチル、シトラコン酸モノイソブチル、シトラコン酸モノ−n−ペンチル、シトラコン酸モノ−n−ヘキシル、シトラコン酸モノ−2−エチルヘキシル、メサコン酸モノメチル、メサコン酸モノエチル、メサコン酸モノプロピル、メサコン酸モノ−n−ブチル、メサコン酸モノイソブチル、メサコン酸モノ−n−ペンチル、メサコン酸モノ−n−ヘキシル、メサコン酸モノ−2−エチルヘキシル、グルタコン酸モノメチル、グルタコン酸モノエチル、グルタコン酸モノプロピル、グルタコン酸モノ−n−ブチル、グルタコン酸モノイソブチル、グルタコン酸モノイソブチル、グルタコン酸モノ−n−ペンチル、グルタコン酸モノ−n−ヘキシル、グルタコン酸モノ−2−エチルヘキシル、アリルマロン酸モノメチル、アリルマロン酸モノエチル、アリルマロン酸モノプロピル、アリルマロン酸モノ−n−ブチル、アリルマロン酸モノイソブチル、アリルマロン酸モノ−n−ペンチル、アリルマロン酸モノ−n−ヘキシル、アリルマロン酸モノ−2−エチルヘキシル、テラコン酸モノメチル、テラコン酸モノエチル、テラコン酸モノプロピル、テラコン酸モノ−n−ブチル、テラコン酸モノイソブチル、テラコン酸モノ−n−ペンチル、テラコン酸モノ−n−ヘキシル、テラコン酸モノ−2−エチルヘキシル等の不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル等が挙げられる。
酸変性された第二の重合体は、例えば、水添重合体とエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物とを、エン型付加反応させることによって得られる。
エン型付加反応は、通常、ラジカル発生剤を使用することなく、高温下で、水添重合体とエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物とを混練することによって起こる。ラジカル発生剤を使用すると、ゲルの発生に加えてエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物と水添重合体とがラジカル型付加反応を起こすので、エン型付加反応させることができなくなる。
エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物の使用量は特に限定されないが、通常、水添重合体100質量部に対して、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物0.05〜10質量部、好ましくは、0.2〜6質量部である。
エン型付加反応においては、例えばロール型混練機のような開放型混練機を用いた場合には、融解した無水マレイン酸等のようなエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物が飛散し、十分な付加反応を行うことができないことがある。また、単軸押出機、同方向二軸押出機、異方向回転二軸押出機等のような連続式混練機を用いた場合は、押出機出口に滞留する第二の重合体がゲル化することによりダイヘッドの詰まりが発生する等、効率よく付加反応を行うことができないことがある。また、第二の重合体中に多量に未反応のエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物が残存することがある。
エン型付加反応では、加熱密閉混練機を用いることが好ましい。加熱密閉混練機としては、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー等のようなバッチ式加熱密閉混練機の中から任意に選ぶことができ、中でも、加圧ニーダーが好ましい。
上記の製造方法においては、まず、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物を、水添重合体にエン型付加反応により付加させる前に、実質的にエン型付加反応が起こらない温度において、具体的には、60〜170℃、好ましくは100〜150℃において、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物と水添重合体とを予混練し、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物を水添重合体中に均一に分散させる。この予混練の温度が過度に低いと、水添重合体が混練機内でスリップして、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物と水添重合体との混合が十分に行えない場合がある。また、予混練の温度が過度に高いと、混練機中に投入するエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物が大量に飛散することがあり、エン型付加反応率が低下する場合がある。
次に、エン型付加反応を行うべく、混練中の水添重合体とエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物との混合物の温度を通常200〜280℃、好ましくは220〜260℃に保つ。前記温度を保つ方法は、特に限定されないが、通常は、混練機のジャケットに温水やスチームを流す方法、または、せん断発熱を利用することにより達せられる。
加熱密閉混練機のジャケットに温水やスチームを流す場合は、ジャケット温度を、通常、70〜250℃、好ましくは130〜200℃に維持する。また、せん断発熱を利用する場合は、混練機により、せん断速度30〜1000S−1、好ましくは300〜700S−1で混練を続けることが好ましい。特に、せん断発熱を利用する場合は、上記混合物の温度の制御を容易に行うことができるので好ましい。加熱密閉混練機中の混練時間は、特に限定されないが、通常、120秒〜120分、好ましくは180秒〜60分である。
混練中の上記混合物の温度が過度に低いと、エン型付加反応が十分に進行しない場合がある。また、過度に高い場合は、ゲル化や焼け物の発生等が起こり、その結果、製品にゲルが混入することがある。また、せん断速度が過度に大きいと、せん断発熱による上記混合物の温度の制御が難しく、混合物の温度が高くなりすぎて、ゲルや焼け物の発生等が起こるため、工業的な製造方法として好ましくない。また、せん断速度が過度に小さいと、上記混合物の温度が低くなりすぎるため、充分なエン型付加反応が期待できない。
エン型付加反応においては、混練するに際して、老化防止剤を添加することにより、第二の重合体のゲル化の上昇を防止することができる。老化防止剤の種類は、特に限定されないが、アミン系、アミンケトン系、フェノール系、ベンゾイミダゾール系、その他バインダー用の老化防止剤を使用することができる。
アミン系老化防止剤の例としては、フェニル−1−ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルフォニルアミド)ジフェニルアミン、N,N−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
アミンケトン系老化防止剤の例としては、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン等が挙げられる。
フェノール系老化防止剤の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,2−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン等が挙げられる。
ベンゾイミダゾール系老化防止剤の例としては、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾールの金属塩等が挙げられる。
これら老化防止剤の使用量は、第二の重合体100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部、好ましくは0.1〜2質量部である。
上述した製造方法によれば、通常、エン型付加反応に使用するエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物の仕込量の80%以上を水添重合体に付加させて本発明に用いる第二の重合体を得ることができ、また、第二の重合体中に残存する未反応のエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物を仕込量の5%以下にすることができる。従って、この方法は、工業的に安定に生産する上で極めて有用である。本発明においては、上述した製造方法により、親水性基を有する重合単位を1〜20質量%含む第二の重合体を得ることができる。
本発明に用いる第二の重合体は、第二の重合体の製造工程において、第二重合体分散液に含まれる粒子状の金属を除去する粒子状金属除去工程を経て得られたものであることが好ましい。第二の重合体に含まれる粒子状金属成分の含有量が10ppm以下であることにより、後述する多孔膜スラリー中のポリマー間の経時での金属イオン架橋を防止し、粘度上昇を防ぐことができる。さらに二次電池の内部短絡や充電時の溶解・析出による自己放電増大の懸念が少なく、電池のサイクル特性や安全性が向上する。
前記粒子状金属除去工程における第二重合体分散液から粒子状の金属成分を除去する方法は特に限定されず、例えば、濾過フィルターによる濾過により除去する方法、振動ふるいによる除去する方法、遠心分離により除去する方法、磁力により除去する方法等が挙げられる。中でも、除去対象が金属成分であるため磁力により除去する方法が好ましい。磁力により除去する方法としては、金属成分が除去できる方法であれば特に限定はされないが、生産性および除去効率を考慮すると、好ましくは第二の重合体の製造ライン中に磁気フィルターを配置することで行われる。
第一の重合体および第二の重合体の重合法に用いられる分散剤は、通常の合成で使用されるものでよく、具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどのベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、テトラドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸塩;ラウリン酸ナトリウムなどの脂肪酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩などのエトキシサルフェート塩;アルカンスルホン酸塩;アルキルエーテルリン酸エステルナトリウム塩;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリルエステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体などの非イオン性乳化剤;ゼラチン、無水マレイン酸−スチレン共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、重合度700以上かつケン化度75%以上のポリビニルアルコールなどの水溶性高分子などが例示され、これらは単独でも2種類以上を併用して用いても良い。これらの中でも好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどのベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、テトラドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩であり、更に好ましくは、耐酸化性に優れるという点から、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどのベンゼンスルホン酸塩である。分散剤の添加量は任意に設定でき、単量体総量100質量部に対して通常0.01〜10質量部程度である。
第一の重合体および第二の重合体が分散媒に分散している時のpHは、5〜13が好ましく、更には5〜12、最も好ましくは10〜12である。第一の重合体および第二の重合体のpHが上記範囲にあることにより、バインダーの保存安定性が向上し、さらには、機械的安定性が向上する。
