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JP6007661B2 - 車載機 - Google Patents

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Description

本発明は、光ビーコンと光信号による無線通信を行う車載機に関する。
路車間通信システムを利用した交通情報サービスとして、光ビーコン、電波ビーコン又はFM多重放送を用いたいわゆるVICS(Vehicle Information and Communication System:(財)道路交通情報通信システムセンターの登録商標)が既に展開されている。
このうち、光ビーコンは、近赤外線を通信媒体とした光通信を採用しており、車載機との双方向通信が可能である。具体的には、車両の保持するビーコン間の旅行時間情報等を含むアップリンク情報が車載機からインフラ側の光ビーコンに送信される。
逆に、光ビーコンからは、渋滞情報、区間旅行時間情報、事象規制情報及び車線通知情報等を含むダウンリンク情報が車載機に送信されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
このため、光ビーコンは、車載機との間で光信号を送受するビーコンヘッド(投受光器)を備え、投受光器には、ビーコン制御機から入力された送信信号を発光ダイオードに入力してダウンリンク光を送出する光送信部と、フォトダイオードが受光した光信号を電気信号に変換してビーコン制御機に出力する光受信部が搭載されている。
特開2005−268925号公報
1993年から現在までの間に、約54000ヘッドの光ビーコンが全国各地の道路に配備されているが、かかる既設の光ビーコンを用いた従来の光通信システムよりも、通信容量を拡大してシステムを高度化することが検討されている。
通信容量を拡大する方策としては、アップリンク及びダウンリンクそれぞれについての伝送速度の高速化、通信領域の拡張あるいは通信プロトコルの変更などの方策がある。このうち、アップリンク速度を現状(64kbps)よりも高速化すれば、通信領域をさほど広げなくても、大容量のプローブデータを光ビーコンから収集でき、交通信号制御の高度化に役立てることができる。
このように、アップリンク速度の高速化を実現するためには、高速アップリンク受信に対応する光ビーコン(以下、「新光ビーコン」ともいう。)と、高速アップリンク送信に対応する車載機(以下、「新車載機」ともいう。)を新たに導入する必要がある。
しかし、新光ビーコンや新車載機を導入するとしても、これらの新型の機器が、低速アップリンク通信しかできない従来の機器と互換性がなければ、既存の路車間通信システムと整合しなくなるため、アップリンク速度の高速化が阻害される。
例えば、新車載機が、新光ビーコンのための高速な光信号を送信できるが、低速アップリンク受信のみを行う光ビーコン(以下、「旧光ビーコン」ともいう。)のための低速な光信号を送信できない場合には、旧光ビーコンにアップリンク情報を提供できない。
また、この場合、旧光ビーコンが新車載機を検出できないので、新車載機のアップリンク送信をトリガーとしたダウンリンク切り替えを行えず、新車載機を搭載した車両向けの情報を提供することもできない。このため、新車載機を新たに搭載するインセンティブが減殺し、アップリンク速度の高速化が進展しない。
一方、アップリンク方向でマルチレート対応の新光ビーコンと新車載機との通信において、新車載機が、新光ビーコンのダウンリンク領域を通過中に新光ビーコンと通信していることを認識できなければ、高速のアップリンク送信が可能である筈の新車載機が、新光ビーコンに対しても常に低速でアップリンク送信を行うことになり、アップリンク速度の高速化を実現できない。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、新旧の光ビーコンと適切に通信できる、アップリンク方向でマルチレート対応の新車載機を提供することを目的とする。
(1) 本発明の車載機は、道路に設置された光ビーコンと光信号による無線通信を行う車載機であって、高低2種類の伝送速度での電気光変換が可能な光送信部と、前記2種類の伝送速度と異なる1種類の伝送速度での光電気変換が可能な光受信部と、前記1種類の伝送速度で送信された下りフレームに含まれるビーコン識別情報に基づいて、前記光ビーコンが高速アップリンク受信に対応する新光ビーコンか非対応の旧光ビーコンかを判定し、この判定結果に応じて、高速の伝送速度でアップリンク送信を行うか、低速の伝送速度でアップリンク送信を行う又は非送信に設定するかを切り替える通信制御部と、備える。
本発明の車載機によれば、通信相手が新光ビーコンの場合には、高速の伝送速度でアップリンク送信が行われ、通信相手が旧光ビーコンの場合には、低速の伝送速度でアップリンク送信が行われる又は非送信に設定されるので、新旧の光ビーコンと適切に通信することができる。
従って、新旧の光ビーコンと適切に通信できる、アップリンク方向でマルチレート対応の新車載機が得られる。
(2) 本発明の車載機において、前記通信制御部は、高速アップリンク送信に対応する新車載機のための信号情報を含む下りフレームの送信を前記光ビーコンにダウンリンク送信させるための車載機識別情報を、上りフレームに含めることができることが好ましい。
このようにすれば、新車載機のための信号情報を含む下りフレームが旧車載機に誤ってダウンリンク送信されるのを確実に防止することができる。
以上の通り、本発明によれば、新旧の光ビーコンと適切に通信できる、アップリンク方向でマルチレート対応の新車載機が得られる。
路車間通信システムの概略構成を示すブロック図である。 光ビーコンの設置部分を上から見た道路の平面図である。 光ビーコンの通信領域を示す側面図である。 従来の通信手順を示すシーケンス図である。 新旧の光ビーコンと車載機の混在状態を示す図である。 新光ビーコンの上位互換制御を示すフローチャートである。 新車載機の上位互換制御を示すフローチャートである。 第1実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。 第1実施形態の通信手順において、新車載機がID確認を失敗する場合を示すシーケンス図である。 第2実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。 第3実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。 第4実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。 第5実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。 第6実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。 第7実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。 第8実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。 第9実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る路車間通信システムの全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の路車間通信システムは、インフラ側の交通管制システム1と、道路Rを走行する車両20に搭載された車載機2とを備えている。
交通管制システム1は、交通管制室等に設けられた中央装置3と、道路Rの各所に多数設置された光ビーコン(光学式車両感知器)4とを備え、光ビーコン4は、近赤外線を通信媒体とした光通信によって車載機2との間で無線通信を行うことができる。
光ビーコン4は、ビーコン制御機7と、このビーコン制御機7のセンサ用インタフェースに接続された複数(図1では4つ)のビーコンヘッド(投受光器ともいう。)8とを有している。
ビーコン制御機7は、インフラ側の通信部6に接続されており、通信部6は電話回線等の通信回線5によって中央装置3と接続されている。
通信部6は、例えば、信号灯器の灯色を制御する交通信号制御機や、インフラ側における交通情報の中継処理を行う情報中継装置等より構成することができる。
本実施形態の光ビーコン4は、全二重通信方式を採用している。すなわち、後述のビーコン制御機7は、光送信部10に対するダウンリンク方向の送信制御と、光受信部11に対するアップリンク方向の受信制御とを同時に行うことができる。
これに対して、本実施形態の車載機2は、半二重通信方式を採用している。すなわち、後述の車載制御機21は、光送信部23に対するアップリンク方向の送信制御と、光受信部24に対するダウンリンク方向の受信制御とを同時には行わない。
なお、光送信部23に対するアップリンク方向の送信制御と、光受信部24に対するダウンリンク方向の受信制御は同時に行われていても良いが、実態として、どちらかのみしか機能しないように構成されているものとする。すなわち、アップリンクの送信中にはダウンリンクを受信することが困難な構成である。
〔光ビーコンの構成〕
光ビーコン4のビーコンヘッド8は、電気光変換が可能な光送信部10と、光電気変換が可能な光受信部11とを筐体の内部に有している。
