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JP4983747B2 - 内燃機関 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関に関し、特に、燃焼室に直接燃料を噴射する筒内直接噴射式の内燃機関に関するものである。
従来、吸気行程または圧縮行程において燃焼室内に燃料噴霧を直接噴射して、点火プラグにより燃料噴霧と空気との混合気に火花点火する筒内噴射式内燃機関が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる筒内噴射式内燃機関は、吸気通路に燃料噴霧を噴射する内燃機関に比べて、噴射される燃料噴霧がシリンダ内壁に付着しやすいという特徴がある。このため、機関温度が低い冷機状態では、シリンダ内壁に付着した燃料噴霧(以下「付着燃料」という)の気化が促進されず、点火時期になっても付着燃料が残っているおそれがある。この場合には、付着燃料が燃焼されることなく大気中に排出されたり、或いは、付着燃料がオイルに混入してオイル希釈を起こすおそれがあった。燃料噴射時期を抑制することでオイル希釈を抑制することが可能であるが、燃料噴射時期を吸気行程初期とした場合、ピストン頂面に燃料が付着するため、PM発生の原因となるという問題がある。
エンジン水温に基づいて燃料噴射時期の進角量を抑制することにより、主に、ピストン頂面と噴霧との干渉によるPM粒子数は低減されるが、オイル希釈抑制の点からは、できるだけ噴射時期は進角したい。しかしながら、冷間時には、吸気バルブとの干渉によってもPM粒子数が発生することが知られているため、吸気バルブとの干渉も抑制する必要がある。
特開2003−20975号公報
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、冷間時にPM粒子数およびオイル希釈を効果的に低減することが可能な内燃機関を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、燃料噴射装置により直接筒内に燃料を噴射する内燃機関において、エンジン水温を検出する水温検出手段と、エンジンオイルの油温を検出する油温検出手段と、前記検出されたエンジン水温が閾値以下の場合に、前記燃料噴射装置の燃料噴射時期を制限し、前記検出されたエンジン水温、および前記検出されたエンジン水温と前記検出された油温との差分に基づいて、前記燃料噴射装置の進角限界噴射時期を決定する制御手段と、を備えていることを特徴とする。
本発明に係る内燃機関によれば、燃料噴射装置により直接筒内に燃料を噴射する内燃機関において、エンジン水温を検出する水温検出手段と、エンジンオイルの油温を検出する油温検出手段と、前記検出されたエンジン水温が閾値以下の場合に、前記燃料噴射装置の燃料噴射時期を制限し、前記検出されたエンジン水温、および前記検出されたエンジン水温と前記検出された油温との差分に基づいて、前記燃料噴射装置の進角限界噴射時期を決定する制御手段と、を備えているので、冷間時にPM粒子数およびオイル希釈を効果的に低減することが可能な内燃機関を提供することが可能になるという効果を奏する。
以下に、本発明に係る内燃機関の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本発明の実施例に係るエンジンを表す概略構成図である。本実施例に係る内燃機関としてのエンジン10は、図1に示すように、乗用車、トラックなどの車両に搭載され、後述するインジェクタ41によって燃料噴霧を燃焼室18に直接噴射する多気筒筒内噴射式のエンジンであり、シリンダボア13内に往復運動可能に設けられるピストン14が2往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う、いわゆる4サイクルエンジンである。
このエンジン10は、多気筒筒内噴射式であって、シリンダブロック11上にシリンダヘッド12が締結されており、このシリンダブロック11に形成された複数のシリンダボア13にピストン14がそれぞれ上下移動自在に嵌合している。そして、シリンダブロック11の下部にクランクケース15が締結され、このクランクケース15内にクランクシャフト16が回転自在に支持されており、各ピストン14はコネクティングロッド17を介してこのクランクシャフト16にそれぞれ連結されている。なお、このクランクケース15の底部には、エンジン10の各部に供給されるエンジンオイルが貯留されるオイルパン62が設けられている。オイルパン62には、エンジンオイルの油温を検出する油温センサ63が設けられており、検出した油温をECU51に出力している。なお、ここでは、油温を油温センサ63で検出することにしているが、エンジン冷却水温や運転状態等に基づいて推定することにしてもよい。
