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タイキシャトル(競走馬)

登録日:2021/12/05 Sun 04:17:59
更新日:2024/06/03 Mon 23:45:36
所要時間:約 5 分で読めます




98年 安田記念

大雨のなかの無敵

タイキシャトル

可能性は人を熱くする


──2011年 JRA安田記念CMより

タイキシャトル(Taiki Shuttle)とは、日本の元競走馬、種牡馬。
短距離馬でありながら年度代表馬・顕彰馬に選出され、今尚マイラー最強候補に挙げられることも多いマイル王。


【データ】

生誕:1994年3月23日
死没:2022年8月17日(28歳没)
父:Devil's Bag
母:ウェルシュマフィン
生産者:Taiki Farm
産地:アメリカ合衆国
馬主:大樹ファーム
セリ取引価格 -
調教師:藤沢和雄(美浦)
主戦騎手:岡部幸雄
獲得賞金:6億1,548万円
通算成績:13戦11勝[11-1-1-0]
主な勝鞍:97-98'マイルCS、97'スプリンターズS、98'安田記念・ジャックルマロワ賞(仏)

【誕生】

1994年3月生まれの、尾花栗毛が美しい牡馬。
父はHalo産駒のDevil's Bag。2歳時に無敗の5連勝を成し遂げるもクラシックを目前に故障引退し、種牡馬として多くの後継を残した牡馬。付け加えると、Haloといえばあのサンデーサイレンスもその産駒である。
母はCaerleon産駒のウェルシュマフィン。アイリッシュ1000ギニートライアルをはじめ3勝を上げた牝馬。
アメリカの「タイキファーム」生まれだが、1995年はアイルランド、1996年7月からは日本にあるタイキファームの親牧場にしてシャトルの馬主でもある「大樹ファーム」で調教を受けている。
主戦騎手は岡部幸雄氏。アメリカでは母にも騎乗経験があったという。

【現役時代】

ゲート試験に何度も落ちており、合格したころには新馬戦も終わっていたため、3歳4月のダート未勝利戦でデビュー。
そこからダートと芝マイル戦で連勝を重ねるが、4戦目でタイム差なしの2着。
秋のG3、ユニコーンステークスとG2のスワンステークスを連勝し、マイルチャンピオンシップでは2馬身差の勝利。
続くスプリンターズステークスも連勝し、史上初のマイルCSとの同一年制覇を成し遂げる。

4歳春は放牧先の寒さもあり、蹄にヒビが入るアクシデントもあったが無事回復し、京王杯スプリングカップから始動。
流しでレコード勝ちをおさめると、海外挑戦を見据え、壮行レースに安田記念を選択。
しかし安田記念の当日は大雨。不良馬場という言葉では生温い、超不良馬場とでも言うべきほどに状態は悪かった。

さらにタイキシャトル初の不良馬場ということもあり、単勝1.3倍の圧倒的1番人気でありながら不安視する声もあった。
しかしレースが始まると道悪もなんのその、好位につけて最終直線を迎えるとそこから一気に伸び、
香港から参戦したオリエンタルエクスプレスに外から並ぶ…かに見えたが並ぶことなく一瞬で突き放し、2馬身半もの差をつけて勝利。
「夢は世界に飛び立つか!」という実況通り、海外遠征は決定的となった。

そしてフランス。選ばれたのはフランスマイルG1の最高峰、ジャック・ル・マロワ賞(ドーヴィル競馬場、芝直線1600m)。
レース1ヵ月前の渡仏だったが、「日本で競馬を使うときと同じにしたい」という藤沢和雄調教師の判断であった。
また受け入れ先となった厩舎も偉業達成のために協力を惜しまなかったこともあり、タイキシャトルは終始リラックスしている様子だったという。

さあ日本馬初の海外G1制覇に向けて視界良好、と思われた矢先。
なんと同じく海外遠征を決行したシーキングザパールが、タイキシャトルより一足先にフランスのG1短距離レース最高峰の一角、モーリス・ド・ギース賞*1(ドーヴィル競馬場、芝1300m)を制覇したのである(鞍上:武豊)。
当初パール陣営はジャック・ル・マロワ賞への出走も予定していたらしいが、「1600mではタイキシャトル相手に勝てない」と判断し、こちらへの出走を決めた経緯がある。

