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JP5853524B2 - 有機無機複合体、フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

有機無機複合体、フィルムおよびその製造方法 Download PDF

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JP5853524B2 JP2011202762A JP2011202762A JP5853524B2 JP 5853524 B2 JP5853524 B2 JP 5853524B2 JP 2011202762 A JP2011202762 A JP 2011202762A JP 2011202762 A JP2011202762 A JP 2011202762A JP 5853524 B2 JP5853524 B2 JP 5853524B2
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Description

本発明は熱寸法安定性に優れた光線透過率の大きいフィルムを与える有機無機複合体、フィルムおよびその製造方法に関する。
液晶ディスプレイや電子ペーパーなどディスプレイ用の基板としてガラスに代わりプラスチック基板を用いる動きが広まっている。プラスチック基板は「軽い」「割れない」というメリットを持つ一方、熱寸法安定性に劣るという欠点を持つ。
たとえば、液晶ディスプレイ用のカラーフィルターの加工工程では、レジストの塗布、露光、現像、加熱という工程を赤、緑、青に対応して少なくとも3回繰り返すが、プラスチック基板の熱寸法安定性が悪い場合、画素が所望の場所に形成できない、いわゆる「画素ズレ」の問題を生じる。またTFTの形成においては300℃近い温度においても重量減少が小さいことも要求される。
熱寸法安定性の一つの指標である熱膨張係数を低減した高耐熱フィルムが、特許文献1に開示されている。しかし、カラーフィルターの製造工程のような繰り返しの加熱冷却に対する寸法安定性は必ずしも十分とはいえない面があった。
また、有機高分子と金属酸化物の有機無機複合体材料は、用いられる有機高分子と比較して耐熱性が向上することが知られている。しかし、高い光線透過率と低い熱膨張係数を有しかつ、加熱冷却のサイクルテストにおいて寸歩変化の小さいフィルムは得られていなかった(特許文献2〜6)。
特許文献2には主骨格としてポリカーボネートまたはポリアリレートを持つ有機無機複合体材料の開示があるが、主骨格がポリカーボネートであるために、ガラス転移温度は、せいぜい200℃程度である。特許文献3にはアラミドを用いた有機無機複合体材料の開示があるがポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)を用いているために光線透過率が不十分だった。さらに特許文献3の方法ではPPTAの表面に無機成分を含侵させるためにPPTA内部と表面で物性に差が生じると考えられる。特許文献4および5はいずれもポリイミドを主骨格とする有機無機複合体材料の開示であるが、実施例は両者とも無水ピロメリット酸(PMDA)またはビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA)を原料に用いた茶褐色のポリイミドであり、ディスプレイ基板用の光線透過率は満足しない。さらに本発明者らはアラミドを含む有機無機複合体フィルムを特許文献6に開示したが、無機成分として酸化銅を含むために酸化銅由来の着色があった。
国際公開第2004/039863号パンフレット 特開平11−255883号公報 特開平4−342736号公報 特開2007−254499号公報 特開平8−73739号公報 特開2004−26955号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。すなわち、本発明の目的は熱寸法安定性に優れた光線透過率の大きいフィルムを与える有機無機複合体、フィルムおよびその製造方法を得ることにある。
上記目的を達成するための本発明は、パラ配向性芳香族ポリアミドとSi原子を含む半金属アルコキシドからゾル−ゲル法によって形成された無機物とからなり、パラ配向性芳香族ポリアミドが化学式(I)〜(IV)で示される構造単位を含み、化学式(I)で表される構造単位のモル分率をa、化学式(II)で表される構造単位のモル分率をb、化学式(III)で表される構造単位のモル分率をc、化学式(IV)で表される構造単位のモル分率をdとしたとき、a、b、cおよびdが次式(1)〜(4)を満足し、かつパラ配向性芳香族ポリアミドの構造単位中および無機物中にSi原子を共通して含む有機無機複合体の製造方法であることを特徴とする。
30<a<50 ・・・(1)
0<b<20 ・・・(2)
0<c<5 ・・・(3)
49<d<51 ・・・(4)
Figure 0005853524
Figure 0005853524
:SO、または、O-Ph-SO-Ph-O(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
Figure 0005853524
珪素(Si)原子を含む基
Figure 0005853524
:フェニル、ビフェニル、または、ビフェニルエーテル(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
