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JP4776209B2 - 自動変速機 - Google Patents

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JP4776209B2
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Description

本発明は、例えば車輌用自動変速機等に用いられる、動力伝達の切・断を行うクラッチの油圧サーボに係り、詳しくは、軸部材上にシリンダ部材を別体に配置した第1クラッチ用油圧サーボを有する自動変速機に関する。
一般に、例えば車輌用自動変速機などに用いられるクラッチの油圧サーボにおいては、シリンダ部とピストンとの間に作動油室が形成されており、クラッチの解放時にピストンをシリンダ部側に押し戻すリターンスプリング及びキャンセルプレートが備えられている。そのキャンセルプレートは、シリンダ部に対して相対位置が固定されている必要があり、例えばシリンダ部が形成されているクラッチドラムにスナップリングなどによってリターンスプリングの反対側に移動しないように規制されている。
ところで、例えば自動変速機などにクラッチを配設する際に、入力軸や他のクラッチのクラッチドラムなどの同回転する部材がある場合には、例えばシリンダ部の内周側においてハブ状(スリーブ状)部材を延設し、該ハブ状部材の外周側にキャンセルプレートを設けると、同回転する部材とハブ状部材とが二重構造となるため、コンパクト化の妨げとなる。そこで、そのような同回転する部材(例えば入力軸)の外周側に直接的に当該シリンダ部が形成された部材(例えばクラッチドラム)とキャンセルプレートとをそれぞれ配置し、シリンダ部が形成された部材を例えば溶接などで同回転する部材に固定し、当該シリンダ部が形成された部材と同回転する部材とを一体的に構成している(例えば特許文献1、図3の符号12及び符号32等参照)。
特開2003−247612号公報
しかしながら、シリンダ部が形成された部材を同回転する部材に例えば溶接などで固定し、一体的にすることは、クラッチ(自動変速機)の組付けおいて、例えば溶接工程(一体的に形成する工程)が必要となり、組付け性の向上や、製造工程及び製造コストの減少を妨げるという問題がある。
そこで本発明は、コンパクト化が可能でありながら、組付け性の向上、製造工程及び製造コストの減少が可能なクラッチ用油圧サーボを提供することを目的とするものである。
請求項1に係る本発明は(例えば図1乃至図4参照)、シリンダ部(32d)が形成されているシリンダ部材(32)と、摩擦板(31)を押圧するためのピストン部材(33)と、該ピストン部材(33)を該シリンダ部(32d)に付勢するリターンスプリング(35)と、少なくとも軸方向における該リターンスプリング(35)とは反対側への移動が規制され、該リターンスプリング(35)の反力を受け止めるキャンセルプレート(34)と、該ピストン部材(33)と該シリンダ部(32d)との間に形成され、供給される油圧に基づき該ピストン部材(33)を押圧するための作動油室(36)と、該ピストン部材(33)と該キャンセルプレート(34)との間に形成されたキャンセル油室(37)と、を備えた第1クラッチ用油圧サーボ(30)と、
シリンダ部(22d)が形成されているドラム部材(22)と、摩擦板(21)を押圧するためのピストン部材(23)と、該ピストン部材(23)を該シリンダ部(22d)に付勢するリターンスプリング(25)と、少なくとも軸方向における該リターンスプリング(25)とは反対側への移動が規制され、該リターンスプリング(25)の反力を受け止めるキャンセルプレート(24)と、該ピストン部材(23)と該シリンダ部(22d)との間に形成され、供給される油圧に基づき該ピストン部材(23)を押圧するための作動油室(26)と、該ピストン部材(23)と該キャンセルプレート(24)との間に形成されたキャンセル油室(27)と、を備えた第2クラッチ用油圧サーボ(20)と、を有する自動変速機(1)において、
前記第1クラッチのシリンダ部材(32)を、前記第2クラッチのピストン部材(23)の内周側で、かつ前記第1のクラッチのキャンセルプレート(34)が配置される前記第2クラッチのドラム部材(22)の軸部材(22c)上に、前記第2クラッチのピストン部材(23)を介さずに前記第2クラッチのドラム部材(22)と同回転するように、前記軸部材(22c)及び前記第2クラッチのピストン部材(23)と別体に配置し、 前記第2クラッチのピストン部材(23)を介さずに、前記第1クラッチのシリンダ部材(32)の軸方向における前記第1クラッチのキャンセルプレート(34)とは反対側への移動のみを不能にするストッパ手段(例えば22e、22f、38)を備え、
前記第1クラッチのシリンダ部材(32)の軸方向における前記第1クラッチのキャンセルプレート(34)側への移動を、前記第1クラッチのリターンスプリング(35)の付勢力、前記第1クラッチのキャンセル油室(37)の油圧、及び前記第1クラッチの作動油室(36)の油圧に基づき、前記第1クラッチのシリンダ部材(32)を前記ストッパ手段(例えば22e、22f、38)側に押圧する力が、該第1クラッチのシリンダ部材(32)を前記第1クラッチのキャンセルプレート(34)側に押圧する力より、常時大きくなるようにして規制し、
前記第2クラッチ(C−3)の摩擦板に噛合する前記第2クラッチのドラム部材(22)に前記第1クラッチのシリンダ部材(32)が内包されてなり、
前記第1クラッチのシリンダ部材は、前記第1クラッチの摩擦板(31)がスプライン係合されるドラム部(32b)を有するドラム部材(32)からなり、
前記第1クラッチのドラム部材(32)は、前記第2クラッチ(C−3)のドラム部材(22)に相対回転不能にスプライン係合してなり、
前記ストッパ手段は、前記第2クラッチ(C−3)のドラム部材(22)の外周部(22b)の内周側に形成された段差部(22e、22f)である、
ことを特徴とする自動変速機(1)にある。
請求項2に係る本発明は(例えば図1乃至図4参照)、前記軸部材(22c)と前記第1クラッチのシリンダ部材(32)とをシールするシール手段(a4,a8)を備えてなる、
請求項1記載の自動変速機(1)にある。
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
請求項1に係る本発明によると、第1クラッチのシリンダ部材を、第2クラッチのピストン部材の内周側で、かつ第1クラッチのキャンセルプレートが配置される第2クラッチのドラム部材の軸部材上に、第2クラッチのピストン部材を介さずに第2クラッチのドラム部材と同回転するように、軸部材及び第2クラッチのピストン部材と別体に配置し、ストッパ手段により、第2クラッチのピストン部材を介さずに、該シリンダ部材の軸方向におけるキャンセルプレートとは反対側への移動のみを不能とし、第1クラッチのシリンダ部材の軸方向における第1クラッチのキャンセルプレート側への移動を、第1クラッチのリターンスプリングの付勢力、第1クラッチのキャンセル油室の油圧、及び第1クラッチの作動油室の油圧に基づき、第1クラッチのシリンダ部材をストッパ手段側に押圧する力が、該シリンダ部材を第1クラッチのキャンセルプレート側に押圧する力より、常時大きくなるようにして構成したので、例えばシリンダ部材の内周側にハブ状部材を延設して第1クラッチのキャンセルプレートを設ける場合に比して、コンパクト化が可能にできるものでありながら、第1クラッチのシリンダ部材と軸部材とを別体にしても、ストッパ手段側に押圧固定することができて、例えば溶接工程などの、第1クラッチのシリンダ部材と軸部材とを一体的に形成する工程を無くすことができる。それにより、組付け性の向上、製造工程及び製造コストの減少を可能とすることができる。