このうち、光送信部10は、近赤外線よりなるダウンリンク光(ダウンリンク方向の光信号)をダウンリンク領域DA(図3参照)に送出する発光素子を有し、光受信部11は、アップリンク領域UA(図3参照)にある車載機2からの近赤外線よりなるアップリンク光(アップリンク方向の光信号)を受光する受光素子を有する。
光送信部10は、ビーコン制御機7から送出される下りフレームを所定の伝送速度のシリアルな送信信号に変換する送信回路と、出力された送信信号をダウンリンク方向の光信号に変換する、発光ダイオード等よりなる発光素子とから構成されている。
本実施形態の光ビーコン4では、光送信部10が送信する光信号の伝送速度は、従来の旧光ビーコンと同様に1024kbpsである。
光受信部11は、フォトダイオード等よりなる受光素子と、この受光素子が出力する電気信号を増幅してデジタルの受信信号を生成する受信回路とを備えている。
本実施形態の光ビーコン4では、光受信部11は、高低2種類の伝送速度での光電気変換が可能なマルチレート対応であり、低い方の伝送速度は従来の旧光ビーコンと同様に64kbpsである。高い方の伝送速度は、128kbps、192kbps、256kbps、384kbps、512kbps、1024kbpsなどの速度を採用し得るが、本実施形態では128kbpsであるとする。
図2は、本実施形態の光ビーコン4の設置部分を上から見た道路Rの平面図である。
図2に示すように、本実施形態の光ビーコン4は、同じ方向の複数(図例では4つ)の車線R1〜R4を有する道路Rに設置されており、車線R1〜R4に対応して設けられた複数のビーコンヘッド8と、これらのビーコンヘッド8を一括制御する制御部である1台のビーコン制御機7とを備えている。
ビーコン制御機7は、信号処理部、CPU及びメモリなどを有するコンピュータ装置よりなり、通信部6(図1参照)を介した中央装置3との双方向通信と、車載機2との路車間通信を行う通信制御部としての機能を有する。
また、ビーコン制御機7は、通信制御のためのコンピュータプログラムを記憶装置に格納しており、このプログラムをCPUが読み出して実行することにより、当該CPUが上記通信制御部として機能する。
ビーコン制御機7は、道路脇に立設した支柱13に設置されている。また、各ビーコンヘッド8は、支柱13から道路R側に水平に架設した架設バー14に取り付けられ、道路Rの各車線R1〜R4の直上に配置されている。
ビーコンヘッド8の発光素子は、車線R1〜R4の直下よりも車両進行方向の上流側に向けて近赤外線を発光しており、これにより、車載機2との間で路車間通信を行うための通信領域Aが当該ヘッド8の上流側に設定されている。
〔光ビーコンの通信領域〕
図3は、光ビーコン4の通信領域Aを示す側面図である。
図3に示すように、光ビーコン4の通信領域Aは、ダウンリンク領域(図3において実線のハッチングを設けた領域)DAと、アップリンク領域(図3において破線のハッチングを設けた領域)UAとからなる。
このうち、ダウンリンク領域DAは、ビーコンヘッド8が送出するダウンリンク方向の光信号を、車載機2の投受光器である車載ヘッド22にて受信できる領域であり、ビーコンヘッド8の投受光位置d、地上1m高さの位置a及びcを頂点とする△dacで示された範囲である。
また、アップリンク領域UAは、車載ヘッド22が送出するアップリンク方向の光信号を、ビーコンヘッド8にて受信できる領域であり、上記投受光位置dと、地上1m高さの位置b及びcを頂点とする△dbcで示された範囲である。
従って、ダウンリンク領域DAとアップリンク領域UAの上流端cは互いに一致し、アップリンク領域UAは、ダウンリンク領域DAの車両進行方向の上流部分(図3の右側部分)に重複している。また、ダウンリンク領域DAの車両進行方向長さは、通信領域A全体の同方向長さと一致している。
旧光ビーコン(光学式車両感知器)の場合、ダウンリンク領域DA及びアップリンク領域UAの正式な領域寸法が規約によって規定されている。
例えば、一般道向けの旧光ビーコンの場合、ダウンリンク領域DAの下流端aが、ビーコンヘッド8の直下の1.0〜1.3m上流側に位置し、ダウンリンク領域DAの下流端aからアップリンク領域UAの下流端bまでの距離が2.1mと規定されている。
また、アップリンク領域UAの下流端bから同領域UAの上流端cまでの距離は1.6mと規定されている。従って、正式な通信領域Aの車両進行方向の全長(ac間の長さ)は3.7mとなる。
これに対して、本実施形態の光ビーコン4(新光ビーコン)では、ダウンリンク領域DAの下流端aをビーコン直下まで延ばし上流端cを上記規定よりも上流側に延ばすことにより、ダウンリンク領域DAの車両進行方向の範囲を、高速アップリンク受信に非対応の旧光ビーコンの場合よりも広く設定している。
具体的な数値で例示すると、ビーコンヘッド8の真下を0m(原点)として、そこから上流方向を正の方向とした場合、本実施形態のダウンリンク領域DAの範囲(図3の位置aから位置cまでの範囲)は、0〜6.0mとなっている。
このようにダウンリンク領域DAを広めに設定すると、車載機2がダウンリンク方向の光信号を受信する確実性が増すとともに、通信時間が長くなるのでダウンリンク方向の通信容量を拡大することができる。
また、本実施形態のアップリンク領域UAの範囲(図3の位置bから位置cまでの範囲)は、3.4〜6.0mとなっており、上流端cの位置が従来よりも1.0mだけ上流側に拡張されている。
このようにアップリンク領域UAを広めに設定すると、光ビーコン4がアップリンク方向の光信号を受信する確実性が増とともに、通信時間が長くなるのでアップリンク方向の通信容量を拡大することができる。
〔車載機の構成〕
図3に示すように、本実施形態の車載機2は、車載制御機21と車載ヘッド22とを備えており、車載ヘッド22の内部には、光送信部23と光受信部24が収容されている。
このうち、光送信部23は、近赤外線よりなるアップリンク光(アップリンク方向の光信号)を発光する発光素子を有し、光受信部24は、ダウンリンク領域DAに送出された近赤外線よりなるダウンリンク光(ダウンリンク方向の光信号)を受光する受光素子を有する。
光送信部23は、車載制御機21から出力される上りフレームを所定の伝送速度のシリアルな送信信号に変換する送信回路と、出力された送信信号をアップリンク方向の光信号に変換する、発光ダイオード等よりなる発光素子とから構成されている。
本実施形態の車載機2では、光送信部23は、高低2種類の伝送速度での電気光変換が可能なマルチレート対応であり、低い方の伝送速度は従来の旧車載機と同様に64kbpsである。高い方の伝送速度は、128kbps、192kbps、256kbps、384kbps、512kbps、1024kbpsなどの速度を採用し得るが、本実施形態では128kbpsであるとする。
光受信部24は、フォトダイオード等よりなる受光素子と、この受光素子が出力する電気信号を増幅してデジタルの受信信号を生成する受信回路とを備えている。
本実施形態の車載機2では、光受信部24が受信する光信号の伝送速度は、従来の旧車載機と同様に1024kbpsである。
車載制御機21は、信号処理部、CPU及びメモリなどを有するコンピュータ装置よりなり、光ビーコン4との路車間通信を行う通信制御部としての機能を有する。
また、車載制御機21は、通信制御のためのコンピュータプログラムを記憶装置に格納しており、このプログラムをCPUが読み出して実行することにより、当該CPUが上記通信制御部として機能する。
更に、車載制御機21は、アップリンクデータとして、自車両の走行データ(例えば、通過位置と通過時刻を時系列に並べた走行軌跡データであるプローブ情報など)を生成して、光送信部23にアップリンク送信させる機能も有する。
この場合、アップリンク速度を高速化することで、より多くのプローブ情報(走行軌跡を記録する道路区間を長くしたり、同一道路区間における通過位置と通過時刻の記録密度を高くしたりした情報)を送信することが可能になる。
なお、本実施形態の車載制御機21は、上記CPUを含む本体制御部とは別に、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )等を含む簡易制御部を設けた回路構成であってもよい。
この簡易制御部は、例えば、光受信部24が何らかの下りフレームを受信した場合に、自車両の車両IDを含む低速の上りフレームを1つだけ、光送信部23にアップリンク送信させる機能を有する。
〔用語の定義等〕
ここで、本明細書で用いる用語の定義を行う。
下りフレームDL1:光ビーコン4が、後述するダウンリンク切り替え前に、ダウンリンク領域DAに向けて繰り返し送信する下りフレームのことをいう。
上りフレームUL1:下りフレームDL1の受信に応じて、車載機2が繰り返し送信する上りフレームのことをいう。
下りフレームDL2:光ビーコン4が、後述するダウンリンク切り替え後に、ダウンリンク領域DAに向けて繰り返し送信する下りフレーム(一連のフレーム群の場合を含む。)のことをいう。
ID格納フレーム:車載機2が、自機の車両20の識別情報(以下、「車両ID」という。)を所定の格納領域に記して生成した上りフレームUL1のことをいう。
折り返しフレーム:光ビーコン4が、ID格納フレームを受信した場合に、そのフレームに含まれる車両IDと同じ値を所定の格納領域に記して生成した下りフレームDL2のことをいう。
なお、光ビーコン4が、ID格納フレームを受信してもダウンリンク切り替えを行わない場合(例えば、図12及び図14参照)には、下りフレームDL1が折り返しフレームになることもある。
