本記事では『プロ野球スピリッツ2019』と、基本的なゲームモードが共通する『eBASEBALLプロ野球スピリッツ2021 グランドスラム』を扱う。
プロ野球スピリッツ2019
【ぷろやきゅうすぴりっつにせんじゅうきゅう】
ジャンル
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プロ野球・育成
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対応機種
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プレイステーション4 プレイステーション・ヴィータ
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発売・開発元
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コナミデジタルエンタテインメント
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発売日
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2019年7月18日
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定価
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【PS4】9,680円 【PSV】8,250円
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プレイ人数
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1〜2人
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セーブデータ
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1個
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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良作
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ポイント
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リアル野球ゲームの代表 どこをとっても完成度の高い試合 大幅に手軽になった選手育成
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概要
2004年から展開されているコナミのリアル調野球ゲーム『プロ野球スピリッツ』(以下、プロスピ)シリーズの2019・2020シーズン版。
『プロスピ』シリーズは『2015』を最後に家庭用での供給が途絶え、スマホ用ソーシャルゲーム『A』に尽力されている状態だったが、大きなリニューアルを経て3年ぶりに復活することになった。
ゲームモード
対戦
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プロ野球12球団から選んで対戦する。
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チーム全員を操作するCOM対戦が基本。他に、選手1人を操作する「フィールドプレイ」・その名の通り守備・攻撃を交代しながら対戦する「2人対戦」・打撃方針などの采配を行う「監督プレイ」・操作せずに観戦を楽しむ「試合観戦」がある。
ドリームリーグ
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監督として好きな選手をスカウトし、自分だけのチームを作って戦わせるモード。対COM戦とオンラインによる対人戦がある。
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基本的に「監督プレイ」と同じで、直接選手を操作することはできない。家庭用版とスマホ版を合わせたようなモードである。
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選手には能力値の他に「ドリームパワー」という独自数値が割り当てられており、これが高いと勝ちやすくなる。
ペナントレース
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1チームを選んで、その年の公式戦・交流戦日程に沿ってペナントレースを戦うモード。プレイはもちろん、采配からコーチ任命、助っ人・ドラフト候補・メジャーリーガーのNPB復帰の調査と獲得、トレード提案まで基本的な球団運営の要素が詰まっている。
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「成長・衰退」というシステムを任意で使用可能で、年齢を重ねた選手の能力の衰えや、若手選手の成長が自動で再現されるようになっている。
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公式12球団のほか、オリジナル選手を入れたり選手のトレードをしたりと改変したマイ12球団でのペナントもできる。
スタープレイヤー
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1選手を選んで試合をこなし、引退までのプロ野球人生を体験するモード。オリジナル選手も使用でき、『パワプロ』同様に結婚できることも。
トレーニング
甲子園スピリッツ
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オリジナル選手を育成するモード。プレイヤーは「育星高校」の選手となり、大会で戦っていくことで選手能力を上げていく。
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試合がない時期は練習。「守備・走塁練習」「ミート特打」など種類によって上がる能力値が異なるほか、特定の練習で上がる「ハリキリLv.」によって上昇量がアップする。試合ではプロ野球同様にプレイするが、活躍することでスカウト評価が上がり、ドラフト指名で良い結果が得られやすくなる。
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高校最後の1年間をこなす「1年チャレンジ」と、夏の大会だけをプレイする「大会チャレンジ」に加え、試合は一切プレイせず能力値アップだけを目指す「練習チャレンジ」の3種類がある。
プロ野球速報プレイ
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その日に行われたプロ野球の試合を再現して遊べるモード。その試合の特定場面を再現した「シナリオ」をプレイすることになり、ペナントレースだけでなくオールスターゲームやポストシーズンの試合も再現される。
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一度配信されたシナリオは、オンラインサービス終了までいつでも遊ぶことができる。
オンライン対戦
ホームラン競争
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選手を1人選んで10回フリー打撃を行い、ホームランの回数を競う。
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結果によって、プロスピショップで使えるVPがもらえる。
プロスピ入門