本願発明によれば、表示材料基板に好適に利用できる、熱寸法安定性に優れた光線透過率の大きいフィルムを与える有機無機複合体、フィルムを提供することが可能となる。
本発明の有機無機複合体は、パラ配向性芳香族ポリアミドと無機物とからなり、パラ配向性芳香族ポリアミドが化学式(I)〜(IV)で示される構造単位を含み、化学式(I)で表される構造単位のモル分率をa、化学式(II)で表される構造単位のモル分率をb、化学式(III)で表される構造単位のモル分率をc、化学式(IV)で表される構造単位のモル分率をdとしたとき、a、b、cおよびdが次式(1)〜(4)を満足し、かつパラ配向性芳香族ポリアミドの構造単位中および無機物中に共通する金属原子または半金属原子を含むことを特徴とする。
30<a<50 ・・・(1)
0<b<20 ・・・(2)
0<c<5 ・・・(3)
49<d<51 ・・・(4)
Figure 0005853524
Figure 0005853524
:SO、または、O-Ph-SO-Ph-O(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
Figure 0005853524
:金属原子または半金属原子を含む基
Figure 0005853524
:フェニル、ビフェニル、または、ビフェニルエーテル(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
本発明において、芳香族ポリアミドとは全ての構造単位が芳香族のみからなる全芳香族ポリアミドと脂肪族構造を一部含む半芳香族ポリアミドの両者を示す。
本発明において、パラ配向性とは芳香族ポリアミドの主鎖に存在する芳香族基がパラ位で接続された構造を有することを意味する。
化学式(I)〜(IV)において、化学式(I)〜(III)はジアミン由来の構造単位であり、化学式(IV)はジカルボン酸ジハライド由来の構造単位である。
まず、ジアミン由来の構造単位について説明する。
化学式(I)で示される2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル残基は低い熱膨張係数と高い光線透過率の実現に寄与するが、これをジアミン成分として単独で使用した場合(a=50かつd=50の場合)、過度に剛直であるために溶媒に対する溶解性の低下や、液晶性の発現という問題を生じることがある。得られるフィルムが等方性を持ち、有機溶媒への溶解性に優れたパラ配向性芳香族ポリアミドを得るためには、化学式(II)で示される屈曲性の構造単位を共重合することが好ましい。
化学式(II)においてRはSO、または、O-Ph-SO-Ph-Oである。また、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。R部位にSO、または、O-Ph-SO-Ph-O以外の構造単位を用いた場合、例えば−O−や、−CH−、−C(CF−の場合、得られるパラ配向性芳香族ポリアミドの光線透過率が劣る問題がある。これに対し、SO、または、O-Ph-SO-Ph-Oは、SO部位が電子の共役を阻害し、高い光線透過率を得ることができる。また、Rにメタ配向性の構造単位を導入すれば、高い光線透過率を得るが、熱膨張係数が大きく、機械物性が低くなる問題がある。
化学式(II)においてRは好ましくはSOである。屈曲性の構造単位の過度な増加はヤング率の低下や熱膨張係数の増大という問題を引き起こす。RがSOであれば、O-Ph-SO-Ph-Oと比較して、屈曲性のエーテル結合が2個少ないため、同じモル分率で導入した場合、溶解性の向上や、液晶性の発現阻害という目的は満足しながらもヤング率や熱膨張係数への負の影響が小さいため好ましい。
化学式(I)で表される構造単位のモル分率aは30を超えて50未満である。この範囲を外れるとポリマーの剛直性、直線性が高くなりすぎて溶解性が不十分であったり、液晶性を発現してしまうことがある。より好ましくはaは35以上50未満、さらに好ましくは35以上45以下である。
化学式(II)で表される構造単位のモル分率bは0を超えて20未満である。bが0である場合、ポリマーの柔軟性が不十分になり、溶解性が不十分であったり、脆くなってしまうことがある。またbが20以上の場合は熱膨張係数が大きくなったり、機械強度が小さくなることがある。より好ましくはbは0を超えて15以下、さらに好ましくは5以上15以下である。
化学式(III)で表される構造単位は有機無機複合体としたときにパラ配向性芳香族ポリアミドと無機物が相分離を起こしたりせずに、相溶もしくは良分散せしめる目的で導入する。このため化学式(III)においてRは金属原子または半金属原子を含んでいる。本発明においてはパラ配向性芳香族ポリアミドと無機物が相溶あるいは良分散することによって、パラ配向性芳香族ポリアミドのみでは得られない熱寸法安定性を得るが、Rに金属原子または半金属原子を含んでいない場合、パラ配向性芳香族ポリアミドと無機物が相分離を起こすことがある。相分離を起こしてしまうと無機物はパラ配向性芳香族ポリアミド中の異物として作用し、機械物性の低下、光線透過率の低下、熱寸法安定性の悪化を引き起こすことがある。
