The 3rd Birthday
【ざ・さーど・ばーすでい】
ジャンル
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シネマティック・アクションRPG
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対応機種
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プレイステーション・ポータブル
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発売・開発元
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スクウェア・エニックス
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開発協力
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ヘキサドライブ
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発売日
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2010年12月22日
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定価
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パッケージ版:6,090円 ダウンロード版:4,980円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:D(17才以上対象)
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廉価版
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アルティメットヒッツ 2011年12月22日/2,940円
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判定
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なし
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ポイント
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高難度だが独創的な戦闘システム あまりにも説明不足なシナリオ
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Parasite Eve PE1 / PE2 / T3B
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概要
一部で熱狂的なファンを持つ旧スクウェアのRPGシリーズである『Parasite Eve』シリーズ(以下PE)の実に11年ぶりの続編。
権利の関係からか、旧作で重要な意味を持っていたミトコンドリアなどの設定はぼかされる形でハッキリと描写されることはなく、本作独自の設定も多く登場する作品となっている。
11年という歳月をかけた続編ということもあって、ファンの期待はとても高かった。
評価点
戦闘システム
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今作は主人公「アヤ・ブレア」を操作し、四種類の銃器を切り替えながら謎の敵「ツイステッド」を倒していくガンアクションRPGである。
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そのなかで特筆するべきシステムは、戦場に点在する兵士の体に瞬時に意識をとばす「オーバーダイブ」と呼ばれるシステムである。
これは相手の意識をのっとるアヤの特殊能力で、戦場のNPCに対して何度でも行うことができる。オーバーダイブを使用すると、その兵士のいる場所へ瞬時に移動し、その人物をプレイヤー(アヤ)として操作することができる。
体力は兵士ごとに設定されており、HPがつきる前に他の兵士に乗り移る「乗り捨て」なども可能。
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このシステムによって、今作はRPG要素のほかに「リアルタイムストラテジー」に近い部分も持ち合わせており、兵士の体力管理や位置関係などを把握していくこともとても重要となっている。
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兵士とは特定の条件下で一斉射撃など威力の高い特殊攻撃を行ってくれる。
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たとえば「瞬時に兵士を切り替えて位置を移動させて敵を包囲して一斉射撃をする」などといった芸当も可能で、慣れれば戦場の兵士達を管理して敵を倒していく共闘感も味わえる。
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他にも、攻撃していくと「リバレーションゲージ」が溜まり、満タン時に「リバレーション」とよばれる状態に移行できる。このときは回避が自動でおこなわれ、威力の高い「エナジーショット」を連射可能になる。緊急回避といった用途にも使用可能。
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上記の「乗り捨て」が可能であることもあり、難易度「easy」でも高めの難易度であり、兵士を変えなければ一撃で倒される即死技を放ってくる敵もいる。
音楽
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今作は1で作曲を担当した下村陽子氏をメインとし、鈴木光人氏、関戸剛氏を加えた3人が作曲を担当している。
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今作独自の楽曲、特に戦闘曲は美しく、かつプレイヤーのテンションを高める良曲揃いで好評。『1』のアレンジ曲も随所に挿入されるため、前々作をプレイしたファンはにやりとできる部分も多数。
グラフィック
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グラフィックはPSPの作品群の中でもトップクラスに位置する。
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ムービーは美麗で、プレイ中の画質もとても綺麗に表現されている。
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特に『2』でも存在したシャワームービーは実写と見間違うほど美麗かつエロティック。
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シャワームービーは当初入れない予定だったが、ファンからの要望を聞いて急遽作成されたとのこと。
やりこみ要素
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シリーズ恒例のやりこみ要素も健在。クリア後に選択可能になる高難易度「デッドリーモード」「ジェノサイドモード」や、特定の条件を満たすと選択できるようになる「チートコード」集め、武器の極限強化等やれることは多数。
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ジェノサイドモードなどでは、兵士が倒されると補充されるのが遅くなるため、単純に力押しするのは不可能である。そのためより兵士の管理を徹底することが要求される。
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チートコードは、「武器の弾数を無限にする」というプレイヤーを助けるものもあるが、ほとんどは「防御力低下」などの制限プレイ向けである。
問題点
シナリオ
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とにかくすべてにおいて説明不足。後半になるとろくに説明されない造語が突然出てきたりとプレイヤーは置いてきぼりにされる。
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今作はepisode1~6までの6部構成となっているのだが、章の変わり目で描写がすっ飛ばされており、いきなりプレイヤーの拠点や立場も変わり、その間に何があったのかの解説もろくにされない。
