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イクイノックス(競走馬)

登録日:2023/09/28 Thu 18:34:31
更新日:2025/01/04 Sat 01:30:57
所要時間:約 27 分で読めます


タグ一覧
20億超え 22年クラシック世代 Equinox G16勝会 G1の舞台で公開調教する奴 G1馬 UMA △天才◎天災 ぼくのかんがえたさいきょうのきょうそうば イクイノックス イスラボニータ産駒←ではない ウマ娘匂わせ勢 エクレア キタサンブラック産駒 キタサンブラック自慢の息子 クラシックディスタンス クリストフ・ルメール グランプリホース サラブレッド サラブレッド型の魔虚羅 シルクレーシング ターフの巨神 チート ドゥラメンテ産駒キラー ネタが多すぎてタグに困る項目 ノーザンファーム リアルカスケード リアルチート ルメール「誰でも乗れるポニー」←お前のようなポニーがいるか ルメールも楽しメール! ルメール最強の相棒 レイドボス レコードホルダー ワールドベストレースホース 世界最強 令和のマルゼンスキー 全てを蹴散らす天賦の才 分点 分点←文字通り競馬史の 勝てる気がしない 化物 名は体を表す 名馬 土着血統の集大成 変幻自在の魔王 天才の一撃 天才少年 天才少年→日本の怪物→世界最強 天皇賞馬 完全連対 寂しがり屋 屋久杉 年度代表馬 年間無敗 日本の誇り 最優秀3歳牡馬 最優秀4歳以上牡馬 木村哲也 母父キングヘイロー 渋滞する肩書 無事之名馬 無冠の帝王 無双の閃光 牡馬 特異点 生ける伝説 種牡馬 競走馬 繊細 脚質自在 虚弱体質 虚弱体質←唯一の弱点 輪眼 近代日本競馬の結晶 逃げ先行差し追い込みやりたい放題 逃げ馬キラー 遅れてやって来た世代の星 金の貰える調教 青鹿毛 馬のような何か



無双の閃光。

天皇賞(秋)。有馬記念。
ドバイシーマクラシック。宝塚記念。
昼となく夜となく見せた自在の脚質は、
世界の人びとの眼に焼きついた。
この先に挑む道。
どんな光で魅了してくれるのか。



イクイノックス(Equinox)とは、日本競走馬
2010年代中盤の日本競馬を代表する名馬・キタサンブラックの初年度産駒にして、同馬の代表産駒筆頭であり、現役時代の世界最強馬


目次

【データ】

誕生:2019年3月23日
父:キタサンブラック
母:シャトーブランシュ
母父:キングヘイロー
調教師:木村哲也 (美浦)*1
主戦騎手:クリストフ・ルメール(現役全てで騎乗)
馬主:シルクレーシング
生産者:ノーザンファーム
産地:安平町
セリ取引価格:-
通算成績:10戦8勝(海外1戦1勝) [8-2-0-0](完全連対)
獲得賞金:22億1544万6100円(日本歴代2位
     (国内)17億5655万6000円
     (海外)348万USドル(日本円で約4億5000万円*2)
主な勝鞍:
'21 東京スポーツ杯2歳ステークス(GⅡ)
'22 天皇賞(秋)(GⅠ)有馬記念(GⅠ)
'23 ドバイシーマクラシック(GⅠ)宝塚記念(GⅠ)天皇賞(秋)(GⅠ)ジャパンカップ(GⅠ)
主な表彰歴:
'22 JRA賞年度代表馬・最優秀3歳牡馬
'23 JRA賞年度代表馬・最優秀4歳以上牡馬
特記事項:
'22 皐月賞(GⅠ)・日本ダービー(GⅠ)2着
'23ドバイシーマクラシック・天皇賞(秋)でレコード勝ち


2023 LONGINES WORLD'S BEST RACEHORSE
レーティング:135ポンド(日本歴代一位)

【誕生】

2019年3月23日生まれの青鹿毛の牡馬。父はキタサンブラック。母はシャトーブランシュ。
名門ノーザンファームにて、キタサンブラックの初年度産駒として生を受ける。
馬名は天文学用語の「分点*3で、父と母の名*4中間という意味合いが込められている。

半兄に同じく木村調教師の管理馬で馬主も同じシルクレーシングである2021年ラジオNIKKEI賞勝利馬のヴァイスメテオール(父キングカメハメハ、8戦4勝)がいたが、2022年6月に追い切り中の事故で予後不良となってしまった。

母父は2000年高松宮記念覇者のキングヘイロー
また血統表にはその他にもキングヘイローの父にして1980年代ヨーロッパ最強馬として名高いダンシングブレーヴ、90年代の日本でブライアンズタイム・サンデーサイレンスと共に輸入種牡馬御三家を形成したトニービンといった名馬が名を連ねている。

青鹿毛の馬体に映える太い流星がトレードマーク。だがその形状のために付いたあだ名が「エクレア」。こしあん君といい母父キングヘイローの競争馬は甘味に例えられる見た目になりやすいようである
またディクタスの血は引いていないのだが右眼が輪眼*5であり、思わず萎縮してしまいそうなオーラを放っている。そしてこれらの特徴から容姿は何故か全く血の繋がっていないイスラボニータ(父フジキセキ)*6にそっくりと評判。

一方で父の頑健さは残念ながら受け継がなかったらしく、心身ともにやや虚弱気味*7*8なのがネックで、引退まで完全には解消されなかった。
……もっとも後述の戦績から、これだけがイクイノックス唯一にして最大の弱点だったといえる

【気性】

イクイノックスについては、能力の高さもさることながらその知性の高さに触れられることが多い。自分でスパートを仕掛ける位置が分かっていたようで少し合図をしただけで加速する操縦性の高さを見せていた。
一方で寂しがり屋で繊細な面もあったようで、現役時は後述する同期にして同厩のジオグリフ(父ドレフォン)が居ないと食事も取れなかったほど。
古馬になってからは色気を見せるようになったようで牝馬を見つけて「ブブブ」と鳴いたり、馬っ気を見せて調教助手にたしなめられるなんてことも有ったのだとか。

