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カナダ企業が7兆円提案 日本人の好み理解できるか
<Miho Inada and Megumi Fujikawa/2024年10月30日>
東京郊外のある工場で、親子丼が小さな鍋で一つずつ調理されている。特別な飼料で育てた鶏から採取した卵が使われており、黄身の色が濃く、風味豊かなのが特徴だ。
この厳重に守られたレシピは、日本のコンビニエンスストア大手セブン―イレブンのためだけに用意されたものだ。
親子丼をはじめとする多くの食品がこの先どうなるかは、セブン―イレブンの親会社であるセブン&アイ・ホールディングスに対する買収提案の行方による。もし実現すれば、外国企業による日本企業の買収としては過去最大規模になる。
セブン&アイの経営陣は、米国のコンビニ「サークルK」を傘下に持つカナダ企業アリマンタシォン・クシュタールによる470億ドル(約7兆2000億円)の買収提案に抵抗している。彼らは、外国企業の支配下になれば、日本特有のコンビニ運営方法に起こるかもしれない事態を懸念している。
セブン&アイの取締役会は、クシュタールからの当初の提案を拒否する9月の書簡で「食品小売り、銀行業およびその他のサービスなど、日本の消費者の日常生活において不可欠な役割を果たしている点」を指摘した。
セブン&アイの井阪隆一社長は、クシュタールの経営陣に対する直接の批判を避けつつも、自身が率いる現在のチームは「セブン―イレブン・ブランドの高品質な“食”」を中心に据え、世界的な成長を構築するのに最適だと述べた。
セブン―イレブン発祥の地である米国では通常、コンビニを食通の集まる場所だと考える人はまずいない。だが日本で半世紀かけて進化を遂げたセブン―イレブンは、おにぎりに使う米の歯ごたえやサンドイッチのレタスのシャキシャキ感にこだわる人々を十分満足させるレベルにある。
日本では、それほど味にうるさい人が多いの…
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