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JP3651381B2 - 移動体通信装置、固定局通信装置、アプリケーション処理装置および移動体通信装置の通信方法 - Google Patents

移動体通信装置、固定局通信装置、アプリケーション処理装置および移動体通信装置の通信方法 Download PDF

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JP3651381B2
JP3651381B2 JP2000304820A JP2000304820A JP3651381B2 JP 3651381 B2 JP3651381 B2 JP 3651381B2 JP 2000304820 A JP2000304820 A JP 2000304820A JP 2000304820 A JP2000304820 A JP 2000304820A JP 3651381 B2 JP3651381 B2 JP 3651381B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固定局通信装置の通信エリアに進入すると自己のリンク用識別コードを送信してその固定局通信装置との通信を行なうためのリンク処理を行ない、リンクが確立すると以後は前記リンク用識別コードを用いて通信処理を行なうように制御する通信制御手段を備えた移動体通信装置、その移動体通信装置と通信を行なう固定局通信装置、その移動体通信装置を利用してデータ転送を行なうアプリケーション処理装置および移動体通信装置の通信方法に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
この種のものとしては、例えば、車両に搭載され、道路を走行する際に道路に設置される路側局(固定局)に設けられる路側機(固定局通信装置)との間で通信を行なうための車載器(移動体通信装置)がある。有料道路などの自動料金収受システムとして決められているARIB(Association of Radio Industries and Businesses)−STD−55のDSRC(Dedicated Short Range Communication )規格では、車載器と路側機との間で行なう通信のプロトコルとして、路側機は1フレーム中に複数のMDS(Message Data Slot )を割り付けることによるデータチャンネルの多重化が可能である。これにより、複数の車両が搭載している車載器が同時に路側機と通信処理を行なうことができる。
【0003】
しかし、このような規格は、複数の車両のそれぞれの車載器に対してMDSを割り付けることにより、複数台の車両との通信を同時に行なうためのしくみであって、1台の車両に対して割り付けられるスロットは1個である。したがって、1台の車載器に複数のMDSを割り付けて路側機との間で相互に通信を行なうことはできない。このため、DSRC通信により1台の車両に対してデータをやりとりする場合、他に空きスロットがあっても車載器は1つのMDSしか使用することができず、データ転送速度を上げることができないものであった。
【0004】
ところで、上述のように複数のMDSを1台の車両が使用することができないのは、次に示すような理由によるものである。すなわち、DSRC通信で路側機側で1台の車載器に対して複数個のMDSを割り付けた場合、複数割り付けたMDSの中で1か所でも通信エラーが発生した場合には、路側機あるいは車載器のうちのデータを受信する側でのMDCの順序が不連続となる。
【0005】
例えば、図13 に示すように、DSRC通信のプロトコルにおいては、送信すべきデータを受け取ると、これをLPDU(Link Protocol Data Unit )として規定されたデータ長512オクテットのサイズに分割し、このLPDU毎にさらにMACレイヤ(Medium Access Control Sub Layer )に渡す段階でMPDUで規定したデータ長(65オクテット)のサイズに分割する。最終的に、このMPDU(MAC Protocol Data Unit)のデータ長でレイヤ1では各スロットMDCにデータを送信する。
【0006】
したがって、図示のように、1つのLPDUを複数のMPDUに分割してこれを送信するときに、1つのLIDを用いている場合には、例えば、最初のFCMC(Frame Control Message Channel )のフレームでMPDU3のデータを送信したMDC(Message Data Channel)3が通信エラーで受信側で受けられないときには、これが受信側のMACレイヤに渡すことができない。このとき、通信エラーを起こしたMPDU3のデータを送信するMDC3を次のFCMCのフレームで再送したとしても、受信側のMACレイヤでは順次受けるべきMPDU3が受信できないことにより、後続のMPDU4以降のデータがすべて破棄されてしまうことになる。
【0007】
これは、DSRC規格では不連続のMDCを受け取った場合にはそれを破棄することと規定されているため、正しく受信できたMDCも全て破棄されてしまうことになるからである。さらに、このように通信エラーが発生して受け取ったMDCを破棄する場合には、その状態から復帰するための手段が準備されておらず、リトライ処理などを行なうことができず、通信が中断したままとなってしまうことになる。このような理由により、1台の車載器に対して複数のMDSの割り付けを行なうことができないのである。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、上述のように規格上では1台の車両が複数のMDSが割り付けることができないなどで、データ転送速度を上げることができないように規定されている場合でも、その規格の範囲内において複数のMDSを使用するなどの方法を採用できるようにしてデータ転送速度を向上させることができるようにした移動体通信装置、固定局通信装置、アプリケーション処理装置および移動体通信装置の通信方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明によれば、通信制御手段は、固定局通信装置の通信エリアに進入すると自己に設定されている複数のリンク用識別コードを送信し、その固定局通信装置との通信を行なうためのリンク処理を行ない、リンクが確立すると以後はそれら複数のリンク用識別コードを用いて通信処理を行なうように構成されるので、複数のリンク用識別コードについてリンクを確立することができれば、1つのリンク用識別コードで行なえる通信処理に比べて、データ伝送速度を高めた状態で通信処理を行なうことができる。
【0010】
これにより、アプリケーションによってはデータ伝送量が多くなる場合に、使用可能な通信容量の空き部分を、リンク用識別コードによるリンク処理の確立によって確保することができ、データ伝送の処理を効率良く行なえるようになる。また、このことは、固定局通信装置において、同時にリンク確立の可能なリンク用識別コードの個数が多く設定されているものほどその利用率の向上を図ることができると共に、個々の移動体通信装置においては伝送容量の増大を図ることができるようになる。
【0011】