金属原子または半金属原子としてはパラ配向性芳香族ポリアミドとの複合体として無色透明な有機無機複合体を与えるものが好ましく、珪素(Si)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、硼素(B)が例示できる。化学式(III)で表される構造単位の入手の容易性および、無機物を得るための有機金属または有機半金属の入手の容易性から特にSi元素であることが好ましい。具体的には、Rは1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p−アミノ−フェニル)オクタメチルペンタシロキサン、(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサンなどシロキサンジアミン残基であることか好ましい。より好ましくは1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン残基である。
化学式(III)で表される構造単位のモル分率cは0を超えて5未満である。cが0である場合、芳香族ポリアミド成分と無機物が相分離してしまい、白濁したり機械強度が小さくなることがある。また、化学式(III)で表される構造単位は柔軟な構造を有するためcが5以上の場合、機械強度が小さくなることがある。
化学式(IV)で表される構造単位は、好ましくはテレフタル酸ジクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボニルクロライドの残基である。
化学式(IV)においてRはパラフェニレン残基、4,4’−ビフェニル残基、4,4’−ビフェニルエーテル残基であることが好ましい。これらのパラ配向性芳香族基を持つことによって、有機無機複合体が優れた熱寸法安定性を発現できる。分子内においてこれらの基を有する構造単位は混在していてもよい。単一の構造単位の場合、溶解性が低下したり、液晶性が発現することがあるが、これらの問題は複数の構造単位を導入して、規則性を崩すことで回避できる。
また、化学式(I)〜(III)で示されるジアミン由来の構造単位と、化学式(IV)で示されるジカルボン酸ジハライド由来の構造単位の比率は、49〜51:51〜49である。すなわち
49<d<51 ・・・(4)
を満足している。
これら化学式(I)〜(IV)で示される構造単位を含むパラ配向性芳香族ポリアミドの末端部位については特に限定されない。ジアミンとジカルボン酸ジクロライドを原料とした場合、原料の組成比によってアミン末端あるいはカルボン酸末端となる。または他のアミン、カルボン酸クロライド、カルボン酸無水物によって、末端封止を行ってもよい。
末端封止に用いる化合物としては塩化ベンゾイル、置換塩化ベンゾイル、無水酢酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、4−エチニルアニリン、4−フェニルエチニルフタル酸無水物、無水マレイン酸などが例示できる。
以下に本発明において用いるパラ配向性芳香族ポリアミド(以下、単に芳香族ポリアミドともいう)を製造する例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
芳香族ポリアミドを得る方法は種々の方法が利用可能であり、例えば、低温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法などを用いることができる。低温溶液重合法つまりジカルボン酸ジクロライドとジアミンから得る場合には、非プロトン性有機極性溶媒中で合成される。ポリマー溶液は、単量体としてジカルボン酸ジクロライドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤が使用される。また、イソシアネートとジカルボン酸との反応は、非プロトン性有機極性溶媒中、触媒の存在下で行なわれる。
本発明において用いる芳香族ポリアミドの製造において、使用する非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。
さらにはポリマーの溶解を促進する目的で、溶媒には50質量%以下のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の塩を溶解助剤として添加することができる。この溶解助剤としては臭化リチウム、塩化リチウムなどが例示できる。
本発明の有機無機複合体は無機物がゾル−ゲル法によって形成されたものであることが好ましい。ゾル−ゲル法に用いる金属または半金属化合物としては金属または半金属アルコキシド、金属または半金属アセチルアセトナート(金属または半金属ペンタンジオン錯体)、金属または半金属カルボキシレート、金属または半金属硝酸塩、金属または半金属オキシ塩酸塩、金属または半金属塩化物等が例示できる。金属または半金属アルコキシドとしては、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、銅ジメトキシド、カルシウムジメトキシド、ストロンチウムジエトキシド、バリウムジエトキシド、亜鉛ジエトキシド、硼素トリメトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、ガリウムトリエトキシド、イットリウムトリブトキシド、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラn−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラn−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、テトラブトキシ鉛、タングステンオクタエトキシド、トリブトキシアルミニウム、ジメトキシ銅、ジエトキシバリウム、トリメトキシホウ素、トリエトキシガリウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラブトキシ鉛、ペンタn−プロポキシタンタル、ヘキサエトキシタングステン等が例示できるが、これに限定されるものではない。
