JP2006348863A - 内燃機関の始動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関の始動装置において、自己着火を抑制して始動性の向上を図る。
【解決手段】エンジン10の始動時に、膨張行程で停止している気筒に対してインジェクタ41により燃料噴射を実行すると共に、点火プラグ45により点火を実行し、この膨張行程で停止している気筒に続く圧縮行程で停止している気筒に対してインジェクタ41により燃料噴射を実行すると共に、点火プラグ45により圧縮TDC近傍で点火を実行することでエンジン10を始動可能とし、エンジン冷却水温が所定温度以上であるときには、圧縮行程で停止している気筒に対する燃料噴射時期を遅角する。
【選択図】 図1
【解決手段】エンジン10の始動時に、膨張行程で停止している気筒に対してインジェクタ41により燃料噴射を実行すると共に、点火プラグ45により点火を実行し、この膨張行程で停止している気筒に続く圧縮行程で停止している気筒に対してインジェクタ41により燃料噴射を実行すると共に、点火プラグ45により圧縮TDC近傍で点火を実行することでエンジン10を始動可能とし、エンジン冷却水温が所定温度以上であるときには、圧縮行程で停止している気筒に対する燃料噴射時期を遅角する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、膨張行程にある気筒に対して燃料噴射及び点火を行って燃焼させ、その燃焼エネルギにより内燃機関を始動させる内燃機関の始動装置に関するものである。
近年、排気ガス対策や燃費向上などの手法として、車両がアイドル状態で停止しているときにエンジンを自動的に停止させ、発進時に自動的に再始動して円滑に発進させるようにした技術が各種提案されている。この場合、エンジンの再始動に時間が掛かるとドライバの発進意思に対してレスポンスが遅れてドライバビリティが悪化するため、素早く再始動させることが重要である。ところが、エンジンを始動する場合、一般にスタータモータを用いており、このエンジンを素早く再始動させることが困難である。また、頻繁にエンジンの停止と始動を繰り返すことで、このスタータモータや周辺部品の寿命低下、また、バッテリーの使用過多による充電量の低下などを招いてしまう。
そこで、例えば、下記特許文献1では、燃料を吸気ポートではなく燃焼室に直接噴射する筒内噴射式のエンジンにて、膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火することで燃焼させ、その爆発力によりエンジンを始動可能としている。この特許文献1に記載された「エンジンの始動装置」は、筒内噴射式エンジンにて、エンジンの再始動開始時点からスタータを作動させると共に、圧縮行程にある気筒を、その圧縮行程の終期以降に燃焼させるように燃料噴射及び点火のタイミングを制御し、且つ、エンジンの再始動時に気筒内の空気温度が基準温度よりも高い場合に、エンジン停止時に吸気行程にある気筒の燃焼を抑制するようにしたものである。
上述したように、停止状態にあるエンジンを再始動する場合、膨張行程にある気筒に対して燃料噴射と点火を行って燃焼させることで、爆発力を得てエンジンに回転力を与え、続いて、圧縮行程にある気筒、吸気行程にある気筒が所定の位置まで回転したときに燃料噴射と点火を行って燃焼させ、その後、通常の燃料噴射と点火を行ってエンジンを再始動させる。ところが、このエンジンの再始動時に、気筒内の空気温度が高温である場合には、所定の気筒に燃料を噴射した後、所定の点火時期に至る前に自己着火が発生して十分な始動トルクを得ることができないことがある。
上述した従来のエンジンの始動装置では、エンジンの再始動時に、気筒内の空気温度が基準温度よりも高い場合には、エンジン停止時に吸気行程にある気筒の燃焼を抑制、つまり、吸気行程にある気筒への燃料噴射及び点火を中止するようにしている。しかし、吸気行程にある気筒の燃焼を抑制したり、燃料噴射及び点火を中止したりすると、スタータに大きな負荷が作用して消費電力が増大したり、耐久性が低下してしまうという問題がある。また、自己着火しやすい気筒は、吸気行程で停止している気筒ばかりでなく、圧縮行程で停止している気筒も自己着火する可能性があり、適正な始動性が確保されていない。
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、自己着火を抑制して始動性の向上を図った内燃機関の始動装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の内燃機関の始動装置は、燃焼室と、該燃焼室に連通する吸気ポート及び排気ポートと、前記吸気ポート及び前記排気ポートを開閉する吸気弁及び排気弁と、前記燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射手段と、前記燃焼室内の混合気に点火する点火手段と、内燃機関のクランク角度を検出するクランク角度検出手段と、前記クランク角度検出手段の検出結果に基づいて膨張行程にある気筒に対して前記燃料噴射手段による燃料噴射と前記点火手段による点火を実行すると共に前記膨張行程にある気筒に続く後続気筒に対して前記燃料噴射手段による燃料噴射と前記点火手段による圧縮上死点近傍での点火を実行する着火始動手段と、前記内燃機関の温度を検出する温度検出手段と、前記内燃機関の始動時に前記着火始動手段を作動すると共に前記温度検出手段の検出結果に基づいて前記内燃機関の温度が予め設定された所定温度以上にあるときには前記後続気筒に対する燃料噴射時期を遅角する制御手段とを具えたことを特徴とするものである。
本発明の内燃機関の始動装置では、前記制御手段は、前記膨張行程にある気筒に続く圧縮行程にある気筒の停止位置が圧縮行程の後半にあるときには、前記内燃機関の温度に拘らず所定の時期に燃料噴射を実行する一方、前記圧縮行程にある気筒の停止位置が圧縮行程の前半にあり、且つ、前記内燃機関の温度が前記所定温度以上にあるときに、燃料噴射時期を圧縮上死点近傍に遅角することを特徴としている。
