WO2006085615A1

WO2006085615A1 - 自発光素子および自発光パネル

Info

Publication number: WO2006085615A1
Application number: PCT/JP2006/302357
Authority: WO
Inventors: Yoshinori Fukuda; Masanobu Akagi
Original assignee: Tohoku Pioneer Corporation
Priority date: 2005-02-10
Filing date: 2006-02-10
Publication date: 2006-08-17

Description

明細書

自発光素子および自発光パネル

技術分野

[0001] この発明は、自発光素子および自発光パネルに関する。

背景技術

[0002] 従来から、電極対の間に発光層が設けられて、当該電極間に電圧が印加されることにより発光層内で正孔と電子との再結合によって発光する自発光素子がある。このような自発光素子は、ディスプレイあるいは照明や各種情報表示などを行う自発光パネルに利用されている。このような自発光素子には、たとえば発光層を有機化合物によって形成した有機 EL (Electro Luminescence)素子などがある。

[0003] 有機 EL素子は、電極間において有機層が正しく介在している場合にはダイオード特性を示す。ところが、支持基板上にキズ、突起、異物などが存在すると、電極や有機層が乱れた状態で成膜されてしまう。乱れた状態で成膜された有機層においては、局所的に層の厚さが薄い部位が存在する。層の厚さが薄い部位では、絶縁耐性が低くなる。同様に、導電性の異物が基板上に付着していると、やはり、電極や有機層が乱れた状態で成膜されてしまい、局所的に絶縁耐性が低い部位が生じてしまう。

[0004] 有機 EL素子における絶縁耐性の低、部位はダイオード特性を示さな、。また、有機 EL素子における絶縁耐性の低、部位は、電極間短絡が発生したり低インピーダンスとなっていわゆるリーク電流が発生した状態となったりする。リーク電流の発生は、素子破壊や駆動不良などの原因となる。

[0005] この対策として、従来は、下部電極を極力平滑なものとしたり、基板に付着する異物を除去したりして対応している。また、基板上に存在する不連続な構造物などを絶縁膜で覆うことで、ショートを未然に防ぐという対策もある。さらに、有機物を成膜する際に基板を回転させるなどして、異常形状部を覆いやすくするとともに、上部電極成膜時には基板を静止させることで、異常形状部を覆わな、ように成膜して電極間ショートを防ぐ技術も提案されている。その他、有機層を厚膜化することで、キズ、突起、異物などのリーク電流の原因部位を十分に覆ってしまう技術もある。 [0006] しかし、有機層は一般的にキャリア密度が低ぐ抵抗率が 1 X 10¹⁰ Ω ' cm以上であることが多いので、厚膜ィ匕すると電極間の抵抗が増大し、駆動電圧が高くなつてしまうという問題があった。

[0007] ここで、自発光素子においては、発光に際しての駆動電圧を低くするための各種従来技術が存在する。その一つとして、たとえば陽極に接する有機層（正孔注入層など )に電子受容性物質をドープすることで、有機層（正孔注入層など)のキャリア密度を増加させるようにした技術がある（たとえば、下記特許文献 1、 2参照。；)。このような技術により、陽極から有機層（正孔注入層など)への正孔注入障壁を小さくし、または、注入機構をトンネル注入として正孔注入に必要なエネルギーを低減して、駆動電圧を低下させることができる。

[0008] また、電子受容性物質がドープされたドープ層と電子受容性物質を含まないバッファ層とを備え、ドープ層の厚さをバッファ層の厚さよりも厚くすることで、駆動電圧を低下させるようにした技術がある（たとえば、下記特許文献 3参照。 )₀

[0009] 特許文献 1 :特開平 11 251067号公報

特許文献 2：特開 2003— 217862号公報

特許文献 3：特表 2004— 537149号公報

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0010] し力しながら、上述した特許文献 1、 2に記載された従来技術では、電子受容性物質がドープされた有機層（正孔注入層など）は、正孔を伝導キャリアとする p型導電体となる。このため、陽極から有機層（正孔注入層など)への正孔注入を容易にすることはできるが、導電性の増加によって電子ブロック性能が低下し、陰極から注入された電子が発光層を通過してドープされた有機層（正孔注入層など)や陽極に伝導されてしまう。

