一般的に車両用自動変速装置の入力継手としては、ポンプインペラとタービンランナ及びホィールステータとからなる流体伝導作用を持ったトルクコンバータ内部に機械的に直結伝導をするロックアップクラッチを有した継手が用いられる。このロックアップクラッチの多くはトルクコンバータのトーラス内部の油圧で摩擦部材と一体となるピストンをフロントカバーの側壁に押圧しトーションダンパを介してタービンランナに動力を伝達するもので、ピストンのトーラス側の油室とフロントカバー側の油室をピストンの摩擦面で分離形成し、両室への供給油の切り換えを入力継手外部から行うことでロックアップクラッチの係脱が可能となるシンプルな構造となっている。
しかしながら、トルクコンバータの強度面でトーラス内部の油圧は通常変速装置のクラッチに用いる油圧ほど大きくできず摩擦面も1面となり伝達容量が限られるとともに、トーラス側の油室とフロントカバー側の油室をピストンの摩擦面で分離形成しているため係合時にトーラス側からフロントカバー側の油室に油が流れて大きな受圧面積のピストンを移動させる時間が長くなる。このような応答性の悪さに加えてポンプインペラとタービンランナの速度比によりトーラス内部の油圧が変化し、外部からの油圧制御が困難となる問題を有する。ここでピストンに作用する圧力は、正しくはタービンランナとフロントカバーの間の圧力であり多量の油が循環して流れるトーラス内部の油圧と異なるがトーラス内部の油圧に影響されるため外部による油圧制御に問題を来たす。尚、ロックアップクラッチの伝達容量を大きくする方法に関しては摩擦面を複面としトーラス内部の油圧でピストンを押圧する方式も数々考案されているが係脱の応答性の問題は解決されない。
従来の車両用自動変速装置の多くは前進4速後進1速の変速段を有し、トルクコンバータのロックアップは最高速段の一定速度以上でしかなされていなく、しかも逆駆動となるエンジンブレーキ状態ではロックアップを解除して用いる等ロックアップの使用頻度は少なく、ロックアップクラッチは前述したようなシンプルな構造のもので問題なかった。しかしながら、ロックアップの使用頻度が少ないため高速度比におけるトルク伝達容量や効率を高くしなければならないため、外径を大きくするかあるいはトーラス面積を増やす対応が必要となる。しかし、高速度比のトルク伝達容量を高くすれば低速度比の伝達容量も必要以上に上がるため、ホィールステータのない流体継手でしばしば用いられるようなトーラス内部の流れを邪魔する邪魔板効果をホィールステータに持たせ対応しているものもある。これらの対応は重量増を招き、コストアップに繋がるばかりではなく燃費の向上に反する対応となっている。
周知の如く、近年地球環境問題のため自動車の省燃費の要求は強く、車両用自動変速装置は隣接する変速段のギア比の段間差が小さくできる前進6速以上への多段化が進められ、低速度段以外では燃費が悪くなる流体伝導をする必要性がなくなってきた。又、車両のコースティング及び逆駆動状態でロックアップにより原動機の燃料をカットすることは当然行われるべきことである。これら多段自動変速装置に求められるトルクコンバータのロックアップクラッチはポンプインペラとタービンランナの速度比が大きい場合でのロックアップの締結や、飛び越し変速も含めて変速時のショック低減のためのロックアップの解除及びスリップが応答よく行えることが要求され、前述したような従来のロックアップクラッチでは不十分となる。
そのため、この前進6速以上の多段自動変速装置には入力継手内に独立した油圧係合室を備えポンプインペラとタービンランナの速度比に関係なく締結でき、複面の摩擦面を持つことで伝達容量を上げることができるロックアップクラッチがふさわしくなる。この方式のロックアップクラッチは主にトラック、バス用の自動変速装置のトルクコンバータに用いられており、その歴史は古い。例えば、1955年の特許文献1のシート2に記載されたこの方式のロックアップクラッチを用いた変速装置の油圧回路図にはポンプインペラとホィールステータの間からトーラス内に油が供給され、タービンランナとホィールステータの間から排出される循環回路と、フロントカバー側に設けられた独立したロックアップクラッチの油圧係合室に油を供給するトルクコンバータへの3通路で制御する回路が示され、現在でも制御バルブは異なってもこの3通路で制御する方式がとられている。
この外部との3通路を簡素化するため、特許文献2ではこの方式のロックアップクラッチにおけるトルクコンバータのトーラス室とフロントカバー側に設けられた独立した油圧係合室の2室を貫通孔で連通し、トーラス室からロックアップクラッチの油圧係合室への油の流れを可能とし、その逆の流れを阻止する逆止弁や貫通孔に小径となるオリフィスを用いたりすることにより外部との制御回路を2通路とする提案がなされている。しかしながら、2室のオリフィスや逆止弁の貫通孔を通過する油量の変化による圧力差のばらつき及び逆止弁の確実性等ピストンの作動圧が不安定となる要素を有している。
又、フロントカバーとポンプインペラが外周部で一体として溶着されフロントカバー側に独立したロックアップクラッチの油圧係合室を設けた量産用のトルクコンバータを用いた実施例として、後輪駆動用に近年開発されSAE PAPERに記載された非特許文献3及び4の前進6速の自動変速装置がある。このトルクコンバータの構造図に示されるように、この方式のロックアップクラッチではロックアップを係合するピストンはフロントカバーもしくはフロントカバーと一体となるボスに内外周がシールされて摺動し、相対回転をするフロントカバーと変速装置の入力軸部に独自の回転シールを施す2重のシール構造となっている。尚、多くのロックアップクラッチの形態が記載された特許文献5の図11,12には、摩擦部材の連結部となるフロントカバー外周をスプライン状に塑性加工しリティニングリング溝加工を施す方式も記載されているが、量産用のプレス材の外周溝加工部が内部の遠心油圧に対し強度不足になることより非特許文献3及び4に示されたようにスプライン状に塑性加工しリティニングリング溝加工が施された別部材をフロントカバーに溶着する方式がとられている。これらはいずれも部品点数を増やし複雑でコスト高となる構造であり、コンパクトで低コストが要求される前輪駆動用の入力継手には向いていない。
ところで、前進6速以上の多段自動変速装置では従来の前進4速の自動変速装置と比べ部品点数が増え重量が増えるとともに軸方向が長くならざるを得ないため、特に前輪駆動用の入力継手にはより一層の重量低減と軸方向のコンパクト化が求められる。又、従来の車両用手動変速装置の多くは前進5速後進1速であり、牽引能力は最低速の変速度段となる前進1速度段を最高速の変速度段となる前進5速度段のギア比で除したギアレンジで決定され、その値は一般的に5〜6となっている。近年開発された前進6速の自動変速装置ではこの値が前進5速の手動変速装置とほぼ同じとなる6前後であり、手動変速装置ほど原動機の性能をフルには利用できないためトルク増幅のあるトルクコンバータを用いている。しかし前進6速の自動変速装置ではギアレンジが4〜5しかとれない前進4速の自動変速装置に用いられるトルクコンバータほどトルク比を大きくする必要もなく、かつまたロックアップをするため高速度比でのトルク伝達容量を高くする必要もなく、トルク比を下げ外径を小さくするかあるいは内径を大きくする等トーラス面積を減らしたコンパクトとなるトルクコンバータや、ギアレンジを7以上にとれる場合はトルク増幅作用や低速度比での容量を下げる邪魔板も必要としない更にコンパクトで低コストとなる流体継手も入力継手として適用できる。本発明はこのような多段自動変速装置用のトルクコンバータや流体継手に関しての提案である。