第一の重合体および第二の重合体のpHを調整するpH調整剤は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属酸化物、水酸化アルミニウムなどの長周期律表でIIIA属に属する金属の水酸化物などの水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩などの炭酸塩;などが例示され、有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミンなどのアルキルアミン類;モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミンなどのアルコールアミン類;アンモニア水などのアンモニア類;などが挙げられる。これらの中でも、結着性や操作性の観点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが好ましい。
本発明に用いるバインダーは、上記第一の重合体と第二の重合体を含んでなる。本発明においては、第一の重合体及び第二の重合体を含むバインダーを用いることで、高い柔軟性と結着性を有する多孔膜を形成することができる。
バインダーは、多孔膜スラリーの全固形分100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜18質量部、特に好ましくは1.5〜15質量部含まれる。バインダーの含有割合を上記範囲とすることで、本発明の多孔膜スラリーを用いて製造される多孔膜から、上述の非導電性粒子が脱離(粉落ち)することを防止し、柔軟性に優れた多孔膜を得ることができ、また、該多孔膜を用いた二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
前記バインダーにおける第一の重合体と第二の重合体との比率は、質量比で、好ましくは5:95〜50:50、より好ましくは10:90〜40:60、さらに好ましくは10:90〜30:70である。第一の重合体に対する第二の重合体の割合を上記範囲とすることにより、高い柔軟性と結着性を有する多孔膜が得られる。
本発明に用いるバインダーの製造方法は、特に限定されず、上述した第一重合体分散液及び第二重合体分散液を混合することにより製造される。混合装置は、第一重合体分散液及び第二重合体分散液を均一に混合できる装置であれば特に限定されず、例えば、撹拌式、振とう式、および回転式などの混合装置を使用した方法が挙げられる。また、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル、プラネタリーミキサーおよび遊星式混練機などの分散混練装置を使用した方法が挙げられる。
(分散媒)
多孔膜スラリーに用いる分散媒としては、水および有機溶媒のいずれも使用できる。本発明においては、上述の第一の重合体で例示した分散媒などを用いることができる。これらの分散媒は、単独で使用しても、これらを2種以上混合して混合溶媒として使用してもよい。これらの中でも特に、非導電性粒子の分散性にすぐれ、沸点が低く揮発性の高い分散媒が、短時間でかつ低温で除去できるので好ましい。具体的には、アセトン、トルエン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、キシレン、水、若しくはN−メチルピロリドン、またはこれらの混合溶媒が好ましい。
(任意の成分)
多孔膜スラリーには、上記成分(非導電性粒子、バインダー及び分散媒)のほかに、さらに任意の成分が含まれていてもよい。かかる任意の成分としては、分散剤、レベリング剤、酸化防止剤、上記バインダー以外の結着剤、増粘剤、消泡剤、電解液分解抑制等の機能を有する電解液添加剤や反応助剤等の成分を挙げることができる。これらは電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られない。
分散剤としてはアニオン性化合物、カチオン性化合物、非イオン性化合物、高分子化合物が例示される。分散剤は用いる非導電性粒子に応じて選択される。多孔膜スラリーの全固形分100質量部当たりの分散剤の含有割合は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には10質量部以下である。分散剤の含有割合が上記範囲であると、本発明の多孔膜スラリーの塗工性が良好であり、均一な多孔膜を得ることができる。
レベリング剤としてはアルキル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。多孔膜スラリーの全固形分100質量部当たりの界面活性剤の含有割合は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には10質量部以下である。前記界面活性剤を混合することにより、本発明の多孔膜スラリーを所定の基材に塗工する際に発生するはじきを防止し、多孔膜の平滑性を向上させることができる。
酸化防止剤としてはフェノール化合物、ハイドロキノン化合物、有機リン化合物、硫黄化合物、フェニレンジアミン化合物、ポリマー型フェノール化合物等が挙げられる。ポリマー型フェノール化合物は、分子内にフェノール構造を有する重合体であり、重量平均分子量が200〜1000、好ましくは600〜700のポリマー型フェノール化合物が好ましく用いられる。多孔膜スラリーの全固形分100質量部当たりの酸化防止剤の含有割合は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には10質量部以下である。酸化防止剤の含有割合が上記範囲であると、電池のサイクル寿命が優れる。
上記バインダー以外の結着剤としては、後述の電極中に用いられる結着剤(電極用結着剤)に使用されるポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体、軟質重合体などを用いることができる。多孔膜スラリーの全固形分100質量部当たりの上記バインダー以外の結着剤の含有割合は、10質量部以下である。前記結着剤の含有割合が上記範囲であると、本発明の多孔膜と後述する電極活物質層や有機セパレーターとの密着性が良好である。また、多孔膜の柔軟性を維持しつつ、リチウムイオンの移動を阻害することにより抵抗が増大することを抑制できる。
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマーおよびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリ(メタ)アクリル酸およびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリビニルアルコール、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールの共重合体、無水マレイン酸又はマレイン酸もしくはフマル酸とビニルアルコールの共重合体などのポリビニルアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、変性ポリアクリル酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプンなどが挙げられる。多孔膜スラリーの全固形分100質量部当たりの増粘剤の含有割合は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には10質量部以下である。増粘剤の含有割合が上記範囲であると、本発明の多孔膜スラリーの塗工性や、本発明の多孔膜と後述する電極活物質層や有機セパレーターとの密着性が良好である。本発明において、「(変性)ポリ」は「未変性ポリ」又は「変性ポリ」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタアクリル」を意味する。
消泡剤としては、金属石鹸類、ポリシロキサン類、ポリエーテル類、高級アルコール類、パーフルオロアルキル類などが用いられる。多孔膜スラリーの全固形分100質量部当たりの消泡剤の含有割合は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には10質量部以下である。消泡剤を混合することにより、バインダーの消泡工程を短縮することができる。
電解液添加剤は、後述する電極用スラリー中及び電解液中に使用されるビニレンカーボネートなどを用いることができる。多孔膜スラリーの全固形分100質量部当たりの電解液添加剤の含有割合は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には10質量部以下である。電解液添加剤を混合することにより、電池のサイクル寿命が優れる。
その他には、フュームドシリカやフュームドアルミナなどのナノ微粒子、イソチアゾリン系化合物、キレート化合物やピリチオン化合物が挙げられる。多孔膜スラリーにナノ微粒子を混合することにより多孔膜スラリーのチキソ性をコントロールすることができ、さらにそれにより得られる多孔膜のレベリング性を向上させることができる。また、多孔膜スラリーにイソチアゾリン系化合物を含有させることで、菌類の繁殖を抑制することができるため、多孔膜を形成するための多孔膜スラリーにおける異臭の発生や該スラリーの増粘を防ぐことができ、長期保存安定性に優れる。また、多孔膜スラリーにキレート化合物を添加することで、該スラリーにより形成される多孔膜を用いた二次電池の充放電時に電解液中に溶出する遷移金属イオンを捕捉することができるため、遷移金属イオンに起因した二次電池のサイクル特性と安全性の低下を防ぐことができる。また、多孔膜スラリーにピリチオン化合物を含有させることで、ピリチオン化合物はアルカリ性でも安定である為、イソチアゾリン系化合物と併用することにより、アルカリ性条件下においても、防腐性能効果を延長でき、相乗効果により高い抗菌効果が得ることができる。
多孔膜スラリーの全固形分100質量部当たりの上記任意の成分の含有割合の合計は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。ただし、上記非導電性粒子、バインダー及び任意の成分(但し結着剤を除く)の合計が100質量部に満たない場合は、任意成分としての結着剤の含有割合を適宜増量してもよい。
多孔膜スラリーの固形分濃度は、該スラリーの塗布、浸漬が可能な程度でかつ、流動性を有する粘度になる限り特に限定はされないが、一般的には10〜50質量%程度である。
固形分以外の成分は、乾燥の工程により揮発する成分であり、前記分散媒に加え、例えば、非導電性粒子及びバインダーの調製及び添加に際しこれらを溶解または分散させていた媒質をも含む。
二次電池多孔膜スラリーの製造方法は、特に限定はされず、上記の非導電性粒子、バインダー、分散媒及び必要に応じ添加される任意の成分を混合することにより製造される。本発明においては上記成分(非導電性粒子、バインダー、分散媒及び必要に応じ添加される任意の成分)を用いることにより混合方法や混合順序にかかわらず、非導電性粒子が高度に分散された多孔膜スラリーを得ることができる。混合装置は、上記成分を均一に混合できる装置であれば特に限定されず、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、サンドミル、フィルミックス、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどを使用することができる。中でも高い分散シェアを加えることができる、ビーズミル、ロールミル、フィルミックス等の高分散装置を使用することが特に好ましい。
多孔膜スラリーの粘度は、均一塗工性、スラリー経時安定性の観点から、好ましくは10〜10,000mPa・s、更に好ましくは50〜500mPa・sである。前記粘度は、B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
〔二次電池多孔膜〕
本発明の二次電池多孔膜(以下、「多孔膜」と表すことがある。)は、上述した二次電池多孔膜用スラリー組成物を膜状に形成、乾燥してなる。多孔膜は、有機セパレーターや電極に積層して用いたり、有機セパレーターそのものとして用いたりする。