[0011] その結果、発光層以外の領域でも電子と正孔の再結合が発生し、再結合エネルギ一が有効に発光エネルギーに変換されなくなったり、電子がそのまま対向電極に達して再結合に寄与しない電流になり、自発光パネルにおける電流効率が低下したりするという問題点がある。すなわち、無駄な消費電力が力かってしまうという問題があつた o

[0012] また、上述した特許文献 3に記載された技術では、駆動電圧を増大させることなく厚膜ィ匕できるが、ドープされた導電層を挿入することにより、逆ノィァス電圧を印加したときの漏れ電流 (以下、「膜厚方向の漏れ電流」とする）が増カロしてしまうという問題があった。特に、駆動に際して発光させない有機 EL素子に対して逆ノィァス電圧を印加する、いわゆるパッシブ駆動型の有機 ELパネルにおいては、逆バイアス電圧の印加によって発生した漏れ電流はすべて無効電流となってしまい、電力を無駄に消費してしまうという問題があった。

[0013] また、上述した特許文献 3に記載された技術では、駆動電圧を増大させることなく厚膜化できるが、ドープされた導電層のために、有機 EL素子における各層の積層方向に直交する方向（以降、単に横方向とする）にも伝導性が残るために、いわゆる分離された電極間に横方向の漏れ電流が発生してしまうという問題点がある。単一の基板上に複数の自発光素子が配設された自発光パネルにぉヽては、このような漏れ電流によって、駆動対象である自発光素子 (画素）の周辺がにじんで発光したり、駆動対象である自発光素子に隣接する自発光素子 (画素)も発光したりすることがある。これにより、たとえば、表示画像のエッジが不鮮明となるなどの表示不良（画素のにじみ発光)が発生するという問題があった。

[0014] 有機 EL素子の一部に成膜不良などが原因となって発光不良箇所がある場合、発光不良などの不具合を生じさせる箇所が素子における一部分であれば、この有機 E L素子に適当な大きさの逆バイアス電圧を印加することによって、不良箇所だけに局所電流が流れ、正常な部位には微小な逆バイアス電流しか流れな、。

[0015] 発光不良箇所が局所的かつ瞬間的にショートすることで、微小部位の発熱または放電により、不良箇所が物理的に破壊され、電極間に局所電流が流れなくなるように補修することができ、当該素子における発光状態を良好な範囲に収める（リペアする )ことが可能である。このリペアによって、自発光パネルの製造に際しての歩留まりの向上を図ることができる。し力しながら、上述した漏れ電流が発生していると、有機 EL 素子における発光不良箇所に電流^^めることができず、リペアすることができな、という問題があった。 [0016] この発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、この発明は、発光層内で電子と正孔の再結合を十分に行い自発光パネルの輝度の低下を防ぐこと、自発光素子における各層の横方向の漏れ電流を防止し、無効な電流や発光のにじみを抑止すること、自発光パネルの電極間ショートによる表示不良を防ぐこと、自発光素子の逆バイアス印加時における逆バイアス耐圧の向上を図ること、自発光素子の逆バイアス特性向上による自発光パネルの無駄な電力を消費しな!、こと、自発光素子の逆バイアス特性向上による自発光パネルの製造の歩留まり向上を図ることなどを目的とする。

課題を解決するための手段

[0017] 発明者は、実験から、上述した特許文献 3に記載されているように、ドープ層を厚くするとともにバッファ層を薄くするば力りでなぐ lOnm程度のドープ層が存在することにより、有機 EL素子（自発光素子)の駆動電圧力 Sバッファ層の厚さによらず一定になることを検証した。