US2726557
特開昭52―11364
SAE PAPER 2004−01−0652
SAE PAPER 2004−01−0653
特表2001―503126
本発明の第1の課題は、入力継手内のフロントカバー側に設けられた独立した油圧係合室でピストンを押圧して係合するロックアップクラッチの、入力継手外部からの制御油通路を2通路とすることのできるシンプルな油圧係合室構造を提案し、3通路の制御が困難となる流体継手にも適用できる入力継手を提案することである。
本発明の第2の課題は、入力継手内のフロントカバー側に設けられた独立した油圧係合室でピストンを押圧して係合するロックアップクラッチを装備した入力継手の、内部構成部材を減らしシンプルでコンパクトな構造とすることである。
本発明の第3の課題は、入力継手内のフロントカバー側に設けられた独立した油圧係合室でピストンを押圧して係合するロックアップクラッチの、摩擦部材の連結部をシンプルでコンパクトな構造とすることである。
本発明の第4の課題は、入力継手内のフロントカバー側に設けられた独立した油圧係合室でピストンを押圧して係合するロックアップクラッチを装備したトルクコンバータの内部構成部材を、自動変速装置の軸方向がコンパクトになるよう配置するものである。
請求項1に係わる本発明は、ロックアップクラッチにおける油圧係合室の構造とその制御に関するもので、第1と第2の課題を解決するための手段であり、フロントカバーとポンプインペラにより一体として囲われた油室を有する入力部材と、ポンプインペラに対向してフロントカバーとの間に配され変速装置の入力軸と連結するタービンランナと、あるいは、それらに加えて、ポンプインペラとタービンランナとの間に配されたホィールステータとからなる流体伝導部と、入力部材とタービンランナを連結する摩擦部材と、摩擦部材とタービンランナの間に設けられたトーションダンパ機構と、フロントカバーに隣接して軸方向移動可能で相対回転不能に保持され油室をフロントカバー側の油室Bとポンプインペラ側の油室Aに分離形成し油室Bへの供給油圧で摩擦部材を押圧して係合するピストンとからなるロックアップクラッチによる機械伝導部とを備えた自動変速装置の入力継手の、ピストンの油室A、Bを分離形成する内外周摺動部に、油室Aの圧力より油室Bの圧力が高い状態で油室Bを密閉し、油室Bの圧力より油室Aの圧力が高い状態で油室A,Bを連通する弾性シール部材を用い、油室A及びBを入力継手外部に連通し、ロックアップクラッチが係合される機械的に直結となる伝導状態で油室Bに油圧を供給するとともに油室Aの油を入力継手外部に排出し、ロックアップクラッチが開放される流体伝導状態で油室Aに油圧を供給するとともに油室Aの油を油室Bを通して入力継手外部に排出するようになした。
請求項2に係わる本発明は、請求項1に於けるロックアップクラッチの油圧係合室の詳細シール構造に関するもので、第1と第2の課題を解決するための手段であり、ピストンの油室A、Bを分離形成する外周摺動部のシール部材は油室Aの油圧が外周側に作用するとともに油室Bの油圧が内周側に作用する形状をなし、内周摺動部のシール部材は油室Aの油圧が内周側に作用するとともに油室Bの油圧が外周側に作用する形状をなして油室A、Bの差圧で径方向に弾性変形可能であり、ピストンに溶着されるか又は独立して装着されるようになした。
請求項3に係わる本発明は、ロックアップクラッチの摩擦部材の連結部とピストンの配置構造及び請求項1と2に於けるピストンに装着されるシール部材の作動安定性に関するもので、第1と第2及び第3の課題を解決するための手段であり、入力部材は、先端方向の内径が大きくなるよう径方向段差を設け、径方向段差より先端側に軸方向に延びる複数の突起部を有したポンプインペラ外周部をフロントカバー外周部の径方向内側に配し溶着したものであり、突起部と嵌合し回り止めされるとともに径方向段差に当接してポンプインペラ側への軸方向移動が制限されるエンドプレートと、タービンランナにトーションダンパ機構を介して連結される摩擦部材と、あるいは、それらに加えて、突起部と嵌合し回り止めされるとともに軸方向移動自在のドリブンプレートとをポンプインペラ側から順に配し、ピストンを突起部と嵌合し回り止めするとともに突起部もしくはフロントカバー外周部の内径に沿って軸方向移動自在に配するか又は、ピストンを薄肉状にして内径側を前記フロントカバーに固定し回り止めするとともに外径側を弾性変形させ軸方向移動自在に配するかして、ドリブンプレートあるいは摩擦部材を押圧するようになした。
請求項4に係わる本発明は、請求項1と3に於けるポンプインペラとタービンランナとからなる流体継手に関する実施例で、第1と第2の課題を解決するための手段であり、ポンプインペラとタービンランナとからなる流体継手の、トーションダンパ機構を介して回転方向揺動自在に前記タービンランナに連結されるクラッチハブの外周に一体として設けられた摩擦部材を、軸方向が規制される前記エンドプレートと前記ピストンの間に配した。
請求項5に係わる本発明は、請求項1と3に於けるポンプインペラとタービンランナ及びホィールステータとからなるトルクコンバータに関する実施例で、第1と第2の課題を解決するための手段であり、ポンプインペラとタービンランナ及びホィールステータとからなるトルクコンバータの、トーションダンパ機構を介して回転方向揺動自在にタービンランナに連結されるクラッチハブの外周をポンプインペラ側へL字状に曲げて筒状部とし、筒状部にエンドプレートとピストンに挟まれたドライブプレートをスプラインで係合し、ドライブプレートに摩擦部材は設けられ、クラッチハブのドライブプレートと係合するスプラインのポンプインペラ側端部に突起を設け、クラッチハブのフロントカバー方向への移動をドライブプレートで規制するようになした。
請求項6に係わる本発明は、請求項1と3に於ける流体継手とトルクコンバータに関する別の実施例で、第1の課題を解決するための手段であり、流体伝導部となるポンプインペラとタービンランナとからなる流体継手、あるいはポンプインペラとタービンランナとホィールステータとからなるトルクコンバータの、ピストンの外周がフロントカバーと摺動し、内周がタービンランナとあるいはフロントカバーに一体のボスと摺動し、内周が摺動するタービンランナあるいはフロントカバーに一体のボスと自動変速機の入力軸をシール部材で密閉し、タービンランナにトーションダンパ機構を介して連結するクラッチハブと摩擦部材とを軸方向に相対移動可能とし、フロントカバーとタービンランナとポンプインペラの各部材間あるいはフロントカバーとタービンランナとホィールステータとポンプインペラの各部材間にスラスト軸受けを配した。
請求項7に係わる本発明は、請求項1と6に於けるトルクコンバータの内部構成部品の配置に関するもので、第4の課題を解決するための手段であり、ポンプインペラとタービンランナ及びホィールステータとからなるトルクコンバータの、ホィールステータのワンウェイクラッチの内径r2をトルクコンバータの変速装置側軸支部となるハウジングボス部外径r1より大きくなるようワンウェイクラッチをハウジングボス部の径方向外側に配し、タービンランナとホィールステータ間のスラスト軸受けをワンウェイクラッチの内径r2より小さくなるよう径方向内側に配し、ホィールステータとポンプインペラ間のスラスト軸受けをワンウェイクラッチの内径r2より大きくなるよう径方向外側に配した。