【戦歴】

天才少年の華麗なるデビュー

デビュー前に管理していた木村調教師がやらかしたせいで一時期転厩していた*92021年8月28日に新潟競馬場の新馬戦芝1800mでデビュー。鞍上はかつてサトノダイヤモンドや「九冠馬」アーモンドアイなどの主戦を務めたフランス出身のトップジョッキークリストフ・ルメール
同じキタサンブラック産駒で後にJBCクラシック覇者となるウィルソンテソーロや後の阪神JF覇者サークルオブライフもいたこのレースで早速2着メンアットワーク6馬身千切捨て、才能の片鱗を見せる。

続く東京スポーツ杯2歳ステークス(GⅡ)*10でも豪脚を見せ、アサヒ相手に2馬身半でキタサンブラック産駒として重賞初勝利。上がり3Fが32.9という破格の実力を見せた。一方で一部の実況で『イクノ』イックスと名前を間違えられてしまうことに
これらの活躍でその素質の高さが評価されており、3歳ではクラシックを引っ張る有力馬の一頭になる……と、思われていた。

不運と屈辱のクラシック‐身体は脆く、冠もまた遠く‐

疲労が抜け切らなかった為、2歳GⅠには出走出来ず、東スポ杯からトライアルを挟まずに直行というローテを不安視する声もあったものの、その素質を買われ、迎えた皐月賞では3番人気に支持される。
ところが、期待に違わぬ末脚こそ見せたものの、速仕掛けし過ぎたせいで福永祐一騎手の神騎乗によりエスコートされた同厩ジオグリフに荒れた内側によれてしまったところを差され一馬身差の2着に終わる。尚福永騎手はこの年の暮何故勝てたか全くわからない様子を見せていた

今度こそと迎えた日本ダービーでは、虚弱体質を心配する声やダノンベルーガの調教に対する高評価もあり1番人気とはいかなかったものの、やはり皐月賞で見せた強さを支持され2番人気に。
デシエルトが引っ張るハイペース展開の中、直線で再び鋭い脚を見せるも、ハミが抜けて後方からであった為、馬群から抜け出すのに手間取ったうちに武豊騎手の檄に応えたドウデュース逆襲の末脚にクビ差で届かず2着

更に言うならどちらのレースも大外8枠18番を引いており、運の無さが足を引っ張っていた。
その後ダービーでの左脚へのダメージが大きかったこと等が判明した為菊花賞を回避することに。実力を期待されながらも父とは違いクラシック無冠という悔しい結果となった。

天才少年の逆襲-大欅の向こう、見果てぬ海の果てで“怪物”が目醒める-

夏休みを挟み、雪辱を誓い挑んだ天皇賞(秋)
GⅠ未勝利ながら1番人気となった彼は、5年前に父が大雨の不良馬場の中後方から追走し勝利をおさめた時と同じ枠に収まることとなる。

レースは世界のパンサラッサ10馬身以上の差をつける逃げを披露。
......それはまるで、24年前の夢の先を再現したかのような美しき大逃げであった。*11
観客はみなその光景に酔いしれるとともに、今度こそ、全人馬が大ケヤキの向こう側から無事帰ってくることを祈念していた。

直線に入ってもその差は残ったままであり、後続の馬たちは万事休すと思われた── 実際この時鞍上のルメールは一塊になってた馬群のせいでパンサラッサが大逃げしていたことを直線になるまで気づけ無かったという。
が、「天才」の諦めは悪かった。
後方からの鬼脚で一気に襲いかかると残り50mでギリギリ捕らえ、古馬を相手にGⅠ初勝利

「イクイノックス迫る!迫る!迫る!縮まる!並んだ!!届いた!!!捉えた!!!」
(NHK 小宮山晃義局員)

5戦目という史上最短キャリアでの勝利、前年のホープフルステークスから続いていた平地GⅠでの1番人気の連敗*12を止めつつ、上がり3ハロンは自己最速且つメンバー中最速の32.7*13という、記録尽くしの勝利となった。
また、二年連続のためインパクトが薄れがちだが、3歳での天皇賞秋制覇史上5頭目*14となる偉業だった。

これでキタサンブラックは自身と産駒による天皇賞親子制覇を達成するとともに、初年度産駒でいきなりGⅠホースを輩出するという、種牡馬として素晴らしいスタートを切ることになった。
そして何より、本レースは全人馬が無事に完走を達成。人々がどうしても見たかった、"沈黙の日曜日"の先の景色がそこにはあったのである。


さらに有馬記念では、タイトルホルダーが引っ張るペースを中団やや後方から追走すると、四角を馬なりのまま一まくりして先頭に立ち、福永祐一の駆る菊花賞2着馬ボルドグフーシュの追い込みを軽くあしらって2馬身半差で押し切ってのGⅠ連勝。これにより、有馬記念を史上最速の父子制覇。一気に現役最強格にまで成り上がる事となった。(一方かなり掛かりまくっておりゴール後も中々止められずルメールは焦る羽目になった)

この年、中長距離の芝GⅠを2勝したのはタイトルホルダーとイクイノックスだけであり、この2頭が直接対決した有馬記念をイクイノックスが制したことで*15、キタサンブラックの初年度産駒が、いきなり年度代表馬の最有力とも見られていた。
そして2023年1月10日、同日に発表された2022年度JRA賞において、イクイノックスは年度代表馬及び最優秀3歳牡馬に選出
史上5組目となる年度代表馬の親子受賞という快挙を成し遂げた。

またこの時獲得したレーティングは126ポンドで豪州王者ネイチャーストリップ*16とタイ。この上にはフライトライン(140)バーイード(135)が居たが、どちらもこの年に引退した為、イクイノックスは事実上の現役世界最強馬として扱われることになっていった