ID折り返し:光ビーコン4が、ID格納フレームを受信した場合に、折り返しフレームを生成してダウンリンク送信する処理のことをいう。
車両IDのループバック:車載機2がID格納フレームを生成し、生成したID格納フレームをアップリンク送信し、光ビーコン4がID折り返しを行うことにより、車両IDを送信元の車載機2にループバックさせる一連の処理のことをいう。
先行フレーム:車載機2が複数の上りフレームUL1を送信する場合に、少なくとも最初の上りフレームUL1を含む、先行してアップリンク送信する1又は複数の上りフレームUL1のことをいう。
後続フレーム:車載機2が複数の上りフレームUL1を送信する場合に、先行フレームの後にアップリンク送信する1又は複数の上りフレームUL1のことをいう。
ダウンリンク切り替え:光ビーコン4が繰り返して送信する下りフレームDL1,DL2に含める実質的なデータ内容を、当該切り替えの前後で変化させることをいう。
本実施形態では、ダウンリンク切り替え後の下りフレームDL2には、折り返しフレームと、車両IDに対応する車両向けの提供情報を含む下りフレームDL2とが含まれる。この提供情報には、例えば、渋滞情報、区間旅行時間情報及び事象規制情報などの情報を含めることができる。
これらの情報は、高速アップリンク送信に非対応の旧車載機に対しても提供されるものである。
もっとも、本実施形態の光ビーコン4では、高速アップリンク送信に対応する新車載機を搭載した車両向けの提供情報として、例えば、交差点における信号灯色の切り替えタイミングを含む信号情報や、車両20が電気自動車の場合に有用な情報である直近の充電ステーションまでの経路を示す充電ステーション情報など、新車載機用として予め定めた専用情報を提供することもできる(図8〜図17参照)。
上りフレームUL1及び下りフレームDL1,DL2における車両IDのデータ格納領域は、どの領域を使用してもよいが、例えば「ヘッダ部」や「車線通知情報」を使用することができる。
この車線通知情報には、車線R1〜R4(図2)ごとに車両IDを格納するフィールドがあり、各車両IDに対して車線番号を付与できる。このため、異なる車線R1〜R4を走行する車両20の車載機2は、格納フィールド内のいずれに自車両の車両IDが含まれるかを読み取ることで、自車両がどの車線R1〜R4を走行中かを判定できる。
なお、図示していないが、上りフレームUL1と下りフレームDL1,DL2は、先頭から順に、受信側と同期を取るための同期部と、ヘッダ部と、実データ部と、CRC(Cyclic Redundancy Check )部とを有する。
上りフレームUL1の場合は、同期部には1バイトが割り当てられ、ヘッダ部には10バイトが割り当てられ、実データ部には59バイトが割り当てられ、CRC部には2バイトが割り当てられている。
下りフレームDL1,DL2の場合は、同期部には1バイトが割り当てられ、ヘッダ部には5バイトが割り当てられ、実データ部には123バイトが割り当てられ、CRC部には2バイトが割り当てられている。本実施形態も、この規約上のフレーム構成に従う。
また、ダウンリンク切り替え後に光送信部10から繰り返し送信される下りフレーム群は1〜80個の下りフレームDL2で構成され、その繰り返し送信の送信可能時間は250msである。
下りフレームDL2は、ダウンリンク方向に送出すべきデータ量に応じた任意数のフレームで構成され、上記送信可能時間の範囲内で繰り返し送信される。また、下りフレームDL2の送信周期は約1msである。
従って、例えば、3つの下りフレームDL2で1つの有意なデータを構成する場合は、その送信周期が約3msになるので、そのデータは所定の送信可能時間(250ms)内に約80回繰り返して送信されることになる。
もっとも、本実施形態のように、ダウンリンク領域DAをビーコンヘッド8の直下付近まで拡大すれば(図3参照)、繰り返し送信する下りフレームDL2の個数を最大200個程度まで増加させることができる。
なお、後述の図10の路車間通信に示すように、光ビーコン4がID格納フレームに応じてダウンリンク切り替えを行う場合には、後続フレームのアップリンク送信の時間とダウンリンク切り替え後のダウンリンク送信の時間が重複し得るので、ダウンリンク切り替え後の下りフレームDL2の送信可能期間は(250+α)msとすることが好ましい。
〔従来の路車間通信〕
図4は、通信領域Aで行われる従来の通信手順を示すシーケンス図である。
ここで、図4において、白丸を付したフレームは、車両IDを含まないフレーム(車両IDなしの車線通知情報を有するフレーム)であることを示し、黒丸を付したフレームは、車両IDを含むフレーム(車両IDありの車線通知情報を有するフレーム)であることを示している。図8以後の図においても同様である。
また、以下の路車間通信の説明では、動作主体が光ビーコン4と車載機2であるとして説明するが、実際の通信制御は、光ビーコン4のビーコン制御機(通信制御部)7と、車載機2の車載制御機(通信制御部)21が実行する。この点も、図8以後の図で説明する路車間通信においても同様である。
図4に示すように、光ビーコン4(図4の場合は旧光ビーコン4B)は、車線R1〜R4ごとに設けられたビーコンヘッド8から、下りフレームDL1を所定の送信周期で送信し続けている。この段階では、車線通知情報に車両IDが格納されていない。
車両20がダウンリンク領域DAに入ると、車載機2(図4の場合は旧車載機2B)が車線通知情報(車両ID無し)を含む下りフレームDL1或いはその他の下りフレームDL1を受信し、車両20が光ビーコン4の通信領域A内に入ったことを察知する。
この際、車載機2は、車線通知情報に車両IDを格納した上りフレームUL1(図4のID格納フレームU1)を生成し、この上りフレームU1をアップリンク送信する。
なお、旅行時間情報などの光ビーコン4に提供すべき情報がある場合には、ID格納フレームの実データ部にその情報が格納される。
受信フレームのCRCチェック等を経てID格納フレームU1が光ビーコン4において正規に受信されると、光ビーコン4は、遅くとも10m秒以内でダウンリンク切り替えを行ったあと、下りフレームDL2の繰り返し送信を開始する。
ダウンリンク切り替えの後に繰り返し送信させる複数の下りフレームDL2は、先頭部分で連送される複数の折り返しフレーム(黒丸付きの下りフレームDL2)と、その後に繰り返し送信される所定の提供情報を含む下りフレームDL2とからなる。
この下りフレームDL2の繰り返し送信は、前記した所定時間内において可能な限り繰り返される。
また、図4に示すように、折り返しフレーム(黒丸付きの下りフレームDL2)は、提供情報の送信期間中においてダウンリンク情報を構成する一連の複数の下りフレームDL2(例えば5個の下りフレームDL2)の1つであり、従来は、一連の複数の下りフレームDL2の先頭にのみ含まれて繰り返し(図4の例では5フレームごと)送信される。
なお、ダウンリンク情報を構成する一連の下りフレームDL2は最大で80個まで格納できるため、折り返しフレーム(黒丸付きの下りフレームDL2)は、最も少ない頻度の場合には80フレームに1つの割合で格納されることとなる。
車載機2は、光ビーコン4から複数の下りフレームDL2を受信し、その複数の下りフレームDL2の中で、自車両の車両IDが記された車線通知情報を含むものがあるか否かを判定する。
車載機2は、その判定結果が肯定的である場合に、自車両の車両IDのループバックが成功したことを確認し、この時点で自機の通信を送信から受信に切り替える。
逆に、車載機2は、その判定結果が否定的である間は、自車両の車両IDのループバックが成功していないと判断し、自機の通信を送信のままにする。
この場合、車載機2は、例えば、先に送信した上りフレームU1の送信後所定時間(例えば30ms)後に、再び上フレームUL1を送信する。車載機2は、この再送の動作を車両IDのループバックが成功するまで繰り返す。
〔混在状況における問題点〕
図5は、新旧の光ビーコン4A,4Bと車載機2A,2Bの混在状態を示す図である。
図5に示すように、新光ビーコン4Aは、低速の伝送速度(64kbps)だけでなく高速の伝送速度(例えば128kbps)でのアップリンク受信に対応している。本実施形態の光ビーコン4は、新光ビーコン4Aに該当する。
同様に、新車載機2Aは、低速の伝送速度(64kbps)だけでなく高速の伝送速度(例えば128kbps)でのアップリンク送信に対応している。本実施形態の車載機2は新車載機2Aに該当する。
これに対して、旧光ビーコン4Bは、低速の伝送速度(64kbps)でのアップリンク受信のみを行う光ビーコン、すなわち、高速の伝送速度(例えば128kbps)でのアップリンク受信に非対応の光ビーコンである。
同様に、旧車載機2Bは、低速の伝送速度(64kbps)でのアップリンク送信のみを行う車載機、すなわち、高速の伝送速度(例えば128kbps)でのアップリンク送信に非対応の車載機である。
上述の用語の定義で記載した通り、図5の「DL1」は、ダウンリンク切り替え前に新旧の光ビーコン4A,4Bが送信する下りフレームを示し、図5の「UL1」は、下りフレームDL1の受信を契機として、新旧の車載機2A,2Bが送信する上りフレームを示している。
また、「DL2」は、ダウンリンク切り替え後に新旧の光ビーコン4A,4Bが送信する下りフレームを示している。
ここで、新光ビーコン4Aと新車載機2Aが路車間通信する場合を想定する。そして、光ビーコン4の新旧タイプを判別不能な場合は、新車載機2Aは、上りフレームUL1を確実に受信して貰うために低速でアップリンク送信を行うとする。
