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ジャスタウェイ(競走馬)

登録日:2023/11/11 Sat 04:40:18
更新日:2024/12/18 Wed 09:57:20
所要時間:約 27 分で読めます






溜息すら歓声に。ぶっちぎりを魅せつける。

───東京競馬場ポスター

ジャスタウェイ(Just a Way)とは日本の元競走馬、種牡馬。
2010年代前半に活躍し、最強世代の呼び声も高い2012年クラシック世代の代表馬の一頭。
ファンからの主な呼称は「ジャスタ」。陣営からは「ジャス」、馬主からは「ジャスくん」と呼ばれている。

目次

【データ】

生誕:2009年3月8日
父:ハーツクライ
母:シビル
母父:Wild Again
生産国:日本
生産者:社台コーポレーション白老ファーム
馬主大和屋暁
調教師:須貝尚介 (栗東)
主戦騎手:福永祐一
通算成績:22戦6勝[6-6-1-9]
獲得賞金:(中央)5億9569万4000円
     (UAE)300万USドル
主な勝鞍:'13天皇賞(秋)、'14ドバイデューティーフリー*1・安田記念
受賞歴:ワールドベストレースホース(2014)、JRA賞最優秀4歳以上牡馬(2014)

【誕生】

2009年3月8日に白老ファームで誕生。十字型の流星が特徴の鹿毛の牡馬。
父はあのハーツクライ。競走成績等の詳細は当該項目を参照してほしいが、端的に言えば「日本調教馬として唯一ディープインパクトを破り、世界でも活躍した馬」。種牡馬としても当時こそ未知数ではあったものの、後にサンデーサイレンス後継の1頭として名を轟かせた大種牡馬である。
母シビルは未勝利のまま繁殖入りした馬だが、その父は第1回ブリーダーズカップ・クラシックを制し、種牡馬としてもGⅠ馬を10頭以上輩出したワイルドアゲイン。母はコーチングクラブアメリカンオークス勝ち馬のシャロン。日本では馴染みが薄いが、なかなかに味のある血統である。

1歳でセレクトセールに出されると、アニメ『銀魂』に参加している脚本家の大和屋暁氏が購入し、馬主となった。
名前の元ネタは漫画『銀魂』のジャスタウェイだが、あちらの名前の由来が「Just Away(すぐに 逃げろ)」なのに対しの方のジャスタウェイの公式な意味は「Just a Way(その道)」である、一応。物は言いよう。
大和屋氏は元々ハーツクライの一口馬主であり、ハーツクライ産駒が上場する度に入札していたのだが、その流れで1260万円という安価で購入された。
ハーツクライの2年目産駒のため種牡馬としての評価が定まっていなかったこと、兄弟姉妹はいずれも条件馬や地方馬でパッとせず、というか牝系が正直言って古臭い血統だったこと、そして父親の脚が遺伝し外向気味だったために、評価は高くなく安売りされていた。
当初大和屋氏は脚のことを知らなかったものの、社台関係者に「ハーツクライの一口さんなら問題ないですね」と聞かれて「もちろんです」と快諾した。
というのも、大和屋氏はこれ以前にもハーツクライ産駒を落札したもののデビュー前に死亡したため、「ハーツクライ産駒なら牡馬・牝馬問わない」と意気込んでいたからである。
結果、個人馬主の資格を得てから初めてデビューしたのはこのジャスタウェイとなった。

競走馬ジャスタウェイ号は、大和屋氏のツテにより、当時まだ厩舎を開いて3年目の須貝厩舎*2に預けられることとなる。
同厩舎の同期……もとい相棒として、須貝厩舎初のGⅠタイトルと同厩舎としてJRA史上最速100勝を飾ったGⅠレース6勝を誇るゴールドシップがいた。なおジャスタウェイの担当厩務員はゴルシの今浪隆利氏ではなく榎本優也氏である。

【現役時代】

キャラクターから取った名前のGⅠ馬としては既に阪神JF勝ち馬のテイエムプリキュアがいたが、このジャスタウェイの活躍はそれを凌ぐ凄まじい内容だった。

鮮烈なデビュー

2011年7月23日に新潟競馬場5Rの新馬戦芝1600mにてデビュー。2着のラパージュに5馬身差をつけての圧勝でデビュー戦を飾る。持ち味の末脚はこの頃から片鱗を見せていた。福永祐一騎手とのコンビもここから始まった。なんでも、この日はたまたま空いていたのだとか。
そのまま新潟2歳ステークスに挑み2着、東京スポーツ杯2歳ステークスで4着と、勝てないながらも掲示板確保を果たす善戦を見せる。

