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JP4821174B2 - 変速機のクラッチ構造 - Google Patents

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JP4821174B2 JP2005153992A JP2005153992A JP4821174B2 JP 4821174 B2 JP4821174 B2 JP 4821174B2 JP 2005153992 A JP2005153992 A JP 2005153992A JP 2005153992 A JP2005153992 A JP 2005153992A JP 4821174 B2 JP4821174 B2 JP 4821174B2
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Description

本発明は、変速機に用いられるクラッチ構造に関し、自動車に搭載される変速機の技術分野に属する。
一般に、自動車に搭載される自動変速機は、変速歯車機構の動力伝達経路を多板式のクラッチ等の複数の摩擦締結装置の選択的作動により切り換えて、所定の変速段に変速するように構成されたものであるが、前記クラッチは、例えば特許文献1、2に開示されているように、次のように構成されている。
即ち、図13に示すように、クラッチ100は、入力側または出力側の動力伝達要素に固着されたドラム101と、前記動力伝達要素のうち他方の動力伝達要素に連結されたハブ102と、前記ドラム101及びハブ102に1枚ずつ交互にスプライン嵌合された複数枚のクラッチ板103…103とを有する。ドラム101は、円板状の縦壁101aと、その外周縁及び内周縁から軸方向に延びる円筒状の外周壁101b及び内周壁101cとを有する。
そして、ドラム101の外周壁101bと内周壁101cとの間には、軸方向に摺動可能な環状のピストン104が嵌合されており、該ドラム101とピストン104とによって油圧室105が形成されている。また、内周壁101cには、ピストン104を非締結側に付勢するリターンスプリング106の一端を支持するバネ受け部材107が設けられている。さらに、図示の例では、バネ受け部材107とピストン104とで、前記油圧室105における遠心油圧を相殺するための遠心バランス室107aを形成するようになっている。
一方、前記油圧室105を密封するために、ドラム101の外周壁101bの内周面とピストン104の外周縁との間をシール部材108によりシールするシール部108aと、ドラム101の内周壁101cの外周面とピストン104の内周縁との間をシール部材109によりシールするシール部109aとが設けられている。また、前記遠心バランス室107aを密封するために、ピストン104の内周縁とバネ受け部材107の外周縁との間をシール部材110によりシールするシール部110aが設けられている。
そして、前記油圧室105に作動油圧が供給されると、ピストン104がリターンスプリング106に抗して移動して前記ドラム101側のプレート103…103とハブ102側のプレート103…103とが互いに圧着され、ドラム101とハブ102との間で動力の伝達が行われる。
特開平2004−251310号公報 特開平2004−211801号公報
ところで、近年の自動変速機では、例えばDレンジのアイドル停車時に、クラッチがニュートラル状態に制御され、エンジン負荷の低減により燃費改善を図る所謂ニュートラルアイドルの状態に制御されることがある。さらに、このようにクラッチを完全にニュートラル状態にしてしまうと、発進時に締結ショックが生じるという問題があるので、これを回避するために、クラッチを微係合状態にするスリップ制御を行うことにより燃費改善と発進性とを両立させることがあり、このようなスリップ制御では、油圧室に供給する油圧の調整により、クラッチ締結力の微妙な制御が行われる。
しかしながら、このようなスリップ制御では、ピストンの摺動部をシールするシール部の摺動抵抗により、クラッチの微妙な締結力の制御の安定性と応答性とが低下し、精度の良いスリップ制御が阻害されるという問題がある。これに対しては、締結力の微妙な制御を行うときに、摺動抵抗の影響を小さくするために油圧室の供給する油圧を増大させることが考えられるが、クラッチ締結の際のショックの発生が問題になる。
そこで、本発明は、変速機のクラッチ構造において、微係合状態におけるクラッチ締結力の安定性及び応答性を向上させることを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
まず、本願の請求項1に記載の発明は、回転軸上に配置されるドラムと、該ドラムの外周壁と内周壁との間に軸方向に摺動可能に収容されたピストンと、該ピストン背部の油圧室への作動圧の供給制御により締結力が制御される複数のクラッチ板とを有し、前記ピストンの内外周部に摺動部が設けられた変速機のクラッチ構造であって、前記油圧室は、前記ピストン背部の径方向の外周側に設けられた外周側油圧室と内周側に設けられた内周側油圧室とに画成され、外周側油圧室は、ドラム縦壁の外周側内面部に形成された環状凹部と、該環状凹部に嵌合するようにピストン背面に突設された環状凸部とにより形成されていると共に、前記摺動部にシール部が設けられ、該シール部の1つは、前記環状凸部の内周部と前記環状凹部の内周面との間に設けられ、環状凸部の内周面に装着されたシール部材と、ピストンの摺動範囲においてクラッチ締結位置側が非締結位置側より縮径するように形成された環状凹部の内周面とで構成されることにより、摺接力がピストンの摺動範囲においてクラッチ非締結位置側より締結位置側が小さくなるように設けられていることを特徴とする。
