Deus Ex: Invisible War
【でうす えくす いんびしぶる うぉー】
ジャンル
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FPS
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対応機種
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Windows 2000/XP Xbox
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発売元
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Eidos Interactive スクウェア・エニックス(Steam)
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開発元
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Ion Storm
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発売日
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2003年12月2日(北米) 2004年3月5日(欧州) 2004年6月17日(Xb日本語版)
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レーティング
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CERO:Z(18才以上のみ対象)
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備考
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Win版を日本語で遊ぶことは不可
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判定
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シリーズファンから不評
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ポイント
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『Deus Ex』シリーズ第2作 戦略主体から会話主体に変化 CS機を意識した過度な省略が不評
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Deus Exシリーズ
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概要
2000年に発売され高い評価を得た『Deus Ex』の続編として、3年後の2003年に発売した一人称視点のイマーシブシム作品。
開発は前作と同じくIon Storm、販売も親会社であるEidos Interactive。
開発初期は「Deus Ex 2」とも呼ばれていたが、最終的にサブタイトルのみで発売されている。
エンジンはUnreal Engine 2を使用している。
ストーリー
元UNATCOのエージェントであるJ・C・デントンによってエリア51が破壊され、MJ12による世界支配が終焉を迎えてから20年後。
MJ12の崩壊は人々に自由と技術をもたらしたが、それは同時にインフラの崩壊、それに続く混乱と停滞をも呼び込むこととなった。
世界の各地では治安・インフラ回復と経済活動の再開を試みる「WTO」と、統一宗教による秩序の再構築を試みる「オーダー」に加え、バイオテクノロジーの根絶を唱える「テンプル騎士団」に、バイオテクノロジーによる進化を求める「OMAR」の4勢力が主導権を求めて互いに攻撃しあっていた。
世界共通の次世代教育機関「タルサス・アカデミー」シアトル校生徒であった孤児のアレックス・Dは、シカゴで突如発生した無差別ナノテクノロジーテロによって故郷、そして里親の両方を失ってしまう。
寮で悲しみに暮れるアレックス。しかしシアトル校も謎のテロリストグループによる襲撃を受け、生徒たちは学校からの脱出を余儀なくされる。
命からがら逃げ出したアレックスらアカデミー生徒たちだったが、その先で組織争いに巻き込まれてしまう。組織の助力を得てテロ事件を追っていくうちに、アレックスは世界を操るある組織の存在、そして自身の正体に気付いていく。
ゲームシステム
操作方法
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基本的な操作は前作と同一。マウスで視点を操作し、左クリックで発砲・使用。右クリックでオブジェクトの取得・携行・作動。spaceでジャンプ、Cキーでしゃがむ。
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新たに『Thief』からジャンプ時に長押しで「段差を掴んで登る」動作が輸入され、これを駆使することで高い位置にある段差やダクトへも進入可能になった。
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ファンクションキーはオーグメント発動のみに割り当てられ、Vでインベントリ、Bでバイオ・オーグメント、Nで目標確認となっている。取得済みオーグメントは画面右、装備済みアイテムは画面左にそれぞれ表示される。
武器
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武器リロードと弾薬種類の概念がなくなり、ピストル、火炎放射器、サブマシンガン、ライフルといった全ての武器で同じエネルギーを使用するシステムに変更。
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これにより武器弾薬の希少性による差別化が損なわれ火炎放射器の大型武器であっても手軽に使えるようになったが、威力は大幅に下方修正され使い物にならなくなった。
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また、エネルギーで説明の付かないロケットランチャー系装備はリストラされている。
ゲーム進行
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前作同様に町の各所にいるNPCの依頼をこなし、拠点となる都市を探索していく方式。各都市はステージ式に近い扱いとなっており、都市間を自由に移動することはできない。
登場勢力
WTO
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事業の一環として、世界中のインフラ回復と経済活動の再開を試みる国連組織。統治能力を失った一部国家では警察機構も兼ねるなど、非常に強い権限を持っている。
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治安維持活動の一環としてオーダーやテンプル騎士団などの秘密結社の動向を追っており、彼らと抗争に発展することも多い。
オーダー
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全世界の宗教を統合した次世代宗教として、世界崩壊後の混乱に乗じて勢力を強めたカルト教団。宗教的統一による秩序の回復を目的としており、既存の組織であるWTOとは敵対している。
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行く先々の都市で教会を構えており、その勢力は強大。信徒の多くは顔や体を覆い隠すローブを着用している。
