本発明は、スタータモータを用いることなくエンジンを始動させるエンジン始動装置に関するものである。
近年、排気ガス対策や燃費向上などの手法として、車両がアイドル状態で停止しているときにエンジンを自動的に停止させ、発進時に自動的に再始動して円滑に発進させるようにした技術が各種提案されている。この場合、エンジンの再始動に時間が掛かるとドライバの発進意思に対してレスポンスが遅れてドライバビリティが悪化するため、素早く再始動させることが重要である。ところが、エンジンを始動する場合、一般にスタータモータを用いており、頻繁にエンジンの停止と始動を繰り返すことで、このスタータモータや周辺部品の寿命低下、また、バッテリーの使用過多による充電量の低下などを招いてしまう。
そこで、例えば、下記特許文献1では、燃料を吸気ポートではなく燃焼室に直接噴射する筒内噴射式のエンジンにて、スタータを用いることなくエンジンを始動可能としている。この特許文献1に記載された「エンジン始動装置」は、筒内噴射式エンジンにて、このエンジンの再始動時に、圧縮行程にある気筒の吸気弁の閉時期を遅角し、膨張行程にある気筒に所定量の燃料を噴射し、気筒内の混合気に点火することで燃焼させ、発生した膨張力によりピストンを押し下げて自己始動させるものである。
上述した従来の「エンジン始動装置」にあっては、圧縮行程にある気筒の吸気弁の閉時期を遅角する一方、膨張行程にある気筒に燃料を噴射・点火し、発生した膨張力によりピストンを押し下げて自己始動させるため、圧縮行程にある気筒の圧縮力を低下して自己始動が容易となる。この場合、圧縮行程にある気筒の吸気弁の閉時期を遅角する手段として、吸気弁の開閉タイミングを制御するバルブタイミング位相可変機構を用いている。
図11は、従来のエンジン始動装置における吸気弁及び排気弁の開閉タイミングを表す概略図、図12は、クランク角度に対する筒内圧を表すグラフを示す。
即ち、バルブタイミング位相可変機構を用いて、従来の「エンジン始動装置」のように、吸気弁の閉時期を遅角すると開時期も遅角することとなる。つまり、図11に示すように、吸気弁の開閉タイミングを二点鎖線で示す期間から実線で示す期間に遅角することとなり、排気弁の閉時期(EX閉じ)と吸気弁の開時期(IN開き)との間に気筒が密閉状態となる気筒密閉期間が発生する。すると、この気筒密閉期間にピストンが下降するために気筒内が負圧状態となり、図12に示すように、このピストンによるポンプロスが発生し、エンジンを始動するために必要な駆動トルクが増加して始動性が低下してしまうという問題がある。
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、スタータモータを用いずにエンジンを確実に始動することができ、且つ、始動性の向上を図ったエンジン始動装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のエンジン始動装置は、燃焼室と、該燃焼室に連通する吸気ポート及び排気ポートと、前記吸気ポート及び前記排気ポートを開閉する吸気弁及び排気弁と、前記燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射手段と、前記燃焼室内の混合気に点火する点火手段と、エンジンのクランク角度を検出するクランク角度検出手段と、前記排気弁の閉止時期と前記吸気弁の開放時期のオーバーラップを確保しつつ前記吸気弁の閉止時期を変更可能な可変動弁手段と、始動時までに前記可変動弁手段により前記吸気弁の閉止時期を遅角する一方、前記クランク角度検出手段の検出結果に基づいて膨張行程にある気筒に対して始動時に前記燃料噴射手段により燃料噴射を実行すると共に前記点火手段により点火を実行する制御手段とを具えたことを特徴とするものである。
また、本発明のエンジン始動装置では、前記制御手段は、エンジン始動時に圧縮行程にある気筒に対して前記可変動弁手段により前記吸気弁の閉止時期を遅角した後、膨張行程にある気筒に対して前記燃料噴射及び前記点火を実行することを特徴としている。
本発明のエンジン始動装置では、前記制御手段は、エンジン停止時に圧縮行程にある気筒に対して前記可変動弁手段により前記吸気弁の閉止時期を遅角し、エンジン始動時に膨張行程にある気筒に対して前記燃料噴射及び前記点火を実行することを特徴としている。
本発明のエンジン始動装置では、前記可変動弁手段は、前記排気弁の閉止時期と前記吸気弁の開放時期のオーバーラップを確保しつつ、前記排気弁の開放時期を遅角すると共に前記吸気弁の閉止時期を遅角することを特徴としている。
本発明のエンジン始動装置では、前記可変動弁手段は、前記吸気弁及び前記排気弁の開放期間を変更せずに、前記吸気弁の開閉タイミングと前記排気弁の開閉タイミングをほぼ同量遅角することを特徴としている。
本発明のエンジン始動装置では、前記可変動弁手段は、前記吸気弁の開放期間を拡大することで、前記吸気弁の閉止時期のみを遅角することを特徴としている。
本発明のエンジン始動装置では、前記可変動弁手段は、前記排気弁の開放期間を拡大することで、前記排気弁の開放時期のみを遅角することを特徴としている。
