Grand Theft Auto 2
【ぐらんど せふと おーと つー】
ジャンル
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クライムアクション
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対応機種
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Windows 95/98 プレイステーション ドリームキャスト ゲームボーイカラー(専用)
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発売元
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Take-Two Interactive Rockstar Games ズー(日本国内)
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開発元
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Rockstar North(DMA design) Rockstar Lincoln(Tarantula Studios)
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発売日
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【Win】1999年10月27日 【PS】1999年10月22日 【DC】2000年5月2日 【GBC】2000年12月25日 【Win日本語版】2000年2月25日
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判定
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良作
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ポイント
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2Dクライムアクション第2作 ギャング抗争要素が登場 シリーズ異色のSF設定 「ホットドッグ殺人!」
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Grand Theft Autoシリーズ
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And remember...RESPECT IS EVERYTHING.
概要
1997年にMS-DOSおよびWindowsで発売されたクライムアクションゲーム『Grand Theft Auto』の続編。
前作同様にトップダウン視点を採用しており、人間や車を2Dスプライトで、建物を3Dポリゴンで描写する折衷仕様となっている。
主にエンジン面が強化され、破綻の無いスムーズなカメラアングル変更、美しい照明、滑らかなスプライト処理といったさまざまな部分が強化されている。
また、各派閥同士が相互に作用するギャング抗争要素も実装。よりクライムアクションらしい内容へと進化を遂げている。
ストーリー
近未来のアメリカ東海岸、エニウェアシティ。
旧時代の建物と新時代の車が混在するこの街では、国籍も形態も思想も異なる多種多様なギャングが縄張りを形成し、支配者の座を巡って日々抗争を続けていた。
麻薬常習者で喫煙者のクロード・スピードは、そんなエニウェアシティで成り上がりを目論む凶悪犯の一人。
彼は危険な依頼をこなし、各組織が複雑に対立するエニウェアシティを混沌に陥れていく。
ゲームシステム
ゲーム進行
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架空の未来都市「エニウェア(どこでも)シティ」を舞台に、どの派閥にも属していない一人の男「クロード・スピード」となり、公衆電話を通じて各勢力から言い渡される依頼をこなしていくクライムアクションゲーム。
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前作同様にステージクリア式となっており、マップはそれぞれステージ1「ダウンタウン地域」ステージ2「住宅地域」ステージ3「工業地域」の3地域。依頼をこなしてクリアに必要な資金を集め、特定施設に向かうことで次の地域に向かう。
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後のシリーズのように地域が相互に繋がっているわけではなく、各派閥のリスペクトパラメータもステージごとに独立している。このため、完全なオープンワールドというわけではない。
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依頼は各勢力のテリトリーに配置された公衆電話からかかってくるようになっており、緑が簡単、黄色が普通、赤色が難しい、と色ごとに受けられるミッション難易度が異なる。難易度の高い依頼ほどリスペクト値が必要になるが、達成時の報酬は大きい。
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信頼度とは別に依頼をこなす事で知名度に相当する「ボーナスレート」が上昇していき、次の依頼達成時にボーナスがつく。ただし警察に捕まるとボーナスレートは0になってしまう。
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最終ステージとなる工業地域では目標金額が非常に高く、ボーナスレートを維持していかないとなかなか届かない。ただし後述の特殊ミッションにより、全勢力の依頼を達成さえすれば目標金額が入手できるため時間をかけて全依頼をこなせばクリアは可能。
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後の作品にも存在する手配度だが本作にはステージごとに上限が設定されており、ステージ1の商業地区では4、ステージ2の住宅地区では5、ステージ3の工業地区では最大の6となる。
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4までは警察が担当するが、5でFBIが出動、6では陸軍が出動する。
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力尽きると「ウェイステェェ-ド!」とフルボイスで煽られた後に近隣の病院から開始し、逮捕されるとこちらも「バステッド!」とフルボイスで煽られた後に警察からではなく死亡地点付近にまでパトカーで運ばれた上に走行中のパトカーから蹴り落とされる。
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後のメインシリーズと異なり犯罪がスコアとして記録されるシステムを採用しており、歩行者を轢いたり車に追突したり、人を射殺したりといった犯罪行為を犯すごとにそれに応じて所持金が増加する。武器は後のシリーズ同様に拾うか、武器を持っている敵を倒すとドロップする仕様。
操作方法