[0018] 請求項 1の発明にかかる自発光素子は、下部電極および当該下部電極に対向する上部電極を備える電極対と、前記電極対の間に設けられた発光層と、前記発光層と前記下部電極との間に設けられて、電子受容性物質がドープされたドープ層と、前記ドープ層と前記発光層との間に設けられて、前記電極対の対向方向に沿った寸法 (以下、膜厚とする）が前記ドープ層の膜厚よりも大きいバッファ層と、を備えることを特徴とする。

[0019] 請求項 2の発明にかかる自発光素子は、下部電極および当該下部電極に対向する上部電極を備える電極対と、前記電極対の間に設けられた発光層と、前記発光層と前記上部電極との間に設けられて、電子受容性物質がドープされたドープ層と、前記ドープ層と前記発光層との間に設けられて、前記膜厚が前記ドープ層の膜厚よりも大きいバッファ層と、を備えることを特徴とする。

[0020] 請求項 7の発明にかかる自発光素子は、下部電極および当該下部電極に対向する上部電極を備える電極対と、前記電極対の間に設けられた発光層と、前記発光層と前記下部電極との間に設けられて、電子供与性物質がドープされたドープ層と、前記ドープ層と前記発光層との間に設けられて、前記膜厚が前記ドープ層の膜厚よりも大きいバッファ層と、を備えることを特徴とする。

[0021] 請求項 8の発明にかかる自発光素子は、下部電極および当該下部電極に対向する上部電極を備える電極対と、前記電極対の間に設けられた発光層と、前記発光層と前記上部電極との間に設けられて、電子供与性物質がドープされたドープ層と、前記ドープ層と前記発光層との間に設けられて、前記膜厚が前記ドープ層の膜厚よりも大きいバッファ層と、を備えることを特徴とする。

[0022] 請求項 14の発明にかかる自発光パネルは、下部電極と当該下部電極に対向する上部電極とを備える電極対と、前記電極対の間に設けられた発光層と、前記発光層と前記下部電極との間に設けられて、電子受容性物質または電子供与性物質がドープされたドープ層と、前記ドープ層と前記発光層との間に設けられて、前記膜厚が前記ドープ層の膜厚よりも大きいバッファ層と、を備える自発光素子が、基板上に複数配設されて、ることを特徴とする。

[0023] 請求項 15の発明にかかる自発光パネルは、下部電極と当該下部電極に対向する上部電極とを備える電極対と、前記電極対の間に設けられた発光層と、前記発光層と前記上部電極との間に設けられて、電子受容性物質または電子供与性物質がドープされたドープ層と、前記ドープ層と前記発光層との間に設けられて、前記膜厚が前記ドープ層の膜厚よりも大きいバッファ層と、を備える自発光素子が、基板上に複数配設されて、ることを特徴とする。

[0024] 請求項 16の発明にかかる自発光パネルは、下部電極および当該下部電極に対向する上部電極を備える電極対と、前記電極対の間に設けられた発光層と、前記発光層と前記下部電極との間に設けられて、電子供与性物質がドープされたドープ層と、前記ドープ層と前記発光層との間に設けられて、前記膜厚が前記ドープ層の膜厚よりも大きいバッファ層と、を備える自発光素子が、基板上に複数配設されていることを特徴とする。

[0025] 請求項 17の発明にかかる自発光パネルは、下部電極および当該下部電極に対向する上部電極を備える電極対と、前記電極対の間に設けられた発光層と、前記発光層と前記上部電極との間に設けられて、電子供与性物質がドープされたドープ層と、前記ドープ層と前記発光層との間に設けられて、前記膜厚が前記ドープ層の膜厚よりも大きいバッファ層と、を備える自発光素子が、基板上に複数配設されていることを特徴とする。