迎えた2012年、初戦はきさらぎ賞で4着。
次走でアーリントンカップに出走すると、最終直線で末脚を炸裂させ、最後方から12頭を一気に差し切るという凄まじい勝ち方により、重賞初勝利を果たす。これには実況も思わず「大外ジャスタウェイ飛んできたー!!!」と叫んだ。
その勝ちっぷりは、確かに素質を感じさせる内容だった。

名前通り?のシルコレの日々

しかし、その後はNHKマイルカップ(GⅠ)・日本ダービー(GⅠ)という変則二冠に挑戦するも、それぞれ6着・11着という惨敗。この結果から陣営は長距離は不向きと判断、菊花賞を回避し天皇賞(秋)を目指すこととなった。
前走の毎日王冠ではエイシンフラッシュにグランプリボス、リアルインパクトといったGⅠ馬が集まる中、人気薄からカレンブラックヒルの2着に。
天皇賞では同期のフェノーメノ(2着)とカレンブラックヒル(5着)に先着され、エイシンフラッシュの復活を後ろから眺める6着に沈む。

2013年の春から夏にかけても、エプソムカップはクラレントの2着・関屋記念はレッドスパーダの2着・毎日王冠はエイシンフラッシュの2着と、重賞で善戦はするもののあと一歩で届かない成績が続き、「名前の通り"銀"ばかり取っている」と、シルバーコレクターっぷりからネタ馬扱いされていた。
素質こそ見せていたものの、本格化前はまだまだ肉体的にも精神的にも打たれ弱く、ゲートもなかなか上手くいかずでチグハグな競馬になりがちだった。また、今でこそ主戦騎手は福永騎手となっているが、この善戦マン時代は乗り替わりが激しかった。
その為、陣営は春のGⅠ路線をかなぐり捨てて秋GⅠ路線へ向けて短期放牧へ出したが、これが功を奏して10kg増の体付きに成長した。
これが後に彼を化け物へ進化させるきっかけとなる。

覚醒の時・GⅠに届いた破壊力

そうして迎えた2013年天皇賞(秋)、上位馬の回避によりギリギリ出走へと漕ぎ着けることができた。
同期の三冠牝馬にしてジャパンカップ馬ジェンティルドンナや、前年優勝馬にして前走の毎日王冠で惜敗した因縁の相手エイシンフラッシュをはじめとした顔ぶれが揃い、この2頭の対抗馬として挙げられていたのは、鳴尾記念・函館記念・札幌記念と3連勝を決めていた夏の上がり馬にして、鞍上武豊騎手ということで「サイレンススズカの再来」とも囁かれていた逃げ馬トウケイヘイローだった。
その中でジャスタウェイは5番人気。一応重賞での戦績は安定しており、敗れた前走でも脚を余していたために一部で穴馬としては見られていたものの、まあ主な勝鞍がアーリントンカップ(GⅢ)のみの2勝馬が予想の主役になれるはずもなく…。

だが、レースは予想だにしなかった展開へ

逃げるトウケイヘイローが引っ張るハイペース気味なレースの中、ジャスタウェイはやや後方からエイシンフラッシュの後をつけるように進む。
そして迎えた直線半ば。
力尽きようとしていたトウケイヘイローをジェンティルドンナが捉えんとするその時……


「さあトウケイヘイロー!トウケイヘイロー!粘る粘る!
ジェンティルドンナ!外からジェンティルドンナ……」


「外 か ら ジ ャ ス タ ウ ェ イ !!!」



突然ジャスタウェイは覚醒し、1頭だけ早送りでもしたかのような次元の違う末脚を爆発させた
そのままごぼう抜き、僅かに先頭に立ったジェンティルドンナにも競り合う暇すら与えずあっという間に置き去りにする。
他の馬たちも次々に仕掛けるが、その差は縮まるどころか開いていくばかり。
エイシンフラッシュがようやく馬群から抜けた時には、もうジャスタウェイは遥か前方にいた。


「ジャスタウェイだ!ジャスタウェイだ!
突き抜けた突き抜けた!!」

「ジェンティルドンナ2番手!」

「ジャスタウェイ、この破壊力!!!