なお、前記クラッチ板は、変速用のクラッチの他、トルクコンバータ等の流体伝動装置の入力側と出力側とを連結するロックアップクラッチであって多板式に構成されたものが対象となる。
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の変速機のクラッチ構造において、前記ドラムの縦壁には、前記外周側油圧室へ油圧を供給する油圧供給通路が設けられていると共に、該ドラムは、該油圧供給通路が設けられている部分が他の部分と異なる部材で構成されていることを特徴とする。
そして、請求項3に記載の発明は、前記請求項1に記載の変速機のクラッチ構造において、ピストンのクラッチ板側には、遠心力による油圧室の油圧を相殺する遠心バランス室をピストンと共に形成するプレート部材が配設され、前記ピストンには、内周側油圧室の外周部と遠心バランス室とを連通する連通孔が設けられていることを特徴とする。
まず、請求項1に記載の発明によれば、スリップ制御の際に、油圧室に油圧の供給制御が行われ、この油圧によりピストンがクラッチの非締結位置側から締結位置側に移動してクラッチ板が圧着されて微係合状態になる。このとき、少なくとも1つのシール部は、摺接力がピストンの摺動範囲においてクラッチ非締結位置側より締結位置側が小さくなるように設けられているので、微係合状態におけるピストンの摺動抵抗が軽減され、締結力の安定性と応答性が向上する。この結果、適正なスリップ量によりニュートラルアイドル等のスリップ制御時のドライバビリティが向上することになる。また、摺動抵抗の軽減により油圧室に供給する油圧を低減させることができるので、燃費向上が実現されると共に、締結ショックが防止される。また、ピストンが非締結位置側にあるときは、比較的大きな摺接力が確保されているので、オイル漏れが防止され、オイル漏れのエネルギロスによる燃費悪化が抑制される。
具体的には、前記油圧室が、前記ピストン背部の径方向の外周側に設けられた外周側油圧室と内周側に設けられた内周側油圧室とに画成され、外周側油圧室が、ドラム縦壁の外周側内面部に形成された環状凹部と、該環状凹部に嵌合するようにピストン背面に突設された環状凸部とにより形成されている構成において、前記1つのシール部は、前記環状凸部の内周部と環状凹部の内周面との間に設けられ、このシール部において、微係合状態では環状凸部の内周部に装着されたシール部材が環状凹部の内周面に対して摺動することになる。このとき、環状凹部の内周面がピストンの摺動範囲においてクラッチ締結位置側が非締結位置側より縮径されているので、締結位置側における摺接力が小さくなり、前記作用効果が得られる。
一方、このようなピストンを制御するために2つの油圧室が設けられたクラッチ構造においては、ピストンの受圧面積が可変であり、スリップ制御時には、外周側油圧室に油圧を供給することにより制御され、完全締結時には両方の油圧室に油圧が供給されるように構成されることがある。このような場合、前述のように締結位置でのシール力が低減されているので、微係合状態における外周側油圧室から内周側油圧室へのオイルの漏れ量が増大し、これによって微係合状態から締結状態に移行する際のピストンのストロークによる内周側油圧室の必要油量の増大が補われ、クラッチ締結時の内周側油圧室への充填遅れが防止される。
ところで、ドラムには内周側油圧室に作動油を供給する油圧供給通路が設けられることがある。この場合、ドラムは油路を加工するために切削性の良い材料が要求される。請求項2に記載の発明によれば、油圧供給通路が設けられている部分が他の部分と異なる部材で構成されているので、この部材を切削性の良い材料で構成し、加工の容易化を図ることができる。さらに、このように別部材で構成することによって、加工の自由度が向上し、該部材ひいてはドラムのコンパクト化を図ることができる。
一方、非締結要求時の遠心圧による誤締結を防止するために、遠心バランス室を設け、油圧を相殺させることが一般的に行われているが、微係合などを含む締結要求時には、遠心バランス室の充填状態の違いによる遠心油圧の違いは、締結力の違いとなり、締結のタイミングやクラッチ伝達力の違いによる駆動力への影響などが発生する。特に、始動初期の冷間時で、さらに低回転時などでは、潤滑部への作動油の供給がままならず潤滑用の油路から分配される遠心バランス室の遠心油圧が発生しない場合があり、その場合は締結力過多になる。
また、前記請求項1に示したように、油圧室が分割されている場合は、ストローク量分の油路充填状況が異なる場合があり、そのときは遠心バランス室の遠心油圧からのピストンを押し戻す力に対抗できる内周側油圧室からの押付け力が発生せず締結力不足になる。
これに対して、請求項3に記載の発明によれば、外周側油圧室への油圧のみを使う微係合状態においてのクラッチ締結力の安定を図るため、径方向で内周側油圧室までの範囲の遠心バランス室と内周側油圧室のと遠心圧が常に同じとなるように内周側油圧室の外周側に連通孔が設けられている。連通孔は、充填状態を互いに補い合いながら互いの充填状態を促進し、必然的に連通孔の両側の油圧を揃えることで遠心圧によるピストンへの力が完全に相殺されることになる。
この結果、遠心油圧の影響が低減されるので締結力制御の精度が高められ、適正なスリップ量や無駄の少ない油圧での締結が実現され、ニュートラルアイドルやスリップ制御時のドライバビリティや燃費低減作用の実現が可能となり、クラッチの耐久信頼性の向上などにも寄与する。
