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JP5998508B2 - 含フッ素樹脂積層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

含フッ素樹脂積層フィルムおよびその製造方法 Download PDF

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JP5998508B2 JP2012029103A JP2012029103A JP5998508B2 JP 5998508 B2 JP5998508 B2 JP 5998508B2 JP 2012029103 A JP2012029103 A JP 2012029103A JP 2012029103 A JP2012029103 A JP 2012029103A JP 5998508 B2 JP5998508 B2 JP 5998508B2
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Description

本発明は2,2’−ジトリフルオロメチル−ビフェニル構造を主鎖骨格に持つことで、無色透明、高耐熱、低熱膨張係数を実現し、かつ2,2’−ジトリフルオロメチル−ビフェニル構造由来の欠点であるアセトンに対する耐性不良を改善した含フッ素樹脂フィルム、含フッ素樹脂積層フィルムおよびこれらの製造方法に関する。
2,2’−ジトリフルオロメチル−ビフェニル残基を有する樹脂フィルムは無色透明、高耐熱、低熱膨張係数の成形体を得ることができる(特許文献1)。しかしながら、嵩高いトリフルオロメチル基の導入は分子鎖のパッキングを阻害するために、アセトンに対する耐性がなく、アセトンに触れると膨潤、白濁あるいは変形するという問題があった。
2,2’−ジトリフルオロメチル−ビフェニル残基を有する樹脂フィルムの用途として表示材料基板や電子回路基板が挙げられるが、これらの製造工程ではアセトンをはじめ、種々の有機溶媒が使用されており、耐有機溶媒性、特にアセトンに対する耐性の向上が求められていた。
再公表特許WO2004/039863号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。すなわち、本発明の目的はアセトンに対する耐性を有する無色透明、高耐熱、低熱膨張係数を有する含フッ素樹脂積層フィルムおよびそれらの製造方法を得ることにある。
上記目的を達成するための本発明は、少なくとも樹脂Aを含む層および樹脂Bを含む層を含み、下記(1)および(2)を満足し、少なくとも片方の面がアセトンに対する耐性を有する含フッ素樹脂積層フィルムであることを特徴とする。
(1)樹脂Aが芳香族ポリアミドであり、アセトンに対する耐性を有する。
(2)樹脂Bが化学式(I)で示される構造単位を含む。
Figure 0005998508
本願発明によれば、表示材料基板や電子回路基板に好適に利用できる、アセトンに対する耐性を有する無色透明、高耐熱、低熱膨張係数を有するフィルムを提供することが可能となる。
本発明の含フッ素樹脂フィルム(以下、単にフィルムということがある)は化学式(I)で示される2,2’−ジトリフルオロメチル−ビフェニル構造単位を含み、フィルムの少なくとも片方の面が、アセトンに対する耐性を有している。
Figure 0005998508
化学式(I)で示される構造単位を含む樹脂としては芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族アミドヒドラジド、芳香族アミドオキサジアゾール、ポリエステルなどの芳香族樹脂が挙げられ、耐熱性、無色透明性を実現できることから芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドであることが好ましい。本発明は無色透明、高耐熱、低熱膨張係数のフィルムを得ることを目的としており、この目的のためには低熱膨張係数を実現可能な芳香族ポリアミドが好ましい。特に全ての構造単位がパラ位で結合しているパラ系芳香族ポリアミドが好ましい。多環の縮合構造を持つ芳香族ポリイミドは無色透明性を得るためには屈曲性の基を多く導入する必要があり、低熱膨張係数を得ることが困難となることがある。
ここで、「無色透明」とは400nmの光の光線透過率が60%以上であることをいい、「高耐熱」とはガラス転移温度が260℃以上であることをいう。また「低熱膨張係数」とはフィルムの少なくとも1方向の100℃〜200℃の平均熱膨張係数が−20ppm/℃以上20ppm/℃以下であることをいう。