GⅠまで届きました!!」


───フジテレビ実況(吉田伸男)


結果は、2着ジェンティルドンナと4馬身差、3着エイシンフラッシュとは6馬身差の圧勝。完成度高けーなオイ。
長い雌伏を経て、ついについに悲願のGⅠ制覇を果たした。まるで2005年有馬記念で完成し、ディープインパクトに唯一の土を付けた父親のように。おまけにここでブチのめしたジェンティルがディープ産駒の最高傑作というのが何とも因果を感じさせる。
これはハーツクライ産駒としても初のGⅠ獲得となった。まさかハーツ産駒一番乗りがコイツになるとは誰が思っただろうか
「銀魂の馬が天皇賞勝ったぞ!しかも馬主アニメの脚本家じゃん!」と方々で話題になったりもした。
そして、鞍上の福永騎手にとってもこれが天皇賞(秋)初制覇となり、この勝利によってようやく主戦騎手として固まったのである。


ちなみにジャスタウェイが天皇賞(秋)を制覇した2013年はJRAのCM『THE LEGEND』が放送されており、この時期はわずか3歳で天皇賞(秋)を勝ち取ったバブルガムフェローがピックアップされていたが、CM内でなんの因果か「挫折が教えてくれる"道"がある」「"爆発"が世代を超える」というフレーズが使用されていた。
この年に"爆弾"そして"道"の名を冠した馬が爆発的な末脚で天皇賞(秋)を制覇するとは何とも運命を感じさせるものである。
ちなみに同期の親友も、前年2012年にJRAのCM『THE WINNER』でピックアップされたミスターシービーまったく同じ勝ち方で菊花賞を勝利して話題になっていた。何なんだこの世代


世界のジャスタウェイ

その後は疲労から全休し、2014年3月末の「ドバイデューティーフリー」への出走を表明。2月に招待状が届いたために受諾、出走が確定した。

まずはそのステップレースとして、3年前のドバイワールドカップ馬ヴィクトワールピサも通った中山記念に出走。
秋天は展開が完全に噛み合っただけというフロック視が残っていたことや、福永騎手の騎乗停止により横山典弘騎手が代打を担ったこともあって2番人気だったが、1番人気トウケイヘイローが盛大に出遅れたのを余所に好スタートで先行したまま2着アルキメデスに3馬身1/2差を付けて難なく快勝。
これはジャスタウェイにとって初の連勝であり、確かな手応えからドバイへの期待を膨らませた。


そして、勢いそのまま1番人気で迎えたドバイデューティーフリー。ドバイへ渡った日本馬の中でも筆頭格、言わば日本総大将の扱いだった。日本からは他トウケイヘイローに前年の皐月賞馬ロゴタイプ。前走の中山記念にも出走した2頭である。
対する世界もウェルキンゲトリクス*3、ザフューグ*4、ハンターズライト*5、ブレイジングスピード*6、ダンク*7…と相手にとって不足無し。

スタートから行き脚がつかず後方2~3番手となったものの、福永騎手はそれも想定済み。ペースを乱さず直線までウェルキンゲトリクスへ付けていく。
そして外側へ出しながら迎えた最終コーナー……異次元の末脚、再び


「Just a Way! Dash away!!」

───現地実況


ようやく馬群を抜けたと思ったらあっという間に先頭に躍り出たジャスタウェイ。決して他の馬たちが止まったわけではない。
ウェルキンゲトリクス達も確かな手応えで追いすがるも、その差は一向に縮まらない……どころかみるみるうちに開いていく。
そして───


独走だ!!ジャスタウェイ!ジャスタウェイ!

世界のジャスタウェイ、ゴールイン!!!

───ラジオNIKKEI実況(中野雷太)


世界の強豪達を相手に、結果は2着ウェルキンゲトリクスを6馬身1/4もぶっちぎり、レースレコードを2秒41も更新するという大圧勝(BIG BIG WINNER)だった。ちなみにこのレース、2着もレコードを更新していた
この1:45.52というタイムは、2023年現在も抜かれていない。それどころか1分45秒台に到達した馬が他に3頭しかおらず*8、もっと言えば1777mで開催されていた頃*9のレコード(2008年のジェイペグが記録した1:46.20)よりも速い異次元のレコードである。
レース後、福永騎手が思わず「つっえぇ……」と口走ったシーンが中継に抜かれていたりも
親子2代でのドバイ制覇を果たしたジャスタウェイ。天皇賞は決してフロックではないことを証明してみせた。

この直後、一緒にドバイに渡ったジェンティルドンナもドバイシーマクラシックをレコードで勝利し、2頭揃って凱旋となった。

なお、ドバイデューティーフリーの授与式で馬主の大和屋氏はトロフィーの返礼として「金のジャスタウェイ」をプレゼンターに渡して困惑されていた。そりゃそうだ。


そして、このドバイでの勝ちっぷりが評価され、「ロンジンワールドベストレースホースランキング」にてレーティング130ポンドを与えられ、ディープインパクトオルフェーヴルでも成し得なかった世界ランキング1位の偉業を成し遂げた。調べてみればわかるが、レーティング130の壁は非常に高く、この領域に到達しているのは世界的名馬の中でもごく一部、場合によっては出ない年もある程である*10。それ程凄まじいと言う証明の指標なのである。
誇張でも何でもなく「世界のジャスタウェイ」となった瞬間だった。完成度高ぇってレベルじゃねーなオイ。
なおこのレーティングは、日本馬全体でもイクイノックスの135ポンド、エルコンドルパサーの134ポンドに次ぐ数値である。