また、ストッパ手段は、第2クラッチのドラム部材の外周部の内周側に形成される段差部であるので、特にストッパ手段としての部材を組付けることをなくすことができ、それにより、組付け性の向上、製造工程及び製造コストの減少を可能とすることができるものでありながら、例えば第2クラッチのドラム部材と第1クラッチのドラム部材とをスプライン係合させるスプラインを該第2クラッチのドラム部材の外周部の内周側と該第1クラッチのドラム部材の外周側との間に形成すると際に、該段差部を共に形成することが可能となり、製造工程を減少させることができる。
請求項2に係る本発明によると、軸部材と第1クラッチのシリンダ部材とをシールするシール手段を備えているので、第1クラッチの作動油室の油をシールすることができ、それにより、軸部材と第1クラッチのシリンダ部材とを別体にすること可能とすることができる。
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る第1の実施の形態を図1に沿って説明する。図1は第1の実施の形態に係る自動変速機1の一部を示す断面図である。
なお、以下の説明では、図1中における上,下,左,右を、この順に、実際の車輌用自動変速機(以下、単に「自動変速機」ともいう)1における「上」「下」「前」「後」に対応させて説明する。また、入力軸5の長手方向に沿った方向を「軸方向」、この軸方向に直交する方向を「径方向」とし、さらに径方向の位置については、軸に近い側を「内径側(内周側)」、軸から遠い側を「外径側(外周側)」というものとする。
例えばFRタイプ(フロントエンジン、リヤドライブ)の車輌に用いて好適な自動変速機1には、図1に示すように、不図示のトルクコンバータを介してエンジンなどに接続されている変速機構の入力軸5が備えられている。該入力軸5上には、詳しくは後述するクラッチ(第1クラッチ)C−4、クラッチ(第2クラッチ)C−3、ダブルピニオンプラネタリギヤDPが前方側より後方側に順に配置されている。また、該入力軸5の後方の同軸上には、図示を省略した、例えばラビニヨ型プラネタリギヤユニットなどを有する歯車機構が備えられており、その歯車機構には、駆動車輪に回転を出力する出力軸が接続されて備えられている。これにより、例えば前進8速段、及び後進2速段などの多段変速を達成する自動変速機1が構成されている。
なお、本明細書中において、クラッチ(及びブレーキ)という言葉は、それぞれ摩擦板(外摩擦板及び内摩擦板)と、これらを接断させる油圧サーボとを含めた意味で使用する。
つづいて、自動変速機1において、本発明に係るクラッチC−4用の(第1クラッチに用いられる)油圧サーボ30が配置されている前方部分を、図1に沿って詳細説明する。ミッションケース3の内側には、入力軸5上にプラネタリギヤDPが配置されており、サンギヤS1と、キャリヤCR1と、リングギヤR1とを備えている。このうちサンギヤS1は、入力軸5の外周面に被嵌されるとともに前方に延びるスリーブ部材50に一体的に固定されている。このスリーブ部材50は、ミッションケース3の前方に設けられた隔壁部材の内径側から後方に延設されたボス部3aの内周面に一体的に固定されており、つまりサンギヤS1はミッションケース3に対して回転不能に固定されている。
また、キャリヤCR1は、後キャリヤプレートCR1aと前キャリヤプレートCR1bとを有していて、ピニオンP1,P2を回転自在に支持している。これらピニオンP1,P2は相互に噛合されるとともに、前者のピニオンP1はサンギヤS1に、また後者のピニオンP2はリングギヤR1にそれぞれ噛合している。後キャリヤプレートCR1aは、入力軸5の外周面から外径側に向かってフランジ状に延びるように形成されている。一方、前キャリヤプレートCR1bは、環状に形成されており、外周から前方に延びるハブ部材49が固着されている。このハブ部材49の外周面には、後述のクラッチC−4の内摩擦板31bがスプライン係合されている。
リングギヤR1はその外周面に、後述の第3クラッチC−3の内摩擦板21bがスプライン係合されている。なお、リングギヤR1の後端には、一部図示を省略した、リングギヤR1を入力軸5に対して支持する略々円板形状の支持板51が接続されていると共に、該支持板51の外周側に、例えば他のクラッチのドラム部材52が接続されており、また、該支持板51が不図示のプラネタリギヤユニットの1つのギヤに接続される形となっている。
一方、外摩擦板21a及び上述の内摩擦板21bからなる摩擦板21と、この摩擦板21を接断させる油圧サーボ20とを備えているクラッチC−3(第2クラッチ)は、上述のように該摩擦板21がリングギヤR1の外周側に配置されると共に、該油圧サーボ20が、プラネタリギヤDPの前方側であってミッションケース3内の最前側において、上記ボス部3a上に配置される形で構成されており、該クラッチC−3は、詳しくは後述するクラッチC−3、特にクラッチドラム(シリンダ部材)32をクラッチドラム(軸部材、ドラム部材)22により内包する形で設けられている。
該油圧サーボ20は、クラッチドラム22、ピストン部材23、キャンセルプレート24、リターンスプリング25を有しており、これらにより、作動油室26、キャンセル油室27を構成している。クラッチドラム22は、内径側から外径側に延びるフランジ部22aとこのフランジ部22aの外周からクラッチC−3の略全体の後方まで延びるドラム部(外周部)22bと、内径側がボス部3bに回転自在に支持されているハブ部22cとを有している。
このうち、フランジ部22aの後方側には、ピストン部材23と対向する部分に、上記作動油室26を構成するためのシリンダ部22dが形成されている。また、該ハブ部22cは、その外周面における前端側が大径で、後端側が小径となる複数の段状に形成されている。ハブ部22cの後端は、前述のサンギヤS1の前端面の直前に位置している。言い換えるとハブ部22cの後端は、後述のクラッチC−4の油圧サーボ30よりも後方まで延設されている。
一方のクラッチドラム22のドラム部22bは、後述のクラッチC−4の外径側を通って、不図示のプラネタリギヤユニットの1つのギヤに接続される形となっている。該ドラム部22bの内周面の前述のリングギヤR1に対応する部分には、上記外摩擦板21aがスプライン係合(噛合)されている。また、該ドラム部22bの内周面の後述するクラッチC−4に対応する部分の前方側には、クラッチC−4のクラッチドラム(ドラム部材)32に当接する段差部22eが備えられている。
また、該ドラム部22bの前側外周面には、ブレーキB−1の内摩擦板41bがスプライン係合されている。該ブレーキB−1の外摩擦板41aは、ミッションケース3の内周面にスプライン係合しており、不図示の油圧サーボによってブレーキB−1が係止すると、クラッチドラム22の回転が固定されることとなる。
一方、上記ピストン部材23は、上述のクラッチドラム22のフランジ部22aの後方に、上記シリンダ部22dに対向して前後方向移動可能に配置されており、2本のシールリングa1,a2により、クラッチドラム22との間に油蜜状の作動油室26を構成している。また、ピストン部材23の後方外周側には、ドラム部23aが延設されており、該ドラム部23aは、詳しくは後述するクラッチC−4のクラッチドラム32のドラム部32bの外周側で、かつクラッチC−3のクラッチドラム22のドラム部22bの内周側を通って後方に延び、その後端を、摩擦部材21に対面させている。また、該クラッチドラム32のドラム部32bとピストン部材23のドラム部23aとは、スプライン状に円周方向に重なり合う形で配置されている。
