本発明に係る紙幣処理機の一実施形態を図面を参照して以下に説明する。
図1に示す本実施形態の紙幣処理機11は、紙幣Bを入出金させる紙幣入出金機である。紙幣処理機としては紙幣を出金させずに入金のみ行う紙幣入金機であっても良い。紙幣処理機11は、略直方体の外観形状となっている。この紙幣処理機11は、最も短い辺部を高さ方向に配し、次に短い中間長さの辺部を幅方向(左右方向)に配し、最も長い辺部を奥行方向(前後方向)に配して設置され使用される。なお、紙幣処理機11の奥行方向を機体前後方向とし、その操作者側を機体前側、操作者とは反対側を機体後側とする。また、操作者から見て左右方向を機体左右方向とし、操作者から見て左側を機体左側、操作者から見て右側を機体右側とする。
紙幣処理機11には、機体前側の前面12の近傍に入金部15が設けられている。入金部15には、一枚あるいは集積状態の紙幣Bが機外から上端開口部15aを介して挿入される。また、この入金部15の機体後側に隣り合って、機内から紙幣Bが繰り出され、繰り出された紙幣Bが上端開口部16aから取り出し可能となる出金部16が設けられている。
紙幣処理機11の内部には、図2に示すように、機体前側から順に、入金部15、出金部16、紙幣Bを収納可能な着脱式のカセット18(紙幣収納カセット)、部品配置スペース19、紙幣Bを収納するとともに収納した紙幣Bを出金部16に出金させる複数具体的には三つの着脱不可な還流庫20、還流庫21、還流庫22、出金リジェクト紙幣を収納する着脱不可な出金リジェクト庫23が設けられている。カセット18は還流庫20〜22からの紙幣Bを収納可能となっている。
入金部15、出金部16、カセット18、還流庫20、還流庫21、還流庫22および出金リジェクト庫23は、いずれも機体左右方向に長い横長の形状をなしており、すべて、長辺が上端および下端で機体左右方向に沿う姿勢の紙幣Bを受け入れるようになっている。言い換えれば、これらの入金部15、出金部16、カセット18、還流庫20〜22および出金リジェクト庫23は、受け入れた紙幣Bの厚さ方向が同方向となるようにしてこの方向(機体前後方向と一致)に並設されている。
上記した入金部15、出金部16、カセット18、還流庫20〜22および出金リジェクト庫23は、紙幣処理機11の内部の機体左右方向における一側(具体的には機体右側)に寄せられて設けられており、これにより紙幣処理機11の内部の機体左右方向逆側(具体的には機体左側)にはスペースが形成されている。このスペースに、これら入金部15、出金部16、カセット18、還流庫20〜22および出金リジェクト庫23を接続させて紙幣Bのやり取りを行う搬送部27が配置されている。なお、この搬送部27も紙幣Bを常に長辺が上端および下端となる姿勢で搬送する。
搬送部27は、最も前面12側の入金部15と最も前面12とは反対側の出金リジェクト庫23とを結ぶ主搬送路28と、主搬送路28の出金部16の近傍から分岐して出金部16に接続される分岐搬送路29と、主搬送路28のカセット18の近傍から分岐してカセット18に接続される分岐搬送路30と、主搬送路28の還流庫20の近傍から分岐して還流庫20に接続される分岐搬送路32と、主搬送路28の還流庫21の近傍から分岐して還流庫21に接続される分岐搬送路33と、主搬送路28の還流庫22の近傍から分岐して還流庫22に接続される分岐搬送路34と、を有している。
主搬送路28は、入金部15の前面12側と、出金リジェクト庫23の前面12側とに接続されている。分岐搬送路29は出金部16の前面12側に、分岐搬送路30はカセット18の前面12とは反対側に、分岐搬送路32は還流庫20の前面12とは反対側に、分岐搬送路33は還流庫21の前面12とは反対側に、分岐搬送路34は還流庫22の前面12とは反対側に、それぞれ接続されている。
また、搬送部27は、主搬送路28を介して還流庫20〜22側から搬送されてきた紙幣Bを、駆動状態で分岐搬送路29に案内して出金部16に搬送させる一方、非駆動状態ではそのまま主搬送路28で搬送させる振分部29Gと、分岐搬送路29の紙幣Bを検知する紙幣検知センサ29Sとを有している。分岐搬送路29は、出金部16に向けて回転して紙幣Bを出金部16に送り込むローラ対29Rを有している。
また、搬送部27は、主搬送路28を介して還流庫20〜22側から搬送されてきた紙幣Bを、駆動状態で分岐搬送路30に案内してカセット18に搬送させる一方、非駆動状態ではそのまま主搬送路28で搬送させる振分部30Gと、分岐搬送路30の紙幣Bを検知する紙幣検知センサ30Sとを有している。分岐搬送路30は、カセット18に向けて回転して紙幣Bをカセット18に送り込むローラ対30Rを有している。
また、搬送部27は、主搬送路28を介して入金部15側から搬送されてきた紙幣Bを、駆動状態で分岐搬送路32に案内して還流庫20に搬送させる一方、非駆動状態ではそのまま主搬送路28で搬送させる振分部32Gと、分岐搬送路32の紙幣Bを検知する紙幣検知センサ32Sとを有している。分岐搬送路32は、還流庫20に向けて回転して紙幣Bを還流庫20に送り込むローラ32Ra,32Rbを有している。還流庫20には、ローラ32Ra,32Rbに向けて紙幣Bを蹴り出す蹴出ローラ20Rが設けられている。一方のローラ32Raは、還流庫20から紙幣Bを繰り出す際に回転し、他方のローラ32Rbは、還流庫20から紙幣Bを繰り出す際には停止して紙幣Bを一枚ずつに分離する。
また、搬送部27は、主搬送路28を介して入金部15側から搬送されてきた紙幣Bを、駆動状態で分岐搬送路33に案内して還流庫21に搬送させる一方、非駆動状態ではそのまま主搬送路28で搬送させる振分部33Gと、分岐搬送路33の紙幣Bを検知する紙幣検知センサ33Sとを有している。分岐搬送路33は、還流庫21に向けて回転して紙幣Bを還流庫21に送り込むローラ33Ra,33Rbを有している。還流庫21には、ローラ33Ra,33Rbに向けて紙幣Bを蹴り出す蹴出ローラ21Rが設けられている。一方のローラ33Raは、還流庫21から紙幣Bを繰り出す際に回転し、他方のローラ33Rbは、還流庫21から紙幣Bを繰り出す際には停止して紙幣Bを一枚ずつに分離する。
また、搬送部27は、主搬送路28を介して入金部15側から搬送されてきた紙幣Bを、駆動状態で分岐搬送路34に案内して還流庫22に搬送させる一方、非駆動状態ではそのまま主搬送路28で搬送させる振分部34Gと、分岐搬送路34の紙幣Bを検知する紙幣検知センサ34Sとを有している。分岐搬送路34は、還流庫22に向けて回転して紙幣Bを還流庫22に送り込むローラ34Ra,34Rbを有している。還流庫22には、ローラ34Ra,34Rbに向けて紙幣Bを蹴り出す蹴出ローラ22Rが設けられている。一方のローラ34Raは、還流庫22から紙幣Bを繰り出す際に回転し、他方のローラ34Rbは、還流庫22から紙幣Bを繰り出す際には停止して紙幣Bを一枚ずつに分離する。
入金部15は、主搬送路28に向けて紙幣Bを蹴り出す蹴出ローラ15Raと、蹴出ローラ15Raで蹴り出された紙幣Bを主搬送路28に繰り出す繰出ローラ15Rbと、繰出ローラ15Rbで繰り出される紙幣Bを、停止することにより一枚ずつに分離する分離ローラ15Rcとを有している。入金部15には、挿入された紙幣Bを検知する紙幣検知センサ15Sが設けられている。蹴出ローラ15Ra、繰出ローラ15Rbおよび分離ローラ15Rcは、入金部15に挿入された紙幣Bを機体左右方向一側(機体左側)の側方にある主搬送路28に向けて繰り出す繰出機構38を構成している。