また、遠心バランス室側に供給された潤滑油が連通孔により内周側油圧室に供給されるので、該内周側油圧室の油圧充填状態(プリチャージ化)がよくなるため、微係合状態から締結状態に切り換えた際の応答性が向上することにもなって、ニュートラルアイドル制御から発進する際の応答性や変速時の応答性なども高まり、応答遅れによる出足感不足や変速ショックが低減される。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る車両の自動変速機10は、主たる構成要素として、トルクコンバータ20と、該コンバータ20の出力により駆動される変速歯車機構として前後(以下、エンジン側を前方、反エンジン側を後方とする)に隣接して配置された第1、第2遊星歯車機構30,40と、これらの遊星歯車機構30,40でなる動力伝達経路を切り換えるクラッチやブレーキ等の複数の摩擦締結装置51〜55及びワンウェイクラッチ56とを有し、これらによりDレンジにおける1〜4速、Sレンジにおける1〜3速及びLレンジにおける1〜2速と、Rレンジにおける後退速とが得られるようになっている。
前記トルクコンバータ20は、エンジン出力軸1に連結されたケース21内に固設されたポンプ22と、該ポンプ22に対向状に配置されて該ポンプ22により作動油を介して駆動されるタービン23と、該ポンプ22とタービン23との間に介設され、かつ、変速機ケース11にワンウェイクラッチ24を介して支持されてトルク増大作用を行うステータ25と、前記ケース21とタービン23との間に設けられ、該ケース21を介してエンジン出力軸1とタービン23とを直結するロックアップクラッチ26とで構成されている。そして、前記タービン23の回転がタービンシャフト27を介して遊星歯車機構30,40側に出力されるようになっている。
ここで、このトルクコンバータ20の後方には、該トルクコンバータ20のケース21を介してエンジン出力軸1により駆動されるオイルポンプ12が配置されている。
一方、前記第1、第2遊星歯車機構30,40は、いずれも、サンギヤ31,41と、このサンギヤ31,41に噛み合った複数のピニオン32…32,42…42と、これらのピニオン32…32,42…42を支持するピニオンキャリヤ33,43と、ピニオン32…32,42…42に噛み合ったリングギヤ34,44とで構成されている。
そして、前記タービンシャフト27と第1遊星歯車機構30のサンギヤ31との間にフォワードクラッチ51が、同じくタービンシャフト27と第2遊星歯車機構40のサンギヤ41との間にリバースクラッチ52が、また、タービンシャフト27と第2遊星歯車機構40のピニオンキャリヤ43との間に3−4クラッチ53がそれぞれ介設されていると共に、第2遊星歯車機構40のサンギヤ41を固定する2−4ブレーキ54が備えられている。
さらに、第1遊星歯車機構30のリングギヤ34と第2遊星歯車機構40のピニオンキャリヤ43とが連結されて、これらと変速機ケース11との間にローリバースブレーキ55とワンウエイクラッチ56とが並列に配置されていると共に、第1遊星歯車機構30のピニオンキャリヤ33と第2遊星歯車機構40のリングギヤ44とが連結されて、これらに出力ギヤ13が接続されている。
そして、この出力ギヤ13が、中間伝動機構60を構成するアイドルシャフト61上の第1中間ギヤ62に噛み合わされていると共に、該アイドルシャフト61上の第2中間ギヤ63と差動装置70の入力ギヤ71とが噛み合わされて、前記出力ギヤ13の回転が差動装置70のデフケース72に入力され、該差動装置70を介して左右の車軸73,74が駆動されるようになっている。
ここで、前記各クラッチやブレーキ等の摩擦締結装置51〜55及びワンウェイクラッチ56の作動状態と変速段との関係をまとめると、次の表1に示すようになる。
Figure 0004821174
ところで、前記摩擦締結装置51〜55のうち、少なくとも前進段達成に用いられるクラッチ、すなわちフォワードクラッチ51と3−4クラッチ53には多板式のクラッチが用いられており、以下、その構造について説明する。なお、フォワードクラッチ51と3−4クラッチ53とは類似した構成とされているので、ここではフォワードクラッチ51の構造についてのみ説明し、3−4クラッチ53の構造についての説明は省略する。
図2に示すように、このフォワードクラッチ51は、変速機ケース11に回動自在に支持されたタービンシャフト27に固着されたクラッチドラム511と、第1遊星歯車機構30のサンギア31(図1参照)の前方への延長部31aにスプライン結合されたクラッチハブ512と、該ハブ512にスプライン結合された複数枚のドライブプレート513a…513aと、該ドライブプレート513a…513aに対して交互に配置されると共に前記ドラム511にスプライン結合された複数枚のドリブンプレート513b…513bと、前記ドラム511内に軸方向に摺動可能に収納され、該ドラム511との間に外周側油圧室514a,内周側油圧室514bを形成するピストン515と、タービンシャフト27に固着され、前記ピストン515と共に遠心バランス室516を形成するプレート部材517とを有している。
ドラム511は、環状の縦壁511aと、円筒状の外周壁511b及び内周壁511cとを有し、軸心で分割される上下半分の部分の断面が略コ字状とされている。前記縦壁511aの外周側かつ内面側には、環状に凹んで形成された環状凹部511dが設けられている。
前記ドラム511は、主に前記外周壁511bを構成する外周部材511xと、該外周部材511xの内周側端部の溶接部511sで溶接されて主に縦壁511a及び内周壁511cを構成する中間部材511yと、該中間部材511yの内周側端部の溶接部511tで溶接されてタービンシャフト27に一体形成された内周部材511zとで構成されている。また、前記外周部材511xの材質はJIS記号名称でSPC1、中間部材511yの材質は同じくS15C、内周部材511zの材質は同じくSCM440Hで構成されている。そして、前記中間部材511yには、前記外周側油圧室514aに油圧を供給するための複数の連通路511y′…511y′(図2には1つの連通路のみを図示)が円周方向で等配分に設けられ、これらの連通路511y′…511y′は、ドラム内周壁511cの内周面から環状凹部511dに至るようにタービンシャフト27に対して垂直方向に穿設されている。また、中間部材511yには、内周側油圧室511bに油圧を供給するための複数の連通路511y″…511y″(図2には1つの連通路のみを図示)が同じくそれぞれ円周方向で等配分に設けられている。
