VA-11 Hall-A ヴァルハラ 日本語版 | PlayismVA-11 Hall-A (ヴァルハラ) のレビュー行くぜ!
メーカー:PLAYISM
機種:Vita/PC
ジャンル:サイバーパンクバーテンダーアクション
発売日:2017年11月16日
価格:パッケージ版 税込3240円/ダウンロード版 税込2000円
ベネズエラのクリエイターが開発したインディーゲームで
Steamなどでも配信中。
西暦207X年のディストピア化した都市を舞台にした、レトロPCテイストのアドベンチャーゲームだ。
でもタイトルロゴを見ると「サイバーパンクバーテンダーアクション」らしいぞ!
アクション要素無いんだけどね。
女性バーテンダーのジルとなってカクテルを作って客に出していく内容。
しかし207X年だけあって客は一癖も二癖もある連中ばかりで主人公もなかなかめんどくさい。
基本的にバーでひたすらカクテルを作って客と話をするだけなのに、
舞台設定を活かしたあまりにも強烈な登場キャラたちの人間模様が素晴らしく、
クラクラとさせられながらもグイグイと引き込まれる酒のような内容だ。
ローカライズも見事でセリフ一つ一つが印象に残るぜ。
政府は腐敗し、市民はナノマシンで監視され、それでも治安は悪く犯罪は日常茶飯事。
失業者が溢れ、ヤクが出回り、銃声が鳴り響き、死体が転がる。
そんなグリッチシティの片隅にあるバー「VA-11 Hall-A(ヴァルハラ)」で主人公のジルは今日もカクテルを作るのだ。
客と会話をし、注文通りに材料を組み合わせてカクテルを提供することでゲームは進行。
種類別に分けられたカクテルのリストと作り方のガイドが見られるので迷うことは無い。
が、「いつもの」と注文してくる客や、謎かけのような注文をしてくるめんどくさい客も登場するし、
あえて注文されたカクテルを出さない時が正解の時もある。
また、一部のカクテルは度数を上げて客を酔いやすくすることが可能で、
これで会話が変更することもあるから何度も遊びたくなる作りだぜ。
カクテルは一個一個説明がついているし、
「ビール」もあるんだけど本物じゃなかったりでディストピア感ある。
くそっ!また合成ビールかよ!みたいな。
基本的にストーリーは一本道だが、一部のキャラに上手くカクテルを出し続ければフラグが立ち、
クリア後にエピローグが見られるようになっている。
メッセージスキップあるし引き継いでの周回プレイが可能でヒントも貰えるので、目指せ全エンド!
客はアンドロイド、巨乳ハッカー、喋る犬、殺し屋、探偵、ゴシップサイトの編集長などなどなんでもあり。
脳みそも酒を飲みに来る!
客たちは性別も職業も立場もバラバラなんだけど、
酒を提供して会話を聞いていると意外なところで繋がりがあったり、
やっぱり全然関係なかったりと人間模様が面白い。
登場キャラでインパクト抜群なのは何と言ってもドロシー。
主人公のジルを「ハニー!」と呼んでくる外見年齢10~13歳の明るいリリム(アンドロイド)だけど、
職業は娼婦なのでトークも「客」の話題が中心。犬嫌いだから犬みたいにヤルときは特別料金を貰うとか。
仕事は強制されているわけでなく好きだからやっていて、堂々としているのが良いキャラだぜ。
喋る犬が経営する「セイファー・トイカンパニー」の社員であるリリムのディールと、
同じくそこで働く獣医である口が悪くてオデコのベディのコンビも好き。
ディールはドロシーと違って作業用なので無表情だし、感情の起伏も乏しい。
が、ちゃんと自分の意志はあるし、悩み事もあるのでそこをベディが色々とおせっかいを焼いてくる。
ベディ、ホントに口は悪いしかなりめんどくさいヤツなんだけど
良いキャラだしディールとのやり取りが見てて楽しいんだわ。
ベディの「私たちは奇妙な時代に生きている…でも、そのおかげでとても興味深いものも目にする」は、
2017年でも、207X年でも通用するセリフだよなぁ。
腕を失った人が元の腕と同じ機能を持つ義手に交換するのは構わないけど、
銃を内蔵した義手と交換したり、スポーツで結果を出すためや
ファッションなどのためにそういう手術を受けるのは許せない……。
と、自分の体を機械化することに関しての考えを述べるベディ。
こういう個人個人の思想の話などで、キャラと世界観の掘り下げをうまくやっているのも面白いところ。
グリッチシティで警察に近い役割を果たしている「ホワイトナイト」のセイと、
その友人で令嬢であるステラの友情も見所。
お互いに直接言えないことをバーテンダーであるジルに打ち明けていく流れは本作ならでは。
ステラの笑った顔とピクピク動く耳が可愛い。設定含めてかなりあざといよなステラは!