燃焼室18は、シリンダブロック11におけるシリンダボア13の壁面とシリンダヘッド12の下面としての筒内天井部とピストン14の頂面により構成されており、この燃焼室18は、上部、すなわち、シリンダヘッド12の下面としての筒内天井部の中央部が高くなるように傾斜したペントルーフ形状をなしている。燃焼室18は、燃料と空気との混合気が燃焼可能であり、この燃焼室18の上部である筒内天井部に吸気ポート19及び排気ポート20が対向して形成されており、この吸気ポート19及び排気ポート20に対して吸気バルブ21及び排気バルブ22の下端部がそれぞれ位置している。この吸気バルブ21及び排気バルブ22は、シリンダヘッド12に軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、吸気ポート19及び排気ポート20を閉止する方向(図1にて上方)に付勢支持されている。また、シリンダヘッド12には、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転自在に支持されており、吸気カム25及び排気カム26が吸気バルブ21及び排気バルブ22の上端部に接触している。
なお、図示しないが、クランクシャフト16に固結されたクランクシャフトスプロケットと、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24にそれぞれ固結された各カムシャフトスプロケットとは、無端のタイミングチェーンが掛け回されており、クランクシャフト16と吸気カムシャフト23と排気カムシャフト24が連動可能となっている。
したがって、クランクシャフト16に同期して吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転すると、吸気カム25及び排気カム26が吸気バルブ21及び排気バルブ22を所定のタイミングで上下移動することで、吸気ポート19及び排気ポート20を開閉し、吸気ポート19と燃焼室18、燃焼室18と排気ポート20とをそれぞれ連通することができる。この場合、この吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24は、クランクシャフト16が2回転(720度)する間に1回転(360度)するように設定されている。そのため、エンジン10は、クランクシャフト16が2回転する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の4行程を実行することとなり、このとき、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が1回転することとなる。
また、このエンジン10の動弁機構は、運転状態に応じて吸気バルブ21及び排気バルブ22を最適な開閉タイミングに制御する吸気・排気可変動弁機構(VVT:Variable Valve Timing-intelligent)27,28となっている。この可変動弁手段としての吸気・排気可変動弁機構27,28は、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24の軸端部にVVTコントローラ29,30が設けられて構成され、オイルコントロールバルブ31,32からの油圧をこのVVTコントローラ29,30の図示しない進角室及び遅角室に作用させることによりカムスプロケットに対するカムシャフト23,24の位相を変更し、吸気バルブ21及び排気バルブ22の開閉時期を進角又は遅角することができるものである。この場合、吸気・排気可変動弁機構27,28は、吸気バルブ21及び排気バルブ22の作用角(開放期間)を一定としてその開閉時期を進角又は遅角する。また、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24には、その回転位相を検出するカムポジションセンサ33,34が設けられている。