また、ピストン515の外周側には、前方に突出する環状凸部515aが設けられており、該環状凸部515aは前記ドラム511の環状凹部511dに嵌合されている。そして、ドラム511の環状凹部511dとピストン515の環状凸部515aとで形成された空間が外周側油圧室514aとされ、その内周側に形成された空間が内周側油圧室514bとされている。
一方、プレート部材517はタービンシャフト27に固定された略板盤状の部材である。前記ピストン515には、環状凸部515aの外周部から後方側に延長部515bが設けられ、前記プレート部材517の外周縁が該延長部515bの内周面に摺接するように構成されている。そして、プレート部材517によりピストン515の後方側に形成された空間が遠心バランス室516とされている。該遠心バランス室516には、タービンシャフト27の内部に穿設された油路27aから連通路27bを介して作動油が供給される。また、ピストン515には、遠心バランス室516と内周側油圧室514bの外周部とを連通する連通孔515cが設けられている。
一方、前記ピストン515が摺動する際に他の部材と対接する4つの摺動部には第1〜第4シール部518a〜518dが設けられている。前記ピストン515の前部には、環状の第1シール部材519aが装着され、該シール部材519aの各摺動部には前記第1〜第3シール部518a〜518cが設けられている。また、前記プレート部材517の外周縁には、環状の第2シール部材519bが装着され、該シール部材519bとピストン515との摺動部には前記第4シール部518dが設けられている。なお、前記第1、2シール部材519a,519bは、リップ状の突出部を有するゴム製のリップシールである。
まず、図3に拡大して示すように、第1シール部518aは、ピストン515の内周部とドラム内周壁511cとの間に設けられ、前記第1シール部材519aの内周部に前方側に突出して設けられた第1リップ部519aと、ドラム内周壁511cの外周面511c′とで構成されている。ドラム内周壁511cの外周面511c′は、ピストン515の摺動範囲Rsにおいて、後方側が前方側に比べて縮径するように形成されている。
また、図4に拡大して示すように、第2シール部518bは、ピストン515の外周部とドラム外周壁511bとの間に設けられ、前記第1シール部材519aの環状凸部515aの外周側から前方側に設けられた第2リップ部519aと、ドラム外周壁511bの内周面511b′とで構成されている。ドラム外周壁511bの内周面511b′は、ピストン515の摺動範囲Rsにおいて、後方側が前方側に比べて拡径するように形成されている。
さらに、図5に拡大して示すように、第3シール部518cは、ピストン515の環状凸部515aの内周面と環状凹部511dの内周面511d′との間に設けられ、前記第1シール部材519aの環状凸部515aの内周側から前方側に設けられた第3リップ部519aと、環状凹部511dの内周面511d′とで構成されている。環状凹部511dの内周面511d′は、後方側が前方側に比べて縮径するように形成されている。
また、図6に拡大して示すように、第4シール部518dは、ピストン515の延長部515bの内周面515b′とプレート部材517の外周部との間に設けられ、前記第2シール部材519bの前方側に設けられた第4リップ部519bと、前記延長部515bの内周面515b′とで構成されている。延長部515bの内周面515b′は、ピストン515の摺動範囲Rsにおいて、後方側が前方側に比べて縮径するように形成されている。
ところで、図2に示すように、外周側油圧室514aには、オイルポンプハウジング12′に設けられた油路12a、変速機ケース11に設けられた油路11a、及びドラム511の中間部材511yに設けられて環状凹部511dに至る連通路511y′…511y′を介して油圧が供給される。
また、内周側油圧室514bには、オイルポンプハウジング12′に設けられた油路12b(図示せず)、変速機ケース11に設けられた油路11b、及びドラム511の中間部材511yに設けられて内周側油圧室514bに至る連通路511y″を介して油圧が供給される。
そして、外周側油圧室514a及び内周側油圧室514bに油圧が供給されたときに、ピストン515がリターンスプリング517aに抗して後方に移動して前記ドライブプレート513a…513a及びドリブンプレート513b…513bを圧着させ、前記ドラム511とハブ512とを結合することになる。
また、この自動変速機10の油圧制御回路80には、上記外周側油圧室514aに供給する油圧を制御するリニアソレノイドバルブ81と、内周側油圧室514bに供給する油圧を制御するコントロールバルブ82とが備えられている。
このリニアソレノイドバルブ81は、通電時にソレノイドコイルに発生する磁力によりスプール81aが軸方向(図面右方向)に移動することにより出力圧P1を変化させる公知のものであり、図7に示すように制御電流がIa以上の範囲では制御電流の増加にほぼ比例して出力圧P1が増加する特性を有している。また、制御電流がIc以上の範囲は、油圧源Pから供給されたライン圧Plineがそのまま出力されている状態であり、制御電流がIa以下の範囲は、油圧が全く出力されていない状態である。