請求項2の発明によれば、通信制御手段は、固定局通信装置の通信エリアに進入すると自己に設定されているリンク用識別コードを送信し、その固定局通信装置との通信を行なうためのリンク処理を行ない、リンクが確立すると以後は複数のリンク用識別コードを用いて通信処理を行なうように構成されるので、複数のリンク用識別コードを用いて通信処理を行うことで、1つのリンク用識別コードで行なえる通信処理に比べて、データ伝送速度を高めた状態で通信処理を行なうことができ、これによって上述と同様の効果を得ることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、上記各構成において、通信制御手段により、1つもしくは複数のアプリケーション処理装置から送信すべきデータを受ける場合に、そのデータを前記複数のリンク用識別コードを用いて行なう通信処理単位に分割して送信するので、アプリケーション処理装置から送信すべきデータの転送量が多い場合に、その転送速度を高めた効率の良い伝送処理を行なうことができるようになる。
【0013】
請求項4の発明によれば、上記各構成において、通信制御手段により、アプリケーション処理装置から送信すべきデータの容量に応じて複数のリンク用識別コードの個数を設定するので、送信に必要な転送容量を確保しながら不用意に通信可能な容量を占有して他の移動体通信装置による通信を妨げることなく、効率良く通信処理を行なうことができるようになる。
【0014】
請求項5の発明によれば、請求項1または2に記載の移動体通信装置において、通信制御手段により、複数のアプリケーション処理装置から送信すべきデータを受ける場合に、複数のリンク用識別コードをアプリケーション処理装置の単位で割り当てて送信すべきデータを送信するように構成しているので、リンク用識別コードの利用をアプリケーション処理装置の単位で効率良く利用することができる。また、これにより、アプリケーション処理装置の使用状態に応じて必要なデータ伝送速度を確保することができるので、通信可能な容量の範囲の有効活用を図れると共に迅速なデータ伝送処理を行なうことができるようになる。
【0015】
請求項6の発明によれば、上記構成において、通信制御手段により、アプリケーション処理装置から送信すべきデータの伝送容量が所定以上の場合には、複数のリンク用識別コードをそのアプリケーション処理装置に割り当てて前記送信すべきデータを送信するように構成しているので、アプリケーション処理装置の送信すべきデータの容量が増大して処理能力が低下するのを防止でき、一定のデータ伝送処理能力を確保することができるようになる。
【0016】
請求項7の発明によれば、上記各構成において、通信制御手段により、複数のリンク用識別コードの個数を最大使用可能個数として設定し、その個数の範囲内で前記固定局通信装置との間で使用可能なリンク用識別コードを用いてデータの伝送処理を行なうように構成しているので、使用可能な範囲内でリンク用識別コードを使用しながら、その最大使用可能個数まで使用することで通信可能な容量を占有するといった事態を発生させることなく有効に利用することができるようになる。
【0017】
請求項8の発明によれば、上記構成において、通信制御手段により、設定している複数のリンク用識別コードに対して固定局通信装置との間で使用可能なリンク用識別コードの個数が少ない場合には、使用していないリンク用識別コードが使用可能となるのを判断しながらデータ伝送処理を実行するので、必要なリンク用識別コードの使用を確保しながら、リンク処理が確立しているリンク用識別コードを用いてデータ伝送処理を行なうことができる。
【0018】
請求項9の発明によれば、上記各構成において、通信制御手段は、固定局通信装置との間でDSRC方式により通信を行なう車載器に搭載されるものとして構成しているので、有料道路の自動料金収受などのデータ伝送処理に用いると共に、これを利用してアプリケーション処理装置によりデータを伝送処理する場合でも、データ伝送速度を確保しながら効率の良いデータ伝送処理を行なうことができるようになる。
【0019】
請求項10の発明によれば、上記構成において、通信制御手段により、複数のリンク用識別コードを、FCMSに続く複数のMDSのそれぞれに対して異なるものを使用して通信処理を行うので、各MDS毎に行う通信処理を独立したリンク用識別コードにより行って合成することができ、これによって、DSRC方式の通信処理を利用しながら複数のMDSを使用してデータ伝送速度の向上を図り、且つエラー発生時の通信処理を円滑に行うことができるようになる。
【0020】
請求項11の発明によれば、請求項9または10の発明において、通信制御手段により、固定局通信装置が送信するFCMSを受信して空きスロットの情報を得ると共に、その空きスロット情報に基づいて空きスロットの個数に対応したリンク用識別コードを送信してリンク処理を行なうので、空きスロットの利用率を高めて効率の良い通信処理を行なえ、データ伝送速度を高めた通信処理を行なうことができるようになる。
【0021】
請求項12の発明によれば、上記構成において、通信制御手段により、固定局通信装置が送信するFCMSを受信してその中に送信したリンク用識別コードに対応したMDSが存在していないときには、そのリンク用識別コードについて再び送信して次に受信するFCMSにそのリンク用識別コードに対応したMDSが含まれるまで繰返し実行するように構成したので、リンク処理の確立を確実に行なうことができるようになる。
【0022】
請求項13の発明によれば、上記各構成において、通信制御手段により、複数のリンク用識別コードを用いてリンク処理を確立した状態では、固定局通信装置からリンク用識別コード毎に受信するデータを指定された順序で合成することによりデータの組み立てを行なうので、各リンク用識別コード毎に受信したデータの時間的な前後が生じていても、それらを確実に復元することができるようになる。
【0023】
請求項14の発明によれば、上記各構成において、通信制御手段により、複数のリンク用識別コードを、1つのリンク用識別コードを用いてその特定ビットを変化させて生成するので、もととなるリンク用識別コードを利用して簡単且つ迅速に複数のリンク用識別コードを得ることができるようになる。例えば、リンクを確立してから複数のリンク用識別コードを用いる構成の場合には、あらかじめ複数のリンク用識別コードを準備しなくとも利用可能な複数のリンク用識別コードを迅速に準備することができ、通信処理を遅延させることがなく開始させることができるようになる。
【0024】
請求項15の発明によれば、固定局通信装置により、通信エリアに進入した移動体通信装置から複数のリンク用識別コードを受信すると使用可能なリンク用識別コードについてその移動体通信装置との通信を行なうためのリンク処理を行ない、リンクが確立すると以後は使用可能なリンク用識別コードを用いて通信処理を行なうように制御するので、1つのリンク用識別コードで行なえる通信処理に比べて、データ伝送速度を高めた状態で通信処理を行なうことができる。
【0025】
これにより、アプリケーションによってはデータ伝送量が多くなる場合に、使用可能な通信容量の空き部分を、リンク用識別コードによるリンク処理の確立によって確保することができ、データ伝送の処理を効率良く行なえるようになる。また、このことは、同時にリンク確立の可能なリンク用識別コードの個数が多く設定されているものほどその利用率の向上を図ることができると共に、個々の移動体通信装置においては伝送容量の増大を図ることができるようになる。
【0026】