世界一の称号、父子の覇道。

TOP OF THE WORLD
2014.3.29 Dubai Duty Free (GROUP 1)

レーティング発表される前にこの列伝が作られたのは内緒(ドバイを制したことを「世界一の称号」と解釈すれば問題ないが)


そのまま凱旋帰国初戦で安田記念へ。海外からも多数のオファーが届いていたようだが、国内のファンに雄姿を見てもらいたいという陣営の思いからの選択だった。
この年はGⅠ馬9頭*11という過去最高の豪華なメンバーが揃ったが、その中でもジャスタは「絶対王者」という扱いであり、“挑む立場”から初めて“挑まれる立場”となった。
だが、福永騎手が再び騎乗停止となり、これまでにも2度騎乗の機会があった柴田善臣騎手を鞍上に迎える。
迎えた本番、雨により泥田のような不良馬場となった。単勝オッズ1.7倍という圧倒的1番人気に支持されるも、外国帰りの疲労など、これでもかと重なった悪条件を心配されていた。対抗として挙げられていたのは、NHKマイルカップを勝ったばかりの3歳馬ミッキーアイルやダービーでも相見えたワールドエース。
レース本番では、馬場に足を取られて体勢を崩し、直線入り口から2着馬グランプリボスをはじめ周囲に徹底的にマークされ行き場無しという大ピンチ
……だったのだが、ここで得意の末脚が炸裂。
先に抜け出したグランプリボスの前に出来た道を即座に抜け出し、3着以下を突き放して一騎討ちへ。激しい叩き合いからの写真判定の末、ド根性でハナ差捕らえての勝利。世界1位の意地を見せ、見事1番人気に応えてみせた。そして、本格化する前に辛酸を嘗めさせられた馬たちに対し、図らずもまとめて御礼参りする形となった。
見た目こそ辛勝だったが確かな地力の違い、そして元々ある程度示していたマイル適性も証明するかのような走りを見せた。
派手な勝ち方で印象に残りやすい秋天やドバイDFが取り沙汰されがちだが、明らかに不利な展開を力で捩じ伏せたこの安田記念こそがジャスタの最も強い勝ち方だという評価も多い。

余談だが、この2週間前にはヌーヴォレコルトがオークスを、1週間前にはワンアンドオンリーがダービーを制しており、3週連続でハーツクライ産駒がGⅠを制覇する形となったため、競馬界を大いに沸かせた。
こうなると翌週の宝塚記念のウインバリアシオンにも期待が寄せられたが……やっぱり相方の白いのは強かった。


さらなる挑戦・そして夢の果て

安田記念での疲労の激しさからファン投票4位だった宝塚記念は回避し、次に挑んだのは世界最高峰の舞台・凱旋門賞
日本の期待を背負い、盟友ゴールドシップ、期待の桜花賞馬ハープスターと共に、過去最多の3頭で海を渡った。

入場時にゴルシが1頭だけ列から外れて観客に愛想振り撒いてる様子から目をそらしながら迎えたレース。
しかし、距離経験の乏しさが響いたか得意の末脚を活かせず、そのまま伸び切らずに8着に沈んでしまった。
ちなみに、ハープスターも後方待機からの追い込みが届かず6着と振るわず、日本勢にとっては悔しい結果となった。
ゴルシ?他のジョッキーのムチが顔にブチ当たって気が乗らなかったみたい(14着)
後の話によると、ゴールドシップ共々走る前から普段と違うロンシャンの芝に困惑していたという。まぁ結果的にゴルシとジャスタの凱旋門ショーだのフランス観光だの三馬鹿だの言われるハメになるが。


帰国初戦はジャパンカップに出走。
中団で待機し直線から外に出して仕掛けるもラスト100mで鈍り、掛かり倒しながら爆走したエピファネイアに4馬身引き離されての2着に終わった。

そして、2014年有馬記念での引退を発表。
12番手から末脚を発揮するもジェンティルドンナに敗れ4着という結果でラストランを終えた。
「仕掛けを遅らせて届かなかった」と福永騎手の騎乗を批判する声もあるが、距離適性がだいたい1600~2000だということを考えれば掲示板に入れただけ十分健闘したといえるだろう。
また、実は右前脚の球節に不安を抱えていた事、この頃にはジャスタウェイの脚も限界を迎えていたことが後に主戦騎手であった福永祐一より語られており、種牡馬入りを前に無理をさせないようにした結果とも考えられる。

