退職従業員が作成した資料の秘密管理性(営業秘密)、創作性(著作物性)のほか、従業員の引抜行為、顧客の切替勧奨など仲違い事案において頻出する多くの論点が問題となった事例。 事案の概要 X社の元従業員であるBが、在籍中に資料(本件データ)を作成していたところ、BがX社を退職した後に移籍先のY社において資料(Y作成データ)を作成した行為について、本件データが営業秘密及び著作物に該当するとして、①著作権侵害、②営業秘密の不正取得、開示、③不法行為(従業員の移籍勧誘、X社の顧客に対する取引切替勧誘)があったとして、損害の一部である1億円の支払を請求したという事案である。 当事者としては、原告X社、被告Y社のほか、Y社の代表取締役A(Xの元代表取締役)も被告である。 C(X社代表取締役)と、A(当時のX社の代表取締役)が仲違いし、両者が2017年10月19日付けで合意書(本件合意書)を取り交わしていた