請求項1記載の構成では、フロントカバーとポンプインペラにより一体として囲われた油室を有する入力部材と、ポンプインペラに対向してフロントカバーとの間に配され変速装置の入力軸と連結するタービンランナと、あるいは、それらに加えて、ポンプインペラとタービンランナとの間に配されたホィールステータとからなる流体伝導部と、入力部材とタービンランナを連結する摩擦部材と、摩擦部材とタービンランナの間に設けられたトーションダンパ機構と、フロントカバーに隣接して軸方向移動可能で相対回転不能に保持され油室をフロントカバー側の油室Bとポンプインペラ側の油室Aに分離形成し油室Bへの供給油圧で摩擦部材を押圧して係合するピストンとからなるロックアップクラッチによる機械伝導部とを備えた自動変速装置の入力継手の、ピストンの油室A、Bを分離形成する内外周摺動部に、油室Aの圧力より油室Bの圧力が高い状態で油室Bを密閉し、油室Bの圧力より油室Aの圧力が高い状態で油室A,Bを連通する弾性シール部材を用い、油室A及びBを入力継手外部に連通し、ロックアップクラッチが係合される機械的に直結となる伝導状態で油室Bに油圧を供給するとともに油室Aの油を入力継手外部に排出し、ロックアップクラッチが開放される流体伝導状態で油室Aに油圧を供給するとともに油室Aの油を油室Bを通して入力継手外部に排出するようになしたので、特別な逆止弁を用いなくても簡単な構造で大量の油の逆止作用が可能となり、入力継手外部からの制御油通路が2通路の安定したロックアップの制御ができる。
請求項2記載の構成では、ピストンの油室A、Bを分離形成する外周摺動部のシール部材は油室Aの油圧が外周側に作用するとともに油室Bの油圧が内周側に作用する形状をなし、内周摺動部のシール部材は油室Aの油圧が内周側に作用するとともに油室Bの油圧が外周側に作用する形状をなして油室A、Bの差圧で径方向に弾性変形可能であり、ピストンに溶着されるか又は独立して装着されるようになしたので、シール部材の僅かな弾性代でピストンの油室A、Bを分離形成する摺動部に大きな開口ができ大量の油の逆止作用が可能となる。又、シール部材の弾性力による油室Aから油室Bへの油の流れのリリーフ効果及び俊敏な逆止作用によりロックアップクラッチの応答性が確保できる。
請求項3記載の構成では、入力部材は、先端方向の内径が大きくなるよう径方向段差を設け、径方向段差より先端側に軸方向に延びる複数の突起部を有したポンプインペラ外周部をフロントカバー外周部の径方向内側に配し溶着したものであり、突起部と嵌合し回り止めされるとともに径方向段差に当接してポンプインペラ側への軸方向移動が制限されるエンドプレートと、タービンランナにトーションダンパ機構を介して連結される摩擦部材と、あるいは、それらに加えて、突起部と嵌合し回り止めされるとともに軸方向移動自在のドリブンプレートとをポンプインペラ側から順に配し、ピストンを突起部と嵌合し回り止めするとともに突起部もしくはフロントカバー外周部の内径に沿って軸方向移動自在に配するか又は、ピストンを薄肉状にして内径側を前記フロントカバーに固定し回り止めするとともに外径側を弾性変形させ軸方向移動自在に配するかして、ドリブンプレートあるいは摩擦部材を押圧するようになしたので、タービンランナとフロントカバーの外周空きスペースに特別な部材を使用することなく遠心油圧による強度上の問題もない連結部がシンプル、コンパクトに配置できる。又、油室A、Bを分離形成するピストンの芯出しが可能となり、外内周摺動部のシール部材に径方向に一定となる弾性代が確保でき油室AからBへの油の逆止作用が安定する。
請求項4記載の構成では、ポンプインペラとタービンランナとからなる流体継手の、トーションダンパ機構を介して回転方向揺動自在に前記タービンランナに連結されるクラッチハブの外周に一体として設けられた摩擦部材を、軸方向が規制される前記エンドプレートと前記ピストンの間に配したので、タービンランナがピストンの切れ代分軸方向に浮遊されタービンランナに発生するスラスト力はロックアップクラッチの摩擦部材で伝達されるため流体伝導と併用できスラスト軸受けを配する必要がなく、ピストンの内周摺動部シールと変速装置の入力軸の回転シールも共用でき構成部品を減らすことができる。
請求項5記載の構成では、ポンプインペラとタービンランナ及びホィールステータとからなるトルクコンバータの、トーションダンパ機構を介して回転方向揺動自在にタービンランナに連結されるクラッチハブの外周をポンプインペラ側へL字状に曲げて筒状部とし、筒状部にエンドプレートとピストンに挟まれたドライブプレートをスプラインで係合し、ドライブプレートに摩擦部材は設けられ、クラッチハブのドライブプレートと係合するスプラインのポンプインペラ側端部に突起を設け、クラッチハブのフロントカバー方向への移動をドライブプレートで規制するようになしたので、通常、流体伝導状態ではタービンランナのスラスト力はポンプインペラ側だけに作用しフロントカバー側には作用しないため、フロントカバーへのタービンランナの移動はスラスト軸受けを配することなく摩擦部材で制限し、ピストンの内周摺動部シールと変速装置の入力軸の回転シールも共用でき構成部品を減らすことができる。
請求項6記載の構成では、流体伝導部となるポンプインペラとタービンランナとからなる流体継手、あるいはポンプインペラとタービンランナとホィールステータとからなるトルクコンバータの、ピストンの外周がフロントカバーと摺動し、内周がタービンランナとあるいはフロントカバーに一体のボスと摺動し、内周が摺動するタービンランナあるいはフロントカバーに一体のボスと自動変速機の入力軸をシール部材で密閉し、タービンランナにトーションダンパ機構を介して連結するクラッチハブと摩擦部材とを軸方向に相対移動可能とし、フロントカバーとタービンランナとポンプインペラの各部材間あるいはフロントカバーとタービンランナとホィールステータとポンプインペラの各部材間にスラスト軸受けを配したので、構成部品は従来のものと変わらないが、どのような状態でもタービンランナに発生するスラスト力はロックアップクラッチの摩擦部材に作用しないため入力継手外部からの制御油通路が2通路のより安定したロックアップの制御ができる。
請求項7記載の構成では、ポンプインペラとタービンランナ及びホィールステータとからなるトルクコンバータの、ホィールステータのワンウェイクラッチの内径r2をトルクコンバータの変速装置側軸支部となるハウジングボス部外径r1より大きくなるようワンウェイクラッチをハウジングボス部の径方向外側に配し、タービンランナとホィールステータ間のスラスト軸受けをワンウェイクラッチの内径r2より小さくなるよう径方向内側に配し、ホィールステータとポンプインペラ間のスラスト軸受けをワンウェイクラッチの内径r2より大きくなるよう径方向外側に配したので、トーションダンパ機構をトーラスの内径側に配してコンパクトにするこの方式のロックアップクラッチではトルクコンバータを軸支する変速装置のボス部と内部構成部材の干渉を極力避けることができ、トルクコンバータを自動変速装置の軸方向がコンパクトになるよう配することができる。