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打撃・投球・守備・走塁の基本的な操作のチュートリアル。
その他のモード
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選手データ…選手能力を閲覧したり、作成したオリジナル選手の設定を変えたりできるモード。
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プロスピショップ…OB選手やサードユニフォームのアンロック、「甲子園スピリッツ」で使えるアイテムの購入、選手の覚醒などができる。基本的にゲーム内通貨「VP」で購入するが、選手応援歌のDLCは日本円での課金。
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アンケート…ゲーム内容に関するアンケートに答える。
システム
基本的には『パワプロ』に近いため、相違点のみ記載する。
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打者操作では「打撃」「バント」の他に「流し打ち」が可能。タイミングを遅らせて打つことで逆方向にも強い打球を飛ばすことができる。
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投手操作では「全力投球」が特徴で、球種選択を長く押し続ける(スティックを倒し続ける)と、ベストピッチが難しくなる代わりに球威(後述)の一段高い球を投じられる。
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なお『パワプロ』におけるナイスピッチは『プロスピ』ではベストピッチと呼ばれる。
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打者・投手の操作はオートにできない。また、投手の「ナゲルダケ」操作にあたるモードはなく、コースと球種は選ぶ必要がある。
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試合球の反発力を選ぶことができ、あまり飛ばない「低反発」から、かなりよく飛ぶ「超高反発」まで4段階がある。
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対戦時に相手に見えないように操作できるブロックサインを使い、故意四球前提の敬遠球を投げることもできる。
選手データ
パワプロよりもかなり細かな数値設定がなされており、ここもまたプロスピの醍醐味の1つ。従来作品から大幅にクオリティが上がり、『A』の要素も取り入れたものとなっている。
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投手データでは、球種ごとに変化量のほか球威のパラメータが設定されている。これが高いと直球は減速しづらく、変化球は曲がりやすくなるほか、バットが当たる範囲が小さくなる。
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また、コントロール能力は球種ごとに決められており、「カーブは上手いが、スライダーは速い分荒れがち」といった特徴がしっかり再現されている。
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また球種そのものもパワプロより多く反映されている。例えば2022年終了時点の田中将大は、パワプロでは5球種のみ(うち1つは「全力ストレート」)だが、プロスピでは全8球種に加えてそれぞれの全力投球が可能であるため実質16球種を投げることができる。
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野手データではミートが対右投手と対左投手で別になっており、ストライクゾーン内での得意コース・苦手コースまで設定されている。また守備では肩力・捕球のほか、動き出しの速さが決まるポジションごとの守備適性、送球の正確さが決まるスローイングの数値がある。
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そしてこれらを総合したものが能力値。『2015』までは2桁だったが本作から3桁となり、より細かな能力把握ができるようになっている。
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チームを代表するスター選手の多くは300超。400超ではリーグを代表する選手といえ、500を超える選手は滅多にいない。
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またアップデートで追加(『2021』では最初から収録)されたプロスピ独自のシステムに「覚醒」があり、プロスピショップでゲーム内通貨を支払うことで行える。
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現実で見られるような、それまで活躍できなかった選手がいきなり頭角を表す「確変」や「覚醒」と呼ばれる現象をこれによって再現可能。
評価点
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圧倒的にリアルなグラフィック
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『2015』までは各球団一握りの主力選手以外はかなりおざなりなグラフィックだったが、本作では一部のルーキー・新外国人を除いた全員がスキャンによる(と思われる)リアルな顔立ちに進化した。
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また山川穂高やウィーラーなど特徴的な顔立ちの選手の場合も、当時から主力でありながら『2015』ではお世辞にも似ているとは言えないものだったが、本作では本物と比べても違和感がないほどの出来になっている。
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初心者に優しい
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リアルなグラフィックから先入観を持たれやすいが、ストライクゾーンの大きさやデフォルトの設定の関係から、実は打者の操作は『パワプロ』より簡単。強振のミート範囲が非常に大きいのもやりやすいポイント。
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投手の操作は常にマウンドからの視点になるので混乱しづらい。二度投げ操作により、ベストピッチを狙って出すこともできる。
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解説
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実況に加えて解説がいるのが本作の醍醐味。発言バリエーションは非常に多く、プレイに対しての批評も行うので、解説に耳を傾けるのも良いかも。
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解説は4人おり、そのうち2人選んで出演させられる。
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甲子園スピリッツ
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オリジナル選手が作成できる「スピリッツ」は本作では高校野球が舞台に。「スタープレイヤー」同様、人間関係によるステータスの上昇が特徴。