本発明のエンジン始動装置では、前記可変動弁手段は、前記排気弁の閉止時期と前記吸気弁の開放時期のオーバーラップを0度クランク角としつつ、前記吸気弁の閉止時期を遅角することを特徴としている。
本発明のエンジン始動装置によれば、燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射手段及び燃焼室内の混合気に点火する点火手段を設けると共に、エンジンのクランク角度を検出するクランク角度検出手段と、排気弁の閉止時期と吸気弁の開放時期のオーバーラップを確保しつつ吸気弁の閉止時期を変更可能な可変動弁手段とを設け、制御手段は、始動時までに吸気弁の閉止時期を遅角する一方、始動時に膨張行程にある気筒に対して燃料噴射を実行すると共に点火を実行するようにしたので、エンジン始動時には、吸気弁の閉止時期が遅角された状態で、膨張行程にある気筒に対して燃料噴射及びを点火が実行されることとなり、膨張行程にある気筒では、爆発で発生したトルクによりピストンを確実に下降させる一方、圧縮行程にある気筒では、圧縮力が低下するためにこのトルクにより容易にピストンを上昇させることができ、また、このとき、排気弁の閉止時期と吸気弁の開放時期のオーバーラップが確保されているため、気筒内の負圧によるポンプロスが抑制され、エンジンを始動するために必要な駆動トルクの増加を抑制してスタータモータを用いずにエンジンを確実に始動することができ、エンジンの始動性を向上することができる。
以下に、本発明に係るエンジン始動装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、本発明の実施例1に係るエンジン始動装置を表す概略構成図、図2は、実施例1のエンジン始動装置におけるエンジン制御を表すフローチャート、図3は、エンジン停止時における気筒内挙動を表す概略図、図4は、吸気弁及び排気弁の開閉タイミングを表す概略図、図5は、#1気筒と#3気筒の各筒内圧及びクランク角度の変化を表すグラフ、図6は、クランク角度に対する筒内圧を表すグラフである。
実施例1のエンジン始動装置が適用されたエンジンにおいて、図1に示すように、このエンジン10は、筒内噴射式の4気筒直列型エンジンである。このエンジン10にて、シリンダブロック11上にシリンダヘッド12が締結されており、このシリンダブロック11に形成された複数のシリンダボア13にピストン14がそれぞれ上下移動自在に嵌合している。そして、シリンダブロック11の下部にクランクケース15が締結され、このクランクケース15内にクランクシャフト16が回転自在に支持されており、各ピストン14はコネクティングロッド17を介してこのクランクシャフト16にそれぞれ連結されている。
燃焼室18は、シリンダブロック11とシリンダヘッド12とピストン14により構成されており、この燃焼室18は、上部(シリンダヘッド12の下面)の中央部が高くなるように傾斜したペントルーフ形状をなしている。そして、この燃焼室18の上部、つまり、シリンダヘッド12の下面に吸気ポート19及び排気ポート20が対向して形成されており、この吸気ポート19及び排気ポート20に対して吸気弁21及び排気弁22の下端部がそれぞれ位置している。この吸気弁21及び排気弁22は、シリンダヘッド12に軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、吸気ポート19及び排気ポート20を閉止する方向に付勢支持されている。また、シリンダヘッド12には、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転自在に支持されており、吸気カム25及び排気カム26が図示しないローラロッカアームを介して吸気弁21及び排気弁22の上端部に接触している。
従って、エンジン10に同期して吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転すると、吸気カム25及び排気カム26がローラロッカアームを作動させ、吸気弁21及び排気弁22が所定のタイミングで上下移動することで、吸気ポート19及び排気ポート20を開閉し、吸気ポート19と燃焼室18、燃焼室18と排気ポート20とをそれぞれ連通することができる。
また、このエンジン10の動弁機構は、運転状態に応じて吸気弁21及び排気弁22を最適な開閉タイミングに制御する吸気・排気可変動弁機構(VVT:Variable Valve Timing-intelligent)27,28となっている。この吸気・排気可変動弁機構27,28は、例えば、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24の軸端部にVVTコントローラが設けられて構成され、電動モータ(または油圧ポンプ)によりカムスプロケットに対するカムシャフトとの位相を変更することで、吸気弁21及び排気弁22の開閉時期を進角または遅角することができるものである。この場合、吸気・排気可変動弁機構27,28は、吸気弁21及び排気弁22の作用角(開放期間)を一定としてその開閉時期を進角または遅角する。また、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24には、その回転位相を検出するカムポジションセンサ29,30が設けられている。