図面の簡単な説明

[図 1]図 1は、第 1の実施の形態における有機 EL素子の構造の一例を示す断面図である。

[図 2]図 2は、第 2の実施の形態における有機 EL素子の構造の一例を示す断面図である。

[図 3]図 3は、第 3の実施の形態における有機 EL素子の構造の一例を示す断面図である。

[図 4]図 4は、従来の有機 EL素子の構造の一例を示す断面図である。

[図 5]図 5は、従来の形態の有機 EL素子に対して、逆バイアス電圧をかけた場合のキャリアの挙動を示す説明図である。

[図 6]図 6は、この発明の実施の形態の有機 EL素子に対して、逆バイアスをかけた場合のキャリアの挙動を示す説明図である。

[図 7]図 7は、従来の有機 EL素子に対して、逆バイアス電圧をかけた場合のキャリアの挙動を示す説明図である。

[図 8]図 8は、この発明の実施の形態の有機 EL素子に対して、逆バイアスをかけた場合のキャリアの挙動を示す説明図である。

[図 9]図 9は、第 4の実施の形態における自発光パネルの一例を示す断面図である。

[図 10]図 10は、従来の有機 EL素子を備える自発光パネルの一例を示す断面図である。

[図 11]図 11は、自発光パネルにおける有機 EL素子の配列を示す平面図である。

[図 12]図 12は、ドープ層およびバッファ層の膜厚と駆動電圧との関係を示すグラフである。

[図 13]図 13は、バッファ層を厚膜ィ匕することによる効果について説明する説明図 (その 1)である。

[図 14]図 14は、バッファ層を厚膜ィ匕することによる効果について説明する説明図 (その 2)である。 [図 15]図 15は、それぞれ構成が異なる 3種類の有機 EL素子の構造を示す模式図である。

[図 16]図 16は、有機 EL素子に順バイアス電圧をかけた後逆バイアス電圧をかけた場合のダイオード特性を示すグラフである。

[図 17]図 17は、第 5の実施の形態における有機 EL素子の構造を例示する断面図である。

[図 18]図 18は、第 6の実施の形態の有機 EL素子を示す説明図である。

[図 19]図 19は、第 7の実施の形態のマルチフオトン素子を示す縦断側面図である。

[図 20]図 20は、従来の電荷発生層の動作を示す模式図である。

[図 21]図 21は、この発明の実施の形態における電荷発生層の動作を示す模式図である。

[図 22]図 22は、この発明の実施の形態における中間電極のエネルギーレベルの関係を示す模式図である。

[図 23]図 23は、この発明の実施の形態のマルチフオトン素子を示す縦断側面図である。

[図 24]図 24は、この発明の別の実施の形態のマルチフオトン素子を示す縦断側面図である。

符号の説明

100 有機 EL素子

101 電極対

102 ドープ層

103 ノッファ層

104 発光層

105 電荷輸送層

200 有機 EL素子

201 電極対

202 正孔注入層（ドープ層）

203 電子ブロック層（バッファ層） 204 発光層

205 電子注入輸送層

300 有機 EL素子

301 正孔注入輸送層

302 正孔ブロック層（バッファ層）

303 電子注入層（ドープ層）

900 自発光パネル

1700 有機 EL素子

1701 正孔注入層

1702 正孔輸送層

1703 ノッファ層

1900 マノレチフオトン素子

1910 有機 EL素子

1920 有機 EL素子

2300 マノレチフォ卜ン素子

2400 マルチフオトン素子

発明を実施するための最良の形態

[0028] 以下に添付図面を参照して、この発明にかかる自発光素子および自発光パネルの好適な実施の形態を詳細に説明する。以下に説明する各実施の形態では、自発光素子として有機 EL素子を用いた一例について説明する。すなわち、本実施の形態では、有機 EL素子によって自発光素子が実現されて!、る。

[0029] (第 1の実施の形態）

図 1は、第 1の実施の形態における有機 EL素子の構造の一例を示す断面図である。はじめに、第 1の実施の形態における有機 EL素子の構造の一例について、図 1を参照して説明する。図 1に示すように、本実施の形態における有機 EL素子 100は、電極対 101と、ドープ層 102と、バッファ層 103と、発光層 104と、電荷輸送層 105と、を備える。