なお、上述のクラッチドラム32のドラム部32bの外周面の一部と、クラッチドラム22のドラム部22bの内周面の一部とは、ドラム部23bの一部に設けた切欠部を介して相互にスプライン係合されている(図中下方側参照)。また、上述の段差部22eも、ドラム部23bの一部に設けた切欠部を貫通する形で設けられており、即ち段差部22eは、櫛歯状に形成されていることとなる。つまり、この段差部22eは、クラッチドラム22のドラム部22bの内周面にスプラインを形成する際に、共に形成することが可能となっており、これにより、該スプラインと段差部とを別々に形成する場合に比して、製造工程を減少させること可能となっている。
リターンプレート24は、上述のハブ部22cに嵌合されたスナップリング29によって後側への移動が規制されている。リターンプレート24は、その前方に配置されたピストン部材23との間に、リターンスプリング25が縮設されるとともにシールリングa3により油蜜状のキャンセル油室27を構成している。なお、上記キャンセルプレート24は、上記リターンスプリング25の付勢力などに基づき後方側に常時付勢されて、つまりクラッチドラム22に対して固定された形となっている。
以上説明したクラッチC−3のクラッチドラム22内には、即ちプラネタリギヤDPの前側に、本発明に係るクラッチC−4が配置されている。クラッチC−4は、外摩擦板31a及び前述の内摩擦板31bからなる摩擦板31と、この摩擦板31を接断させる油圧サーボ30とを備えている。この油圧サーボ30は、シリンダ部32dが形成されたシリンダ部材であるクラッチドラム32、ピストン部材33、リターンプレート34、リターンスプリング35を有しており、これらにより、作動油室36、キャンセル油室37を構成している。クラッチドラム32は、内径側から外径側に延びるフランジ部32aとこのフランジ部32aの外周から後方に延びるドラム部32bとを有している。
このうち、フランジ部32aの後方側には、ピストン部材33と対向する部分に、上述したように作動油室36を構成するためのシリンダ部32dが形成されている。また、クラッチドラム32は、このフランジ部32aの外周側の前方側、即ちドラム部32bの付け根付近の前方側が、前述の段差部22eに当接して配置されている。該ドラム部32bは、上述のプラネタリギヤPDのキャリヤCR1に固着されたハブ部材49の外径側に配置されており、内周面には外摩擦部材31aがスプライン係合されていると共に、外周側が上記クラッチC−3のクラッチドラム22に相対回転不能にスプライン係合されている。
一方、ピストン部材33は、クラッチドラム22のフランジ部22aの後方外周側にあって、クラッチドラム32のシリンダ部32dに対向して前後方向移動可能に配置されていている。そして、クラッチドラム32とクラッチドラム22との間はシールリングa4により、クラッチドラム32とピストン部材33との間はシールリングa5により、クラッチドラム22とピストン部材33との間はシールリングa6により、それぞれシールされており、クラッチドラム32のシリンダ部32dとピストン部材33との間に、油蜜状の作動油室36を構成している。なお、作動油室36は、クラッチドラム32を介さず、後述するクラッチドラム22の油路c16より直接作動油が供給されるので、クラッチドラム32を介して作動油を供給する場合に比してシールリングを1本減らすことが可能となり(図4参照、即ちシールリングa8が不要となり)、部品点数を低減することが可能となっている。
リターンプレート34は、上述のハブ部22cに嵌合されたスナップリング39によって後側への移動が規制されている。リターンプレート34は、その前方に配置されたピストン部材33との間に、リターンスプリング35が縮設されるとともにシールリングa7により油蜜状のキャンセル油室37を構成している。なお、上記キャンセルプレート34は、上記リターンスプリング35の付勢力などに基づき後方側に常時付勢されて、つまりクラッチドラム22に対して固定された形となっている。
つづいて、各構成要素の油路構造について説明する。入力軸5には、図1に示すように、軸方向に油路c2,c4,c6が穿設されている。油路c2は径方向の油路c1により、油路c4は径方向の油路c3により、油路c6は径方向の油路c5により、それぞれ入力軸5の外周面に連通されている。
また、ボス部3aには、前側から順に、油路c10,c11,c12,c13が径方向に穿設されている。このボス部3aの外周側に位置するクラッチC−4のクラッチドラム22のハブ部22cには、前側から順に、油路c14,c15,c16,c17が径方向に貫通するように穿設されている。また、サンギヤS1が一体的に形成されているスリーブ部材50の後方側の、該サンギヤS1の前方側には、油路c23が径方向に穿設されている。
一方、スリーブ部材50の前方外周側には、図示を省略した油溝が形成されており、ボス部3aとの間に油路を構成しており、即ち、広義としてのボス部3a内に油路が形成されている(以下、「ボス部3a内の油路」という)。そして、入力軸5の外周側には、ボス部3a(スリーブ部材50)と油路c1,c3,c5とをシールするためのシールリングd1〜d3と、油路c1の前側にある不図示のシールリングとが設けられており、また、ボス部3aの外周側には、該ボス部3aの油路c11とクラッチドラム22のハブ部22cの油路c14とをシールするためのシールリングd4,d5と、該ボス部3aの油路c13とクラッチドラム22のハブ部22cの油路c16とをシールするためのシールリングd6,d7とが設けられている。
ついで、潤滑油の供給について説明する。例えば不図示のオイルポンプにより発生した油圧に基づき潤滑油がボス部3a内の油路に供給されると、油路c10,c12を介してボス部3aの外周側に飛散される。また同様にオイルポンプからの潤滑油がボス部3a内の油路に供給されると、シールリングd1,d2にシールされる形で入力軸5の油路c5,c6にも供給され、油路c6内を介して後方側に供給されると共に、油路c7,c8,c9より入力軸5の外周側に向けて飛散される。これにより、ミッションケース3内の各部材、即ち、プラネタリギヤDPの各ギヤ、クラッチC−3の各部材、クラッチC−4の各部材、ブレーキB−1の各部材、特に摩擦板21,31,41などが潤滑される。
なお、例えばクラッチC−3、クラッチC−4のキャンセル油室27,37内の油も、油路c15、c17を介して潤滑油と同様に供給され、また排出された際は、他の潤滑油と合流する形でミッションケース3内の各部材を潤滑する。
次に、作動油の供給について説明する。例えば不図示のオイルポンプにより発生した油圧に基づき、不図示の油圧制御装置において、クラッチC−3、クラッチC−4、ブレーキB−1、及び不図示のロックアップクラッチの係合油圧などが油圧制御されて発生する。そのうち、ロックアップクラッチ、クラッチC−3、及びクラッチC−4の係合油圧に基づき各作動油が、ボス部3a内(第1スリーブ部材50内)に別々に設けられた各油路に、前方側のボス部3aの付根付近より供給される。
ロックアップクラッチの係合用の作動油がボス部3a内の油路に供給されると、該ボス部3a内の油路からシールリングd1及び不図示のシールリングにシールされる形で油路c1に供給される。該油路c1に供給された作動油は、油路c2を介してロックアップクラッチの摩擦板まで供給されて該摩擦板に作用し、該ロックアップクラッチが係合する。なお、油圧制御装置の油圧制御に基づきロックアップクラッチを解放する際は、作動油が反対に油路c2、c1を介して排出される。