この場合、ダウンリンク方向の伝送速度は、新旧いずれの場合も「1024kbps」であるから、新車載機2Aは、新光ビーコン4Aから下りフレームDL1を受信しただけでは、通信相手が新光ビーコン4Aであることを察知できない。
このように、新車載機2Aが、新光ビーコン4Aのダウンリンク領域DAを通過する間に新光ビーコン4Aと通信していることを認識できなければ、高速のアップリンク送信が可能である筈の新車載機2Aが、新光ビーコン4Aに対しても低速でアップリンク送信を行ってしまい、アップリンク速度の高速化が実現できなくなる。
そこで、本実施形態では、自機が高速アップリンク受信に対応する新光ビーコン4Aである旨のビーコン識別情報を、ビーコン制御機7が下りフレームDL1,DL2に含めることができるものとする。
具体的には、光送信部10にダウンリンク送信させる下りフレームDL1,DL2のヘッダ部に、光ビーコン4の新旧タイプを示すフラグフィールドを予め定義しておく。
そして、ビーコン制御機7は、自機を新光ビーコン4Aとして動作させる場合には、繰り返し送信するすべての下りフレームDL1,DL2又は所定周期ごとの下りフレームDL1,LD2のフラグフィールドをオンにし、自機を旧光ビーコン4Bとして動作させる場合には、その下りフレームDL1,DL2のフラグフィールドをオフにする。
このため、新車載機2Aは、受信した下りフレームDL1,DL2のフラグフィールドがオンである場合には、通信相手が新光ビーコン4Aであると判定でき、オフの場合や当該フラグフィールドが検出できなかった場合には、通信相手が旧光ビーコン4Bであると判定できる。
以下、上記のビーコン識別情報を下りフレームDL1,DL2に含める規約に従うことを前提とした、新光ビーコン4Aと新車載機2Aが行う上位互換制御について説明する。
〔新光ビーコンの上位互換制御〕
図6は、本実施形態の光ビーコン4である、新光ビーコン4Aのビーコン制御機7が行う上位互換制御を示すフローチャートである。
図6に示すように、新光ビーコン4Aのビーコン制御機7は、フラグフィールドをオンに設定した下りフレームDL1を所定周期で繰り返しダウンリンク送信することにより(図6のステップST1)、自機が新光ビーコン4Aであることを外部に通知している。
この状態で、ビーコン制御機7は、上りフレームUL1を受信したか否かを判定し(図6のステップST2)、その受信を検出するまで、ステップST1のダウンリンク送信を継続する。
上りフレームUL1の受信を検出すると、ビーコン制御機7は、受信した上りフレームUL1の送信主体が、高速の伝送速度(本実施形態では、128kbps)に対応する新車載機2Aであるか否かを判定する(図6のステップST3)。
このステップST3の判定は、例えば、光受信部11で受信された上りフレームUL1の伝送速度が、高速であったか低速であったかによって行うことができる。この場合、受信した上りフレームUL1が高速であれば、送信主体が新車載機2Aであると判定でき、低速であれば、送信主体が旧車載機2Bであると判定できる。
また、新車載機2Aの車載制御機21が、自機が高速アップリンク送信対応の新車載機2Aである旨の車載機識別情報を、上りフレームUL1に含める規約を採用してもよい。
具体的には、光送信部23がアップリンク送信する上りフレームUL1のヘッダ部に、車載機2の新旧タイプを示すフラグフィールドを予め定義しておく。
そして、新車載機2Aの車載制御機21は、自機を新車載機2Aとして動作させる場合には、アップリンク送信するすべて又は一部の上りフレームUL1のフラグフィールドをオンにし、自機を旧車載機2Bとして動作させる場合には、当該上りフレームUL1のフラグフィールドをオフにする。
このため、かかる規約を採用すれば、ビーコン制御機7は、受信した上りフレームUL1のフラグフィールドがオンである場合には、その送信主体が新車載機2Aであると判定でき、オフの場合や当該フラグフィールドが検出できなかった場合には、その送信主体が旧車載機2Bであると判定できる。
ステップST3の判定結果が肯定的である場合、すなわち、上りフレームUL1の送信主体が新車載機2Aの場合は、ビーコン制御機7は、ダウンリンク切り替え後に新車載機用のダウンリンク送信を行う(図6のステップST4)。
新車載機用のダウンリンク送信は、渋滞情報、区間旅行時間情報及び事象規制情報などの旧車載機向けの提供情報に加え、信号情報や充電ステーション情報などの新車載機向けの提供情報を含む下りフレームDL2を、繰り返し送信することによって行われる。
ステップST3の判定結果が否定的である場合、すなわち、上りフレームUL1の送信主体が旧車載機2Bの場合は、ビーコン制御機7は、ダウンリンク切り替え後に旧車載機用のダウンリンク送信を行う(図6のステップST5)。
この旧車載機用のダウンリンク送信は、渋滞情報、区間旅行時間情報及び事象規制情報などの旧車載機向けの提供情報を含む下りフレームDL2だけを、繰り返し送信することによって行われる。
なお、前述の通り、ダウンリンク切り替え後に行われるステップST4,ST5の下りフレームDL2のダウンリンク送信は、ダウンリンク切り替え時点から所定時間(例えば、250ms)が経過するまで行われる。
〔新車載機の上位互換制御〕
図7は、本実施形態の車載機2である、新車載機2Aの車載制御機21が行う上位互換制御を示すフローチャートである。
図7に示すように、新車載機2Aの車載制御機21は、下りフレームDL1を受信したか否かを常に判定しており(図7のステップST11)、下りフレームDL1を受信した場合には、その下りフレームDL1のフラグフィールドがオンか否かを判定する(図7のステップST12)。
上記判定の結果、フラグフィールドがオンである場合には、車載制御機21は、先行フレームの後に光送信部23にアップリンク送信させる後続フレームの伝送速度を高速に設定する(図7のステップST13)。
逆に、フラグフィールドがオフの場合やフィールド自体がない場合には、車載制御機21は、先行フレームの後の光送信部23にアップリンク送信させる後続フレームの伝送速度を低速に設定するか、或いは、その後続フレームの送信を止める(図7のステップST14)。
なお、前述の通り、ステップST13,ST14における上りフレームUL1のアップリンク送信は、車両IDのループバック(折り返しフレームの検出)を確認するまで行われる。
〔第1実施形態の路車間通信〕
図8は、第1実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。
ここで、白三角を付したフレームDL1は、光ビーコン4の新旧タイプのフラグフィールドがオンの下りフレームを示している。図9以降の図においても同様である。
また、図8において、U1〜U4は、車載機2がアップリンク送信する複数の上りフレーム(上りフレーム群)UL1を示し、最初の上りフレームU1が「先行フレーム」であり、それ以後に送信する上りフレームU2〜U4が「後続フレーム」であるとする。
更に、ハッチングを付していない上りフレームU1(先行フレーム)は、伝送速度が低速(本実施形態では64kbps)であることを示し、ハッチングを付した上りフレームU2〜U4(後続フレーム)は、伝送速度が高速(本実施形態では128kbps)であることを示している。この点についても、図9以後の図に示す路車間通信において同様である。
なお、図8では、高速の後続フレームU2〜U4(ハッチングあり)のアップリンク送信の期間が比較的短いため、先行フレームU1に格納した車両IDが光ビーコン4から最初にループバックされる前、すなわち、ダウンリンク切り替え直後のID格納フレームの連送が新車載機2Aに到達する前に、新車載機2Aが後続フレームU2〜U4のアップリンク送信を完了する場合を例示している。
図8に示すように、第1実施形態の新車載機2Aは、ダウンリンク領域DAで最初に下りフレームDL1を受信すると、その受信に対応して、低速の先行フレームU1を即座にアップリンク送信させる。
すなわち、新車載機2A(具体的には、車載制御機21の簡易制御部)は、先行フレームU1の伝送速度を予め低速に設定しており、最初の下りフレームDL1の受信を契機として、光送信部23に先行フレームU1を低速でアップリンク送信させる。
上記の低速の先行フレームU1のアップリンク送信は、新車載機2Aの通信相手が新光ビーコン4Aか旧光ビーコン4Bかに拘わらず実行される。
次に、新車載機2Aは、受信した下りフレームDL1のフラグフィールドがオンであるか否かを判定し、そのフラグフィールドがオンである場合には、通信相手が新光ビーコン4Aであると判断し、先行フレームU1の後に続けて高速の後続フレームU2〜U4を連送する。
すなわち、新車載機2A(具体的には、車載制御機21の本体制御部)は、通信相手が新光ビーコン4Aであると判定したことを契機として、光送信部23に後続フレームU2〜U4を高速でアップリンク送信させる。
逆に、新車載機2Aは、上記フラグフィールドがオフの場合や、そのフラグフィールドが検出できなかった場合には、通信相手が旧光ビーコン4Bであると判断し、後続フレームを非送信に設定する。
もっとも、図8に仮想線(破線)で示すように、新車載機2Aは、通信相手が旧光ビーコン4Bであると判断した場合に、1又は複数の後続フレームU2,U3を低速でアップリンク送信することにしてもよい。
