Return to Castle Wolfenstein
【りたーん とぅ きゃっする うるふぇんしゅたいん】
ジャンル
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FPS
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対応機種
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Windows Xbox PlayStation 2
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メディア
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CD-ROM/DVD-ROM(Xbox/PS2版)
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発売元
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Activision(バッケージ版) ツクダシナジー(日本発売版) Bethesda Softworks(DL版)
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開発元
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Gray Matter Interactive Splash Damage(マルチプレイヤーパート) 【Xbox】Nerve Software 【PS2】Raster Productions
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発売日
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【Windows】2001年11月19日 【Xbox】2003年5月6日 【PS2】2003年5月27日 ※北米地域基準
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定価
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550円(Steam)
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配信
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PC版はSteamにてオンライン販売中
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判定
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なし
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ポイント
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WW2大規模マルチプレイが人気に シングルプレイは劣悪 拡張パックの知名度の方が高い
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Wolfensteinシリーズ
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ストーリー
西暦943年。ドイツ最初の王ハインリッヒ1世は黒魔術とアンデッドを利用して西ヨーロッパを支配していたが、とある修道士との戦いに敗れ地下深くへと封印される。
千年後の1943年。ナチスのハインリッヒ・ヒムラーはハインリッヒ王の復活と彼の黒魔術の解明、そして不死兵士の組織化によるヨーロッパの支配を目論み、配下の超常現象師団に古文書の解読を進めさせていた。
連合国諜報部は、ナチス親衛隊超常現象師団の研究責任者ヴィルヘルム・ストラッセ大将、通称「デスヘッド」が、ドイツ北部に存在する古城「ウルフェンシュタイン城」内部で超常現象に関する極秘研究を行っていることを突き止める。
城内で行われている研究を調査すべく2人のエージェントを送り込んだ諜報部だったが、二人は作戦中にナチスに捕らえられ捕虜となってしまう。
電撃による拷問の末にエージェントの1人は死亡。もう一人のポーランド系アメリカ人ウィリアム.B.J.ブラスコヴィッチは、ナイフ一本で看守を殺害し脱獄に成功する。
たった一挺のルガーP08を握り締め、城からの脱出、そしてデスヘッドの野望阻止を目指すのだった。
概要
1992年に「近代を舞台にした銃撃戦主体のFPS」として世界で最初に発売、後の多くがこれを模倣しFPSジャンルの基礎を築き上げた名作『Wolfenstein 3D』の9年ぶりのリブート作。
エンジンにはid Softwareの開発した当時最先端のエンジンであるQUAKE IIIエンジン(id Tech 3)が使用され、スポーツ系FPSであった同社のQUAKEシリーズとはまた異なるリアルな戦場描写を売りにしていた。
世界観は一新され、『Spear of Distiny』に近いオカルト・ファンタジー要素の濃い内容へと変化。ドイツ兵や親衛隊だけでなく、デスヘッドの開発した人造兵士、そして中世期から蘇ったクリーチャーなど様々な敵が登場する。
