「これは誰かに届くのかなあ。なあ、誰か、聴いてるのかよ。 今、このレコードを聴いてる奴、教えてくれよ。届いてるのかよ」 伊坂幸太郎の『フィッシュストーリー』で、売れないパンクバンドのボーカル五郎がレコーディング中に突然語り出した言葉です。いい曲だと信じているのに、届いている手応えがないことへの苛立ち。コミュニケーションの仕事をしている者としては、その気持ちがよくわかります。 「話題の広告」とかってよく言いますけど、正直なところ僕はふだんの生活の中で広告が話題になってる現場を目撃したことがありません。あのCM見た?あのコピーいいよね!と巷の人が話している場面に残念ながら遭遇したことがないのです。誰かと一緒にテレビを見ているときでもなければ、なかなか広告の話題を持ち出したりしないと思うんですよね、世の中の人って。そりゃあ僕自身はまわりの人と広告の話をしますよ。けど、それは仕事ですからね。それに