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この「スピリッツ」自体、『パワプロ』と比べてはるかに手軽に選手が作成できるので、(男性限定にはなるが)オリジナルキャラによるリーグ戦を楽しむことも夢ではない。
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高校野球特有のユニフォームや金属バットといったこのモードでしか遊べない要素も多い。
問題点
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編成面が大幅に機能不足
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チーム編成において、パワプロでできるのにプロスピではできないことがあまりにも多い。以下はそのうち代表的なもの。
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原則として選手の登録名を「名前のみ」以外に変更できない。T-岡田(岡田貴弘)やマルク(石田健人マルク)など現実世界でニックネームが登録名の選手のみ「本名に戻す」という形の変更ができるが、その他の選手は非対応。
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呼び方や背ネームを変更できない。上記の設定で登録名を「名前のみ」とした場合も、実況・アナウンスや背ネームは元の名字のままのためおかしなことになる。
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オリジナルチームを作成できない。これはプロスピ過去作ではできたことなので、なぜ未収録となってしまったのか理解に苦しむ。さらには12球団のアレンジチームも1パターンしか保存できない。
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起用方法の設定があまりにも少ない。投手ではロングリリーフ要員、野手では緊急要員(通常時休養)といった設定がパワプロには存在するが、本作にはない。投手に至っては勝利の方程式の設定すら存在しない。
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監督やコーチを変更できない。「ペナントレース」では一部対応しているが、通常プレイでは変更不可。
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2020年版にスペシャルユニフォームがない
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2019年版にはあるにもかかわらず、である。新ユニは無理にしても、最低限前年データのユニフォームを引き継いで遊べれば良いのだが、選べるのはホーム/ビジターの2着のみ。
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これは『パワプロ』でも同じなのだが、いまいち理由が想定しづらいうえに変更すらできなくなってしまうのは問題点である。
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また『パワプロ』と違い、そもそもスペシャルユニフォームが各チーム1種類ずつしかない。
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フィールドプレイの練習ができない
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通常と塁の選択が裏表になるうえ次々にカメラアングルが変わるので慣れが必要だが、「トレーニング」「プロスピ入門」ともに対象になっておらず、練習できない。
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特に「甲子園スピリッツ」ではフィールドプレイは必須スキルなので、過去作で慣れていないとはじめは困惑しがち。
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覚醒の廃止(2020年版まで)
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選手能力を通常査定よりアップできる「覚醒」が2020年版まで基本的に使用できなかった。プロスピ独自の要素のため発売時の不満が大きかった。
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アレンジチームが各チーム一つしか作れない
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コンセプト上オリジナルチームが作れないのは仕方ないにせよ、メンバー設定が各球団一つしか保存できないのはさすがに少なすぎる。登録名から応援歌まで細かく設定できるだけに、この点は非常にもどかしい。
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光の当て方が若干不自然
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特に肌色の表現が明るすぎるので、眉毛が薄く見えてしまうという地味につらい問題点がある。
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また、特にホームユニフォームでは縫い目や布地の質感が見づらくなっている。
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『2021』ではこの点は改善。
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「甲子園スピリッツ」が若干難しい
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ハリキリLv.を狙った練習で上げられるかどうかは運であり、考えなしにプレイしても能力値300台が関の山。1年チャレンジにすれば多少融通はきくようになるが、すごく強い選手はよほど運が良いのでなければ作れない。
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また、外国人枠の選手は作れなくなっている。
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『2021』ではカードチャレンジが復活し、少なからず強い選手が作りやすくなったのでこの点は解消されている。また、外国人枠の選手も作れるようになっている。
総評
しばらく休止していたCS版『プロスピ』の復活作ということもあって、その出来は圧巻の一言。
最高レベルのグラフィックと過去作譲りの遊びやすいシステムで、『パワプロ』と並ぶコナミの看板野球ゲームとしての矜持を保っている。
新規に追加された「甲子園スピリッツ」も、高校野球を用具面まで再現して育成だけでなく単独のゲームモードとしても楽しめるもの。
ただし発売当初の版では覚醒ができないなど、必ずしも全ての人気要素が引き継がれたわけではなかった。
2020年データ版で復活したものもあるが、一部は『2021』まで再来を待つことになる。
余談
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本作からパッケージ・タイトル画面の選手画像の一部は『A』と共通となっている。
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例えば吉田正尚の画像は『A』における2018 Series2のものと同じである。