主搬送路28には、分岐搬送路29,30間に紙幣Bを識別する識別部40が設けられている。主搬送路28には、入金部15の繰出ローラ15Rbおよび分離ローラ15Rcと分岐搬送路29との間に搬送ローラ対R1が、分岐搬送路29と識別部40との間に搬送ローラ対R2が、識別部40と分岐搬送路30との間に搬送ローラ対R3が、分岐搬送路30,32間に、搬送ローラ対R4、搬送ローラ対R5および搬送ローラ対R6が、分岐搬送路32,33間に搬送ローラ対R7が、分岐搬送路33,34間に搬送ローラ対R8が、分岐搬送路34と出金リジェクト庫23との間に搬送ローラ対R9および搬送ローラ対R10が、それぞれ設けられている。搬送ローラ対R10は、出金リジェクト庫23に紙幣Bを送り込む。
主搬送路28には、入金部15の繰出ローラ15Rbおよび分離ローラ15Rcと搬送ローラ対R1との間に、紙幣Bを検知する紙幣検知センサS1が、搬送ローラ対R9と搬送ローラ対R10との間に、紙幣Bを検知する紙幣検知センサS2が設けられている。
搬送部27には、主搬送路28の搬送ローラ対R5および搬送ローラ対R6の間に、紙幣Bを検知するとともに紙幣Bの重送を検知する重送検知センサS3が、主搬送路28の分岐搬送路32と搬送ローラ対R7との間に、同様の重送検知センサS4が、主搬送路28の分岐搬送路33と搬送ローラ対R8との間に、同様の重送検知センサS5が、それぞれ設けられている。
上記した振分部29G,30G,32G,33G,34Gは、通常は非駆動状態となっており、必要により電気的に駆動されて切り替えられる。
カセット18と還流庫20との間の部品配置スペース19には、搬送部27を駆動するための搬送メインモータ等が配置されている。
図1に示すように、紙幣処理機11には、出金部16の機体後側に、操作者に向け表示を行う表示部41と、操作者による操作入力がなされる操作部42とが設けられている。また、紙幣処理機11には、入金部15の機体左側に表示ランプ43が設けられており、出金部16の機体左側にも表示ランプ44が設けられている。
図3に示すように、紙幣処理機11は、上位機としてのPOSレジ50に硬貨入出金装置51とともに接続されて売上金の入金および釣銭の出金等を行うものである。図示は略すが、紙幣処理機11と硬貨入出金装置51とは左右方向に並べられ、これらの上に、POSレジ50が設置されることになる。
POSレジ50は、操作者により操作入力がなされる入力操作部60と、操作者に対して表示を行う入力表示部61と、商品のバーコードを読み取るバーコード読取部62と、IDカードが走査されるとID情報を読み取るカード読取部63と、商品の料金を表示させる料金表示部64と、用紙に印字してレシートを発行するレシート印字部65とを有している。POSレジ50は、これらと紙幣処理機11と硬貨入出金装置51とを制御する制御部66を有している。
図1に示すように、紙幣処理機11の前面12には、キーシリンダ71が設けられており、このキーシリンダ71に別体のキー72が差し込まれて回動操作されると、図4に示すように、筐体75から引出体76が引き出し可能となる。つまり、キーシリンダ71は、筐体75に押し込まれた状態の引出体76を筐体75にロックする図示略の筐体ロック機構のロックを解除する。紙幣処理機11の前面12には、筐体75から引出体76を引き出す際に操作者により把持される取っ手77が設けられている。また、紙幣処理機11には、筐体75から引出体76が所定位置まで引き出されると、これを検知する図示略の引出検知センサが設けられている。
ここで、引出体76に、入金部15、出金部16、カセット18、表示部41および操作部42と、図2に示す還流庫20、還流庫21、還流庫22、出金リジェクト庫23および搬送部27等が設けられている。入金部15、出金部16、表示部41および操作部42は、図1に示すように引出体76が筐体75に押し込まれて図示略の筐体ロック機構でロックされた状態にあっても筐体75に覆われることはなく露出し、図2に示すカセット18、還流庫20、還流庫21、還流庫22および出金リジェクト庫23は、引出体76が筐体75に押し込まれて図示略の筐体ロック機構でロックされた押込状態にあるとき、筐体75に覆われる位置に設けられている。カセット18、還流庫20、還流庫21、還流庫22および出金リジェクト庫23のうちの少なくともカセット18は、図4に示すように筐体75から引出体76が引き出された引出状態にあるとき、外部に露出する。
カセット18は、外部に露出する状態で、引出体76のカセット18を除く部分である引出体本体部80のカセット装着部82に対し着脱可能となっている。言い換えれば、カセット18は、外部に露出する状態で、紙幣処理機11の引出体本体部80と筐体75とからなる処理機本体81に対し着脱可能に装着されている。カセット18は、図4および図5に示すように、引出体本体部80のカセット装着部82に対し水平左右方向にスライド可能となっている。カセット18は、引出体本体部80のカセット装着部82から水平右側に引き抜かれて取り外されることになり、引出体本体部80のカセット装着部82に右側から水平に押し込まれて取り付けられることになる。
引出体本体部80には、カセット18がカセット装着部82に押し込まれて所定の装着状態になるとカセット18を引出体本体部80にロックする一方、このロックを所定の操作が入力されることで解除するロック機構84が、カセット18よりも機体後側に隣接して設けられている。ロック機構84は、図2に示す部品配置スペース19に設けられている。
図6に示すように、ロック機構84は、第1ロック部85と第2ロック部86とを有している。第1ロック部85は、電気的に駆動されてロック側状態から解除側状態に切り替わるものであり、第2ロック部86は、手動操作入力が行われるとロック側状態から解除側状態に切り替わるものである。
第1ロック部85は、引出体本体部80に位置固定で設けられたソレノイド本体91と、ソレノイド本体91から機体前側に突出しソレノイド本体91に対して機体前後方向にスライドするプランジャ92とを有するソレノイド93と、引出体本体部80に位置固定で設けられた支持軸95と、この支持軸95に上端部が回動可能に支持された規制体96と、規制体96の下部をプランジャ92に回動可能に連結する連結軸97とを有している。
ソレノイド93は、電気的に駆動されていない状態では、プランジャ92が、ソレノイド本体91内の図示略の内部スプリングで付勢されてソレノイド本体91から突出している。プランジャ92が内部スプリングの付勢力でソレノイド本体91から最も突出する状態にあるとき、図6に示すように規制体96の下部を最も機体前側に位置させる。この状態が、第1ロック部85のロック側状態となっている。
また、第1ロック部85は、ソレノイド93が電気的に駆動されると、プランジャ92を内部スプリングの付勢力に抗してソレノイド本体91内に引き込むことになり、これにより、規制体96が支持軸95を中心に回動して下部を機体後側に位置させる。図7に示すようにプランジャ92をソレノイド本体91内に最も引き込んだ状態が、第1ロック部85の解除側状態となっている。これにより、第1ロック部85は、電気的に駆動されてロック側状態から解除側状態に切り替わる。第1ロック部85の規制体96の機体後側の後部には、図6に示すようにロック側状態にあるとき、後述するように第2ロック部86のロック側状態から解除側状態への切り替えを規制する規制片部98が、支持軸95と連結軸97との間の連結軸97の近傍に形成されている。
