【ウィーン=共同】一九五〇~六〇年代に世界各地で集中的に実施された大気圏核実験によって森林に降下した放射性物質セシウム137は河川や海などへはほとんど流出せず、五十年以上、森林の土壌内部にとどまっているとする研究結果を東京大の三浦覚(さとる)特任准教授がまとめ、ウィーンの学会で発表した。 セシウム137の半減期は約三十年で、東京電力福島第一原発事故でも広範囲に飛散。日本の森林は急斜面が多く、雨量も多いため土壌と共に流れ出ることが懸念されるが、三浦氏は「適切に森林が管理されれば、セシウムの森林外への流出は起こりにくいとみられる」と話している。 三浦氏は二〇〇六~一〇年に日本全国で採取された森林土壌のうち三百十六地点の試料を解析。セシウム137の濃度は一平方メートル当たり平均約一・七キロベクレルで、大気圏核実験で一九七〇年一月までに降下した総量から半減期を考慮して導き出した結果とほぼ一致した。