テンプル騎士団
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崩壊と同時に流出したMJ12のバイオテクノロジー・サイボーグ技術を禁忌として拒絶し、根絶を目指す組織。前作で崩壊してしまったが、20年の時を経て再び秘密結社としての活動を再開するようになった。
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肉体への直接的な改造技術の根絶を掲げており、ボットやパワードスーツ、武器といった肉体に接続しない各種装備で武装している。その目的からOMARとは対立しており、幾度となく襲撃を企てている。
OMAR
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崩壊と同時に流出したMJ12のバイオテクノロジー・サイボーグ技術を積極的に吸収し、民間組織でありながら前作では一部政府関係者にしか扱えなかったバイオ・オーグメントを使用・製造・販売する組織。
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メンバーの多くは頭から足まで全身にサイボーグ改造を施しており、外見には元となる人間の面影はない。一見するとまるでエイリアン。
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主に違法バイオ・オーグメントや武器強化用パーツを販売する、RPGにおける商人的立ち位置でもある。その目的からテンプル騎士団に敵視されており、幾度となく襲撃を受けている。
評価点
自由度の高いゲームプレイ
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前作同様に問題の解決には複数の手段を行使することが可能なつくりとなっており、自由度は高め。
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例えばあるクラブのVIPメンバー限定室に入ろうとする場合、オーナーと交渉して暗殺の仕事を請け負い、その見返りとしてVIPメンバー権を手に入れることもできれば、セキュリティルームに忍び込んだりダクトを伝っていったりして不法侵入することも可能。
暗殺対象の男と逆に交渉し、寝返ってオーナーを襲撃することすらも可能という高い自由度を誇る。
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ストーリーに関係する主要4勢力以外にも、困っている一般人を助けたり、互いに利権を求めて争うコーヒーチェーン同士の裏工作を代行するなどサイドクエストも豊富。
嗜好品カテゴリの統一
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前作まではアイテム欄を圧迫しがちだった体力回復系の嗜好品カテゴリが統一。ジュースやチップスといった異なるアイテムであってもボタン連打で即座に使用することが可能になった。
変化するプロット
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依頼の達成の仕方にバリエーションがあった前作とは異なり、本作は依頼自体が複数発生する方式に変化。
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異なる勢力からさまざまな任務を依頼されるようになり、前作よりも1プレイで変化するプロットの幅が増えた。
拳銃・狙撃銃が妥当な威力に
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スキルシステムの廃止やアタッチメント装着数制限に伴い、強化次第でそれ一丁でどうにかなってしまった拳銃、狙撃銃の扱いが妥当な範囲に収まるようになった。
プレイヤーの機動力向上
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新たに、胸の位置程度の段差であれば自動で捕まって登ってくれるように。これによって若干ながら機動力が向上し、もっさり感が軽減された。
新オーグメントの登場
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新たに、敵の運用するボットをハッキングできるオーグメントが登場。接近・接続して乗っ取ることで、遠距離からでもノーリスクでボットに搭載された武器を利用し敵を殲滅できるようになった。
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一応前作でも味方を攻撃するようにプログラムを書き換えたり、無差別に攻撃するよう仕向けるグレネードなどは登場していたが、直接操作できるようになったことで巡回ルートを外れた遠くへの偵察や攻撃も可能となっている。
現在位置の見られる地図が登場
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前作ではおおまかな構造のみの地図画像しか渡されなかったため、カタコンベなど一部マップの難易度が非常に高かったが、本作では現在位置を含めた位置関係を常に把握できるようになった。
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簡略化されたとはいえ依然複雑な部類のため、探索はマップが必須。
賛否両論点
インベントリ管理の簡略化
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各種メニューは簡略化され、初心者にもとっつきやすくなった。しかしプレイヤーの育成やアイテム管理の自由度はかなり減少したため、前作ファンからは不評を買った。
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特に武器関連は大幅に簡略化されており、「弾薬は希少でインベントリも圧迫するが威力は強い」という大型武器のシステム的な差別化が撤廃。複数の大型武器がリストラされた上に残った武器もサブマシンガンに威力で負けるほどの産廃と化しており、大型武器縛りの面白みはほぼ無くなった。
二者択一の選択肢
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シナリオの都合上どの勢力の依頼も両立できるということはなく、必ずある組織から受けた依頼のために敵対する組織に危害を加えなければならなくなる。
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二者択一の選択肢はどの勢力にも思い入れのない序盤から顕著であり、予め味方する勢力を決めていない限り唐突な依頼内容に戸惑うことになる。
おつかい感の強さ
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各勢力からの依頼を受ける方式となったことで自ら探索する要素が減り、前作よりもさらにおつかいゲー感が増してしまっている。
バッドエンド気味な一部エンディング
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ヘリオスエンディングやイルミナティエンディングはともかく、テンプル騎士団エンディングとOMARエンディングはバッドエンド気味。メインストーリーの流れからして推奨されていないのは明らかだが、4勢力が選べることを考えると不平等感は否めない。
問題点
使用する弾薬がすべて共通に
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本作ではどの武器も使用する弾薬が共通のエネルギーパックとなっており、拳銃だろうが散弾銃だろうが狙撃銃だろうがサブマシンガンだろうが火炎放射器だろうが全て使用する弾丸を共有している仕様。