2015年1月4日に京都競馬場で引退セレモニーが行われ、同月7日付で登録抹消。種牡馬となった。
最終的には国内外で合計9億939万8000円もの賞金を稼ぎ、大和屋氏にとっては初デビュー所有馬がGⅠホースかつ世界最高峰の格付けを得るという夢を与えた。

長い雌伏を経て覚醒に至り、世界一の称号を手にし、最後は適性外距離に苦しみながらもある程度の適応を見せたジャスタウェイ。
彼の一頭だけ再生速度が違うかのような“爆発”の加速は、観るものをブチ上げてやまない鮮烈な勝ち方だった。
あの98世代にも負けず劣らずの最強世代と名高い12世代の一角として、その名は歴史に刻まれることとなったのである。

【引退後】

ハーツクライ後継一番乗りとして種牡馬入り。
今では少々珍しいアウトクロス*12であり、ライバルの多いSS直系ということに加え、牝系の貧弱さもあって血統的にはややパンチが弱い。
一方でクロスを全く持たない為、強いクロスを持つ牝馬の「薄め液」になれるといった強みもある*13
また、ワイルドアゲインの血が作用しているのか、ダート馬も多く輩出している。

産駒は2018年からデビューしているが2歳戦の重賞勝利を挙げることはできず、重賞初制覇は翌年のチャンレンジカップを制したロードマイウェイだった。
皐月賞2着・東京優駿3着・菊花賞3着のヴェロックスや、米国三冠競走を完走し交流重賞を4勝したマスターフェンサーなど、かつての父のような善戦馬・GⅠ未満馬が多い。
2020年にダノンザキッドのホープフルステークスでようやくGⅠ初勝利、2021年にテオレーマがJpn1のJBCレディスクラシックを勝利した。
また2022年にはヤマニンウルスが、新馬戦で2着に4.3秒差(21馬身差)というJRA平地競走の最大着差記録を達成。体質が強くないため、慎重なローテを組まざるを得ないというハンデを抱えながらも順調に勝ち進み、2024年にはプロキオンSを制して、5レース目にして無敗の重賞勝利を記録した。

なお引退がジェスタウェイの1年後だったゴールドシップも、産駒のGⅠ初勝利は2021年で産駒の初デビューから3年目(2021年オークス馬ユーバーレーベン)だったりする。

なお馬主の大和屋氏もジャスタウェイとの交配用に牝馬「イイナヅケ」(父ワークフォース・母父アドマイヤベガ。2013年生まれ、15戦3勝)を購入。
彼女とジャスタウェイとの仔は「サンデーサイレンスの3×4」「トニービンの4×5」なんて濃い血量となるため期待され、
2021年に第1子ジャスコ(牝)・2022年に第2子エルデストサン(牡)、2023年に第3子ヒヒーン(牝)がデビュー。
ジャスコは残念ながら未勝利のまま引退となったが、エルデストサンは2022年10月10日のダート未勝利戦で初勝利を飾っている。そしてヒヒーンは2023年6月10日の新馬戦にて勝ち星を上げ、そのありそうでなかったド直球ネーミングから大きな話題を呼んだ。

【創作作品での登場】

ジャスタウェイの活躍はもちろん銀魂の原作者の空知英秋氏の元にも届いており、ジャスタウェイが天皇賞馬になった直後、『銀魂』本編「おれがマヨラーで あいつが甘党で」で銀さん新八神楽の給料を競馬でスったことを責められた際に
「ち、違うんだ。まさかジャスタウェイが将軍賞(天皇賞)を取るとは…あんな駄馬もうとっくに馬刺しになってるもんだと…
という酷い言い訳をするシーンがあった*14
更にその回の週刊少年ジャンプの巻末では
J(ジャスタウェイ)天皇賞おめでとう。こんな事なら名前使用を許可する時金とっとくんだった…
という空知先生らしいコメントが残されている。

天皇賞(秋)と中山記念の勝利後にはJRAと公式でコラボし、ジャスタウェイと銀さんが書かれたクオカードが発行されている。
また大和屋氏と福永騎手は、表彰式にて度々『銀魂』のジャスタウェイを掲げたり優勝カップに入れたりしていた。
ドバイにも前述の「金のジャスタウェイ」とは別に通常カラーのジャスタウェイも持ち込んでいたが、そちらは現地で失くしてしまったとの事。