吸気ポート19には、インテークマニホールド31を介してサージタンク32が連結され、このサージタンク32に吸気管33が連結されており、この吸気管33の空気取入口にはエアクリーナ34が取付けられている。そして、このエアクリーナ34の下流側にスロットル弁35を有する電子スロットル装置36が設けられている。また、シリンダヘッド12には、燃焼室18に直接燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)37が装着されており、このインジェクタ37は、吸気ポート19側に位置して上下方向に所定角度傾斜している。更に、シリンダヘッド12には、燃焼室18の上方に位置して混合気に着火する点火プラグ(点火手段)38が装着されている。
一方、排気ポート20には、エギゾーストマニホールド39を介して排気管40が連結されており、この排気管40には排気ガス中に含まれるHC、CO、NOxなどの有害物質を浄化処理する触媒装置41が装着されている。
ところで、車両には電子制御ユニット(ECU)42が搭載されており、このECU42は、インジェクタ37や点火プラグ38などを制御可能となっている。即ち、吸気管33の上流側にはエアフローセンサ43が装着されており、計測した吸入空気量をECU42に出力している。また、電子スロットル装置36は、現在のスロットル開度をECU42に出力している。更に、クランク角センサ(クランク角度検出手段)44は、検出した各気筒のクランク角度をECU42に出力し、このECU42は検出したクランク角度に基いて各気筒における吸気、圧縮、膨張(爆発)、排気の各行程を判別すると共に、エンジン回転数を算出している。また、シリンダヘッド12にはエンジン冷却水温を検出する水温センサ45が設けられており、検出したエンジン冷却水温をECU42に出力している。従って、ECU42は、検出した吸入空気量、スロットル開度(またはアクセル開度)、エンジン回転数、エンジン冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて、燃料噴射量、噴射時期、点火時期などを決定している。
また、ECU42は、エンジン運転状態に基づいて吸気・排気可変動弁機構27,28を制御可能となっている。即ち、低温時、エンジン始動時、アイドル運転時や軽負荷時には、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップをなくすことで、排気ガスが吸気ポート19または燃焼室18に吹き返す量を少なくし、燃焼安定及び燃費向上を可能とする。また、中負荷時には、このオーバーラップを大きくすることで、内部EGR率を高めて排ガス浄化効率を向上させると共に、ポンピングロスを低減して燃費向上を可能とする。更に、高負荷低中回転時には、吸気弁21の閉止時期を進角することで、吸気が吸気ポート19に吹き返す量を少なくし、体積効率を向上させる。そして、高負荷高回転時には、吸気弁21の閉止時期を回転数にあわせて遅角することで、吸入空気の慣性力に合わせたタイミングとし、体積効率を向上させる。
このように構成されたエンジン10は、車両がアイドル状態で停止しているときにエンジンを自動的に停止させるエンジン自動停止機能と、エンジンが自動停止しているときに発進指令により自動的に再始動させるエンジン再始動機能を有している。そして、本実施例では、エンジン10の再始動時に、スタータモータを使用せずに、筒内噴射機構を用いてエンジン10を着火始動するようにしている。
即ち、制御手段としてのECU42は、エンジン10の停止後に、クランク角センサ44の検出結果に基づいて、膨張行程で停止している気筒を判別し、エンジン10の再始動時に、この膨張行程で停止している気筒に対して燃料を噴射し、混合気に点火することで爆発力を得てピストン14を介してクランクシャフト16を駆動し、エンジン10を再始動する。本実施例の場合、筒内噴射式の4気筒直列型エンジン10であるため、図3に示すように、例えば、第1気筒#1が上死点(TDC)を越えて膨張行程で停止するとき、続く第3気筒#3は圧縮行程で停止する。そして、膨張行程で停止した第1気筒#1に対して燃料を噴射して着火始動し、この第1気筒#1の爆発力によりピストン14を押し下げると共に、クランクシャフト16を介して第3気筒#3のピストン14を押し上げる。この場合、圧縮行程にある第3気筒#3では、ピストン14が上昇して燃焼室18内の空気を圧縮する力を第1気筒#1の爆発力から得ることから、第1気筒#1では、TDCを超えた膨張行程後半で停止させ、第3気筒#3では、BTDCを超えた圧縮行程後半で停止させることが望ましい。