この油圧回路80においては、油圧源Pに接続されてライン圧が供給される第1入力ライン83がリニアソレノイドバルブ81の入力ポートに、前記油路12aを介して外周側油圧室514aに通じる第1出力ライン84が同バルブ81の出力ポートに接続されている。また、上記第1出力ライン84から分岐した制御圧ライン85がコントロールバルブ82の制御ポートに、上記ライン圧が供給される第2入力ライン86が同バルブ82の入力ポートに、油路12bを介して内周側油圧室514bに通じる第2出力ライン87が同バルブ82の出力ポートに接続されている。
一方、制御電流がIb以下では、油圧P1が小さいのでコントロールバルブ82のスプール82aの移動量も少なく、第2入力ライン86と第2出力ライン87とは連通しない。この結果、内周側油圧室514bに供給される油圧P2はゼロとなる。
そして、制御電流がIbより大きくなると、油圧P1が大きくなって、コントロールバルブ82のスプ−ル82aがさらに右側に移動し、この結果、第2入力ライン86と第2出力ライン87とが連通して、内周側油圧室514bに油圧P2が供給されることとなる。なお、制御電流がIc以上の範囲は、油圧源Pから供給されたライン圧Plineがそのまま出力されることになる。
ところで、クラッチの非締結時には、リニアソレノイドバルブ81の制御電流がIaより小さくなるように制御され、外周側、内周側油圧室514a,514bの両方から油圧がドレンされた状態になる。この状態では、ピストンに油圧は作用させないが、油圧室514a,514bには作動油が充填された状態(プリチャージの状態)になっている。
また、スリップ制御による微係合時には、リニアソレノイドバルブ81の制御電流がIb〜Ia間の値に制御され、外周側油圧室514aには油圧P1が供給され、内周側油圧室514bの油圧はドレンされてプリチャージ状態になる。
そして、クラッチ締結時には、リニアソレノイドバルブ81の制御電流がIcより大きくなるように制御され、外周側油圧室514aには油圧P1が供給され、内周側油圧室514bには油圧P2が供給される。
一方、クラッチの締結状態が変化したときに、前述の第1〜第4シール部518a〜518dのシール力が以下のように変化することになる。
即ち、第1シール部518aにおいて、図8(a)に示すように、非締結状態では、第1シール部材519aの第1リップ部519aがドラム内周壁511cの外周面511c′に押付けられてシール力F1が確保される。そして、この状態から微係合状態に切り換えられた際には、ピストン515に作用する油圧が増大され、ピストン515が前方側に移動することになる。
このとき、図8(b)に示すように、ピストン515の移動方向に沿ってドラム内周壁511cの外周面511c′が縮径され、つまり締め代が減少するように形成されているので、第1リップ部519aによる押付け力が減少し、シール力が、F1より小さいFA〜FBの範囲の値に減少することになる。さらに、クラッチ締結状態では、図8(c)に示すように、第1リップ部519aに油圧P2が作用し、この油圧P2により第1リップ部519aによるドラム内周壁511cの外周面511c′への押付け力が増大し、シール力がFCに増大することになる。
また、第2シール部において、非締結状態では、第1シール部材519aの第2リップ部519aのドラム外周壁511bの内周面511bへの押付けによるシール力F2が確保される。
そして、ピストン515の移動方向に沿ってドラム外周壁511bの内周面511′が拡径され、つまり締め代が減少するように形成されているので、非締結状態から微係合状態に切り換えられた際に、第2リップ部519aによる押付け力が減少し、シール力が、F2より小さいFA〜FBの範囲の値に減少することになる。さらに、クラッチ締結状態では、第2リップ部519aに油圧P1が作用し、第2リップ部519aによるドラム外周壁511bの内周面511b′への押付け力が増大し、シール力がFCに増大することになる。なお、微係合状態においても油圧P1は作用するが、このときの油圧P1は小さい値であるから、シール力を増大させる作用は微小である。
さらに、第3シール部において、非締結状態では、第1シール部材519aの第3リップ部519aの環状凹部511dの内周面511d′への押付けによるシール力F3が確保される。
そして、ピストン515の移動方向に沿って環状凹部511dの内周面511d′が縮径され、つまり締め代が減少するように形成されているので、非締結状態から微係合状態に切り換えられた際に、第3リップ部による押付け力が減少し、シール力が、F3より小さいFA〜FBの範囲の値に減少することになる。さらに、クラッチ締結状態では、第3リップ部519aに油圧P1が作用し、第3リップ部519aによる環状凹部511dの内周面511d′への押付け力が増大し、シール力がFCに増大することになる。なお、微係合状態においても油圧P1は作用するが、このときの油圧P1は小さい値であるから、シール力を増大させる作用は微小である。
また、第4シール部518dにおいて、非締結状態では、第2シール部材519bの第4リップ部519bがピストン515の延長部515bの内周面515b′に押付けられることによりシール力F4が確保される。
そして、ピストン515の移動方向に沿って延長部515bの内周面515b′が拡径され、つまり締め代が減少するように形成されているので、非締結状態から微係合状態に切り換えられた際に、第4リップ部519bによる押付け力が減少し、シール力が、F4よりも小さいFA〜FBの範囲の値に減少することになる。さらに、ピストン515の後方へのストロークに伴って油圧バランス室516の油圧が高まり、第4リップ部519aによる延長部515bの内周面515b′への押付け力が増大し、シール力がFCに増大することになる。