前作を手がけたid Softwareは本作では直接パブリッシングはせず、いわゆるライセンス許諾をする形で、パッケージ版発売時はActivisionがパブリッシャーとして販売している。開発は過去にバカゲーテイスト満載の「Buildエンジン四天王」の1つ『Redneck Rampage』や、ギャングを題材とした暴力/残虐表現のドぎつさでも知られるFPS『Kingpin:Life of Crime』などを手掛けたGray Matter Interactive(旧:Xatrix Entertainment)が手掛けている。
Xbox版およびPS2版も後にリリースされている。尚、PC版と一部シングルプレイの内容が異なるため、どちらもサブタイトルが冠されている。
基本システム
操作方法
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基本的な操作は『QUAKE III Arena』に準拠。
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シングルのみ、Nキーでミッションメモを表示可能。現在のステージでこなすべき任務が図付きで示され、完了したミッションは随時チェックマークが付く。基本的にこれを見ながらミッションを達成し、ステージの奥へ進んでいく形式となる。
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アイアンサイトは利用不可。狙撃銃のみスコープが利用可能だが、覗き込み状態で移動すると自動で覗き込みが解除される仕様となっているため、スコープを覗きながらゆっくり移動することはできない。
ゲームシステム
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ゲームはオリジナル版同様の直線的なステージクリア方式。ただしステージごとに達成すべき任務が課せられており、プレイヤーは任務を達成しつつゴールを目指す。
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体力100%+残機だった過去作から変化し『DOOM』同様の体力100%+アーマー100%となっている。体力は随所に配置された料理や食料品などを利用して回復し、アーマーも同様に拾ったものを使用する。弾薬はマップ上の配置や敵からのドロップで補う。
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道中にはトレジャー要素として隠しエリアの金塊も拾うことが可能であり、ステージクリア時に発見したシークレット数が表示される。続編のような金銭システムは存在しないため、特に収集のメリットはない。
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敵には視界の概念が存在し、一部ステージではステルスプレイが要求される。一部のステージでは発見された途端にゲームオーバーになるステージも存在し、双眼鏡やスコープを利用して監視塔の兵士の動向を確認しつつ進んでいく。
評価点
優秀なオンライン対戦
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『QUAKE III Arena』同様に多人数オンラインマルチプレイが実装されている。ただのTDMではなく、個別に目標の定められたさまざまなマップを同盟国と枢軸国に分かれて互いに戦う方式。
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大抵のマップでは連合軍が攻撃側、枢軸国が防御側となる。各兵士にはクラスの概念があり、クラスごとの利点と欠点を熟知した上でのチームワークが求められる。
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重火器を持ち体力のあるソルジャー、目標の解体や爆弾解除を担当するエンジニア、倒れた兵士を復帰させることも可能なメディック、空爆要請や監視、弾薬提供などを担当するフィールドオプスなど各クラスの個性ははっきりとしており、個々のプレイヤーが補い合って戦う高度な戦闘が可能。
前半~中盤の正統派二次大戦感
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舞台はドイツ北部の古城「ウルフェンシュタイン城」に始まり、脱出した先の村、教会、山中の軍事基地、ロケット発射場と魅力的なロケーションに溢れている。当時あまりなかったフル3Dのリアルな第二次大戦ものとしてはきわめて出来がよく、実際に戦地で諜報活動を行っているかのような感覚を味わえる。
緊張感のあるステルス要素
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見つかると警報を鳴らされ強制的に失敗となるステージが複数存在。バレないルートを見つけ、双眼鏡で監視の巡回位置を把握しつつ進むパートは緊張感があり、出来は悪くない。
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提供されるステンガンも「威力はあり瞬時に倒せるが、サプレッサーが駄目になるため連続して使えない」という変わった調整に。一人ずつ始末していくように意図的な調整がされており、オリジナル版のようにMP40をひたすら撃ちまくれば勝てる、という状況になりにくい。
ところどころに登場するナチス超兵器