また、クラッチC−3の係合用の作動油がボス部3a内の油路に供給されると、該ボス部3a内の図示を省略した軸方向の油路から該ボス部3aの油路c11に供給される。該油路c11に供給された作動油は、シールリングd4,d5にシールされる形で油路c14に、つまり互いに相対回転し得るボス部3aの油路c11からクラッチドラム22の油路c14に供給される。そして、作動油は、油路c14を介してクラッチC−3の油圧サーボ20の作動油室26に供給され、ピストン部材23が後方側に押圧されると共にドラム部23aにより摩擦板21が押圧され、つまりクラッチC−3が係合する。なお、油圧制御装置の油圧制御に基づきクラッチC−3を解放する際は、上記リターンスプリング25の付勢によってピストン部材23が前方側に押圧され、それによって作動油室26の作動油が、反対に油路c14、c11、ボス部3a内の軸方向の油路を介して排出される。
また、クラッチC−4の係合用の作動油がボス部3a内の油路に供給されると、該ボス部3a内の図示を省略した軸方向の油路から油路c13に供給される。該油路c13に供給された作動油は、シールリングd6,d7にシールされる形で油路c16に、つまり互いに相対回転し得るボス部3aの油路c13からクラッチドラム22の油路c16に供給される。そして、作動油は、油路c16を介してクラッチC−4の油圧サーボ30の作動油室36に供給され、ピストン部材33が後方側に押圧されると共に摩擦板31が押圧され、つまりクラッチC−4が係合する。なお、油圧制御装置の油圧制御に基づきクラッチC−4を解放する際は、上記リターンスプリング35の付勢によってピストン部材33が前方側に押圧され、それによって作動油室36の作動油が、反対に油路c16、c13、ボス部3a内の軸方向の油路を介して排出される。
つづいて、クラッチC−4の油圧サーボ30のクラッチドラム32に作用する力関係について、自動変速機1の動作に合わせて説明する。例えばエンジンの回転に基づき入力軸5に回転(駆動力)が入力されると、キャリヤCR1が該入力軸5の回転(以下、「入力回転」という)と同回転で回転する。一方、サンギヤS1は、上述のようにボス部3aを介してミッションケース3に対して回転が固定されており、該固定されたサンギヤS1と入力回転で回転するキャリヤCR1とにより、リングギヤR1は入力回転より減速された減速回転で回転する。
ここで、例えば不図示の油圧制御装置による油圧制御に基づき、ブレーキB−1が係止された状態にあって、クラッチC−3及びクラッチC−4が解放されている状態にあっては、クラッチC−3のクラッチドラム22の回転がブレーキB−1により固定される。すると、該クラッチドラム22内(ハブ部22c上)に配置されているクラッチC−4のクラッチドラム32、ピストン部材33、及びキャンセルプレート34など、つまり油圧サーボ30全体の回転も固定される。なお、上述のようにクラッチドラム32の外周側は、クラッチドラム22の内周側にスプライン係合しているので、常に同回転となっている。
この際は、油圧サーボ30が回転しないため、作動油室36、キャンセル油室37には、遠心力は作用しない。また、クラッチC−4が係合していなく、つまりピストン部材33はクラッチドラム32のフランジ部32aに当接している状態である。この状態では、リターンスプリング35の付勢力(「Fsp」とする)がピストン部材33を介してクラッチドラム32に伝達される。そのため、クラッチドラム32は、上記クラッチドラム22の段差部22eに押圧されて固定された状態となる。
なお、クラッチドラム32に段差部22eの方向(前方側)へ作用する力を「F」とし、数式で示すと、「F=Fsp>0」となる。
一方、例えば不図示の油圧制御装置による油圧制御に基づき、ブレーキB−1及びクラッチC−4が解放された状態にあって、クラッチC−3が係合されている状態にあっては、クラッチC−3の摩擦板21を介してリングギヤR1の減速回転がクラッチドラム22に入力される。すると、該クラッチドラム22内(ハブ部22c上)に配置されている油圧サーボ30全体の回転も減速回転となる。
この際は、油圧サーボ30が減速回転で回転するため、作動油室36、キャンセル油室37には、遠心力が作用する。また、クラッチC−4は係合していなく、つまりピストン部材33はクラッチドラム32のフランジ部32aに当接している状態である。この状態では、リターンスプリング35の付勢力(「Fsp」とする)がピストン部材33を介してクラッチドラム32に伝達される。また、キャンセル油室37内の油に作用する遠心力により、該キャンセル油室37内に遠心油圧が発生し、キャンセルプレート34及びスナップリング39に対して反力をとる形でキャンセル油室37内の遠心油圧の力(「Fc」とする)が、ピストン部材33を介してクラッチドラム32に伝達される。更に、作動油室36内の油に作用する遠心力により、該作動油室36内に遠心油圧が発生し、該遠心油圧によって、ピストン部材33に対してクラッチドラム32と反対方向(後方側)に作用する力(「Fp」とする)と、クラッチドラム32を前方側に押圧する力(「Fd」とする)が発生する。
ここで、上記クラッチドラム32に段差部22eの方向(前方側)へ作用する力Fを、数式で示すと、「F=Fd−Fp+Fc+Fsp」となる。また、クラッチC−4が解放状態であるための、ピストン部材33をクラッチドラム32側に押圧する力、即ちキャンセラとしての性能を確保するためにピストン部材33に作用する力は、「Fc+Fsp≧Fp」となるため、F>0となり、クラッチドラム32は、上記クラッチドラム22の段差部22eに押圧されて固定された状態となる。
また、例えば不図示の油圧制御装置による油圧制御に基づき、ブレーキB−1及びクラッチC−3が解放された状態にあって、クラッチC−4が係合されている状態にあっては、クラッチC−4の摩擦板31を介してキャリヤCR1の入力回転がクラッチドラム32に入力され、該クラッチドラム32にスプライン係合しているクラッチドラム22にも入力回転が入力される。すると、該クラッチドラム22内(ハブ部22c上)に配置されている油圧サーボ30全体の回転も入力回転となる。
この際は、油圧サーボ30が入力回転で回転するため、作動油室36、キャンセル油室37には、上記減速回転の状態より大きな遠心力が作用する。また、クラッチC−4が係合した状態であるため、作動油室36には係合油圧が供給された状態となり、ピストン部材33とクラッチドラム32のフランジ部32aとは離れた状態となるが、油密状となった作動油室36の油を介してピストン部材33に作用する力が、クラッチドラム32に伝達される状態である。
この状態では、前記クラッチC−3の係合状態と同様に、リターンスプリング35の付勢力、作動油室36内及びキャンセル油室37内の油に遠心力による遠心油圧が作用する。リターンスプリング35の付勢力(「Fsp」とする)が、ピストン部材33及び作動油室36の油を介してクラッチドラム32に伝達される。また、キャンセル油室37内の油に作用する遠心力により、該キャンセル油室37内に上記減速回転の状態より大きな遠心油圧が発生し、キャンセルプレート34及びスナップリング39に対して反力をとる形でキャンセル油室37の遠心油圧の力(「Fc」とする)が、ピストン部材33及び作動油室36の油を介してクラッチドラム32に伝達される。
また、作動油室36内の油に作用する遠心力により、該作動油室36内に遠心油圧が発生し、該遠心油圧によって、ピストン部材33に対してクラッチドラム32と反対方向(後方側)に作用する力(「Fp」とする)と、クラッチドラム32を前方側に押圧する力(「Fd」とする)とが発生する。更に、作動油室36内にクラッチC−4を係合するための係合油圧が供給され、クラッチC−4が係合すると、ピストン部材33が摩擦板31を押圧することになり、係合油圧が、ピストン部材33、摩擦板31、該摩擦板31の移動を規制するスナップリングを介してクラッチドラム32に作用して、クラッチドラム32にピストン部材33側への方向(後方側)に作用する力(「Fp’」とする)が作用する。また、該係合油圧により、クラッチドラム32を前方側に直接押圧する力(「Fd’」とする)が作用する。