このような第1〜第4シール部518a〜518dにおける特性をグラフで示すと図9(本案の設定)のような特性になる。これによると、非締結位置においては比較的高いシール力F1〜F4が確保され、この状態から油圧をPAに増加させるとシール力はFAに減少し、微係合状態では油圧がPA〜PBの範囲で制御され、このときシール力はF1〜F4よりも小さいFA〜FBの範囲の値となる。そして、油圧がPA以上のときは、油圧の増加に比例してシール力が増加し、油圧P1、P2が両方ライン圧のときにピストン515に作用する油圧PCが供給されたときに、最大のシール力FCの状態でクラッチが締結される。
なお、前記タービンシャフト27は請求項1に記載の変速機のクラッチ構造における回転軸に相当し、前記ドライブプレート513a及びドリブンプレート513bは同じくクラッチ板に相当し、図9に示すシール力は同じく摺接力に相当する。また、前記第1シール部材519aは請求項1に記載の変速機のクラッチ構造におけるシール部材に相当し、前記連通路511y’は請求項2に記載の変速機のクラッチ構造における油圧供給通路に相当する。

以上のような自動変速機10のクラッチ構造の作用効果について説明する。
即ち、スリップ制御の際に、外周側油圧室514aに油圧の供給制御が行われ、この油圧によりピストン515が後方に移動してドライブプレート513a…513a及びドリブンプレート513b…513bが圧着され、これらが微係合状態になる。このとき、第1〜第4シール部518a〜518dは、シール力がピストン515の摺動範囲Rsにおいてクラッチ締結位置側(後方側)が非締結位置側(前方側)よりも小さくなるように設けられているので、スリップ制御におけるピストン515の摺動抵抗が軽減され、締結力の安定性と応答性が向上する。この結果、適正なスリップ量によりニュートラルアイドル等のスリップ制御時のドライバビリティが向上することになる。
また、摺動抵抗の減少により要求油圧を低減させることができるので、燃費向上が実現され、締結ショックが防止される。即ち、図9のグラフに示すように、従来の油圧に対して単にシール力が比例する特性においては、摺動抵抗によるばらつきを考慮しなければならず、その分必要シール力が大きくなっていたが、本案の設定のように摺動抵抗を低減させることによって、ばらつきを考慮する必要がなくなるので、必要シール力を低減させることができ、これに伴い要求油圧が低減されるのである。さらに、油圧制御にデューティソレノイドではなくリニアソレノイドが使用されているので、微係合状態におけるオイルの漏れ量の増大による油圧P1の油圧精度のばらつきが抑制されるようになっている。
また、ピストン515が非締結位置(前方側)にあるときは、図9に示したように比較的高いシール力が確保されるので、オイル漏れが防止され、オイル漏れいよるエネルギロスに起因した燃費悪化が抑制される。なお、本実施の形態では、第1〜第4シール部518a〜518dの全てにおいて、微係合状態におけるシール力が低下するような特性をもたせているが、目的に合わせて、少なくとも1つのシール部にこのような特性を持たせればよい。
さらに、ピストン515は、締結位置側にあるときにピストン515全体がシール力の小さい方向に移動しようとするので、スリップ制御時のピストン515の傾きが抑制され、要求されるピストン515のストローク量が低減される。また、ピストン515の片当たりが抑制されるので、ドライブプレート513a…513a及びドリブンプレート513b…513bの接触状態の安定性が向上する。これらの結果、クラッチ締結時の応答性が向上することになる。
そして、クラッチ締結初期の接触状態が安定しているので、ジャダーを抑制するようにした摩耗特性の管理が容易になるという利点もある。
次に、第1〜第4シール部518a〜518dの作用効果を個別に述べると、まず、第1シール部518aにおいては、微係合状態ではピストン515に装着された第1シール部材519aがドラム内周壁511cに対して摺動することになる。このとき、ドラム内周壁511cの外周面511c′がピストン515の摺動範囲においてクラッチ締結位置側が非締結位置側より縮径されているので、締結位置側におけるシール力が小さくなり、前述の作用効果が得られることになる。
また、ピストン515の内周側に設けられる第1シール部518aをこのように構成したことによって、ピストン515の外周側のシール力を小さくしたときに比べてオイル漏れの量が少なくなるという利点がある。即ち、オイル漏れの量は、シール部材519aの形状、締め代、供給油圧が同等の場合は、周長に比例して増加するため、ピストン515の内周側の方が外周側より漏れ量が小さい。この結果、オイル漏れによる油圧エネルギのロスが抑制されて、燃費向上が図られる。なお、第1シール部518aを介して漏れたオイルは、内周側油圧室514bから遠心バランス室516に供給されることになるので、このオイルをクラッチの潤滑のために使用することができ、スリップ制御時のクラッチの潤滑の促進により、クラッチの耐久信頼性が向上することになる。
また、第2シール部518bにおいては、微係合状態ではピストン515に装着された第1シール部材519aがドラム外周壁511bに対して摺動することになる。このとき、ドラム外周壁511bの内周面511b′がピストン515の摺動範囲Rsにおいてクラッチ締結位置側が非締結位置側より拡径されているので、締結位置側におけるシール力が小さくなり、前述の作用効果が得られることになる。
しかも、ピストン515の摺動抵抗は、シール部材519aの形状、締め代、油圧が同等の場合は、周長に比例して増加するので、ピストン515の外周にこのようなシール部518aが設けられている場合に、効果的に摺動抵抗が減少され、顕著な効果が得られる。