図8に示すように、第2ロック部86は、引出体本体部80内において機体前後方向に移動可能に設けられた係合部材101を有している。この係合部材101には、機体前後方向に長い長穴102が機体前側の前部に形成されている。第2ロック部86は、規制体96の支持軸95と連結軸97との間に固定されて長穴102に挿入される支持軸103と、引出体本体部80に位置固定で設けられた支持軸104と、支持軸104に回動可能に支持されたクランク形状の支持部材105と、支持部材105の下端部に係合部材101の中間部を回動可能に連結させる連結軸106とを有している。
係合部材101は、長穴102に挿入された支持軸103と、支持部材105の連結軸106とによって、引出体本体部80内で機体前後方向に移動可能となるように支持されている。この係合部材101は、機体前側の前部に、三角形状をなして上方に突出する突出部110を有しており、この突出部110には前下がりの傾斜上面111が形成されている。この係合部材101は、機体前側の前端部の係合部112が、カセット18の後面に設けられた凹部114に係合して引出体本体部80のカセット装着部82にカセット18をロックする。第2ロック部86は、図6に示すように係合部材101を機体前側に付勢して係合部112の凹部114への係合状態を維持する係合スプリング115を有している。
第2ロック部86は、図7および図8に示すように上下方向に移動可能に引出体本体部80に設けられた係合解除部材121を有している。係合解除部材121は、その上端部に押圧操作が入力される操作ボタン部122が形成されており、その下部に上下方向に長い長穴123が形成されている。この長穴123に、支持軸95とその下方の支持軸103とが挿入されており、係合解除部材121は、これら支持軸95,103で長穴123が案内されて上下に移動する。係合解除部材121は、処理機右方に突出する三角形状の突出部125を有しており、この突出部125には前下がりの傾斜下面126が形成されている。
係合解除部材121には、図6に示すように第1ロック部85がロック側状態にあるとき、その規制体96の規制片部98と水平方向の位置を重ね合わせる規制当接部128が機体後側の下端部に形成されている。ロック側状態にある第1ロック部85の規制片部98は、規制当接部128の鉛直下方にあり、よって、係合解除部材121は、操作ボタン部122が下方に押圧されると、規制当接部128がロック側状態にある第1ロック部85の規制片部98に当接する。これにより、係合解除部材121の下方への移動が規制される。係合解除部材121が、その規制当接部128を規制片部98よりも上側に位置させる状態が第2ロック部86のロック側状態となっている。
ソレノイド93が電気的に駆動されて第1ロック部85が解除側状態にあると、図7に示すように規制体96の規制片部98が機体後側に移動することになる。これにより、規制片部98は、第2ロック部86の係合解除部材121の規制当接部128の鉛直下方から水平方向においてずれる。この状態で、操作ボタン部122が下方に押圧されると、規制当接部128は規制片部98に当接することがなく、よって、図8に示すように係合解除部材121が下降する。つまり、第1ロック部85のソレノイド93は、電気的に駆動されて規制体96による係合解除部材121の移動規制を解除する。
第1ロック部85が解除側状態にある状態で、操作ボタン部122が下方に押圧されて係合解除部材121が下方に移動すると、その突出部125の傾斜下面126が係合部材101の突出部110の傾斜上面111に当接してこれを下方に押圧する。すると、傾斜下面126および傾斜上面111の傾斜によって、係合部材101がカセット18に対し機体後側に移動し、その係合部112がカセット18の凹部114から抜け出す。これにより、ロック機構84は、カセット18の引出体本体部80に対するロックを解除する。
つまり、ロック機構84は、第1ロック部85が電気的に駆動されて解除側状態にあり、操作ボタン部122が下方に押圧されて第2ロック部86がロック側状態から解除側状態に切り替わると、処理機本体81に対するカセット18のロックを解除する。ロック機構84は、第1ロック部85がロック側状態にあるとき、第2ロック部86のロック側状態から解除側状態への切り替えを規制する一方、第1ロック部85が解除側状態にあるとき、第2ロック部86のロック側状態から解除側状態への切り替えを許容する。
以上により、第2ロック部86は、カセット18に係合してカセット18を処理機本体81の引出体本体部80にロックする移動可能な係合部材101と、手動操作入力である押圧操作がなされると移動し係合部材101を移動させて係合部材101のカセット18への係合を解除しカセット18の引出体本体部80に対するロックを解除する係合解除部材121と、を有している。第1ロック部85は、係合解除部材121の移動を規制する規制体96と、電気的に駆動されて規制体96による係合解除部材121の移動規制を解除するソレノイド93と、を有している。
取り外したカセット18を引出体本体部80のカセット装着部82に押し込むと、カセット18が係合部112に当接して係合部材101を係合スプリング115の付勢力に抗して機体後側に移動させることになり、カセット18が、凹部114の位置を係合部材101の係合部112に合わせる装着状態になると、係合部材101が係合スプリング115の付勢力で移動して係合部112を凹部114に入り込ませる。これにより、係合部材101がカセット18をカセット装着部82に移動不可にロックする。つまり、ロック機構84は、引出体本体部80のカセット装着部82に対し装着状態にあるカセット18を取り外し不可にロックする。ロック機構84には、このように、カセット18が引出体本体部80のカセット装着部82にロックされる装着位置まで押し込まれると、これを検知する図示略のカセット装着検知センサが設けられている。
ロック機構84は、図9に示すように、キー131と、キー131が係合されると処理機本体81の引出体本体部80に対するカセット18のロックを解除可能となる強制ロック解除部132とを有している。強制ロック解除部132は、図10に示すようにキー131が係合されると回転可能となり、回転操作されると下部の押圧片部133を図9から図10に示すように回転させるキーシリンダ134と、押圧片部133で押圧される上記した支持部材105とを有している。押圧片部133は支持部材105の上端の押圧当接部135の機体後側に位置しており、キー131が係合されて回転操作されると支持部材105の押圧当接部135に当接してこれを機体前側に移動させる。すると、支持部材105は、支持軸104を中心に回動して下部の連結軸106を機体後側に移動させることになり、この連結軸106に連結された係合部材101を機体後側に移動させて、その係合部112をカセット18の凹部114から抜け出させる。これにより、ロック機構84は、カセット18の引出体本体部80に対するロックを解除する。つまり、強制ロック解除部132は、キー131が係合されて回転操作されると係合部材101を移動させて係合部材101のカセット18への係合を解除する。カセット18の上部には、図5に示すように取っ手137が設けられている。