化学式(I)で示される構造単位を含む芳香族ポリアミドは無色透明、高耐熱、低熱膨張係数を満足することが可能であるが、アセトンに対する耐性が劣る場合がある。ここでアセトンに対する耐性はJIS K5600−6−1:1999(方法3)に準じて評価する。また、詳細項目については以下の通り規定する。
試験板: 含フッ素樹脂フィルムまたは含フッ素樹脂積層フィルムを用いる。その寸法は30mm×30mmとする。
試験液: アセトン
滴下箇所: 試験板の中央
試験後の洗浄: 流水
期間 : 10分
評価 : 以下の(a)〜(c)のいずれかに該当する場合は「耐性なし」と判断する。いずれにも該当しない場合は耐性有りと判断する。
(a)水平な台に置いたとき、試験板の最も低い位置と高い位置の差が3mm以上である。
(b)試験板がロール状に巻いた状態になり、1周以上のロールを形成する。
(c)試験後のヘイズが試験前のヘイズより1%以上大きい。
なお、樹脂属性としてのアセトン耐性を評価する場合は、以下の方法で厚み20μmのフィルムに加工したうえで、上記したアセトンに対する耐性の試験を行う。
(あ)樹脂をN−メチル−2−ピロリドンに溶解せしめ、樹脂溶液とする。
(い)樹脂溶液をガラス板に展開し、自己支持性が得られるまで乾燥する。
(う)ガラス板からフィルムを剥離し、金枠に固定する。
(え)フィルムを乾燥し、300℃×1分熱処理を行う。
樹脂溶液の濃度、乾燥温度、時間は評価する樹脂によって適宜決定する。ただし最終の熱処理温度は300℃×1分とする。
化学式(I)で示される構造単位を含む芳香族ポリアミドの例として、例えば化学式(V)で示される構造単位50mol%と化学式(VII)で示され、RがClである構造単位50mol%からなる芳香族ポリアミドフィルムは、無色透明、高耐熱、低熱膨張係数を満足するが、アセトンに対する耐性を測定すると、アセトンを滴下した部分が収縮して周囲が波打ち、水平な台に置いたとき、試験板の最も低い位置と高い位置の差が5mmとなった。このため「耐性なし」と判断した。
Figure 0005998508
Figure 0005998508
:H、ClまたはF
化学式(I)で示される構造単位を含む芳香族ポリアミドがアセトンに耐性を持たない理由としては嵩高いトリフロロメチル基の存在およびビフェニル部位のねじれにより、隣接する分子鎖がパッキングすることができないために分子鎖間の距離が開き、この空隙に低分子量の溶媒が入るためと考えられる。一方で、この疎なパッキングが分子間電荷移動錯体の形成を阻害するため、無色透明を実現すると考えられる。
本発明のフィルムは、単層構成でも構わないが、上記において説明したフィルムを少なくとも1層有している含フッ素樹脂積層フィルム(以下、単に積層フィルムということがある)であることが好ましい。
積層構成のフィルムとする場合は、少なくとも樹脂Aを含む層および樹脂Bを含む層を含み、以下の(1)および(2)を満足している積層フィルムであることが好ましい。
(1)樹脂Aがアセトンに対する耐性を有する。
(2)樹脂Bが化学式(I)で示される構造単位を含む。
Figure 0005998508
すなわち、アセトンに対する耐性を向上するためにはフィルムを積層フィルムとし、化学式(I)で示される構造単位を含む樹脂(樹脂B)をアセトンに対する耐性を有する樹脂(樹脂A)で保護して樹脂Bがアセトンに触れないようにせしめることが好ましい。
樹脂Bを保護する他の方法としては、無機膜を蒸着、スパッタなどの方法で樹脂B上に製膜する方法が挙げられるが、この方法を用いるためには樹脂B表面を洗浄する必要があり、洗浄工程でアセトン等の有機溶媒が用いられることがある。このため、アセトン等に対する耐溶媒性の付与はフィルム製膜後に加工を行う(オフライン加工)のではなく、フィルム製膜工程中に耐溶媒性を付与する(インライン加工)ことが好ましい。
次に、樹脂Aについて説明する。
樹脂Aと樹脂Bはピノール付きのスリットダイもしくはマルチマニホールド口金(積層スリットダイ)を用いて押し出し、樹脂Aの有機溶媒溶液と樹脂Bの有機溶媒溶液とを溶液状態で積層して支持体にキャストして製膜することが好ましく、この目的のために樹脂Aは溶液製膜用溶媒として広く用いられるN−メチル−2−ピロリドンに少なくとも5質量%可溶であることが好ましい。製膜工程中で積層することにより樹脂Aと樹脂Bとが剥離すること無く、良好な積層フィルムを得ることが可能となる。
