町工場と住宅が混在する東京都墨田区。荒川に近い下町の一角にある小さな工場で清水敦史氏(37)は世界初とされる強風にも耐える風力発電機の開発に取り組んでいる。台風発電を可能にするため、上陸が相次ぐこの秋、屋内実験では再現が難しい台風を追いかけてフィールドテストを繰り返している。 清水氏率いる新興企業チャレナジーが開発しているのは「垂直軸型マグナス風力発電機」と呼ばれる機器。一般的に普及している風車を用いたプロペラ式の風力発電装置とは大きく異なる。地面と垂直に設置された3つの円筒をモーターの力を使って風から受ける気流の中で回転させると、そこに「マグナス力」と呼ばれる揚力が生まれる。 野球のピッチャーが投球時にボールに回転を与えると特定の方向に曲がるのはこの原理によるもの。マグナス風力発電機は円筒が生み出す揚力を利用し、中央の軸部にある機器を回して発電する。 清水氏は「専門家ほどプロペラありきで