一方、第3シール部518cにおいては、微係合状態では環状凸部515aの内周部に装着された第1シール部材519aが環状凹部511dの内周面511dに対して摺動することになる。このとき、環状凹部511dの内周面511d′がピストン515の摺動範囲においてクラッチ締結位置側が非締結位置側より縮径されているので、締結位置側におけるシール力が小さくなり、前述の作用効果が得られる。
一方、前述のように、ピストン515を制御するために2つの油圧室514a,514bが設けられたクラッチ構造において、ピストン515の受圧面積が可変であり、スリップ制御時には、外周側油圧室514aに油圧を供給することにより制御され、完全締結時には両方の油圧室514a,514bに油圧が供給されるように構成されている場合、前述のように締結位置でのシール力が低減されているので、微係合状態における外周側油圧室514aから内周側油圧室514bへのオイルの漏れ量が増大し、これによって微係合状態から締結状態に移行する際のピストン515のストロークによる内周側油圧室514bの必要油量の増大が補われ、内周側油圧室514bへの充填遅れが防止される。
また、第4シール部514dにおいては、微係合状態ではプレート部材517に装着された第2シール部材519bがピストン515の延長部515bの内周面515b′に対して摺動することになる。このとき、延長部515bの内周面515b′が前記第2シール部材519bの摺動範囲Rsにおいてクラッチ締結位置側が非締結位置側に対して拡径されているので、締結位置側におけるシール力が小さくなり、前述の作用効果が得られることになる。
一方、遠心バランス室516に発生する遠心圧による作用は、非締結のドライブプレート513a…513a及びドリブンプレート513b…513bの引き摺りや誤締結を防止するために必要になる。したがって、微係合時や締結時には、遠心バランス室516の遠心圧の有無が管理できれば問題はなく、第4シール部514dにおけるシール力を非締結位置に比べて締結位置で小さくしても支障はない。
ところで、ドラム511には前記外周側油圧室514a及び内周側油圧室514bに作動油を供給する油路511y′…511y′が設けられている。そして、この油路511y′…511y′が設けられる中間部材511yが別部材で構成されているので、該中間部材511yをS15Cといった切削性の良い材料とし、加工の容易化を図ることができる。また、油路511y′は、縦壁511aの内周面から外周側にまで設けられ、比較的長い油路になっている。これに対して、中間部材511yを別部材として構成したので、加工の自由度が向上し、特殊な加工法を用いることなく、コンパクトな油路形成が可能になり、縦壁511aひいてはドラム511のコンパクト化を図ることができる。
また、前記油路511y′…511y′及び油路511″…511y″は、それぞれ円周方向で等配分に設けられているので、油圧が供給されたときに、ピストン515に作用する油圧流動力が均等となり、ピストン515の傾きが防止されることになる。
一方、ドラム外周壁511bは、プレス加工等で成形されるのが一般的であるため、圧延性等の成形性の良い材料が好ましく、また、タービンシャフト27又はシャフト27に結合される部分は軸部分のねじりによる破損や結合部のへたりなどを防止するために高強度の高カーボン材を熱処理した材料が好ましい。これに対し、外周部材511xを成形性の良いSPC1とし、内周部材511zをSCM440Hとしたので、前記各要求を全て満たすドラム511が構成されることになる。また、前記各部材511x〜511zをビーム溶接などで接合する場合、接合される部材同士を合わせたカーボン量が余り高くないので、良好に溶接することができる。
一方、非締結要求時の遠心圧による誤締結を防止するために、遠心バランス室516が設けられているが、微係合などを含む締結要求時には、遠心バランス室516の充填状態の違いによる遠心油圧の違いは、締結力の違いとなり、締結のタイミングやクラッチ伝達力の違いによる駆動力への影響などが発生する。特に、始動初期の冷間時で、さらに低回転時などでは、潤滑部への作動油の供給がままならず潤滑用の油路27aから分配される遠心バランス室516の遠心油圧が発生しない場合があり、その場合は締結力過多になる。
また、本実施の形態のように、ピストン515を制御する油圧室が分割されている場合は、ピストン515のストローク量分の油路充填状況が異なる場合があり、そのときは遠心バランス室516の遠心油圧からのピストン515を押し戻す力に対抗できる内周側油圧室514bからの押付け力が発生せず締結力不足になる。
これに対して、図10に示すように、外周側油圧室514aへの油圧のみを使う微係合状態においてのクラッチ締結力の安定を図るため、径方向で内周側油圧室514bまでの範囲の遠心バランス室516と内周側油圧室514bとの遠心圧が常に同じとなるように、内周側油圧室514bの外周側に連通孔515cが設けられている。連通孔515cは、充填状態を互いに補い合いながら互いの充填状態を促進し、必然的に連通孔515cの両側の油圧を揃えることで遠心圧によるピストン515への力が完全に相殺されることになる。
この結果、遠心油圧の影響が低減されるので締結力制御の精度が高められ、適正なスリップ量や無駄の少ない油圧での締結になることで、ニュートラルアイドルやスリップ制御時のドライバビリティや燃費低減作用の実現が可能となり、クラッチの耐久信頼性の向上などにも寄与する。
また、遠心バランス室516側に供給された潤滑油が連通孔515cにより内周側油圧室514bに供給されるので、該内周側油圧室514bの油圧充填状態(プリチャージ化)がよくなるため、内周側油圧室514bの油圧の調整に対する応答性が向上することにもなって、ニュートラルアイドル制御から発進する際の応答性や変速時の応答性なども高まり、応答遅れによる出足感不足や変速ショックが低減される。なお、潤滑油が内周側油圧室514bに流入することによるコンタミの影響が考えられるが、内周側油圧室514bはギヤやクラッチの下流ではないため、コンタミの流入による問題は生じない。さらに、極冷間時など遠心バランス室516に潤滑油が充填されていない状態では圧力バランスが崩れることになるが、一般に極冷間時にはニュートラルアイドル制御を停止させるので、このような圧力バランスの相違による影響は小さい。