また、樹脂Aは樹脂Bと積層して使用される場合、樹脂Bと類似の構造であることが好ましく、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族アミドヒドラジド、芳香族アミドオキサジアゾール、ポリエステルなどの芳香族樹脂が好ましく、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドであることがより好ましい。
樹脂Aは化学式(II)で示される構造単位を含む芳香族ポリアミドであることがより好ましい。
Figure 0005998508
:化学式(III)で示される基。
:芳香族基
Figure 0005998508
:直結されているか、または、フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の基
:直結されているか、または、フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の基
これら化学式(III)で示される各基は、その目的に応じて適宜選択される。
ビフェニルスルホンを持つ構造は光線透過率が高いが、化学式(I)で示される構造単位を持つ樹脂Bと相溶性が不足することがある。このため、マルチマニホールド口金を用いるときは問題ないが、ピノールを用いた製膜では層間が粗れたり、層間で混ざったポリマーがゲル状に析出することがある。
2,2’−ジメチル−ビフェニル構造は光線透過率は、やや低いものの化学式(I)で示される構造単位を持つ樹脂Bとの相溶性に優れ、ピノールを用いた製膜や、複数回の重ね塗りによる積層時にも、樹脂Bとの積層性に優れる。また、剛直なビフェニル構造を持つことから、この2,2’−ジメチル−ビフェニル構造を持つ樹脂Aは熱膨張係数が小さく、樹脂Bとの界面で応力が生じにくい利点がある。
1,4−シクロヘキサン構造は耐溶媒性に特に優れ、また溶液粘度を低くできるため、マルチマニホールド口金を用いた積層以外にも、樹脂Bのフィルムに対し、スプレー塗布、バーコーターを用いた塗布など、各種コーティングを行うことが可能である。
中でも樹脂Aは化学式(IV)で示される構造単位を含む芳香族ポリアミドであることが好ましい。
Figure 0005998508
:直結されているか、または、フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の基
:直結されているか、または、フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の基
:芳香族基
は−SO−に対し、パラまたはメタの位置であることが好ましく、化学式(IV)で示される構造単位の25mol%以上75mol%以下がパラ位、25mol%以上75mol%以下がメタ位であることが好ましい。さらにRは直結またはフェニルエーテル基であることが好ましい。
は−SO−に対し、パラまたはメタの位置であることが好ましく、化学式(IV)で示される構造単位の25mol%以上75mol%以下がパラ位、25mol%以上75mol%以下がメタ位であることが好ましい。さらにRは直結またはフェニルエーテル基であることが好ましい。
はパラフェニレン基またはメタフェニレン基が好ましく、より好ましくはパラフェニレン基である。
次に、樹脂Bについて説明する。
樹脂Bは単体ではアセトンに対する耐性を有さないが、無色透明、高耐熱、低熱膨張係数のフィルムを得るという本発明の目的を達成するために重要である。樹脂Bは化学式(I)を含んでおり、化学式(V)〜(VIII)で示される構造単位を一部またはすべて含む事が好ましい。また、化学式(V)〜(VIII)で示される構造単位をすべて含むことがより好ましい。
Figure 0005998508
Figure 0005998508
:SO、C(CF、または、O-Ph-SO-Ph-O
Figure 0005998508
:H、ClまたはF
Figure 0005998508
樹脂Bは化学式(V)で表される構造単位のモル分率をa、化学式(VI)で表される構造単位のモル分率をb、化学式(VII)で表される構造単位のモル分率をc、化学式(VIII)で表される構造単位のモル分率をdとしたとき、a、b、cおよびdが次の(3)〜(5)を満足することがさらに好ましい。
0<a<50 ・・・(3)
0<c<50 ・・・(4)
0.9≦(c+d)/(a+b)≦1.1 ・・・(5)
より好ましくはaは10以上50未満、もっと好ましくは25以上45以下、さらに好ましくは20以上40以下である。
上記した本発明のフィルムや積層フィルムは、以下の(6)〜(8)を満足していることが好ましい。
(6)400nmの光の光線透過率が60%以上である。
(7)ガラス転移温度が260℃以上である。