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拳銃とサブマシンガンならともかく火炎放射器などはどう考えても無理のある設定となっており、「アサルトライフルの弾が尽きたのでショットガンを使う」といった戦略上の面白みや専用弾の希少性による大型武器の差別化といったFPS的な良さは無くなっている。
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複数の実弾武器もリストラの憂き目に逢っており、前作には豊富だった特殊武器収集の面白みも薄れている。
非殺傷武器の抹消
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上述の仕様変更の結果、麻酔クロスボウやカートリッジ式スタンロッドなどの非殺傷武器は軒並みリストラ。敵対NPCは問答無用で殺害しなければならなくなっており、非殺傷プレイは不可能。
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もともとシナリオの時点で想定はされていない上、警察的なポジションだった前作主人公とは立場も異なるのだが、戦略方面の自由度は低下してしまっている。
スキル廃止・オーグメントの大幅減少
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各種スキルが完全に廃止され、一部要素がオーグメント(特殊能力)に統合、そしてオーグメント自体のスロット数や育成可能レベルも減少してしまい、大幅に自由度が減少した。
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前作の時点でただでさえ少なかったオーグメント用スロットだが、ほぼ必須レベルのハッキングスキルなどもハッキング用オーグメントとして枠を占拠してしまう形に。
装備可能スロット数がたった5つなのに対して合計オーグメント数は15個もあるという不釣り合いなバランスとなっており、前作以上に必須オーグメントがガチガチに固定されるようになってしまい周回の面白みが減っている。
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また、探索することでスキルポイントを入手できたロケーションボーナスが廃止され、呼吸スキルを使うことで進めた水中ロケーションも軒並み廃止、スロット数とレベル上限が低くなったせいで最序盤で成長が頭打ちになるなど、成長システムに付随していた探索・アイテム収集の楽しさも減少してしまっている。
物理演算のガバとアイテム取得方法の変更
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この時期のFPSの例に漏れず、物理演算はそこそこカオス。ちょっと蹴るだけですっ飛んでいく銃や、物陰に転がって見えなくなる弾薬パックなどおかしな挙動が多い。
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死体もインベントリからアイテムを略奪できるのではなくラグドールとなって転がったアイテムの上に覆い被さるようになり、敵の落としたアイテムを拾うにはいちいち死体を担いで他所に放り投げなければならなくなった。
会話ログの廃止
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非常に膨大なテキスト量をこなさなければならないにもかかわらず、会話テキストは完全オート。聞き逃してもテキストボックスを読む暇は与えられず、会話ログも残らない。
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会話主体のRPGとしては致命的な点。ただでさえ日本語版が存在しない本作だが、この問題点のせいでとっつきにくさがさらに上昇している。
狭いマップと頻繁なロード
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家庭用機での発売を最初から想定した構成となった弊害として、1つ1つのマップが非常に狭くなった。
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前作までの広くて複雑なマップは無くなり、いくつものドアで区切られた非常にややこしいだけのマップ構成へと変化。前作では豊富だった攻略上不必要な路地なども省略されてしまい、探索の面白みが薄れてしまった。
不親切なインターフェース
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装備メニューや画面上の情報などの利便性は全体的に前作から劣化しており、武器を装備していないと残り弾薬を確かめられなかったり、オーグメントと対応したファンクションキーがどれか画面に表示されなかったりと全体的に不親切。
間抜けなAI
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もともとFPSとしての要素はおまけ程度ではあるが、敵も味方もかなり頭が悪い。棒立ちで武器を撃つだけの『DOOM』並みの知能しかない敵が多く、戦っていてあまり面白みがない。
総評
コンシューマ展開を見据えた各種要素の統合・省略により前作の評価点であった部分の多くが消え、銃撃戦FPSとしては駄作・ルート選択型ADVとしては凡作という微妙な出来となった作品。
家庭用コントローラーで可能なレベルまで単純化されたことによるわかりやすさを評価する声も上がる一方で、前作の評価点である戦略・育成の自由度や情報量が大幅に損なわれたことに対する不満の声も多く挙がった。
単独のゲームとして見た場合はさほど致命的な欠点は存在せず、物事のさまざまな解決方法を許容するという根本的な『Deus Ex』らしさは維持できていると言える。
しかし、それらの前作から変わり過ぎたゲームデザインはファンの多くから問題視され、現在も前作を是とするシリーズファンの多くからは良い評価を得られていない。
余談
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前作のセールス不振が原因となり、本作は日本ではXb版しか発売されることはなかった。
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その後、2005年2月にデベロッパーのIon Stormは親会社(Eidos)の経営難の影響でスタジオが閉鎖された。
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シリーズ展開も一旦途絶え、アイドス日本支社も2005年を以って撤退しており、これらの経緯もあってか本作のWin版には日本語で遊ぶ手段が存在しない。
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本作の不評を受けてEidosは開発チームをion Stormから『トゥームレイダー』のCrystal Dynamicsに変更し、『Deus Ex』シリーズと世界観を共有する新作FPSが開発された。
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しかし最終的には一部のシステムのみが継承されたオリジナル作品『Project: Snowblind』(PS2/Xb/Win)として発売されることとなり、以降スクウェア・エニックスによるEidos interactiveの買収までシリーズ新作が作られることはなかった。
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なお、作品の完成度や元スピンオフという立ち位置もあってかこちらは比較されることもなく高評価を得た。
最終更新:2022年01月25日 21:45