本発明において金属または半金属アセチルアセトナートとしては、アルミニウム(III)アセチルアセトナート、ベリリウム(II)アセチルアセトナート、パラジウム(II)アセチルアセトナート、クロム(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、銅(II)アセチルアセトナート、カルシウム(II)アセチルアセトナート、インジウム(III)アセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、リチウムアセチルアセトナート、マグネシウム(II)アセチルアセトナート、マンガン(III)アセチルアセトナート、二酸化モリブデン(VI)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート、酸化チタン(IV)アセチルアセトナート、二塩化錫(IV)アセチルアセトナート、酸化バナジウム(IV)アセチルアセトナート、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナート、プラチナ(II)アセチルアセトナート、ルテニウム(III)アセチルアセトナートなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、金属カルボキシレートとしては例えば酢酸鉛、ステアリン酸ニッケルなどが挙げられる。
また、無機物がゾル−ゲル法によって形成されたものであり、パラ配向性芳香族ポリアミドと無機物の前駆体との構成割合(質量基準)が、1:99〜99:1であることも好ましい。
金属または半金属化合物としては金属または半金属アルコキシドであることが好ましく、より好ましくは無色透明な有機無機複合体を与える珪素(Si)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、硼素(B)である。また、最も好ましくはSi原子を含む半金属アルコキシドである。Si原子を含む半金属アルコキシドを用いた場合、得られる有機無機複合体の光線透過率やヘイズが悪化する問題が生じにくい。また芳香族ポリアミドの化学式(III)で表される構造単位に導入する半金属原子としてもSiは、原料の入手が容易であるため好ましい。
本発明の有機無機複合体は、ゾル−ゲル法で形成した以外の無機物や無機化合物や有機粒子を含有していても構わない。表面形成を目的とした添加剤としては例えば、無機粒子ではSiO、TiO、Al、CaSO、BaSO、CaCO、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンド、ゼオライト、その他の金属微粉末等が挙げられる。たとえば、表面形成を目的にした場合、SiOの添加が好ましい。含有せしめる量は好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
上記した有機無機複合体は、フィルムの形態を有していることが好ましい。
フィルムにおいては、その厚みは、0.01μm〜1,000μmであることが好ましい。より好ましくは、1μmから100μmである。より好ましくは2μmから50μm、より好ましくは2μmから30μm、さらに好ましくは2μmから20μmである。フィルムの厚みが1,000μmを超えると光線透過率が低くなることがある。またフィルムの厚みが0.01μm未満ではたとえ高剛性の芳香族ポリアミドを含む有機無機複合体であっても加工性が低下することがある。なお、フィルムの厚みは用途により適切に選定されるべきものであることは言うまでもない。
本発明のフィルムは少なくとも一方向のヤング率が4GPa以上であることが加工時、使用時に負荷される力に対して抵抗でき、平面性が一層良好となるため好ましい。また少なくとも一方向のヤング率が4GPa以上であることによりフィルムの薄膜化が可能になる。
全ての方向のヤング率が4GPa未満であると、加工時に変形を起こすことがある。また、ヤング率に上限はないが、ヤング率が20GPaを超えると、フィルムの靱性が低下し、製膜、加工が困難になることがある。ヤング率は、より好ましくは、少なくとも一方向において8GPa以上であり、さらに好ましくは、少なくとも一方向において10GPa以上である。
また、ヤング率の最大値(Em)とそれと直交する方向のヤング率(Ep)の比、Em/Epが、1.1〜3であると、加工時の裁断性が向上するため好ましい。より好ましくは、1.2〜2.5であり、さらに好ましくは1.5〜2.5である。Em/Epが3を超えると、却って、破断しやすくなることがある。
また、本発明のフィルムは、JIS−K7127−1989に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が5%以上、より好ましくは10%以上であると成形、加工時の破断が少なくなるため好ましい。破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。
本発明のフィルムは、200℃で30分間、実質的に張力を付与しない状態で熱処理したときの少なくとも一方向の熱収縮率が1%以下であると、加工時の寸法変化、また位相差特性の変化を抑えることができるため好ましい。より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である。なお、熱収縮率は、以下の式で定義される。