(8)フィルムの少なくとも1方向の100℃〜200℃の平均熱膨張係数が−20ppm/℃以上20ppm/℃以下である。
400nmの波長の光の光線透過率は65%以上であることがより好ましい。さらに好ましくは75%以上である。
400nmの波長の光の光線透過率が60%を下回ると、表示材料用途での利用が困難になるばかりでなく、UV硬化性の接着剤を使用した場合にフィルムの反対面からUVを照射してもフィルムに吸収されてしまい硬化しづらくなる問題がある。
光線透過率は好ましくは400nm〜700nmの全ての波長の光において70%以上、より好ましくは75%以上、最も好ましくは80%以上である。
本発明のフィルムや積層フィルムをディスプレイ用途に用いる場合、透明導電膜や薄膜トランジスタをフイルム上に形成するために、また電子回路基板用途に用いる場合にはハンダリフローなど高温での加工が必要になる。このためガラス転移温度は260℃以上が好ましく、280℃以上がより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましい。
また、フィルムの少なくとも1方向の100℃〜200℃の平均熱膨張係数が−20ppm/℃以上20ppm/℃以下であると、熱膨張係数の小さいインジウムをドープした酸化錫(ITO)や半導体と積層したときにカールや割れが少なくなるため好ましい。より好ましくは−10ppm/℃以上10ppm/℃以下、さらに好ましくは−5ppm/℃以上5ppm/℃以下である。
また、平均熱膨張係数が一方向のみではなく、直交する2方向について制御されていることにより、さらにインジウムをドープした酸化錫(ITO)や半導体と積層したときにカールや割れが少なくなる。熱膨張係数が制御される方向は、フィルムの製膜方向(「長手方向」または「MD方向」ということがある)と、その直交方向(「幅方向」または「TD方向」ということがある)の組であることが好ましい。また、フィルム面内の1方向およびこれと直交する方向の平均熱膨張係数の差は5ppm/℃以下であることが好ましい。平均熱膨張係数の差はより好ましくは3ppm/℃以下、さらに好ましくは1ppm/℃以下、最も好ましくは0.5ppm/℃以下である。
なお、本発明において、「平均熱膨張係数」とは温度T1から温度T2までの平均熱膨張係数を指し、「熱膨張係数」とはある温度Tでの熱膨張係数を意味する。
100℃〜200℃の平均熱膨張係数は250℃まで昇温した後の降温過程において測定する。25℃、75RH%における初期試料長をL0、温度T1の時の試料長をL1、温度T2の時の試料長をL2とするとT1からT2の平均熱膨張係数は以下の式で求められる。
平均熱膨張係数(ppm/℃)
=(((L2−L1)/L0)/(T2−T1))×10
この測定は250℃まで昇温した後の降温過程(2サイクル目以降の過程を含む)において測定することが重要である。
本発明のフィルムを製造する方法としては、樹脂Bの有機溶媒溶液を口金から押し出して支持体上にキャストし、乾燥、溶媒抽出、熱固定される溶液製膜法の乾湿式工程を用いることが好ましく、積層フィルムを製造する場合は、この工程のいずれかの段階で樹脂Aの有機溶媒溶液を積層して積層フィルムとすることが好ましい。より好ましくは樹脂Aの有機溶媒溶液および樹脂Bの有機溶媒溶液を口金から押し出す工程を有することであり、さらに好ましくは樹脂Aの有機溶媒溶液および樹脂Bの有機溶媒溶液を口金の前または口金の中で積層して支持体にキャストすることである。口金の前で積層する方法としてはピノールや複合管、フィードブロックと呼ばれる積層装置を用いて積層する方法が挙げられる。また、口金の中で積層する方法としては多層口金、マルチマニホールド口金を用いる方法が挙げられる。本発明に用いる樹脂Aおよび樹脂Bは溶液粘度が異なることが多い。そのためピノールなど口金前で積層する方法では良好な積層構成を得ることが困難なことがある。このためマルチマニホールド口金を用いて口金内で積層することが好ましい。
以下に本発明のフィルムや積層フィルムを得る手法について、芳香族ポリアミドを例に説明する。もちろん、本発明はこれに限定されるものではない。
芳香族ポリアミドを得る方法は種々の方法が利用可能であり、例えば、低温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法などを用いることができる。低温溶液重合法つまりカルボン酸ジクロライドとジアミンから得る場合には、非プロトン性有機極性溶媒中で重合される。ポリマ溶液は、単量体としてカルボン酸ジクロライドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤が使用される。また、イソシアネートとカルボン酸との反応は、非プロトン性有機極性溶媒中、触媒の存在下で行なわれる。