ドロシー並みにインパクトがあるキャラと言えばすとり~みんぐチャン。
エロ含めた自分の私生活を24時間生中継することを仕事にしてる女性で、
登場すると画面にニコニコ動画風の弾幕エフェクトが飛び交う!
注文も「この店で一番マズい酒!」なんて言ってくるひどいヤツである!
ホントにひどいことしか言わないから爆笑する。こんなヤツなのになんか憎めないキャラなのが上手い。
他にも様々な客が登場するが、とにかく印象に残らない人物が一人もいない。
みんな人間味に溢れていて、嫌なキャラでもどこか嫌いになれなかったり造形が巧み。
注文する酒でも個性が出ているし、度数の強い酒を飲ませると酔ってひどい話を始めたり、
逆に普段は見れない真面目な話を始めたりするキャラもいて侮れないぜ。
好きなキャラはステラ、ベディ、キラ☆ミキ、ドロシー、アルマ、ボス辺り。
イングラムやヴァージリオも好きだなあ。
悪い意味で頭の悪いキャラが全然いないのが遊んでて心地良い。
翻訳も本当に見事で、海外タイトルだけど読んでいて違和感が全くない。
キャラ毎に口調がしっかりしていてみんな魅力的だ。
翻訳が難しいダジャレ関係はかなり強引なところもあったけども!
やや人を選びそうなところは猥談の多さ。バーでの会話だからってのもあるんだけど、
「よくこれVitaのCERO Dで通ったな?!」と言いたくなるレベルのきわどいテキストがバンバン出てくる!
PS1やSSとかの時代じゃ考えられないわこれ。
でも意味のない下ネタじゃなくて、
ちゃんと登場人物の掘り下げをする上での下ネタなんで個人的には嫌な感じはしなかったな。
知り合い同士でのリラックスした会話ってノリで。
リラックスし過ぎてひどいことになってるイベントもあったりでね。
登場人物の同性愛者率の高さはさすが207X年ってところだな……!
そんなこんなで一日の仕事を終えるとジルは自室に戻る。クラシックなコタツと飼い猫がお出迎え。
小ネタや重要情報、無駄な情報が満載のネットの掲示板やニュースサイトをチェックしたり、
ショップで家具アイテムを買ったりが可能だ。
家具アイテムを買うと部屋がどんどんゴチャゴチャして賑やかになっていくし、
小物でもかなり描き込んであるから見てて楽しいんだよなあ。
ジルが欲しがっているものを買わずに出勤すると、
集中できなくて注文を確認出来なくなったりする。
が、買い過ぎると家賃が払えなくなったりするので注意。
まあ、現金はよほど無駄使いしなければ余るし、周回プレイで所持金は引き継がれるのでのんびり遊ぼう。
でも家賃が払えない時に見れるバッドエンドは一度は見ておくといいぞ!
良いゲームなんだがタイトル画面左上に小さく表示されてる項目を選択しないと、
シナリオ上でかなり重要な前日譚が読めなかったり、
カクテルを作るチュートリアルがやや分かりにくかったりと節々で説明不足なのがちょっと気になったところ。
あくまでもバーでの話で、社会で大きな事件が発生しても主人公が直接それに関わることは無いし、
巨悪の陰謀を暴くような話にもならない。断片的に散りばめられた情報でプレイヤーが推測するだけ。
現代とは異なる高度なテクノロジーに、管理された社会にとサイバーパンクSFな要素が満載だが、
主人公であるジルのエピソードを始めとして
一杯のカクテルやバカバカしい話と共にそこで描かれているのは普遍的な後悔だったり、
悩みだったり、過去だったり、そして前向きな希望だったりする。
だからぶっ飛んだ設定の登場人物たちが身近に感じられるし、言葉の一つ一つが胸を打つ。
終わった後に「いいゲームだったなぁ」と素直に言える読後感が素晴らしかった。
まさに「さあ、一日を変え、一生を変えるカクテルを!」というジルの決めセリフがピッタリ来る傑作だ。
価格も安いことだしアドベンチャーゲーム好きならば是非一度プレイしてもらいたい!
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こういうのはテキストのセンスがないと難しいのに海外から引っ張ってきたのは凄い