熱収縮率(%)=((熱処理前の試料長 − 熱処理し、冷却後の試料長)/熱処理前の試料長)×100
上記の熱収縮率は低い方が好ましいが、現実的には下限は0.1%程度である。上記条件で測定した少なくとも一方向の熱収縮率が1%以下であると、フィルム上に電気回路を形成することや電子部品をハンダ付けすることなどが可能となる。また、光学部材として他部材と貼り合わせる時にフィルムが歪みにくいため、位相差などの光学特性にむらが生じにくくなる。さらには抗張力性が高いので配向が乱されず、位相差などの光学特性にむらが生じにくくなる。
また、以下の(5)〜(8)を満足するフィルムであることが好ましい。
(5)フィルムの少なくとも1方向の100℃〜200℃の平均熱膨張係数が−20ppm/℃以上20ppm/℃以下である。
(6)400nmの光の光線透過率が70%以上である。
(7)ヘイズが2%以下である。
(8)昇温速度10℃/分で昇温し、200℃における質量を100質量%としたとき、1質量%減少する温度が300℃以上である。
フィルムの少なくとも1方向の100℃〜200℃の平均熱膨張係数が−20ppm/℃以上20ppm/℃以下であると、熱膨張係数の小さいインジウムをドープした酸化錫(ITO)や半導体と積層したときにカールや割れが少なくなるため好ましい。より好ましくは−10ppm/℃以上10ppm/℃以下、さらに好ましくは−5ppm/℃以上5ppm/℃以下である。
また、平均熱膨張係数が一方向のみではなく、直交する2方向について上記範囲に制御されていることにより、さらにインジウムをドープした酸化錫(ITO)や半導体と積層したときにカールや割れが少なくなる。熱膨張係数が制御される方向は、フィルムの製膜方向(「長手方向」または「MD方向」ということがある)と、その直交方向(「幅方向」または「TD方向」ということがある)の組であることが好ましい。また、フィルム面内の1方向およびこれと直交する方向の平均熱膨張係数の差は5ppm/℃以下であることが好ましい。平均熱膨張係数の差はより好ましくは3ppm/℃以下、さらに好ましくは1ppm/℃以下、最も好ましくは0.5ppm/℃以下である。
なお、本発明において、「平均熱膨張係数」とは温度T1から温度T2までの平均熱膨張係数を指し、「熱膨張係数」とはある温度Tでの熱膨張係数を意味する。
100℃〜200℃の平均熱膨張係数は250℃まで昇温した後の降温過程において測定する。23℃、65RH%における初期試料長をL0、温度T1の時の試料長をL1、温度T2の時の試料長をL2とするとT1からT2の平均熱膨張係数は以下の式で求められる。
平均熱膨張係数(ppm/℃)
=(((L2−L1)/L0)/(T2−T1))×10
この測定は250℃まで昇温した後の降温過程(2サイクル目以降の過程を含む)において測定する。
フィルムの少なくとも1方向の100℃〜200℃の平均熱膨張係数が−20ppm/℃以上20ppm/℃以下とするためには、化学式(I)で示される2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル残基のモル分率aを制御するとよい。aが30以下の場合は100℃〜200℃の平均熱膨張係数は20ppm/℃を超えてしまうことがある。また、無機物の添加は熱膨張係数を増大させるので、無機物の添加量を大きくするときは2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル残基のモル分率aを35以上50未満とすることが好ましい。
光線透過率について、400nmの波長の光の光線透過率は70%以上であることが好ましい。さらに好ましくは75%以上である。
400nmの波長の光の光線透過率が70%未満であると、表示材料用途での利用が困難になるばかりでなく、UV硬化性の接着剤を使用した場合にフィルムの反対面からUVを照射してもフィルムに吸収されてしまい硬化しづらくなる問題がある。
光線透過率は好ましくは400nm〜700nmの全ての波長の光において70%以上、より好ましくは75%以上、最も好ましくは80%以上である。
また、表示材料用途においてはヘイズが小さいことも重要であり、ヘイズは2%以下が好ましい。より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1%以下である。本願発明は有機物であるパラ配向性芳香族ポリアミドと無機物との複合体であるが、パラ配向性芳香族ポリアミドの有機溶媒溶液に無機物である粒子を添加する方法では、無機物の割合が1質量%を超えるとヘイズが2%を超えることがある。このため、パラ配向性芳香族ポリアミドと無機物を良好に分散しせしめる方法が好ましく、例えばゾル−ゲル法と呼ばれる金属化合物からの無機物の生成方法を挙げることができる。
さらに熱安定性の別の指標である熱重量減少について、昇温速度10℃/分で昇温し、200℃における質量を100質量%としたとき、1質量%減少する温度が300℃以上であることも好ましい。ディスプレイ用の基板として使用する場合、多くの減圧工程、高温工程を経て加工される。この間、質量減少があると真空チャンバーを汚染したり、寸法変化が生じたり、クラックが生じたりという問題が発生する。質量減少の低減については耐熱性に優れたパラ配向性芳香族ポリアミドと、同じく耐熱性に優れた無機物を用いることによって達成することができる。