ここで、上記クラッチドラム32に段差部22eの方向(前方側)へ働く力Fを、数式で示すと、「F=Fd’−Fp’+Fd−Fp+Fc+Fsp」となる。また、クラッチC−4が解放状態であるための、ピストン部材33をクラッチドラム32側に押圧する力、即ちキャンセラとしての性能を確保するためにピストン部材33に作用する力は、「Fc+Fsp≧Fp」となる。さらに、クラッチドラム32の内径側のシール部とピストン部材33の内径側シール部との段差を小さくする、すなわち、クラッチドラム32の作動油室36の受圧面積とピストン部材33の作動油室36の受圧面積との差を小さくすることによって、Fd’−Fp’≒0となるため、F>0となり、クラッチドラム32は、上記クラッチドラム22の段差部22eに押圧されて固定された状態となる。
また、例えば不図示の油圧制御装置による油圧制御に基づき、クラッチC−4及びクラッチC−3が解放され、ブレーキB−1が解放されている状態にあっては、クラッチドラム22及び油圧サーボ30は、プラネタリギヤDPに対して空転状態となるが、例えば不図示のプラネタリギヤユニットの各ギヤの回転状態によって、回転が停止した状態や連れ回りにより回転する状態となる。
この際、クラッチドラム22及び油圧サーボ30の回転が停止した状態は、上述したブレーキB−1が係止した状態と同様の力がクラッチドラム32に作用し、また、連れ回りにより回転する状態では、上述したクラッチC−3が係合した状態に対し、回転数に応じて遠心力(遠心油圧)が異なるが、略同様な力関係となる。そのため、クラッチドラム32は、上記クラッチドラム22の段差部22eに押圧されて固定された状態となる。
ところで、例えばクラッチC−3の油圧サーボ20のキャンセルプレート24の内周側(例えば油路c15)から、該キャンセルプレート24とクラッチドラム32との間には潤滑油が供給されて溜まることがある。この状態で、クラッチドラム22が回転(入力回転、減速回転、連れ回りの回転など)すると、その潤滑油に生じる遠心油圧によってクラッチドラム32を後方側に押圧する力が作用する場合もある。また、例えばクラッチC−4が係合する際などにあっては、摩擦板31がキャリヤCR1により回転されつつピストン部材32により後方側に押圧されるので、クラッチドラム32を後方側に押圧する力が作用する場合もある。
しかしながら、これらのクラッチドラム32を後方側に押圧する力は、上記リターンスプリング35の付勢力や作動油室36及びキャンセル油室37の遠心油圧の力に比して、僅かな力であるので、上記クラッチドラム22が後方側に押圧されて移動することはない。
以上のように本発明の第1の実施の形態に係るクラッチ用油圧サーボ30によると、シリンダ部32dが形成されたクラッチドラム(即ちシリンダ部材)32をキャンセルプレート34が配置されていて該クラッチドラム32と同回転するクラッチドラム22のハブ部22c上に別体に配置し、段差部22eにより該クラッチドラム32をクラッチドラム22に対して軸方向におけるキャンセルプレート34とは反対側への移動のみを不能し、クラッチドラム32の軸方向におけるキャンセルプレート34側への移動の規制を、リターンスプリング35の付勢力、キャンセル油室37の油圧、及び作動油室36の油圧に基づき、クラッチドラム32を段差部22e側に押圧する力が、該クラッチドラム32をキャンセルプレート34側に押圧する力より、常時大きくなるようにして構成したので、例えばクラッチドラム32の内周側にハブ状部材を延設してキャンセルプレート34を設ける場合に比して、コンパクト化が可能にできるものでありながら、クラッチドラム32とクラッチドラム22とを別体にしても、段差部22e側に押圧固定することができて、例えば溶接工程などの、クラッチドラム32とクラッチドラム22とを一体的に形成する工程を無くすことができる。それにより、組付け性の向上、製造工程及び製造コストの減少を可能とすることができる。
また、クラッチドラム22とクラッチドラム32とをシールするシールリングa4を備えているので、作動油室36の油をシールすることができ、それにより、クラッチドラム22とクラッチドラム32とを別体にしても作動油室36を構成することができ、つまりクラッチドラム22とクラッチドラム32とを別体にすることを可能とすることができる。
更に、クラッチC−3の摩擦板21に噛合するクラッチドラム22にクラッチドラム32が内包されたクラッチC−4に用いられてなり、キャンセルプレート34とクラッチドラム32を配置する部材が、クラッチC−3のクラッチドラム22であるので、このような2つのクラッチを1つのクラッチドラム22内に配置した構造に、本発明を用いることができる。
また、シリンダ部材が、摩擦板31がドラム部32bの内周側にスプライン係合されるクラッチドラム32からなり、該クラッチドラム32は、クラッチC−3のクラッチドラム22に相対回転不能にスプライン係合して構成されているので、例えばクラッチC−3のクラッチドラム22を複雑な形状に加工することなく(後述の図3参照)、クラッチC−4を構成することができる。
また、クラッチドラム32の前方側への移動を規制するものとして、クラッチC−3のクラッチドラム22の内周側に形成された段差部22eを形成しただけであるので、特に他の部材を組付けることなく、クラッチドラム32の前方側への移動を規制することができ、組付け性の向上、製造工程及び製造コストの減少を可能とすることができる。
更に、段差部22eは、クラッチC−3のクラッチドラム32のドラム部32bの内周側に形成されるので、例えばクラッチC−3のクラッチドラム32とクラッチC−4のクラッチドラム22とをスプライン係合させるスプラインを、該クラッチドラム32のドラム部32bの内周側と該クラッチドラム22の外周側との間に形成する際に、該段差部22eを共に形成することが可能となり、製造工程を減少させることができる。
そして、本クラッチ用油圧サーボ30を、車輌用自動変速機1に用いるので、車輌用自動変速機1の組付け性の向上、製造工程及び製造コストの減少を可能とすることができる。
なお、本第1の実施の形態において、段差部22eは、クラッチドラム22のドラム部22bの内周側に配置されたもの、つまりクラッチドラム32の外周側に当接するものについて説明したが、例えばクラッチドラム22のハブ部22cの外周側に配置し、つまりクラッチドラム32の内周側に当接するようにしたものであってもよい。
第2の参考例
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の参考例について、図2に沿って説明する。図2は第2の参考例に係る自動変速機1の一部を示す断面図である。なお、以下に説明する第2の参考例においては、第1の実施の形態に係る自動変速機1と略同様の構成であるので、同様な部分には同符号を付して、その説明を省略し、相違する部分だけを説明する。
本第2の参考例においては、シリンダ部32dが形成されているクラッチドラム(シリンダ部材)32の前方側への移動を規制するものとして、クラッチドラム22の段差部22eではなく、クラッチドラム22のハブ部22cの外周側にスナップリング38を備えたものである。
なお、キャリヤCR1の前キャリヤプレートCR1bを前方側に延設し、クラッチC−4の内摩擦板31bにスプライン係合させたものであり(つまり第1の実施の形態における、前キャリヤプレートCR1bとハブ部材49とを一体的に形成したものであり)、また、ボス部3a内の油路(スリーブ部材50内)からの潤滑油を供給する油路として、油路c20、c21、c22を該ボス部3aに穿設したものである。