図1から図6に本発明の流体継手を示し、図7から図12に本発明のトルクコンバータを示す。又、本発明の入力継手となる流体継手とトルクコンバータに共通に用いられるロックアップクラッチの摩擦部材の連結部を図13に示し、ピストン摺動部のシール部材の詳細を図14に示す。尚、図2と図3及び図8と図9は本願発明者が特願2006−306162で提案した多段自動変速装置に本発明の入力継手を装着したものである。この入力継手を含めた自動変速装置の構造図は原動機のトルクを300Nmとしてコンセプトしたものであり、全長が350mm以下となる。
本発明の請求項1に於けるフロントカバー側のピストンを係合する油室Bとポンプインペラ側の油室Aの分離構造及び入力継手外部からの制御を、図2、図3及び図8、図9を除く図1から図14のすべての図に示す。請求項2に於けるピストン摺動部のシール部材の油室Aから油室Bへの油の逆止作用を図解により図14に示し、ピストンに溶着されるシール構造を図4、図6、図10、図11、図12に、独立して装着されるシール構造を図5に示す。請求項3に於けるポンプインペラ部材をロックアップクラッチの摩擦部材の連結部に用いた詳細構造を図13に示し、この連結部にピストンが径方向の芯が出るよう配した構造を図4、図5、図10、図11、図12に、ピストンを薄肉状にして内径側をフロントカバーに固定し回り止めするとともに芯が出るよう配した構造を図6に示す。請求項4に於ける流体継手のタービンランナの軸方向浮遊構造を図4、図5、図6に示し、請求項5に於けるトルクコンバータのタービンランナのフロントカバー側軸方向浮遊構造を図10に示す。請求項6に於けるピストンの内周摺動部をタービンランナとした構造を図11に示し、フロントカバーと一体となるボスとした構造を図12に示す。請求項7に於けるトルクコンバータの自動変速装置内での全体の位置関係を図8に示し、自動変速装置ハウジングとの相対位置関係の詳細を図7と図10に示す。
図1は多段自動変速装置の入力継手として独立したロックアップクラッチの油圧係合室を設けた最もシンプル、コンパクトなポンプインペラとタービンランナを使用した流体継手1aであり、高速度比領域ではロックアップをするためトルク伝達容量を高くする必要もなく、高速度比領域での容量アップに伴う低速度比での容量を下げるための邪魔板も必要としないトーラス部の面積を小さくした継手である。図2に示したようなギアレンジが7以上とれるシンプルな前進6速の自動変速装置に流体継手1aを用いると従来の前進4速の自動変速装置よりコンパクトとなり、コストの上昇も少なくなる。
この前進6速の自動変速装置の構造を示す図2に於いて、図の左側のハウジング40と変速装置との隔壁41に囲われ流体継手1aが配される。原動機の動力はクランクシャフト50からフレキシブルプレート51を介し流体継手1aに伝達され、変速装置の入力軸60に出力される。変速装置の主変速歯車はサンギアS1と遊星キャリアP1とリングギアR1とからなるシンプル遊星歯車列と、サンギアS2と遊星キャリアP2とリングギアR2からなるシンプル遊星歯車列の、サンギアS1とリングギアR2を連結し第1構成要素とし、遊星キャリアP1と遊星キャリアP2を連結し第2構成要素とし、リングギアR1を第3構成要素とし、サンギアS2を第4構成要素とする4個の構成要素からなっており、入力軸60からの動力は直接クラッチC2を介して第2構成要素の遊星キャリアP1、P2に伝達されるか、又はサンギアS0が固定される減速用シンプル遊星歯車列のリングギアR0から遊星キャリアP0を通り減速されクラッチC1又はC3を介して第4構成要素のサンギアS2と第1構成要素のサンギアS1及びリングギアR2に選択的に伝達され、第3構成要素のリングギアR1からカウンターギア61に出力される。ここで第2構成要素の遊星キャリアP1、P2はワンウェイクラッチOWCとブレーキB1で制動され、第1構成要素のサンギアS1とリングギアR2はブレーキB2で選択的に制動される。カウンターギア61は中継軸に配されたカウンターギア62と噛合い、中継軸と一体となるカウンターギア63からカウンターギア63と噛合う出力軸に配されたカウンターギア64に動力が伝達されディファレンシャル70を介して出力される。
図2の前進6速後進1速自動変速装置の構造を模式化し速度線図とギア比を記載した図3に於いて、各遊星歯車列のリングギアをサンギアで除した歯数比をZR0/ZS0=1.667、ZR1/ZS1=1.847、ZR2/ZS2=1.609とし、クラッチC1、C2、C3及びブレーキB1,B2のいずれか2個を選択的に締結すれば前進6速後進1速の変速が可能となる。このギア比の特徴は1速度段のギア比が4.754と大きくとれ、高速側に変速度段が移行するに連れ隣接するギア比の段間比(ステップ)が徐々に小さくなりギアレンジが7.34と大きくとれることである。これは通常同じような車両に用いられる前進5速の手動変速装置の1.2〜1.5倍に相当する。手動変速装置の入力継手にはトルク増幅のない乾式のクラッチが用いられ、手動変速装置ほど原動機の性能をフルには利用できない自動変速装置でもギアレンジを1.2〜1.5倍大きくできればトルクコンバータを用いなくてもトルク増幅のない流体継手が適用できる。
この流体継手1aはトルクコンバータと異なり、ホィールステータがないため低速度比ではタービンランナを通過した油がポンプインペラの回転を妨げる方向に循環されポンプインペラの駆動力がトルクコンバータより大きくなる。又、このような流体伝導装置ではポンプインペラとタービンランナの遠心力の差により油が循環し、低速度比程遠心力の差が大きくなるため多量の油が循環してトルク伝達容量が大きくなる。従って、低速度比での容量を原動機の特性に合わせればよいことになり、トルクコンバータのようなトルク増幅作用はないがトーラス部の面積は小さくて済み、前輪駆動の前進6速の自動変速装置にふさわしい低コスト、軽重量、コンパクトな入力継手となる。尚、トーラス部の面積を小さくすると高速度比での容量は低くなるがロックアップをするため問題とはならない。
図2の前進6速後進1速自動変速装置に示した流体継手1aを拡大して表した図1に於いて、原動機のクランクシャフト50にはワッシャ53,54に挟まれ原動機の始動用リングギア52を配したフレキシブルプレート51がボルト55により連結される。フレキシブルプレート51は流体継手1aのフロントカバー3aの外周部に溶着されたボス17にボルト56により連結され、原動機と流体継手1aが軸方向に一定の自在性を有して連結される。
フロントカバー3aとポンプインペラ2aはポンプインペラ2aが内側になるよう外周部で溶着され内部に油室を形成し、ポンプインペラ2aの外周先端には複数の突起部(以降の文章には環状突起と記述)が形成されフロントカバー3aの軸方向に延材されるとともに、ポンプインペラ2aの内周にはインペラハブ18が溶着され変速装置のハウジング40と連結する隔壁41のボス部に配されたブシュ43で軸支されるとともに隔壁41に配された変速装置及び流体継手1aのチャージングポンプのポンプロータ65を駆動する。又、フロントカバー3aの半径方向中心部にはパイロットボス19が溶着されクランクシャフト50で回転中心が形成される。フロントカバー3aとポンプインペラ2aで形成された油室にはポンプインペラ2aに対向してタービンランナ4aが配され、ポンプインペラ2aとタービンランナ4aのブレードで形成されるトーラス部で油の運動エネルギによる流体伝導が行われる。