eBASEBALLプロ野球スピリッツ2021 グランドスラム
【いーべーすぼーるぷろやきゅうすぴりっつにせんにじゅういち ぐらんどすらむ】
ジャンル
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プロ野球・育成
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対応機種
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Nintendo Switch
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発売・開発元
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コナミデジタルエンタテインメント
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発売日
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2021年7月8日
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定価
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7,678円
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プレイ人数
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1〜4人
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セーブデータ
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1個
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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良作
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ポイント
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実はモデリングが向上している カード育成復活
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概要(2021)
『プロスピ』の2021・2022シーズン版。
『パワプロ2020』ではPS4とSwitchのマルチ発売となったことから本作でも同様の展開が期待されたが、発売はSwitch版のみとなった。
また、同作にならって本作でも「eBASEBALL」がタイトルに冠されている。
ゲームモードは前作とほとんど変わらないため、追加・変更された点について主に記述する。
追加モード
「ドリームリーグ」「オンライン対戦」「アンケート」が削除された代わりに、以下の3モードが追加された。
チャンピオンシップ
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「オンライン対戦」の後継モード。フリー対戦の他に公式大会が実装され、ランクマッチの順位によって報酬がもらえるようになった。
東京2020オリンピック
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2021年に開催された東京オリンピックが遊べるモード。
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オリンピックの試合形式のもと1位を目指す「大会」のほか、代表同士を戦わせる「エキシビション」と、各国代表の選出者を変えられる「チーム編成」に加え、試合中に課題を達成することで報酬がもらえる「ミッション」の4モードがある。
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日本代表以外でプレイすることもできるが、NPB所属選手以外は原則として実名ではない。
グランプリ
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「ドリームリーグ」の後継モード。基本的なプレイ内容は同じだが、世界各地で大会(グランプリ)が開催され、その中でさらにカップに挑戦できるというプレーオフに近いルールが採用されている。
評価点(2021)
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モデリングが良くなった
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Switchでの発売ということで画質こそ落ちているものの、目鼻立ちの陰影のつき方が前作よりもリアルになっている。
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特に選手データ画面の顔グラはCG感が強かったところ、本作では改善されており似ている選手は本当に写真のようである。
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4人までの対戦に対応
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Joy-Conによるおすそわけプレイに対応しており、ポジションを分担して最大4人で対戦できるようになった。
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特に投手と捕手を別のプレイヤーに割り振ると、さながら本当にリードしているかのようである。
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スピリッツにカードチャレンジが復活
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『2015』で好評だった、ポーカーとハイ&ローを組み合わせた育成。チャレンジ自体面白いのだが、これが復活したことにより強い選手が手軽に作れるようになり、ある程度狙った特殊能力をつけやすくなっている。
問題点(2021)
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「福島あづま球場」がオリンピックモードでしか使えない
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『パワプロ2020』『パワプロ2022』では普通の対戦でも使えるので、本作で使えないことに納得できそうな理由がない。
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前作同様、2021年版にはスペシャルユニフォームがあるのに2022年版にはない
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「権利取得が面倒になったのでは?」と言われた中、2021年版には収録されたので大いに喜ばれたのだが、2022年版では再び無くなってしまった。
総評(2021)
メニュー画面のUIからして前作からの変わり映えが少ない作品ではあるが、内容そのものは順当に進化しており、グラフィック面で向上した部分も見られるのは賞賛に値する。
惜しむらくはSwitchでしか発売されなかったことであろう。おすそわけプレイに対応したのは大きいが、今後の展開がどのようになるのかが読めない商品展開となった。
最終更新:2024年02月01日 12:05