本発明の内燃機関の始動装置では、前記制御手段は、前記圧縮行程にある気筒に続く吸気行程にある気筒の停止位置が吸気行程の後半にあり、且つ、前記内燃機関の温度が前記所定温度以上にあるときには、前記吸気行程にある気筒に対する燃料噴射時期を遅角することを特徴としている。
本発明の内燃機関の始動装置では、前記制御手段は、前記内燃機関の始動時に前記着火始動手段を作動すると共に、前記温度検出手段の検出結果に基づいて前記内燃機関の温度が予め設定された第1所定温度以上にあるときには、後続行程にある気筒に対する燃料噴射時期を圧縮上死点手前に遅角し、前記内燃機関の温度が前記第1所定温度より高い第2所定温度以上にあるときには、前記後続行程にある気筒に対する燃料噴射時期を圧縮上死点以降の膨張行程に遅角することを特徴としている。
本発明の内燃機関の始動装置では、前記制御手段は、前記圧縮行程にある気筒または前記吸気行程にある気筒に対する燃料噴射時期を遅角したとき、それに続く後続気筒に対する燃料噴射時期を所定時期に戻すことを特徴としている。
本発明の内燃機関の始動装置によれば、内燃機関の始動時に、着火始動手段を作動して、膨張行程にある気筒に対して燃料噴射及び点火を実行すると共に、膨張行程にある気筒に続く後続気筒に対して燃料噴射及び圧縮上死点近傍での点火を実行し、このとき、内燃機関の温度が予め設定された温度以上にあるときには後続気筒に対する燃料噴射時期を遅角するようにしたので、膨張行程にある気筒に燃料噴射及び点火を実行して燃焼することで爆発力を得て、エンジンが再始動し始めると、膨張行程にある気筒に続く後続気筒、例えば、圧縮行程にある気筒や吸気行程にある気筒に対して続いて燃料噴射及び点火を実行するが、機関温度が高いときには、圧縮行程で噴射した燃料が自己着火しやすいため、このときは燃料噴射時期を上死点近傍まで遅角することで、この自己着火が抑制されることとなり、始動性を向上することができる。
以下に、本発明に係る内燃機関の始動装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、本発明の実施例1に係る内燃機関の始動装置を表す概略構成図、図2は、実施例1の内燃機関の始動装置におけるエンジン停止制御および始動制御を表すフローチャート、図3は、実施例1の内燃機関の始動装置におけるエンジン停止時の気筒内挙動を表す概略図、図4は、圧縮行程の後半で停止した気筒に対する燃料噴射時期及び点火時期を表す概略図、図5は、圧縮行程の前半で停止した気筒に対する燃料噴射時期及び点火時期を表す概略図である。
実施例1の内燃機関の始動装置が適用されたエンジンにおいて、図1に示すように、この内燃機関としてのエンジン10は4気筒筒内噴射式であって、シリンダブロック11上にシリンダヘッド12が締結されており、このシリンダブロック11に形成された複数のシリンダボア13にピストン14がそれぞれ上下移動自在に嵌合している。そして、シリンダブロック11の下部にクランクケース15が締結され、このクランクケース15内にクランクシャフト16が回転自在に支持されており、各ピストン14はコネクティングロッド17を介してこのクランクシャフト16にそれぞれ連結されている。
燃焼室18は、シリンダブロック11とシリンダヘッド12とピストン14により構成されており、この燃焼室18は、上部(シリンダヘッド12の下面)の中央部が高くなるように傾斜したペントルーフ形状をなしている。そして、この燃焼室18の上部、つまり、シリンダヘッド12の下面に吸気ポート19及び排気ポート20が対向して形成されており、この吸気ポート19及び排気ポート20に対して吸気弁21及び排気弁22の下端部がそれぞれ位置している。この吸気弁21及び排気弁22は、シリンダヘッド12に軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、吸気ポート19及び排気ポート20を閉止する方向に付勢支持されている。また、シリンダヘッド12には、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転自在に支持されており、吸気カム25及び排気カム26が図示しないローラロッカアームを介して吸気弁21及び排気弁22の上端部に接触している。
従って、エンジン10に同期して吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転すると、吸気カム25及び排気カム26がローラロッカアームを作動させ、吸気弁21及び排気弁22が所定のタイミングで上下移動することで、吸気ポート19及び排気ポート20を開閉し、吸気ポート19と燃焼室18、燃焼室18と排気ポート20とをそれぞれ連通することができる。
また、このエンジン10の動弁機構は、運転状態に応じて吸気弁21及び排気弁22を最適な開閉タイミングに制御する吸気・排気可変動弁機構(VVT:Variable Valve Timing-intelligent)27,28となっている。この吸気・排気可変動弁機構27,28は、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24の軸端部にVVTコントローラ29,30が設けられて構成され、オイルコントロールバルブ31,32からの油圧をこのVVTコントローラ29,30の図示しない進角室及び遅角室に作用させることによりカムスプロケットに対するカムシャフト23,24の位相を変更し、吸気弁21及び排気弁22の開閉時期を進角または遅角することができるものである。この場合、吸気・排気可変動弁機構27,28は、吸気弁21及び排気弁22の作用角(開放期間)を一定としてその開閉時期を進角または遅角する。また、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24には、その回転位相を検出するカムポジションセンサ33,34が設けられている。