競走馬擬人化漫画で知られる本作では、円筒状のパワードスーツに身を包むと爆弾になるというとんでもないキャラ付けで登場していた*15
だがドバイ遠征回ではゴールドシップに円筒を着せられドバイまで投げ飛ばされた後、
「勇気がわいてくる」「銀魂(ぎんだましい)から脱却できそう」(意訳)等とのたまっていた所でジェンティルドンナから、
「何言ってるのよっ」「あなたはあなた」「ジャスタウェイはジャスタウェイであってジャスタウェイ以外の何物でもない!それ以上でもそれ以下でもないわ!!」
と喝を受けたことで「一皮むけ」元に戻りやる気にあふれ、シーマクラシックに出たジェンティルドンナと共に見事勝利を飾った。

ちなみにゴールドシップから円筒を押しつけられた回は『銀魂(ぎんだましい)』・ドバイ後銀魂(ぎんだましい)からの脱却をゴールドシップへと謳った回は『金魂(きんだま)』…銀さんと金さん「…」
なお、よしだ氏は大和屋氏を『銀魂』の作者と勘違いしていた節がある*16

シャドー怪人の闇装備として登場。
同作第37駅(脚本は競走馬ジャスタウェイの馬主である大和屋暁氏)に登場した怪人「管理人ナイト」(CV:志村新八こと阪口大助)が「ナイト系ジャスタウェイ」なる馬頭付き斧兼乗騎と共に登場

「そしてこれが我が愛馬ジャスタウェイです!」

さらに「私の末脚についてこられますかねえ?」だの「今のは進路妨害!審議!審議です!」だのやりたい放題っぷりで『銀魂』や競走馬ジャスタウェイを知るファンの腹筋を崩壊させた。

ナイトを騎乗させての高速移動によりトッキュウジャーを苦しめるも、最後は気配を消していたザラムにより取り上げられ、「牧場へ帰れ!」と宇宙の彼方へ投げ飛ばされてしまった。

「ジャスタウェイがファーラウェーイ!?」

“自慢の脚”を失い動揺するナイトはそのままハイパー五連結クラッシュを受け敗北、その直後に闇暴走を起こし巨大化するも、超超トッキュウダイオーとハイパーレッシャテイオーに圧倒され、そのままハイパーレッシャテイオージャイアントフラッシュを受けて爆発四散した。
なお実はこの件は脚本の大和屋氏はほぼノータッチだったらしく、「スタッフの悪ノリで何かジャスタウェイになってた」との事らしい。
ちなみにこの回の放送日は2014年11月23日。馬のジャスタウェイが出走したジャパンカップ(2014年11月30日、勝ち馬はエピファネイア)の一週間前の話である。

【余談】

  • 大和屋氏は「オツウ」、「パンデモニウム」なる牝馬(いずれも父ハーツクライ)も手に入れたが、ぱっとしない成績で引退、繁殖馬に転身したという。
    それでもオツウは1050万円で買われて、オープン馬となり1億2000万円の稼ぎを上げたのだから、十分馬主孝行である*17。パンデモニウムさんは残念ながら喘鳴症(喉鳴り)により未勝利のまま引退してしまったが…。
    前述の通り、最初に買った1頭目はデビュー前に死んでしまい、JRA登録馬としてはジャスタウェイが最初になったのだが、それでいきなり国内外GⅠを3勝する名馬を引き当てたのだから凄まじい運と言う他ない*18
    そして、ジャスタウェイはじめ、ヌーヴォレコルトやワンアンドオンリーたちの活躍によってハーツクライ産駒の値段が高騰、新たな産駒を買えなくなるというオチがついた*19
    そのため今度はイイナヅケ購入による産駒の預託繁殖や、ジャスタウェイをつける牝馬の傾向を見定めて、安いジャスタウェイ産駒を買うことにシフトしている。
    また2024年10月には、なんと自らの手でジャスタウェイメインの小説『ぱからん』(リトルモア)を発表。ドバイ遠征を原作にし、大和屋氏の師匠浦沢義雄氏を原案に迎えてハチャメチャな物語が描かれている。

  • 須貝師はとある番組でジャスタウェイを優等生でいい子と称しており、2022年9月にAsian Racing Reportが須貝師を取材した際の記事「The rockstar, the singer-songwriter and the pop princess: Naosuke Sugai – Japan’s super producer」では、須貝師をプロデューサーとして、ジャスタウェイをフォークシンガー、ソダシをポップアイドルと例えている。なおあの白いのに関しては題名の通りロックスター、それも「おクスリキメてホテルのモノをブチ壊すようなの」と例えている。