この場合、低速の後続フレームU2,U3のフレーム長によっては、ダウンリンク切り替えの直後に旧光ビーコン4Bが連送する折り返しフレームを受信できないこともあり得るが、その後に所定間隔おき(図8の例では5フレームごと)にダウンリンク送信される折り返しフレームによって新車載機2Aがループバックを確認できれば、新車載機2Aが先行フレームU1の再送を行わなくなり、下りフレームDL2の受信態勢に入ることができる。
図8の路車間通信において、フラグフィールドが検出できたがオン/オフのいずれかが不明である場合など、新車載機2Aが、通信相手の新旧タイプをいずれに判定すべきかが不明な場合もあり得る。
この場合、新車載機2Aは、後続フレームU2〜U4の伝送速度を高速に設定して高速アップリンク送信を行ってもよいし、後続フレームを非送信に設定するか或いは後続フレームU2,U3の伝送速度を低速に設定して低速アップリンク送信を行うことにしてもよい。
その理由は、旧光ビーコン4Bに間違って高速の後続フレームU2〜U4を送信したとしても、旧光ビーコン4Bはその後続フレームU2〜U4をノイズと判定して受信しないため、特に差し支えがないからである。
逆に、新光ビーコン4Aに間違って低速の後続フレームU2,U3を送信したとしても、新光ビーコン4Aは当該後続フレームU2,U3を問題なく受信できるため、特に差し支えがないからである。
上記の通り、第1実施形態(図8)の新車載機2Aによれば、先行フレームU1の伝送速度を低速に設定する先行処理を実行するので、通信相手の光ビーコン4が新旧いずれのタイプであっても、当該光ビーコン4が先行フレームU1を受信できる。
この場合、低速の先行フレームU1は車両IDが含まれるID格納フレームであるから、光ビーコン4の新旧タイプに関係なく、ダウンリンク切り替えなどの所定の処理を光ビーコン4に実行させることができる。
また、第1実施形態の新車載機2Aによれば、通信相手が新光ビーコン4Aの場合には、後続フレームU2〜U4の伝送速度を高速に設定し、通信相手が旧光ビーコン4Bの場合には、後続フレームU2,U3を非送信又は送信する場合は後続フレームU2,U3の伝送速度を低速に設定する後続処理を実行する。
このため、新光ビーコン4Aに対しては、後続フレームU2〜U4を高速に設定した高速アップリンク送信が可能となり、旧光ビーコン4Bに対しては、後続フレームU2,U3の非送信又は後続フレームU2,U3を低速に設定した低速アップリンク送信が可能となり、新旧の光ビーコン4A,4Bと適切に通信することができる。
〔後続フレームを連送する場合の問題点〕
図9は、第1実施形態の通信手順(図8)において、新車載機2AがID確認を失敗する場合を示すシーケンス図である。
前述の通り、プローブ情報などの大容量のデータをアップリンク送信する場合には、先行フレームU1にデータを格納しきれないことが多い。そこで、図8及び図9の例では、新車載機2Aが合計3つの上りフレームU2〜U4よりなる後続フレームを高速で連送している。
このうち、先行フレームU1はID格納フレームであり、後続フレームU2〜U4は上記プローブ情報などが格納されたデータフレームであるとする。
ここで、従来の路車間通信では、上記のような大容量のアップリンク送信はされないという想定の下で、光ビーコン4がID格納フレームU1を受信すると、即座に折り返しフレームを連送してダウンリンク切り替えを出来るだけ素早く行う運用になっている。
このため、新光ビーコン4Aの場合も、上記と同様に、ID格納フレームU1の受信を契機としてダウンリンク切り替えを行うとすると、図8に示すように、ダウンリンク切り替え直後のID格納フレームが到達するまでに、高速の後続フレームU2〜U4(ハッチングあり)のアップリンク送信が完了すればよいが、図9に示すように、各々の後続フレームU2〜U4の送信期間が比較的長いために(後続フレームのフレーム数が多い場合も同様である。)、その送信期間(図9の例ではU4)中に折り返しフレームが新車載機2Aに到達すると、光受信部24に折り返しフレームが届いているにも拘わらず、新光ビーコン4Aが車両IDを認識済みであることを新車載機2Aが察知できない場合がある。
また、この場合、図9に破線で示すように、新車載機2Aは、ID格納フレームである先行フレームU1を含む大容量の上りフレーム群U1〜U4を再送信する。
この現象は、前述の通り、ダウンリンク情報を構成する一連の複数の下りフレームDL2の数が多ければ多いほど発生しやすくなる。なぜなら、新光ビーコン4Aが前記折り返しフレームを送信する頻度が少ないために、新車載機2Aがループバックを認識できない確率が高くなるためである。
このように、ダウンリンク切り替え後に定期的(図9の例では5フレームごと)にダウンリンク送信される折り返しフレームについても、上りフレーム群U1〜U4の送信期間と重なるタイミングになって、新車載機2Aが受信できる可能性が低くなる。
この場合、上りフレーム群U1〜U4を再送信した後でも、新車載機2Aが折り返しフレームに気付かず、上りフレーム群U1〜U4のアップリンク送信(再送)が無駄に継続されることになる。
そして、新車載機2Aがアップリンク送信するフレーム数が多いほど、折り返しフレームに気付かないままアップリンク領域UAにおいて上りフレーム群U1〜U4の送信が継続される可能性が増すことになる。
従って、より多くのデータを新光ビーコン4Aにアップリンクしようとする新車載機2Aほど、限られた期間(たとえば250ms)にしか送信されない下りフレームDL2の受信機会を大幅に喪失したり、極端な場合は、下りフレームDL2を受信できずに通信領域Aを通過したりするという、不合理な結果になるおそれがある。
〔第2実施形態の路車間通信〕
図10は、第2実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。
図10に示すように、第2実施形態では、新車載機2Aが先行フレームU1の後に高速の後続フレームU2〜U4を連送する場合に、最初の先行フレームU1と後続フレームU2の間に「送信中断期間」を設けることにより、上述の第1実施形態の問題点を解決するようにしている。
この送信中断期間は、新車載機2Aが、自機が行う車両IDのループバックの成功を確認するために必要な所定の時間長に設定されている。
例えば、新光ビーコン4Aが車両20から受信したID格納フレームU1の受信処理に5〜10m秒程度要すると仮定し、さらに、新光ビーコン4AがID格納フレームU1のID折り返し処理を開始するのに必要な遅延時間(図10の例では、ダウンリンク切り替えに必要な遅延時間)が10m秒と仮定すれば、送信中断期間は15〜20m秒の範囲で設定すればよい。
かかる送信中断期間を設けることにすれば、ダウンリンク切り替え後に連送される折り返しフレームが当該期間中に新車載機2Aの光受信部24に到達し、新車載機2Aは、受信した折り返しフレームに含まれる車両IDが自機のものと一致するか否かを判定することにより、車両IDのループバックの成功を確認できる。
上記の確認の後、新車載機2Aは、2番目以後の後続フレームU2〜U4を連送し、その連送が終了したあと、自機の通信を受信に切り替える。
このように、本実施形態の新車載機2Aによれば、送信中断期間に新光ビーコン4Aから受信した折り返しフレームにより、新光ビーコン4Aが車両IDを認識済みであることを確実に察知することができる。
このため、複数の上りフレームU1〜U4の送信を新車載機2Aが無駄に継続することによる、下りフレームDL2の受信機会の喪失を未然に防止することができる。
送信中断期間を設定する方法としては、車載制御機21が消灯状態を示す信号をその期間中に光送信部23に出力し続ける方法や、その期間の始期に光送信部23の発光素子への電源供給を停止して消灯させ、その期間の終期に発光素子への電源供給を再開して再発光させる方法がある。
また、光信号が光ビーコン4に到達できない程度に、発光素子のパワーを低下させる方法を採用してもよい。このようにすれば、発光素子の再発光時のパワーの復帰を迅速に行え、2番目の上りフレームU2の同期部の乱れを抑制できるという利点がある。
一方、何らかの原因(車両20のフロントガラスの曇り等)で、ID格納フレームU1が新光ビーコン4Aに届かなかった場合には、光ビーコン4が折り返しフレームを返してこないので、新車載機2Aはループバックの成功を確認できない。
そこで、新車載機2Aは、送信中断期間にループバックの成功を確認できなかった場合には、図10に破線で示すように、ID格納フレームである先行フレームU1のみを光送信部23に再送信させ、この先行フレームU1の後を送信中断期間とする。
従って、再送信した先行フレームU1を新光ビーコン4Aが正規に受信できた場合には、上述と同様に、送信中断期間に新光ビーコン4Aから受信した折り返しフレームにより、車両IDのループバックの成功を確認することができる。
第2実施形態において、最初の上りフレームである先行フレームU1のフレーム長は、できるだけ短いことが好ましい。例えば、多くとも後続フレームU2〜U4のいずれか1つよりも短いことが好ましい。
より好ましくは、最初の上りフレームU1のフレーム長は、上りフレーム群を構成するすべての上りフレームU1〜U4の中で最短(例えば、実データ部で5バイト程度)に設定すればよい。すなわち、当該最初の上りフレームU1に格納されるデータは必要限度のデータのみとし、例えば、車両ID情報、ビーコン間の旅行時間や車載機が対応するサービスの種別等の情報のみであることが望ましい。