さらに25℃から230℃までの加熱冷却のサイクルテストを3回行った時、寸法変化量が200ppm以下であることが好ましい。有機物であるパラ配向性芳香族ポリアミドは若干の自由度を持ち、寸法変化を起こすことがある。この動きをゾル−ゲル法によって生成した無機物で抑制することにより寸法変化量200ppm以下を達成することが可能となる。
また、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテ−ト(以下、「PGMEA」ということがある)に対する耐性を持つことも好ましい。ここでPGMEAに対する耐性はJIS K5600−6−1:1999(方法3)に準じて評価する。また、詳細項目については以下の通り規定する。
試験板: フィルムを用いる。その寸法は30mm×30mmとする。
試験液: PGMEA
滴下箇所: 試験板の中央
試験後の洗浄: 流水
期間 : 10分
評価 : 以下の(a)〜(c)のいずれかに該当する場合は「耐性なし」と判断する。
いずれにも該当しない場合は耐性有りと判断する。
(a)水平な台に置いたとき、試験板の最も低い位置と高い位置の差が3mm以上である。
(b)試験板がロール状に巻いた状態になり、1周以上のロールを形成する。
(c)試験後のヘイズが試験前のヘイズより1%以上大きい。
また、フィルムが有機物と無機物とから構成され、無機物が有機金属または有機半金属の加水分解物であることも好ましい。有機金属または有機半金属の加水分解物の製造方法としてはゾル−ゲル法であることが好ましい。
次に、本願発明の有機無機複合体およびフィルムの製造方法について説明する。
有機物の有機溶媒溶液に有機金属または有機半金属を添加する工程と、この有機金属または有機半金属を加水分解する工程とを有することが好ましい。有機物として低温重合法で重合されたパラ配向性芳香族ポリアミドを用いた場合、中和工程で中和水が生成する。有機金属または有機半金属の加水分解はこの中和水を利用することができる。さらに水を添加しても構わないし、空気中の水分を利用することも可能である。加水分解を促進する目的で酸またはアルカリを添加することも可能である。酸としては塩酸、酢酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸などが例示できるが、塩化水素源として、パラ配向性芳香族ポリアミドの重合時に生成する塩化水素を利用することも可能である。この場合、有機溶媒に有機金属または有機半金属を溶解した溶液中で芳香族ポリアミドを重合し、重合時に発生する塩化水素およびこれを中和する時に発生する水を用いて前記有機金属または有機半金属を加水分解することが好ましい。
次に、本発明の有機無機複合体からフィルムを乾湿式法で製造する方法について説明する。有機無機複合体あるいはその前駆体の有機溶媒溶液である製膜原液を口金からドラム、エンドレスベルト、支持フィルム等の支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層が自己保持性をもつまで乾燥する。乾燥条件は例えば、室温〜220℃、60分以内の範囲で行うことができる。またこの乾燥工程で用いられるドラム、エンドレスベルト、支持フィルムの表面は平滑であればあるほど表面の平滑なフィルムが得られる。乾式工程を終えたフィルム(シート)は支持体から剥離されて湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれ、さらに延伸、乾燥、熱処理が行なわれてフィルムとなる。ゾル−ゲル反応は溶液状態で一部進行し、熱処理工程でさらに進むと考えられる。このため熱処理温度は280℃以上の高温であることが好ましく、より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは320℃以上、より好ましくは340℃以上である。400℃を超えるとパラ配向性芳香族ポリアミドといえども分解してしまうことがある。熱処理時間は30秒以上が好ましく、より好ましくは1分以上、さらに好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上である。また、熱処理は窒素やアルゴンなど不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
フィルムは、フィルムの長手方向(製膜搬送方向。以下MDということがある)と、幅方向(フィルム面内で長手方向と直行する方向。以下TDということがある)ともに1.00倍以上2.00倍以下の延伸倍率にて延伸することが好ましい。MD方向の延伸倍率は好ましくは1.02倍以上1.20倍以下、より好ましくは1.05倍以上1.15倍以下、さらに好ましくは1.05倍以上1.13倍以下、より好ましくは1.06倍以上1.12倍以下である。TD方向の延伸倍率は好ましくは1.02倍以上1.50倍以下、より好ましくは1.10倍以上1.30倍以下、さらに好ましくは1.15倍以上1.30倍以下、より好ましくは1.20倍以上1.26倍以下である。また、MD方向の延伸倍率に対し、TD方向の延伸倍率が1.0倍以上、1.2倍以下が好ましい。より好ましくは1.05倍以上、1.15倍以下、さらに好ましくは1.1倍以上、1.13倍以下である。
フィルムの構造(構成成分)は、その原料によって決定される。原料が不明であるフィルムの構造分析を行う場合は、質量分析、核磁気共鳴法による分析、分光分析などを用いることができる。