吸気ポート19には、インテークマニホールド35を介してサージタンク36が連結され、このサージタンク36に吸気管37が連結されており、この吸気管37の空気取入口にはエアクリーナ38が取付けられている。そして、このエアクリーナ38の下流側にスロットル弁39を有する電子スロットル装置40が設けられている。また、シリンダヘッド12には、燃焼室18に直接燃料を噴射するインジェクタ41が装着されており、このインジェクタ41は、吸気ポート19側に位置して上下方向に所定角度傾斜している。各気筒に装着されるインジェクタ41はデリバリパイプ42により連結され、このデリバリパイプ42には燃料供給管43を介して高圧ポンプ44が連結され、この高圧ポンプ44には図示しない燃料供給管を介して低圧ポンプ、燃料タンクが連結されている。更に、シリンダヘッド12には、燃焼室18の上方に位置して混合気に着火する点火プラグ45が装着されている。本実施例では、このインジェクタ41と点火プラグ45により本発明の着火始動手段が構成される。
一方、排気ポート20には、エギゾーストマニホールド46を介して排気管47が連結されており、この排気管47には排気ガス中に含まれるHC、CO、NOxなどの有害物質を浄化処理する触媒装置48,49が装着されている。また、エンジン10には、クランキングを行うスタータモータ50が設けられており、エンジン始動時に図示しないピニオンギヤがリングギヤと噛み合った後、回転力がピニオンギヤからリングギヤへと伝わり、クランクシャフト16を回転することができる。
ところで、車両には電子制御ユニット(ECU)51が搭載されており、このECU51は、インジェクタ41や点火プラグ45などを制御可能となっている。即ち、吸気管37の上流側にはエアフローセンサ52及び吸気温センサ53が装着され、また、サージタンク36には吸気圧センサ54が設けられており、計測した吸入空気量、吸気温度、吸気圧(吸気管負圧)をECU51に出力している。また、電子スロットル装置40にはスロットルポジションセンサ55が装着されており、現在のスロットル開度をECU51に出力しており、アクセルポジションセンサ56は、現在のアクセル開度をECU51に出力している。更に、クランク角センサ57は、検出した各気筒のクランク角度をECU51に出力し、このECU51は検出したクランク角度に基づいて各気筒における吸気、圧縮、膨張(爆発)、排気の各行程を判別すると共に、エンジン回転数を算出している。また、シリンダブロック11にはエンジン冷却水温を検出する水温センサ58が設けられており、検出したエンジン冷却水温をECU51に出力している。また、各インジェクタ41に連通するデリバリパイプ42には燃圧センサ59が設けられており、検出した燃料圧力をECU51に出力している。
従って、ECU51は、検出した燃料圧力に基づいてこの燃料圧力が所定圧力となるように高圧ポンプ44を駆動すると共に、検出した吸入空気量、吸気温度、吸気圧、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、エンジン冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量、噴射時期、点火時期などを決定し、インジェクタ41及び点火プラグ45を駆動して燃料噴射及び点火を実行する。
また、ECU51は、エンジン運転状態に基づいて吸気・排気可変動弁機構27,28を制御可能となっている。即ち、低温時、エンジン始動時、アイドル運転時や軽負荷時には、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップをなくすことで、排気ガスが吸気ポート19または燃焼室18に吹き返す量を少なくし、燃焼安定及び燃費向上を可能とする。また、中負荷時には、このオーバーラップを大きくすることで、内部EGR率を高めて排ガス浄化効率を向上させると共に、ポンピングロスを低減して燃費向上を可能とする。更に、高負荷低中回転時には、吸気弁21の閉止時期を進角することで、吸気が吸気ポート19に吹き返す量を少なくし、体積効率を向上させる。そして、高負荷高回転時には、吸気弁21の閉止時期を回転数にあわせて遅角することで、吸入空気の慣性力に合わせたタイミングとし、体積効率を向上させる。
このように構成されたエンジン10にあっては、車両がアイドル状態で停止しているときにこのエンジン10を自動的に停止させるエンジン自動停止機能と、エンジン10が自動停止しているときに発進指令により自動的に再始動させるエンジン再始動機能を有している。そして、本実施例では、エンジン10の再始動時に、スタータモータ50を使用するのに加えて、筒内噴射機構を用いてエンジン10を着火始動するようにしている。
即ち、制御手段としてのECU51は、エンジン10の停止後に、クランク角センサ57の検出結果に基づいてピストン14が膨張行程で停止している気筒を判別する。そして、エンジン10の再始動時に、この膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射し、混合気に点火することで燃焼させて爆発力を得て、この爆発力によりピストン14を移動してクランクシャフト16を駆動し、続いてスタータモータ50を駆動することでクランクシャフト16に駆動力を付与してエンジン10を再始動する。
本実施例の場合、エンジン10が筒内噴射式の4気筒直列型であるため、図3に示すように、例えば、第1気筒#1が上死点(TDC)を越えて膨張行程で停止したとき、続く第3気筒#3は圧縮行程で停止し、更に続く気筒(図示略)は吸気行程で停止している。このエンジン10の停止状態から、膨張行程で停止している第1気筒#1に対して燃料噴射と点火を実行して燃焼させて爆発力を得て、この第1気筒#1の爆発力によりピストン14を押し下げる。そして、この膨張行程で停止している第1気筒#1に対して燃料噴射と点火を実行することで燃焼させた後、スタータモータ50を駆動することで、第1気筒#1の爆発力とスタータモータ50の駆動力によりピストン14を介してクランクシャフト16を駆動する。