その理由は、上記の通り再送信の可能性がある最初の上りフレームU1のフレーム長が長ければ、その分だけ、上りフレームU1を再送信した場合の、アップリンク送信が可能な残り時間が少なくなってしまい、アップリンク送信する予定の複数の上りフレームU2〜U4のうちの、例えば最後の上りフレームU4を送信できなくなる(新光ビーコン4Aに正常に到達しなくなる)ことがあるからである。
図10に示すように、ダウンリンク切り替え後の初期に連送される下りフレームDL2である折り返しフレームは、新車載機2Aから取得した車両IDを格納する他に、フラグフィールドをオンに設定したフレームであることが好ましい。
このようにすれば、新車載機2Aが、送信中断期間中に受信した下りフレームDL2に含まれるフラグフィールドに基づいて、光ビーコン4が高速アップリンク受信に対応する新光ビーコン4Aか非対応の旧光ビーコン4Bかを判定し、その判定結果に応じて後続処理の内容を決定することができる。
このため、新車載機2Aが、先行フレームU1の送信後においても、光ビーコン4の新旧タイプの判定を行うことができ、先行フレームU1の送信前に受信した下りフレームDL1だけに基づいて光ビーコン4の新旧タイプを判定する場合に比べて、当該判定を確実に行うことができる。
〔第3実施形態の路車間通信〕
図11は、第3実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。
第3実施形態(図11)の路車間通信が第2実施形態(図10)のそれと異なる点は、新光ビーコン4Aが、ID格納フレームである先行フレームU1を受信した場合に、ID折り返しのみを実行し、その後、最後の上りフレームU4を検出したことを条件として、ダウンリンク切り替えを実行する点にある。
第2実施形態(図10)では、新光ビーコン4Aが、ID格納フレームである上りフレームU1の受信に応じてダウンリンク切り替えを行うので、新車載機2Aが、最後の上りフレームU4の送信完了の直後から、自機の車両向けの提供情報を含む下りフレームDL2を早期に受信できる利点がある。
しかし、仮に、自車両に有益な提供情報が複数の下りフレームDL2の先頭側に偏って格納されている場合には、ダウンリンク切り替えを遅らせる方が有利であるということも考えられる。
また、第2実施形態では、路側にとって有益となる多数のアップリンクを行った新車載機2Aほど、その間は半二重方式のため受信ができないから、その分だけ、所定の下りフレームDL2を含むダウンリンク情報の受信機会が失われる可能性があり、多数のアップリンクを送信する動機が低下してしまう可能性が考えられる。
そこで、第3実施形態(図11)では、新光ビーコン4Aが、上りフレーム群U1〜U4における最後の上りフレームU4の受信を条件として、ダウンリンク切り替えを実行するようになっている。
このため、新車載機2Aは、ダウンリンク切り替え後の下りフレームDL2を先頭から順に受信することができ、自車両に有益な情報が下りフレームDL2先頭側に偏って格納されていても、その有益な情報を取り逃がす可能性を低減することができる。
また、第3実施形態(図11)では、新車載機2Aが、後続フレームU2〜U4を連送する場合に、最後の上りフレームU4のヘッダ部の所定フィールドに最終フレームフラグ(以下、「最終フラグ」と略記する。)を立てるようになっている。なお、図11において、黒三角で示す上りフレームU4は、そのフレームに最終フラグが記されていることを示す(図12〜図15も同様)。
このため、上りフレームU4を受信した光ビーコン4は、その所定フィールドに最終フラグがあれば、それが最後の上りフレームであることを判定することができる。
なお、最後の上りフレームU4の識別情報としては、上記のような最終フラグだけでなく、上りフレーム群U1〜U4に、総フレーム数とフレーム番号とを記すことによって行うこともできる。
この場合、新光ビーコン4Aは、総フレーム数の値とフレーム番号の値(すなわち、本実施形態では「4」の値)が一致する上りフレームを、最後の上りフレームU4と判定することができる。
〔第4実施形態の路車間通信〕
図12は、第4実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。
第3実施形態(図11)のように、新光ビーコン4Aが、最後の上りフレームU4の受信を条件としてダウンリンク切り替えを行う場合には、例えば図12に×印で示すように、最後の上りフレームU4が不達に終わると、新光ビーコン4Aが何時まで経ってもダウンリンク切り替えを行わず、新車載機2Aが提供情報を含む下りフレームDL2を取得できない。
そこで、第4実施形態(図12)では、新光ビーコン4Aが、上りフレーム群U1〜U4のうちのどれが最後かを判定できない場合に、予め定めた所定時間T1,T2の経過後にダウンリンク切り替えを実行するようになっている。
図12に示す2種類の所定時間T1,T2のうち、第1の所定時間T1は、最後に上りフレームを受信した時点(図12では上りフレームU3の受信時点)を始期としており、第2の所定時間T2は、ID格納フレームである最初の上りフレームU1の受信時点を始期としている。
このように、予め設定した所定時間T1,T2が経過した場合(所定時間T1,T2の一方が経過した場合あるいは双方が経過した場合のいずれでもよい。)に、ダウンリンク切り替えを実行することにすれば、どれが最後の上りフレームU4であるかが不明であることが原因で、新光ビーコン4Aがダウンリンク切り替えを行わなくなるのを未然に防止することができる。
〔第5実施形態の路車間通信〕
図13は、第5実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。
図13に示すように、第5実施形態では、新車載機2Aが先行フレームU1の後に後続フレームU2〜U4を連送する場合に、新光ビーコン4Aが、ID格納フレーム(上りフレームU1)を含む上りフレーム群U1〜U4のうちの最後の上りフレームU4を光受信部11が受信したことを条件として、ダウンリンク切り替えを行うことにより、前述の第1実施形態の問題点を解決するようにしている。
なお、第3及び第4実施形態(図11及び図12)と対比した第5実施形態(図13)の特徴は、第3及び第4実施形態(図11及び図12)では、ID折り返し(折り返しフレームの送信)とダウンリンク切り替えのタイミングが異なっているのに対して、第5実施形態(図13)では、送信中断期間を狙ったID折り返し(折り返しフレームの送信)が行われず、ID折り返しとダウンリンク切り替えのタイミングが同じになっている点にある。
このように、新光ビーコン4Aが、最後の上りフレームU4を受信したことを条件としてダウンリンク切り替えを実行することにすれば、新車載機2Aが、ダウンリンク切り替え後の当初に連送される折り返しフレームを、後続フレームU2〜U4の送信完了後に受信することができる。
従って、図13に示すように、新車載機2Aが、第2実施形態(図10)の場合の「送信中断期間」を設けずに上りフレーム群U1〜U4が連送した場合でも、新光ビーコン4Aが車両IDを認識済みであることを新車載機2Aが察知しやすくなり好適である。
もっとも、図13の第5実施形態において、新光ビーコン4Aの通信相手となる新車載機2Aは、最後の上りフレームU4がどれかを示すフレーム識別情報(例えば、前述の最終フラグ)を格納するものであれば、先行フレームU1の後に「送信中断期間」を設けるタイプの新車載機2Aであってもよい。
すなわち、図13の新光ビーコン4Aの通信相手となる新車載機2Aは、送信中断期間と最終フレームがどれかを示すフレーム識別情報の双方を採用する、例えば第3実施形態(図11)の新車載機2Aであってもよい。
なお、新光ビーコン4Aによる最後の上りフレームU4の判定方法については、第3実施形態(図11)の場合と同様であるから、説明を省略する。
〔第6実施形態の路車間通信〕
図14は、第6実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。
第5実施形態(図13)のように、新光ビーコン4Aが、最後の上りフレームU4の受信を条件としてダウンリンク切り替えを行う場合には、例えば図14に×印で示すように、最後の上りフレームU4が不達に終わると、新光ビーコン4Aが何時まで経ってもダウンリンク切り替えを行わず、新車載機2Aが提供情報を含む下りフレームDL2を取得できない。
そこで、第6実施形態(図14)においても、新光ビーコン4Aが、上りフレーム群U1〜U4のうちのどれが最後かを判定できない場合に、予め定めた所定時間T1,T2の経過後にダウンリンク切り替えを実行するようになっている。
図14に示す2種類の所定時間T1,T2のうち、第1の所定時間T1は、最後に上りフレームを受信した時点(図14では上りフレームU3の受信時点)を始期としており、第2の所定時間T2は、ID格納フレームである最初の上りフレームU1の受信時点を始期としている。
このように、予め設定した所定時間T1,T2が経過した場合(所定時間T1,T2の一方が経過した場合あるいは双方が経過した場合のいずれでもよい。)に、ダウンリンク切り替えを実行することにすれば、どれが最後の上りフレームU4であるかが不明であることが原因で、光ビーコン4がダウンリンク切り替えを行わなくなるのを未然に防止することができる。
なお、図14の第6実施形態においても、新光ビーコン4Aの通信相手となる新車載機2Aは、最後の上りフレームU4がどれかを示すフレーム識別情報(例えば、前述の最終フラグ)を格納するものであれば、先行フレームU1の後に「送信中断期間」を設けるタイプの新車載機2Aであってもよい。