上記で説明した本発明のフィルムは、表示材料、表示材料基板、回路基板、光電複合回路基板、光導波路基板、半導体実装用基板、多層積層回路基板、透明導電フィルム、位相差フィルム、タッチパネル、コンデンサー、プリンターリボン、音響振動板、太陽電池、光記録媒体、磁気記録媒体のベースフィルム、包装材料、粘着テープ、接着テープ、加飾材料等種々の用途に好ましく用いられる。
表示材料について、一般に表示材料基板としてはガラスが用いられているが、本発明のフィルムを表示材料基板として用いると、薄膜化、軽量化、割れないという大きなメリットを有する表示材料を得ることができる。本発明の表示材料の種類は特に限定は無いが、薄膜、軽量がメリットとなる薄膜ディスプレイ、あるいは薄膜表示体であることが好ましい。薄膜ディスプレイとしては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、電子ペーパーなどが例示できる。
また、フィルム形態以外の用途としては、プリズムシート、光ファイバーや光導波路、レンズ、マイクロレンズアレイ、光学フィルタ、反射防止膜、平坦化膜、他素材へのコート剤、他素材と貼り合わせた積層品、成型品などに好適に利用できる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明における物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
(1)100℃〜200℃の平均熱膨張係数
平均熱膨張係数はJIS K7197−1991に準拠して250℃まで昇温した後の降温過程に於いて測定した。23℃、65RH%における初期試料長をL0、温度T1の時の試料長をL1、温度T2の時の試料長をL2とし、T1からT2の平均熱膨張係数を以下の式で求めた。なお、T2=100(℃)、T1=200(℃)である。
熱膨張係数(ppm/℃)=(((L2−L1)/L0)/(T2−T1))×10
装置:TMA/SS6000(セイコー電子社製)
昇温、降温速度:10℃/min
測定方向:製膜方向と直交する方向(TD方向)について、測定した。
試料幅:4mm
荷重:フィルム厚み10μmの時44.5mN。フィルム厚みに比例して荷重は変更する。
(2)400nmの光の光線透過率
下記装置を用いて測定し、下記式を用いて算出した。
透過率(%)=(Tr1/Tr0)×100
ただしTr1は試料を通過した光の強度、Tr0は試料を通過しない以外は同一の距離の空気中を通過した光の強度である。
装置:UV測定器U−3410(日立計測社製)
波長範囲:300nm〜800nm(うち、400、450、500、550、600、650、700nmの各波長における値を利用)
測定速度:120nm/分
測定モード:透過
なお、光線透過率は好ましくは400nm〜700nmの全ての波長の光において70%以上、より好ましくは75%以上、最も好ましくは80%以上であるが、この場合の値は、上記した400〜700nmの波長範囲における50nm刻みの測定波長における値にて判断する。
(3)ヘイズ
下記測定器を用いて測定した。
装置:直読ヘーズメーターHGM−2DP(C光源用) (スガ試験機社製)
光源:ハロゲンランプ12V、50W
受光特性:395〜745nm
光学条件:JIS−K7105−1981に準拠
(4)熱重量減少
下記測定器を用いて測定した。
装置:熱重量測定装置TGA−50H(島津製作所社製)
昇温、降温速度:10℃/min
ガス種類・流量:窒素ガス・20ml/分
試料量:約15mg
(5)加熱冷却のサイクルテスト
下記測定器を用いて測定した。
装置:TMA/SS6000(セイコー電子社製)
試料幅:4mm
試料長:約15mm
荷重:フィルム厚み10μmの時44.5mN。フィルム厚みに比例して荷重は変更する。
測定方向:製膜方向と直交する方向(TD方向)について、測定した。
測定条件:
(a)25℃〜230℃まで10℃/分で昇温、5分ホールド
(b)230℃〜25℃まで10℃/分で降温、5分ホールド
(c)25℃〜230℃まで10℃/分で昇温、5分ホールド
(d)230℃〜25℃まで10℃/分で降温、5分ホールド
(e)25℃〜230℃まで10℃/分で昇温、5分ホールド
(f)230℃〜25℃まで10℃/分で降温、5分ホールド
寸法変化量の算出式:
(a)の工程をスタートする時の試料長を読みとり、Lc0とする。
(a)の工程で230℃に到達したときの試料長を読みとり、Lc1とする。
(e)の工程で230℃に到達したときの試料長を読みとり、Lc2とする。
寸法変化量=(Lc1−Lc2)/Lc0×10(ppm/℃)
(6)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテ−ト(PGMEA)に対する耐性
JIS K5600−6−1:1999(方法3)に準じて評価する。また、詳細項目については以下の通り規定する。
試験板: フィルムを単独で用いる。その寸法は30mm×30mmとする。
試験液: PGMEA
滴下箇所: 試験板の中央
試験後の洗浄: 流水
期間 : 10分
評価 : 以下の(a)〜(c)のいずれかに該当する場合は「耐性なし」と判断する。いずれにも該当しない場合は耐性有りと判断する。
(a)水平な台に置いたとき、試験板の最も低い位置と高い位置の差が3mm以上である。
(b)試験板がロール状に巻いた状態になり、1周以上のロールを形成する。
(c)試験後のヘイズが試験前のヘイズより1%以上大きい。
(合成例1)
樹脂A1の合成:
