宮崎県高千穂町で、平成17年の台風の影響で廃線になった旧高千穂鉄道の線路を使った観光カートが快走している。高さ105メートルの鉄橋を渡り、雄大な山々を満喫するコースが魅力で、乗客数はここ5年で10倍以上の年間約4万人に達した。会員制交流サイト(SNS)でも話題を呼び、外国人も多く訪れる。旧駅舎周辺は廃線鉄道の記憶を伝える場にもなっている。 「今渡っているのが、かつて東洋一高いと称された高千穂鉄橋です」 カートを運転する斉藤拓由氏(44)のアナウンスに、乗客は立ち上がって橋の下をのぞき込んだ。鉄橋からは岩戸川沿いの山並みが楽しめ、笑顔で写真撮影が始まった。 カートは30人乗りで、旧高千穂駅からトンネルを抜け、鉄橋までの往復約5キロを時速約15キロで走る。斉藤氏は元々、旧高千穂鉄道の運転士だった。乗車中、廃線に至った経緯についても説明する。「ここに鉄道が走っていた記憶を後世につないでいきたい」