すなわち、図14の新光ビーコン4Aの通信相手となる新車載機2Aは、送信中断期間と最終フレームがどれかを示すフレーム識別情報の双方を採用する、例えば第3実施形態(図11)の車載機2であってもよい。
〔第7実施形態の路車間通信〕
図15は、第7実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。
第7実施形態(図15)が第5実施形態(図13)と異なる点は、新光ビーコン4Aが、ID格納フレームである上りフレーム(先行フレーム)U1に対してID折り返しのみを行い、その後に連送される後続フレームU2〜U4のうちの最後の上りフレームU4の受信を検出した場合に、ダウンリンク切り替えを行う点にある。
図15に示すように、第7実施形態では、新車載機2Aが、すべての上りフレームU1〜U4を中断なしで連送するので、新光ビーコン4AがID折り返しを行っても、折り返しフレームの受信時期が後続フレームU2〜U4の送信期間と重なることがあり、新車載機2Aが折り返しフレームを正規に受信できない場合がある。
しかし、新光ビーコン4Aは、最後の上りフレームU4の受信を検出した場合に、ダウンリンク切り替えを行い、その切り替えの直後に折り返しフレームを連送する。
従って、新車載機2Aは、ダウンリンク切り替え後にダウンリンク送信された上記の折り返しフレームにより、ループバックの成功の確認を適切に行うことができる。
このようにすることで、さまざまな種類の送信処理を実装する車載機2が混在した場合であっても、その送信処理の如何に関わらず、車載機2がループバック検出をしやすくなり、路車間通信の効率を高めることが可能となる。
〔第8実施形態の路車間通信〕
図16は、第8実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。
第8実施形態(図16)が第1実施形態(図8)と異なる点は、先行フレームU1の伝送速度を低速に固定する先行処理ではなく、新車載機2Aが、光ビーコン4の新旧タイプに応じて、先行フレームU1の伝送速度を高速又は低速に設定する先行処理を実行する点にある。
すなわち、第8実施形態(図16)の新車載機2Aは、受信した下りフレームDL1のフラグフィールドがオンであるか否かを判定し、そのフラグフィールドがオンである場合には、通信相手が新光ビーコン4Aであると判断し、先行フレームU1の伝送速度を高速に設定する。
また、新車載機2Aは、上記フラグフィールドがオフの場合や、そのフラグフィールドが検出できなかった場合には、通信相手が旧光ビーコン4Bであると判断し、先行フレームU1の伝送速度を低速に設定する。
一方、第8実施形態(図16)の新車載機2Aが行う後続処理については、第1実施形態(図8)の場合と同様である。
すなわち、新車載機2Aは、通信相手が新光ビーコン4Aである場合には、先行フレームU1の後に続けて高速の後続フレームU2〜U4を連送する。
また、新車載機2Aは、通信相手が旧光ビーコン4Bである場合には、後続フレームU2,U3を非送信に設定するか、送信する場合は後続フレームU2,U3の伝送速度を低速に設定する。
図16の路車間通信において、フラグフィールドが検出できたがオン/オフのいずれかが不明である場合など、新車載機2Aが、通信相手の新旧タイプをいずれに判定すべきかが不明な場合もあり得る。
この場合、新車載機2Aは、先行フレームU1の伝送速度を低速に設定し、後続フレームU2,U3を非送信に設定するか或いは後続フレームU2,U3の伝送速度を低速に設定する。
その理由は、旧光ビーコン4Bに間違って高速の先行フレームU1と高速の後続フレームU2〜U4を送信したとすると、旧光ビーコン4Bが上りフレームを1つも受信することができず、ダウンリンク切り替えが行われなくなるからである。
逆に、新光ビーコン4Aに間違って低速の先行フレームU1と低速の後続フレームU2,U3を送信したとしても、新光ビーコン4Aは当該先行フレームU1と後続フレームU2,U3を問題なく受信できるため、特に差し支えがないからである。
上記の通り、第8実施形態(図16)の新車載機2Aによれば、通信相手の新旧タイプに応じて先行フレームU1の伝送速度を高速又は低速に設定するので、通信相手の光ビーコン4が新旧タイプに関係なく、当該光ビーコン4が先行フレームU1を受信できる。
この場合、高速又は低速の先行フレームU1は車両IDが含まれるID格納フレームであるから、光ビーコン4の新旧タイプに関係なく、ダウンリンク切り替えなどの所定の処理を光ビーコン4に実行させることができる。
また、第8実施形態の新車載機2Aによれば、通信相手が新光ビーコン4Aの場合には、後続フレームU2〜U4の伝送速度を高速に設定し、通信相手が旧光ビーコン4Bの場合には、後続フレームU2,U3を非送信又は送信する場合は後続フレームU2,U3の伝送速度を低速に設定する後続処理を実行する。
このため、新光ビーコン4Aに対しては、後続フレームU2〜U4を高速に設定した高速アップリンク送信が可能となり、旧光ビーコン4Bに対しては、後続フレームU2,U3の非送信又は後続フレームU2,U3を低速に設定した低速アップリンク送信が可能となり、新旧の光ビーコン4A,4Bと適切に通信することができる。
〔第8実施形態の変形例〕
第8実施形態(図16)の新車載機2Aも、新光ビーコン4Aに対して、先行フレームU1の後に後続フレームU2〜U4を送信するので、後続フレームU2〜U4を連送する場合の問題点(図9)が同様に生じ得る。
そこで、第8実施形態の新車載機2Aについても、前述の第2実施形態(図10)〜第7実施形態(図15)と同様の通信手順の改良を施すことができる。
すなわち、前述の第2実施形態(図10)〜第7実施形態(図15)の通信手順の改良は、第8実施形態(図16)の新車載機2Aにも、同様に適用することができる。
〔第9実施形態の路車間通信〕
図17は、第9実施形態の通信手順を示すシーケンス図である。
第9実施形態(図17)が第1実施形態(図8)と異なる点は、先行フレームU1の伝送速度を低速に固定する先行処理を行うだけでなく、新車載機2Aが、光ビーコン4の新旧タイプに関係なく、後続フレームU2〜U4の伝送速度を高速に固定する後続処理を実行する点にある。
すなわち、第9実施形態(図17)の新車載機2Aは、通信相手の新旧タイプを判定することなく、先行フレームU1のアップリンク送信を常に低速で行い、後続フレームU2〜U4のアップリンク送信を常に高速で行う。
このため、第9実施形態の新車載機2Aが通信相手である新光ビーコン4Aには、自機が高速アップリンク受信に対応することを知らせるフラグフィールドを、下りフレームDL1に設ける必要がない。
上記の通り、第9実施形態(図17)の新車載機2Aによれば、先行フレームU1の伝送速度を低速に設定する先行処理を実行するので、通信相手の光ビーコン4が新旧いずれのタイプであっても、当該光ビーコン4が先行フレームU1を受信できる。
この場合、低速の先行フレームU1は車両IDが含まれるID格納フレームであるから、光ビーコン4の新旧タイプに関係なく、ダウンリンク切り替えなどの所定の処理を光ビーコン4に実行させることができる。
また、第9実施形態の新車載機2Aによれば、後続フレームU2〜U4の伝送速度を高速に設定する後続処理を実行する。
このため、通信相手が新光ビーコン4Aの場合には、後続フレームU2〜U4を高速に設定した高速アップリンク送信が可能となり、通信相手が旧光ビーコン4Bの場合には、後続フレームU2〜U4がノイズと判定されて受信されず、低速の先行フレームU1のみが正規に受信されるので、新旧の光ビーコン4A,4Bと適切に通信することができる。
〔第9実施形態の変形例〕
第9実施形態(図17)の新車載機2Aも、新光ビーコン4Aに対して、先行フレームU1の後に後続フレームU2〜U4を送信するので、後続フレームU2〜U4を連送する場合の問題点(図9)が同様に生じ得る。
そこで、第9実施形態の新車載機2Aについても、前述の第2実施形態(図10)〜第7実施形態(図15)と同様の通信手順の改良を施すことができる。
すなわち、前述の第2実施形態(図10)〜第7実施形態(図15)の通信手順の改良は、第9実施形態(図17)の新車載機2Aにも、同様に適用することができる。
〔送信中断期間の変形例〕
上述の第2実施形態(図10)〜第4実施形態(図12)では、上りフレームU1〜U4の送信中断期間を、最初の上りフレームU1と2番目の上りフレームU2の間に設定している。しかし、上りフレーム群U1〜U4のうちの、どのフレームとどのフレームの間に送信中断期間を配置すれば最適であるかは、光ビーコン4の性能やアップリンク速度に応じて変動しうる。
そこで、上述の第2〜第4実施形態において、例えば2番目と3番目の上りフレームU2,U3の間に送信中断期間を設けたり、それ以後の上りフレームU3,U4間に送信中断期間を設けたりすることにしてもよい。
例えば、新光ビーコン4Aが、最初の上りフレームU1を受信してから識別情報を含む下りフレーム(折り返しフレーム)の送信を開始するまでの間に、一定の処理時間(例えば10m秒程度)を要する場合には、その間は、車載機2が受信態勢に切り替えたとしても前記折り返しフレームを受信することができない。
従って、その処理時間の間に、次以降の上りフレームU2〜U4を送信し終えることが可能であるならば、その方が路車間通信の効率を高くすることができるからである。
