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ニセ信号の多くはロシア・ウクライナ・イスラエルが発信元か
<Andrew Tangel and Drew FitzGerald/2024年9月26日>
アメリカン航空のダン・ケアリー機長は、3月にボーイング777でパキスタン上空を通過中、コックピット(操縦室)の機器が「うそ」をついていると知った。高度3万2000フィート(約1万メートル)で「機首を上げろ!」という地面に接近したときの警告が鳴り響いたのだ。
この誤った警告は、民間パイロットが日常的に遭遇する電子戦の一種、GPS(全地球測位システム)の「スプーフィング(なりすまし攻撃)」に起因するものだった。このときは虚偽だと判明したものの、各国の軍隊が無人機(ドローン)やミサイルを撃退するために使う偽物の信号が、米航空会社の国際線など民間航空機に影響を及ぼすケースが増えていることを浮き彫りにした。
「憂慮すべき事態だったが、巡航高度に達していたため、慌てることはなかった」とケアリー機長は言う。だが、万一エンジン故障など飛行中の緊急事態が同時に発生していれば、状況は「極めて危険だったかもしれない」。
パイロットや航空業界関係者、規制当局者は、GPS信号になりすました偽物がウクライナや中東付近の紛争地域以外にも広がっており、操縦室のナビゲーションシステムや安全システムを混乱させ、乗客や貨物を乗せた民間ジェット機のパイロットの注意力を奪っていると指摘する。
この種の攻撃は約1年前から多数の商業フライトに影響を及ぼし始めた、とパイロットや航空専門家は話している。SkAIデータ・サービシズとチューリヒ応用科学大学の分析によると、日常的に影響を受ける便数は2月の数十便から8月には1100便余りに急増している。
最新の旅客機はGPSに大きく依存しており、虚偽データが操縦室のシステム全体に波及し、数分間あるいはフライト中ずっと不具合が続く…
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