すると、このクランクシャフト16の駆動力が、第1気筒#1の続く圧縮行程で停止している第3気筒#3のピストン14に伝達されてこれを押し上げる。続いて、この圧縮行程で停止している第3気筒#3では、ピストン14が上昇して燃焼室18内の空気が圧縮されると、燃料噴射と点火を実行して燃焼させて爆発力を得て、この第3気筒#3の爆発力によりピストン14を押し下げる。更に、第3気筒#3の続く吸気行程で停止している気筒では、ピストン14が上昇して燃焼室18内の空気が圧縮されると、燃料噴射と点火を実行して燃焼させて爆発力を得て、その爆発力によりピストン14を押し下げる。そして、この吸気行程で停止している気筒に続く各気筒に対して同様に燃料噴射と点火を繰り返し実行することで、エンジン10が再始動される。
また、本実施例では、エンジン10を再始動するとき、膨張行程、圧縮行程、吸気行程などで停止している気筒に対して所定のクランク角度で燃料噴射と点火を継続して行って燃焼させるが、圧縮行程で停止している気筒内の空気温度が高温である場合には、この気筒に燃料を噴射した後、所定の点火時期に至る前に自己着火して十分な始動トルクを得ることができないことがある。
そこで、本実施例では、ECU51は、エンジン10の再始動時に、温度検出手段としての水温センサ58の検出結果に基づいて、エンジン冷却水温が予め設定された温度以上にあるときには、膨張行程で停止している気筒に続く後続気筒、つまり、圧縮行程で停止している気筒に対する燃料噴射時期を遅角するようにしている。この場合、圧縮行程で停止している気筒では、その停止位置が圧縮行程の前半にあり、且つ、エンジン冷却水温が予め設定された温度以上にあるときには、圧縮行程で停止している気筒に対する燃料噴射時期を遅角するようにしている。
即ち、図4に示すように、第1気筒#1が膨張行程の後半で停止し、続く第3気筒#3は圧縮行程の後半で停止しているときは、第1気筒#1の爆発力により回転が開始された直後に燃料を噴射し、TDC近傍で点火する。この場合、第3気筒#3の実圧縮比が小さいため、エンジン10が高温であっても、噴射燃料が自己着火することがほとんどないため、燃料噴射時期を遅角する必要はない。
一方、図5に示すように、第1気筒#1が膨張行程の前半で停止し、続く第3気筒#3は圧縮行程の前半で停止しているときは、第1気筒#1の爆発力により回転が開始された直後ではなく、TDCの手前で燃料を噴射し、その後に点火する。この場合、回転が開始された直後の第3気筒#3に燃料を噴射すると、この第3気筒#3の実圧縮比が大きいため、エンジン10が高温であると、噴射燃料が高温高圧となって自己着火しやすくなるため、燃料噴射時期を遅角する必要がある。
ここで、上述した実施例1の内燃機関の始動装置における停止制御及び再始動制御について、図2のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、ステップS1にて、ECU51は、車両の運転中にエンジン10の自動停止条件が成立したかどうかを判定する。ここで、エンジン10の自動停止とは、アイドル運転中にエンジンを停止する、所謂、アイドルストップである。この場合、エンジン10の自動停止条件とは、例えば、車速が0km/h、ブレーキスイッチがON状態、シフトレバーの操作位置がニュートラル(N)位置であることが所定時間継続したことであり、このとき、車両は赤信号灯で停車していると判断して自動停止条件が成立したと判定する。なお、車両の減速中にエンジン10を停止しても良く、この場合、エンジン10の自動停止条件とは、車速が一定速度以下、エンジン回転数が一定回転以下、エンジン冷却水温が一定温度以下、冷暖房装置がOFF状態であり、このとき、車両は減速中であると判断して自動停止条件が成立したと判定する。
このステップS1にて、エンジン10の自動停止条件が成立したと判定されると、ステップS2に移行し、ここで、ECU51は、エンジン10を停止する。即ち、インジェクタ41による燃料噴射を停止すると共に、点火プラグ45による点火を停止する。
その後、ステップS3では、エンジン10が自動停止している状態で、エンジン再始動条件が成立したかどうかを判定する。ここで、エンジン10の再始動条件とは、例えば、車速が0km/h、ブレーキスイッチがON状態、シフトレバーの操作位置が走行(1、2、D、R)位置であるときに、ドライバに発進する意思があると判断して再始動条件が成立したと判定する。このステップS3にて、エンジン10の再始動条件が成立したと判定されると、ステップS4以降でエンジン10の着火始動を実行する。
即ち、ステップS4にて、エンジン10の再始動前に、クランク角センサ57の検出結果に基づいて膨張行程で停止している気筒を判別する。そして、ステップS5にて、ECU51は、圧縮行程で停止している気筒が、この圧縮行程の前半で停止しているかどうかを判定する。ここで、圧縮行程で停止している気筒がこの圧縮行程の前半で停止していないと判定されたら、圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期を遅角する設定をせずにステップS8に移行する。一方、ステップS5で、圧縮行程で停止している気筒がこの圧縮行程の前半で停止していると判定されたら、ステップS6に移行する。
このステップS6にて、ECU51は、水温センサ58が検出したエンジン冷却水温が予め設定された所定温度以上かどうかを判定する。ここで、エンジン冷却水温が所定温度以上でないと判定されたら、圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期を遅角する設定をせずにステップS8に移行する。一方、エンジン冷却水温が所定温度以上であると判定されたら、ステップS7にて、圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期を遅角する設定をした後、ステップS8に移行する。