請求項16の発明によれば、固定局通信装置により、通信エリアに進入した移動体通信装置からリンク用識別コードを受信してリンクを確立すると、以後は、その移動体通信装置から複数のリンク用識別コードを用いてそのそれぞれにより前記通信処理を行なうように制御するので、1つのリンク用識別コードで行なえる通信処理に比べて、データ伝送速度を高めた状態で通信処理を行なうことができ、これによって上述と同様の効果を得ることができる。
【0027】
請求項17の発明によれば、上述の場合において、通信エリアに進入した移動体通信装置から複数のリンク用識別コードを受信して使用可能なリンク用識別コードについてその移動体通信装置との通信を行なうためのリンク処理が確立すると、以後は使用可能なリンク用識別コードを用いて通信処理を行なうように制御し、これによって各リンク用識別コードを通じて送信されるデータを指定された順序で合成することによりデータの組み立てを行なうので、上述同様に、各リンク用識別コード毎に受信したデータの時間的な前後が生じていても、それらを確実に復元することができるようになる。
【0028】
請求項18の発明によれば、請求項15ないし17の構成において、通信制御手段により、移動体通信装置が複数のリンク用識別コードを用いて通信を行なうべくリンク処理を確立させた場合には、その移動体通信装置に送信すべきデータを複数のリンク用識別コードを用いて行なう通信処理単位に分割して送信するので、移動体通信装置に送信すべきデータの転送量が多い場合に、その転送速度を高めた効率の良い伝送処理を行なうことができるようになる。
【0029】
請求項19の発明によれば、アプリケーション処理装置は、複数の移動体通信装置によりそれぞれ異なるリンク用識別コードを用いて通信処理が可能な場合に、データ処理手段により、それら複数の移動体通信装置を介してアプリケーションに関するデータの授受を行なうので、それぞれの移動体通信装置は各自が固定局通信装置との間でアプリケーションに関するデータの授受を行なうことで、1つの移動体通信装置を用いた場合の通信処理に比べて、データ伝送速度を高めた状態で通信処理を行なうことができる。
【0030】
これにより、アプリケーションによってはデータの授受の量が多くなる場合に、使用可能な通信容量の空き部分を、リンク用識別コードによるリンク処理の確立によって確保することができ、データ伝送の処理を効率良く行なえるようになる。また、このことは、固定局通信装置において、同時にリンク確立の可能なリンク用識別コードの個数が多く設定されているものほどその利用率の向上を図ることができると共に、個々の移動体通信装置においては伝送容量の増大を図ることができるようになる。
【0031】
請求項20の発明によれば、アプリケーション処理装置は、アプリケーションに関するデータを送信する場合に、複数の移動体通信装置に対してデータ処理手段により、使用可能なリンク用識別コード毎に分割してデータ伝送処理を行なわせるので、1つのアプリケーション処理装置によるデータ伝送速度を高めて効率の良い通信処理を行なうことができるようになる。
【0032】
請求項21の発明によれば、アプリケーション処理装置は、アプリケーションに関するデータを受信する場合に、複数の移動体通信装置を通じて固定局通信装置から受信するデータを指定された順序で合成することによりデータの組み立てを行なうので、各移動体通信装置から受信したデータの時間的な前後が生じていても、それらを確実に復元することができるようになる。
【0033】
請求項22の発明によれば、移動体通信装置により固定局通信装置との間で通信を行なう場合において、複数のリンク用識別コードを用いてそのそれぞれにより固定局通信装置とリンク処理を行ないリンク処理が確立したリンク用識別コードを用いてデータ伝送処理を行なうので、通信可能な容量の範囲内で効率の良いデータ伝送処理を行なえると共に、移動体通信装置によるデータ伝送速度を高めた効率の良いデータ伝送処理を行なうことができるようになる。
【0034】
請求項23の発明によれば、移動体通信装置により固定局通信装置との間で通信を行なう場合において、リンク用識別コードを用いて固定局通信装置とリンク処理を行ないリンクが確立した後、移動体通信装置と固定局通信装置との間で複数のリンク用識別コードを用いてデータ伝送処理を行なうので、通信可能な容量の範囲内で効率の良いデータ伝送処理を行なえると共に、移動体通信装置によるデータ伝送速度を高めた効率の良いデータ伝送処理を行なうことができるようになる。
【0035】
【発明の実施の形態】
(第1の参考例
以下、本発明の実施形態の説明に先立って、DSRC方式の通信を行なう自動料金収受システムの車載器に適用した場合の第1の参考例について図1ないし図9を参照しながら説明する。
図2は、本参考例の概略的な構成を示すもので、車載器1は、例えば4個のリンク用識別コードであるLID(Link ID )1〜4が設定可能に構成されており、内部に設けられる通信制御手段である通信処理回路1aにより後述する通信の制御が行なわれる。また、通信処理回路1aは、CPUやROM、RAMなどを含んだ構成とされ、通信処理プログラムにしたがって通信制御を行なうものである。
【0036】
車載器1は、自動料金収受のための通信処理を内部で行なうように構成されており、料金決済用のICカード(図示せず)などが装着可能に構成されている。また、車載器1は、他の通信処理動作として外部に接続されるアプリケーション処理装置2からの転送データが送信可能に構成されている。アプリケーション処理装置2は、例えば、ナビゲーション地図データ配信をするためのカーナビゲーション装置やインターネット接続可能な端末装置、あるいは音楽情報などをダウンロードして再生するデジタル音楽配信装置などである。
【0037】
車載器1は、例えば、自動車のダッシュボード部に設置されるようになっており、有料道路などを通行する際に、料金所などに設けられる固定局通信装置である路側機3の通信エリア内で通信を行なうようになっている。この場合、両者の間の通信処理は、ARIB−STD−55に準拠したDSRC方式により通信を行なう構成である。
【0038】
このDSRC方式による通信規格では、路側機が道路の制限された範囲をカバーする狭域通信ゾーンを持ち、移動車載器がこの通信ゾーンを通過する間に路側機との間でデータ伝送を実現するために行う通信制御手順について規定されている。通信方式の概要としては、複数の移動車載器と路側機との間のポイントツーポイントの短時間での双方向通信に適した同期式アダプティブスロッテドアロハ方式の通信制御手順を基本としたものである。また、半二重通信が基本となっており、上り、下りに異なる周波数を用いる場合には全二重通信も可能な通信制御方式を規定したものである。
【0039】
通信フレームのスロットは、スロット割り当てを行うFCMS(Frame Control Message Slot)とデータ転送用のMDS(Message Data Slot )と路側機の通信リンクへのエントリ(アソシエーション)用のACTS(Activation Slot )からなる構成となっている。
【0040】