例えば、アップリンク速度が現行の64kbpsの場合、現行の路車間通信の規格によれば、上りフレームを1フレーム送信するのに約10m秒程度必要となる(実データ部が最大サイズである59バイトの場合)。
仮に、1フレーム目の上りフレームU1を受信し終えた光ビーコン4が前記折り返しフレームの送信を開始するまでに10m秒以上要するのであれば、その間に2番目の上りフレームU2を送信し、2番目の上りフレームU2を送信し終えてから前記受信態勢に切り替える方が、通信効率が高くなると期待できる。この場合、2フレーム目と3フレーム目の間に送信中断期間を設けるようにすれば良い。
上記の観点からすると、新車載機2Aは、最初の上りフレームU1に車両IDを含む上りフレーム群U1〜U4を光ビーコン4に送信する場合に、上りフレーム群U1〜U4に含まれる最後を除く上りフレームU1〜U3の送信の後にいったん受信態勢に切り替わって、車両IDを含む下りフレームである折り返しフレームを待つことを特徴とするものであると言える。
なお、新車載機2Aにおいて、上記受信態勢への切り替えタイミングを可変に設定きるようにすれば、新光ビーコン4Aからの折り返しフレームの送信時期が規約の変更によって変動しても、その変動に車載機2が柔軟に対処できるようになる。
例えば、もしアップリンク速度を128kbpsに向上できるのであれば、1フレームの送信に5m秒要する(実データ部が最大サイズである59バイトの場合)ため、同様の理屈にしたがって、光ビーコン4が折り返しフレームを送信し始めるまでの間に、2フレーム目と3フレーム目を送信し、3フレーム目と4フレーム目の間に送信中断期間を設けるようにしても良い。
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態(上述の各変形例を含む。)はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態では、上りフレームU1〜U4を連続して送信することになっているが、フレーム間に所定時間長のインターバルを設けてバースト送信することにしてもよい。
ただし、上述の第4実施形態(図12)と第6実施形態(図14)においては、フレーム間のインターバルを、所定時間T1が確保される範囲内に設定する必要がある。
その所定時間T1以上のインターバルを空けると、新光ビーコン4Aがアップリンクに何らかの支障が生じたと判断し、ダウンリンク切り替え等を実施してしまうかもしれないためである。
また、本発明の「車載機」とは、車両20に搭載されたあと常にその状態に固定されるものを含むことは勿論、ドライバが利用したい時だけ車両20に持ち込まれ、一時的に車両20に搭載されるものも含まれる。
新車載機2Aが、送信中断期間を設けない動作(例えば図8)と送信中断期間を設ける動作(例えば図10)のいずれを行うこともあり得る状況の場合、新光ビーコン4Aは、最初の上りフレームU1を受信したときに折り返しフレームの連続送信を含むダウンリンク切り替えを行い、さらに、最後の上りフレームU4を受信したときに、もう1回、折り返しフレームの連続送信を含むダウンリンク切り替えを行うようにしても良い。
このようにすれば、いずれのタイプの新車載機2Aであっても、ループバックの成功を認識しやすくなる。
また、図8や図10のように、最初の上りフレームU1の受信後にすぐさま、折り返しフレームの連続送信を含むダウンリンク切り替えを行う場合に、折り返しフレームの連続送信を新車載機2Aが受信できなかったら、以降は、下りフレームDL2の中で一定の頻度で送られる折り返しフレームを受信することによってしか、新車載機2Aはループバックを認識することができない。
そこで、下りフレームDL2として、従来よりも多く折り返しフレームを含ませるようにすることもできる。
例えば、ダウンリンク情報を構成する一連の複数の下りフレームDL2の先頭に従来通り折り返しフレームを1つ挿入するのに加えて、2番目も折り返しフレームとしたり、折り返しフレームが3つに1つや4つに1つの割合となるようにしたりする等の方法を採用することができる。また、下りフレームDL2の総数がN個であれば、N/2番目かその前後、あるいは、N/3番目かその前後に、折り返しフレームを1つ乃至複数挿入するといった方法でも良い。
なお、車載機2がループバックを確認できるまで繰り返すアップリンク送信処理の送信間隔(例えば20ms)が予め規定されているのであれば、当該アップリンク送信間隔よりも短い周期で必ず折り返しフレームが送信されるように、10〜15フレーム程度(=10〜15ms程度の時間に相当する)に1つの割合で、折り返しフレームを挿入するようにしても良い。
一般に、コンピュータ装置において、連続して繰り返しでダウンリンク情報を送信しているときにダウンリンク切り替え後の下りフレームDL2の繰り返し送信のモードにしたり、折り返しフレームを連送するモードにしたりする等、送信モードを変更するのは、処理の負荷が大きく、処理能力の高いCPU等を採用する必要があるため、送信のモードの切替数は少ない方が有利である。
そういった観点で、上記のように、ダウンリンク切り替え後の下りフレームDL2として従来よりも多く折り返しフレームを含ませる等によって、車載機にループバック成功を認識させる確率を高くすると共に、送信するモードの変更回数を少なくすることは有望である。
なお、ここでは、ダウンリンク切り替えや折り返しフレームの連送といった動作のために、最初の上りフレームの受信や最後の上りフレームの受信をトリガーとした例を示したが、そういった構成には限られない。
というのも、車載機2からすれば、光ビーコン4にどのタイミングでダウンリンク切り替えを行って欲しいかを指定できる方が、都合が良いケースがあると考えられるためである。
そこで、上りフレームUL1に、光ビーコン4に対するダウンリンク切り替えを要求するための「DL切替要求情報(例えばヘッダ等の所定の位置に設けたフラグ等)」を設け、車載機2からDL切替要求情報を受信したタイミングで、光ビーコン4が、ダウンリンク切り替えや折り返しフレームの連送といった動作をするようにしても良い。
例えば、新車載機2Aの送信する上りのフレーム数が合計で2つの場合、新車載機2Aとしては、1つ目の上りフレームU1を送信した後で所定時間送信を停止してから再び2つ目の上りフレームU2を送信するよりも、2つのフレームを連続して送信する方が処理が簡便であるし、仮に、アップリンクが光ビーコン4に到達せず、再送することになったとしても、通信効率の低下の影響は小さい。そういった場合には、2フレーム目にDL切替要求情報を格納しておくようにしても良い。
また、新車載機2Aの送信する上りのフレーム数が合計で10個程度あるような場合にも、例えば、光ビーコン4がダウンリンク切り替えを実行するまでに所定の時間(例えば10ms)を要することが分かっているのであれば、上りフレームUL1の送信に要する期間が、当該所定の時間(例えば10ms)以下となった時点で、DL切替要求情報を送信してもよい。例えば、1フレームの送信に5msを要するのであれば、8フレーム目にDL切替要求情報を含ませればよい。
そうすれば、8フレーム目を受信してDL切替要求情報を確認してからダウンリンク切替のモードに移行する光ビーコン4が、実際にダウンリンク切替をするまでの間(例えば10ms)の間に、新車載機2Aは、9フレーム目と10フレーム目を送信し終えることができるため、その分だけ効率よく路車間通信を行うことができるようになる。
このように、車載機2が、光ビーコン4にどのタイミングでダウンリンク切り替えや折り返しフレームの連送を行って欲しいかを指定できる通信プロトコルを新たに導入することで、車載機2や路上装置にとって柔軟でより都合の良い、路車間通信を実現することが可能になり至便である。
なお、この場合、もし光ビーコン4が、車載機2が送信してきた上りフレームUL1のうちDL切替要求情報が格納された上りフレームを受信できなかったら、光ビーコン4はダウンリンク切り替えを実行するタイミングを失することになるが、その場合には、最終の上りフレームU4を受信したタイミングでダウンリンク切り替えを実行するようにしても良い。さらに、図14に示すように、最後に上りフレームU4を受信してから所定時間T1経過後にダウンリンク切り替えを行う方法を併用ことにしてもよい。
2 車載機
4 光ビーコン
7 ビーコン制御機(通信制御部)
8 ビーコンヘッド
10 光送信部
11 光受信部
20 車両
21 車載制御機(通信制御部)
22 車載ヘッド
23 光送信部
24 光受信部

Claims (2)

  1. 道路に設置された光ビーコンと光信号による無線通信を行う車載機であって、
    高低2種類の伝送速度での電気光変換が可能な光送信部と、
    前記2種類の伝送速度と異なる1種類の伝送速度での光電気変換が可能な光受信部と、
    前記1種類の伝送速度で送信された下りフレームに含まれるビーコン識別情報に基づいて、前記光ビーコンが高速アップリンク受信に対応する新光ビーコンか非対応の旧光ビーコンかを判定し、この判定結果に応じて、高速の伝送速度でアップリンク送信を行うか、低速の伝送速度でアップリンク送信を行う又は非送信に設定するかを切り替える通信制御部と、備える車載機。
  2. 前記通信制御部は、高速アップリンク送信に対応する新車載機のための信号情報を含む下りフレームの送信を前記光ビーコンにダウンリンク送信させるための車載機識別情報を、上りフレームに含めることができる請求項1に記載の車載機。
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