タービンランナ4aはトーションダンパ機構とブレードをもつランナ部とタービンハブ9aからなり、トーションダンパ機構とランナ部が一体としてリベット16でタービンハブ9aに連結され、タービンハブ9aは隔壁41に固定されたサポート42に配されたブシュ44で軸支される変速装置の入力軸60にスプライン連結される。トーションダンパ機構はトーションスプリング12、13及び14を回転方向に挟むクラッチハブ7aとクラッチプレート11,12からなっており、クラッチハブ7aは外周部の両面に摩擦部材が貼り付けられ、クラッチプレート11,12はスタッドピン13で一体に連結されクラッチハブ7aを両サイドに挟んで軸方向の動きを規制するとともにトーションスプリング12、13及び14を保持してタービンハブ9aに連結される。このトーションダンパ機構は、トーションスプリング12、13及び14による多段の振動吸収機能や、クラッチプレート11,12とクラッチハブ7aの接触面での摩擦力による振動減衰機能を有している。
ポンプインペラ2aの外周先端に設けられた複数の環状突起は先端部の内径が大きくなるよう段付きに加工されており、複数の環状突起と嵌合して回り止めされるとともに段付き部に当接しポンプインペラ2a側への移動が規制されるエンドプレート8が配され、エンドプレート8とエンドプレート8に隣接したクラッチハブ7aを挟んでポンプインペラ2aの複数の環状突起と嵌合して回り止めされるとともに軸方向に移動可能なピストン6aが配される。ピストン6aは外周部がフロントカバー3a又はポンプインペラ2aの環状突起部内径に沿って芯が出され、径方向中央部に形成された環状凸部の外周にはシール100が溶着されフロントカバー3aの外周部に溶着されたボス17の内径方向内側に形成された環状凹部の内周との間に径方向に一定の間隔を保って回転不能で軸方向に摺動されるとともに、径方向内側の穴内周にはシール101が溶着され変速装置の入力軸60の先端外周部との間に径方向に一定の間隔を保って相対回転可能で軸方向に1mm前後の移動代を有して摺動される。タービンランナ4aはエンドプレート8とピストン6aに挟まれてピストン6aの軸方向1mm前後の移動代に浮遊して配されスラスト軸受けは設けていない。
図1と図1の回転中心上部と制御を示した図4に於いて、フロントカバー3aとポンプインペラ2aによって囲われた油室はピストン6aの外周シール100及び内周シール101によりポンプインペラ2a側の油室Aとフロントカバー3a側の油室Bに分離形成される。油室Aはタービンランナ4aを挟んでポンプインペラ2a側の油室A1とピストン6a側の油室A2からなり両室が連通されるとともに油室A1がインペラハブ18とサポート42の間で流体継手1aの外部に連通され、油室Bは入力軸60の先端部B1で入力軸60の中心に明けられた孔で流体継手1aの外部に連通される。
流体継手1aの外部に配されたロックアップ制御バルブ80aにはスプール81とリターンスプリング82が配されロックアップオフの流体伝導状態ではロックアップを制御するロックアップレギュレター圧がゼロのためスプール81がリターンスプリング82により図の左端しに押される。この流体伝導状態ではポンプインペラ2aとタービンランナ4aの遠心力の差で内部の油が両羽根車によるトーラス内を循環して流れ、損失による油の発熱を冷却するため通常毎分5〜10リッターの油を外部からトーラス内に流し込み内部の油を外部に排出させる。トーラス内はキャビテーションを避けるため低圧に保たれ一定圧のカップリングレギュレターからの油がロックアップ制御バルブ80aを通り流体継手1aの油室A1部に流し込まれ、トーラスの外周からエンドプレート8とピストン6aに挟まれたクラッチハブ7aの摩擦面の間を通りピストン6aの外周シール100へ流れるか若しくは内周シール101に流れる。この状態では油室Bより油室Aの圧力が高いためピストン6aはフロントカバー3a側に押され軸方向1mm前後の移動代を有した状態にある。ピストン6aに溶着されるシール100及び101はこの圧力差により軸方向に弾性変形をして径方向に隙間ができ、油は油室Aから油室Bに流れ込みB1部から入力軸60の中心に明けられた孔を通り、ロックアップ制御バルブ80aからクーラの方に流れる。このシール100及び101の弾性変形の詳細は図14で後述する。
尚、この流体伝導状態でタービンランナ4aはトーラス内部の油の循環によりフロントカバー3a側への力を受けるが、タービンランナ4aとピストン6aの間の油室A2で発生する遠心油圧によるポンプインペラ2a側への力の方が大きいためポンプインペラ2a側へ押される。この時、タービンランナ4aのクラッチハブ7aの摩擦面がエンドプレート8を押しここで摩擦力によるトルクが発生するがトルク増幅のない流体継手の性能に影響はない。尚、通常タービンランナ4aはフロントカバー3a側への力を受けることは少ないが、その場合タービンランナ4aはクラッチハブ7aに対しフロントカバー3a側への移動に制限を受けるのでフロントカバー3a側のスラスト軸受けは必要としない。
次に、図4の下部に示すロックアップオンのロックアップ状態ではロックアップを制御するロックアップレギュレター圧がスプール81をリターンスプリング82の力に反して図の右端しに押す。この状態ではカップリングレギュレターからの油はロックアップ制御バルブ80aを通り直接クーラの方に流れ、トーラス内部の油はA1部からロックアップ制御バルブ80aを通りドレンされる。又、ロックアップレギュレター圧はB1部から油室Bに流れ込む。この状態では油室Aより油室Bの圧力が高いためピストン6aに溶着されるシール100及び101はそれぞれ摺動部を塞ぐよう径方向に押され油室Bと油室Aを分離しピストン6aをポンプインペラ2a側へ押し付ける。ピストン6aはクラッチハブ7aの摩擦面とポンプインペラ2a側への移動が規制されるエンドプレート8を押圧する。この状態では原動機からの動力はフロントカバー3aと回転不能に連結されたエンドプレート8とピストン6aからクラッチハブ7aの摩擦面を通り直接タービンランナ4aから変速装置の入力軸60に伝達される機械伝導状態となる。このロックアップレギュレター圧がそのままピストン6aに作用するため、ロックアップレギュレター圧を制御することにより精度のよい機械伝導が可能となる。この状態におけるシール100及び101の詳細は図14で後述する。
図4に於けるシール100及び101を溶着したピストン6aのシールを着脱可能とした実施例を示す図5に於いて、クラッチハブ7aの摩擦面に当接するドリブンプレート8bがポンプインペラ2aの外周先端に設けられた複数の環状突起と嵌合して回り止めされるとともに軸方向移動自在にフロントカバー3a側に配され、ドリブンプレート8bを押圧するピストン6bがポンプインペラ2aの複数の環状突起と嵌合して回り止めされるとともに軸方向に移動可能に配される。ピストン6bは外周部がフロントカバー3a又はポンプインペラ2aの環状突起部内径に沿って芯が出され、径方向中央部に形成された環状凸部にはシール102を着脱可能に保持するリング27が溶着されフロントカバー3aの環状凹部内周との間に径方向に一定の間隔を保って回転不能で軸方向に摺動されるとともに、径方向内側の穴内周には薄肉金属材に溶着されたシール103が圧入され変速装置の入力軸60の先端外周部との間に径方向に一定の間隔を保って相対回転可能で軸方向に1mm前後の移動代を有して摺動される。シール102,103の摺動面に於ける形状は図4のシール100,101と同じであり、図5は流体継手1aに於ける実施例を示したものであるが、後述するトルクコンバータ1bにも適用できる。