図3は、車載器1と路側機3との間の通信を行なうためのプロトコルモデルを示すものである。DSRCプロトコルは、開放システム型相互接続のためのOSI(Open Systems Interconnection)階層モデルにしたがって、レイヤ1(以下L1と称する)(物理媒体層:Physical Medium Layer )、レイヤ2(データリンク層:Data Link Layer :L2)およびレイヤ7(以下L7と称する)(アプリケーション層:Application Layer )の三層構造で構成される。レイヤ2はさらに論理リンク制御副層LLC(Logical Link Control Sub Layer)と媒体アクセス制御副層MAC(Medium Access Control Sub Layer )とに分割される。
【0041】
アプリケーション処理装置2から与えられる送信すべきデータに対して、車載器1はこれを4つのデータチャンネルによって送信するので、上述のL7,LLC,MAC,L1では、MACレイヤから受け取ったMPDU(MAC Protocol Data Unit)をLID毎にMDS(Message Data Slot )に対応させて送受する機能を持たせるものである。
【0042】
次に、図1に示すフローチャートにしたがってリンク処理の内容について説明する。車載器1は、複数のリンクを確立しようとする場合、まず、通信を開始するに先だって、要求するデータチャンネル数をN(ここではN=4)として設定し(ステップS1)、そのデータチャンネル数N個分のLID1〜LID4を、乱数に基づいた生成方法により生成して記憶する(ステップS2)。
【0043】
次に、車載器1は、路側機3の通信エリアに進入すると、FCMC(Frame Control Message Channel )を受信し(ステップS3)、その受信したFCMC中にステップS2において生成したLID1〜LID4に対するMDS(Message Data Slot )が存在するか否かを調べる(ステップS4)。ここでは、まだACTC(ACTivation Channel)を送信していないのでLID1〜LID4のいずれについてもMDSが存在しない(ステップS4,S5を繰り返してステップS6に至る)。ここでの信号の授受の過程を図4に示している。路側機3から送信されたFCMCを車載器1が受信し、ACTCを送信するやり取りが同図(a)に示されている。
【0044】
すべてのLIDに対するチェックが終了すると、続いて、車載器1は、受信したFCMCにACTC(ACTivation Channel)が割り付けてあるか否かを確認し(ステップS6)、ACTCの割付がある場合には、そのACTS(ACTivation Slot )でN個(=4個)のLID1〜LID4をACTCに入れて送信し(ステップS7)、ステップS3に戻るようになる。
【0045】
この後、再びFCMCを受信して(図4(b)で示す路側機からのFCMCを受信)その中に送信したLID1〜LID4に対応するMDSが存在するか否かを順次判断していく(ステップS4,S5)。そして、MDSが存在する場合には、そのLIDについてはチャンネルのリンクが確立可能であるとして、設定したNを「1」だけ減じ(ステップS8)、Nが「0」になっていなければ残りのLIDに対するMDSが存在するか否かを確認するようになる。
【0046】
以下、上述の処理を繰り返し実行することにより(ステップS3〜S7)、すべてのLID1〜LID4に対応するMDSが存在するようになれば、4個のLID1〜LID4により4つのチャンネルが確保されたことになり、これによって、変数Nの値も「0」となるので(ステップS9)、このプログラムを終了するようになる。
【0047】
これに対して、路側機3においては、車載器1からACTCを受け取ると、LID1〜LID4のそれぞれについてMDSの割り当てを行ない、割り付けたMDSを用いてBST(Beacon Service Table)の送信を行なう(図4(b)中、FCMC送信後のBSTの送信)と共に、VST(Vehicle Service Talbe )の受信(同図(c)中、車載器1からのVST受信)を行なうことにより、それぞれのLID1〜LID4に対するリンクを確立する。
【0048】
ここで、BSTは、路側機3側におけるサービス内容(例えば、自動料金徴収のアプリケーション以外に、ナビゲーション地図データの配信や、インターネットあるいは音楽情報のダウンロードなどのアプリケーションがある)を示すデータを送信するためのもので、この場合には、車載器1側から同時にACTCを受けたので、すべてのLID1〜4に対して同じ情報を個別に送信することになる。また、VSTは、車載器1側において対応できるアプリケーションの内容を示すデータを送信するためのもので、ここでは、路側機3と同様にすべてのLID1〜4に対して同時に同じ情報を個別に送信することになる。
【0049】
このとき、他の車載器とのリンクが確立されていて、MDSの割り当てが要求されたLIDのすべてに対応させることができない場合には、割り当てできたMDSの分だけBSTの送信を行なう。割り当てできなかったLIDについては破棄されるようになっている。以後、要求されるLIDについてMDSが割り当て可能になれば順次割り当ててBSTの送信を行なうようになる。
【0050】
次に、LIDに対するリンクが確立されると、それがデータチャンネル部に通知され、データチャンネルは、例えばGetプリミティブを用いて車載器1を特定するための属性データであるアトリビュートを読出す。具体的には、路側機3側からGet.req(ゲットリクエスト)を各LID1〜4に対応して送信する(図4(d)参照)。
【0051】
これに対して車載器1から送信されるGet.rsp(ゲットレスポンス)を受信する(同図(e)参照)ことで、受信した信号のアトリビュートの内容により同一車載器1によるマルチチャンネル通信であることを確認する(Getプリミティブによるアトリビュートの読出し以外の方法、例えばActionプリミティブなどでこれを確認しても良い)。これにより、路側機3と車載器1間でデータチャンネルが確立され、LID毎にこれを行なうことにより複数のデータチャンネルが確立される。
【0052】
図6は、車載器1から路側機3に対して4個のデータチャンネルを用いてデータ伝送を行なう場合の例を示したもので、この図では、図3で示したDSRCプロトコルのうちのレイヤ7及び論理リンク制御副層LLCについては省略して示している。この図6において、車載器1は、データチャンネルが確立されると、アプリケーション処理装置2から与えられる転送したいアプリケーションデータを適当なサイズに分割する。このときの分割サイズはLPDU(Link Protocol Data Unit )長により決める必要があるが、LPDUの最大長は512オクテットであるため、最終的にこれを越えないようなサイズに分割する必要がある。
【0053】
分割したデータの先頭には、相手側のアプリケーションがデータを復元するためのシーケンスナンバー・データ長などを含んだ付加情報を付加し、チャンネル分割データを作成する。作成したチャンネル分割データは4個のデータチャンネルにそれぞれ渡される。データチャンネルは、受け取ったチャンネル分割データを、各LID毎のDSRCプロトコルのActionプリミティブを使って路側機3のデータチャンネルへ転送する。
【0054】
Actionプリミティブを使ったやり取りは、ここでは、例えば図5(a)に示すように、路側機3側からAct.req(アクションリクエスト)を送信し、これを受けて車載器1側からAct.rsp(アクションレスポンス)を返して転送する。なお、この場合には、車載器1は、Act.rspをFCMCで3回分のフレームを使用して転送している(同図(b)〜(d)参照)。
【0055】