そして、本実施例では、エンジン運転状態に基づいて吸気・排気可変動弁機構27,28を制御可能であり、図3及び図4に示すように、エンジン10の再始動時に、アイドル運転時に対して、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップを0度クランク角度以上に確保しつつ、吸気弁21の閉止時期を遅角するようにしている。即ち、前述したように、膨張行程にある第1気筒#1の爆発力によりピストン14を介してクランクシャフト16を回転するとき、吸気弁21が閉じていると燃焼室18が密閉状態となり、圧縮行程にある第3気筒#3にて、ピストン14が十分に上昇することができずにエンジン10の再始動の妨げとなってしまう。そこで、エンジン10の再始動時には、吸気可変動弁機構27を制御し、吸気弁21の閉止時期を、図4に二点鎖線で表すアイドル領域から、実線で表す再始動領域まで遅角することで、燃焼室18が密閉状態となる期間を短縮し、圧縮行程にある第3気筒#3にて、ピストン14が適正に上昇してエンジン10が確実に再始動可能としている。
また、吸気可変動弁機構27は、吸気弁21の開閉タイミングを変更するものであり、吸気弁21の閉止時期を遅角すると開放時期を遅角することとなり、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップ領域がなくなり、排気弁22が閉じてから吸気弁21が開くまでは燃焼室18が密閉状態となる。この密閉期間にピストン14が下降すると燃焼室18が負圧状態となり、ピストン14によるポンプロスが発生してしまう。そこで、エンジン10の再始動時には、吸気可変動弁機構27により吸気弁21の開閉時期を遅角すると共に、排気可変動弁機構28により排気弁22の開閉時期を、図4に二点鎖線で表すアイドル領域から、実線で表す再始動領域まで、吸気弁21と同量遅角することで、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップ領域を確保する。そのため、燃焼室18が密閉状態となる期間がなくなり、ピストン14によるポンプロスの発生を防止するようにしている。
また、排気可変動弁機構28により排気弁22の開閉時期を遅角することで、排気弁22の開放時期が遅くなることから、エンジン10の再始動時に、膨張行程にある第1気筒#1では、ピストン14の下降中は排気弁22が閉止状態にあり、膨張行程における燃焼圧の急激な低下を防止するようにしている。
ここで、上述した実施例1のエンジン始動装置の作動制御について、図2のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、ステップS1では、車両の運転中にエンジン10の自動停止条件が成立したかどうかを判定する。ここで、エンジン10の自動停止とは、アイドル運転中にエンジンを停止する、所謂、アイドルストップであり、例えば、エンジン10の自動停止条件とは、車速が0km/h、ブレーキスイッチがON状態、シフトレバーの操作位置がニュートラル(N)位置であることが所定時間継続したことであり、このとき、車両は赤信号灯で停車していると判断して自動停止条件が成立したと判定する。なお、車両の減速中にエンジン10を停止しても良く、この場合、エンジン10の自動停止条件とは、車速が一定速度以下、エンジン回転数が一定回転以下、エンジン冷却水温が一定温度以下、冷暖房装置がOFF状態であり、このとき、車両は減速中であると判断して自動停止条件が成立したと判定する。
このステップS1にて、エンジン10の自動停止条件が成立したと判定されると、ステップS2に移行して、インジェクタ37による燃料噴射を停止すると共に、点火プラグ38による点火を停止する。
ステップS3では、エンジン10が自動停止している状態で、エンジン再始動条件が成立したかどうかを判定する。ここで、エンジン10の再始動条件とは、例えば、車速が0km/h、ブレーキスイッチがON状態、シフトレバーの操作位置が走行(1、2、D、R)位置であるときに、ドライバに発進する意思があると判断して再始動条件が成立したと判定する。このステップS3にて、エンジン10の再始動条件が成立したと判定されると、ステップS4に移行して、エンジン10を着火始動するための準備に入る。
即ち、ステップS4にて、ECU42は、吸気・排気可変動弁機構27,28を制御することで、吸気弁21と排気弁22の開閉タイミングを所定量遅角する。この場合、吸気弁21と排気弁22の遅角量を同量とすることで、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップを確保する。そして、ステップS5にて、エンジン10の自動停止中に、クランク角センサ44の検出結果に基づいて膨張行程で停止している気筒を判別し、この膨張行程で停止している気筒の燃焼室18に対してインジェクタ37により所定量の燃料を噴射し、点火プラグ38により混合気に点火することで、この気筒は爆発力を得てピストン14を下降させる。
そして、膨張行程で停止している気筒が爆発してピストン14を下降させるとクランクシャフト16を回転し、この回転力が膨張行程で停止している気筒に続く気筒、つまり、圧縮行程で停止している気筒に伝達され、ピストン14が上昇して圧縮行程が開始される。そして、この気筒に対して、同様に、インジェクタ37により所定量の燃料を噴射し、点火プラグ38により混合気に点火することで、この気筒は爆発力を得てピストン14を下降させる。更に、この圧縮行程で停止している気筒に続く気筒に対しては、通常通りに吸気ポート19から空気を吸入し、インジェクタ37から所定量の燃料を噴射すると共に、点火プラグ38により混合気に点火することで、爆発力を得てピストン14を下降させることとなり、これらの爆発力が所定時間継続させることでクランクシャフト16を駆動し、エンジン10を再始動させる。