このようにステップS5、S6、S7の処理にて、圧縮行程で停止している気筒がこの圧縮行程の前半で停止し、且つ、エンジン冷却水温が所定温度以上であるときに、この圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期を遅角する設定を行ってからステップS8に移行する。そして、ステップS8にて、この膨張行程で停止している気筒の燃焼室18に対してインジェクタ41により所定量の燃料を噴射した後、点火プラグ45により混合気に点火することで、この気筒は燃焼を開始して爆発力を得てピストン14を下降させる。続いて、ステップS9では、圧縮行程で停止している気筒が始動した直後にスタータモータ50による始動を開始する。
そして、膨張行程で停止している気筒が燃焼を開始すると共にスタータモータ50が駆動し、この気筒のピストン14が下降すると、クランクシャフト16が回転し、この回転力が膨張行程で停止している気筒に続く気筒、つまり、圧縮行程で停止している気筒に伝達され、この圧縮行程で停止している気筒のピストン14が上昇して圧縮行程が開始される。ステップS10では、この圧縮行程で停止している気筒が所定の時期に、インジェクタ41により所定量の燃料を噴射した後、点火プラグ45により混合気に点火することで、この気筒は燃焼を開始して爆発力を得てピストン14を下降させる。
この圧縮行程で停止している気筒に対して、インジェクタ41により燃料噴射を実行するとき、この気筒が圧縮行程の後半で停止していたり、エンジン冷却水温が所定温度より低いときには、この圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期が遅角するように設定されていないため、膨張行程で停止している気筒の爆発力により回転が開始された直後に燃料を噴射し、TDC近傍で点火する。
一方、圧縮行程で停止している気筒がこの圧縮行程の前半で停止し、且つ、エンジン冷却水温が所定温度以上であるとき、この圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期が遅角するように設定されているため、膨張行程で停止している気筒の爆発力により回転が開始されてピストン14がTDCの手前に位置したときに燃料を噴射し、その後に点火する。従って、TDC近傍で燃料噴射と点火が連続して行われることとなり、圧縮行程中に、高温高圧となった混合気が自己着火するのを防止することができる。その後、ステップS11にて、燃料噴射時期をエンジン10の運転状態に応じた所定の時期に戻す。
そして、ステップS12にて、膨張行程、圧縮行程で停止している気筒に続く各気筒に対して、通常通りに吸気ポート19から空気を吸入し、インジェクタ41から所定量の燃料を噴射すると共に、点火プラグ45により混合気に点火することで燃焼し、爆発力を得てピストン14を下降させることとなる。従って、各気筒での爆発力が所定時間継続されると共に、スタータモータ50から付与される駆動力によりエンジン10が再始動される。
その後、ステップS13では、エンジン回転数が始動回転数以上まで上昇したかどうかを判定し、エンジン回転数が始動回転数以上となったらステップS14に移行し、スタータモータ50により始動を終了し、エンジン10は適正に再始動される。
このように実施例1の内燃機関の始動装置にあっては、エンジン10の始動時に、膨張行程で停止している気筒に対してインジェクタ41により燃料噴射を実行すると共に、点火プラグ45により点火を実行し、この膨張行程で停止している気筒に続く気筒、つまり、圧縮行程で停止している気筒に対してインジェクタ41により燃料噴射を実行すると共に、点火プラグ45により圧縮TDC近傍で点火を実行することでエンジン10を始動可能とし、エンジン冷却水温が所定温度以上であるときには、圧縮行程で停止している気筒に対する燃料噴射時期を遅角するようにしている。
従って、膨張行程で停止している気筒に燃料噴射及び点火を実行して燃焼することで爆発力を得て、エンジン10が再始動し始めると、膨張行程で停止している気筒に続く後続気筒、つまり、圧縮行程で停止している気筒に対して燃料噴射及び点火を実行するが、エンジン冷却水温が所定温度以上であるときには、この圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期が遅角されるため、膨張行程で停止している気筒の爆発力により回転が開始されてピストン14がTDCの手前に位置したときに燃料を噴射し、その後に点火することとなり、圧縮行程中に高温高圧の混合気が自己着火するのを防止することができ、エンジン10の始動性を向上することができる。
また、実施例1にあっては、圧縮行程で停止している気筒がこの膨張行程の前半で停止し、且つ、エンジン冷却水温が所定温度以上であるときには、圧縮行程で停止している気筒に対する燃料噴射時期を遅角するようにしている。従って、圧縮行程で停止している気筒に噴射された燃料噴霧が、圧縮行程中に高温高圧になって自己着火するのを確実に防止することができる。
また、本実施例では、圧縮行程で停止している気筒に対する燃料噴射時期を遅角したとき、それに続く後続気筒に対する燃料噴射時期をエンジン運転状態に応じた所定の燃料噴射時期に戻すようにしている。従って、圧縮行程で停止している気筒に続く後続気筒の燃焼悪化を防止することができる。
図6は、本発明の実施例2に係る内燃機関の始動装置におけるエンジン停止制御及び始動制御を表すフローチャート、図7は、圧縮行程の前半で停止した気筒に対する燃料噴射時期及び点火時期を表す概略図である。なお、本実施例の内燃機関の始動装置における全体構成は、上述した実施例1とほぼ同様であり、図1を用いて説明すると共に、この実施例1で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施例2の内燃機関の始動装置にあっては、前述した実施例1と同様に図1に示すように、車両がアイドル状態で停止しているときにこのエンジン10を自動的に停止させるエンジン自動停止機能と、エンジン10が自動停止しているときに発進指令により自動的に再始動させるエンジン再始動機能を有している。即ち、このECU51は、エンジン10の停止後に、ピストン14が膨張行程で停止している気筒を判別し、エンジン10の再始動時に、この膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射し、混合気に点火することで燃焼させて爆発力を得て、この爆発力によりピストン14を移動してクランクシャフト16を駆動し、続いてスタータモータ50を駆動することでクランクシャフト16に駆動力を付与してエンジン10を再始動する。