DSRCプロトコルはLID毎に4個の独立した転送プロトコル部分を持ち、データチャンネルから受け取ったプリミティブを実行する。DSRCプロトコルでは各レイヤ毎にデータ単位であるPDUがやりとりされるが、LLCレイヤからMACレイヤに渡されたLPDUは、MACレイヤ内で65オクテット単位に分割され、MPDU(MAC Protocol Data Unit)となる。分割されたMPDUはL1に渡される。
【0056】
L1は4チャンネル分のプロトコル部分からそれぞれのMPDUを受け取るが、LID1〜LID4のそれぞれに対して割り付けられたMDSでMPDUの送信を行なう。これにより、車載器1は、4個のMDSを同時に使用してデータ転送をすることが可能となる。
【0057】
路側機3では、MDCを受け取るとそれがLIDに対応するMACレイヤに渡されLPDUの組み立てをそれぞれのMACレイヤで行なう。LPDUの組み立てが完了すると、受け取ったデータは順に上位プロトコルに渡されて行き、最終的に路側機側のデータチャンネルがチャンネル分割データを受け取る。
【0058】
チャンネル分割データはDSRCの通信状況により、相手側のアプリケーションが送信した順に届くとは限らないため、アプリケーションはチャンネル分割データを受け取ると先頭に付加したシーケンスナンバーとデータ長によりアプリケーションデータの組み立てを行なっていく。
【0059】
図7は、上述の場合で、例えばLID3のデータチャンネルにおいて通信エラーが発生した場合のリトライ処理を示している。この場合には、複数のMDSのそれぞれを対応するLIDにより転送するようにしているので、1つのLIDで行なう場合と異なり、通信が停止することはない。
【0060】
すなわち、アプリケーションデータを4つのデータチャンネルに分割した後のDSRCプロトコルで規定されている部分で行なう通信では、その規格を変更するような部分はなく、したがって、各LIDに対応して行なう通信方式そのものである。そして、各LIDにおいてリトライが発生すると、そのデータチャンネルにおいてリトライ処理をすることで転送できなかったMDCを再度送信するようになる。
【0061】
例えば、図7の場合では、LID3を用いて行なっているデータチャンネルにおいてL1(レイヤ1)で通信エラーが発生し、路側機3がMDC3を受け取ることができなかった場合に、そのフレームでの受信が失敗したことが返され、次のフレームにおいて同じMDC3が再び転送されるようになる。
【0062】
また、前述したように、各LID毎の転送データの順序は先頭に付加されているシーケンスナンバーに基づいて、LIDに対応するMACレイヤに渡してLPDUの組み立てをそれぞれのMACレイヤで行ない、LPDUの組み立てが完了すると、受け取ったデータは順に上位プロトコルに渡して行って最終的に路側機側のデータチャンネルがチャンネル分割データを受け取ることになる。
【0063】
チャンネル分割データはDSRCの通信状況により、相手側のアプリケーションが送信した順に届くとは限らないため、アプリケーションはチャンネル分割データを受け取ると先頭に付加したシーケンスナンバーとデータ長によりアプリケーションデータの組み立てを行なっていく。これにより、通信エラーによるリトライが発生した場合でも、それに影響を受けることなく最終的にアプリケーションデータを受け取ることができるようになる。
【0064】
このような参考例によれば、このようにアプリケーション処理装置2から受ける転送すべきデータを4つのLID1〜LID4を用いて4つのデータチャンネルで分割して転送することができるので、路側機3における通信フレームを構成するスロット数が複数ある場合に、その空きチャンネルを有効に利用して転送容量を高めた通信を行なうことができるようになる。また、この場合でも、DSRCプロトコルを適用する部分においては従来の方式を変更する必要がないので、信頼性の確保をすることができる。
【0065】
なお、発明者は、上記参考例の効果を検証するために、次のような試算をして従来構成のものとの対比を行なった。すなわち、1フレーム中で同時に使用するMDSの個数に対するデータ転送速度の計算を以下のようにして行なった。ここで、1フレームは、先頭に位置するFCMSに設定するMDSの個数を加えたスロット数で構成されている。また、図8に示すように、1スロットの時間は例えば、781.25μsであり、データ長は65バイト(byte)として計算している。同図(a−1),(a−2)はMDSが2個の場合で本参考例の場合と従来方式の場合を示し、同様に、(b−1),(b−2)はMDSが4個の場合、(c−1),(c−2)はMDSが8個の場合について示している。
【0066】
(1)3スロット/フレームで1MDSのみ使用した場合((a−2)に相当)
65byte/(781.25μs× 3)=27.7 kbyte/s=221.8kbit/s
(2)3スロット/フレームで2MDSを使用した場合((a−1)に相当)
65byte× 2/(781.25μs× 3)=55.4 kbyte/s=443.7kbit/s
(3)5スロット/フレームで4MDSを使用した場合((b−1)に相当)
65byte× 4/(781.25μs× 5)=66.56kbyte/s=532.48kbit/s
(4)9スロット/フレームで8MDSを使用した場合((c−1)に相当)
65byte× 8/(781.25μs× 9)=73.96kbyte/s=591.64kbit/s
【0067】
以上のようにして試算をした結果、転送データの容量が大きく増大していることがわかるが、上述の関係を利用してさらに詳しく試算したところ、1フレームを構成するスロット数と、そのフレーム中でのMDSの使用個数に応じたデータ転送速度(kbit/s)は、図9に示すような結果が得られた。
【0068】
図中、横軸にフレームを構成するスロット数をとり、縦軸にはデータ転送速度(kbit/s)をとっている。この結果から、従来方式のものでは、黒丸で示すように、1フレーム中において1スロット分のMDSだけを用いるので、1フレームを構成するスロット数が増えるにしたがってフレーム当たりの転送データ量が少なくなり、データ転送速度は小さくなる傾向にある。
【0069】
一方、本参考例を採用すると、図中白丸で示すように、1フレームを構成するスロット数が多くなると、その分だけ1フレーム中で使用可能なスロット数が増加することになり、データ転送速度は大きくなる。また、他の車載器によるスロットの使用状況に応じてその範囲内において空きスロットを有効に利用することができるので、利用効率を高めることができるようになる。
【0070】
なお、実際には、上述した試算結果において示すデータ転送速度については、各MDC毎に数バイトのヘッダが付加されるので、MDCのサイズと転送データサイズとの食い違いが発生し、スループットはこれよりも少し低くなる。また、アップリンク転送には路側からのリクエストが必要なためスループットはさらに低下することになるが、実質的には大幅にデータ転送速度の向上を図ることができるものである。
【0071】
(第2の参考例
図10は第2の参考例を示すもので、第1の参考例と異なるところは、複数のアプリケーション処理装置である料金収受装置2a,ナビゲーション装置2b,MD(Mini Disk )プレーヤ2cを車載器1に接続する構成としたところである。
【0072】