図4に於けるピストン6aの別の実施形状を示す図6に於いて、クラッチハブ7aの摩擦面に当接するドリブンプレート8bがポンプインペラ2aの外周先端に設けられた複数の環状突起と嵌合して回り止めされるとともに軸方向移動自在にフロントカバー3a側に配される。ピストン6cは薄肉状で外周部が軸方向にフレキシブルに撓むことができる状態でフロントカバー3bの内周側側面に突き出された複数の突起部に絞められて固定される。ピストン6cの径方向最外周部に溶着されたシール104はポンプインペラ2aと溶着するフロントカバー3aの内周部との間に径方向に一定の間隔を保って軸方向に摺動を行いドリブンプレート8bを押圧し、内周部に溶着されたシール105は変速装置の入力軸60の先端外周部との間に軸方向に固定され径方向に一定の間隔を保って相対回転を行う。シール104,105の形状は図4のシール100,101と同じであり、図5は流体継手1aに於ける実施例を示したものであるが、後述するトルクコンバータ1bにも適用できる。
図7は多段自動変速装置の入力継手として独立したロックアップクラッチの油圧係合室を設けたシンプル、コンパクトなポンプインペラとタービンランナ及びホィールステータを使用したトルクコンバータ1bであり、図8に示したようなクロスなギア比がとれるシンプルな前進6速の自動変速装置に用いると従来の前進4速の自動変速装置と同等以下のコンパクトさとなり、コストの上昇も少なくなる。
この前進6速の自動変速装置の構造を示す図8に於いて、図の左側のハウジング40と変速装置との隔壁41に囲われトルクコンバータ1bが配される。原動機の動力はクランクシャフト50からフレキシブルプレート51を介しトルクコンバータ1bに伝達され、変速装置の入力軸60に出力される。変速装置の主変速歯車はサンギアS1と遊星キャリアP1とリングギアR1とからなるシンプル遊星歯車列と、サンギアS2と遊星キャリアP2とリングギアR2からなるシンプル遊星歯車列の、サンギアS1とリングギアR2を連結し第1構成要素とし、遊星キャリアP1と遊星キャリアP2を連結し第2構成要素とし、リングギアR1を第3構成要素とし、サンギアS2を第4構成要素とする4個の構成要素からなっており、入力軸60からの動力は直接クラッチC1又はC2を介して第4構成要素のサンギアS2と第2構成要素の遊星キャリアP1、P2に伝達されるか、又はサンギアS0が固定される減速用ダブル遊星歯車列の遊星キャリアP0からリングギアR0を通り減速されクラッチC3を介して第1構成要素のサンギアS1及びリングギアR2に選択的に伝達され、第3構成要素のリングギアR1からカウンターギア61に出力される。ここで第2構成要素の遊星キャリアP1、P2はワンウェイクラッチOWCとブレーキB1で制動され、第1構成要素のサンギアS1とリングギアR2はブレーキB2で選択的に制動される。カウンターギア61は中継軸に配されたカウンターギア62と噛合い、中継軸と一体となるカウンターギア63からカウンターギア63と噛合う出力軸に配されたカウンターギア64に動力が伝達されディファレンシャル70を介して出力される。
図8の前進6速後進1速自動変速装置の構造を模式化し速度線図とギア比を記載した図9に於いて、各遊星歯車列のリングギアをサンギアで除した歯数比をZR0/ZS0=1.938、ZR1/ZS1=1.8、ZR2/ZS2=2.07とし、クラッチC1、C2、C3及びブレーキB1,B2のいずれか2個を選択的に締結すれば前進6速後進1速の変速が可能となる。このギア比の特徴は高速側に変速度段が移行するに連れ隣接するギア比の段間比(ステップ)が徐々に小さくなりギアレンジが5.8でその段間比が小さくとれることである。図2及び図3に前述した前進6速後進1速自動変速装置と比べ前進4速度段で全く変速用遊星歯車を動力が通過しないギア比1の状態があるのと動力が減速用遊星歯車列を通過する前進3及び5速度段ではその一部しか通過せず、ギアの伝達効率と強度面で有利となる。但し、ギアレンジが5.8と前進5速の手動変速装置とそれほど変わらないため、牽引特性を有利にするためトルクコンバータを用いたものである。
このトルクコンバータ1bは従来の前進4速後進1速自動変速装置のトルクコンバータと異なり、トルク比を低くできるため低速度比での入力トルク容量が大きくなる。又、このような流体伝導装置ではポンプインペラとタービンランナの遠心力の差により油が循環し、低速度比程遠心力の差が大きくなるため多量の油が循環してトルク伝達容量が大きくなる。従って、低速度比での容量を原動機の特性に合わせればよいことになり、高速度比での容量は低くなるがロックアップをするため問題とはならなく、トーラス部の面積を小さくすることができる。トルクコンバータ1bではワンウェイクラッチ5の配置を隔壁41のボス部との干渉を避けるためボス部の径方向外側に配し、その分トーラス内径をアップしトーラス部の面積を小さくしたものであり、前輪駆動の前進6速の自動変速装置にふさわしい軽重量、コンパクトな入力継手となる。
図8の前進6速後進1速自動変速装置に示したトルクコンバータ1bを拡大して表した図7に於いて、原動機のクランクシャフト50にはワッシャ53,54に挟まれ原動機の始動用リングギア52を配したフレキシブルプレート51がボルト55により連結される。フレキシブルプレート51はトルクコンバータ1bのフロントカバー3aの外周部に溶着されたボス17にボルト56により連結され、原動機とトルクコンバータ1bが軸方向に一定の自在性を有して連結される。
フロントカバー3aとポンプインペラ2bはポンプインペラ2bが内側になるよう外周部で溶着され内部に油室を形成し、ポンプインペラ2bの外周先端には複数の環状突起が形成されフロントカバー3aの軸方向に延材されるとともに、ポンプインペラ2bの内周にはインペラハブ18が溶着され変速装置のハウジング40と連結する隔壁41のボス部に配されたブシュ43で軸支されるとともに隔壁41に配された変速装置及びトルクコンバータ1bのチャージングポンプのポンプロータ65を駆動する。又、フロントカバー3aの半径方向中心部にはパイロットボス19が溶着されクランクシャフト50で回転中心が形成される。フロントカバー3aとポンプインペラ2bで形成された油室にはポンプインペラ2bに対向してタービンランナ4bが配されるとともに、ポンプインペラ2bとタービンランナ4bの間にはホィールステータ5が配され、ポンプインペラ2bとタービンランナ4b及びホィールステータ5のブレードで形成されるトーラス部で油の運動エネルギによる流体伝導が行われる。
ホィールステータ5の径方向内側にはホィールステータ5をポンプインペラ2bの回転方向に自在に回転可能とし逆方向に回転不能とするワンウェイクラッチ21が外周側のアウターレース22と内周側のインナーレース20に挟まれて配される。ワンウェイクラッチ21のタービンランナ4b側に配されるサイドワッシャ23とポンプインペラ2b側に配されるホィールステータ5のサイド部でアウターレース22とインナーレース20の同心が出され、インナーレース20は変速装置のケース40と一体のサポート42にスプライン連結される。ここでワンウェイクラッチ21は内径r2がインペラハブ18を軸支する隔壁41のハウジングボス部の外径r1より大きくなる位置に配され、サイドワッシャ23とタービンランナ4bの間のスラスト軸受けとなるスラストニードルローラベアリング24はr2より小さな位置に配され、ホィールステータ5のサイド部とポンプインペラ2bの間のスラスト軸受けとなるスラストニードルローラベアリング25はr2より大きな位置に配される。