史上初の快挙を目前で奪われ、しかもパールを安田記念では10着に負かしていたばかりに陣営には衝撃が走る。
おまけにシーキングザパールを管理していた森秀行調教師がインタビューで「タイキシャトルはもっと強い」などと言ってしまったものだから、もはや意地でも負けられない戦いとなった。
迎えた当日、最大の強敵と目されていたIntikhab(インティカブ)の不在などメンツがしょっぱくなったのもあり、1.3倍の圧倒的1番人気に推される。

しかしレースが始まるとタイキシャトルはなんと上の空
普段は非常に落ち着いた性格で、飼葉も残さず食べたり、馬運車や飛行機の中でさえすやすやと寝ていたりするほどの強心臓ぶりを考えれば、出走取り消しすら選択肢に上がるほどに不安視されていた。
集中力を欠き、物見をしながら走っている始末だったが2番手につけてレースを進める。
日本にはない1600mの直線だけのレース。仕掛けどころの難しい中、最後の100mでスパートをかけ先頭を奪うと、追い込んでくる後続を半馬身差抑えて勝利。
2週連続の海外G1制覇に日本の競馬ファンは大いに沸き立った。
また調教師の藤沢師にとっても、鞍上の岡部騎手にしても悲願達成と相成り、岡部騎手に至ってはを流すほどであったという。

その後日本に帰国し、マイルCSを選択。
レースでは終始好位を追走し、直線に入ると後続を千切り5馬身差の圧勝劇を演じてみせた。
本来であればこのレースがラストランになるはずだった……が、JRAの要望により1ヶ月後のスプリンターズステークスを引退レースにすることに。
単勝1.1倍という圧倒的人気を誇ったが、ハイペースでの消耗や馬体重の増加もあり、勝者マイネルラヴとシーキングザパールにタイム差なし、アタマ+クビ差の3着に敗れた。
タイキシャトルが連対を外したのはこの1度だけである。

この敗戦について、藤沢師は「走ることを嫌がっており、走ることに気が向いていなかった」と述べている。
JRAは直後に行なわれたタイキシャトルの引退式の際、戦績が映し出されたターフビジョンにスプリンターズステークスの成績を1着と表示するほど、タイキシャトルの勝利を疑っていなかったらしいが……。
通算戦績は13戦11勝、複勝率100%。97年ユニコーンSから98年マイルCSまでの重賞8連勝はかの世紀末覇王と並ぶ記録。

ともあれ日仏のG1を3勝したことを踏まえ、最優秀短距離馬および最優秀5歳以上牡馬、そして短距離馬としては史上初の年度代表馬に選出。またフランスでも年度代表馬顕彰に選出されるなどの偉業を達成。
さらに翌年にはこれまた短距離馬としては史上初のJRA顕彰馬入りを果たし、歴史的名馬の地位を得たのであった。


【引退後】

引退後は2つの種馬場の間を2年ごとに行き来する国内プチシャトル種牡馬として活動し、ウインクリューガーとメイショウボーラーの2頭が中央G1を勝利。地方重賞の勝ち馬も多く輩出した。
また孫世代でも、メイショウボーラー産駒のニシケンモノノフ(2017年JBSスプリント)・ラインミーティア(2017年アイビスサマーダッシュ、母母父がオグリキャップ)、母父がタイキシャトルのストレイトガール(2015・16年ヴィクトリアマイル)・ワンアンドオンリー(2014年日本ダービー)等活躍馬を輩出している。