車載器1は、3つのアプリケーション処理装置である料金収受装置2a,ナビゲーション装置2b,MDプレーヤ2cに対応して、それぞれから入力されるデータをそれぞれのLIDを割り当ててデータ転送に用いる。内部には通信処理手段として構成される通信処理回路1bが設けられており、これは、各料金収受装置2a,ナビゲーション装置2b,MDプレーヤ2cのそれぞれに対応してデータ転送の処理を行なうように機能が分割されている。
【0073】
通信処理回路1bは、例えば、料金収受装置2aにはLID1を割り当て、ナビゲーション装置2bにはLID2を割り当て、MDプレーヤ2cにはLID3を割り当て、それぞれのLID1〜LID3を用いてアプリケーション毎にデータ転送処理を行なう。また、この場合において、全てのアプリケーション処理装置2a〜2cを使用している場合には、3つのLID1〜LID3を全て使用してデータ転送処理を行なうが、例えば、MDプレーヤ2cを使用していない場合には、LID3は使用しないでデータ転送処理を行なう。
【0074】
このような第2の参考例によれば、アプリケーション処理装置2a〜2cのそれぞれに対応してLID1〜LID3を割り当ててデータ転送処理を行なうようにしているので、すべてのLIDが使用可能となる場合には、必要なデータ転送速度を確保することができ、転送すべきデータの量にかかわらず迅速な通信処理を可能にすることができ、空きスロットを有効に利用しながら、効率の良いデータ転送処理を行なうことができるようになる。
【0075】
なお、上記第2の参考例においては、アプリケーション処理装置毎にLIDを対応付けて割り当てるようにしたが、これに代えて、アプリケーション処理装置の取り扱うデータ量に応じて、1個のLIDを使用するかあるいは複数のLIDを使用するかを異なるように設定しても良い。例えば、そのアプリケーション処理装置で扱うデータが多いMDプレーヤ2cなどについては、2個のLIDを割り当ててデータ転送処理を行なうなどして柔軟な対応付けを行なうことができる。
【0076】
また、アプリケーション処理装置の種類ではなく、転送すべきデータの発生量がそのときに応じて異なる場合があるときには、その発生量に応じて使用するLIDの個数の最大値をフレキシブルに設定するように構成しても良い。なお、設定したLIDの個数に対して、実際に使用可能となるLIDの個数は、必ずしもその個数を満たすか否かは決まらず、路側機3のスロットの空き具合によって決まるものである。
【0077】
複数のアプリケーション処理装置と使用するLIDとを対応付けることなく、全ての転送データについてこれらを一度データ転送時に合成し、一つのアプリケーションを扱うようにひとまとめのデータとしてこれを複数のLID毎に分割してデータ転送処理をするように構成することもできる。
【0078】
(第3の参考例
図11は第3の参考例を示すもので、第1の参考例と異なるところは、車載器1に代えて、従来技術で用いられている構成のDSRC車載器4を複数個(4a〜4d)用いる構成とし、アプリケーション処理装置2に代えてデータ分割手段5aを備えたアプリケーション処理装置5を設ける構成としたところである。
【0079】
この構成においては、アプリケーション処理装置2のデータ処理手段としてのデータ分割手段5aが第1の参考例における車載器1の通信制御手段と同等の機能を有するもので、アプリケーションの実行により発生する転送すべきデータを4つの車載器4a〜4dに分割して与えるようになっている。このとき、分割した転送データのそれぞれの先頭にはシーケンスナンバー・データ長などを含んだ付加情報を付加しており、このようにして各車載器4a〜4dにチャンネル分割データとして与える。これにより、各車載器4a〜4dにおいては、従来と同様のDSRCプロトコルにしたがって路側機3側にデータ転送処理を行なう。路側機3においては、前述同様にして、受け取ったデータを組み立てながら上位プロトコルに渡すことにより、転送された順序にかかわらず元のデータを復元することができる。
【0080】
また、路側機3側から各車載器4a〜4dに対して分割して送信されるデータを受けたときには、アプリケーション処理装置5のデータ処理回路5aにより、受け取ったデータを組み立てて元のデータを復元する。
【0081】
このような第3の参考例によれば、アプリケーション処理装置2を用いることで、第1の参考例と同様の作用効果を得ることができ、このとき車載器4a〜4dについては、特殊な仕様のものを用いる必要がなく、同種の従来構成のものを複数個準備することで対応することができるので、アプリケーション処理装置2を準備するだけで複数の車載器を用いて効率の良いデータ転送処理を行なうことができるようになる。
【0082】
なお、上記参考例においては、アップリンク用MDSとダウンリンク用MDSとを同時に使用して通信を行なう全二重方式の伝送が可能となる。これにより最大2倍の個数だけMDCが同時使用できるようになり、2倍のデータチャンネルを持つことができる。また車載器4a〜4dを全二重通信に対応させることにより、この機能を実現しても良い。
【0083】
さらに、車載器4a〜4dが半二重通信のみ可能である場合には、路側機3は半二重フレームを用い、アップリンク用MDSとダウンリンク用MDSを同時に使用しないようにする必要がある。車載器4a〜4dが全二重通信が可能であるなら、路側機3は全二重通信のフレームを用いて2倍のデータチャンネルを使用しても良い。
【0084】
第1の実施形態)
図12は本発明の第1の実施形態を示すもので、第1の参考例と異なるところは、車載器1が路側機3との間で最初に行うリンク処理では、1個のLIDのみを用いて行う構成とし、路側機3との間のリンクが確立した後に、車載器1側で複数のLIDを生成して路側機3側に送信し、使用可能なMDSを用いて、各MDSにLIDを割り当てて路側機3との間の通信処理を行うようにしたところが異なる部分である。
【0085】
すなわち、車載器1は、あらかじめ使用可能なLIDを生成して内部のアトリビュートに記憶しており、路側機3の通信エリア内に進入すると、図12に示すリンクシーケンスを実施するようになる。このリンクの確立の過程では、車載器1は、従来と同様の方式でリンク処理を行い、FCMCを受信し、その受信したFCMC中に上述したLIDが存在していないことを確認してACTCを送信する。この後、路側機3側からBSTが送信され、これを受信した車載器1がVSTを送信してリンクが確立するようになる。
【0086】
リンクシーケンスが終了すると、次に、ネゴシエーションシーケンスに移行する。ここでは、路側機3は、車載器1に対してFCMCの送信の後に、Get.reqプリミティブを送信する。これに対して、車載器1は前述のアトリビュートを読み出してGet.rspとしてLIDのリストを送信する。ここで、車載器1は、LIDのリストとして、先にリンクを確立させるときに使用したLIDを用いて、その特定ビットである拡張子を変化させることで複数のLIDを生成してこれをリストとして送信する。
【0087】
LIDの拡張子の変更は例えば次のようにして実行する。DSRCプロトコルで規定するLIDは、4オクテット32ビットの値を用いているが、このうち各オクテットの先頭に位置する4つのビットは拡張子もしくは規定されたビットとなっているが、これを変化させることで、もとのLIDを含めて最大16個までのLIDが生成可能である。このうち、通信処理に使用する分のLIDを生成して使用することになる。
【0088】