なお父同様脚質は逃げ…ではなく母父を彷彿とさせる差し。父の同期でライバルだったドゥラメンテが差しだったのに産駒筆頭株のタイトルホルダーが逃げという逆転現象が前々からネタにされていたが、よりにもよって共に初GⅠホースかつ初年度の代表産駒の脚質が違うことに加え体質の脆さまで合わさりファンの間で「こいつらの親、やっぱ実は逆なんじゃないか?」とネタにされていた。3歳の終わりまでは……

世界に轟く天賦の才‐“尊敬”が“畏怖”に変わる時‐

4歳初戦はドバイSC。初めての海外遠征ゆえに長期輸送とその後の調整という課題がつきまとい*17、出走馬は前年覇者シャフリヤール、香港ヴァーズ覇者ウインマリリン、BCターフ覇者レベルスロマンスと強豪揃い。しかし、そんな状況下でイクイノックスは桁違い過ぎるパフォーマンスを見せる。

スタートをうまく決めると、逃げ馬不在の中で他馬が控える様子を確認するなり、なんとこれまでのレースと正反対の逃げを敢行。1000m62秒弱のペースで馬群を引っ張り、最終直線では馬なりで先頭を維持、手綱を少し押してペースを上げると、なんと鞭を入れて追っている後続を引き離し始めた

HERE'S THE TITAN OF THE WORLD'S TURF!
*18
───Larry Collmus (現地実況)

この間ルメールは一切イクイノックスに鞭を入れておらずそれどころか追う動作すらろくに行わず、後ろを振り返る余裕すらあった。結局残り50mあたりで手綱を緩めると、後続が必死に追う中でただ1頭余力を残したまま1着を確保
公開調教だったのかと思わせるほどやりたい放題やったにもかかわらず2着の愛ダービー馬ウエストオーバーとは3馬身半の差がつき、勝ちタイム2分25秒65はコースレコード*19という文句のつけようがない圧勝を披露。

"Absolutely monster performance!!"


嘗てルメールは同じくドバイシーマにてハーツクライで逃げ切り勝ちを納めたことがあったがそれを上回る差し馬が先頭を走っただけにしか見えない恐怖すら感じる勝ちっぷりから、4月にリリースされたロンジンワールドベストレースホースランキングにて、暫定レーティング129ポンド*20を獲得。この時点で堂々の世界1位に躍り出た。

既に秋にはヨーロッパやアメリカへの遠征も噂され、管理担当の木村哲也調教師も「世界中のあらゆるレースがこの先のオプションになっている」とコメントしている。
と言うかウエストオーバーの陣営に至っては「彼(イクイノックス)がどこに行くにせよ、私達は彼から遠ざかりたい(=イクイノックスが今後何処走ったとしても、ウエストオーバーを一緒に走らせることはない)」とコメントする有様だったり。最も引退後、ウエストオーバーは日本に種牡馬として来ることになったが。そして以降暫くネットの検索でイクイノックスを検索するとサジェストが酷いことになり、海外の競馬民は父のキタサンブラックを調べて検索した結果謎の美少女の画像が出てきて困惑するオチが付いた

更に付け加えると2着ウエストオーバーは後にサンクルー大賞優勝・凱旋門賞を含むGⅠレース2着3回、3着ザグレイが独GⅠバーデン大賞優勝、4着モスターダフも同年の英GⅠを2勝……といずれも欧州の最前線で目覚ましい実績を残すこととなった。
そして翌年のドバイシーマクラシックでは、このレースで7着のレベルスロマンスが勝利、5着のシャフリヤールは2着とワンツーフィニッシュを決めている。
それらが相手にもならなかった辺り、勝ちっぷりの異質さが際立っていると言えよう。


次走は宝塚記念への参戦を表明。初めての関西主場参戦は春秋グランプリ制覇がかかる一戦となった。
その宝塚記念のファン投票では最終的に21万6379票を集めて1位に選出、去年のタイトルホルダーのレコード(19万1394票)を早々に更新することとなった*21
なお現世界最強馬ということもあり厩舎のある美浦には海外メディアも押しかけ、美浦トレセンの坂路が改修工事になった関係で栗東への遠征にもメデイアが追従し注目されていた。

本番では1.3倍と2番人気の天皇賞馬ジャスティンパレスの8.5倍を大きく突き放す断然人気に支持された。
スタートは出足が良くなく、内枠だったこともあり周囲にかぶせられて後退し後方からの競馬。
幸いにも前半1000m58秒台とハイペースの展開だったものの、ジェラルディーナのマークでなかなか外に出せずジェラルディーナに追走しようとするもなかなか前に行こうとせず、結果ルメールの咄嗟の判断により大外ブン回しながら追い込むという強気の競馬を敢行

「外からあっという間に来たぞーー!!外からイクイノックス!!」」


最後の直線ではその豪脚を以ってハイペースで崩れる先行勢を撫で斬りにすると、差しに来たジェラルディーナとジャスティンパレスも外からねじ伏せ、最後は馬群を捌きながら後方から上がり最速で強襲を仕掛けた池添謙一駆る伏兵・スルーセブンシーズ*22ムチ一発でキックバックが右眼に当たりながらもクビ差で抑え込みGⅠ4連勝を達成した
これによりトップタイだったタイキシャトルも追い抜いてJRA史上最速の混合戦4勝達成、しかもそのすべてを差し/先行/逃げ/追込と全く別の戦術で勝利し、ジャスタウェイ以来のドバイGⅠを勝った日本馬が次走でも勝利、そして史上初の青鹿毛馬の宝塚記念勝利馬となった。

史上16頭目の有馬記念と宝塚記念の春秋グランプリ制覇、史上21頭目となるJRA獲得賞金10億円突破馬となり、世界一の走りをもっての忘れものを回収することとなった。
何より『宝塚記念の一番人気は勝てないうえ惨敗する』というジンクス*23や万全の体調では無いといった多くの不利すらも吹き飛ばす見た目以上の勝利であった。