2種類以上のジアミンを用いて重合を行う場合、ジアミンは1種類ずつ添加し、該ジアミンに対し10〜90モル%の酸ジクロライドを添加して反応させ、この後に他のジアミンを添加して、さらに酸ジクロライドを添加して反応させる段階的な反応方法、およびすべてのジアミンを混合して添加し、この後に酸ジクロライドを添加して反応させる方法などが利用可能である。また、2種類以上の酸ジクロライドを利用する場合も同様に段階的な方法、同時に添加する方法などが利用できる。いずれの場合においても全ジアミンと全酸ジクロライドのモル比は95〜105:105〜95が好ましく、この値を外れた場合、成形に適したポリマ溶液を得ることが困難となる。
本発明において用いる芳香族ポリアミドの製造において、使用する非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。さらにはポリマの溶解を促進する目的で溶媒には50質量%以下のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の塩を溶解助剤として添加することができる。この溶解助剤としては臭化リチウム、塩化リチウムなどが例示できる。
本発明のフィルムは10質量%以下の無機化合物を含有していても構わない。表面形成を目的とした添加剤としては例えば、無機粒子ではSiO、TiO、Al、CaSO、BaSO、CaCO、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンド、ゼオライト、その他の金属微粉末等が挙げられる。たとえば、表面形成を目的にした場合、SiOの添加が好ましい。含有せしめる量は好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.1質量%以下である。
また、有機粒子を、無機化合物との合計量で10質量%以下の範囲内で含有させてもよく、好ましい有機粒子としては、例えば、架橋ポリビニルベンゼン、架橋アクリル、架橋ポリスチレン、ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、ポリアミド粒子、フッ素樹脂粒子等の有機高分子からなる粒子が使用可能である。また、表面に上記有機高分子で被覆等の処理を施した無機粒子を用いてもよい。
次にフィルム化について説明する。上記のように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法によりフィルム化が行なわれる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがありいずれの方法で製膜されても差し支えないが、ここでは乾湿式法を例にとって説明する。
乾湿式法で製膜する場合は該原液を口金からドラム、エンドレスベルト、支持フィルム等の支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層が自己保持性をもつまで乾燥する。乾燥条件は例えば、室温〜220℃、60分以内の範囲で行うことができる。またこの乾燥工程で用いられるドラム、エンドレスベルト、支持フィルムの表面は平滑であればあるほど表面の平滑なフィルムが得られる。乾式工程を終えたフィルム(シート)は支持体から剥離されて湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれ、さらに延伸、乾燥、熱処理が行なわれてフィルムとなる。
フィルムの製造方法としては、フィルムの長手方向(製膜搬送方向。以下MDということがある)と、幅方向(フィルム面内で長手方向と直行する方向。以下TDということがある)ともに1.05倍以上2.00倍以下の延伸倍率にて延伸することが好ましい。MD方向の延伸倍率は好ましくは1.05倍以上1.20倍以下、より好ましくは1.05倍以上1.15倍以下、さらに好ましくは1.05倍以上1.13倍以下、もっとも好ましくは1.06倍以上1.12倍以下である。TD方向の延伸倍率は好ましくは1.05倍以上1.50倍以下、より好ましくは1.10倍以上1.30倍以下、さらに好ましくは1.15倍以上1.30倍以下、もっとも好ましくは1.20倍以上1.26倍以下である。また、MD方向の延伸倍率に対し、TD方向の延伸倍率が1.0倍以上、1.2倍以下が好ましい。より好ましくは1.05倍以上、1.15倍以下、最も好ましくは1.1倍以上、1.13倍以下である。