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徒歩の場合アローキーで前後・旋回を行い、Spaceでジャンプ、左Ctrlで攻撃し、Enterで自動車乗り込み、Z/Xキーで武器の選択を行う。『Advance』のような入力方向移動は不可。
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自動車の場合Spaceがブレーキ、tabがクラクション、左altキーが特殊操作(改造時)となる。加速するほど画面が広域表示される。
武器
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4種類だった前作から進化し、「ピストル」「マシンガン」「ロケットランチャー」「エレクトロガン」「火炎瓶」「手榴弾」「ショットガン」「火炎放射器」「サイレンサー付きマシンガン」「二挺拳銃」の計10種類が登場。
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SFの世界観に合わせた架空銃となっており、技術力向上によりロケットランチャーや火炎放射器の演出もより美しくなった。
自動車改造
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各地に存在する横に長い「ショップ」では、進入する入り口に応じて自動車にさまざまな改造を施すことが可能。「自動車爆弾」「スリップオイル」「塗り替え」「地雷」「車載マシンガン」の合計5種類の改造を施すことが出来る。
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後の作品にもミッション中に爆弾付き自動車が登場したり、車からの銃撃が可能になったりといった機能は登場したが、乗っている自動車に任意で直接武装を施せるのは本作のみ。
ギャング
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各ステージごとに3勢力、全ステージ通して7勢力が登場。依頼の達成や敵対ギャングへの襲撃を繰り返して彼らの忠誠度を稼ぎつつ、資金を稼いでいく。
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反対に依頼の失敗や自勢力への襲撃はリスペクトが下がり、リスペクトがマイナスになると敵からの襲撃を受ける。難易度の高いミッションはその勢力の忠誠度が高くなければ受けられないが、一方の勢力の忠誠度を高める過程で敵対するもう一方の勢力の忠誠度が低くなり襲撃を受けるため難易度が上昇する。
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それぞれの派閥にはほかの2勢力に対してそれぞれ敵対・中立しており、敵対関係は相互に憎み合うのではなく三竦みのような状態となっている。組織事情はテリトリー内の青い電話で確認が可能。
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派閥に正式に所属することはなく、忠誠度を意図的に操作してそれぞれのミッションを受けていくことが可能。ただし、ステージ内の全勢力の依頼をクリアすると危険人物としてマークされ、3勢力全てからの襲撃を同時に受ける。
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さらにそれぞれの勢力のボスが車に乗って、強力な武器を手にしてプレーヤーを殺しにやってくる。ステージクリアに必要な資金が足りない場合であっても、これをクリアすることで上限に到達可能。
クラッシュボーナス
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スクラップ場に車を持っていくと、車種に応じてアイテムを入手可能。レアな車になると、入手出来るアイテムも良くなる(全派閥忠誠度+1など)。
マルチプレイ
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前作同様にマルチプレイを搭載。オンラインで複数人で暴れまわることが出来る。
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ただし接続のサポートは荒削りであり、様々なプログラムがファンによって開発されることとなった。
評価点
相変わらず高い自由度
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前作同様に人殺しから爆破テロまで、プレイヤーが行える行動の自由度は高め。
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街中で銃を乱射、道路を逆走、歩道に突っ込んで死傷者を出し、小型車を奪って裏路地に逃げ込むなど、システム的な制約に縛られずさまざまな行動が可能。
カメラワークの改善
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徒歩や車、スピード上昇時などにカメラの高度が変化するようになっているのだが、頻繁に動きガクガクだった前作と比較してかなり滑らかになった。
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ドライブやカーチェイスがより快適となり、ゲームプレイ中のストレスが軽減した。
グラフィックの改善
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エンジンが一新され、より高低差が立体的に描かれるようになった。またスプライトの旋回も滑らかとなり、違和感が減少。
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火炎放射器などはかなり美しくなっており、表現力の向上が垣間見れる。
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爆発などに巻き込まれると、上に吹き飛ばされ(キャラが上昇・拡大し)そのまま落下(下降・縮小)→地面に叩き付けられ死、と言った演出も。
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ちなみに火炎放射器やエレクトロガン、あるいは線路を渡って感電で死ぬと骨になる。
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また、コンフィグで街を夜の状態にする事も出来、炎や爆発がより映えると言った点も評価ポイント。
システム的に強化されたギャング抗争
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後のシリーズにも採用されていない本作独自の要素として、どの派閥にも属さず自由に依頼を選ぶシステムが採用されている。ギャング感は出ており、雰囲気は良い。
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自発的に所属勢力を選べるなど、達成順序の自由度は飛躍的に高まった。
豊富なチート
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シリーズおなじみのチートは健在。全武器取得や無敵、所持金カンスト、ゴア解禁から暴動チート、最初から全勢力の忠誠度マックスなど多種多様なチートを揃えている。