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銃器からロケット、特殊航空機まで様々な超兵器が登場。そういうものが好きな第二次大戦ファンにとっては刺さる要素。
火炎放射器
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主人公・敵ともども火炎放射器を携行可能なのだが、火炎の表現が非常に美しい。当時としてはかなり違和感のない出来栄えとなっており、表現力を高く評価された。
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一枚の火炎画像を連続発射していたそれまでのTF2のようなFPSと異なり、発射させる火炎スプライトを青→赤にアニメーションさせたことによる効果。仕組みは変わっていないが、次世代エンジンであったQUAKE IIIエンジンの性能を垣間見ることができる。
問題点
バランスの悪過ぎる武器
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武器の集弾率が悪過ぎる。特に前半~中盤にかけて使用するMP40の集弾率は酷く、しゃがみ撃ちでやっとまともに使えるレベル。
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接近すれば即死級の攻撃を繰り出してくる「Xクリーチャー」の出現と同時に獲得する携行型ミニガン「ヴェノム」も3m離れればほとんど当たらず、電撃を放つ超兵器「テスラガン」に至っては産廃レベル。とにかく武器の使い勝手が悪過ぎる。
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狙撃銃のスコープも「移動すると覗き状態が解除される」という独特なものを採用しており、一般的なFPSに慣れていると慣れるまで違和感が強い。特にそれが生かされる場面もないためあまり良い変更点とも言えない。
超反応すぎる敵
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敵兵士の命中率はかなり高めに設定されており、MP40を持った下級兵士でも遠距離からプレイヤーにかなりの頻度で命中させてくる。こちらの攻撃は当たらないのに敵の攻撃ばかり当たり、同じ武器の撃ち合いのはずが一方的に死んだということも多く、バランスはあまり良くない。
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それだけならまだしも、敵がこちらを発見してから発砲までの時間的ロスはほぼない。背後から忍び込んでいたとしても反射速度は一切変わらず、一部兵士は主人公を発見した途端に発砲、振り向きモーションと実際の行動パターンが連動せず、銃を構えている途中で弾が飛んでくる始末。
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ステルスアクションにありがちな「突然の襲撃に驚き、反撃する間もなく刺殺される敵兵」のようなかっこいいプレイは不可能。ステルスステージを取り入れているわりにプレイヤーに対して容赦がない。
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攻撃力と集弾性能の高いFG42を装備した降下猟兵が登場する終盤ではこの傾向がさらに悪化。アーマーの補充も追いつかない上、わずか1秒でも敵の目の前に晒されれば集中砲火で即死する。ステージへの固定配置ではなく基本的に複数で湧いてくるため徐々に減らしていくこともできないなど配置もいやらしく、ストレスが溜まりやすい。
デザインのダサすぎるXクリーチャー
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ナチスの科学力を結集し、デスヘッドが作り上げたという設定の「Xクリーチャー」。作中には機動力に長けた「ルーパー」と異常なほどの火力を持つ「プロトソルジャー」「スーパーソルジャー」の3種類が登場するのだが、ルーパーのデザインは下半身がなく、肥大化した両腕を使って跳ねる骸骨顔の改造兵士。どう見ても改造兵士として戦場で使うには無理がありすぎる上、案の定量産後に集団暴走、研究所を破壊して科学者を蹂躙し始める。何のための研究だったのか。
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プロトソルジャーとスーパーソルジャーのデザインはきちんと「強化骨格に身を包んだ巨大兵士」。ミサイルや機銃で武装した火力の高さや並みの武器では歯の立たない硬さが印象的な敵となっており、超兵士感は出ている。
ステルスプレイ要素とランボープレイ要素の乖離
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プレイヤーがステルスプレイに徹するべくシステムとバランスの両面から意図的な調整が加えられているのだが、その具体的な調整とは「正面切って戦闘できないほど主人公の火力を下げ、ステルスでないと攻略できないようにする」というもの。
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人間敵相手であれば機能するため前半部分ではさほど問題のない仕様なのだが、中盤のデスヘッド研究所に着いたあたりから上述の「Xクリーチャー」が出没、プレイヤーは火力が心許ないまま急に真っ向勝負の撃ち合いを求められる。何かイベントや特別な攻略法も用意されないためただ温存していたパンツァーシュレックや弾の心許ないFG42を撃つしか術がなく、「人間相手のステルスFPS」と「Xクリーチャー相手の撃ち合い」という真逆のゲームプレイを同じシステムでこなさなければならない。