本発明の多孔膜を製造する方法としては、(I)上記の非導電性粒子、バインダー、前記任意の成分及び分散媒を含む多孔膜スラリーを所定の基材(正極、負極または有機セパレーター)上に塗布し、次いで乾燥する方法;(II)上記の多孔膜スラリーを基材(正極、負極または有機セパレーター)に浸漬後、これを乾燥する方法;(III)上記の多孔膜スラリーを、剥離フィルム上に塗布、成膜し、得られた多孔膜を所定の基材(正極、負極または有機セパレーター)上に転写する方法;が挙げられる。この中でも、(I)多孔膜スラリーを基材(正極、負極または有機セパレーター)に塗布し、次いで乾燥する方法が、多孔膜の膜厚を制御しやすいことから最も好ましい。
本発明の多孔膜は、前述の(I)〜(III)の方法で製造されるが、その詳細な製造方法を以下に説明する。
(I)の方法では、多孔膜スラリーを、所定の基材(正極、負極または有機セパレーター)上に塗布し、乾燥することで本発明の多孔膜は製造される。
該スラリーを基材上に塗布する方法は特に制限されず、例えば、ドクターブレード法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。中でも、均一な多孔膜が得られる点でグラビア法が好ましい。
乾燥方法としては例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥温度は、使用する分散媒の種類によって変えることができる。分散媒を完全に除去するために、例えば、N−メチルピロリドン等の揮発性の低い溶媒を用いる場合には送風式の乾燥機で80℃以上の高温で乾燥させることが好ましい。逆に揮発性の高い溶媒を用いる場合には80℃以下の低温において乾燥させることもできる。多孔膜を後述する有機セパレーター上に形成する際は、有機セパレーターの収縮を起こさずに乾燥させることが必要の為、80℃以下の低温での乾燥が好ましい。
(II)の方法では、多孔膜スラリーを基材(正極、負極または有機セパレーター)に浸漬し、乾燥することで本発明の多孔膜は製造される。該スラリーを基材に浸漬する方法は特に制限されず、例えば、ディップコーター等でディップコーティングすることで浸漬することができる。
乾燥方法としては、上述の(I)の方法での乾燥方法と同じ方法が挙げられる。
(III)の方法では、多孔膜スラリーを剥離フィルム上に塗布、成膜し、剥離フィルム上に形成された多孔膜を製造する。次いで、得られた多孔膜を基材(正極、負極または有機セパレーター)上に転写される。
塗布方法としては、上述の(I)の方法での塗布方法と同じ方法が挙げられる。転写方法は特に限定されない。
(I)〜(III)の方法で得られた多孔膜は、次いで、必要に応じ、金型プレスやロールプレスなどを用い、加圧処理により基材(正極、負極または有機セパレーター)と多孔膜との密着性を向上させることもできる。ただし、この際、過度に加圧処理を行うと、多孔膜の空隙率が損なわれることがあるため、圧力および加圧時間を適宜に制御する。
多孔膜の膜厚は、特に限定はされず、多孔膜の用途あるいは適用分野に応じて適宜に設定されるが、薄すぎると均一な膜を形成できず、逆に厚すぎると電池内での体積(重量)あたりの容量(capacity)が減ることから、0.5〜50μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。
本発明の多孔膜は、基材(正極、負極または有機セパレーター)の表面に成膜され、後述する電極活物質層の保護膜あるいはセパレーターとして特に好ましく用いられる。本発明の多孔膜は、二次電池の正極、負極または有機セパレーターの何れの表面に成膜されてもよく、正極、負極および有機セパレーターの全てに成膜されてもよい。
〔二次電池電極〕
本発明の二次電池としては、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等が挙げられる。この中でも、安全性向上が最も求められており多孔膜導入効果が最も高いこと、加えてサイクル特性向上が課題として挙げられていることからリチウムイオン二次電池が好ましいため、以下、リチウムイオン二次電池に使用する場合について説明する。
本発明の二次電池電極は、集電体、電極活物質層及び多孔膜をこの順に積層してなり、該多孔膜が上述の二次電池多孔膜である。電極活物質層は、電極活物質及び電極用結着剤を含んでなる。
(電極活物質)
リチウムイオン二次電池用電極に用いられる電極活物質は、電解質中で電位をかける事により可逆的にリチウムイオンを挿入放出できるものであればよく、無機化合物でも有機化合物でも用いることができる。
リチウムイオン二次電池正極用の電極活物質(正極活物質)は、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。無機化合物からなる正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiFeVOなどのリチウム含有複合金属酸化物;TiS、TiS、非晶質MoS等の遷移金属硫化物;Cu、非晶質VO−P、MoO、V、V13などの遷移金属酸化物が挙げられる。これらの化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。有機化合物からなる正極活物質としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子を用いることもできる。電気伝導性に乏しい、鉄系酸化物は、還元焼成時に炭素源物質を存在させることで、炭素材料で覆われた電極活物質として用いてもよい。また、これら化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。
リチウムイオン二次電池用の正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。正極活物質の粒子径は、電池の任意の構成要件との兼ね合いで適宜選択されるが、レート特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、50%体積累積径が、通常0.1〜50μm、好ましくは1〜20μmである。50%体積累積径がこの範囲であると、充放電容量が大きい二次電池を得ることができ、かつ電極用スラリーおよび電極を製造する際の取扱いが容易である。50%体積累積径は、レーザー回折で粒度分布を測定することにより求めることができる。
リチウムイオン二次電池負極用の電極活物質(負極活物質)としては、たとえば、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メゾカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維などの炭素質材料、ポリアセン等の導電性高分子化合物などが挙げられる。また、負極活物質としては、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル等の金属やこれらの合金、前記金属又は合金の酸化物や硫酸塩が用いられる。加えて、金属リチウム、Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、シリコーン等を使用できる。電極活物質は、機械的改質法により表面に導電付与材を付着させたものも使用できる。負極活物質の粒子径は、電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択されるが、初期効率、レート特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、50%体積累積径が、通常1〜50μm、好ましくは15〜30μmである。
(電極用結着剤)
本発明において、電極活物質層は電極活物質の他に、結着剤(以下、「電極用結着剤」と記載することがある。)を含む。電極用結着剤を含むことにより電極中の電極活物質層の結着性が向上し、電極の捲回時等の工程上においてかかる機械的な力に対する強度が上がり、また電極中の電極活物質層が脱離しにくくなることから、脱離物による短絡等の危険性が小さくなる。
電極用結着剤としては様々な樹脂成分を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明の多孔膜に用いるバインダーを電極用結着剤として用いることもできる。
更に、下に例示する軟質重合体も電極用結着剤として使用することができる。
ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル・グリシジルメタクリレート共重合体などの、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体の単独重合体またはそれと共重合可能なモノマーとの共重合体である、アクリル系軟質重合体;
ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;
ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などジエン系軟質重合体;
ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;
液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体;
ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などビニル系軟質重合体;
ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系軟質重合体;
フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素含有軟質重合体;
天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体などが挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性により官能基を導入したものであってもよい。
電極活物質層における電極用結着剤の量は、電極活物質100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.2〜4質量部、特に好ましくは0.5〜3質量部である。電極活物質層における電極用結着剤量が前記範囲であることにより、電池反応を阻害せずに、電極から活物質が脱離するのを防ぐことができる。
電極用結着剤は、電極を作製するために溶液もしくは分散液として調製される。その時の粘度は、通常1〜300,000mPa・sの範囲、好ましくは50〜10,000mPa・sである。前記粘度は、B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
(任意の添加剤)
本発明において、電極活物質層には、上記の電極活物質と電極用結着剤の他に、導電性付与材や補強材などの任意の添加剤を含有していてもよい。導電付与材としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン繊維、カーボンナノチューブ等の導電性カーボンを使用することができる。また、黒鉛などの炭素粉末、各種金属のファイバーや箔などを使用することもできる。補強材としては、各種の無機および有機の球状、板状、棒状または繊維状のフィラーが使用できる。導電性付与材を用いることにより電極活物質同士の電気的接触を向上させることができ、リチウムイオン二次電池に用いる場合に放電レート特性を改善することができる。導電性付与材や補強材の使用量は、電極活物質100質量部に対して通常0〜20質量部、好ましくは1〜10質量部である。また、イソチアゾリン系化合物やキレート化合物を、電極活物質層中に含んでもよい。
電極活物質層は、電極活物質、電極用結着剤及び溶媒を含むスラリー(以下、「電極用スラリー」と呼ぶことがある。)を集電体に付着させて形成することができる。
溶媒としては、電極用結着剤を溶解または粒子状に分散するものであればよいが、溶解するものが好ましい。電極用結着剤を溶解する溶媒を用いると、電極用結着剤が電極活物質や任意の添加剤の表面に吸着することにより、電極活物質などの分散が安定化する。
電極用スラリーに用いる溶媒としては、水および有機溶媒のいずれも使用できる。有機溶媒としては、上述の第一の重合体で例示した有機溶媒などを用いることができる。