  • JRA公式の過去の名馬を紹介するコーナー「名馬の肖像」のジャスタウェイのページに記載されている紹介文は、『爆発』というワードが盛り込まれてたり、縦読みで『銀魂』と読める箇所があったりと元ネタを意識した内容になっている。
    もちろんネタばかりではなく、『その道』という表向きの名前の由来となったフレーズや、『魂の咆哮』という父・ハーツクライを思い起こさせるフレーズもあるなど完成度は高い。

  • 日本では、元ネタ故にネタ馬名扱いする人も多いジャスタウェイだが、海外では「Just a Way(その道は俺のものだ)」と「Just Away(早く逃げろ。逃げられるものなら)」という煽りのダブルミーニングと認識されており、先述したパフォーマンスも相まってCOOLな馬名とされているのだとか。

  • 2021年に配信されたアプリ『ウマ娘 プリティーダービー』には残念ながらジャスタウェイは未登場(2024年現在)。
    元々実在馬の名前の使用許可のハードルは高い事もあるが、ジャスタウェイの場合は馬主の大和屋氏だけでなく『銀魂』の原作者・空知氏、更には集英社やアニメ制作会社等、『銀魂』関連で様々な方面からの複雑な許可が必要とされているのが関係していると推測されている。
    しかしながら上述の活躍でも分かる通りの紛れも無い名馬である事や、何よりも「あのゴールドシップの親友」という美味しすぎる個性もあって、可能性が低いながらもジャスタウェイの登場を待ち望む声は非常に多い。
    事実、銀さんの声優である杉田智和氏はジャスタウェイの登場を熱望しているユーザーの一人であり、「俺で頑張れる事があったら頑張るよ?」と切実な表情で発言し、実装に漕ぎ着けるなら協力したいと前向きな姿勢でいる。
    もし登場できたら『銀魂』の登場人物に引けを取らないぶっ飛んだキャラになるかもしれない。
    尚、『ウマ娘』の方のゴールドシップは寮でのルームメイトが誰なのか公式媒体での描写で判明しておらず全くの謎に包まれているが、もしかしたら……。

他の馬との関係

ジャスタウェイ自身は従順な優等生気質だが、気性難でよく知られた困ったちゃんゴールドシップとは特異的に仲良しだった。
本来は真逆な性格の2頭を隣同士の馬房に入れることで互いの欠点を補うことを狙っていたが、意図に反してそのまま仲良くなってしまっているそしてゴルシの気性は結局改善されなかった
基本トレーニングを嫌がっていたゴルシもジャスタウェイがいればやる気を出したり、ジャスタウェイがゴルシの前を歩いている時は普段と落ち着きっぷりが全然違ったり、フランスへ向かう飛行機の中でも仲良くしていたり、同じく同行していた牝馬のハープスターにナンパしないように間に入れる役目を担ったりと、逸話には事欠かない。
実際、ゴルシが早々に活躍した事もあって、アレと真逆で体が弱かったジャスタウェイに関して厩舎としても、2013年天皇賞(秋)前の春路線を捨ててまでリフレッシュさせた短期放牧など、ゆとりを持った参戦計画が出来た事、何よりも調教で負荷を掛けられる調教パートナーとしても存在は大きかった*20
このことは2頭を担当した須貝尚介調教師からも言及されており、総合スポーツ雑誌「Sports Graphic Number」937号で特集が組まれるほど当時から人気の組み合わせだった(後に傑作選ムック本「名馬堂々。」にも再録)。
ただジャスタウェイの方もゴルシとはまた違う方向にマイペースなところがあり、近くで他の馬が暴れてもまったく気にせず平然と草を食べたり熟睡したりしていたという。

種牡馬時代は最初にいた社台SSにてクロフネやキャプテントゥーレをじっと見つめる様子が確認されている。
何でも、放牧後に寂しがってよく嘶いていたジャスタウェイに近寄って慰めてくれたんだとか。
父ハーツクライもクロフネを見つめていたり、祖父サンデーサイレンスメジロマックイーンと仲が良かったというエピソードから「芦毛好きが遺伝したのでは?」と冗談半分に言われたりしている(実際にはどの馬ともある程度仲良くなれる性格だったという説が有力視されている)。
一方で賑やかだったゴルシの面影を見ていたのではないかという説もある。



その道の彼方に

いま爆発の機は訪れた。
すべてを烈風で吹き飛ばし
紅蓮の炎で焼き尽くせ。

そうだ斬り込む時は来た。
の刃を振りかざし
の咆哮とともに突き進め。

もう立ち止まることはない。
坂を駆け上がった
その道の彼方にある
はるか世界の頂点を目指せ。

───名馬の肖像 2018年 天皇賞(秋)より


追記・修正は白いのゴールドシップと仲良くなって世界1位まで上り詰めてからお願いします。

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最終更新:2024年12月18日 09:57

*1 現:ドバイターフ

*2 騎手から調教師への転向組。ゴールドシップを皮切りにジャスタウェイや、ローブティサージュとレッドリヴェール(共に阪神JF)、アドマイヤリード(ヴィクトリアマイル)、ショウナンナデシコ(かしわ記念)、そして世界初の白毛GⅠ馬ソダシ、ドルチェモア(朝日杯FS)など多数のGⅠ馬を輩出する名門厩舎に成長した。