自動変速装置をコンパクトにするよう入力継手に求められることは、トルクコンバータのトーラスを偏平にするばかりではなく、内周側の原動機への取り付けボルト55と隔壁41のハウジングボス部との干渉幅を小さくしなければならない。特に独立したロックアップクラッチの油圧係合室を設け、摩擦部材をタービンランナ4bとフロントカバー3aの外周空間に配しトーションダンパ機構を摩擦部材の内径側に配す本構造では、タービンハブ9bとトーションダンパ機構の連結部と、ワンウェイクラッチ21と、スラスト軸受けとなるスラストニードルローラベアリング24,25とがボルト55と隔壁41のハウジングボス部の半径位置に重なって配される構造となる。そこで、トーラス内径をアップし、ワンウェイクラッチ21とスラストニードルローラベアリング25を隔壁41のボス部の外径r1より大きくなる位置に配しスラストニードルローラベアリング24だけを隔壁41のボス部と重なるよう配すれば自動変速装置をコンパクトにできる。尚、トーラス部の面積を小さくできるためトーラス外径を特にアップする必要もなく自動変速装置の重量アップも防げる。
タービンランナ4bはトーションダンパ機構とブレードをもつランナ部とタービンハブ9bからなり、トーションダンパ機構とランナ部が一体としてリベット16でタービンハブ9bに連結され、タービンハブ9bは隔壁41に固定されたサポート42に配されたブシュ44で軸支される変速装置の入力軸60にスプライン連結される。トーションダンパ機構はトーションスプリング12、13及び14を回転方向に挟むクラッチハブ7cとクラッチプレート11,12からなっており、クラッチハブ7cは外周部が逆L字状に曲げられスプライン加工がなされ、クラッチプレート11,12はスタッドピン13で一体に連結されクラッチハブ7cを両サイドに挟んで軸方向の動きを規制するとともにトーションスプリング12、13及び14を保持してタービンハブ9bに連結される。このトーションダンパ機構は、トーションスプリング12、13及び14による多段の振動吸収機能や、クラッチプレート11,12とクラッチハブ7cの接触面での摩擦力による振動減衰機能を有している。クラッチハブ7cの外周スプラインには両面に摩擦部材が貼り付けられたドライブプレート7bがスプライン連結され、クラッチハブ7cの外周スプラインのポンプインペラ2b側に設けられた突起28によりクラッチハブ7cがドライブプレート7bに対しフロントカバー3a側に移動するのが制限されるとともにポンプインペラ2b側に移動自在となっている。
ポンプインペラ2bの外周先端に設けられた複数の環状突起は先端部の内径が大きくなるよう段付きに加工されており、複数の環状突起と嵌合して回り止めされるとともに段付き部に当接しポンプインペラ2b側への移動が規制されるエンドプレート8が配され、エンドプレート8とエンドプレート8に隣接したドライブプレート7bを挟んでポンプインペラ2bの複数の環状突起と嵌合して回り止めされるとともに軸方向に移動可能なピストン6aが配される。ピストン6aは外周部がフロントカバー3a又はポンプインペラ2bの環状突起部内径に沿って芯が出され、径方向中央部に形成された環状凸部の外周にはシール100が溶着されフロントカバー3aの外周部に溶着されたボス17の内径方向内側に形成された環状凹部の内周との間に径方向に一定の間隔を保って回転不能で軸方向に摺動されるとともに、径方向内側の穴内周にはシール101が溶着され変速装置の入力軸60の先端外周部との間に径方向に一定の間隔を保って相対回転可能で軸方向に1mm前後の移動代を有して摺動される。ポンプインペラ2bの複数の環状突起形状とフロントカバー3a及びピストン6aは図1に示した流体継手1aと同一である。タービンランナ4bはエンドプレート8とピストン6aに挟まれてピストン6aの軸方向1mm前後の移動代にフロントカバー3a側が浮遊して配され、フロントカバー3a側のスラスト軸受けは設けていない。
図7と図7の回転中心上部と制御を示した図10に於いて、フロントカバー3aとポンプインペラ2bによって囲われた油室はピストン6aの外周シール100及び内周シール101によりポンプインペラ2b側の油室Aとフロントカバー3a側の油室Bに分離形成される。油室Aはホィールステータ5とポンプインペラ2bの間の油室A1と、タービンランナ4bとフロントカバー3aの間の油室A2と、タービンランナ4bとホィールステータ5の間の油室A3とからなり、油室A1がインペラハブ18とサポート42の間でトルクコンバータ1bの外部に連通され、油室Bは入力軸60の先端部B1で入力軸60の中心に明けられた孔でトルクコンバータ1bの外部に連通される。尚、図10では油室A3もサポート42と入力軸60の間でトルクコンバータ1bの外部に連通されているが、これは特にオフロード等トルクコンバータの流体伝導が多い車両に使われる場合、ロックアップ中も油室A内の発熱した油を冷却する必要性があるため設けた特殊事例であり、通常は油室A3の外部への連通回路は必要としない。
トルクコンバータ1bの外部に配されたロックアップ制御バルブ80bにはスプール81とリターンスプリング82が配されロックアップオフの流体伝導状態ではロックアップを制御するロックアップレギュレター圧がゼロのためスプール81がリターンスプリング82により図の左端しに押される。この流体伝導状態ではポンプインペラ2bとタービンランナ4bの遠心力の差で内部の油がトーラス内を循環して流れ、損失による油の発熱を冷却するため通常毎分5〜10リッターの油を外部からトーラス内に流し込み内部の油を外部に排出させる。トーラス内はキャビテーションを避けるため低圧に保たれ一定圧のカップリングレギュレターからの油がロックアップ制御バルブ80bを通りトルクコンバータ1bの油室A1部に流し込まれ、トーラスの外周からエンドプレート8とピストン6aに挟まれたドライブプレート7bの摩擦面の間を通りピストン6aの外周シール100へ流れるか若しくは内周シール101に流れる。この状態では油室Bより油室Aの圧力が高いためピストン6aはフロントカバー3a側に押され軸方向1mm前後の移動代を有した状態にある。ピストン6aに溶着されるシール100及び101はこの圧力差により軸方向に弾性変形をして径方向に隙間ができ、油は油室Aから油室Bに流れ込みB1部から入力軸60の中心に明けられた孔を通り、ロックアップ制御バルブ80bからクーラの方に流れる。このシール100及び101の弾性変形の詳細は図14で後述する。
尚、この流体伝導状態でタービンランナ4bはトーラス内部の油の循環によりフロントカバー3a側への力を受けるが、タービンランナ4bとピストン6aの間の油室A2で発生する遠心油圧によるポンプインペラ2b側への力の方が大きいためホィールステータ5側へ押される。タービンランナ4bはドライブプレート7bに対しポンプインペラ2b側の移動に制限を受けないためタービンランナ4bとホィールステータ5の間及びホィールステータ5とポンプインペラ2bの間にスラストニードルローラベアリング24,25を設けポンプインペラ2b側へのスラスト力を受けている。尚、通常タービンランナ4bはフロントカバー3a側への力を受けることは少ないが、その場合タービンランナ4bはドライブプレート7bに対しフロントカバー3a側への移動に制限を受けるのでフロントカバー3a側のスラスト軸受けは必要としない。