2017年に種牡馬も引退し、NPO法人「引退馬協会」のフォスターホースに就任。19年には悪質なファンによってたてがみを切り取られるなどの憂き目に遭ってしまった*2が、2018年~2021年6月まではヴェルサイユファーム、2021年6月以降はノーザンレイクでフォスターホース仲間のメイショウドトウと共に功労馬としてのんびり余生を過ごしていた。牧場の方の呼び方がファンにも波及したのか「じいじ」「シャトじいじ」「シャトルさん」などと呼ばれることもあった。
全盛期と比べ体格はやや細くなったものの、餌を食む際に周囲の山羊を威嚇したりなど、ふとした時に全盛期の気配を見せることもあり元気に過ごしていた。
いたずら好きな性格も変わっていないようで、スタッフに鼻ドンをかましたり、馬房で毛繕いをしているスタッフの足を踏もうとしたりとやんちゃな面を出す事も多かったという。そのためか関係者からは「こにくらじいさん」と喩えられたとか。
「今日は安田記念だって。…あら……こっち(※シャトルとは別の預かり馬たち)が動いた」「ねえ、安田記念って覚えてる?覚えてますか?覚えてます? そこかゆいの。…覚えてますかー?」 ファン「oh、ダメそうデース…」*3
寂しがり屋なのも変わらないようで、放牧時は他の動物と一緒だったとの事。

2022年8月17日、死去。
前日まで元気そのもので、ノーザンレイクの公式Twitterにて投稿された動画でもその姿を見せたばかりだった。
牧場によると、亡くなる前夜も夜飼いをペロッと平らげて22時頃には人参と黒砂糖1粒を美味しそうに食べるほど食欲旺盛だったというが、翌朝5時頃に馬房の中で息を引き取っているのが見つかったとのこと。
馬房の中は荒れた様子も確認されず、獣医師の診断では老衰による心不全とされ、寝ている間に旅立ったものと思われる。
奇しくも、3日前にジャック・ル・マロワ賞が開催されたばかりだった。
突然のお別れとなったが、28歳の大往生、絵に描いたようなピンピンコロリであった。

しばらくはシャトルの入っていた馬房はそのまま空だったが、2023年12月、ノーザンレイクにネコパンチ号が入厩。
タイキシャトルの使っていた馬房に入る事になり、早速隣のメイショウドトウとコミニケーションしている。
馬房に貼ってあるタイキシャトルの案内板はそのまま残されているのもあって、まるでタイキシャトルが2頭の間を取り持っているようにも見えそう。

【創作作品での登場】

色々とアメリカンサイズでパーティとBBQをこよなく愛するスタンダードなアメリカンキャラのウマ娘。
基本的にハイテンション&ノリで行動して周りを振り回している。
同期の面々はこのノリを軽く躱すので、そのノリの被害はトレーナーや後輩に飛ぶことが多い。
アプリ版では初期実装の育成対象ウマ娘の1人。当然主戦場は短距離~マイル。
短距離・芝・ダートの全てに高適性を持つ貴重なウマ娘で、チームレースでは重宝される。
固有スキルが芝マイルとの相性が悪かったため長らくダートが主戦場だったが、バランス調整により「マイルの支配者」復活の兆しを見せている。
アグネスデジタルに次ぐアプリリリース後に没した競走馬であり、公式アカウントやキャストも追悼メッセージを発表していた。

  • 『令和 優駿たちの蹄跡』
作者やまさき拓味氏が引退馬協会の理事でもある縁から「最強マイラーの心残り」にてノーザンレイクでの生活が題材に。
2021年秋を舞台にリリカルに動物同士が話し合う設定で描かれ、牧場に居ついている牡猫メトに対し、28歳を間近に控え終活を考え出したシャトルさんが遠い日の思いを語っていた。
ちなみに本話が収録された単行本1巻が発売されたのは、2022年7月28日。その3週間ほど後、タイキシャトルが天国に旅立つとは誰も思わなかっただろう……。


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  • 最優秀5歳以上牡馬
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最終更新:2024年06月03日 23:45

*1 モーリス・ド・ゲスト賞とも。

*2 ノーマナー行為以前に「器物損壊罪」というれっきとした犯罪行為である。この時同じ牧場にいたローズキングダムも同様の被害に遭っている。

*3 ノーザンレイク公式Twitterより。2022年6月5日、安田記念当日の様子、シャトルは一貫して興味のない様子を見せている。自分の勝ち鞍なのに。