吸気ポート19には、吸気マニホールド35を介してサージタンク36が連結され、このサージタンク36に吸気管37が連結されており、この吸気管37の空気取入口にはエアクリーナ38が取付けられている。そして、このエアクリーナ38の空気流動方向下流側にスロットルバルブ39を有する負荷調節手段としての電子スロットル装置40が設けられている。また、シリンダヘッド12には、燃焼室18に直接燃料を噴射する燃料噴射手段としてのインジェクタ(燃料噴射弁)41が装着されている。このインジェクタ41は、吸気ポート19側に位置して上下方向に所定角度傾斜して配置されている。このインジェクタ41は、燃焼室18に生成される吸気流動に燃料が乗るようにピストン14の頂面に向かって燃料を噴射可能である。各気筒に装着されるインジェクタ41は、デリバリパイプ42に連結され、このデリバリパイプ42には、高圧燃料供給管43を介して高圧燃料ポンプ(燃料ポンプ)44が連結されている。更に、シリンダヘッド12には、燃焼室18の上方に位置して混合気に着火する点火プラグ45が装着されている。
一方、排気ポート20には、排気マニホールド46を介して排気管47が連結されており、この排気管47には排気ガス中に含まれるHC、CO、NOxなどの有害物質を浄化処理する三元触媒48,49が装着されている。また、エンジン10には、クランキングを行うスタータモータ50が設けられており、エンジン始動時に図示しないピニオンギヤがリングギヤと噛み合った後、回転力がピニオンギヤからリングギヤへと伝わり、クランクシャフト16を回転することができる。
ところで、車両にはマイクロコンピュータを中心として構成されエンジン10の各部を制御可能な電子制御ユニット(ECU)51が搭載されており、このECU51は、インジェクタ41や点火プラグ45などを制御可能となっている。すなわち、吸気管37の空気流動方向上流側にはエアフローセンサ52及び吸気温センサ53が装着され、また、サージタンク36には吸気圧センサ54が設けられており、計測した吸入空気量、吸気温度、吸気圧(吸気管負圧)をECU51に出力している。また、電子スロットル装置40にはスロットルポジションセンサ55が装着されており、現在のスロットル開度をECU51に出力している。ここで、ECU51は、検出されたスロットル開度や吸入空気量に基づいて内燃機関負荷としてのエンジン負荷(負荷率)を算出することができる。アクセルポジションセンサ56は、現在のアクセル開度をECU51に出力している。更に、エンジン10のクランク角度を検出するクランク角度検出手段としてのクランク角センサ57は、検出した各気筒のクランク角度をECU51に出力し、このECU51は検出したクランク角度に基づいて各気筒における吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を判別すると共に、エンジン回転数を算出している。なおここで、エンジン回転数は、言い換えれば、クランクシャフト16の回転速度に対応し、このクランクシャフト16の回転速度が高くなれば、クランクシャフト16の回転数、すなわち、エンジン10のエンジン回転数も高くなる。
また、シリンダブロック11にはエンジン冷却水温を検出する水温センサ58が設けられており、検出したエンジン冷却水温(以下、「エンジン水温」または「水温」と称する)をECU51に出力している。また、各インジェクタ41に連通するデリバリパイプ42には燃料圧力を検出する燃圧センサ59が設けられており、検出した燃料圧力をECU51に出力している。一方、排気管47には、三元触媒48の排気ガス流動方向上流側にエンジン10の空燃比を検出するA/Fセンサ60、排気ガス流動方向下流側に酸素センサ61が設けられている。A/Fセンサ60は、三元触媒48に導入される前の排気ガスの排気ガス空燃比を検出し、検出した空燃比をECU51に出力し、酸素センサ61は、三元触媒48から排出された後の排気ガスの酸素濃度を検出し、検出した酸素濃度をECU51に出力している。このA/Fセンサ60により検出された空燃比(推定空燃比)は、吸入空気と燃料とからなる混合ガスの空燃比(理論空燃比)をフィードバック制御するために用いられる。すなわち、A/Fセンサ60は、排気ガス中の酸素濃度と未燃ガス濃度から排気空燃比をリッチ域からリーン域までの全域にわたり検出し、これをECU51にフィードバックすることにより燃料噴射量を補正し、燃焼を運転状態に合わせた最適な燃焼状態に制御可能となる。
したがって、ECU51は、検出した燃料圧力に基づいてこの燃料圧力が所定圧力となるように高圧燃料ポンプ44を駆動すると共に、検出した吸入空気量、吸気温度、吸気圧、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量(燃料噴射期間)、噴射時期、点火時期などを決定し、インジェクタ41及び点火プラグ45を駆動して燃料噴射及び点火を実行する。また、ECU51は、検出した排気ガスの酸素濃度をフィードバックして空燃比がストイキ(理論空燃比)となるように燃料噴射量を補正している。