また、本実施例では、エンジン10の再始動時に、水温センサ58の検出結果に基づいて、エンジン冷却水温が予め設定された第1温度以上にあるときには、膨張行程で停止している気筒に続く後続気筒、つまり、圧縮行程で停止している気筒に対する燃料噴射時期を圧縮上死点手前に遅角し、エンジン冷却水温が予め設定された第2温度以上にあるときには、この圧縮行程で停止している気筒に対する燃料噴射時期を圧縮上死点以降の膨張行程に遅角するようにしている。この場合、圧縮行程で停止している気筒では、その停止位置が圧縮行程の前半にあるとき、エンジン冷却水温が第1温度以上であると、圧縮行程で停止している気筒に対する燃料噴射時期を圧縮上死点手前に遅角し、エンジン冷却水温が第1温度より高い第2温度以上であると、この気筒に対する燃料噴射時期を圧縮上死点以降の膨張行程手前に遅角するようにしている。
即ち、図7に示すように、例えば、第1気筒#1が膨張行程の前半で停止し、続く第3気筒#3は圧縮行程の前半で停止しているとき、エンジン冷却水温が第1温度以上であると、第1気筒#1の爆発力により回転が開始された直後ではなく、TDCの手前で燃料を噴射し、その後に点火する。この場合、回転が開始された直後の第3気筒#3に燃料を噴射すると、この第3気筒#3に燃料が噴射されてからTDCまでの期間が長く、エンジン10が高温であると、噴射燃料が高温高圧となって自己着火しやすくなるため、燃料噴射時期を点火時期の手前まで遅角する必要がある。
また、第1気筒#1が膨張行程の前半で停止し、続く第3気筒#3は圧縮行程の前半で停止しているとき、エンジン冷却水温が第2温度以上であると、TDC以降の膨張行程で燃料を噴射し、その後に点火する。この場合、エンジン10が極高温であると、膨張行程の後半で燃料を噴射しても、この噴射燃料が直ちに高温高圧となって自己着火しやすくなるため、燃料噴射時期を気筒内の温度と圧力が低下した膨張行程まで遅角する必要がある。
ここで、上述した実施例2の内燃機関の始動装置における停止制御及び再始動制御について、図6のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
図1及び図6に示すように、ステップS21にて、ECU51は、車両の運転中にエンジン10の自動停止条件が成立したかどうかを判定する。このステップS21にて、エンジン10の自動停止条件が成立したと判定されると、ステップS22に移行し、ここで、ECU51は、インジェクタ41による燃料噴射と点火プラグ45による点火を停止し、エンジン10を停止する。
その後、ステップS23では、エンジン10が自動停止している状態で、エンジン再始動条件が成立したかどうかを判定する。このステップS23にて、エンジン10の再始動条件が成立したと判定されると、ステップS24以降でエンジン10の着火始動を実行する。
即ち、ステップS24にて、クランク角センサ57の検出結果に基づいて膨張行程で停止している気筒を判別する。そして、ステップS25にて、ECU51は、圧縮行程で停止している気筒が、この圧縮行程の前半で停止しているかどうかを判定する。ここで、圧縮行程で停止している気筒がこの圧縮行程の前半で停止していないと判定されたら、圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期を遅角する設定をせずにステップS30に移行する。一方、ステップS25で、圧縮行程で停止している気筒がこの圧縮行程の前半で停止していると判定されたら、ステップS26に移行する。
このステップS26にて、ECU51は、水温センサ58が検出したエンジン冷却水温が予め設定された第1所定温度以上かどうかを判定する。ここで、エンジン冷却水温が第1所定温度以上でないと判定されたら、圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期を遅角する設定をせずにステップS30に移行する。一方、エンジン冷却水温が第1所定温度以上であると判定されたら、ステップS27に移行する。このステップS27にて、ECU51は、水温センサ58が検出したエンジン冷却水温が予め設定された第2所定温度以上かどうかを判定する。ここで、エンジン冷却水温が第2所定温度以上でないと判定されたら、ステップS28にて、圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期をTDC手前に遅角する設定をした後、ステップS30に移行する。一方、エンジン冷却水温が第2所定温度以上であると判定されたら、ステップS29にて、圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期をTDC以降の膨張行程に遅角する設定をした後、ステップS30に移行する。なお、このとき、燃料噴射時期の遅角に合わせて点火時期も遅角する。
このようにステップS25〜S29の処理にて、圧縮行程で停止している気筒がこの圧縮行程の前半で停止し、且つ、エンジン冷却水温が第1所定温度以上で第2所定温度未満であるときに、この圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期をTDC手前に遅角する設定を行ってからステップS30に移行する。また、圧縮行程で停止している気筒がこの圧縮行程の前半で停止し、且つ、エンジン冷却水温が第2所定温度以上であるときに、この圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期をTDC以降の膨張行程に遅角する設定を行ってからステップS30に移行する。そして、ステップS30にて、この膨張行程で停止している気筒の燃焼室18に対してインジェクタ41により所定量の燃料を噴射した後、点火プラグ45により混合気に点火することで、この気筒は燃焼を開始して爆発力を得てピストン14を下降させる。続いて、ステップS31では、圧縮行程で停止している気筒が始動した直後にスタータモータ50による始動を開始する。