図11,図12に示すように、カセット18は、その外側部分を構成する箱体151を有している。箱体151は、上部に水平に配置される矩形状の天井部152と、天井部152と平行をなして下部に配置される矩形状の図13に示す底部153とを有しており、天井部152に取っ手137が設けられている。
また、箱体151は、天井部152と底部153とを繋いで鉛直に配置されるとともに開口部154が形成された矩形状の図11に示す導入側壁部155と、導入側壁部155と平行に配置されて天井部152と底部153とを繋ぐ矩形状の図12に示す壁部156とを有している。図13に示すように、開口部154は、天井部152と底部153とを繋ぐように上下方向に延在しており、導入側壁部155の機体後部位置に形成されている。
また、箱体151は、天井部152と底部153とを繋ぎ導入側壁部155と壁部156とを開口部154から遠い側で繋いで鉛直に配置される図12に示す前壁部157と、前壁部157と平行に配置されて天井部152と底部153とを図11に示す開口部154に近い側で繋ぎ導入側壁部155と壁部156とを繋ぐ後壁部158とを有している。天井部152は後壁部158の上縁部にヒンジ結合されており、図12に示す前壁部157に設けられたキーシリンダ159が図示略のキーで解錠されると、天井部152が揺動可能となり、箱体151内に収納している紙幣を取り出し可能となる。
カセット18は、図14に示すように引出体本体部80のカセット装着部82に対して導入側壁部155を先頭にして押し込まれることになる。カセット18は、図14に示すようにカセット装着部82に装着状態にあり、図1に示すように引出体本体部80が筐体75に対し押込状態にあるとき、図2に示す処理機本体81側の分岐搬送路30の末端のローラ対30Rに、図14に示すように開口部154が近接して対向する。この状態で、カセット18には、分岐搬送路30からそのローラ対30Rによって開口部154に紙幣が送り込まれることになる。
箱体151には、図13に示すように、開口部154よりも後壁部158とは反対位置に、後壁部158と平行をなして天井部152から底部153側に突出する上部係止板部161と、後壁部158と平行をなして底部153から天井部152側に突出する下部係止板部162とを有している。上部係止板部161および下部係止板部162は同一平面に配置されている。
カセット18には、上部係止板部161と後壁部158との間に、開口部154に送り込まれた紙幣を上部係止板部161とで挟持する板バネからなる上部挟持バネ164が設けられている。また、カセット18には、下部係止板部162と後壁部158との間に、開口部154に送り込まれた紙幣を下部係止板部162とで挟持する板バネからなる下部挟持バネ165が設けられている。
図14に示すように、カセット18には、後壁部158の内側に、開口部154側に近接して支持軸171が箱体151に対して位置固定で設けられており、この支持軸171は、リンクアーム172の一端を回転可能に支持している。リンクアーム172の他端には、係合軸173がリンクアーム172に対し位置固定で設けられており、係合軸173は、板状のプッシャ174(開閉部材)に設けられた左右方向に長い長穴175に移動可能に係合されている。
図15に示すように、プッシャ174には支持軸181がプッシャ174に対して位置固定で設けられており、この支持軸181はリンクアーム182の一端を回転可能に支持している。リンクアーム182の他端には、係合軸183がリンクアーム182に対し位置固定で設けられており、係合軸183は、後壁部158に設けられた左右方向に長い長穴185に移動可能に係合されている。
リンクアーム172,182はそれぞれの中間位置において連結軸188で回転可能に連結されている。連結軸188およびリンクアーム172,182を含むX字状のプッシャリンク189によって、プッシャ174は、後壁部158と平行をなした状態のまま後壁部158に対して近接および離間する。プッシャ174は、図示略のプッシャ付勢スプリングによって後壁部158に近接する方向に付勢されている。
図11に示すように、後壁部158には、中央付近に挿入穴195が形成されており、挿入穴195の位置には、当接部材196が設けられている。当接部材196は、図14に示すように連結軸188に連結されており、挿入穴195を介して進退する処理機本体81に設けられた押圧機構197により押圧される。押圧機構197により当接部材196を介して連結軸188が押圧されると、プッシャリンク189は、図示略のプッシャ付勢スプリングの付勢力に抗してプッシャ174を後壁部158から離間する方向に移動させる。
図11に示すように、後壁部158には凹部114が外面側に形成されている。凹部114は、図6に示すロック機構84の係合部材101の係合部112を係合させる。また、図11に示すように、後壁部158には、導入側壁部155と壁部156とを結ぶ方向に延在するガイド溝190が外面側に形成されている。このガイド溝190は、図16に示すように、引出体本体部80のカセット装着部82に設けられた複数のガイド突起191を進入させることになる。複数のガイド突起191は、カセット18のカセット装着部82に対する水平左右方向のスライド以外での装着および取り外しを規制する。
図15に示す支持軸171は、上部ガイド部材193と下部ガイド部材194とを回転可能に支持している。図13に示すように、上部ガイド部材193は、プッシャ174よりも上方にあり、開口部154に送り込まれた紙幣を上部挟持バネ164と上部係止板部161との間に案内する。下部ガイド部材194は、プッシャ174よりも下方にあり、開口部154に送り込まれた紙幣を下部挟持バネ165と下部係止板部162との間に案内する。上部ガイド部材193は、図示略のガイド付勢スプリングにより上部係止板部161に当接する方向に付勢されており、下部ガイド部材194は、図示略のガイド付勢スプリングにより下部係止板部162に当接する方向に付勢されている。
図14に示すように、カセット18には、前壁部157の内側の開口部154とは反対側に支持軸201が箱体151に対して位置固定で設けられており、この支持軸201はリンクアーム202の一端を回転可能に支持している。リンクアーム202の他端には、係合軸203がリンクアーム202に対し位置固定で設けられており、係合軸203は、板状のビルプレス204の開口部154側に設けられた左右方向に長い長穴205に移動可能に係合されている。
ビルプレス204の開口部154とは反対側には支持軸211がビルプレス204に対して位置固定で設けられており、この支持軸211はリンクアーム212の一端を回転可能に支持している。リンクアーム212の他端には、係合軸213がリンクアーム212に対し位置固定で設けられており、係合軸213は、前壁部157の内側の開口部154側に設けられた左右方向に長い長穴215に移動可能に係合されている。
リンクアーム202,212はそれぞれの中間位置において連結軸218で回転可能に連結されている。連結軸218およびリンクアーム202,212を含むX字状のビルプレスリンク219によってビルプレス204は、前壁部157と平行をなした状態のまま前壁部157に対して近接および離間する。ビルプレス204は、図示略のビルプレス付勢スプリングによって、図17に示す上部係止板部161および下部係止板部162に近接する方向に付勢されている。ビルプレス204は、図示略のビルプレス付勢スプリングの付勢力によって、図17(a)に示すように紙幣Bを上部係止板部161および下部係止板部162とで挟持する。