ここで、このときのエンジン挙動を詳細に説明する。図3に示すように、膨張行程で停止している気筒では、残留している空気(酸素)量に対して所定量の燃料が噴射され、適正な混合気に対して点火されることで爆発力を得て、ピストン14を下降してクランクシャフト16を回転させる。クランクシャフト16の回転力は、膨張行程で停止している気筒に続く気筒、つまり、圧縮行程で停止している気筒に伝達され、この気筒のピストン14を上昇させる。このとき、膨張行程で停止している気筒では、排気弁22の開弁時期が遅角されているため、燃焼室18内の密閉状態が長く継続されて燃焼圧の急激な低下が抑制されることとなり、燃焼ガスによる膨張力を促進してクランクシャフト16を効率良く回転することができる。また、圧縮行程で停止している気筒では、吸気弁21の閉止時期が遅角されているため、燃焼室18内の開放状態が長く継続されて筒内圧の急激な上昇が抑制されることとなり、筒内圧がピストン14を上昇させる大きな抵抗になることはなく、膨張行程で停止している気筒の膨張力により確実に圧縮行程を完了することができる。
即ち、図5に示すように、エンジン10が再始動されるとき、膨張行程で停止している第1気筒#1の膨張により筒内圧が所定圧まで上昇し、排気弁22が開放して排気行程に移行することでこの筒内圧が徐々に下降する。このとき、排気弁22の開弁時期が遅角されているため、同図二点鎖線で表すような筒内圧の急激な低下が抑制され、同図に実線で表すように筒内圧が徐々に低下する。また、圧縮行程で停止している第3気筒#3の圧縮により筒内圧が所定圧まで徐々に上昇し、吸気弁21が閉止して膨張行程に移行することでこの筒内圧が急激に上昇する。このとき、吸気弁21の閉止時期が遅角されているため、同図二点鎖線で表すような圧縮行程での筒内圧の増大が抑制され、同図に実線で表すように筒内圧が低下する。従って、第1気筒#1に続いて第3気筒#3がTDCを超えてクランクシャフト16を回転させることで、エンジン10は適正に始動される。
また、このとき、吸気弁21及び排気弁22の開閉タイミングを遅角しても、この排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップが確保されており、全ての気筒において、燃焼室18が密閉状態となる期間がなくなり、ピストン14によるポンプロスの発生を防止することができる。即ち、図6に示すように、排気行程から吸気行程に移行するとき、吸気弁21及び排気弁22の開放時期がオーバーラップしているため、同図二点鎖線で表すような筒内圧の低下によるポンピングロスが抑制され、同図に実線で表すように筒内圧が一定に維持される。
その後、図2に戻り、ステップS6では、エンジン10の着火始動が完了したかどうかを判定し、着火始動ができなかった場合には、ステップS7でスタータモータによりエンジン10を始動する。そして、着火始動またはスタータモータ始動によりエンジン10が再始動されると、ステップS8にて、ECU42は、吸気・排気可変動弁機構27,28を制御することで、吸気弁21と排気弁22の開閉タイミングを通常位置に戻す。
このように実施例1のエンジン始動装置にあっては、燃焼室18に燃料を直接噴射するインジェクタ37及び燃焼室18の混合気に点火する点火プラグ38を設けると共に、エンジン10のクランク角度を検出するクランク角センサ44、吸気弁21及び排気弁22の開閉タイミングを変更可能な吸気・排気可変動弁機構27,28を設け、ECU42は、エンジン10の再始動指令が入力されたときに、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップを確保しつつ、吸気弁21及び排気弁22の開閉タイミングを遅角する一方、クランク角センサ41が検出した膨張行程にある気筒に対して燃料噴射を実行すると共に点火を実行するようにしている。
従って、膨張行程で停止している気筒では、排気弁22の開弁時期が遅角されて燃焼室18の密閉状態が長く継続されることとなり、燃焼圧の急激な低下が抑制されて燃焼ガスによる膨張力を促進し、クランクシャフト16を効率良く回転することができる。また、圧縮行程で停止している気筒では、吸気弁21の閉止時期が遅角されて燃焼室18内の開放状態が長く継続されることとなり、筒内圧の増大が抑制されてピストン14を上昇させる大きな抵抗になることはなく、膨張行程で停止している気筒の膨張力により確実に圧縮行程を完了することができる。更に、吸気弁21及び排気弁22の開閉タイミングを遅角しても、この排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップが確保されているため、排気行程から吸気行程への移行時に、ピストン14によるポンプロスの発生を防止することができる。その結果、エンジン10の再始動時に、膨張行程で停止している気筒に続いて圧縮行程で停止している気筒の燃焼室18に燃料を噴射して点火することで適正な爆発力を確保することができ、スタータモータを用いずにエンジン10を確実に始動することができる。