WORLD CHAMPION-そして、日本の誇りになった。-

秋は以前からの予定通りジャパンカップをメインに据え*24、史上3頭目*25となる2連覇を目指して天皇賞(秋)から始動することに。
秋を超えたイクイノックスはさらなる成長を見せ、もはや芸術品ともいえるような馬体へと仕上がっていた。掛かり気味になった元調教師がその馬体を「屋久杉」に例える怪文書をスポーツ新聞に著すような一幕も。が、その評価は間違っていなかった

迎えた本番。
競馬法施行100周年記念とされた本レースは、11年ぶりに今上天皇が行幸される天覧競馬として開催された
第126代天皇・徳仁の東京競馬場への行幸は皇太子時代の2014年日本ダービー以来9年ぶり、皇后雅子は皇太子妃時代も含めて初。
徳仁は皇太子時代に御台覧なされた2007年日本ダービーでウオッカによる64年ぶりの牝馬ダービー制覇という歴史的快挙を目撃しており、今回も「何か」が起こる事を予感させた。
出走馬もグレード制導入後最低頭数タイとなる11頭という少なさだったが*26、イクイノックスをはじめとして、春の天皇賞馬ジャスティンパレス、GⅡ2勝で勢いに乗るプログノーシス、そして何より栄えあるダービーでイクイノックスを下したドウデュースなど、豪華なメンバーが集まった。実はGⅠ馬の数だと手薄とされた宝塚より少ないのは内緒*27

レースが始まると、大阪杯馬ジャックドールが逃げ、もう1頭のキタサンブラック産駒で去年のセントライト記念馬ガイアフォースが直後についてく…ついてく…つける展開に。後者の方が早いスタートを切っており、それを外から交わすように飛ばしていったことで少頭数らしからぬ全く緩まないハイラップを刻み続け*28、1000m通過タイムが何と57.7*29

前年と同様かなりのハイペースとなり、他馬を突き放した大逃げに……ならなかった。前年と異なり、ゲートを出たなり先行しマイペースで直後の3番手を追走する世界王者の姿がそこにあったからである。
ちなみにこの3番手の位置での1000m通過が推定58.5前後。これでもかなり速い方である。
退けば勝算のない前方は押し続けるしかなく、大きく離されれば勝算のない中位以下も追走を余儀なくされたため、隊列の最後尾ですら60秒を切る超ハイペースになってしまった。

最後の直線に入ると、とんでもないペースで逃げていたジャックドールやその他先行馬がバテはじめ、それを合図に後方各馬がスイッチオン。
ハイペースによる先行勢不利な展開もあり、最後は差し馬や追い込み馬の末脚勝負になるはずだった。
……ただ一頭、なぜか全く脚色の衰えない先行馬を除いて

「ここはもう敵はいない!

イクイノックス連覇でゴールイン!!

府中の風になった!!」

結局、ハイペースに難なくついていったイクイノックスが最後の直線で悠々と先頭に立ち、持ったままで後方馬の猛追をあざ笑うかのようにゴールインGⅠ5連勝を飾った。

......はっきり言って、後方の馬が絶対的有利なレース展開であった。前述の通りジャックドールが作らされたペースは超がつく高速展開であり、先行馬の末脚など残るはずもない。
実際2・3着に入ったジャスティンパレスプログノーシスはそれぞれ道中最後方に位置し、後方待機策から最終直線での末脚勝負へと賭け、そして失速する先行勢を尻目にそれに成功している*30
間違っても、道中三番手にいる馬が二馬身差で勝てるようなレースではなかったのだ。

にもかかわらず、イクイノックスは最初の200m以外11秒台のラップを余裕で走り続け先頭になった1600m通過タイムは1:32.1と2023年のヴィクトリアマイルと同タイム、1800m通過タイムに至っては1:43:5と前年の毎日王冠で記録された東京1800のサリオスのレコードを0.6秒上回っており、その結果掲示板に表示されたタイムは何と…

レ コード

1.55.2

掲示板にこの表示が出た瞬間、場内はどよめきと拍手が起こった。
イクイノックスが叩き出したのは2011年の同競争でトーセンジョーダンが樹立した伝説的レコード1:56.1を0.9秒上回る、異次元すぎる時計*31であった。
この結果超ハイペースなのにレースのペースそのものはミドル扱いになるバグみたいなことが起きることに
これが次走の叩きと思われていた馬が直線をノーステッキのまま先頭に立ち明らかに余力を残しての競馬でだったとは到底信じ難い*32誰が呼んだか天覧調教

またこの記録は古今東西で行われた世界中全ての芝2000m記録を上回るものでもあるとされた*33
鞍上のルメールもこれにはおったまげたようで、「スゴイ!信じられない……」と驚嘆している様子がジョッキーカメラに映っている。

その後は天覧競馬ということで、ルメールから両陛下へ馬上からの最敬礼が行われた*34流石に無許可で下馬して跪くマネはできなかったようだ。
歴史的ともいえるこのレースに両陛下(特に自身2度目となる「歴史の目撃者の一人」となった徳仁陛下)も大満足のようであり、惜しみない拍手をお送りになった。なお陛下はイクイノックスの単勝馬券をご購入されていたらしい。そしてルメールは地下でウイニングライブを行った



ウルトラレコード樹立の大激走の後、かねてからメインに据えていたジャパンカップへの参戦を表明。
このジャパンカップには、牝馬三冠を制したリバティアイランドを筆頭に、復活を期す競馬界のエースタイトルホルダー、秋天回避を余儀なくされるも今度こそ復帰する二冠牝馬スターズオンアースといったドゥラメンテの筆頭産駒たちに加え、快速逃げ馬パンサラッサ、秋天の逆襲を誓うドウデュース、連覇を狙う前年覇者ヴェラアズール(父エイシンフラッシュ)といった国内の実力馬たち、更には海外からもGⅠ2勝を挙げたフランスの騙馬イレジンが参戦し*35GⅠ馬計8頭というドリームマッチ、3年前に匹敵する怪獣大決戦の様相となった。