図17(b)に示すように、上部係止板部161および下部係止板部162と、上部挟持バネ164および下部挟持バネ165との間が、開口部154に近い側で紙幣Bを収納する一次収納部225となっており、上部係止板部161および下部係止板部162と、ビルプレス204との間が、開口部154より遠い側で紙幣Bを収納する二次収納部226となっている。言い換えれば、上部係止板部161および下部係止板部162は、箱体151内を、上部係止板部161および下部係止板部162よりも機体後側の一次収納部225と、上部係止板部161および下部係止板部162よりも機体前側の二次収納部226とに仕切ることになる。これら一次収納部225と二次収納部226とは隣接しており、これらが、開口部154に送り込まれた紙幣Bを収納する収納部227を構成している。
プッシャ174は、図14に示すように最も後壁部158に近づいた状態で開口部154よりも後壁部158側に位置しており、この位置が開口部154に送り込まれた紙幣を収納部227に収納可能とする開口位置となっている。
図17(a)に示すようにプッシャ174が開口位置に位置する状態で、開口部154に送り込まれた紙幣は、図17(b)に示すように上部挟持バネ164および下部挟持バネ165と、上部係止板部161および下部係止板部162とに挟持されて、まず一次収納部225に収納されることになる。その後、プッシャ174が、図14に示す押圧機構197により押圧されて、図17(c)に示すように二次収納部226側に移動すると、一次収納部225にあった紙幣Bを上部係止板部161および下部係止板部162を越えるように二次収納部226に押し出し、上部係止板部161および下部係止板部162とビルプレス204とに既に挟持されていた紙幣Bに重ね合わせて、これら紙幣Bをビルプレス204とで挟持する。
そして、図14に示す押圧機構197が退避すると、図17(d)に示すように、プッシャ174がプッシャ付勢スプリングの付勢力で開口位置に戻り、ビルプレス204がビルプレス付勢スプリングの付勢力で二次収納部226の紙幣Bを上部係止板部161および下部係止板部162とで挟持する状態になり、二次収納部226のみに紙幣Bを収納する状態になる。
図14に示すように、カセット18には、後壁部158の内側に、導入側壁部155と壁部156とを結ぶ方向に移動可能な規制部材231が設けられている。規制部材231は、図18(a)に示すように、導入側壁部155側の先端部232が後壁部158の導入側壁部155側に設けられた開口溝233から外部に露出している。規制部材231は、図18(a)に示すように開口溝233内に配置される長さを最大とする規制位置と、図18(b)に示すように開口溝233内に配置される長さを最小とする規制解除位置との間で移動する。
図19に示すように、規制部材231と後壁部158との間には、規制部材231を、図19に示す規制位置の方向に付勢する引っ張りコイルバネである規制部材付勢スプリング235(付勢部材)が介装されている。規制部材231は、規制部材付勢スプリング235の付勢力のみを受ける状態では、図19に示す規制位置に位置して図示略のストッパに当接する。
規制部材231には、後壁部158とは反対側に突出する突出片部237が設けられている。図14に示すようにカセット18がカセット装着部82に装着された装着状態では、規制部材231がカセット装着部82に設けられた規制解除部241に押圧されて規制解除位置にあり、このとき、突出片部237はプッシャリンク189の連結軸188から開口部154とは反対側に離間している。この状態で、押圧機構197が退避していると、プッシャ174がプッシャ付勢スプリングの付勢力で上記した開口位置に位置する。
この状態から、規制解除部241の押圧が解除されて、規制部材231が、規制部材付勢スプリング235の付勢力で、開口部154側の規制位置に移動するとき、突出片部237が、移動方向の後側ほど後壁部158から離れるように傾斜する傾斜面238でプッシャリンク189の連結軸188に当接して、連結軸188をプッシャ付勢スプリングの付勢力に抗して後壁部158から離れる方向に移動させることになり、図19に示すように規制部材231が規制位置に位置すると、突出片部237が後壁部158とは反対側の後壁部158と平行な頂面239で連結軸218を後壁部158から離れた状態に支持する。このとき、プッシャ174は、プッシャリンク189によって、開口部154と収納部227の一次収納部225との間に介在する閉鎖位置に位置することになる。
つまり、プッシャ174は、開口部154に送り込まれた紙幣Bを収納部227の一次収納部225に収納可能とする図13(b),図14,図16に示す開口位置と、開口部154と収納部227との間に介在して開口部154から収納部227への目視およびアクセスの邪魔板となる図13(a),図19に示す閉鎖位置との間で移動可能となっている。さらに、プッシャ174は、図17(c)に示すように収納部227の二次収納部226側まで移動可能となっている。規制部材231は、図19に示すようにプッシャ174を閉鎖位置に位置させる規制位置と、図14に示すようにプッシャ174を開口位置に位置させる規制解除位置との間で移動可能となっている。
カセット18は、上記したように引出体本体部80のカセット装着部82に対して導入側壁部155を先頭にして水平に押し込まれることになり、その結果、カセット18のカセット装着部82への装着方向と規制部材231の移動方向とが一致する。また、図19に示す規制位置にある規制部材231は、図14に示す規制解除位置にある規制部材231よりも導入側壁部155側に位置することになり、よって規制位置にある規制部材231は、規制解除位置にある規制部材231よりもカセット18のカセット装着部82への装着方向先側に位置する。
図14に示すように、引出体本体部80のカセット装着部82には、カセット18が導入側壁部155を先頭にして処理機右方から処理機左方に水平に押し込まれると、カセット18の規制部材231の先端部232に当接して、規制部材231を規制部材付勢スプリング235の付勢力に抗して移動させて規制解除位置に位置させる上記した規制解除部241が設けられている。図14に示すように規制解除部241が規制部材231を規制解除位置に位置させるまでカセット18がカセット装着部82に押し込まれると、図6,図9に示すようにロック機構84の係合部材101の係合部112が凹部114に係合し、カセット18を装着位置にロックすることになる。
図14に示すように、規制解除部241は、装着状態にあるカセット18の規制部材231と係合して規制部材231を規制解除位置に位置させるものであり、カセット18の装着状態への移動でカセット18の箱体151に対し相対移動することになり、相対移動する箱体151に対し、規制部材231に当接してこれを相対的に停止させる。このようにして、規制解除部241は、カセット18の装着状態への移動を利用して規制部材231を箱体151に対して移動させる。