電極用スラリーには、さらに増粘剤などの各種の機能を発現する添加剤を含有させることができる。増粘剤としては、電極用スラリーに用いる溶媒に可溶な重合体が用いられる。具体的には、本発明の多孔膜スラリーで例示した増粘剤を用いることができる。増粘剤の使用量は、電極活物質100質量部に対して、0.5〜1.5質量部が好ましい。増粘剤の使用量が前記範囲であると、電極用スラリーの塗工性及び集電体との密着性が良好である。
さらに、電極用スラリーには、上記成分の他に、電池の安定性や寿命を高めるため、トリフルオロプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、カテコールカーボネート、1,6−ジオキサスピロ[4,4]ノナン−2,7−ジオン、12−クラウン−4−エーテル等が使用できる。また、これらは後述する電解液に含有せしめて用いてもよい。
電極用スラリーにおける溶媒の量は、電極活物質や電極用結着剤などの種類に応じ、塗工に好適な粘度になるように調整して用いる。具体的には、電極用スラリー中の、電極活物質、電極用結着剤および導電性付与材などの任意の添加剤を合わせた固形分の濃度が、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは40〜80質量%となる量に調整して用いられる。
電極用スラリーは、電極活物質、電極用結着剤、必要に応じて添加される導電性付与材などの任意の添加剤、および溶媒を、混合機を用いて混合して得られる。混合は、上記の各成分を一括して混合機に供給し、混合してもよい。電極用スラリーの構成成分として、電極活物質、電極用結着剤、導電性付与材及び増粘剤を用いる場合には、導電性付与材および増粘剤を溶媒中で混合して導電性付与材を微粒子状に分散させ、次いで電極用結着剤、電極活物質を添加してさらに混合することがスラリーの分散性が向上するので好ましい。混合機としては、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ホバートミキサーなどを用いることができるが、ボールミルを用いると導電性付与材や電極活物質の凝集を抑制できるので好ましい。
電極用スラリーの粒度は、好ましくは35μm以下であり、さらに好ましくは25μm以下である。スラリーの粒度が上記範囲にあると、導電性付与材の分散性が高く、均質な電極が得られる。
(集電体)
集電体は、電気導電性を有しかつ電気化学的に耐久性のある材料であれば特に制限されないが、耐熱性を有するとの観点から、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などの金属材料が好ましい。中でも、リチウムイオン二次電池の正極用としてはアルミニウムが特に好ましく、リチウムイオン二次電池の負極用としては銅が特に好ましい。集電体の形状は特に制限されないが、厚さ0.001〜0.5mm程度のシート状のものが好ましい。集電体は、電極活物質層の結着強度を高めるため、予め粗面化処理して使用するのが好ましい。粗面化方法としては、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、電極活物質層の結着強度や導電性を高めるために、集電体表面に中間層を形成してもよい。
電極活物質層の製造方法は、前記集電体の少なくとも片面、好ましくは両面に電極活物質層を層状に結着させる方法であればよい。例えば、前記電極用スラリーを集電体に塗布、乾燥し、次いで、120℃以上で1時間以上加熱処理して電極活物質層を形成する。電極用スラリーを集電体へ塗布する方法は特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。乾燥方法としては例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。
次いで、金型プレスやロールプレスなどを用い、加圧処理により電極活物質層の空隙率を低くすることが好ましい。空隙率の好ましい範囲は5〜15%、より好ましくは7〜13%である。空隙率が高すぎると充電効率や放電効率が悪化する。空隙率が低すぎる場合は、高い体積容量を得ることが困難であり、また、電極活物質層が剥がれ易く不良を発生し易いといった問題を生じる。
電極活物質層の厚みは、正極、負極とも、通常5〜300μmであり、好ましくは10〜250μmである。
本発明の二次電池電極は、電極活物質層が層状に結着した集電体の電極活物質層表面に、本発明の二次電池多孔膜を積層することで製造される。
積層方法は特に限定されないが、上述の多孔膜の製造方法で説明した(I)〜(III)の方法が挙げられる。
〔二次電池セパレーター〕
本発明の二次電池セパレーターは、有機セパレーター及び多孔膜を積層してなり、該多孔膜が上述の二次電池多孔膜である。つまり、本発明の二次電池セパレーターは、有機セパレーターの表面に、上述の二次電池多孔膜を積層してなる。
(有機セパレーター)
リチウムイオン二次電池用の有機セパレーターとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂や芳香族ポリアミド樹脂を含んでなるセパレーターなどの公知のものが用いられる。
本発明に用いる有機セパレーターとしては、電子伝導性がなくイオン伝導性があり、有機溶媒の耐性が高い、孔径の微細な多孔質膜が用いられ、例えばポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)、及びこれらの混合物あるいは共重合体等の樹脂からなる微多孔膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂からなる微多孔膜またはポリオレフィン系の繊維を織ったもの、またはその不織布、絶縁性物質粒子の集合体等が挙げられる。これらの中でも、本発明の多孔膜スラリーの塗工性が優れ、セパレーター全体の膜厚を薄くし電池内の活物質比率を上げて体積あたりの容量を上げることができるため、ポリオレフィン系の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
有機セパレーターの厚さは、通常0.5〜40μm、好ましくは1〜30μm、更に好ましくは1〜10μmである。この範囲であると電池内での有機セパレーターによる抵抗が小さくなる。また、本発明の多孔膜スラリーを有機セパレーターに塗工する際の作業性が良い。
本発明において、有機セパレーターの材料として用いるポリオレフィン系の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のホモポリマー、コポリマー、更にはこれらの混合物が挙げられる。ポリエチレンとしては、低密度、中密度、高密度のポリエチレンが挙げられ、突き刺し強度や機械的な強度の観点から、高密度のポリエチレンが好ましい。また、これらのポリエチレンは柔軟性を付与する目的から2種以上を混合しても良い。これらポリエチレンに用いる重合触媒も特に制限はなく、チーグラー・ナッタ系触媒やフィリップス系触媒やメタロセン系触媒などが挙げられる。機械強度と高透過性を両立させる観点から、ポリエチレンの粘度平均分子量は10万〜1200万が好ましく、より好ましくは20万〜300万である。ポリプロピレンとしては、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーが挙げられ、一種類または二種類以上を混合して使用することができる。また重合触媒も特に制限はなく、チーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒などが挙げられる。また立体規則性にも特に制限はなく、アイソタクチックやシンジオタクチックやアタクチックを使用することができるが、安価である点からアイソタクチックポリプロピレンを使用するのが望ましい。さらに本発明の効果を損なわない範囲で、ポリオレフィンにはポリエチレン或いはポリプロピレン以外のポリオレフィン及び酸化防止剤、核剤などの添加剤を適量添加してもよい。
ポリオレフィン系の有機セパレーターを作製する方法としては、公知公用のものが用いられ、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンを溶融押し出しフィルム製膜した後に、低温でアニーリングさせ結晶ドメインを成長させて、この状態で延伸を行い、非晶領域を延ばす事で微多孔膜を形成する乾式方法;炭化水素溶媒やその他低分子材料とポリプロピレン、ポリエチレンを混合した後に、フィルム形成させて、次いで、非晶相に溶媒や低分子が集まり島相を形成し始めたフィルムを、この溶媒や低分子を他の揮発し易い溶媒を用いて除去する事で微多孔膜が形成される湿式方法;などが選ばれる。この中でも、抵抗を下げる目的で、大きな空隙を得やすい点で、乾式方法が好ましい。
本発明に用いる有機セパレーターは、強度や硬度、熱収縮率を制御する目的で、任意のフィラーや繊維化合物を含んでもよい。また、本発明の多孔膜を積層する場合に、有機セパレーターと多孔膜との密着性を向上させたり、電解液に対する表面張力を下げて液の含浸性を向上させる目的で、あらかじめ低分子化合物や高分子化合物で被覆処理したり、あらかじめ紫外線などの電磁線処理、コロナ放電・プラズマガスなどのプラズマ処理を行ってもよい。特に、電解液の含浸性が高く前記多孔膜との密着性を得やすい点から、あらかじめ、カルボン酸基、水酸基及びスルホン酸基などの極性基を含有する高分子化合物で被覆処理するのが好ましい。
本発明の二次電池セパレーターは、上記の有機セパレーター上に、本発明の二次電池多孔膜を積層することで製造される。
積層方法は特に限定されないが、上述の多孔膜の製造方法で説明した(I)〜(III)の方法が挙げられる。
〔二次電池〕
本発明の二次電池は、正極、負極、有機セパレーター及び電解液を含む二次電池であって、正極、負極及び有機セパレーターのいずれかに、上述の二次電池多孔膜が積層されてなる。
(電解液)
電解液としては、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。支持電解質としては、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、特に制限はないが、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。中でも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF、LiClO、CFSOLiが好ましい。これらは、二種以上を併用してもよい。解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などのカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチルなどのエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物類;が好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類が好ましい。用いる溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
電解液中における支持電解質の濃度は、通常1〜30質量%、好ましくは5〜20質量%である。また、支持電解質の種類に応じて、通常0.5〜2.5モル/Lの濃度で用いられる。支持電解質の濃度が低すぎても高すぎてもイオン伝導度は低下する傾向にある。用いる電解液の濃度が低いほどバインダーの膨潤度が大きくなるので、電解液の濃度によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
二次電池の具体的な製造方法としては、正極と負極とを有機セパレーターを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。本発明の多孔膜は、正極、負極、及び有機セパレーターのいずれかに積層される。本発明の多孔膜を、正極、負極、有機セパレーターに積層する方法は、上述した(I)または(II)の方法の通りである。また、上述の(III)の方法の通り、独立で多孔膜のみを正極、負極または有機セパレーターに積層することも可能である。必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をする事もできる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など何れであってもよい。