まさに世紀の決戦にふさわしい内容となったが、あくまでイクイノックスは挑戦を"受ける"側
依然最有力候補であることには変わりなく、単勝人気は1.3倍と、お嬢さん(3.7倍)と共に二強寄りの一強ムードで支持を集めた
さらに何の因果か、枠順はリバティが1番イクイが2番という二強が隣り合う構図となり、一枠のGⅠ勝数が9つという珍事までおきた。そのせいで鉄火場のオッサンらはギリギリまで枠連1-1と馬連1-2で迷うことになったが、最終オッズは結局同じ(1.8倍)になった。安すぎ。尚、イクイノックスはパドックの中で興味深そうにずっとお嬢さんを見ていた

本番では、事前宣言の通りスタコラサッサとパンサラッサが大逃げを打つ展開となる。一時は二番手タイトルホルダーに10馬身以上の差をつけるに至り、場内を大きく沸かせた。
ただ、他の馬は決して追走することなく、イクイノックスは天皇賞秋と同じく三番手で虎視眈々と隙をうかがい続けた

最終直線、パンサラッサが逆噴射垂れてきたのを確認すると、閃光の末脚が炸裂する。前の二頭をあっさりかわして先頭に立つと、ノーステッキで更なる加速を開始
後方からリバティアイランド、スターズオンアースといった末脚の鬼達が追い込んできたが、その差は縮むどころか広がる一方であった……!

“世界最強”の証明!!

イクイノックス見事!!

この強さに異論はなかった!!

最終的に、前方のポジションで競馬を進めたイクイノックスが、リバティアイランドとの斤量差4キロをものともせず、またもや最後は緩めながらメンバー最速の上り3ハロン33.5秒をマークして優勝。
無敗GⅠ6連勝という史上初の快挙*36を達成した。

勝ちタイムは一年前惜敗を喫したダービーの記録を0.1秒上回る2:21.8であり、2着のリバティアイランドに4馬身差をつけた無慈悲すぎる圧勝劇であった。
……斤量差が4キロ有るので4馬身差はある意味間違ってはいない。それを不利な方がやったのである

また、この勝利によって規定賞金5億円及びドバイSCとの連勝による報奨金200万ドル(約3億円)を獲得。累計賞金額が20億円を超え、日本歴代一位*37に輝くことになった2分21秒で8億稼いだため、イクイノックスの時給は単純計算で約200億円となる。メッシクリロナもびっくりである。

数々の名馬にまたがってきたルメールも世界王者の規格外すぎる走りには感動を抑えきれなかったようで、レース後はWHAT A HORSE(なんて馬だろう)!」と声を漏らした。また、感極まるあまりに戻り際やヒーローインタビューでは調教師と共に男泣きする様子が映っているただその後のインタビューではそんな相棒を「誰でも乗れるポニー」*38と表現。ナリタブラリアンとの対決が期待される。

【評価】

その賢さに起因する非常に高い操縦性が最大の持ち味。特にその脚質はレース展開に応じて自由自在であり、差し/先行/逃げ/追込全てでGⅠレースを勝利している
最終的に紛れの少ない好位型の王道競馬に落ち着き、神馬皇帝といった同じく賢さが売りと言われた大名馬たちを思わせる。

そして当然ながら並外れた身体能力を保持しており、ドバイシーマクラシックや天皇賞秋といった大舞台でレコードを更新したほか、ジャパンカップでは史上二位の勝ちタイムをたたき出している。
生涯鞍上を務めたルメールはイクイノックスについて、「スピード、スタミナ、瞬発力全てを持っており、ハートも強い」と評した。
そんな馬が戦術的に不利をつけられる展開が大凡想像できない自在脚を見せつけるさまは、他馬はどうやって戦えばいいんだと思わざるを得ないものであった。
ちなみに、後にルメール騎手、川田騎手、戸崎騎手によるリーディングジョッキー座談会*39にてルメール騎手がイクイノックスに勝つ戦法として『スロー逃げを行い、最後の直線で仕掛け62km/hを維持しつつ、直線時点で65km/h想定のイクイノックスに10馬身以上のリードをとっていれば勝てる可能性がある(意訳)』*40と述べている。戸崎騎手は勝ち目あることを喜ぶ一方、川田騎手は勝てない*41と断言しているが。

更に、倒してきた相手がツワモノぞろいで勝ち方がド派手だったのも評価をあげるポイントとなっている。
ドバイで倒した世界の強豪をはじめとして、三冠牝馬リバティアイランドエースステイヤータイトルホルダーなど、現役最強格ともいえる相手をその脚で叩き潰している。

なんの因果か、かつて父キタサンブラックが一度も先着出来なかったドゥラメンテの産駒に対しては一度も先着を許さず、*42また一度先着を許したジオグリフドウデュースには敗北後のレースでは先着を許さなかった。

そして勝ち方に関しても、
  • 20馬身以上離されながらも直線で追いつく
  • 持ったままで最終コーナーを曲がりつつ突き抜ける
  • 初の海外、且つ初めての逃げなのに直線でいつも通り末脚を炸裂させ、ノーステッキかつ最後は減速してレコード勝利
  • 万全の状態で無いにもかかわらず大外大捲りという負担の大きい戦術で追い抜く
  • 大逃げする逃げ馬を追走し続けてレースの主導権を握ることで他の逃げ先行馬のスタミナを削り切りすり潰しながらも自身は全くペースを落とさず先行したまま追い込み勢から逃げ切る
  • ↑から中3週という短期の疲労・距離延長を物ともせず、先行3番手から上がり最速の末脚で最後は流す余裕を見せつける