図7は、本発明の実施例2に係るエンジン始動装置を表す概略構成図、図8は、実施例2のエンジン始動装置における吸気弁及び排気弁の開閉タイミングを表す概略図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施例2のエンジン始動装置において、図7に示すように、エンジン10の動弁機構は、運転状態に応じて吸気弁21を最適な開閉タイミングに制御する吸気可変動弁機構51となっている。この吸気可変動弁機構51は、例えば、吸気カムシャフト23の各吸気カム25に隣接して設けられた図示しない第2吸気カムを有し、吸気カムシャフト23を軸方向に移動して吸気カム25と第2吸気カムとを切り換えることで、吸気弁21の作用角を変更してそのリフト量を増減すると共に、閉止時期を進角または遅角することができるものである。
そして、ECU42は、エンジン運転状態に基づいてこの吸気可変動弁機構51を制御可能であり、図8に示すように、エンジン10の再始動時に、アイドル運転時に対して、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップを0度クランク角度以上に確保しつつ、吸気弁21の閉止時期を遅角するようにしている。即ち、エンジン10の再始動時に、吸気可変動弁機構51を制御し、吸気弁21の閉止時期を、図8に二点鎖線で表すアイドル領域から、実線で表す再始動領域まで遅角することで、燃焼室18が密閉状態となる期間を短縮し、圧縮行程にある気筒にて、ピストン14が適正に上昇してエンジン10が確実に再始動可能としている。このとき、吸気弁21の開放時期は変更しないため、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップ領域が確保され、燃焼室18が密閉状態となる期間がなくなり、ピストン14によるポンプロスの発生が防止される。
従って、図7及び図8に示すように、エンジン10の自動停止条件が成立すると、インジェクタ37による燃料噴射を停止すると共に、点火プラグ38による点火を停止し、エンジン10を自動停止する。この状態で、エンジン再始動条件が成立したら、ECU42は、吸気可変動弁機構51を制御することで、吸気弁21の作用角、つまり、閉止時期を所定量遅角する。そして、膨張行程で停止している気筒の燃焼室18に対してインジェクタ37により所定量の燃料を噴射し、点火プラグ38により混合気に点火する。
すると、膨張行程で停止している気筒が爆発してピストン14を下降させるとクランクシャフト16を回転し、この回転力が膨張行程で停止している気筒に続く気筒、つまり、圧縮行程で停止している気筒に伝達され、ピストン14が上昇して圧縮行程が開始される。このとき、圧縮行程で停止している気筒では、吸気弁21の閉止時期が遅角されているため、燃焼室18内の開放状態が長く継続されて筒内圧の急激な上昇が抑制されることとなり、筒内圧がピストン14を上昇させる大きな抵抗になることはなく、膨張行程で停止している気筒の膨張力により確実に圧縮行程を完了することができる。そして、この気筒に対して、同様に、インジェクタ37により所定量の燃料を噴射し、点火プラグ38により混合気に点火することで、この気筒は爆発力を得てピストン14を下降させる。また、このとき、吸気弁21の閉止時期を遅角しても、吸気弁21の開放時期は遅角されないために排気弁22の閉止時期とのオーバーラップが確保されており、燃焼室18が密閉状態となる期間がなくなり、ピストン14によるポンプロスの発生を防止することができる。
その後、圧縮行程で停止している気筒に続く気筒に対して、通常通りに吸気ポート19から空気を吸入し、インジェクタ37から所定量の燃料を噴射すると共に、点火プラグ38により混合気に点火することで、爆発力を得てピストン14を下降させることとなり、こられの爆発力が所定時間継続させることでクランクシャフト16を駆動し、エンジン10を再始動させる。
このように実施例2のエンジン始動装置にあっては、吸気弁21の作用角及び閉止時期を変更可能な吸気可変動弁機構51を設け、ECU42は、エンジン10の再始動指令が入力されたときに、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップを確保しつつ、吸気弁21の閉止時期を遅角する一方、クランク角センサ41が検出した膨張行程にある気筒に対して燃料噴射を実行すると共に点火を実行するようにしている。
従って、膨張行程で停止している気筒では、適正に爆発が発生してクランクシャフト16を回転することができ、圧縮行程で停止している気筒では、吸気弁21の閉止時期が遅角されて燃焼室18内の開放状態が長く継続されることとなり、筒内圧の増大が抑制されてピストン14を上昇させる大きな抵抗になることはなく、膨張行程で停止している気筒の膨張力により確実に圧縮行程を完了することができる。そして、吸気弁21の閉止時期を遅角しても、排気弁22との開放時期のオーバーラップが確保されているため、排気行程から吸気行程への移行時に、ピストン14によるポンプロスの発生を防止することができる。その結果、エンジン10の再始動時に、膨張行程で停止している気筒に続いて圧縮行程で停止している気筒の燃焼室18に燃料を噴射して点火することで適正な爆発力を確保することができ、スタータモータを用いずにエンジン10を確実に始動することができる。
