先日のPOSSEの政策研究会で、リチャード・セネット著『不安な経済/漂流する個人』(原題 ”The Culture of the New Capitalism” )を題材として扱った。本書では、経済の流動化に伴って、個人の社会的・精神的な不安定化が進んでいることを明らかにし、それへの対抗的な価値や習慣=「文化」を探ることが主題となっている。セネットは資本主義の変容が個人に与える影響について、3つの論点を取り上げている。 まず、組織の変容(官僚制度)についてである。19世紀初頭から末頃までの資本主義国では、失業率だけでなく新規事業の破産件数も高く、労働者はいつ職がなくなるか分からない状態に置かれていたのだが、このような状況を変えたのが官僚制度であったという。官僚制度は企業内で従業員全員を何らかの階級に振り分け、その階級ごとに決められた権限を与えるという組織編制の機構で、資本主義の不安定性をあ