フィルムの構造は、その原料によって決定される。原料が不明であるフィルムの構造分析を行う場合は、質量分析、核磁気共鳴法による分析、分光分析などを用いることができる。
本発明のフィルムや積層フィルムは表示材料、表示材料基板、回路基板、光電複合回路基板、光導波路基板、半導体実装用基板、多層積層回路基板、透明導電フィルム、位相差フィルム、タッチパネル、コンデンサー、プリンターリボン、音響振動板、太陽電池、光記録媒体、磁気記録媒体のベースフィルム、包装材料、粘着テープ、接着テープ、加飾材料等種々の用途に好ましく用いられる。
表示材料について、一般に表示材料基板としてはガラスが用いられているが、本発明のフィルムを表示材料基板として用いると、薄膜化、軽量化、割れないという大きなメリットを有する表示材料を得ることができる。本発明の表示材料の種類は特に限定は無いが、薄膜、軽量がメリットとなる薄膜ディスプレイ、あるいは薄膜表示体であることが好ましい。薄膜ディスプレイとしては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、電子ペーパーなどが例示できる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明における物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
(1)アセトンに対する耐性
JIS K5600−6−1:1999(方法3)に準じて評価する。また、詳細項目については以下の通り規定する。
試験板: フィルムを単独で用いる。その寸法は30mm×30mmとする。
試験液: アセトン
滴下箇所: 試験板の中央
試験後の洗浄: 流水
期間 : 10分
評価 : 以下の(a)〜(c)のいずれかに該当する場合は「耐性なし」と判断する。いずれにも該当しない場合は耐性有りと判断する。
(a)水平な台に置いたとき、試験板の最も低い位置と高い位置の差が3mm以上である。
(b)試験板がロール状に巻いた状態になり、1周以上のロールを形成する。
(c)試験後のヘイズが試験前のヘイズより1%以上大きい。
なお、樹脂の場合は以下の方法で厚み20μmのフィルムに加工し、上記したアセトンに対する耐性の試験を行った。
(あ)樹脂をN−メチル−2−ピロリドンに溶解せしめ、20質量%の樹脂溶液とした。
(い)樹脂溶液をガラス板に展開し、120℃×10分乾燥した。
(う)ガラス板からフィルムを剥離し、金枠に固定した。
(え)フィルムを120℃×20分、300℃×1分熱処理を行った。
(2)N−メチル−2−ピロリドンに対する可溶性
臭化リチウム5質量%含有のN−メチル−2−ピロリドンにポリマを5質量%溶解し、25℃で2週間放置後も流動性を保つものを溶解性「○」、すなわちN−メチル−2−ピロリドンに少なくとも5質量%可溶であると評価した。
なお、「流動性を保つ」とは、25℃において100mlのビーカーにポリマ溶液を100ml入れて90°傾けたとき、1時間以内に50ml以上が流れ出る状態をいう。
(3)400nmの光の光線透過率
下記装置を用いて測定した。
透過率(%)=(T1/T0)×100
ただしT1は試料を通過した光の強度、T0は試料を通過しない以外は同一の距離の空気中を通過した光の強度である。
装置:UV測定器U−3410(日立計測社製)
波長範囲:300nm〜800nm(うち、400nmの値を利用)
測定速度:120nm/分
測定モード:透過
なお、400〜700nmの波長の光の光線透過率についても、上記と同様にして測定を行う。
(4)ガラス転移温度
装置:粘弾性測定装置EXSTAR6000 DMS(セイコーインスツルメンツ社製)
測定周波数:1Hz
昇温速度:2℃/分
ガラス転移温度(Tg):ASTM E1640−94に準拠し、E’の変曲点をTgとした。また、E’の変曲点が複数確認される場合は、tanδのピーク位置が最も高い点をTgとした。
(5)100℃〜200℃の平均熱膨張係数
平均熱膨張係数はJIS K7197−1991に準拠して250℃まで昇温した後の降温過程に於いて測定した。23℃、65RH%における初期試料長をL0、温度T1の時の試料長をL1、温度T2の時の試料長をL2とするとT1からT2の平均熱膨張係数を以下の式で求めた。なお、T2=100(℃)、T1=200(℃)である。
熱膨張係数(ppm/℃)=(((L2−L1)/L0)/(T2−T1))×10
昇温、降温速度:5℃/min
測定方向:製膜方向と直交する方向について、測定した。
試料幅:4mm
荷重:フィルム厚み10μmの時44.5mN。フィルム厚みに比例して荷重は変更する。
(合成例1)
樹脂A1の合成:
