「本当は、画家になりたかったんだ」 フルート型のシャンパングラスを置くと、福江晋二はポツリと言う。 「そうなんですか!? センスが良いと思った」「『い・ろ・は・す』のカッコ良さに、福江さんのセンスがつながってますよ。だから、俺たちは絶対に成功する」 さりげない言葉でも、2人のメンバーはスポンジのように吸収し、そして高揚を増幅させてしまう。2人は、ともに30代の男女だ。 プロジェクトリーダーである福江は統括部長の肩書きだが、1968年生まれ。流行(はやり)言葉で表すと、まだ“アラ・フォー”の若さである。 2009年5月18日の夜。会社に近い南青山の瀟洒(しょうしゃ)なレストラン。若い3人のテーブルは、異様な盛り上がりを醸(かも)していた。 と言うのも、3人がほぼ1年間かけて開発したミネラルウオーターの新商品が、この日、発売されたからである。 新商品の名前は「い・ろ・は・す」。3人は日本コカ・