次に、路側機3は、受信したLIDのリストを参照してそのチャンネル数と路側機3側の現在使用可能なチャンネル数のうちの小さい方を選択し、そのチャンネル数とその数の分のLIDを選択して車載器1に対してSet.reqプリミティブを送信する。車載器1は、これを受信すると、受信したLIDをアトリビュートにセットし、そのチャンネル数のLIDにより路側機3との通信で使用するLIDを判断してこれをSet.rspとして路側機3に送信し、以上にいおりネゴシエーションシーケンスを完了する。
【0089】
次に、データ転送シーケンスに移行し、路側機3は、FCMCの送信に続いてAction.reqプリミティブにより、例えば4つのMDSに対応して使用するLID1〜4を用いてデータ転送の通信処理を実施する。車載器1は、これに応じてAction.rspにより各MDSに対応してLID1〜4によりデータを転送する。以上により、データ転送シーケンスが終了すると、通信処理を終了する。
【0090】
このような第1の実施形態によれば、車載器1により、1個のLIDを用いて路側機3との間でリンクを確立させ、この後、複数のLIDを用いてそのそれぞれを異なるMDSを利用してデータ転送の通信処理を行うので、第1の参考例と同様の効果を得ることができると共に、リンク処理の方式を従来通りの簡単な処理としながら、そのリンクの確立後に複数のLIDを用いて空チャンネルを有効に利用してデータ転送容量を確保することができる。また、上述の場合に、複数のLIDの生成を、特定ビットを変化させることで行うので、簡単且つ迅速にLIDを生成できるようになる。
【0091】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形また拡張できる。
上記実施形態においてはLIDの個数をあらかじめ設定する方式の場合について説明したが、その設定個数は、ハードウェアの能力や設定条件により常に最大にするのではなく、場合に応じて可変的に設定するようにしても良い。また、使用するソフトウェアの内容に応じて可変的に設定するようにしても良い。
【0092】
アプリケーション処理装置は、上記したもの以外に、インターネットや電子メールなどを利用してデータの授受を行なうパソコンや、音楽情報や映像情報などを扱う端末装置あるいは道路情報などの種々の情報を授受する装置など移動体通信装置を介してやり取りするデータを扱う装置であれば何でも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の参考例を示すリンク処理プログラムのフローチャート
【図2】 システムの概略構成を示すブロック図
【図3】 プロトコルモデルを示す概念図
【図4】 リンク確立のシーケンスを示すタイムチャート
【図5】 データ転送のシーケンスを示すタイムチャート
【図6】 アプリケーションデータの転送過程を示す説明図(その1)
【図7】 アプリケーションデータの転送過程を示す説明図(その2)
【図8】 検証に用いたモデルの説明図
【図9】 1フレームの構成スロット数に対するMDSの使用個数に応じたデータ転送速度の試算結果を示す相関図
【図10】 本発明の第2の参考例を示す図2相当図
【図11】 本発明の第3の参考例を示す図2相当図
【図12】 本発明の第1の実施形態を示す通信処理のシーケンス図
【図13】 従来例を示す図7相当図
【符号の説明】
1は車載器(移動体通信装置)、1a,1bは通信制御回路(通信制御手段)、2,5はアプリケーション処理装置、2aは料金収受装置(アプリケーション処理装置)、2bはナビゲーション装置(アプリケーション処理装置)、2cはMDプレーヤ(アプリケーション処理装置)、3は路側機(固定局通信装置)、4a〜4dは車載器、5aはデータ処理回路(データ処理手段)である。

Claims (23)

  1. 固定局通信装置の通信エリアに進入すると自己のリンク用識別コードを送信してその固定局通信装置との通信を行なうためのリンク処理を行ない、リンクが確立すると以後は前記リンク用識別コードを用いて通信処理を行なうように制御する通信制御手段を備えた移動体通信装置において、
    前記通信制御手段は、複数のリンク用識別コードを前記固定局通信装置側に送信して使用可能なリンク用識別コードのリストを受け取り、受け取った複数個のリンク用識別コードを用いてそのそれぞれにより前記固定局通信装置と前記通信処理を行なうことを特徴とする移動体通信装置。
  2. 固定局通信装置の通信エリアに進入すると自己のリンク用識別コードを送信してその固定局通信装置との通信を行なうためのリンク処理を行ない、リンクが確立すると以後は前記リンク用識別コードを用いて通信処理を行なうように制御する通信制御手段を備えた移動体通信装置において、
    前記通信制御手段は、前記固定通信装置との間でリンクを確立した後に複数のリンク用識別コードを前記固定局通信装置側に送信して使用可能なリンク用識別コードのリストを受け取り、受け取った複数個のリンク用識別コードを用いてそのそれぞれにより前記固定局通信装置と前記通信処理を行なうことを特徴とする移動体通信装置。
  3. 請求項1または2に記載の移動体通信装置において、
    前記通信制御手段は、1つもしくは複数のアプリケーション処理装置から送信すべきデータを受ける場合に、そのデータを前記複数のリンク用識別コードを用いて行なう通信処理単位に分割して送信するように構成されていることを特徴とする移動体通信装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の移動体通信装置において、
    前記通信制御手段は、前記アプリケーション処理装置から送信すべきデータの容量に応じて前記複数のリンク用識別コードの個数を設定することを特徴とする移動体通信装置。
  5. 請求項1または2に記載の移動体通信装置において、
    前記通信制御手段は、複数のアプリケーション処理装置から送信すべきデータを受ける場合に、前記複数のリンク用識別コードを前記アプリケーション処理装置の単位で割り当てて前記送信すべきデータを送信するように構成されていることを特徴とする移動体通信装置。
  6. 請求項5に記載の移動体通信装置において、
    前記通信制御手段は、前記アプリケーション処理装置から送信すべきデータの容量が所定以上の場合には、複数のリンク用識別コードをそのアプリケーション処理装置に割り当てて前記送信すべきデータを送信するように構成されていることを特徴とする移動体通信装置。
  7. 請求項1ないし6のいずれかに記載の移動体通信装置において、
    前記通信制御手段は、前記複数のリンク用識別コードの個数を最大使用可能個数として設定し、その個数の範囲内で前記固定局通信装置との間で使用可能なリンク用識別コードを用いてデータの送信を行なうように構成されていることを特徴とする移動体通信装置。
  8. 請求項7に記載の移動体通信装置において、
    前記通信制御手段は、設定している前記複数のリンク用識別コードに対して前記固定局通信装置との間で使用可能なリンク用識別コードの個数が少ない場合には、使用していないリンク用識別コードが使用可能となるのを判断しながら前記通信処理を実行するように構成されていることを特徴とする移動体通信装置。
  9. 請求項1ないし8のいずれかに記載の移動体通信装置において、
    前記通信制御手段は、前記固定局通信装置との間でDSRC(Dedicated Short Range Communication ;狭域通信)方式により通信を行なう車載器に搭載されるものであることを特徴とする移動体通信装置。