そして、膨張行程で停止している気筒が燃焼を開始すると共にスタータモータ50が駆動し、この気筒のピストン14が下降すると、クランクシャフト16が回転し、この回転力が膨張行程で停止している気筒に続く気筒、つまり、圧縮行程で停止している気筒に伝達され、この圧縮行程で停止している気筒のピストン14が上昇して圧縮行程が開始される。ステップS32では、この圧縮行程で停止している気筒が所定時期にに、インジェクタ41により所定量の燃料を噴射した後、点火プラグ45により混合気に点火することで、この気筒は燃焼を開始して爆発力を得てピストン14を下降させる。
この圧縮行程で停止している気筒に対して、インジェクタ41により燃料噴射を実行するとき、この気筒が圧縮行程の後半で停止していたり、エンジン冷却水温が第1所定温度より低いときには、この圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期が遅角するように設定されていないため、膨張行程で停止している気筒の爆発力により回転が開始された直後に燃料を噴射し、TDC近傍で点火する。
一方、圧縮行程で停止している気筒がこの圧縮行程の前半で停止し、且つ、エンジン冷却水温が第1所定温度以上で第2所定温度未満であるときに、この圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期がTDC手前に遅角するように設定されているため、膨張行程で停止している気筒の爆発力により回転が開始されてピストン14がTDCの手前に位置したときに燃料を噴射し、その後に点火する。従って、エンジン10が高温状態にあるときには、TDC近傍で燃料噴射と点火が連続して行われることとなり、圧縮行程中に、高温高圧となった混合気が自己着火するのを防止することができる。
また、圧縮行程で停止している気筒がこの圧縮行程の前半で停止し、且つ、エンジン冷却水温が第2所定温度以上であるときに、この圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期がTDC以降の膨張行程に遅角するように設定されているため、膨張行程で停止している気筒の爆発力により回転が開始されてピストン14がTDC以降の膨張行程に位置したときに燃料を噴射し、その後に点火する。従って、エンジン10が極高温状態にあるときには、TDC以降の膨張行程で温度と圧力が低下した気筒内に燃料噴射と点火が行われることとなり、圧縮行程中に、高温高圧となった混合気が自己着火するのを防止することができる。
その後、ステップS33にて、燃料噴射時期と点火時期をエンジン10の運転状態に応じた所定の時期に戻す。そして、ステップS34にて、膨張行程、圧縮行程で停止している気筒に続く各気筒に対して、通常通りに吸気ポート19から空気を吸入し、インジェクタ41から所定量の燃料を噴射すると共に、点火プラグ45により混合気に点火することで燃焼し、爆発力を得てピストン14を下降させることとなる。従って、各気筒での爆発力が所定時間継続されると共に、スタータモータ50から付与される駆動力によりエンジン10が再始動される。
その後、ステップS35では、エンジン回転数が始動回転数以上まで上昇したかどうかを判定し、エンジン回転数が始動回転数以上となったらステップS36に移行し、スタータモータ50により始動を終了し、エンジン10は適正に再始動される。
このように実施例2の内燃機関の始動装置にあっては、エンジン10の始動時に、膨張行程で停止している気筒に対してインジェクタ41により燃料噴射を実行すると共に、点火プラグ45により点火を実行し、この膨張行程で停止している気筒に続く気筒、つまり、圧縮行程で停止している気筒に対してインジェクタ41により燃料噴射を実行すると共に、点火プラグ45により圧縮TDC近傍で点火を実行することでエンジン10を始動可能とし、圧縮行程で停止している気筒がこの圧縮行程の前半で停止し、エンジン冷却水温が第1所定温度以上で第2所定温度未満であるときには、圧縮行程で停止している気筒に対する燃料噴射時期をTDC手前に遅角し、エンジン冷却水温が第2所定温度以上であるときには、圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期をTDC以降の膨張行程に遅角するようにしている。
従って、膨張行程で停止している気筒に燃料噴射及び点火を実行して燃焼することで爆発力を得て、エンジン10が再始動し始めると、膨張行程で停止している気筒に続く後続気筒、つまり、圧縮行程で停止している気筒に対して燃料噴射及び点火を実行するが、エンジン冷却水温が第2所定温度以上となったエンジン10の極高温状態のときには、この圧縮行程で停止している気筒の燃料噴射時期が膨張行程まで遅角されることとなり、温度と圧力の低下した気筒に燃料が噴射されることで、圧縮行程中に高温高圧の混合気が自己着火するのを防止することができ、エンジン10の始動性を向上することができる。
なお、上述した各実施例では、エンジン10を再始動するとき、膨張行程、圧縮行程、吸気行程で停止している気筒に対して所定のクランク角度で燃料噴射と点火を継続して行って燃焼させ、圧縮行程で停止している気筒がこの圧縮行程の前半で停止し、エンジン冷却水温が所定温度(第1所定温度)以上であるときに、この圧縮行程で停止している気筒に対する燃料噴射時期を遅角するようにしたが、圧縮行程で停止している気筒に続く吸気行程で停止している気筒の停止位置が吸気行程の後半にあり、且つ、エンジン冷却水温が予め設定された温度以上にあるときには、圧縮行程で停止している気筒に対する燃料噴射時期を遅角するようにしている。また、吸気行程で停止している気筒では、その停止位置が吸気行程の後半にあり、且つ、エンジン冷却水温が所定温度以上にあるときにも、吸気行程で停止している気筒に対する燃料噴射時期を遅角するようにしてもよい。