*3 南アフリカ出身で通算でも無敗の6連勝で参戦。デイリーニュース2000勝ち馬で、前哨戦の同距離GⅠジェベルハッタも快勝。

*4 前年ヨークシャーオークス、アイリッシュチャンピオンステークスを連勝し、ブリーダーズカップ・ターフと香港ヴァーズでも2着。後にプリンスオブウェールズステークスで凱旋門賞2連覇馬トレヴを下し勝利。

*5 前々年ローマ賞、前年マクトゥームチャレンジラウンド3勝ち馬。

*6 スチュワーズカップ勝ち馬。この次々走でチャンピオンズ&チャターカップ、翌年にはクイーンエリザベスⅡ世カップで勝利。

*7 前年ビヴァリーD・ステークス、ブリーダーズカップ・フィリー&メアターフ勝ち馬。

*8 2022年勝ち馬のパンサラッサとロードノースに3着ヴァンドギャルドのみ。あのアーモンドアイですら1分46秒78である

*9 創設1996~1999年は2000m。2000・2001年に1800mとなったが、2002~2009年は1777m。2010年以降再び1800mに。

*10 2012年においては140を記録したイギリスの14戦無敗の化け物GⅠレース10勝馬フランケルを含め4頭入ったのが最多で、2006年、2019年、2021年は130超えが出なかった。

*11 後にダノンシャークがマイルCSを勝利しており、現在で見ればGⅠ馬10頭の形。

*12 アウトブリードの中でも、5代血統表の中に全く共通した祖先がいないサラブレッド。父ハーツクライも同じ。

*13 例として、テオレーマの母であるスターズアラインドはアーバンシーの2×3(!)、ノーザンダンサーの5×4×5、ダンジグの4×4というエルコンドルパサーも真っ青の強烈なクロスを持っている。アーバンシーは欧州で大きな勢力を築いた優秀な競走馬・繁殖牝馬であり、この血統により故郷で相手を見つけられなかったのが日本に輸出された理由だと言われている。

*14 但し馬ジャスタウェイ引退後の2015年にアニメ化された際は「ち、違うんだ。まさかあんな所でジャスタウェイがくるとは思わなかっ…」とぐっとソフトな台詞に変更されていた。

*15 なお持ち出した回数自体はゴルシの方が多いため勘違いされやすいが、この円筒を最初に持ち出したのはゴールドシップではなくカレンブラックヒル(第63回毎日王冠で2着を取った時の勝ち馬)である

*16 ジャスタウェイの馬主(太和屋氏)が関わっている作品の事を一貫して「マンガ」と表現している。

*17 競走馬は未勝利のままだと昇格できず、3歳未勝利戦が終わった後は出られるレースが格上挑戦しかなくなるため、大半の馬がここで地方に拠点を移すか競走馬人生を終える。オープンに上り詰めるにはそれなりの勝ち数も上げなければならない事を考えると、実力も相応にあったと考えられる。

*18 有名人で当たり率が高い馬主としては、尻尾のない牝馬ハルーワスウィートの大ファンで、父に拘らずその牝馬産駒を漏れなく買い続けた結果、2022年時点で全産駒8頭中3頭がGⅠを勝利した大魔神こと元プロ野球選手の佐々木主浩氏や、安い馬を買い付けて高い賞金額を稼ぎ出す手法で日本馬GⅠ級(Jpn1含む)最多の11勝を誇るコパノリッキー・高松宮記念馬コパノリチャード・地方重賞16勝を誇るラブミーチャンなどで約30億円稼いだ「Dr.コパ」こと小林祥晃などが挙げられる。

*19 ハーツクライはその後もシュヴァルグラン、スワーヴリチャード、リスグラシュー、ドウデュース……と数々のGⅠ馬を輩出し続けたことでラストクロップの2022年のセールでは1億超えも散見されるほど人気になった。

*20 実際に、2014年のドバイDF制覇後帰国して安田記念へ向け1週間前調教を行った際、ゴールドシップが同年春天で肉離れを起こし放牧しておりタイムを出せる馬が須貝厩舎にいなかった事から、急遽角居勝彦厩舎のエアハリファが駆り出された事もある。