本発明の二次電池においては、本発明の多孔膜を、正極又は負極の電極活物質層表面に積層することが好ましい。本発明の多孔膜を電極活物質層表面に積層することにより、有機セパレーターが熱による収縮を起こしても、正極・負極間の短絡を起こすことがなく、高い安全性が保たれる。加えて、本発明の多孔膜を電極活物質層表面に積層することにより、有機セパレーターがなくても、多孔膜がセパレーターとしての機能を果たすことができ、低コストで二次電池の作製が可能になる。また、有機セパレーターを用いた場合においても、セパレーター表面に形成されている孔を埋めることがないため、より高いレート特性を発現することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、本実施例における部および%は、特記しない限り質量基準である。実施例および比較例において、各種物性は以下のように評価する。
<8%NMP溶液粘度>
第一の重合体の8%NMP溶液粘度は、第一の重合体を8%溶液となるようにNMPに溶解させ、これに対し25℃、60rpmで、B型粘度計(東機産業製 RB−80L)を用いて、JIS K 7117−1;1999に基づいて測定した。
<融点>
第一の重合体の融点は、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製 DSC6220SII)を用いて、JIS K 7121;1987に基づいて測定した。
<二次電池セパレーター(多孔膜付有機セパレーター)の信頼性試験>
二次電池セパレーター(多孔膜付有機セパレーター)を直径19mmの円形に打ち抜き、非イオン性界面活性剤(花王社製;エマルゲン210P)の3重量%メタノール溶液中に浸漬し、取り出した後、風乾した。この円形の二次電池セパレーターに電解液を含浸させ、一対の円形のSUS板(直径15.5mm)に挟み、(SUS板)/(円形の二次電池セパレーター)/(SUS板)という構成に重ね合わせた。ここで電解液はエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPFを1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。これを2032型コインセルに封入した。コインセルからリード線をとり、熱電対を付けてオーブンの中に入れた。振幅10mV、1kHzの周波数の交流を印加しながら、昇温速度1.6℃/分で200℃まで昇温させ、この間のセル抵抗を測定することで短絡の発生状況を確認した。本試験では温度上昇と共にシャットダウンにより抵抗値が上昇し、少なくとも1000Ω/cm以上になる。その後、10Ω/cm以下まで急激に低下した場合に短絡が発生したものとした。尚、この試験を20回行ない、評価は下記の基準で評価した。
(評価基準)
A:短絡発生数0個
B:短絡発生数1個
C:短絡発生数2〜3個
D:短絡発生数4個以上
<二次電池電極(多孔膜付電極)の信頼性試験>
有機セパレーター(単層のポリプロピレン製セパレーター、気孔率55%、厚さ25μm)を直径19mmの円形に打ち抜き、非イオン性界面活性剤(花王社製;エマルゲン210P)の3重量%メタノール溶液中に浸漬し、取り出した後、風乾した。一方、測定対象の二次電池電極(多孔膜付電極)を直径19mmの円形に打ち抜いた。これらに電解液を含浸させ、これらを重ねて、一対の円形のSUS板(直径15.5mm)に挟み、(SUS板)/(円形の有機セパレーター)/(円形の二次電池電極)/(SUS板)という構成に重ね合わせた。円形の二次電池電極は、その多孔膜側の面が有機セパレーター側となるよう配置した。ここで電解液はエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPFを1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。これを2032型コインセルに封入した。コインセルからリード線をとり、熱電対を付けてオーブンの中に入れた。振幅10mV、1kHzの周波数の交流を印加しながら、昇温速度1.6℃/分で200℃まで昇温させ、この間のセル抵抗を測定することで短絡の発生状況を確認した。本試験では温度上昇と共にシャットダウンにより抵抗値が上昇し少なくとも1000Ω/cm以上になる。その後、10Ω/cm以下まで急激に低下した場合に短絡が発生したものとした。尚、この試験を20回行ない、評価は下記の基準で評価した。
(評価基準)
A:短絡発生数0個
B:短絡発生数1〜2個
C:短絡発生数3個以上
<多孔膜の柔軟性及び粉落ち性>
二次電池電極(多孔膜付電極)または二次電池セパレーター(多孔膜付有機セパレーター)を幅1cm×長さ5cmの矩形に切って試験片とする。試験片の多孔膜側と反対面を下にして机上に置き、長さ方向の中央(端部2.5cmの位置)、多孔膜側と反対面に直径1mmのステンレス棒を短手方向に横たえて設置する。このステンレス棒を中心にして試験片を多孔膜層が外側になるように180度折り曲げる。10枚の試験片について試験し、各試験片の多孔膜層の折り曲げた部分について、ひび割れまたは粉落ちの有無を観察し、下記の基準により判定する。ひび割れ、粉落ちが少ないほど、電極活物質層上または有機セパレーター上に形成した多孔膜が柔軟性及び粉落ち性に優れることを示す。
(評価基準)
A:10枚中全てに、ひび割れ及び粉落ちがみられない。
B:10枚中1〜3枚に、ひび割れまたは粉落ちがみられる。
C:10枚中4〜6枚に、ひび割れまたは粉落ちがみられる。
D:10枚中7〜9枚に、ひび割れまたは粉落ちがみられる。
E:10枚中全てに、ひび割れまたは粉落ちがみられる。
<出力特性>
10セルの二次電池を0.1Cの定電流法によって4.2Vまで充電しその後0.1Cにて3.0Vまで放電し、0.1C放電容量を求める。その後0.1Cにて4.2Vまで充電しその後10Cにて3.0Vまで放電し、10C放電容量を求める。10セルの平均値を測定値(0.1C放電容量a、10C放電容量b)とし、10C放電容量bと0.1C放電容量aの電気容量の比(b/a(%))で表される容量保持率を求め、これを出力特性の評価基準とし、以下の基準で評価する。この値が高いほど出力特性に優れている、すなわち内部抵抗が小さいことを意味する。
(評価基準)
A:50%以上
B:30%以上50%未満
C:10%以上30%未満
D:1%以上10%未満
E:1%未満
(実施例1)
〔(1)第一の重合体の製造〕
第一の重合体としては、ポリフッ化ビニリデン(アルケマ社製 Kynar741)を用い、第一の重合体のNMP溶液(固形分濃度8%)を得た。
〔(2)第二の重合体の製造〕
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水240部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、アクリロニトリル20部、ブチルアクリレート30部、メタクリル酸5部をこの順で入れ、ボトル内を窒素で置換した後、1,3−ブタジエン45部を圧入し、過硫酸アンモニウム0.25部を添加して反応温度40℃で重合反応させ、ニトリル基を有する重合単位、(メタ)アクリル酸エステル重合単位、親水性基を有する重合単位及び共役ジエンモノマーを形成し得る重合単位を含んでなる重合体を得た。重合転化率は85%、ヨウ素価は280mg/100mgであった。
前記重合体に対して水を用いて全固形分濃度を12質量%に調整した400ミリリットル(全固形分48グラム)の溶液を、撹拌機付きの1リットルオートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流して重合体中の溶存酸素を除去した後、水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム75mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水180mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第一段階の水素添加反応」という)させた。このとき、重合体のヨウ素価は35mg/100mgであった。
次いで、オートクレーブを大気圧にまで戻し、更に水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム25mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水60mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第二段階の水素添加反応」という)させた。
その後、内容物を常温に戻し、系内を窒素雰囲気とした後、エバポレータを用いて、固形分濃度が40%となるまで濃縮して第二の重合体水分散液を得た。また、第二の重合体水分散液100部にNMP320部を加え、減圧下に水を蒸発させて、第二の重合体のNMP溶液を得た。該NMP溶液100グラムをメタノール1リットルで凝固した後、60℃で一晩真空乾燥し、乾燥体を得、NMRで分析したところ、第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル単量体単位)を20質量%、1,3−ブタジエン由来の単量体単位を45質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸単量体単位)を5質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート単量体単位)を30質量%含んでいた。また、水素添加反応により、1,3−ブタジエン由来の単量体単位には、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位が含まれていることが確認できた。なお、第二の重合体のヨウ素価は10mg/100mgであった。
〔(3)バインダーの製造〕
前記第一の重合体のNMP溶液と、前記第二の重合体のNMP溶液とを、バインダーにおける第一の重合体と第二の重合体との比率が、質量比で20:80となるように、プライマリーミキサーにて、攪拌して、バインダーのNMP溶液を調整した。
〔(4)多孔膜スラリーの製造〕
非導電性粒子としてのアルミナ粒子(住友化学社製アルミナ AKP−3000、平均粒子径:0.5μm)と、上記で得られたバインダーのNMP溶液とを、固形分相当の重量比で、100:2.5となるように混合し、さらに固形分濃度が40%となるようにNMPを混合し、ビーズミルを用いて分散させて多孔膜スラリーを調整した。
〔(5)正極の製造〕
正極活物質としてのスピネル構造を有するマンガン酸リチウム95部に、電極用結着剤としてのPVDF(ポリフッ化ビニリデン、呉羽化学社製、商品名:KF−1100)を固形分換算量で3部となるように加え、さらに、アセチレンブラック2部、及びN−メチルピロリドン20部を加えて、これらをプラネタリーミキサーで混合して、スラリー状の正極用電極組成物(正極用スラリー)を得た。この正極用スラリーを厚さ18μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、120℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして全厚みが100μmの、正極活物質層を有する正極を得た。
〔(6)負極の製造〕
負極活物質としての粒子径20μm、比表面積4.2m/gのグラファイト98部と、電極用結着剤としてのSBR(スチレン−ブタジエンゴム、ガラス転移温度:−10℃)の固形分換算量1部とを混合し、この混合物にさらにカルボキシメチルセルロース1.0部を混合し、更に溶媒として水を加えて、これらをプラネタリーミキサーで混合して、スラリー状の負極用電極組成物(負極用スラリー)を調製した。この負極用スラリーを厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、120℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして全厚みが60μmの、負極活物質層を有する負極を得た。
〔(7)二次電池セパレーター(多孔膜付有機セパレーター)の製造〕