……と箇条書きしただけでも如何に凄まじいことをしていたかが分かる。
さらに、参戦が叶わなかった引退年の有馬記念ではジャパンカップで突き放した三頭が上位を独占しており彼が去った後の日本競馬界を担う存在になることに疑いの余地はないだろう。

そのパフォーマンスは国際的にも高く評価され、2024年1月23日のロンジン・ワールドレーシングアワードにて発表された最終レーティングは135*43*44

この数値は日本の競走馬としてはエルコンドルパサーを遂に越え歴代1位となった
また、この値は世界的にみてもかなり傑出した値であり、21世紀に入って実質135ポンド以上の値を与えられた馬はイクイノックス含めわずか8頭*45という凄まじいことになっている。
そして、2014年のジャスタウェイ以来となる、日本馬による年間レーティング世界1位を達成した。暫定的に発表されたJRAレーティングでも133という破格の値をだしており、一部からは「流石に出しすぎ」「掛かり気味JRA」などという声が上がったが、公式レーティングはそれすら上回るとてつもない値を出したため沢山の驚愕と祝福の声があがった。一番掛かり気味だったのはロンジンだったらしい。
ちなみにドバイシーマクラシックのレーティングは当初129ポンドとされていたが、この最終版をリリースするにあたって再検討がなされ、確定値として131に上方修正されている。

更に、ラストランとなった2023年ジャパンカップは、同年の世界一の競走を称える「ロンジンワールドベストホースレース」*46に日本のレースとして初めて輝いた。


"無双の閃光"イクイノックス
その強さはもはや世代のくくりをこえ、競馬史に名を遺す最強馬たちと肩を並べる、あるいは追い越すと評する声も数多い
ジャパンカップでは、実況および解説からも競馬に絶対はないが、イクイノックスには絶対があったという旨の発言が聞かれた程である。
一競馬ファンとしては、彼の走りを見られたことは間違いなく貴いものだったといえるだろう


【世界が待ち望む第二章】

最大の目標とされてきたジャパンカップ勝利後はこれで引退という見方が大勢を占めていたが、陣営は当初「有馬記念も、ジャパンカップが最後になるのも含めて全てが選択肢になる」として、一時保留という流れになっていた。

そして2023年11月30日、馬主のシルク・レーシングより、イクイノックスの引退・社台スタリオンステーションでの種牡馬入り決定という情報が発表された。後に明らかになった売却額はなんと50億。そして初年度の種付け料はなんと過去最高額の2000万。にもかかわらず1日で満口となった*50
通算戦績10戦8勝2着2回の完全連対王者は世界最強のまま、ターフを後にすることとなった

今後は種牡馬としてまた新たな戦いへと挑むこととなったイクイノックス。パパや種馬続行となったおじいちゃんとの争いも激しくなりそうである。
血統的にもサンデーサイレンスからだいぶ離れているということもあり、かねてから種牡馬としての期待が非常に大きかったところ、まずはかのアーモンドアイへの種付けが発表された。当然、他にも数々の名だたる種牝馬とも話が纏まるだろうことは想像に難くない。
今後、その子孫達が彼が記した伝説を後世に繋いでいくことを切に願う

ちなみに、社台スタリオンステーションに着いたイクイノックスの馬房はなんと父キタサンブラックの向かい側。netkeibaで公開された公式動画では何かを感じ取ったのかキタサンブラックを見つめていた。末永く親子で仲良く暮らして欲しいものである。
牧場でのイクイノックスは非常に人懐っこく、手を差し出されるとペロペロ舐めてくることもあるという。世界最強馬の姿か?これが...
更に翌年は自身の隣の馬房にドウデュースがやって来た。

2024年3月~6月に開催された月刊優駿による2010年、2015年に続いて3回目のファン投票「未来に語り継ぎたい名馬BEST100」では総合41,632ポイント獲得で初登場から第2位にランクイン。第1位のディープインパクトが総合70,316ポイント獲得で3連覇の貫録を見せつけたものの、世代別ランキングだと10代、20代ではディープインパクトを上回って第1位であり、若年層に過去の名馬をも上回る衝撃を確かに与えていたのだといえる結果となった。


そして、イクイノックス、ありがとう
あなたの素晴らしい走りを脳裏に焼き付け、父イクイノックスという競走馬がまたこのターフを躍動することを楽しみにお別れしたいと思います。
――イクイノックス引退式 シルクレーシング米本昌史氏より




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最終更新:2025年01月04日 01:30

*1 後述する理由により2021年7月29日から10月31日までは岩戸孝樹厩舎に転厩。

*2 為替レートは当該年の1月1日時点のものが採用されるため(イクイノックスが制したドバイシーマクラシックは2023年開催)、1アメリカドル=約131円(2023年1月1日時点)で計算。

*3 昼と夜の長さがほぼ等しくなる時(日本で言う所の春分の日・秋分の日)のこと。ちなみにイクイノックスの誕生日は3月23日で、春分の日(3月20日もしくは21日)から少しズレている。

*4 父のキタサン「ブラック(英語で黒)」、母のシャトー「ブランシュ(フランス語で「白」)」。

*5 大きく見開き、白目をむいて周囲を見つめる目のこと。フランスの競走馬ディクタスの子孫に特徴的なことからディクタスアイとも呼ばれる。イクイノックスの他にはステイゴールドやサッカーボーイなども該当する。尚、他に片目だけが輪眼の競走馬はタニノギムレットやエフフォーリアがいる

*6 父のラストクロップであり第74回皐月賞馬

*7 後述の東京スポーツ杯2歳ステークスから中ほぼ半年で皐月賞ぶっつけ、ダービー後も腱の故障もあって秋天ぶっつけ。また引退の理由の一つもJCでの疲労が大きく有馬記念までの回復が難しいという判断からであった