攪拌機を備えた200ml3つ口フラスコ中に無水塩化リチウム4.73gを入れ、窒素気流下攪拌をしながら110℃まで加熱して乾燥する。30℃まで放冷した後に2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レ・ファインケミカル社製)8.97g、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン(和歌山精化株式会社製「44DDS」)1.65g、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン0.09g、N−メチル−2−ピロリドン195mlを入れ窒素雰囲気下、0℃に冷却、攪拌しながら30分かけて4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東京化成社製)1.95gを5回に分けて添加し、添加終了後30分攪拌した。次にテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)5.68gを5回に分けて添加した。さらに1時間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマー溶液を得た。
(実施例1)
攪拌機を備えた200mlフラスコ中に合成例1で得られた樹脂A1を30g、無機物前駆体としてテトラエチルオルトシリケート0.23gを入れて1時間攪拌した。濃塩酸1滴を添加してさらに1時間攪拌して有機無機複合体溶液を得た。ここで、無機物前駆体として添加した有機半金属であるテトラエチルオルトシリケートは濃塩酸を触媒とした加水分解(ゾル−ゲル法)によって無機物(SiO)nに転化している。
得られた有機無機複合体溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性のフィルムを得た。室温で3分間放置した後に水浴に浸して得られたフィルムをガラス板から剥がした。フィルムを金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに340℃3分で熱処理を行い有機無機複合体フィルムを得た。得られたフィルムの物性を測定し、表1に示した。なお、バーコーターの走行方向が製膜方向(MD方向)、これに直交する方向がTD方向である。
(実施例2、参考例3、4、比較例1)
用いるポリマの種類、フィルム厚みを変更する以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの物性を測定し、表1に示した。
Figure 0005853524
TEOS:テトラエチルオルトシリケート
Ph−TEOS:トリエトキシフェニルシラン
Figure 0005853524

Claims (6)

  1. パラ配向性芳香族ポリアミドとSi原子を含む半金属アルコキシドからゾル−ゲル法によって形成された無機物とからなり、パラ配向性芳香族ポリアミドが化学式(I)〜(IV)で示される構造単位を含み、化学式(I)で表される構造単位のモル分率をa、化学式(II)で表される構造単位のモル分率をb、化学式(III)で表される構造単位のモル分率をc、化学式(IV)で表される構造単位のモル分率をdとしたとき、a、b、cおよびdが次式(1)〜(4)を満足し、かつパラ配向性芳香族ポリアミドの構造単位中および無機物中にSi原子を共通して含む有機無機複合体の製造方法
    30<a<50 ・・・(1)
    0<b<20 ・・・(2)
    0<c<5 ・・・(3)
    49<d<51 ・・・(4)
    Figure 0005853524
    Figure 0005853524
    :SO、または、O-Ph-SO-Ph-O(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
    Figure 0005853524
    珪素(Si)原子を含む基
    Figure 0005853524
    :フェニル、ビフェニル、または、ビフェニルエーテル(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在していてもよい。)
  2. ラ配向性芳香族ポリアミドと無機物の前駆体との構成割合(質量基準)が、1:99〜99:1である請求項1に記載の有機無機複合体の製造方法
  3. フィルムの形態を有する、請求項1または2に記載の有機無機複合体の製造方法
  4. 請求項3に記載の製造方法により得られる、以下の(5)〜(8)を満足するフィルムの製造方法
    (5)フィルムの少なくとも1方向の100℃〜200℃の平均熱膨張係数が−20ppm/℃以上20ppm/℃以下である。
    (6)400nmの光の光線透過率が70%以上である。
    (7)ヘイズが2%以下である。
    (8)昇温速度10℃/分で昇温し、200℃における質量を100質量%としたとき、1質量%減少する温度が300℃以上である。
  5. 25℃から230℃までの加熱冷却のサイクルテストを3回行ったときの寸法変化量が200ppm以下である、請求項4に記載のフィルムの製造方法
  6. プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する耐性を有する、請求項4または5に記載のフィルムの製造方法
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