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操作方法や武器バランスはどれもXクリーチャーとの撃ち合いに適したものとは言い難い。デスヘッドの改造兵士の恐ろしさというストーリー面では妥当ではあるかもしれないが、ゲームプレイ面で見ると良いものとは言えない。
単調・過激でないストーリー展開
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シングルプレイはひたすら上層部から寄越された任務をこなしていくだけであり、敵や任務内容から戦況を察する以外にストーリーに関わる要素がない。ラスボスを含むオカルト要素もやや唐突すぎるきらいがあり、デスヘッドを含めた名ありの重要人物も主人公に直接関わるタイミングは非常に少ない。
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ハインリッヒ一世の復活というファンタジー的内容も前作の『ヒトラー殺し』と比較するといささか面白みに欠ける。発禁上等スタイルながらそれによるインパクトが非常に強かった前作と比較され「普通すぎる」として不評となった。
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もちろん前作の過激な内容が物儀を醸したのは事実。しかしそれを作品の良さ・作風であると捉えていた前作ファンは非常に多く、ファンタジー要素だけに留まった本作のナチス描写はWolfensteinシリーズとしてふさわしくないものとして旧作ファンに批判された。
ハインリッヒが弱い
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ラスボスであるハインリッヒ一世だが、こちらは事前補給もあり全ての武器が揃っているのに対して王は射程制限のある攻撃しかしてこないため、攻撃の当たらない一定距離を保ち物資を拾いつつ遠距離攻撃していれば初見でも勝てるほど弱い。即死級の遠距離攻撃を連続で繰り出すデスヘッド研究所守衛のスーパーソルジャーのほうがボス格キャラとしては脅威であり、調整には疑問が残る。
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また、修道士が特別な力を以ってやっと封印に成功したはずなのにその辺で手に入る銃火器で蜂の巣にすればあっさり死ぬなど扱いがかなり雑。せめて黒魔術に関連した銃などが登場すればよかったのだが、そういう類のものは一切ない。
総評
FPSの始祖として神格化された『Wolfenstein 3D』の9年ぶりのリブートとして登場したものの、劣悪なバランスのシングルプレイが不評となり前作ファンから落胆された作品。しかし次世代エンジンによる表現力向上やヨーロッパの激戦地帯を舞台にしたマルチプレイ部分は評価され、2003年には本作のマルチ部分を強化した拡張パック「Wolfenstein: Enemy Territory」がシングルプレイ拡張パックの開発中止に伴いマルチプレイ単体で無償配布されたことで絶大な人気を博した。
これにより「RtCWは知らないけどW:ETは遊んだ」という人間が多く、本編よりもEnemy Territoryの方が知名度が高い。
BF1942のような大規模第二次世界大戦マルチプレイの始祖的位置には当たるものの、シングルプレイの悪評から現在も本編単体ではあまり評価されることはない。
しかし本作での失敗を尽く改善した更なるリブート作である『Wolfenstein: The New Order』が2014年に発売、
こちらは濃厚なシングルプレイや過激な作風がゲーマーや批評家から絶賛され、本作では不十分であったシリーズの再稼動という目標を遂に果たすこととなった。
余談
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本作のタイトルはシリーズのリブートであることを強調するためか、オリジナル版である「Castle Wolfenstein」及び「Beyond Caslte Wolfenstein」に近いものを採用している。長いため「RtCW」と呼ばれることがほとんど。
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2009年には本作の続編として『Wolfenstein』というこれまたややこしいタイトルのFPSが発売。『Hexen』などの開発にも関わったRaven Softwareが担当しており『Hexen』にも見られたハブ構造を採用するなど新しい試みも見られたものの、Hexen譲りのバランスの悪さや相変わらずのストーリーの薄さが不評となりシリーズの再来は果たせずに終わった。
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本作を手掛けたGray Matter Interactiveはその後、2002年にActivisionの買収を受けて傘下会社となり、初代『Call of Duty』の拡張パックである『Call of Duty: United Offensive』の開発を担当している。だが、2005年に親会社(Activision)の意向により、同じ傘下会社であるTreyarchに吸収合併される形で消滅した。
最終更新:2020年11月07日 12:36