表紙を見ておやおやと思った。日本語・印欧語同一起源説と副題にあるからだ。「名前」とNameを比較して日本語と英語は起源が同じだとするたぐいのトンデモ本かと思ったのだ。言っちゃあなんだが、版元もKKベストセラーズだし。ところが、読んで瞠目、本格的祖語研究の一冊なのだ。著者は言語学とフランス文学を専攻する大学教授である。 本書は、日本語の祖語を求めることの難しさを説くことから始まる。日本語はすぐ隣の朝鮮語と文法構造は酷似するのだが、音形が違いすぎる。有名な大野晋のタミル語起源説も、インド南部から日本列島への伝播があったにしてはその途中の痕跡がたどれない。 しかし、従来の言語学が視野に入れていなかった人類学や遺伝子学の成果を取り入れると、さまざまな言語に共通する祖先を考えることができる。人類はアフリカに誕生し、十万年ほど前にそこを出発、ユーラシア大陸・アメリカ大陸に広がった。そうしてみると諸言語