*8 メンタル面もそれほど強くなく、23年宝塚記念時の栗東遠征は輸送問題も理由の一つ。同レースに出走したジオグリフも同時に遠征しており、国内遠征であるにもかかわらず互いが互いの帯同馬として働いている。

*9 自厩舎所属の若手騎手に対して暴言や暴行などのパワハラ行為を行ったとして一時期調教停止処分を受け、裁判所からも罰金刑を課されている。あのさぁ…。そのため、ネット上には「もしイクイノックスが木村調教師の管理馬じゃなかったら素直に応援できたのに」などというファンの声が散見されている。確かに木村調教師は許されないことをやってしまったが、それで彼の管理馬を貶して良い訳ではないことをしっかり認識しよう。

*10 元々はGⅢだったがこの年よりGⅡに昇格。

*11 偶然にも、1998年天皇賞秋、2022年天皇賞秋の1000m通過タイムは全く同じ57.4秒である。

*12 ここまで16連敗。複勝圏内に入ったのも皐月賞のドウデュース、天皇賞(春)のディープボンド、秋華賞のスターズオンアースのみ。なお、「平地」とあるようにこの連敗記録は平地GⅠ競走のみのものであり、障害GⅠ競走では2022年中山グランドジャンプで1番人気に推されたオジュウチョウサンが勝利している。Jpn1も含めれば、川崎記念のチュウワウィザード、マイルCS南部杯のカフェファラオも1番人気で勝利している。

*13 尚、2着となったパンサラッサは36.8と約4秒差であり計算上は20馬身離れていたことになる

*14 ハツピーマイト(1937)、バブルガムフェロー(1996)、シンボリクリスエス(2002)、エフフォーリア(2021)が既に達成

*15 更に言うのなら前走秋天でシャフリヤールにも、今走ではエフフォーリアにも勝利した為、前年のクラシック世代の代表全馬に勝利することとなった

*16 主な勝鞍に世界最高賞金芝競走ジ・エベレストや英GⅠキングズスタンドS。騙馬として7年にも渡る現役生活を過ごし、GⅠ9勝をマークした名スプリンター。

*17 おまけに体質が足を引っ張り、輸送後には疲労回復のためビタミン剤の点滴を受けている。それでもレース当日まで体調は最悪で、イクイノックス自身がパドックで気合いを入れて走れる状態になったのだとか

*18 アメリカ競馬の芝戦線で驚異的な成績を残したワイズダンが現役中に授かった異名“Titan of the Turf”に因むもの。直訳するなら『世界の芝の祭典に巨神が現れた!』であろうか

*19 旧記録は2分26秒65。’21ドバイSCで仏ダービー馬ミシュリフがクロノジェネシス・ラヴズオンリーユーを下した一戦で記録されたもの。

*20 この時点で歴代日本馬でエルコンドルパサー(134ポンド)、ジャスタウェイ(130ポンド)に次ぎ、オルフェーヴルやエピファネイアと同値。しかしいずれも最終的な値であり発展途上であろうこの段階でこれだけの数値を得たことは恐ろしいと言わざるを得ない。後述するが事実最終的な値はこれ以上となった

*21 そのタイトルホルダーは16万5067票を集めて2位に選出。天皇賞(春)での競走中止以降は秋まで全休となっているが、それでも3位のジェラルディーナ(ジェンティルドンナ産駒で2022年エリザベス女王杯優勝馬、ファン投票では13万9111票を集める)と約2万5000票の差を付けている辺り人気の高さがうかがえる。

*22 池添が主戦を務めたドリームジャーニーの産駒で、この年の中山牝馬ステークス勝ち馬。宝塚記念時は10番人気(単勝オッズ55.7倍)という正に伏兵であり、そこからイクイノックスにクビ差まで詰め寄る大健闘を成し遂げた。また、次走に選んだ世界一のレース凱旋門賞では掲示板入りする健闘を見せ、宝塚のパフォーマンスが決してフロックではないことを示している。ちなみにドリジャの産駒ということで池添はこの宝塚記念を是非とも勝ちたかったらしく、レース後には悔しさが残るコメントをした他、自身のTwitterでも「どこがグランプリ男(池添の異名の一つ、春秋グランプリを計7勝したことから)やねん ここで世界一に勝ってこそのグランプリ男でしょ」と悔しさを滲ませていた。

*23 2021年にはクロノジェネシスが一番人気で勝っておりジンクスという表現は誇張かもしれない。ただ、それ以前には白いアイツの立ち上がり事件にはじまり6連敗(2015~2020)を喫してている。

*24 実はジャパンカップにはJRAの褒賞金制度が設けられており、指定する海外競走をその年に優勝した馬が出走した場合には着順によって褒賞金が授与される。ドバイシーマクラシックもその指定海外競走の一つであり、それを制したイクイノックスはその制度の対象に選ばれた。ちなみに金額は1着だった場合は海外馬300万アメリカドル・日本馬200万アメリカドル、2着だった場合は同120万アメリカドル・同40万アメリカドル、3着だった場合は同75万アメリカドル・日本馬25万アメリカドル、4着以下だった場合は同20万アメリカドル・同10万アメリカドル。

*25 これまでシンボリクリスエス(2002年・2003年)、アーモンドアイ(2019年・2020年)が達成。

*26 ちなみにこの少し前の8月、皐月賞・日本ダービー・宝塚記念で対戦した同期の菊花賞馬アスクビクターモアが熱中症で急逝しており、もし彼が生きていれば参戦していたかも知れない…。

*27 ’23宝塚記念に出走したGⅠ馬は本馬を含めて8頭(うち2頭はホープフルS勝ちのみ)。なお本年の天皇賞(秋)には本稿で挙げる4頭の他に’22牝馬二冠を達成したスターズオンアースもエントリーしていたが、蹄の異常により残念ながら出走回避となっている。

*28 一般に出走頭数の少ないレースではあまり激しい位置取り争いにならずペースが落ち着くことが多い、というのが定説とされている。実際に戦前の各メディアでもミドル~スローになるという展開予想が多かった。