また、エンジン10の再始動時に吸気弁21の作用角を拡大してその閉止時期を遅角するため、排気弁22の閉止時期がTDC付近に維持されることとなり、内部EGRの増加を低減することができ、連続爆発時の発生トルクの低下を抑制することができる。更に、排気可変動弁機構を不要として動弁機構の小型化を図ることができると共に、製造コストの増加を抑制することができる。
図9は、本発明の実施例3に係るエンジン始動装置を表す概略構成図、図10は、実施例3のエンジン始動装置における吸気弁及び排気弁の開閉タイミングを表す概略図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施例3のエンジン始動装置において、図9に示すように、エンジン10の動弁機構は、運転状態に応じて吸気弁21及び排気弁22を最適な開閉タイミングに制御する吸気・排気可変動弁機構27,61となっている。この吸気可変動弁機構27は、実施例1と同様に、吸気弁21の作用角を一定としてその開閉タイミングを変更することで、吸気弁21の開放時期と閉止時期を進角または遅角することができるものである。また、排気可変動弁機構61は、例えば、排気カムシャフト24の各吸気カム26に隣接して設けられた図示しない第2排気カムを有し、排気カムシャフト24を軸方向に移動して排気カム26と第2排気カムとを切り換えることで、排気弁22の作用角を変更してそのリフト量を増減すると共に、閉止時期を進角または遅角することができるものである。
そして、ECU42は、エンジン運転状態に基づいて吸気可変動弁機構27を制御可能であり、図10に示すように、エンジン10の再始動時に、アイドル運転時に対して、吸気弁21の開閉タイミング(開放時期及び閉止時期)を遅角するようにしている。一方、ECU42は、エンジン運転状態に基づいて排気可変動弁機構61を制御可能であり、エンジン10の再始動時に、アイドル運転時に対して、排気弁21の閉止時期を吸気弁21の開放時期に合わせて遅角することで、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップを0度クランク角度以上に確保するようにしている。
即ち、エンジン10の再始動時に、吸気可変動弁機構51により吸気弁21の開放時期と閉止時期を、図10に二点鎖線で表すアイドル領域から、実線で表す再始動領域まで遅角することで、燃焼室18が密閉状態となる期間を短縮し、圧縮行程にある気筒にて、ピストン14が適正に上昇してエンジン10が確実に再始動可能としている。また、このエンジン10の再始動時に、排気可変動弁機構51により排気弁22の閉止時期を、図10に二点鎖線で表すアイドル領域から、実線で表す再始動領域まで、吸気弁21と同量遅角することで、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップ領域を確保する。そのため、燃焼室18が密閉状態となる期間がなくなり、ピストン14によるポンプロスの発生を防止するようにしている。
従って、図9及び図10に示すように、エンジン10の自動停止条件が成立すると、インジェクタ37による燃料噴射を停止すると共に、点火プラグ38による点火を停止し、エンジン10を自動停止する。この状態で、エンジン再始動条件が成立したら、ECU42は、吸気可変動弁機構27を制御することで、吸気弁21の開閉タイミング、つまり、開閉時期と閉止時期を所定量遅角し、排気可変動弁機構61を制御することで、排気弁22の作用角、つまり、閉止時期を所定量遅角する。そして、膨張行程で停止している気筒の燃焼室18に対してインジェクタ37により所定量の燃料を噴射し、点火プラグ38により混合気に点火する。
すると、膨張行程で停止している気筒が爆発してピストン14を下降させるとクランクシャフト16を回転し、この回転力が膨張行程で停止している気筒に続く気筒、つまり、圧縮行程で停止している気筒に伝達され、ピストン14が上昇して圧縮行程が開始される。このとき、圧縮行程で停止している気筒では、吸気弁21の閉止時期が遅角されているため、燃焼室18内の開放状態が長く継続されて筒内圧の急激な上昇が抑制されることとなり、筒内圧がピストン14を上昇させる大きな抵抗になることはなく、膨張行程で停止している気筒の膨張力により確実に圧縮行程を完了することができる。そして、この気筒に対して、同様に、インジェクタ37により所定量の燃料を噴射し、点火プラグ38により混合気に点火することで、この気筒は爆発力を得てピストン14を下降させる。また、このとき、吸気弁21の開閉タイミングを遅角すると共に、排気弁22の閉止時期を吸気弁21の開放時期に合わせて遅角するため、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップが確保されることとなり、燃焼室18が密閉状態となる期間がなくなり、ピストン14によるポンプロスの発生を防止することができる。