乾式法により製造された単層のポリプロピレン製セパレーター(気孔率55%、厚さ25μm)を、有機セパレーターとして用意した。この有機セパレーターの一方の面に、工程(4)で得た多孔膜スラリーを、乾燥後の多孔膜層の厚みが5μmとなるようにワイヤーバーを用いて塗布してスラリー層を得、スラリー層を80℃で10分間乾燥し、多孔膜を形成した。続いて、有機セパレーターの他方の面にも、同様に多孔膜を形成し、両面に多孔膜を有する、多孔膜付有機セパレーターを得た。
〔(8)二次電池セパレーター(多孔膜付有機セパレーター)を有する二次電池の製造〕
工程(5)で得られた正極を直径13mmの円形に切り抜いて、円形の正極を得た。工程(6)で得られた負極を直径14mmの円形に切り抜いて、円形の負極を得た。また、工程(7)で得た多孔膜付有機セパレーターを直径18mmの円形に切り抜いて、円形の多孔膜付有機セパレーターを得た。
ポリプロピレン製パッキンを設けたステンレス鋼製のコイン型外装容器の内底面上に円形の正極を載置し、その上に円形の多孔膜付有機セパレーターを載置し、さらにその上に円形の負極を載置し、これらを容器内に収納した。円形の正極は、そのアルミニウム箔側の面が外装容器の底面側に向き、正極活物質層側の面が上側に向くよう載置した。円形の負極は、その負極活物質層側の面が円形の多孔膜付有機セパレーター側に向き、銅箔側の面が上側に向くよう載置した。
容器中に電解液を空気が残らないように注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、電池缶を封止して、直径20mm、厚さ約3.2mmのリチウムイオン二次電池(コインセルCR2032)を製造した。電解液としてはエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPFを1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。
〔(9)評価〕
得られた多孔膜付有機セパレーターの信頼性、多孔膜の柔軟性及び粉落ち性、並びに得られた二次電池の出力特性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1の工程(1)で用いた第一の重合体として、ポリフッ化ビニリデン(アルケマ社製 Kynar HSV900)を用い、第一の重合体のNMP溶液(固形分濃度8%)を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1の工程(1)で用いた第一の重合体として、ポリフッ化ビニリデン(クレハ社製 KFポリマー#7200)を用い、第一の重合体のNMP溶液(固形分濃度8%)を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1の工程(2)で得られた第二の重合体の代わりに、下記の第二の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
〔第二の重合体の製造〕
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水240部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、アクリロニトリル30部、ブチルアクリレート40部、メタクリル酸5部をこの順で入れ、ボトル内を窒素で置換した後、1,3−ブタジエン25部を圧入し、過硫酸アンモニウム0.25部を添加して反応温度40℃で重合反応させ、ニトリル基を有する重合単位、(メタ)アクリル酸エステル重合単位、親水性基を有する重合単位及び共役ジエンモノマーを形成し得る重合単位を含んでなる重合体を得た。重合転化率は85%、ヨウ素価は280mg/100mgであった。
前記重合体に対して水を用いて全固形分濃度を12質量%に調整した400ミリリットル(全固形分48グラム)の水分散液を、撹拌機付きの1リットルオートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流して重合体中の溶存酸素を除去した後、水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム75mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水180mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第一段階の水素添加反応」という)させた。このとき、重合体のヨウ素価は35mg/100mgであった。
次いで、オートクレーブを大気圧にまで戻し、更に水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム25mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水60mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第二段階の水素添加反応」という)させた。
その後、内容物を常温に戻し、系内を窒素雰囲気とした後、エバポレータを用いて、固形分濃度が40%となるまで濃縮して第二の重合体水分散液を得た。また、第二の重合体水分散液100部にNMP320部を加え、減圧下に水を蒸発させて、第二の重合体のNMP溶液を得た。該NMP溶液100グラムをメタノール1リットルで凝固した後、60℃で一晩真空乾燥し、乾燥体を得、NMRで分析したところ、第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル単量体単位)を30質量%、1,3−ブタジエン由来の単量体単位を25質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸単量体単位)を5質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート単量体単位)を40質量%含んでいた。また、水素添加反応により、1,3−ブタジエン由来の単量体単位には、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位が含まれていることが確認できた。なお、第二の重合体のヨウ素価は5.6mg/100mgであった。
(実施例5)
実施例1の工程(2)で得られた第二の重合体の代わりに、下記の第二の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
〔第二の重合体の製造〕
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水240部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、アクリロニトリル20部、ブチルアクリレート33部、メタクリル酸2部をこの順で入れ、ボトル内を窒素で置換した後、1,3−ブタジエン45部を圧入し、過硫酸アンモニウム0.25部を添加して反応温度40℃で重合反応させ、ニトリル基を有する重合単位、(メタ)アクリル酸エステル重合単位、親水性基を有する重合単位及び共役ジエンモノマーを形成し得る重合単位を含んでなる重合体を得た。重合転化率は85%、ヨウ素価は280mg/100mgであった。
前記重合体に対して水を用いて全固形分濃度を12質量%に調整した400ミリリットル(全固形分48グラム)の水分散液を、撹拌機付きの1リットルオートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流して重合体中の溶存酸素を除去した後、水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム75mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水180mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第一段階の水素添加反応」という)させた。このとき、重合体のヨウ素価は35mg/100mgであった。
次いで、オートクレーブを大気圧にまで戻し、更に水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム25mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水60mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第二段階の水素添加反応」という)させた。
その後、内容物を常温に戻し、系内を窒素雰囲気とした後、エバポレータを用いて、固形分濃度が40%となるまで濃縮して第二の重合体水分散液を得た。また、第二の重合体水分散液100部にNMP320部を加え、減圧下に水を蒸発させて、第二の重合体のNMP溶液を得た。該NMP溶液100グラムをメタノール1リットルで凝固した後、60℃で一晩真空乾燥し、乾燥体を得、NMRで分析したところ、第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル単量体単位)を20質量%、1,3−ブタジエン由来の単量体単位を45質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸単量体単位)を2質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート単量体単位)を33質量%含んでいた。また、水素添加反応により、1,3−ブタジエン由来の単量体単位には、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位が含まれていることが確認できた。なお、第二の重合体のヨウ素価は10mg/100mgであった。
(実施例6)
実施例1の工程(2)で得られた第二の重合体の代わりに、下記の第二の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
〔第二の重合体の製造〕
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水240部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、アクリロニトリル20部、ブチルアクリレート34.5部、メタクリル酸0.5部をこの順で入れ、ボトル内を窒素で置換した後、1,3−ブタジエン45部を圧入し、過硫酸アンモニウム0.25部を添加して反応温度40℃で重合反応させ、ニトリル基を有する重合単位、(メタ)アクリル酸エステル重合単位、親水性基を有する重合単位及び共役ジエンモノマーを形成し得る重合単位を含んでなる重合体を得た。重合転化率は85%、ヨウ素価は280mg/100mgであった。
前記重合体に対して水を用いて全固形分濃度を12質量%に調整した400ミリリットル(全固形分48グラム)の水分散液を、撹拌機付きの1リットルオートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流して重合体中の溶存酸素を除去した後、水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム75mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水180mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第一段階の水素添加反応」という)させた。このとき、重合体のヨウ素価は35mg/100mgであった。
次いで、オートクレーブを大気圧にまで戻し、更に水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム25mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水60mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第二段階の水素添加反応」という)させた。