*29 2000mレースにおける1000m通過タイムはそのレースのペースを表す指標となる。開催地や馬場にもよるが、おおむね60秒を基準とし、それより早い場合ハイペース、遅い場合ローペースと判断される。

*30 何なら、一年前の大逃げハイペース天皇賞でもイクイノックスは道中10番手辺りに位置しており、脚を溜める展開から勝利を収めている。しかし、その際の圧倒的な前との差に焦らされ、前走の宝塚でも追い込みにならざるを得なかった結果ギリギリだった為今回以降は先行を選んだとも言える

*31 なおトーセンジョーダンによるレコード樹立以前は、ツジノワンダーが新潟競馬場でマークした1:56.4であり、0秒3を縮めるのに10年掛かっている。

*32 ノーザンファーム代表の吉田勝己氏もレース後のインタビューで「これ以上があるのかと…。凄いペース。前半57秒7で、後半は57秒5。ありえないですよ。常識から外れています」と答えている

*33 1999年にチリでクリスタルハウスという牝馬が残した1:55.4が旧世界レコードとされている。ただ、国内ならともかく海外では国や競馬場ごとに助走距離や計測開始基準が異なるため、世界レコードというのはあくまで参考記録扱い

*34 ちなみに2005年の天覧競馬な天皇賞(秋)でも、勝者となったヘヴンリーロマンスの騎手松永幹夫が同様の馬上敬礼を行っていた。

*35 本来は日本生まれのアイルランド調教馬で、この年のイギリスセントレジャーを制したコンティニュアス(父ハーツクライ)も参戦する見込みだったが、残念ながら出発直前に歩様の乱れが見られたため無念の出走断念を余儀なくされた。

*36 GⅠ6連勝という記録はテイエムオペラオーロードカナロアが既に達成していたが、二頭ともその最中に一度敗北を喫しており(それぞれ産経大阪杯(当時GⅡ)、セントウルS)、他の重賞含め無敗でGⅠ6連勝という記録はイクイノックスが初めて。

*37 翌年にウシュバテソーロがサウジカップ及びドバイワールドカップで共に2着となった際の賞金加算で僅かに上回ったため、現在は日本2位。

*38 もちろん決して「弱い」という意味ではなく、イクイノックスのとてつもない賢さや操縦性の高さに対する心からの賛辞であり、ルメールの謙虚な姿勢とイクイノックスへの愛情の現れた素敵なユーモアである。ただ、競馬ファンから「こんなポニーいてたまるか」と総ツッコミをくらったのは言うまでもない。

*39 https://youtu.be/MTp1LA1cOME?si=N1z2T5R1FcmALR_p

*40 近い例だと2022年秋天でのパンサラッサが勝ち目ある戦法をとっていたことになる。

*41 そもそもルメール騎手が挙げた戦法を実践するには馬に要求される身体能力の水準が高過ぎるうえ、肝心のイクイノックス自体が(ルメール騎手鞍上とした場合)スロー逃げをさせるはずがない(むしろ自身がハナを切りかねない)ため実践難易度が高過ぎる

*42 更に加えるならば10戦8勝の完全連対という記録も1戦ドゥラメンテの記録を超えるものとなっている

*43 レーティングは(原則)1~4着馬のうちその能力を十全に発揮したと判断される馬を基準に着差などに応じて付与されるため、その仕組みから高いレーティングを得るにはよりハイレベルな馬を相手に良い内容で勝利する必要がある。先述の通り’23ジャパンカップ上位馬には現役最上位級の好メンバーが揃っており、だからこそ国内戦では類を見ないレベルの評価へと至ったといえる。参考→https://www.nikkansports.com/keiba/news/202312260000178.html

*44 後述のロンジンワールドベストホースレースと併せて当日の表彰式で公式発表となる予定であったが、この最終レーティング及びトップ100の情報だけが1月20日に一部で流出してしまう騒動があった。大手メディアではスポーツニッポン新聞社が大々的に報じた一方で直後に日刊スポーツ新聞社が「正式発表前に情報が出回っている」という旨で遠回しに釘を刺す記事をリリースする盤外戦も勃発していた。

*45 2012年フランケル(140)、2022年フライトライン(140)、2009年シーザスターズ(136)、2011年ブラックキャビア(132+4)、2016年ウィンクス(132+4)、2010年ハービンジャー(135)、2022年バーイード(135)、2023年イクイノックス(135)の8頭。135ポンドが2頭現れ、後の135ポンドも現役だった2022年という年が特異点すぎたと言わざるをえない。

*46 上位4頭の最終レーティング平均値によって決定する。

*47 2019年。ちなみに後の「九冠馬」アーモンドアイが牝馬三冠達成の勢いそのままに乗り込み、「2分20秒6」というスーパーレコードを叩き出した翌年である。

*48 授賞式当日にグリーンチャンネルで放送された『ALL IN LINE 世界の競馬 2023サラブレッドランキング特集』にて、実はイクイノックスが出走しなかった本年の有馬記念も影響を与えていたことが明かされている。ドウデュースの優勝により当馬のレーティング自体が2ポンド上昇したことやスターズオンアース・タイトルホルダーの2・3着入着により、ジャパンカップのレースレベルが当初想定より更に高かったものと認定されイクイノックスとリバティアイランドのレーティングが上方修正されている。最終ランキング2位となったドバイシーマクラシックとの差は0.25ポンド、つまり1頭のレーティングが1変動するだけで埋まる微差であり、これらの要素がなければ逆転はなかったと考えられる。

*49 1993年、フランスのアルカングが12番人気という圧倒的期待薄から優勝。歴史に残る大波乱を演出した。

*50 今までの初年度最高額はディープインパクト、コントレイルの1200万、しかもどちらも大種牡馬であった父が亡くなった後であり、父が存命でありながらこの値段である。