否定→批判→共感でヒット「射精責任」 釈然としない思い言語化
病院に行かず、一人で出産した女性が、赤ん坊を遺棄したなどして罪に問われる事件は後を絶たない。だが、妊娠に不可欠な男性に焦点が当たらない。
この現状を痛烈に指摘するアメリカ人の著書「射精責任」の売れ行きが好調だ。「またを開いた女が悪い」など批判的な意見があったものの、日本語版の出版に携わった2人は「多くの人が感じていた釈然としない思いに言葉を与えてくれる本になった」と話す。
<主な内容>
・モヤモヤがすっきり
・相次いだ批判的な書き込み
・続々と届いた声
・夏休みに刊行した思い
「読者層も売れる未来も見えない」
「今まで感じていたモヤモヤがすっきりしました」
太田出版の藤沢千春さん(31)は2年前の秋、ブロガーで起業家のガブリエル・ブレア氏による原書を読んだときの感想をそう表現する。
ブレア氏は、望まない妊娠について、セックスをするから起きるのではない。あらゆる避妊の責任を女性に押し付ける男性が「無責任な射精」をしたときのみ起きる、と記していた。
交際していた男性との性交渉の際、藤沢さんは望んだのに、相手がコンドームをつけてくれなかったことがある。また、乳児の遺棄事件が報じられる際、母親だけが逮捕され、父親の影が見えないことにも違和感を覚えてきた。
腑(ふ)に落ちない思いに、ブレア氏は明確な答えを提示してくれた。「日本でも多くの人に読んでほしい」と考えた藤沢さんは、社内で日本語版の出版を提案した。だが、反応は悪かった。
「読者層が見えない」
「言葉が強すぎて、女性ですら敬遠するのではないか」
「売れる未来が見えない」
それでも、これまで「透明」だった男性の存在について焦点を当てた内容は、多くの読者の共感が得られるとの考えは変わらなかった。役員らにジェンダー関連の翻訳本で売れ行きが良かった事例があることも紹介して社内調整を乗り切った。
予想外のヒットで重版
発売2カ月前となる2023年5月、藤沢さんが自身のX(ツイッター)で告知を投稿すると、社内とは比べものにならないほど…
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