その後、内容物を常温に戻し、系内を窒素雰囲気とした後、エバポレータを用いて、固形分濃度が40%となるまで濃縮して第二の重合体水分散液を得た。また、第二の重合体水分散液100部にNMP320部を加え、減圧下に水を蒸発させて、第二の重合体のNMP溶液を得た。該NMP溶液100グラムをメタノール1リットルで凝固した後、60℃で一晩真空乾燥し、乾燥体を得、NMRで分析したところ、第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル単量体単位)を20質量%、1,3−ブタジエン由来の単量体単位を45質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸単量体単位)を0.5質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート単量体単位)を34.5質量%含んでいた。また、水素添加反応により、1,3−ブタジエン由来の単量体単位には、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位が含まれていることが確認できた。なお、第二の重合体のヨウ素価は10mg/100mgであった。
(実施例7)
実施例1の工程(3)のバインダーの製造において、第一の重合体のNMP溶液と、第二の重合体のNMP溶液とを、バインダーにおける第一の重合体と第二の重合体との比率が、質量比で8:92となるように、プライマリーミキサーにて、攪拌して、バインダーのNMP溶液を調整したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例1の工程(3)のバインダーの製造において、第一の重合体のNMP溶液と、第二の重合体のNMP溶液とを、バインダーにおける第一の重合体と第二の重合体との比率が、質量比で30:70となるように、プライマリーミキサーにて、攪拌して、バインダーのNMP溶液を調整したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例1の工程(3)のバインダーの製造において、第一の重合体のNMP溶液と、第二の重合体のNMP溶液とを、バインダーにおける第一の重合体と第二の重合体との比率が、質量比で40:60となるように、プライマリーミキサーにて、攪拌して、バインダーのNMP溶液を調整したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例1の工程(2)で得られた第二の重合体の代わりに、下記の第二の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
〔第二の重合体の製造〕
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水240部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、アクリロニトリル20部、ブチルアクリレート20部、メタクリル酸5部をこの順で入れ、ボトル内を窒素で置換した後、1,3−ブタジエン55部を圧入し、過硫酸アンモニウム0.25部を添加して反応温度40℃で重合反応させ、ニトリル基を有する重合単位、(メタ)アクリル酸エステル重合単位、親水性基を有する重合単位及び共役ジエンモノマーを形成し得る重合単位を含んでなる重合体を得た。重合転化率は85%、ヨウ素価は280mg/100mgであった。
前記重合体に対して水を用いて全固形分濃度を12質量%に調整した400ミリリットル(全固形分48グラム)の水分散液を、撹拌機付きの1リットルオートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流して重合体中の溶存酸素を除去した後、水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム75mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水180mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第一段階の水素添加反応」という)させた。このとき、重合体のヨウ素価は35mg/100mgであった。
次いで、オートクレーブを大気圧にまで戻し、更に水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム25mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水60mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第二段階の水素添加反応」という)させた。
その後、内容物を常温に戻し、系内を窒素雰囲気とした後、エバポレータを用いて、固形分濃度が40%となるまで濃縮して第二の重合体水分散液を得た。また、第二の重合体水分散液100部にNMP320部を加え、減圧下に水を蒸発させて、第二の重合体のNMP溶液を得た。該NMP溶液100グラムをメタノール1リットルで凝固した後、60℃で一晩真空乾燥し、乾燥体を得、NMRで分析したところ、第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル単量体単位)を20質量%、1,3−ブタジエン由来の単量体単位を55質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸単量体単位)を5質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート単量体単位)を20質量%含んでいた。また、水素添加反応により、1,3−ブタジエン由来の単量体単位には、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位が含まれていることが確認できた。なお、第二の重合体のヨウ素価は12mg/100mgであった。
(実施例11)
実施例1の工程(2)で得られた第二の重合体の代わりに、下記の第二の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
〔第二の重合体の製造〕
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水240部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、アクリロニトリル15部、ブチルアクリレート10部、メタクリル酸5部をこの順で入れ、ボトル内を窒素で置換した後、1,3−ブタジエン70部を圧入し、過硫酸アンモニウム0.25部を添加して反応温度40℃で重合反応させ、ニトリル基を有する重合単位、(メタ)アクリル酸エステル重合単位、親水性基を有する重合単位及び共役ジエンモノマーを形成し得る重合単位を含んでなる重合体を得た。重合転化率は85%、ヨウ素価は280mg/100mgであった。
前記重合体に対して水を用いて全固形分濃度を12質量%に調整した400ミリリットル(全固形分48グラム)の水分散液を、撹拌機付きの1リットルオートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流して重合体中の溶存酸素を除去した後、水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム75mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水180mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第一段階の水素添加反応」という)させた。このとき、重合体のヨウ素価は35mg/100mgであった。
次いで、オートクレーブを大気圧にまで戻し、更に水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム25mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水60mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第二段階の水素添加反応」という)させた。
その後、内容物を常温に戻し、系内を窒素雰囲気とした後、エバポレータを用いて、固形分濃度が40%となるまで濃縮して第二の重合体水分散液を得た。また、第二の重合体水分散液100部にNMP320部を加え、減圧下に水を蒸発させて、第二の重合体のNMP溶液を得た。該NMP溶液100グラムをメタノール1リットルで凝固した後、60℃で一晩真空乾燥し、乾燥体を得、NMRで分析したところ、第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル単量体単位)を15質量%、1,3−ブタジエン由来の単量体単位を70質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸単量体単位)を5質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート単量体単位)を10質量%含んでいた。また、水素添加反応により、1,3−ブタジエン由来の単量体単位には、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位が含まれていることが確認できた。なお、第二の重合体のヨウ素価は15.6mg/100mgであった。
(実施例12)
実施例1の工程(3)のバインダーの製造において、第一の重合体のNMP溶液と、第二の重合体のNMP溶液とを、バインダーにおける第一の重合体と第二の重合体との比率が、質量比で60:40となるように、プライマリーミキサーにて、攪拌して、バインダーのNMP溶液を調整したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例13)
実施例1の工程(3)のバインダーの製造において、第一の重合体のNMP溶液と、第二の重合体のNMP溶液とを、バインダーにおける第一の重合体と第二の重合体との比率が、質量比で80:20となるように、プライマリーミキサーにて、攪拌して、バインダーのNMP溶液を調整したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例14)
実施例1の工程(4)で用いた非導電性粒子の代わりに、下記の非導電性粒子を用い、工程(4)で得られた多孔膜スラリーの代わりに、下記で得られた多孔膜スラリーを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
〔非導電性粒子の製造〕
撹拌機を備えた反応器に、ドデシル硫酸ナトリウムを0.06部、過硫酸アンモニウムを0.23部、及びイオン交換水を100部入れて混合し混合物Aとし、80℃に昇温した。
一方、別の容器中でアクリル酸ブチル93.8部、メタクリル酸2.0部、アクリロニトリル2.0部、アリルグリシジルエーテル1.0部、N−メチロールアクリルアミド1.2部、ドデシル硫酸ナトリウム0.1部、及びイオン交換水100部を混合して、単量体混合物Bの分散体を調製した。
この単量体混合物Bの分散体を、4時間かけて、上で得た混合物A中に、連続的に添加して重合させた。単量体混合物Bの分散体の連続的な添加中の反応系の温度は80℃に維持し、反応を行った。連続的な添加の終了後、さらに90℃で3時間反応を継続させた。
これにより、平均粒子径370nmのシードポリマー粒子の水分散体を得た。
次に、撹拌機を備えた反応器に、上記のシードポリマー粒子の水分散体を固形分基準(即ちシードポリマー粒子の重量基準)で20部、単量体としてエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社、製品名:ライトエステルEG)を100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.0部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)を4.0部、及びイオン交換水を200部入れ、35℃で12時間撹拌することで、シードポリマー粒子に単量体及び重合開始剤を完全に吸収させた。
そして、これを90℃で5時間重合させた。その後、スチームを導入して未反応の単量体および開始剤分解生成物を除去した。これにより、平均粒子径670nmの非導電性粒子の水分散体を得た。非導電性粒子の水分散体100部(固形分濃度は20%)にNMP80部を添加し十分に混合した後、90℃減圧下で系内の水を完全に除去して、非導電性粒子のNMP分散体(固形分濃度は20%)を得た。