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マジメにミッションをクリアしていくのに飽きたら、これらを駆使して街中で暴れ回るのも可。特に本作で初登場した市民が攻撃的になる暴動チートは、後のシリーズの多くに受け継がれることになった。
賛否両論点
「ホットドッグ殺人!」
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前作同様にクライムアクションゲームであり、さらに荒廃した未来都市という設定も追加。その結果、倫理観の破綻した演出が多く含まれるシリーズ内でも特に異色のテイストが特徴となっている。
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特によく語られるのが、工業地域ステージでロシア人マフィアから依頼される初級ミッション「HOT DOG HOMICIDE!(ホットドッグ殺人!)」。バスを乗っ取って乗客を集め、乗客をミンチに加工してホットドッグとして出荷するという正気を疑うような内容となっている。
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直接的なゴア演出こそないものの、全裸にされた乗客が泣き叫びながら搬入されていき、抵抗した者は容赦なく射殺されていくという凄まじい情景を加工工場の上から眺めることになる。なお、なぜ人肉で作ろうと思ったのかが語られることはない。
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なおミッションの後に加工工場に向かうと、用は済んだはずなのに中から悲鳴が聞こえ続けると言う不気味な事に。殺された者達の怨念なのだろうか…
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「敵対する派閥の構成員を50人轢き殺せ」など、そのほかのミッション内容も相変わらずカオス。規制を受けがちな後の作品と比較すると死傷者のケタ数がかなり異なる。
簡素なエンディング
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脱出に必要な金を貯めてマップ上の特定施設へ入るとリザルト画面へ突入、スコア表示と犯罪記録が表示され、「Nice Try!」と表示されて最初のメニュー画面に戻される。エンドクレジットは毎回ゲーム終了時に再生される仕様。
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もっとも、当時のPCゲームではこのような簡素なエンディングはさほど珍しいわけではない。
問題点
おつかいゲーの印象の強さ
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前作同様に公衆電話から指示を受け、街中をたらいまわしにされて組織の犯罪行為に加担するというのが大まかな流れとなっている。
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自発的に起こせる犯罪行為が少なすぎるため基本的に彼らの依頼に頼るしかなく、使い走り感は前作同様に強い。
洗練されていない操作性
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マウスエイムによる銃撃が利用不可、徒歩状態でも車と同じラジコン操作など、マウスの使える他のトップダウンシューターや入力方向移動が可能な後の『Advance』と比較しても操作性の古さは否めない。
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続編の『III』では三人称視点の3Dゲームに変更されると同時に操作性も大幅に改善され、直感的な操作が可能となった。
最終的な自由度が高いわけではない
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派閥は増えたが、マルチエンディングや特殊イベント、所属ギャングごとに異なる特典が起こるわけではない。最終的に目標スコアを溜めて目標地点に到達し、ステージをクリアするだけ。
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1つの派閥に全力で取り組むも良し、派閥を移動しつつ低難易度からこなしていくも良しと序盤のプレイスタイルの変化には貢献しているが、最終的にはどの派閥を選ぼうが目立った変化はない。
洋ゲーらしいシビアな難易度
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後半の難易度の高いミッションともなると、クリアも一苦労。特に火炎放射器を持った敵が厄介で、少しでも焼かれた時点でアウト。やられる前にやるしかない。
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後のシリーズ恒例ともなる、手配度マックスから脱出する物もあるが、軍隊が出動した時の街中はまさに地獄。飛び交うマシンガンや道を塞ぐ戦車の砲撃は強烈で、切り抜けるのは至難の業。
ミッションやり直しのハードルが高い
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ミッションの失敗がリスペクト減少に直結する仕様上、リスペクト0の状態でミッションを失敗した場合、テリトリーへ再挑戦しに行くと敵と見做されてメンバーに蜂の巣にされる。特に慣れない序盤で顕著。
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好感度を稼ぎたいギャングと敵対するギャングのテリトリーに向かいうろついている構成員を殺害することでリスペクトは回復できるが、面倒臭さは否めない。
構成員と一般人の区別がつきにくい
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見下ろし視点のため一般人は肩と頭でしか表示されないため、視認性が悪い。注意しないと間違って轢くなどのミスを起こしがち。
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構成員の自動車はマークが書かれるなど特徴的なため、こちらはひと目で見分けが付く。
セーブのハードルが高い
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セーブは各地のけばけばしいネオンで「Jesus save(神の救い)」と書かれた教会に向かうことで行えるが、セーフするごとに寄付として$50,000を取られるため資金繰りの厳しい序盤では迂闊に利用できない。
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2~3回ほどのミッションクリアでセーブ可能にはなるが、ミッションに失敗し続けていると金も武器も貯まらないため、慣れないと軌道に乗るまでが厳しい。
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寄付金が足りないまま教会に侵入するとフルボイスで神父に罵倒される。エニウェアシティの腐敗をよく表現しているとも言えるが...