また、ECU51は、エンジン運転状態に基づいて吸気・排気可変動弁機構27,28を制御可能となっている。即ち、低温時、エンジン始動時、アイドル運転時や軽負荷時には、排気バルブ22の閉止時期と吸気バルブ21の開放時期のオーバーラップをなくすことで、排気ガスが吸気ポート19又は燃焼室18に吹き返す量を少なくし、燃焼安定及び燃費向上を可能とする。また、中負荷時には、このオーバーラップを大きくすることで、内部EGR率を高めて排ガス浄化効率を向上させると共に、ポンピングロスを低減して燃費向上を可能とする。更に、高負荷低中回転時には、吸気バルブ21の閉止時期を進角することで、吸気が吸気ポート19に吹き返す量を少なくし、体積効率を向上させる。そして、高負荷高回転時には、吸気バルブ21の閉止時期を回転数にあわせて遅角することで、吸入空気の慣性力に合わせたタイミングとし、体積効率を向上させる。
さらに、本実施例では、ECU51は、冷間時のPM粒子数およびオイル希釈を効果的に低減するために、水温が閾値以下の場合に、冷間PM粒子数抑制制御を実行する。かかる冷間PM粒子数抑制制御では、インジェクタ41の燃料噴射時期を制限し、水温、および水温と油温との差分に基づいて、その進角限界噴射時期T3を決定する。また、エンジン始動時の水温に基づいてその遅角限界噴射時期T1(第1の遅角限界噴射時期)を算出し、また、油温に基づいてその遅角限界噴射時期T2(第2の遅角限界噴射時期)を算出し、いずれか遅い時期を遅角限界噴射時期に決定している。
上記のように構成されるエンジン10では、ピストン14がシリンダボア13内を下降することで、吸気ポート19を介して燃焼室18内に空気が吸入され(吸気行程)、このピストン14が吸気行程下死点を経てシリンダボア13内を上昇することで空気が圧縮される(圧縮行程)。このとき、吸気行程又は圧縮行程にてインジェクタ41から燃焼室18内へ燃料が噴射され、この燃料と空気とが混合して混合気を形成する。そして、ピストン14が圧縮行程上死点付近に近づくと点火プラグ45により混合気に点火され、該混合気が燃焼し、その燃焼圧力によりピストン14を下降させる(膨張行程)。燃焼後の混合気は、ピストン14が膨張行程下死点を経て吸気行程上死点に向かって再び上昇することで排気ポート20を介して排気ガスとして放出される(排気行程)。このピストン14のシリンダボア13内での往復運動は、コネクティングロッド17を介してクランクシャフト16に伝えられ、ここで回転運動に変換され、出力として取り出されると共に、このピストン14は、カウンタウェイトと共にクランクシャフト16が慣性力によりさらに回転することで、このクランクシャフト16の回転に伴ってシリンダボア13内を往復する。このクランクシャフト16が2回転することで、ピストン14はシリンダボア13を2往復し、この間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行い、燃焼室18内で1回の爆発が行われる。
次に、図2〜図15を参照して、上記ECU51によるエンジン10の冷間始動時のPM粒子数抑制制御を詳細に説明する。図2は、エンジン始動後の各部温度(吸気バルブ温度、油温、水温)の挙動A(水温と油温との差が大きい場合)を示す図である。同図において、横軸はエンジン始動後時間(分)、縦軸は温度(℃)を示している。従来より、PM粒子数は冷間時の吸気バルブ21との干渉により増加することが知られているが、実際の車両においては、冷間時の吸気バルブ21との干渉によるPM粒子数が問題となるのは、図2に示す吸気バルブ温度が急激に上昇する領域Iである。
図3は、図2の領域IでのPM粒子数噴射時期感度を示す図である。図4は、図2の領域IIでのPM粒子数噴射時期感度を示す図である。図3および図4において、横軸は噴射時期、縦軸はPM粒子数を示している。図3において、領域Iでは、吸気バルブ21との干渉割合により噴射時期の遅角限界を算出することで吸気バルブ21からのPM粒子数の影響を減少させることが可能となる。また、この遅角限界は、始動時の水温から算出される積算噴射量(積算噴射規定量Qm)によって決定可能である。
図5は、エンジン始動後の各部温度(吸気バルブ温度、油温、水温)の挙動B(水温と油温との差が小さい場合)を示す図である。同図において、横軸はエンジン始動後時間(分)、縦軸は温度(℃)を示している。
図6は、領域IIでの同一水温でのPM粒子数噴射時期感度を示す図である。同図において、横軸は噴射時期、縦軸はPM粒子数を示している。図6に示すように、水温が低く、水温と油温との差が大きいほどピストン14との干渉によるPM粒子数は急激に増加する。このため、実際の車両においては、燃料の積算噴射量以上の場合、PM粒子数はピストン14からの排出が支配的となる。水温が低く油温との差が大きいほど、進角限界噴射時期を遅角することでPM粒子数を抑制する噴射時期を設定可能となる。