このように、スナップリング38によりクラッチドラム32を、クラッチドラム22に対して前方側への移動を規制するように構成し、第1の実施の形態と同様に、リターンスプリング35の付勢力、キャンセル油室37の油圧、及び作動油室36の油圧に基づき、クラッチドラム32をスナップリング38側に押圧する力が、該クラッチドラム32をキャンセルプレート34側に押圧する力より、常時大きくなるように構成している。
これにより、第2の参考例に係るクラッチ用油圧サーボ30によると、クラッチドラム32をキャンセルプレート34が配置されていて該クラッチドラム32と同回転するクラッチドラム22のハブ部22c上に別体に配置し、スナップリング38により該クラッチドラム32をクラッチドラム22に対して軸方向におけるキャンセルプレート34とは反対側への移動のみを不能し、クラッチドラム32の軸方向におけるキャンセルプレート34側への移動の規制を、リターンスプリング35の付勢力、キャンセル油室37の油圧、及び作動油室36の油圧に基づき、クラッチドラム32をスナップリング38側に押圧する力が、該クラッチドラム32をキャンセルプレート34側に押圧する力より、常時大きくなるようにして構成したので、例えばクラッチドラム32の内周側にハブ状部材を延設してキャンセルプレート34を設ける場合に比して、コンパクト化が可能にできるものでありながら、クラッチドラム32とクラッチドラム22とを別体にしても、スナップリング38側に押圧固定することができて、例えば溶接工程などの、クラッチドラム32とクラッチドラム22とを一体的に形成する工程を無くすことができる。それにより、組付け性の向上、製造工程及び製造コストの減少を可能とすることができる。
また、クラッチドラム22とクラッチドラム32とをシールするシールリングa4を備えているので、作動油室36の油をシールすることができ、それにより、クラッチドラム22とクラッチドラム32とを別体にしても作動油室36を構成することができ、つまりクラッチドラム22とクラッチドラム32とを別体にすることを可能とすることができる。
更に、クラッチC−3の摩擦板21に噛合するクラッチドラム22にクラッチドラム32が内包されたクラッチC−4に用いられてなり、キャンセルプレート34とクラッチドラム32を配置する部材が、クラッチC−3のクラッチドラム22であるので、このような2つのクラッチを1つのクラッチドラム22内に配置した構造に、本発明を用いることができる。
また、シリンダ部材が、摩擦板31がドラム部32bの内周側にスプライン係合されるクラッチドラム32からなり、該クラッチドラム32は、クラッチC−3のクラッチドラム22に相対回転不能にスプライン係合して構成されているので、例えばクラッチC−3のクラッチドラム22を複雑な形状に加工することなく(後述の図3参照)、クラッチC−4を構成することができる。
また、クラッチドラム32の前方側への移動を規制するものとして、クラッチドラム22に係止されたスナップリング38を備えるだけであるので、特にスナップリングを組付けるだけの比較的簡単な工程にすることができ、組付け性の向上、製造工程及び製造コストの減少を可能とすることができる。
そして、本クラッチ用油圧サーボ30を、車輌用自動変速機1に用いるので、車輌用自動変速機1の組付け性の向上、製造工程及び製造コストの減少を可能とすることができる。
第3の参考例
ついで、上記第1の実施の形態及び第2の参考例を一部変更した第3の参考例について、図3に沿って説明する。図3は第3の参考例に係る自動変速機1の一部を示す断面図である。なお、以下に説明する第3の参考例においては、第1の実施の形態及び第2の参考例に係る自動変速機1,1と略同様の構成であるので、同様な部分には同符号を付して、その説明を省略し、相違する部分だけを説明する。
本第3の参考例においては、クラッチC−4の摩擦板31が、シリンダ部材32と駆動連結することなくクラッチC−3のクラッチドラム22に直接スプライン係合させて構成されたものであり、前述の第1の実施の形態及び第2の参考例におけるクラッチC−4のクラッチドラムのドラム部32bがクラッチC−3のクラッチドラム22に一体的に形成されたものである。
詳細には、クラッチC−3のクラッチドラム22は、最も外周側に、クラッチC−3としての摩擦板21が内周側にスプライン係合する第1ドラム部22bを有していると共に、そのドラム部22bの僅かに内周側の前方部分に、クラッチC−4の摩擦板31が内周側にスプライン係合する第2ドラム部22eを有しており、即ち第1ドラム部22bと第2ドラム部22eとが略々二重構造となる形となっている。つまり上記クラッチドラム22の第2ドラム部22eが、第1の実施の形態及び第2の参考例において説明したクラッチドラム32のドラム部32bと同様に、クラッチC−4のクラッチドラムとなっている。
また、該第1ドラム部22bの内周側で、かつ該第2ドラム部22eの外周側、即ち該第1ドラム部22bと該第2ドラム部22eとの間には、クラッチC−3の油圧サーボ20のピストン部材23から延設された櫛歯状のドラム部23aが、スプライン状に形成されたクラッチドラム22の内周側を通る形で配設されており、その後端を、摩擦部材21に対面させている。
一方、シリンダ部32dが形成されているシリンダ部材32は、クラッチC−4のクラッチドラムを構成してなく、シリンダ部32dを構成する単体の部材となっている。また、該シリンダ部材32の前方側への移動を規制するものとしては、第1の実施の形態で説明したクラッチドラム22の段差部22eではなく、第2の参考例と同様に、クラッチドラム22のハブ部22cの外周側にスナップリング38を備えたものである。
つづいて、クラッチC−4の油圧サーボ30のシリンダ部材32に作用する力関係について、第1の実施の形態及び第2の参考例と異なる状態だけ説明する。
例えば不図示の油圧制御装置による油圧制御に基づき、ブレーキB−1及びクラッチC−3が解放された状態にあって、クラッチC−4が係合されている状態にあっては、クラッチC−4の摩擦板31を介してキャリヤCR1の入力回転がクラッチドラム22に入力される。すると、該クラッチドラム22内(ハブ部22c上)に配置されている油圧サーボ30全体の回転も入力回転となる。
この際は、油圧サーボ30が入力回転で回転するため、作動油室36、キャンセル油室37には、減速回転の状態より大きな遠心力が作用する。また、クラッチC−4が係合した状態であるため、作動油室36には係合油圧が供給された状態となり、ピストン部材33とシリンダ部材32とは離れた状態となるが、油密状となった作動油室36の油を介してピストン部材33に作用する力が、シリンダ部材32に伝達される状態である。
この状態では、リターンスプリング35の付勢力、作動油室36内及びキャンセル油室37内の油に遠心力による遠心油圧が作用する。リターンスプリング35の付勢力(「Fsp」とする)が、ピストン部材33及び作動油室36の油を介してシリンダ部材32に伝達される。また、キャンセル油室37内の油に作用する遠心力により、該キャンセル油室37内に上記減速回転の状態より大きな遠心油圧が発生し、キャンセルプレート34及びスナップリング39に対して反力をとる形でキャンセル油室37の遠心油圧の力(「Fc」とする)が、ピストン部材33及び作動油室36の油を介してシリンダ部材32に伝達される。