カセット18が図14に示す装着状態にあるとき、規制部材付勢スプリング235が伸びていて弾性エネルギを高めた状態にある。この装着状態から、図8,図10に示すようにロック機構84の係合部材101の係合部112が凹部114から抜け出すと、図14に示すように伸びた状態にある規制部材付勢スプリング235がその弾性エネルギによって縮んで規制部材231を開口部154側の規制解除位置に向け移動させることになる。その結果、規制部材231が、プッシャリンク189を押圧してプッシャ174を閉鎖位置に位置させるとともに、規制解除部241を押圧して、カセット18をカセット装着部82から、図5に示すように処理機右方に押し出す。
以上に述べた構成の本実施形態の紙幣処理機11の各処理別の作動を説明する。
「入金処理」
入金処理時は、POSレジ50の制御部66からの指令に基づいて、紙幣処理機11が入金処理を行うための入金動作モードとなり、入金部15に紙幣Bが挿入可能である旨を示すため表示ランプ43を点灯または点滅させる。この状態で、紙幣Bが、長辺を上端および下端とする姿勢で、上端開口部15aから入金部15に挿入されることになる。紙幣Bが複数枚ある場合には厚さ方向および集積方向を機体前後方向にして集積させた状態で、上端開口部15aから入金部15に挿入される。そして、上端開口部15aから入金部15に紙幣Bが挿入されたことを紙幣検知センサ15Sが検出すると、制御部66は、入金部15から紙幣Bを一枚ずつ分離して側方の図2に示す主搬送路28に送り出す。制御部66は、各紙幣Bの入金部15から主搬送路28への送り出し完了を紙幣検知センサS1の検出結果から判断する。
主搬送路28に送り出された紙幣Bは、搬送ローラ対R1〜R10の正転駆動によって主搬送路28上を入金部15から還流庫20〜22に向かって搬送され、その途中、分岐搬送路29を越えた位置(還流庫20〜22よりも手前)で識別部40により入金の可不可および金種が識別されることになる。識別部40で入金可能と識別された紙幣Bは、制御部66が還流庫20〜22用の振分部32G〜34Gのうち該当する金種用のものを駆動して、金種の還流庫20〜22のうちの該当する金種のものに収納させる。
具体的には、紙幣Bが入金可能な千円券紙幣であった場合、制御部66は、この紙幣Bが重送検知センサS3で検出されるタイミングに基づいて振分部32Gを駆動して、この紙幣Bを搬送ローラ対R6の駆動で分岐搬送路32に送り込み、ローラ32Ra,32Rbの駆動で還流庫20に収納する。制御部66は、この還流庫20への各紙幣Bの収納の完了を紙幣検知センサ32Sの検出結果から判断する。
また、紙幣Bが入金可能な五千円券紙幣であった場合、制御部66は、この紙幣Bが重送検知センサS4で検出されるタイミングに基づいて振分部33Gを駆動して、この紙幣Bを搬送ローラ対R7の駆動で分岐搬送路33に送り込み、ローラ33Ra,33Rbの駆動で還流庫21に収納する。制御部66は、この還流庫21への各紙幣Bの収納の完了を紙幣検知センサ33Sの検出結果から判断する。
また、紙幣Bが入金可能な万円券紙幣であった場合、制御部66は、この紙幣Bが重送検知センサS5で検出されるタイミングに基づいて振分部34Gを駆動して、この紙幣Bを搬送ローラ対R8の駆動で分岐搬送路34に送り込み、ローラ34Ra,34Rbの駆動で還流庫22に収納する。制御部66は、この還流庫22への各紙幣Bの収納の完了を紙幣検知センサ34Sの検出結果から判断する。
他方、識別部40で入金不可と識別された紙幣Bは、搬送ローラ対R1〜R10の逆転駆動によって主搬送路28上を上記とは逆方向に搬送される。制御部66は、識別部40の検出に基づくタイミングで振分部29Gを駆動してこの紙幣Bを搬送ローラ対R2の駆動で分岐搬送路29に送り込んでローラ対29Rの駆動で出金部16に搬送する。制御部66は、この出金部16への各紙幣Bの送り込みの完了を紙幣検知センサ29Sの検出結果から判断する。
入金部15の紙幣Bがすべて、還流庫20〜22および出金部16のいずれかに搬送されると、制御部66は、出金部16に紙幣Bがある場合には、出金部16により紙幣Bを上端開口部16aから機外に取り出し可能に突出させる。
「出金処理」
出金処理時には、POSレジ50の制御部66からの指令に基づいて、紙幣処理機11が出金処理を行うための出金動作モードとなり、搬送ローラ対R1〜R10の逆転駆動によって、還流庫20〜22のいずれか一つから紙幣Bを分岐搬送路32〜34の対応するものおよび主搬送路28を介して出金部16に向けて搬送することになる。還流庫20から紙幣Bを繰り出す場合、紙幣Bを、蹴出ローラ20Rがローラ32Ra,32Rbに向け蹴り出し、ローラ32Rbで一枚に分離しながらローラ32Raが分岐搬送路32に繰り出す。還流庫21から紙幣Bを繰り出す場合、紙幣Bを、蹴出ローラ21Rがローラ33Ra,33Rbに向け蹴り出し、ローラ33Rbで一枚に分離しながらローラ33Raが分岐搬送路33に繰り出す。還流庫22から紙幣Bを繰り出す場合、蹴出ローラ22Rが紙幣Bをローラ34Ra,34Rbに向け蹴り出し、ローラ34Rbで一枚に分離しながらローラ34Raが分岐搬送路34に繰り出す。
そして、紙幣Bは、主搬送路28での搬送中に、重送検知センサS3〜S5のうちの通過するもので重送の有無が検知されることになる。制御部66は、重送でない紙幣Bを、識別部40の検出に基づくタイミングで振分部29Gを駆動することにより分岐搬送路29を介して出金部16に送り込む。制御部66は、この出金部16への各紙幣Bの送り込みの完了を紙幣検知センサ29Sの検出結果から判断する。
他方、制御部66は、重送の紙幣Bを、搬送ローラ対R1〜R10の正転駆動によって、主搬送路28で出金リジェクト庫23の方向に搬送し出金リジェクト庫23に収納させる。制御部66は、この出金リジェクト庫23への各紙幣Bの収納の完了を紙幣検知センサS2の検出結果から判断する。
還流庫20〜22から出金部16への紙幣Bの搬送を適宜繰り返すことで、出金する全金種の全枚数の紙幣Bが出金部16に送り込まれると、制御部66は、出金部16により紙幣Bを上端開口部16aから突出させて機外に取り出し可能な状態とする。そして、出金部16から紙幣Bが取り出し可能である旨を示すため表示ランプ44を点灯または点滅させる。
「回収処理」
回収処理時には、POSレジ50の入力操作部60へ回収処理を行うことを選択する操作入力がなされる。すると、POSレジ50の制御部66からの指令に基づいて、紙幣処理機11が回収処理を行うための回収処理モードとなる。回収処理モードで、制御部66は、還流庫20〜22のいずれか一つの回収対象庫から紙幣Bを出金処理と同様にして主搬送路28に繰り出し、主搬送路28を介してカセット18側に向けて搬送する。主搬送路28の搬送中に重送検知センサS3〜S5のうち紙幣Bが通過するものが紙幣Bの重送を検知することになり、制御部66は、重送でない紙幣Bを、搬送ローラ対R4および振分部30Gで分岐搬送路30に送り込み、ローラ対30Rでカセット18に収納する。制御部66は、このカセット18への各紙幣Bの収納の完了を紙幣検知センサ30Sの検出結果から判断する。
他方、制御部66は、重送の紙幣Bを、搬送ローラ対R1〜R10の正転駆動によって、主搬送路28で出金リジェクト庫23に向けて搬送し出金リジェクト庫23に収納する。制御部66は、この出金リジェクト庫23への各紙幣Bの収納の完了を紙幣検知センサS2の検出結果から判断する。