[0030] 有機 EL素子 100は、基板 106上に形成されている。基板 106は、たとえば、ガラスのように、透明かつ絶縁性を有する材料によって形成される。基板 106は、透明な材料によって形成されるものに限らない。たとえば、有機 EL素子 100を用いた自発光パネル（図示省略）における駆動方式に応じて、アクティブ駆動用 TFT基板、カラーフィルタを設けた基板など、各種の基板 106を適宜使用することが可能である。

[0031] つづいて、有機 EL素子 100が備える各構成について説明する。まず、電極対 101 について説明する。電極対 101は、陽極 101aおよび当該陽極 101aに対向する陰極 101bを備える。図 1に示す電極対 101においては、陽極 101aが、基板 106上に設けられている。この場合、陽極 101aによって下部電極が実現され、陰極 101bによつて上部電極が実現される。

[0032] なお、電極対 101においては、たとえば、陰極 101b力基板 106上に設けられていてもよい。この場合、陰極 101bによって下部電極が実現され、陽極 101aによって上部電極が実現される。いずれの場合にも、基板 106と下部電極との間に、密着性改善、アルカリ溶出防止、平滑ィ匕などを目的とする層を設けてもよい。

[0033] 有機 EL素子 100は、基板 106、陽極 101a、ドープ層 102、バッファ層 103、発光層 104、電荷輸送層 105、陰極 101b、の順に、各構成を順次積層した構造を有している。

[0034] つぎに、ドープ層 102について説明する。ドープ層 102は、発光層 104と陽極 101 aとの間に設けられている。ドープ層 102は、有機材料を主体として形成されて、高い電荷 (電子または正孔)密度を有する電荷輸送層である。ドープ層 102は、電荷輸送性を有する材料に電子受容性物質 (ァクセプタ）がドープされて形成されている。ここで、電荷輸送性を有する材料は、高い正孔輸送機能を有する正孔輸送性材料である。正孔輸送性材料にドープされた電子受容性物質は、ドープ層 102において電子を受け取ることにより、ドープ層 102に正孔を生じさせる。

[0035] なお、第 1の実施の形態では、電荷輸送性材料としての正孔輸送性材料と電子受容性物質とを含むドープ層 102について例示している力これに限定されるものではない。ドープ層 102は、電荷輸送性を有する材料に電子供与性物質 (ドナー）がドープされて形成されていてもよい。この場合、電荷輸送性を有する材料は、高い電子輸送機能を有する電子輸送性材料である。電子輸送性材料にドープされた電子供与性物質は、ドープ層 102において電子を供与することにより、ドープ層 102に電子を生じさせる。

[0036] ドープ層 102において、電荷輸送性を有する材料は、たとえば、ノッファ層 103を形成する材料と同じ材料である。なお、ドープ層 102において、電荷輸送性を有する材料は、たとえば、ノッファ層 103を形成する材料とは異なる材料であってもよい。

[0037] 図示を省略するが、陽極 101aとドープ層 102との間には、陽極 101aに対するドープ層 102の密着性を向上させるための密着層、または、キャリア注入を改善する表面改質層、または、有機 EL素子 100の安定ィ匕を目的とする層をさらに設けてもよい。

[0038] つぎに、バッファ層 103について説明する。バッファ層 103は、ドープ層 102と発光層 104との間に設けられている。ノッファ層 103は、電荷（電子または正孔）をブロックし、各電極（陽極 101aまたは陰極 101b)から注入された電荷 (ブロックされる電荷とは逆の特性を有するもの）を発光層 104に注入 ·輸送する機能を有して、る。

[0039] バッファ層 103は、電極対 101の対向方向（図 1中、矢印 Aの方向）に沿った寸法（以下、膜厚とする）が、ドープ層 102の膜厚よりも大きくなるように設けられている。ノッファ層 103は、ドープ層 102を形成する材料と同じ材料によって形成されてもよいし、ドープ層 102を形成する材料とは異なる材料によって形成されてもよい。バッファ層 103は、有機材料を主体として形成される。

[0040] 第 1の実施の形態のバッファ層 103は、ドープ層 102から電導する正孔を発光層 1 04へ輸送するホール輸送機能を有するとともに、発光層 104からドープ層 102へ移動する電子をブロックする電子ブロック機能を備えている。なお、電子ブロック機能については、詳細を後述する。