次に、図10の下部に示すロックアップオンのロックアップ状態ではロックアップを制御するロックアップレギュレター圧がスプール81をリターンスプリング82の力に反して図の右端しに押す。この状態ではコンバータレギュレターからの油はロックアップ制御バルブ80bを通り直接クーラの方に流れ、トーラス内部の油はA1部からロックアップ制御バルブ80bを通りドレンされる。又、ロックアップレギュレター圧はB1部から油室Bに流れ込む。尚、図10ではコンバータレギュレターからの油をオリフィス83を通して油室A3から流し込み油室Aの油をA1部からドレンさせるようになっているが、この回路は発熱が大きな特殊な使われ方をする場合であり通常この回路を用いる必要はない。この状態では油室Aより油室Bの圧力が高いためピストン6aに溶着されるシール100及び101はそれぞれ摺動部を塞ぐよう径方向に押され油室Bと油室Aを分離しピストン6aをポンプインペラ2b側へ押し付ける。ピストン6aはドライブプレート7bの摩擦面とポンプインペラ2b側への移動が規制されるエンドプレート8を押圧する。この状態では原動機からの動力はフロントカバー3aと回転不能に連結されたエンドプレート8とピストン6aからドライブプレート7bの摩擦面を通り直接タービンランナ4bから変速装置の入力軸60に伝達される機械伝導状態となる。このロックアップレギュレター圧がそのままピストン6aに作用するため、ロックアップレギュレター圧を制御することにより精度のよい機械伝導が可能となる。この状態におけるシール100及び101の詳細は図14で後述する。
図10に於けるクラッチハブ7cの外周スプラインの突起28をなくしタービンハブ9cとフロントカバー3aの間にスラスト軸受け29を設け、ピストン6dの内周にシール106を溶着してタービンハブ9cと当接させたのが図11である。図11に於いて、タービンランナ4bとホィールステータ5はフロントカバー3aとポンプインペラ2bの間にスラスト軸受け29及びスラストニードルローラベアリング24,25で軸方向が軸支され安定して配される。タービンハブ9cと入力軸60の間はOリング108により密閉される。ポンプインペラ2bの外周先端に設けられた複数の環状突起、エンドプレート8、ドライブプレート7b及びシール100が溶着されるピストン6dの外周部は図10のトルクコンバータ1bと同じである。従って、ピストン6dの内周に溶着されたシール106はタービンハブ9cのフロントカバー3a側ボス外周部との間に径方向に一定の間隔を保って相対回転可能で軸方向に1mm前後の移動代を有して摺動される。図11はトルクコンバータ1bに適用した例であるが、前述した流体継手1aにも適用できる。
更に、図10に於けるクラッチハブ7cの外周スプラインの突起28をなくしフロントカバー3aにボス30を溶着し、ボス30とタービンハブ9dの間にスラスト軸受け31を設け、ピストン6eの内周にシール107を溶着してボス30と当接させたのが図12である。図12に於いて、タービンランナ4bとホィールステータ5はフロントカバー3aと一体となるボス30とポンプインペラ2bの間にスラスト軸受け31及びスラストニードルローラベアリング24,25で軸方向が軸支され安定して配される。ボス30と入力軸60の間はシールリング109により回転可能にシールされる。ポンプインペラ2bの外周先端に設けられた複数の環状突起、エンドプレート8、ドライブプレート7b及びシール100が溶着されるピストン6eの外周部は図10のトルクコンバータ1bと同じである。従って、ピストン6eの内周に溶着されたシール107はボス30の外周部との間に径方向に一定の間隔を保って軸方向に1mm前後の移動代を有して摺動される。図12はトルクコンバータ1bに適用した例であるが、前述した流体継手1aにも適用できる。
図7及び図10のトルクコンバータ1bに用いられるロックアップクラッチの摩擦部材の連結部を示す図13に於いて、X−X断面はフロントカバー3aの側面側から摩擦部材を透視したものであり、矢視Yはフロントカバー3aの上部から摩擦部材を透視したものである。ポンプインペラ2bの外周先端に設けられた複数の環状突起はX−X断面と矢視Yに示されるように円周方向に等分となるとともに軸方向に平行にフロントカバー3aの方に突き出された形状をしており、円周方向の開口部にはエンドプレート8とピストン6aの半径方向の突起が嵌合して回り止めされている。この開口部より少しフロントカバー3aの側面側に位置した所で環状突起部の内径がフロントカバー3aの側面側に段付きとなるよう大径に加工されており、エンドプレート8はこの段付き部に当接しポンプインペラ2b側への移動が規制される。ポンプインペラ2bの環状突起部の外径とフロントカバー3aの内径部はほぼ同一径であり、環状突起部の遠心力による変形をフロントカバー3aが防いでくれる。ピストン6aは円周方向の開口部に嵌合する突起部の外径がフロントカバー3aの内径部に沿うかあるいは凹部の外径がフロントカバー3aの環状突起内径部に沿う寸法に加工されており、半径方向に芯を出しポンプインペラ2bの突起部に回り止めされて軸方向に移動可能に配される。ピストン6aの半径方向の芯出しは摺動面に於いてシール100及び101に一定の径方向の弾性代を設けるためである。ドライブプレート7bはピストン6aとエンドプレート8に挟まれて回転自在に配され、両サイドには潤滑溝が形成された摩擦材が貼り付けられている。尚、このポンプインペラ2bの環状突起部は本発明の入力継手となる流体継手1aとトルクコンバータ1bに共通した形状であり、摩擦部材の連結方法も同じとなる。
ピストン6aに溶着されたシール部材の摺動部に於ける油室Aから油室Bへの油の逆止作用を図解により示した図14に於いて、油室Aより油室Bの油圧が高くなるロックアップオン状態では外周側シール100は油室Aの外周側油圧から内周側へ作用する力より油室Bの内周側油圧から外周側へ作用する力の方が大きいため摺動面となるフロントカバー3aに押し付けられて油室Bと油室Aを分離し、内周側シール101は油室Aの内周側油圧から外周側へ作用する力より油室Bの外周側油圧から内周側へ作用する力の方が大きいため摺動面となる入力軸60に押し付けられて油室Bと油室Aを分離する。又、油室Bより油室Aの油圧が高くなるロックアップオフ状態では外周側シール100は油室Bの内周側油圧から外周側へ作用する力より油室Aの外周側油圧から内周側へ作用する力の方が大きいため内周側に弾性変形をして摺動面となるフロントカバー3aとの間に隙間ができ油室Aから油室Bに油が流れ込み、内周側シール101は油室Bの外周側油圧から内周側へ作用する力より油室Aの内周側油圧から外周側へ作用する力の方が大きいため外周側に弾性変形をして摺動面となる入力軸60との間に隙間ができ油室Aから油室Bに油が流れ込む。図14はシール100と101について説明したものであるが、シール部材がピストンに溶着されない102、103及び薄肉のピストンに溶着される104,105のシールにおいても同じ作動をする。