ここで、回収処理時に、図14に示すようにカセット18は、引出体本体部80のカセット装着部82に装着状態にあり、引出体本体部80は、図1に示すように筐体75に装填状態にある。このため、図14に示すように、カセット18は規制部材231が規制解除位置に位置している。よって、プッシャ174は、押圧機構197により押圧されない状態では、開口部154に送り込まれた紙幣を収納部227の一次収納部225に収納可能とする開口位置に位置している。よって、この状態で、ローラ対30Rで開口部154に送り込まれた紙幣は、図17(b)に示すように、上部係止板部161および下部係止板部162と、上部挟持バネ164および下部挟持バネ165とに挟持されて一次収納部225に収納される。
その後、プッシャ174は、適宜のタイミングで、図14に示すプッシャリンク189を介して押圧機構197に押圧されることになり、これにより、図17(c)に示すように、二次収納部226側に移動する。すると、プッシャ174は、一次収納部225に収納していた紙幣Bを上部係止板部161および下部係止板部162を越えるように二次収納部226に押し出し、上部係止板部161および下部係止板部162とビルプレス204とに既に挟持されていた紙幣Bに重ね合わせて、これら紙幣Bをビルプレス204とで挟持する。そして、押圧機構197が退避すると、図17(d)に示すように、プッシャ174がプッシャ付勢スプリングの付勢力で開口位置に戻り、ビルプレス204がビルプレス付勢スプリングの付勢力で二次収納部226の紙幣Bを上部係止板部161および下部係止板部162とで挟持する状態になって、二次収納部226のみに紙幣Bを収納する状態になる。
還流庫20〜22のうちの一つの回収対象庫のすべての紙幣Bが、カセット18または出金リジェクト庫23に送り込まれると、この回収対象庫についての回収処理を終了する。これにより、回収対象庫の金種の紙幣が、紙幣検知センサ30Sで計数された枚数だけカセット18に送り込まれる。
回収対象庫についての回収処理を終了すると、POSレジ50の制御部66は、筐体75に対する引出体76のキー72によるロック解除を促す表示をPOSレジ50の入力表示部61および紙幣処理機11の表示部41に表示させる。
これにより、操作者は、図1に示すキー72により筐体75に対する引出体76のロックを解除し、取っ手77を把持して引出体76を筐体75から装置前方に引き出す。図4に示すようにカセット18が引出体本体部80のカセット装着部82から取り外し可能な位置まで引出体76が筐体75から引き出されると、図示略の引出検知センサがこれを検知する。すると、POSレジ50の制御部66は、それまで図6に示すロック側状態にあった第1ロック部85のソレノイド93を電気的に駆動して、第1ロック部85を図7に示す解除側状態に切り替える。
ここで、図6に示すようにソレノイド93が電気的に駆動されていないロック側状態では、プランジャ92がソレノイド本体91から最も突出しており、これにより、規制体96の規制片部98がロック側状態にある第2ロック部86の解除側状態への切り替えを規制している。つまり、規制体96の規制片部98が、第2ロック部86の係合解除部材121の規制当接部128に当接して係合解除部材121の下方への移動を規制する。これにより、カセット18がカセット装着部82から取り外し可能な位置まで引出体76が筐体75から引き出される前に、係合解除部材121が押圧操作されてロック機構84がロック解除状態になることを規制する。
第1ロック部85のソレノイド93は、電気的に駆動されると、図7に示すようにプランジャ92をソレノイド本体91内に最も引き込むことになり、これにより、規制体96を支持軸95を中心に回動させて規制片部98を係合解除部材121の規制当接部128の鉛直下方から機体後側に移動させる。これにより、係合解除部材121の下方移動つまり第2ロック部86のロック側状態から解除側状態への切り替えが許容される状態になる。なお、この状態でも、カセット18は、係合部材101によって引出体本体部80にロックされた装着状態に維持されている。
制御部66は、このように第1ロック部85のソレノイド93を駆動して第1ロック部85を解除側状態にすると、紙幣処理機11の図1に示す表示部41に、カセット18の取り外し操作である操作ボタン部122の押圧操作が可能である旨のテキスト表示を表示させるとともに、入金部15の側部の表示ランプ43と出金部16の側部の表示ランプ44とを点滅させて、操作者に報知を行う。言い換えれば、表示部41および表示ランプ43,44は、第1ロック部85が解除側状態にあるとき、第2ロック部86のロック側状態から解除側状態への切り替えが可能な旨を通知する。
この状態で、操作者が、図7から図8に示すように、第2ロック部86の係合解除部材121の操作ボタン部122を下方に押圧すると、係合解除部材121が下方に移動し、係合解除部材121の突出部125の傾斜下面126が、係合部材101の突出部110の傾斜上面111に当接してこれを下方に押圧する。すると、傾斜下面126および傾斜上面111の傾斜によって、係合部材101がカセット18に対し機体後側に移動し、その係合部112がカセット18の凹部114から抜け出す。これにより、ロック機構84は、カセット18の引出体本体部80に対するロックを解除する。
すると、カセット18は、規制部材付勢スプリング235が規制部材231を規制解除位置に向け移動させることになり、その結果、規制部材231が規制解除部241を押圧して、カセット18を引出体本体部80よりも処理機右方に図5に示すように押し出す。その結果、カセット18は引出体本体部80から所定量右方に一部が突出する。これにより、図8に示すカセット18の凹部114も係合部材101の係合部112から処理機右方にずれることになる。ここで、規制部材付勢スプリング235および規制部材231は、カセット18を、これが引出体本体部80のカセット装着部82に装着状態にないことを目視で認識できる程度に部分的に飛び出させるものであり、カセット18の全体を引出体本体部80から飛び出させることはない。
カセット18が、規制部材付勢スプリング235の付勢力で引出体本体部80から突出すると、この位置では、装置前方に移動する係合部材101の係合部112に対して逃げる形状をなしており、よって、この状態で、操作者が係合解除部材121の操作ボタン部122の押圧操作をやめると、係合部材101が係合スプリング115の付勢力で機体前側に移動する。その際に、係合部材101の突出部110の傾斜上面111が係合解除部材121の突出部125の傾斜下面126に当接してこれを上方に押圧して係合解除部材121を上昇させる。
また、上記のようにカセット18が規制部材付勢スプリング235の付勢力で引出体本体部80から突出すると、図示略のカセット装着検知センサがこれを検知することになる。すると、制御部66は、第1ロック部85のソレノイド93への電気的な駆動を停止させるとともに、表示部41および表示ランプ43,44による報知を終了する。これにより、ソレノイド93は、ソレノイド本体91内に設けられた図示略の内部スプリングの付勢力でプランジャ92をソレノイド本体91から突出させることになり、規制体96を支持軸95を中心に回動させる。このとき、操作者が係合解除部材121の操作ボタン部122の押圧操作をやめていなければ(図8参照)、ソレノイド本体91の内部スプリングの付勢力で規制体96が規制片部98を係合解除部材121の規制当接部128に機体後側から当接させて停止することになる。