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また、こういった用語や説明されない描写などはゲーム内の「データベース」にすべて解説を頼っているため、全てきちんと読まねば話をひとつも理解できないままクリアしてしまう可能性もある。
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一応、データベースを全部読めば今作の内容を大体は理解することができる。ただ、数は膨大で読むのが面倒。かつ設定の矛盾なども散見される。
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「説明不足」「データベース熟読を前提」という点で同社の『FFXIII』と同じ轍を踏んでいる。実際今作のシナリオを執筆したのは『FF13』でディレクター・脚本を勤めた鳥山求氏。
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キャラの人格、技能の問題。今作のAYAは記憶喪失であり、以前の事件による精神面の成長は失われている。
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「オーバーダイブ」は過去作ではなかった、道義的にも危うい行為。非常事態にやむなくというには葛藤がそれほど描かれていない。
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ストーリーの方向性として1でなかったものとして、2や今作ではAYAという人を超えたものに対する迫害が浮かんでくるが、この技能なら迫害されてもやむなしといえる。この技能を迫害側が知っているかはともかくとして。
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前々作に出てきた「前田邦彦」というキャラクターが完全に1作目とは性格が別人になっている。
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1作目では頼りないながらもアヤをサポートするキャラクターだったのだが、今作では平田広明氏の怪演も相まって、変態じみたキャラクターになっている。
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エンディングにて、『1』からプレイしていたファンには辛い場面が存在する。
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ネタバレ注意
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今作ではエンディングで主人公であるアヤをプレイヤーの手で撃ち殺さねばならない場面があり、「何故思い入れのあるキャラを自分の手で殺さねばならないのか」と指摘するファンもいた。
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当初はハッピーエンドを想定していたが、野村哲也氏の「こだわりを捨ててアヤをリセットしたい」という要望を鳥山氏に提案したことがこのエンディングのきっかけだったと各種インタビューで語られていた。
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今作の事件はアヤの結婚式に謎の部隊が襲撃してきたところから始まっているのだが、その襲撃が何故起きたのか、そもそもその部隊が何なのかは全く明かされない。
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攻略本のインタビューでも「国家機密レベルの事が裏にあります」と語られただけでろくに解説されなかった。
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前作『2』のエンディングと襲撃に関係があるのではないかと考察する者もいるが、そうすると辻褄の合わない部分もある。
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システム面
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周回プレイに関する点
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ボスの登場演出等、一部スキップできないイベントがある。
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難易度による違いは敵の体力攻撃力の強化、敵の攻撃間隔の短縮、兵士の復活が遅くなる程度で、『1』のように隠しダンジョン•隠しボスのような物も無く、『2』のように敵配置が大幅に変わることもない。
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そのため変化に乏しく、過去作と比べて飽きやすい面もある。過去作よりも攻撃の種類が減ったのも難点。
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カメラワークが少々悪い。
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カメラを操作しても強制的にアヤの正面軸方向へ戻されるため、自分でターゲットを合わせる武器を扱いづらい。
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初期装備のハンドガンが装備欄から外せない。
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弾数無限で性能が低いことから、弾切れ時の保険的位置づけ。というか難易度が高めであるせいで保険にもならないこともある。
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全体で武器の装備欄は4つあり、ひとつはこのハンドガン、もうひとつはオーバーダイブ中の兵士固有の武器が装備されるため、実質プレイヤーが選択できる武器は2種類しかない。
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余談ではあるが今作の銃器は実名ではなくなっている。何が元ネタかは簡単に判るが、この初期装備のハンドガンはどう考えてもベレッタM92F。
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前作ではその強化型ともいえるM93Rを初期装備として使っていた。こちらなら3点バーストによる高い瞬間火力とゲージ回収率で高難度でも活躍できたかもしれないが、何故こちらにしなかったのかは謎。
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一部隠し要素の解放条件が厳しすぎ、苦行と評される事がある。
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たとえば『FFXIII』とのコラボである「ライトニングコスチューム」を解放するためには、ゲームを30周もする必要がある。
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他にも弾数を無限にするチートコードもゲーム10周が必要などゲームに飽きているかもしれないほどの周回が必要。
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ゲームバランスが崩壊するバグがある。
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通称レンチンバグ。
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しかもかなり強力なボス相手に難易度問わず使える。
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ただし、条件を満たし、かなりシビアなタイミングで5分間ポーズし続ける必要がある。
総評
『PE』シリーズの一作として期待して買うにはお勧めできない部分が多数ある。
特にシナリオに関しては新規ファン、古参ファン問わず「意味不明」という低評価であり、シナリオが原因で受け付けられないというシリーズファンの声も多く上がっている。
一方で、それ以外の点は好評であり、シナリオを気にしないならば十分楽しめる内容になっている。
シリーズファンであるか、(シリーズファンか否か関係なく)シナリオに重きを置くタイプかどうかによって評価が分かれる作品である。
余談
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当初はドコモ携帯電話用タイトルとして開発されていた。
最終更新:2023年10月05日 15:00