[0041] 有機 EL素子 100において、バッファ層 103をはじめとする全ての層は、発光層 104 で発光される光が発光層 104上に積まれる層の面にぉ、て反射する第 1の反射光と、発光層 104で発光されバッファ層 103を透過してドープ層 102側の面で反射する第 2の反射光と、が強め合うような光干渉を生じさせる膜厚に設けられている。また、発光層 104で発光された光のうち、電極対 101の対向方向に放射され、積層界面で多重反射される光が強め合うような光学干渉を生じさせるように膜厚を調整して設けても構わない。 [0042] つぎに、発光層 104について説明する。発光層 104は、電極対 101の間に設けられている。より詳細に、第 1の実施の形態の発光層 104は、ノッファ層 103と電荷輸送層 105との間に設けられている。第 1の実施の形態の発光層 104は、有機化合物によって形成されている。

[0043] つぎに、電荷輸送層 105について説明する。電荷輸送層 105は、発光層 104と陰極 101bとの間に設けられている。なお、第 1の実施の形態では、電荷輸送層 105を電子輸送層として説明する。電荷輸送層 105は、有機材料を主体として形成されている。電荷輸送層 105における電荷輸送性は、この有機材料に電子供与性物質 (ドナー）をドープすることで発現してもよ、。電荷輸送層 105と発光層 104との間には、正孔輸送性の低い正孔ブロック層（図示省略)を挿入してもよい。また、電荷輸送層 1 05を省略しても構わない。

[0044] 図 1に示す有機 EL素子 100における電極対 101に順方向バイアス電圧を印加すると、陰極 101bから電荷輸送層 105に注入された電子が発光層 104へ移動し、陽極 101aからドープ層 102に注入された正孔が発光層 104へ移動する。発光層 104 に移動した電子および正孔は、発光層 104内部において再結合する。この再結合ェネルギ一が発光層 104中の発光分子を励起させる。有機 EL素子 100においては、励起された発光分子が基底状態に戻る際に光を放射することで、エレクト口ルミネッセンスが発生する。

[0045] (第 2の実施の形態）

図 2は、第 2の実施の形態における有機 EL素子の構造の一例を示す断面図である。つぎに、第 2の実施の形態における有機 EL素子の構造の一例について、図 2を参照して説明する。なお、上述した第 1の実施の形態と同一の構成については同一符号を用いて示し、説明も省略する。

[0046] 第 2の実施の形態の有機 EL素子 200は、基板 106と、電極対 201と、正孔注入層

(ドープ層） 202と、電子ブロック層（バッファ層） 203と、発光層 204と、電子注入輸送層 205と、を備える。電子ブロック層（バッファ層） 203の膜厚は、正孔注入層（ドープ層） 202の膜厚よりも厚い。

[0047] まず、電極対 201について説明する。電極対 201は、陽極 201aおよび当該陽極 2 Olaに対向する陰極 201bを備える。図 2に示す電極対 201においては、陽極 201a 力基板 106上に設けられている。陽極 201aは、基板 106上に直接設けられていてもよいし、基板 106上にアルカリバリア膜や密着性改善膜、光学調整膜など（図示省略)を形成した後に形成されたものであってもょ、。

[0048] 第 2の実施の形態においては、陽極 201aによって下部電極が実現され、陰極 201 bによって上部電極が実現される。以下、陽極 201aを「下部電極（陽極） 201a」として説明し、陰極 201bを「上部電極（陰極） 201b」として説明する。

[0049] なお、第 2の実施の形態では、陽極 201aによって下部電極が実現され、陰極 201 bによって上部電極が実現される場合について説明する力これに限るものではない。陽極 201aによって上部電極が実現され、陰極 201bによって下部電極が実現されていてもよい。