即ち、圧縮行程で停止している気筒に続く吸気行程で停止している気筒が、この吸気行程の前半で停止しているときは、まだ、吸気弁22が開いて新気が導入されるため、混合気が自己着火するような高温とはならず、燃料噴射時期を遅角する必要はない。一方、吸気行程で停止している気筒が、この吸気行程の後半で停止しているときは、既に、吸気弁22が閉じ始めて新気が十分に導入されないため、混合気が高温高圧となって自己着火しやすいため、燃料噴射時期を遅角する必要がある。
また、上述した各実施例では、エンジン10を再始動するときに、膨張行程で停止している気筒の燃焼室18に対して燃料を噴射すると共に、点火することで燃焼させるようにしている。この場合、停止クランク角度及びエンジン冷却水温、更に、クランクケース内圧に基づいて燃料噴射量を設定するとよい。即ち、停止クランク角度により燃焼室18の容積がわかり、エンジン冷却水温により空気密度がわかり、クランクケース内圧により筒内圧がわかるため、これらのデータにより最適な燃料噴射量を設定することができる。
また、上述した各実施例では、本発明の内燃機関の始動装置を、エンジン10が自動停止したときの再始動装置として適用したが、エンジン10が完全に停止した状態から、イグニッションキースイッチの操作により始動する始動装置としても適用することができる。
そして、上述した各実施例では、本発明の内燃機関の始動装置を筒内噴射式の4気筒エンジンに適用して説明したが、この形式のエンジンに限らず、6気筒エンジンや直列型またはV型エンジンに適用することもできる。
以上のように、本発明に係る内燃機関の始動装置は、始動時に膨張行程にある気筒に燃料噴射と点火を行って燃焼による爆発力で始動する内燃機関において、機関温度が予め設定された温度以上にあるときには後続気筒に対する燃料噴射時期を遅角することで、自己着火の発生を抑制するものであり、筒内噴射式の内燃機関であれば、いずれの種類の内燃機関に用いても好適である。
10 エンジン
14 ピストン
16 クランクシャフト
18 燃焼室
19 吸気ポート
20 排気ポート
21 吸気弁
22 排気弁
27 吸気可変動弁機構
28 排気可変動弁機構
37 吸気管(吸気通路)
39 スロットル弁
40 電子スロットル装置
41 インジェクタ(燃料噴射手段、着火始動手段)
45 点火プラグ(点火手段、着火始動手段)
50 スタータモータ
51 電子制御ユニット、ECU(制御手段)
52 エアフローセンサ
54 吸気圧センサ
55 スロットルポジションセンサ
57 クランク角センサ(クランク角度検出手段)
58 水温センサ(温度検出手段)
59 燃圧センサ
14 ピストン
16 クランクシャフト
18 燃焼室
19 吸気ポート
20 排気ポート
21 吸気弁
22 排気弁
27 吸気可変動弁機構
28 排気可変動弁機構
37 吸気管(吸気通路)
39 スロットル弁
40 電子スロットル装置
41 インジェクタ(燃料噴射手段、着火始動手段)
45 点火プラグ(点火手段、着火始動手段)
50 スタータモータ
51 電子制御ユニット、ECU(制御手段)
52 エアフローセンサ
54 吸気圧センサ
55 スロットルポジションセンサ
57 クランク角センサ(クランク角度検出手段)
58 水温センサ(温度検出手段)
59 燃圧センサ
Claims (5)
- 燃焼室と、該燃焼室に連通する吸気ポート及び排気ポートと、前記吸気ポート及び前記排気ポートを開閉する吸気弁及び排気弁と、前記燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射手段と、前記燃焼室内の混合気に点火する点火手段と、内燃機関のクランク角度を検出するクランク角度検出手段と、前記クランク角度検出手段の検出結果に基づいて膨張行程にある気筒に対して前記燃料噴射手段による燃料噴射と前記点火手段による点火を実行すると共に前記膨張行程にある気筒に続く後続気筒に対して前記燃料噴射手段による燃料噴射と前記点火手段による圧縮上死点近傍での点火を実行する着火始動手段と、前記内燃機関の温度を検出する温度検出手段と、前記内燃機関の始動時に前記着火始動手段を作動すると共に前記温度検出手段の検出結果に基づいて前記内燃機関の温度が予め設定された所定温度以上にあるときには前記後続気筒に対する燃料噴射時期を遅角する制御手段とを具えたことを特徴とする内燃機関の始動装置。
- 請求項1に記載の内燃機関の始動装置において、前記制御手段は、前記膨張行程にある気筒に続く圧縮行程にある気筒の停止位置が圧縮行程の後半にあるときには、前記内燃機関の温度に拘らず所定の時期に燃料噴射を実行する一方、前記圧縮行程にある気筒の停止位置が圧縮行程の前半にあり、且つ、前記内燃機関の温度が前記所定温度以上にあるときに、燃料噴射時期を圧縮上死点近傍に遅角することを特徴とする内燃機関の始動装置。
- 請求項1または2に記載の内燃機関の始動装置において、前記制御手段は、前記圧縮行程にある気筒に続く吸気行程にある気筒の停止位置が吸気行程の後半にあり、且つ、前記内燃機関の温度が前記所定温度以上にあるときには、前記吸気行程にある気筒に対する燃料噴射時期を遅角することを特徴とする内燃機関の始動装置。
- 請求項1に記載の内燃機関の始動装置において、前記制御手段は、前記内燃機関の始動時に前記着火始動手段を作動すると共に、前記温度検出手段の検出結果に基づいて前記内燃機関の温度が予め設定された第1所定温度以上にあるときには、後続行程にある気筒に対する燃料噴射時期を圧縮上死点手前に遅角し、前記内燃機関の温度が前記第1所定温度より高い第2所定温度以上にあるときには、前記後続行程にある気筒に対する燃料噴射時期を圧縮上死点以降の膨張行程に遅角することを特徴とする内燃機関の始動装置。
- 請求項1から4のいずれか一つに記載の内燃機関の始動装置において、前記制御手段は、前記圧縮行程にある気筒または前記吸気行程にある気筒に対する燃料噴射時期を遅角したとき、それに続く後続気筒に対する燃料噴射時期を所定時期に戻すことを特徴とする内燃機関の始動装置。
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