本実施例では、後述するように、各部温度(例えば、吸気バルブ温度やピストン温度)を直接計測することなく、油温および水温と、エンジン始動からの燃料の積算噴射量とだけにより簡便に、PM粒子数とオイル希釈の低減が可能となり、併せてスモークも低減可能となる。
図7は、上記ECU51によるエンジン10の冷間時の制御を説明するためのフローチャート、図8は、図7の冷間PM粒子数抑制制御を説明するためのフローチャートである。
図7において、まず、ECU51は、水温Tw≦閾値Tthであるか否かを判断し(ステップS1)、水温Tw≦閾値Tthである場合には(ステップS1の「Yes」)、冷間PM粒子数抑制制御を実行する一方(ステップS2)、水温Tw≦閾値Tthでない場合には(ステップS1の「No」)、通常噴射時期制御を実行する(ステップS3)。
つぎに、上記ステップS2の冷間PM粒子数抑制制御を図8を参照して説明する。同図において、まず、ECU51は、始動時水温・積算噴射量規定値Qmマップを参照して、エンジン始動時水温に基づいて積算噴射量規定値Qmを算出する(ステップS10)。
図9は、始動時水温・積算噴射量規定値Qmマップの一例を示す図である。同図に示すように、始動時水温・積算噴射量規定値Qmマップは、エンジン始動時水温を変数として、実験またはシミュレーションで算出した積算噴射量規定値Qmが登録されている。エンジン始動時水温が低いほど吸気バルブ温度が上がるのに積算噴射量が多く必要であるため、積算噴射量規定値Qmを増加させている。この始動時水温・積算噴射量規定値Qmマップは、ECU51のメモリに記憶されている。ECU51は、検出したエンジン始動時水温に対応する始動時水温・積算噴射量規定値Qmマップの積算噴射量規定値Qmを算出する。
つぎに、ECU51は、エンジン始動からの積算噴射量Q≦算出した積算噴射量規定値Qmであるか否かを判断する(ステップS11)。エンジン始動からの積算噴射量Q≦算出した積算噴射量規定値Qmでない場合には(ステップS11「No」)、ステップS13に移行する。他方、ECU51は、エンジン始動からの積算噴射量Q≦算出した積算噴射量規定値Qmである場合には(ステップS11の「Yes」)、進角量マップを参照して、吸気バルブ最大バルブリフト量からの進角量を算出した後(ステップS12)、ステップS13に移行する。
図10は、進角量マップの一例を示す図である。進角量マップは、同図に示すように、積算噴射量Q/積算噴射量規定値Qm(積算噴射量Qを積算噴射量規定値Qmで除算した値)を変数として、実験またはシミュレーションで算出した好適な吸気バルブ最大バルブリフト時からの進角量が登録されている。積算噴射量Q/積算噴射量規定値Qmが小さいほど、吸気バルブ21の温度が低いため、吸気バルブ最大リフトタイミングからの進角量を増加させる。この進角量マップは、ECU51のメモリに記憶されている。ECU51は、算出した積算噴射量Q/積算噴射量規定値Qmに対応する進角量マップの吸気バルブ最大バルブリフト時からの進角量を算出する。
ステップS13では、ECU51は、遅角限界噴射時期T1を算出する。エンジン始動からの積算噴射量Q≦算出した積算噴射量規定値Qmである場合には、遅角限界噴射時期T1=ステップS12で算出した吸気バルブ最大バルブリフトタイミングからの進角量とする。エンジン始動からの積算噴射量Q≦算出した積算噴射量規定値Qmでない場合には、遅角限界噴射時期T1=初期値とする。この場合の遅角限界噴射時期T1の初期値<遅角限界噴射時期T2とする。
つぎに、ECU51は、遅角限界噴射時期T2マップを参照して、遅角限界噴射時期T2を算出する(ステップS14)。図11は、遅角限界噴射時期T2マップの一例を示す図である。遅角限界噴射時期T2マップは、図11に示すように、油温を変数として、遅角限界噴射時期T2が登録されている。ECU51は、現在の油温に対応する遅角限界噴射時期T2マップの遅角限界噴射時期T2を算出する。
ECU51は、進角限界噴射時期T3マップを参照して、進角限界噴射時期T3を算出する(ステップS15)。図12は、進角限界噴射時期T3マップの一例を示す図である。進角限界噴射時期T3マップは、図12に示すように、水温と水温−油温(水温と油温の差分)とを変数として、実験またはシミュレーションで算出した好適な進角限界噴射時期T3が段階的に登録されている。水温が低いほど、また、水温−油温が大きいほど遅角させる。進角限界噴射時期T3マップはECU51のメモリに記憶されている。ECU51は、現在の水温および水温−油温に対応する進角限界噴射時期T3マップの進角限界噴射時期T3を算出する。