その後、圧縮行程で停止している気筒に続く気筒に対して、通常通りに吸気ポート19から空気を吸入し、インジェクタ37から所定量の燃料を噴射すると共に、点火プラグ38により混合気に点火することで、爆発力を得てピストン14を下降させることとなり、これらの爆発力が所定時間継続させることでクランクシャフト16を駆動し、エンジン10を再始動させる。
このように実施例3のエンジン始動装置にあっては、吸気弁21の開閉タイミングを変更可能な吸気可変動弁機構27と、排気弁22の作用角及び閉止時期を変更可能な排気可変動弁機構61を設け、ECU42は、エンジン10の再始動指令が入力されたときに、吸気弁21の開閉タイミングを遅角すると共に、排気弁22の閉止時期を遅角して吸気弁21とのオーバーラップを確保し、クランク角センサ41が検出した膨張行程にある気筒に対して燃料噴射を実行すると共に点火を実行するようにしている。
従って、膨張行程で停止している気筒では、適正に爆発が発生してクランクシャフト16を回転することができ、圧縮行程で停止している気筒では、吸気弁21の閉止時期が遅角されて燃焼室18内の開放状態が長く継続されることとなり、筒内圧の増大が抑制されてピストン14を上昇させる大きな抵抗になることはなく、膨張行程で停止している気筒の膨張力により確実に圧縮行程を完了することができる。そして、吸気弁21の開放時期遅角に合わせて排気弁22の閉止時期を遅角することで、両者の開放時期のオーバーラップが確保されることとなり、排気行程から吸気行程への移行時に、ピストン14によるポンプロスの発生を防止することができる。その結果、エンジン10の再始動時に、膨張行程で停止している気筒に続いて圧縮行程で停止している気筒の燃焼室18に燃料を噴射して点火することで適正な爆発力を確保することができ、スタータモータを用いずにエンジン10を確実に始動することができる。
なお、上述した各実施例では、エンジン10の再始動指令が入力されると、吸気・排気可変動弁機構27,28,51,61により吸気弁21及び排気弁22の開閉タイミングを遅角し、その後、エンジン着火始動を実行するようにしたが、エンジン10が自動停止するとき、または、自動停止した後に吸気・排気可変動弁機構27,28,51,61により吸気弁21及び排気弁22の開閉タイミングを遅角し、エンジン10の再始動指令が入力されると、エンジン着火始動を実行するようにしてもよい。
また、上述した各実施例にて、エンジン10を始動するときに、膨張行程で停止している気筒の燃焼室18に対して燃料を噴射すると共に、点火することで燃焼させるようにしている。この場合、停止クランク角度及びエンジン冷却水温、更に、クランクケース内圧に基づいて燃料噴射量を設定するとよい。即ち、停止クランク角度により燃焼室18の容積がわかり、エンジン冷却水温により空気密度がわかり、クランクケース内圧により筒内圧がわかるため、これらのデータにより最適な燃料噴射量を設定することができる。
また、上述した各実施例では、本発明のエンジン始動装置を、エンジン10が自動停止したときの再始動装置として適用したが、エンジン10が完全に停止した状態から、イグニッションキースイッチによる始動装置としても適用することができる。
そして、上述した各実施例では、本発明のエンジン始動装置を筒内噴射式の4気筒エンジンに適用して説明したが、この形式のエンジンに限らず、6気筒エンジンや直列型またはV型エンジンに適用することもできる。
以上のように、本発明に係るエンジン始動装置は、排気弁の閉止時期と吸気弁の開放時期のオーバーラップを確保しつつ吸気弁の閉止時期を遅角した後、膨張行程にある気筒に対して燃料噴射及び点火を実行して始動するものであり、筒内噴射式のエンジンであれば、いずれの種類のエンジンに用いても好適である。
本発明の実施例1に係るエンジン始動装置を表す概略構成図である。
実施例1のエンジン始動装置におけるエンジン制御を表すフローチャートである。
エンジン停止時における気筒内挙動を表す概略図である。
吸気弁及び排気弁の開閉タイミングを表す概略図である。
#1気筒と#3気筒の各筒内圧及びクランク角度の変化を表すグラフである。
クランク角度に対する筒内圧を表すグラフである。
本発明の実施例2に係るエンジン始動装置を表す概略構成図である。
実施例2のエンジン始動装置における吸気弁及び排気弁の開閉タイミングを表す概略図である。
本発明の実施例3に係るエンジン始動装置を表す概略構成図である。
実施例3のエンジン始動装置における吸気弁及び排気弁の開閉タイミングを表す概略図である。
従来のエンジン始動装置における吸気弁及び排気弁の開閉タイミングを表す概略図である。
クランク角度に対する筒内圧を表すグラフである。
符号の説明
10 エンジン
14 ピストン
16 クランクシャフト
18 燃焼室
19 吸気ポート
20 排気ポート
21 吸気弁
22 排気弁
27,51 吸気可変動弁機構
28,61 排気可変動弁機構
37 インジェクタ(燃料噴射手段)
38 点火プラグ(点火手段)
42 電子制御ユニット、ECU(制御手段)
44 クランク角センサ(クランク角度検出手段)