ところで、本実施の形態においては、ピストン515に装着するシール部材519a,519bとして、リップシールが用いられているが、これの代わりにリングシールを用いてもよい。リングシールは、第1〜第3シール部518a〜518cにおいては、ピストン515に環状設けられた凹陥部に断面円状のゴム部材を嵌合させたものとなり、第4シール部518dにおいては、プレート部材517の該周縁に環状に設けられた凹陥部に同様のゴム部材を嵌合させたものとなる。
例えば、図11に示すように、第1シール部518aがリングシール519cを用いて構成されている場合、クラッチ非締結位置においては、ドラム内周壁511cの外周面511c′の径が比較的大きいので、リングシール519cの圧着作用が大きく、大きなシール力が確保される。そして、微係合状態においては、前記外周面511c′が縮径されているので、リングシール519cの圧着作用が小さくなり、シール力は小さくなる。
さらに、締結時においては、増大した油圧P2′がリングシール519cの前方から作用することになり、該油圧P2′は該リングシール519cは変形するように作用する。この変形によりシール力がFC′に増大することになって、図9に示したようなリップシール519a,519bと同様の特性が得られる。
一方、自動変速機10にトルクコンバータの入力側と出力側とを連結させるロックアップクラッチ(図示せず)が備えられ、該ロックアップクラッチが多板式で構成されている場合に、前述のシール部518a〜518dの構成を適用することができる。
即ち、ロックアップクラッチにおいてスリップ制御を行う際には、ある程度の油圧を発生させた停止状態から締結動作が始まるように制御することがあり、この場合油圧点での摩擦状態が動摩擦状態から静摩擦状態に移行することになって、摩擦係数が高い状態になり摺動抵抗が増大する。そのため、前述のシール部の構成を適用することによって摺動抵抗を減少させることができるので、顕著な効果が得られることになる。
本発明は、主として自動変速機に用いられるクラッチ構造に関し、自動車産業に広く好適である。
本発明の実施の形態に係る変速機の骨子図である。 同変速機のクラッチ構造の断面図及び油圧回路図である。 第1シール部の拡大断面図である。 第2シール部の拡大断面図である。 第3シール部の拡大断面図である。 第4シール部の拡大断面図である。 リニアソレノイドバルブの制御電流に対する油圧の特性を示すグラフである。 クラッチ締結状態に応じた第1シール部の説明図である。 油圧に対するシール力の特性を示すグラフである。 ピストンに作用する遠心油圧の説明図である。 リングシールの説明図である。 クラッチ締結時のリングシールの説明図である。 従来のクラッチ構造を示す説明図である。
符号の説明
10 自動変速機
51 フォワードクラッチ
511 ドラム
511a 縦壁
511b 外周壁
511b′ 内周面
511c 内周壁
511c′ 外周面
511d 環状凹部
511d′ 内周面
511y′、511y″ 連通路
513a ドライブプレート
513b ドリブンプレート
514a 外周側油圧室
514b 内周側油圧室
515 ピストン
515a 環状凸部
515b 延長部
515b′ 内周面
515c 連通孔
516 遠心バランス室
517 プレート部材
518a〜518d 第1〜第4シール部
519a、519b 第1、第2シール部材

Claims (3)

  1. 回転軸上に配置されるドラムと、該ドラムの外周壁と内周壁との間に軸方向に摺動可能に収容されたピストンと、該ピストン背部の油圧室への作動圧の供給制御により締結力が制御される複数のクラッチ板とを有し、前記ピストンの内外周部に摺動部が設けられた変速機のクラッチ構造であって、
    前記油圧室は、前記ピストン背部の径方向の外周側に設けられた外周側油圧室と内周側に設けられた内周側油圧室とに画成され、外周側油圧室は、ドラム縦壁の外周側内面部に形成された環状凹部と、該環状凹部に嵌合するようにピストン背面に突設された環状凸部とにより形成されていると共に、
    前記摺動部にシール部が設けられ
    該シール部の1つは、前記環状凸部の内周部と前記環状凹部の内周面との間に設けられ、環状凸部の内周面に装着されたシール部材と、ピストンの摺動範囲においてクラッチ締結位置側が非締結位置側より縮径するように形成された環状凹部の内周面とで構成されることにより、摺接力がピストンの摺動範囲においてクラッチ非締結位置側より締結位置側が小さくなるように設けられていることを特徴とする変速機のクラッチ構造。
  2. 前記請求項1に記載の変速機のクラッチ構造において、
    前記ドラムの縦壁には、前記外周側油圧室へ油圧を供給する油圧供給通路が設けられていると共に、該ドラムは、該油圧供給通路が設けられている部分が他の部分と異なる部材で構成されていることを特徴とする変速機のクラッチ構造。
  3. 前記請求項1に記載の変速機のクラッチ構造において、
    ピストンのクラッチ板側には、遠心力による油圧室の油圧を相殺する遠心バランス室をピストンと共に形成するプレート部材が配設され、
    前記ピストンには、内周側油圧室の外周部と遠心バランス室とを連通する連通孔が設けられていることを特徴とする変速機のクラッチ構造。
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