この状態から操作者が係合解除部材121の操作ボタン部122の押圧操作をやめて、上記のように係合解除部材121を係合スプリング115の付勢力で上昇させるか、あるいは、既に操作ボタン部122の押圧操作をやめて係合解除部材121を上昇させていると、ソレノイド本体91の内部スプリングの付勢力で規制体96が支持軸95を中心に回動して規制片部98を係合解除部材121の規制当接部128の鉛直下方に配置する(図7から図6への移動を参照)。これにより、第1ロック部85がロック側状態となり、係合解除部材121の下方移動つまり第2ロック部86のロック側状態から解除側状態への切り替えを規制する状態になる。
操作者は、引出体本体部80から一部が突出したカセット18を、その上部の図5に示す取っ手137を持ってさらに引き出して引出体本体部80から取り外す。すると、規制部材231は、引出体本体部80の規制解除部241から離れることになり、規制部材付勢スプリング235の付勢力によって規制位置に位置する。その結果、規制部材231は、突出片部237がプッシャリンク189の連結軸188をプッシャ付勢スプリングの付勢力に抗して後壁部158から離れる方向に移動させており、プッシャ174を、図19に示すように、開口部154と収納部227の一次収納部225との間に介在する閉鎖位置に位置させることになる。よって、開口部154から収納部227の目視およびアクセスを邪魔することになる。カセット18内の紙幣を取り出す場合には、図12に示すキーシリンダ159を図示略のキーで解錠し、天井部152を開いて、箱体151内の紙幣を取り出すことになる。
カセット18を引出体本体部80のカセット装着部82に装着する際に、操作者は、カセット18をカセット装着部82に処理機右方から左方に水平に押し込む。すると、カセット18が係合部材101の係合部112に当接して、係合部材101を係合スプリング115の付勢力に抗して機体後側に移動させることになり、一旦係合部材101を機体後側に逃がす。その際に、係合解除部材121は、規制体96の規制片部98で下降が規制されているため、下降することはない(図6参照)。そして、カセット18の凹部114の位置が係合部材101の係合部112に合うと、係合部材101が係合スプリング115の付勢力で移動して係合部112を凹部114に入り込ませ、図6に示すように引出体本体部80に対しカセット18を取り外し不可にロックする。これにより、カセット18が係合部材101でロックされた装着状態になる。その際に、図14に示すように、引出体本体部80の規制解除部241が、規制部材231に当接して、これを、規制部材付勢スプリング235の付勢力に抗して移動させて規制解除位置に位置させる。これにより、プッシャ174が開口部154に送り込まれた紙幣を収納部227の一次収納部225に収納可能とする開口位置に位置する。
ここで、停電や装置故障等で、制御部66がソレノイド93を電気的に駆動できない状態にある場合、操作者は、図9に示すキー131を、図10に示すようにキーシリンダ134に挿入して開側に回転操作する。すると、キーシリンダ134の押圧片部133が、支持部材105の押圧当接部135に当接してこれを機体前側に移動させる。これにより、支持部材105は、支持軸104を中心に回動して下部の連結軸106を機体後側に移動させることになる。つまり、支持部材105は、この連結軸106を介して連結された係合部材101を係合スプリング115の付勢力に抗して機体後側に移動させて、その係合部112をカセット18の凹部114から抜け出させる。これにより、ロック機構84は、カセット18の引出体本体部80に対するロックを解除する。すると、上記と同様に、カセット18は規制部材付勢スプリング235の付勢力で引出体本体部80から所定量右方に一部が突出することになる。
キー131を、キーシリンダ134に挿入して閉側に回転操作すると、キーシリンダ134の押圧片部133が、支持部材105の押圧当接部135から離れる方向に移動する。すると、係合スプリング115の付勢力で係合部材101が、支持部材105を支持軸104を中心に回動させながら機体前側に移動する。その後、カセット18を引出体本体部80に装着する際は、上記と同様の作動となる。
「装着処理」
すべての還流庫20〜22から紙幣Bを回収する全回収があった場合や還流庫20〜22の紙幣Bが不足した場合に、釣銭準備金を装着する装着処理が行われるが、この装着処理は、上記した入金処理とほぼ同様に行われる。装着処理時には、図示略の操作部へ装着処理を行うことを選択する操作入力がなされることになり、これにより紙幣処理機11が装着処理を行うための装着動作モードとなる。
以上に述べた本実施形態の紙幣処理機11によれば、処理機本体81からカセット18を取り外すと、カセット18の規制部材231が規制部材付勢スプリング235の付勢力によって規制位置に位置することになり、その結果、プッシャ174が開口部154と収納部227の一次収納部225との間に介在する閉鎖位置に位置する。その結果、プッシャ174が邪魔板となって、開口部154から収納部227の目視およびアクセスを困難にする。また、処理機本体81にカセット18を装着すると、処理機本体81の規制解除部241が、規制部材231を規制部材付勢スプリング235の付勢力に抗して規制解除位置に位置させることになり、その結果、プッシャ174が、開口部154に送り込まれた紙幣を収納部227の一次収納部225に収納可能とする開口位置に位置して、処理機本体81から収納部227への紙幣の収納を可能とする。よって、カセット18は、処理機本体81からの取り外し操作を行えば自動的に開口部154から収納部227へのアクセスの規制状態になり、処理機本体81への装着操作を行えば自動的に開口部154から収納部227へのアクセス規制を解除する状態になる。よって、開口部154から収納部227へのアクセスの規制および規制の解除のためだけの操作を不要にできる。したがって、面倒な作業を伴わずにセキュリティ性を向上させることができる。
また、開口部154に送り込まれた紙幣を収納部227の一次収納部225に収納可能とする開口位置と、開口部154と収納部227の一次収納部225との間に介在する閉鎖位置との間で移動可能な開閉部材が、一次収納部225の紙幣を二次収納部226へ押し出すプッシャ174であるため、開口部154から収納部227へのアクセス規制のためだけに必要な部品の点数を低減することができる。したがって、コスト増を抑制することができる。
また、カセット18の処理機本体81への装着方向と規制部材231の移動方向とが一致しており、規制位置にある規制部材231は規制解除位置にある規制部材231よりもカセット18の処理機本体81への装着方向先側に位置するため、カセット18を処理機本体81へ装着する操作で、規制部材付勢スプリング235の付勢力に抗して規制部材231を規制解除位置に移動させることができ、プッシャ174を開口位置に位置させることができる。また、ロック機構84によるカセット18の処理機本体81へのロックを解除すれば、規制部材付勢スプリング235が規制部材231を規制位置に向け移動させることになり、プッシャ174が閉鎖位置に位置して開口部154から収納部227へのアクセスを規制する状態になるとともに、規制部材付勢スプリング235が付勢力で規制部材231を介してカセット18を処理機本体81に対し取り外し方向に移動させることになる。カセット18が処理機本体81に対し取り外し方向に移動することで、カセット18が取り外し可能な状態にあることを操作者に認識させることができる。