マップがない
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『GTA III』や『アドバンス』とも異なりミニマップすらも存在しないため、手元にマップを用意しない限りプレイヤーは周りに表示される最短距離の矢印のみを頼りに勘で道路を進まなければならない。
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店舗名などが見難い見下ろし視点のため、後のシリーズ作品のように特定のランドマークを目印にして地形を暗記するのも難しい。
薄いストーリー
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ただギャングの仕事を請け負ってステージクリアまでの金を集めるだけであり、ドラマチックな展開や一環した目的といったものは存在しない。
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ロールプレイに縛られず街中で好き勝手暴れているだけであれば別に問題は無いものの、後の作品のような個性的なキャラクターたちが織り成す複雑なストーリーと比較するとかなり殺風景。
近接武器がない
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後の作品ではバットやメリケンサック、カタナ、チェーンソーなど弾薬が枯渇してもそれなりに使える近接武器を所持できるが、本作にはそれらが登場しないため銃が手元に無いと極端に不利な状況に陥る。
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素手でも攻撃は可能だが敵を昏倒させることしかできない。武器の獲得機会自体は少なくはないものの、武器取得可能箇所を覚えられていない序盤はかなり不便となる。
総評
薄汚れた近未来都市という舞台設定、派閥と変動する忠誠度システム、魔改造される自動車、倫理観無視の際どいミッション内容など、後のシリーズとは異なる独特な要素が特徴の作品。
美しく快適になったグラフィックや複数の派閥を渡り歩くギャング感溢れるゲームプレイ、相変わらず過激で自由な犯罪行為など、前作の正当進化と呼べる内容となっている。
しかし、本編の基本的なゲーム進行やストーリー、操作、厄介なシステム面は前作から改良が加えられておらず、また3Dグラフィックが普及し始めた1999年というのもありその内容には発展の余地も多かった。
本作で改善できなかった様々な要素は、2年後の続編『Grand Theft Auto III』で徹底的に改善が図られることとなる。
余談
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本編自体は自動車がゴツいニューヨーク、といった赴きではあるが、コンセプトアートの時点ではかなりそのまんま「ブレードランナー」的未来都市となっていた。
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当時の本シリーズにおいてSFが異色だったかというとそうでもなく、前作と本作の間にも舞台が60年代のロンドンとなるなど模索が続けられていた。
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結局、『III』以降はアメリカ本土の現代都市のみとなり、以降現代都市シミュレーターとしての側面を強くしていくこととなる。
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『GTA III』の主人公は当時無名だったが、『SA』にて本作の主人公を元ネタにクロードという名前が名付けられた。
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なお、2Dユニバースと3Dユニバースでは世界観設定が異なるため、この二人は完全に別人。
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舞台設定は明言されていないが、本編内の描写などから2013年と推測されている。
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HDユニバース側ではあるが、『Grand Theft Auto V』も同様の2013年。さらに、同作付属の『Online』が2014年以降と、現代設定ながら本作の年代を追い越すことに。
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ただし、「エニウェアシティ」は本作以降、シリーズに一度も登場していない。
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本作と同年同月の1999年10月11日には、既に『III』同様のフル3Dのオープンワールドを実現した『Driver 潜入!カーチェイス大作戦』がWinで発売されていた。こちらも本作同様に自動車運転とクライムアクションに焦点を当てていたため、2Dのままだった本作の技術的な古さを示す際の比較対象として挙げられることが多かった。
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『III』のヒット以降は反対に『GTA』シリーズがオープンワールドクライムアクションの代表作として評価されるようになり、『Driver』シリーズは迷走。その後、開発元のReflections InteractiveがUBIsoftの傘下に入り、親会社の意向もあって『Watch Dogs』へと形を変えることとなった。
最終更新:2024年08月01日 21:21