攪拌機を備えた360L重合槽にN−メチル−2−ピロリドン249.34kg、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン(和歌山精化株式会社製「44DDS」)11.81kg、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン(三井化学ファイン社製「3,3’−DAS」)11.81kgを入れ窒素雰囲気下、15℃に冷却、攪拌しながら60分かけて60分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)19.32kgを5回に分けて添加した。60分間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマ溶液を得た。
(合成例2〜5)
樹脂A2〜A5の合成:
用いる原料を表1に示したものに変えた以外は合成例1と同様にして、樹脂A2を得た。
(合成例6)
樹脂A6の合成:
攪拌機を備えた200ml3つ口フラスコ中に無水塩化リチウム2.8gを入れ、窒素気流下攪拌をしながら110℃まで加熱して乾燥する。30℃まで放冷した後にトリエチルアミン(東京化成社製)26.7g、1,4−シクロヘキサンジアミン(東京化成社製)2.01g、m−トリジン(東京化成社製)5.60g、N−メチル−2−ピロリドン174mlを入れ窒素雰囲気下、0℃に冷却、攪拌しながら30分かけて4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東京化成社製)2.46gを5回に分けて添加し、添加終了後30分攪拌した。次にテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)7.15gを5回に分けて添加した。さらに1時間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマ溶液を得た。
(合成例7)
樹脂B1の合成:
攪拌機を備えた700L重合槽にN−メチル−2−ピロリドン674.37kg、無水臭化リチウム10.58kg(シグマアルドリッチジャパン社製)、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レファインケミカル社製「TFMB」)30.05kg、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン(和歌山精化株式会社製「44DDS」)5.83kgを入れ窒素雰囲気下、15℃に冷却、攪拌しながら60分かけて4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東レファインケミカル社製「4BPAC」)6.55kgを5回に分けて添加した。60分間攪拌した後、60分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)19.05kgを5回に分けて添加した。60分間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマ溶液を得た。
(参考例1)
得られた樹脂B1溶液をミキサーを用いて水中で粉砕し、濾取、乾燥してポリマを単離した。単離した樹脂B1を固形分濃度が20質量%になるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解して樹脂B1溶液を得た。樹脂B1溶液からフィルムを調製して樹脂B1についてのアセトンに対する耐性を評価した。「耐性なし」であった。
(合成例8,9)
樹脂B2,B3の合成:
用いる原料を表1に示したものに変えた以外は合成例3と同様にして、樹脂B2,B3を得た。樹脂B2、B3ともにアセトンに対する耐性は「耐性なし」であった。
(実施例1)
合成例1で得られた樹脂A1と合成例2で得られた樹脂B1をマルチマニホールド口金を用いてA1|B1|A1の積層構成となるように積層し、120℃のエンドレスベルト上に流延し、ポリマ溶液が自己支持性を持つまで乾燥してエンドレスベルトから剥離した。次に溶媒を含んだフィルムを50℃の水で水洗して溶媒を除去した。さらに340℃の乾燥炉で熱処理して、厚み20μmのフィルムを得た。A1|B1|A1の膜厚は5μm|10μm|5μmだった。得られたフィルムの物性を測定し、表2に示した。
(実施例2〜8、比較例1〜3)
用いるポリマの種類、フィルム厚み等を表2に示したように変更した以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの物性を測定し、表2に示した。
(実施例9)