また、作動油室36内の油に作用する遠心力により、該作動油室36内に遠心油圧が発生し、該遠心油圧によって、ピストン部材33に対してシリンダ部材32と反対方向(後方側)に作用する力(「Fp」とする)と、シリンダ部材32を前方側に押圧する力(「Fd」とする)とが発生する。また、該係合油圧により、シリンダ部材32を前方側に直接押圧する力(「Fd’」とする)が作用する。またこの際、第1の実施の形態及び第2の参考例と異なり、クラッチC−4が係合し、ピストン部材33が摩擦板31を押圧することによって、ピストン部材33、摩擦板31、該摩擦板31の移動を規制するスナップリングを介して作用する作動油室36の係合油圧の力(つまり上述のFp’)は、クラッチドラム22に対して作用するため、シリンダ部材32には作用しない。
ここで、上記シリンダ部材32にスナップリング38の方向(前方側)へ働く力Fを、数式で示すと、「F=Fd’+Fd−Fp+Fc+Fsp」となる。また、クラッチC−4が解放状態であるための、ピストン部材33をシリンダ部材32側に押圧する力、即ちキャンセラとしての性能を確保するためにピストン部材33に作用する力は、「Fc+Fsp≧Fp」となるため、F>0となり、シリンダ部材32は、上記スナップリング38に押圧されて固定された状態となる。
なお、その他の状態におけるシリンダ部材32に作用する力関係、即ちクラッチC−3が係合した場合、ブレーキB−1が係止した場合、クラッチC−3、クラッチC−4、ブレーキB−1が解放されて空転状態となった場合における力関係は、上述の第1の実施の形態及び第2の参考例におけるクラッチドラム32に作用する力関係と同様であるので、その説明は省略する。
また、例えばクラッチC−3の油圧サーボ20のキャンセルプレート24の内周側(例えば油路c15)から、該キャンセルプレート24とシリンダ部材32との間には潤滑油が供給されても、クラッチドラム22の第2ドラム部22e側に流れて溜まらないため、シリンダ部材32を後方側に押圧する力は作用しない。
このように、第1の実施の形態及び第2の参考例と同様に、リターンスプリング35の付勢力、キャンセル油室37の油圧、及び作動油室36の油圧に基づき、シリンダ部材32をスナップリング38側に押圧する力が、該シリンダ部材32をキャンセルプレート34側に押圧する力より、常時大きくなるように構成している。
これにより、第3の参考例に係るクラッチ用油圧サーボ30によると、シリンダ部材32をキャンセルプレート34が配置されていて該シリンダ部材32と同回転するクラッチドラム22のハブ部22c上に別体に配置し、スナップリング38により該シリンダ部材32をクラッチドラム22に対して軸方向におけるキャンセルプレート34とは反対側への移動のみを不能し、シリンダ部材32の軸方向におけるキャンセルプレート34側への移動の規制を、リターンスプリング35の付勢力、キャンセル油室37の油圧、及び作動油室36の油圧に基づき、シリンダ部材32をスナップリング38側に押圧する力が、該シリンダ部材32をキャンセルプレート34側に押圧する力より、常時大きくなるようにして構成したので、例えばシリンダ部材32の内周側にハブ状部材を延設してキャンセルプレート34を設ける場合に比して、コンパクト化が可能にできるものでありながら、シリンダ部材32とクラッチドラム22とを別体にしても、スナップリング38側に押圧固定することができて、例えば溶接工程などの、シリンダ部材32とクラッチドラム22とを一体的に形成する工程を無くすことができる。それにより、組付け性の向上、製造工程及び製造コストの減少を可能とすることができる。
また、クラッチドラム22とシリンダ部材32とをシールするシールリングa4を備えているので、作動油室36の油をシールすることができ、それにより、クラッチドラム22とシリンダ部材32とを別体にしても作動油室36を構成することができ、つまりクラッチドラム22とシリンダ部材32とを別体にすることを可能とすることができる。
更に、クラッチC−3の摩擦板21に噛合するクラッチドラム22にシリンダ部材32が内包されたクラッチC−4に用いられてなり、キャンセルプレート34とシリンダ部材32を配置する部材が、クラッチC−3のクラッチドラム22であるので、このような2つのクラッチを1つのクラッチドラム22内に配置した構造に、本発明を用いることができる。
また、摩擦板31がクラッチC−4のシリンダ部材32と駆動連結することなくクラッチC−3のクラッチドラム22に直接スプライン係合しているので、特にクラッチC−4のクラッチドラムを設けることなく、クラッチC−4を構成することができ、クラッチC−4のコンパクト化を図ることができる。
また、シリンダ部材32の前方側への移動を規制するものとして、クラッチドラム22に係止されたスナップリング38を備えるだけであるので、特にスナップリングを組付けるだけの比較的簡単な工程にすることができ、組付け性の向上、製造工程及び製造コストの減少を可能とすることができる。
そして、本クラッチ用油圧サーボ30を、車輌用自動変速機1に用いるので、車輌用自動変速機1の組付け性の向上、製造工程及び製造コストの減少を可能とすることができる。
第4の参考例
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した第4の参考例について、図4に沿って説明する。図4は第4の参考例に係る自動変速機1の一部を示す断面図である。なお、以下に説明する第4の参考例においては、第1の実施の形態に係る自動変速機1と略同様の構成であるので、同様な部分には同符号を付して、その説明を省略し、相違する部分だけを説明する。
本第4の参考例においては、シリンダ部32dが形成されているクラッチドラム(シリンダ部材)32の前方側への移動を規制するものとして、クラッチドラム22のハブ部(内周部)22cの外周側に形成された段差部22fを備えたものである。
クラッチC−4のクラッチドラム32は、クラッチC−3のクラッチドラム22のハブ部22cの外周側に被嵌される形で延設されたハブ部32cを有しており、該ハブ部32cの先端部分の内周側と該ハブ部22cの先端部分の外周側とにスプラインが形成されて、互いにスプライン係合している。そのため、クラッチC−4の油圧サーボ30の作動油室36には、ボス部3aの油路c13より、クラッチドラム22の油路c16及びクラッチドラム32の油路c30を介して作動油が供給される。また、クラッチドラム22とクラッチドラム32との間は、即ち油路c16と油路c30との間は、2本のシールリングa4,a8によりシールされている。
なお、クラッチドラム32の外周部であるドラム部32bは、クラッチドラム22のドラム部22bとはスプライン係合してなく、つまりクラッチC−4が係合した際、キャリヤCRの回転(駆動力)は、クラッチドラム32のドラム部32b、フランジ部32a、ハブ部32c、クラッチドラム22のハブ部22c、フランジ部22a、及びドラム部22bを介して、不図示の部材(図中右方側)に伝達されることになる。このように、クラッチドラム32のドラム部32bとクラッチドラム22のドラム部22bとがスプライン係合してないので、ピストン部材23には切欠部が形成されていない。
以上のように、段差部22fによりクラッチドラム32を、クラッチドラム22に対して前方側への移動を規制するように構成し、第1の実施の形態と同様に、リターンスプリング35の付勢力、キャンセル油室37の油圧、及び作動油室36の油圧に基づき、クラッチドラム32を段差部22f側に押圧する力が、該クラッチドラム32をキャンセルプレート34側に押圧する力より、常時大きくなるように構成している。