つぎに、ECU51は、遅角限界噴射時期T1<遅角限界噴射時期T2であるか否かを判定する(ステップS16)。ECU51は、遅角限界噴射時期T1<遅角限界噴射時期T2である場合には(ステップS16の「Yes」)、進角限界噴射時期T3<噴射時期<遅角限界噴射時期T2の範囲で燃料噴射を行う(ステップS17)。他方、ECU51は、遅角限界噴射時期T1<遅角限界噴射時期T2でない場合には(ステップS16の「No」)、進角限界噴射時期T3<噴射時期<遅角限界噴射時期T1の範囲で燃料噴射を行う(ステップS18)。
図13〜図15は、本実施例による燃料噴射時期を説明するための図であり、図13は、図2の領域IでのPM粒子数噴射時期感度を示す図、図14は、図2の領域IIでのPM粒子数噴射時期感度を示す図、図15は図2の領域IIでの同一水温でのPM粒子数噴射時期感度を示す図であり、矢印は本実施例による燃料噴射時期を示している。図13〜図15に示すように、PM粒子数が最も少ない領域で燃料を噴射することができ、いたずらに噴射時期を遅角することによるオイル希釈の悪化や吸気バルブ21との干渉によるPM粒子数の増加を抑制することができる。
以上説明したように、本実施例によれば、ECU51は、水温が閾値以下の場合に、冷間PM粒子数抑制制御を実行して燃料噴射時期を制限し、かかる冷間PM粒子数抑制制御では、水温、および水温と油温との差分に基づいて、その進角限界噴射時期T1を決定すると共に、始動時の水温に基づいてその遅角限界噴射時期T1(第1の遅角限界噴射時期)を算出し、また、油温に基づいてその遅角限界噴射時期T2(第2の遅角限界噴射時期)を算出し、いずれか遅い時期を遅角限界噴射時期に決定しているので、冷間時にPM粒子数およびオイル希釈を効果的に低減することが可能となる。
以上のように、本発明に係る内燃機関は、燃焼室に直接燃料を噴射する種々の筒内直接噴射式内燃機関に用いて好適である。
本発明の実施例に係るエンジンを表す概略構成図である。 エンジン始動後の各部温度(吸気バルブ温度、油温、水温)の挙動A(水温と油温との差が大きい場合)を示す図である。 図2の領域IでのPM粒子数噴射時期感度を示す図である。 図2の領域IIでのPM粒子数噴射時期感度を示す図である。 エンジン始動後の各部温度(吸気バルブ温度、油温、水温)の挙動B(水温と油温との差が小さい場合)を示す図である。 領域IIでの同一水温でのPM粒子数噴射時期感度を示す図である。 ECU51によるエンジン10の冷間時の制御を説明するためのフローチャートである。 図7の冷間PM粒子数抑制制御を説明するためのフローチャートである。 始動時水温・積算噴射量規定値Qmマップの一例を示す図である。 進角量マップの一例を示す図である。 遅角限界噴射時期T2マップの一例を示す図である。 進角限界噴射時期T3マップの一例を示す図である。 本実施例による燃料噴射時期を説明するための図である。 本実施例による燃料噴射時期を説明するための図である。 本実施例による燃料噴射時期を説明するための図である。
符号の説明
10 エンジン(内燃機関)
13 シリンダボア
14 ピストン
18 燃焼室
21 吸気バルブ
22 排気バルブ
41 インジェクタ
51 ECU(制御手段)
58 水温センサ(水温検出手段)
62 油温センサ(油温検出手段)

Claims (3)

  1. 燃料噴射装置により直接筒内に燃料を噴射する内燃機関において、
    エンジン水温を検出する水温検出手段と、
    エンジンオイルの油温を検出する油温検出手段と、
    前記検出されたエンジン水温が閾値以下の場合に、前記燃料噴射装置の燃料噴射時期を制限し、前記検出されたエンジン水温、および前記検出されたエンジン水温と前記検出された油温との差分に基づいて、前記燃料噴射装置の進角限界噴射時期を決定する制御手段と、
    を備えたことを特徴とする内燃機関。
  2. 前記制御手段は、前記検出されたエンジン水温が低く、かつ、前記検出されたエンジン水温と前記検出された油温との差分が大きいほど、前記進角限界噴射時期を遅角させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
  3. 前記制御手段は、内燃機関始動時のエンジン水温に基づいて前記燃料噴射装置の第1の遅角限界噴射時期を算出し、また、前記検出した油温に基づいて前記燃料噴射装置の第2の遅角限界噴射時期を算出し、いずれか遅い時期を前記燃料噴射装置の遅角限界噴射時期に決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関。
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