合成例3で得られた樹脂A3と合成例7で得られた樹脂B1をA/B/A積層ピノールを設置した口金を用いてA3|B1|A3の積層構成となるように積層し、120℃のエンドレスベルト上に流延し、ポリマ溶液が自己支持性を持つまで乾燥してエンドレスベルトから剥離した。次に溶媒を含んだフィルムを50℃の水で水洗して溶媒を除去した。さらに340℃の乾燥炉で熱処理して、厚み20μmのフィルムを得た。A3|B1|A3の膜厚は5μm|10μm|5μmだった。得られたフィルムの物性を測定し、表2に示した。
(実施例10〜12)
用いるポリマの種類、フィルム厚み等を表2に示したように変更した以外は実施例9と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの物性を測定し、表2に示した。
Figure 0005998508
Figure 0005998508
Figure 0005998508

Claims (9)

  1. 少なくとも樹脂Aを含む層および樹脂Bを含む層を含み、下記(1)および(2)を満足し、少なくとも片方の面がアセトンに対する耐性を有する含フッ素樹脂積層フィルム。
    (1)樹脂Aが芳香族ポリアミドであり、アセトンに対する耐性を有する。
    (2)樹脂Bが化学式(I)で示される構造単位を含む。
    Figure 0005998508
  2. 樹脂AがN−メチル−2−ピロリドンに少なくとも5質量%可溶である、請求項に記載の含フッ素樹脂積層フィルム。
  3. 樹脂Aが化学式(II)で示される構造単位を含む、請求項1または2に記載の含フッ素樹脂積層フィルム。
    Figure 0005998508
    :化学式(III)で示される基。
    :芳香族基
    Figure 0005998508
    :直結されているか、または、フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の基
    :直結されているか、または、フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の基
  4. 樹脂Aが化学式(IV)で示される構造単位を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の含フッ素樹脂積層フィルム。
    Figure 0005998508
    :直結されているか、または、フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の基
    :直結されているか、または、フェニル基を必須成分とする炭素数6から12の基
    :芳香族基
  5. 樹脂Bが化学式(V)〜(VIII)で示される構造単位をすべて含む、請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素樹脂積層フィルム。
    Figure 0005998508
    Figure 0005998508
    :SO、C(CF、または、O-Ph-SO-Ph-O
    Figure 0005998508
    :H、ClまたはF
    Figure 0005998508
  6. 化学式(V)で表される構造単位のモル分率をa、化学式(VI)で表される構造単位のモル分率をb、化学式(VII)で表される構造単位のモル分率をc、化学式(VIII)で表される構造単位のモル分率をdとしたとき、a、b、cおよびdが次式(3)〜(5)を満足する、請求項に記載の含フッ素樹脂積層フィルム。
    0<a<50 ・・・(3)
    0<c<50 ・・・(4)
    0.9≦(c+d)/(a+b)≦1.1 ・・・(5)
  7. 下記(6)〜(8)を満足する、請求項1〜のいずれかに記載の含フッ素樹脂積層フィルム。
    (6)400nmの光の光線透過率が60%以上である。
    (7)ガラス転移温度が260℃以上である。
    (8)フィルムの少なくとも1方向の100℃〜200℃の平均熱膨張係数が−20ppm/℃以上20ppm/℃以下である。
  8. 樹脂Aの有機溶媒溶液および樹脂Bの有機溶媒溶液を口金から押し出す工程を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の含フッ素樹脂積層フィルムの製造方法。
  9. マルチマニホールド口金を用いる、請求項に記載の含フッ素樹脂積層フィルムの製造方法。
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