  10. 請求項9に記載の移動体通信装置において、
    前記通信制御手段は、前記複数のリンク用識別コードを、FCMS(Frame Control Message Slot;スロット割当情報)に続く複数のMDS(Message Data Slot )のそれぞれに対して異なるものを使用して前記通信処理を行うことを特徴とする移動体通信装置。
  11. 請求項9または10に記載の移動体通信装置において、
    前記通信制御手段は、前記固定局通信装置が送信するFCMS(Frame Control Message Slot;スロット割当情報)を受信して空きスロットの情報を得ると共に、その空きスロット情報に基づいて空きスロットの個数に対応した前記リンク用識別コードを送信して前記リンク処理を行なうように構成されていることを特徴とする移動体通信装置。
  12. 請求項11に記載の移動体通信装置において、
    前記通信制御手段は、前記固定局通信装置が送信するFCMS(Frame Control Message Slot;スロット割当情報)を受信してその中に前記送信したリンク用識別コードに対応したMDS(Message Data Slot)が存在していないときには、そのリンク用識別コードについて再び送信して次に受信するFCMCにそのリンク用識別コードに対応したMDSが含まれるまで繰返し実行するように構成されていることを特徴とする移動体通信装置。
  13. 請求項1ないし12のいずれかに記載の移動体通信装置において、
    前記通信制御手段は、複数のリンク用識別コードを用いてリンク処理を確立した状態では、前記固定局通信装置からリンク用識別コード毎に受信するデータを指定された順序で合成することによりデータの組み立てを行なうように構成されていることを特徴とする移動体通信装置。
  14. 請求項1ないし13のいずれかに記載の移動体通信装置において、
    前記通信制御手段は、1つのリンク用識別コード中の特定ビットを変化させることにより複数のリンク用識別コードを生成することを特徴とする移動体通信装置。
  15. 通信エリアに進入した移動体通信装置からリンク用識別コードを受信するとその移動体通信装置との通信を行なうためのリンク処理を行ない、リンクが確立すると以後は前記リンク用識別コードを用いて通信処理を行なうように制御する通信制御手段を備えた固定局通信装置において、
    前記通信制御手段は、前記移動体通信装置が送信する複数のリンク用識別コードについて使用可能なリンク用識別コードのリストを送信し、その通信可能な複数のリンク用識別コードのリストにある複数のリンク用識別コードを用いて前記通信処理を行なうように構成されていることを特徴とする固定局通信装置。
  16. 通信エリアに進入した移動体通信装置からリンク用識別コードを受信するとその移動体通信装置との通信を行なうためのリンク処理を行ない、リンクが確立すると以後は前記リンク用識別コードを用いて通信処理を行なうように制御する通信制御手段を備えた固定局通信装置において、
    前記通信制御手段は、前記移動体通信装置が前記リンク処理を確立させた場合には、その移動体通信装置が送信する複数のリンク用識別コードについて使用可能なリンク用識別コードのリストを送信し、その通信可能な複数のリンク用識別コードのリストにある複数のリンク用識別コードを用いてそのそれぞれにより前記通信処理を行なうように構成されていることを特徴とする固定局通信装置。
  17. 請求項15または16に記載の固定局通信装置において、
    前記通信制御手段は、前記移動体通信装置が複数のリンク用識別コードを用いて通信を行なうべくリンク処理を確立させた場合には、各リンク用識別コードを通じて送信されるデータを指定された順序で合成することによりデータの組み立てを行なうように構成されていることを特徴とする固定局通信装置。
  18. 請求項15ないし17に記載の固定局通信装置において、
    前記通信制御手段は、前記移動体通信装置が複数のリンク用識別コードを用いて通信を行なうべくリンク処理を確立させた場合には、その移動体通信装置に送信すべきデータを前記複数のリンク用識別コードを用いて行なう通信処理単位に分割して送信するように構成されていることを特徴とする固定局通信装置。
  19. 固定局通信装置の通信エリアに進入すると自己のリンク用識別コードを送信してその固定局通信装置との通信を行なうためのリンク処理を行ない、リンクが確立すると以後は前記リンク用識別コードを用いて通信処理を行なうように制御する移動体通信装置を通じてアプリケーションに関するデータの授受を行なうアプリケーション処理装置において、
    前記移動体通信装置が複数備えられそのそれぞれにおいて異なるリンク用識別コードを用いて通信処理が可能な場合に、それら複数の移動体通信装置を用いて前記アプリケーションに関するデータの授受を行なうデータ処理手段を設けたことを特徴とするアプリケーション処理装置。
  20. 請求項19に記載のアプリケーション処理装置において、
    前記データ処理手段は、前記複数の移動体通信装置を通じて異なるリンク用識別コードを用いて通信処理が可能な場合に、前記アプリケーションに関するデータを使用可能なリンク用識別コード毎に分割して前記移動体通信装置により通信処理を行なわせるように構成されていることを特徴とするアプリケーション処理装置。
  21. 請求項19または20に記載のアプリケーション処理装置において、
    前記データ処理手段は、前記複数の移動体通信装置を通じて異なるリンク用識別コードを用いて通信処理が可能な場合に、各移動体通信装置のリンク用識別コードを通じて送信されるアプリケーションに関するデータを指定された順序で合成することによりデータの組み立てを行なうように構成されていることを特徴とするアプリケーション処理装置。
  22. 固定局通信装置の通信エリアに進入した移動通信装置が自己のリンク用識別コードを送信してその固定局通信装置との通信を行なうためのリンク処理を行ない、リンクが確立すると以後は前記リンク用識別コードを用いて通信処理を行なうように制御する移動体通信装置の通信方法において、
    前記通信制御手段は、
    前記通信制御手段は、複数のリンク用識別コードを前記固定局通信装置側に送信して使用可能なリンク用識別コードのリストを受け取り、受け取った複数個のリンク用識別コードを用いてそのそれぞれにより前記固定局通信装置と前記通信処理を行なうことを特徴とする移動体通信装置の通信方法。
  23. 固定局通信装置の通信エリアに進入した移動通信装置が自己のリンク用識別コードを送信してその固定局通信装置との通信を行なうためのリンク処理を行ない、リンクが確立すると以後は前記リンク用識別コードを用いて通信処理を行なうように制御する移動体通信装置の通信方法において、
    前記通信制御手段は、前記固定通信装置との間でリンクを確立した後に複数のリンク用識別コードを前記固定局通信装置側に送信して使用可能なリンク用識別コードのリストを受け取り、受け取った複数個のリンク用識別コードを用いてそのそれぞれにより前記固定局通信装置と前記通信処理を行なうことを特徴とする移動体通信装置の通信方法。
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