〔多孔膜スラリーの製造〕
上記で得られた非導電性粒子のNMP分散体と、実施例1で使用したバインダーのNMP溶液とを、固形分相当の重量比で、27:2.5となるように混合し、さらに固形分濃度が40%となるようにNMPを混合し、ビーズミルを用いて分散させて多孔膜スラリーを調整した。
(実施例15)
〔多孔膜付負極の製造〕
実施例1の工程(6)で得られた負極の負極活物質層側の面に、実施例14で得られた多孔膜スラリーを、負極活物質層が完全に覆われ、乾燥後の多孔膜厚みが5μmとなるように塗布してスラリー層を得た。スラリー層を110℃で10分間乾燥し、多孔膜を形成し、多孔膜付負極を得た。得られた多孔膜付負極は、(多孔膜)/(負極活物質層)/(銅箔)の層構成を有していた。得られた多孔膜付負極の信頼性、並びに多孔膜の柔軟性及び粉落ち性を評価した。結果を表1に示す。
実施例1の工程(7)で得られた多孔膜付有機セパレーターの代わりに、有機セパレーター(単層のポリプロピレン製セパレーター、気孔率55%、厚さ25μm、実施例1の工程(7)で有機セパレーターとして用いられているものと同じ)を用いた。
また、実施例1の工程(6)で得られた負極の代わりに、上記多孔膜付負極を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。なお、円形の多孔膜付負極を外装容器内に載置するにあたっては、その多孔膜側の面が円形の有機セパレーター側に向き、銅箔側の面が上側に向くよう載置した。
(実施例16)
実施例1の工程(4)で用いた非導電性粒子の代わりに、非導電性粒子として板状アルミナ粒子(キンセイマテック社製 SERATH、平均粒子径:0.6μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例17)
〔多孔膜付負極の製造〕
実施例1の工程(6)で得られた負極の負極活物質層側の面に、実施例1の工程(4)で得られた多孔膜スラリーを、負極活物質層が完全に覆われ、乾燥後の多孔膜厚みが5μmとなるように塗布してスラリー層を得た。スラリー層を110℃で10分間乾燥し、多孔膜を形成し、多孔膜付負極を得た。得られた多孔膜付負極は、(多孔膜)/(負極活物質層)/(銅箔)の層構成を有していた。得られた多孔膜付負極の信頼性、並びに多孔膜の柔軟性及び粉落ち性を評価した。結果を表1に示す。
実施例1の工程(7)で得られた多孔膜付有機セパレーターの代わりに、有機セパレーター(単層のポリプロピレン製セパレーター、気孔率55%、厚さ25μm、実施例1の工程(7)で有機セパレーターとして用いられているものと同じ)を用いた。
また、実施例1の工程(6)で得られた負極の代わりに、上記多孔膜付負極を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。なお、円形の多孔膜付負極を外装容器内に載置するにあたっては、その多孔膜側の面が円形の有機セパレーター側に向き、銅箔側の面が上側に向くよう載置した。
(比較例1)
実施例1の工程(2)で得られた第二の重合体の代わりに、下記の第二の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
〔第二の重合体の製造〕
重合缶Aに、ブチルアクリレート10部、アクリロニトリル2.5部、ラウリル硫酸ナトリウム0.12部、イオン交換水79部を加え、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.2部、イオン交換水10部を加え60℃に加温し90分攪拌した後に、別の重合缶Bにブチルアクリレート65部、アクリロニトリル17.5部、メタクリル酸5部、ラウリル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水46部を加えて攪拌して作製したエマルジョンを約180分かけて重合缶Bから重合缶Aに逐次添加した後、約120分攪拌してモノマー消費量が95%になったところで冷却して反応を終了し、その後4%NaOH水溶液でpH調整し、重合体の水分散液を得た。
この第二の重合体水分散液100部にNMP320部を加え、減圧下に水を蒸発させたが、NMPに溶解することができなかった。該水分散液100グラムをメタノール1リットルで凝固した後、60℃で一晩真空乾燥し、乾燥体を得、NMRで分析したところ、第二の重合体には、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル単量体単位)を20質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸単量体単位)を5質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート単量体単位)を75質量%含んでいた。なお、第二の重合体のヨウ素価は1mg/100mg以下であった。
(比較例2)
第一の重合体を用いず、比較例1の第二の重合体をバインダーとして用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1の工程(2)で得られた第二の重合体の代わりに、下記の第二の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
〔第二の重合体の製造〕
撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水240部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、アクリロニトリル20部、ブチルアクリレート35部をこの順で入れ、ボトル内を窒素で置換した後、1,3−ブタジエン45部を圧入し、過硫酸アンモニウム0.25部を添加して反応温度40℃で重合反応させ、ニトリル基を有する重合単位、(メタ)アクリル酸エステル重合単位及び共役ジエンモノマーを形成し得る重合単位を含んでなる重合体を得た。重合転化率は85%、ヨウ素価は280mg/100mgであった。
前記重合体に対して水を用いて全固形分濃度を12質量%に調整した400ミリリットル(全固形分48グラム)の水分散液を、撹拌機付きの1リットルオートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流して重合体中の溶存酸素を除去した後、水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム75mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水180mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第一段階の水素添加反応」という)させた。このとき、重合体のヨウ素価は35mg/100mgであった。
次いで、オートクレーブを大気圧にまで戻し、更に水素添加反応触媒として、酢酸パラジウム25mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水60mlに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素添加反応(「第二段階の水素添加反応」という)させた。
その後、内容物を常温に戻し、系内を窒素雰囲気とした後、エバポレータを用いて、固形分濃度が40%となるまで濃縮して第二の重合体水分散液を得た。また、第二の重合体水分散液100部にNMP320部を加え、減圧下に水を蒸発させて、第二の重合体のNMP溶液を得た。該NMP溶液100グラムをメタノール1リットルで凝固した後、60℃で一晩真空乾燥し、乾燥体を得、NMRで分析したところ、第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル単量体単位)を20質量%、1,3−ブタジエン由来の単量体単位を45質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート単量体単位)35質量%含んでいた。また、水素添加反応により、1,3−ブタジエン由来の単量体単位には、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位が含まれていることが確認できた。なお、第二の重合体のヨウ素価は10mg/100mgであった。
(比較例4)
第二の重合体を用いず、実施例1の第一の重合体をバインダーとして用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、多孔膜スラリー、多孔膜付有機セパレーター及び二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例5)
〔多孔膜付負極の製造〕
実施例1の工程(6)で得られた負極の負極活物質層側の面に、比較例3で得られた多孔膜スラリーを、負極活物質層が完全に覆われ、乾燥後の多孔膜厚みが5μmとなるように塗布してスラリー層を得た。スラリー層を110℃で10分間乾燥し、多孔膜を形成し、多孔膜付負極を得た。得られた多孔膜付負極は、(多孔膜)/(負極活物質層)/(銅箔)の層構成を有していた。得られた多孔膜付負極の信頼性、並びに多孔膜の柔軟性及び粉落ち性を評価した。結果を表1に示す。
実施例1の工程(7)で得られた多孔膜付有機セパレーターの代わりに、有機セパレーター(単層のポリプロピレン製セパレーター、気孔率55%、厚さ25μm、実施例1の工程(7)で有機セパレーターとして用いられているものと同じ)を用いた。
また、実施例1の工程(6)で得られた負極の代わりに、上記多孔膜付負極を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、二次電池を得、評価を行った。結果を表1に示す。なお、円形の多孔膜付負極を外装容器内に載置するにあたっては、その多孔膜側の面が円形の有機セパレーター側に向き、銅箔側の面が上側に向くよう載置した。
Figure 2013206846
表1の結果から以下のことがいえる。
実施例1〜17の多孔膜スラリー、該多孔膜スラリーを用いて形成された多孔膜、該多孔膜が積層された二次電池電極や二次電池セパレーター、並びに該多孔膜を有する二次電池は、各評価のバランスに優れる。

Claims (8)

  1. 非導電性粒子、第一の重合体及び第二の重合体を含むバインダー、並びに分散媒を含み、
    前記第一の重合体がフッ素含有重合体であり、
    前記第二の重合体が、ニトリル基を有する重合単位、親水性基を有する重合単位、及び炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を含有してなる重合体である、二次電池多孔膜用スラリー組成物。
  2. 前記バインダーにおける前記第一の重合体と前記第二の重合体との比率が、質量比で5:95〜50:50である請求項1に記載の二次電池多孔膜用スラリー組成物。
  3. 前記第一の重合体がポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の中から選ばれる少なくとも一つである請求項1または2に記載の二次電池多孔膜用スラリー組成物。
  4. 前記第二の重合体が、(メタ)アクリル酸エステル重合単位を含んでなる請求項1〜3のいずれかに記載の二次電池多孔膜用スラリー組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池多孔膜用スラリー組成物を、膜状に形成、乾燥してなる二次電池多孔膜。
  6. 集電体、電極活物質層、及び多孔膜をこの順に積層してなり、該多孔膜が、請求項5に記載の二次電池多孔膜であることを特徴とする二次電池電極。
  7. 有機セパレーター及び多孔膜を積層してなり、該多孔膜が、請求項5に記載の二次電池多孔膜であることを特徴とする二次電池セパレーター。
  8. 正極、負極、有機セパレーター及び電解液を含む二次電池であって、
    前記正極、負極及び有機セパレーターのいずれかに、請求項5に記載の二次電池多孔膜が積層されてなる、二次電池。
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