これにより、第4の参考例に係るクラッチ用油圧サーボ30によると、クラッチドラム32をキャンセルプレート34が配置されていて該クラッチドラム32と同回転するクラッチドラム22のハブ部22c上に別体に配置し、段差部22fにより該クラッチドラム32をクラッチドラム22に対して軸方向におけるキャンセルプレート34とは反対側への移動のみを不能し、クラッチドラム32の軸方向におけるキャンセルプレート34側への移動の規制を、リターンスプリング35の付勢力、キャンセル油室37の油圧、及び作動油室36の油圧に基づき、クラッチドラム32を段差部22f側に押圧する力が、該クラッチドラム32をキャンセルプレート34側に押圧する力より、常時大きくなるようにして構成したので、例えばクラッチドラム32の内周側にハブ状部材を延設してキャンセルプレート34を設ける場合に比して、コンパクト化が可能にできるものでありながら、クラッチドラム32とクラッチドラム22とを別体にしても、段差部22f側に押圧固定することができて、例えば溶接工程などの、クラッチドラム32とクラッチドラム22とを一体的に形成する工程を無くすことができる。それにより、組付け性の向上、製造工程及び製造コストの減少を可能とすることができる。
また、クラッチドラム22とクラッチドラム32とをシールするシールリングa4,a8を備えているので、作動油室36の油をシールすることができ、それにより、クラッチドラム22とクラッチドラム32とを別体にしても作動油室36を構成することができ、つまりクラッチドラム22とクラッチドラム32とを別体にすることを可能とすることができる。
更に、クラッチC−3の摩擦板21に噛合するクラッチドラム22にクラッチドラム32が内包されたクラッチC−4に用いられてなり、キャンセルプレート34とクラッチドラム32を配置する部材が、クラッチC−3のクラッチドラム22であるので、このような2つのクラッチを1つのクラッチドラム22内に配置した構造に、本発明を用いることができる。
また、シリンダ部材が、摩擦板31がドラム部32bの内周側にスプライン係合されるクラッチドラム32からなり、該クラッチドラム32は、クラッチC−3のクラッチドラム22に相対回転不能にスプライン係合して構成されているので、例えばクラッチC−3のクラッチドラム22を複雑な形状に加工することなく(図3参照)、クラッチC−4を構成することができる。
更に、段差部22fは、クラッチC−3のクラッチドラム22のハブ部22cに形成されるので、例えばクラッチC−3のクラッチドラム22のドラム部22bとクラッチC−4のクラッチドラム32のドラム部32bとを当接させるために、ピストン部材23を切り欠いて(貫通して)、それらを互いに当接させる段差部22eを形成する場合(図1参照)と比して、切り欠きを形成する(貫通形成する)必要がなく、製造過程において容易に段差部22fを形成することができる。
そして、本クラッチ用油圧サーボ30を、車輌用自動変速機1に用いるので、車輌用自動変速機1の組付け性の向上、製造工程及び製造コストの減少を可能とすることができる。
なお、以上説明した本発明に係る実施の形態においては、本発明に係るクラッチ用油圧サーボ30を車輌自動変速機1に用いた場合について説明したが、これに限らず、どのようなものに用いてもよい。
また、本実施の形態においては、2つのクラッチを備え、一方のクラッチドラム22上に本発明に係る油圧サーボ30が配置されているものを説明したが、例えば入力軸上に油圧サーボのシリンダ部材とキャンセルプレートとが配置されるようなものであっても本発明を適用することができ、つまり同回転する軸状の部材上にシリンダ部材(クラッチドラム)とキャンセルプレートとが配置され、該シリンダ部材が別体に配置されているものであれば、どのようなものであっても本発明を適用することができる。
また、第1の実施の形態においては、本発明に係るクラッチ用油圧サーボ30を、プラネタリギヤDPやプラネタリギヤユニットを備えて有段変速を行う有段式の自動変速機1に用いた場合を説明したが、これに限らず、例えばベルト式無断変速機などに用いてもよく、つまりどのような自動変速機に本発明に係るクラッチ用油圧サーボを用いてもよい。
第1の実施の形態に係る自動変速機1の一部を示す断面図。 第2の参考例に係る自動変速機1の一部を示す断面図。 第3の参考例に係る自動変速機1の一部を示す断面図。 第4の参考例に係る自動変速機1の一部を示す断面図。
符号の説明
1 車輌用自動変速機
22 軸部材、ドラム部材(クラッチドラム)
22b 第2クラッチのドラム部材の外周部(ドラム部)
22c 第2クラッチのドラム部材の内周部(ハブ部)
22e ストッパ手段、段差部
22f ストッパ手段、段差部
30 クラッチ用油圧サーボ
31 摩擦板
32 シリンダ部材(クラッチドラム)
32d シリンダ部
33 ピストン部材
34 キャンセルプレート
35 リターンスプリング
36 作動油室
37 キャンセル油室
38 ストッパ手段、スナップリング
a4 シール手段
C−3 第2クラッチ
C−4 第1クラッチ

Claims (2)

  1. シリンダ部が形成されているシリンダ部材と、摩擦板を押圧するためのピストン部材と、該ピストン部材を該シリンダ部に付勢するリターンスプリングと、少なくとも軸方向における該リターンスプリングとは反対側への移動が規制され、該リターンスプリングの反力を受け止めるキャンセルプレートと、該ピストン部材と該シリンダ部との間に形成され、供給される油圧に基づき該ピストン部材を押圧するための作動油室と、該ピストン部材と該キャンセルプレートとの間に形成されたキャンセル油室と、を備えた第1クラッチ用油圧サーボと、
    シリンダ部が形成されているドラム部材と、摩擦板を押圧するためのピストン部材と、該ピストン部材を該シリンダ部に付勢するリターンスプリングと、少なくとも軸方向における該リターンスプリングとは反対側への移動が規制され、該リターンスプリングの反力を受け止めるキャンセルプレートと、該ピストン部材と該シリンダ部との間に形成され、供給される油圧に基づき該ピストン部材を押圧するための作動油室と、該ピストン部材と該キャンセルプレートとの間に形成されたキャンセル油室と、を備えた第2クラッチ用油圧サーボと、を有する自動変速機において、
    前記第1クラッチのシリンダ部材を、前記第2クラッチのピストン部材の内周側で、かつ前記第1クラッチのキャンセルプレートが配置される前記第2クラッチのドラム部材の軸部材上に、前記第2クラッチのピストン部材を介さずに前記第2クラッチのドラム部材と同回転するように、前記軸部材及び前記第2クラッチのピストン部材と別体に配置し、
    前記第2クラッチのピストン部材を介さずに、前記第1クラッチのシリンダ部材の軸方向における前記第1クラッチのキャンセルプレートとは反対側への移動のみを不能にするストッパ手段を備え、
    前記第1クラッチのシリンダ部材の軸方向における前記第1クラッチのキャンセルプレート側への移動を、前記第1クラッチのリターンスプリングの付勢力、前記第1クラッチのキャンセル油室の油圧、及び前記第1クラッチの作動油室の油圧に基づき、前記第1クラッチのシリンダ部材を前記ストッパ手段側に押圧する力が、該第1クラッチのシリンダ部材を前記第1クラッチのキャンセルプレート側に押圧する力より、常時大きくなるようにして規制し、
    前記第2クラッチの摩擦板に噛合する前記第2クラッチのドラム部材に前記第1クラッチのシリンダ部材が内包されてなり、
    前記第1クラッチのシリンダ部材は、前記第1クラッチの摩擦板がスプライン係合されるドラム部を有するドラム部材からなり、
    前記第1クラッチのドラム部材は、前記第2クラッチのドラム部材に相対回転不能にスプライン係合してなり、
    前記ストッパ手段は、前記第2クラッチのドラム部材の外周部の内周側に形成された段差部である、
    ことを特徴とする自動変速機。
  2. 前記軸部材と前記第1クラッチのシリンダ部材とをシールするシール手段を備えてなる、
    請求項1記載の自動変速機。
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