[0050] 有機 EL素子 200は、基板 106、下部電極（陽極） 201a、正孔注入層 202、電子ブロック層 203、発光層 204、電子注入輸送層 205、上部電極（陰極） 201b、の順に、各構成を順次積層した構造を有している。以下に、有機 EL素子 200が備える各構成について詳細に説明する。なお、上述した第 1の実施の形態で説明した構成と同一部分については、適宜説明を省略する。

[0051] つぎに、下部電極（陽極） 20 laについて説明する。下部電極（陽極） 20 laを形成する材料としては、たとえば、酸化錫、酸化インジウム、酸ィ匕錫インジウム (ITO)などの導電性酸化物、あるいは、アルミニウム、銅、金、銀、クロムなどの金属や、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、などを用いることができる。下部電極 (陽極) 201a を形成する材料としては、これらに限るものではな、。

[0052] つぎに、上部電極（陰極） 201bについて説明する。上部電極（陰極） 201bを形成する材料としては、たとえば、アルミニウム、銅、銀、金などの単体またはマグネシウムと銀、リチウムと銀などの合金、酸化錫インジウム (ITO)などの導電性酸化物を使用することができる。

[0053] つぎに、正孔注入層 202および電子注入輸送層 205について説明する。正孔注入層 202および電子注入輸送層 205は、従来使用されている材料 (高分子材料、低分子材料や有機材料、無機材料を問わない)を適宜選択することが可能である。第 2の実施の形態においては、正孔注入層 202によって、発光層 204と下部電極（陽極） 2 Olaとの間に設けられて、電子受容性物質がドープされたドープ層が実現されている

[0054] つぎに、発光層 204について説明する。発光層 204を形成する材料としては、従来使用されている材料 (高分子材料、低分子材料や有機材料、無機材料を問わない）を適宜選択することが可能である。発光材料においては、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光 (蛍光）と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光（りん光 )とがあるが、第 2の実施の形態では、どちらの発光を用いた有機 EL素子 200においても利用可能である。

[0055] つぎに、電子ブロック層 203について説明する。電子ブロック層 203は、下部電極（陽極） 201aと発光層 204との間に設けられている。第 2の実施の形態においては、たとえば、正孔注入効率の改善を目的として、下部電極（陽極） 201aと電子ブロック層 203との間に正孔注入層 202が設けられている例について説明した力これに限るものではない。電子ブロック層 203は、下部電極（陽極） 201aに直接密着していてもよい。

[0056] ここで、電子ブロック層 203の機能について説明する。電極対 201に対して順方向に電圧が印加された場合、有機 EL素子 200においては、上部電極（陰極） 201b側力も下部電極（陽極） 201a側へ向力電子の流れが発生する。電子ブロック層 203 は、電子ブロック層 203における 2つの界面のうち、上部電極（陰極） 201b側の面に到達した電子力下部電極（陽極） 201a側に透過することを抑制する。これにより、発光層 204における下部電極（陽極） 201a側において、電子を有効に閉じ込めることがでさる。

[0057] さらに、電子ブロック層 203が正孔輸送性能を有している場合、下部電極（陽極） 2 01 aから効率よく注入された電子を、電子ブロック層 203を介して発光層 204に輸送することができる。この場合、電子ブロック層 203を介して発光層 204に効率よく輸送された正孔と、上部電極（陰極） 201bから効率よく注入され、電子注入輸送層 205を介して輸送されてから電子ブロック層 203におヽてブロックされた電子とが、発光層 2 04内部で有効に再結合することができる。この再結合における再結合エネルギーによって、発光層 204における発光分子が励起されて、ルミネッセンスが得られる。すなわち、発光層 204内部で再結合が有効におこなわれることにより、効率のよいルミネッセンスが得られる。

[0058] これに対し、電子ブロック層 203に対して逆方向に電圧が印加された場合、有機 E L素子 200においては、下部電極（陽極） 201aから強制的に注入された電子力下部電極（陽極） 20 la側から上部電極（陰極） 201b側へ向かう電子の流れが発生する。電子ブロック層 203は、電子ブロック層 203における 2つの界面のうち、下部電極（陽極） 201a側の面に到達した電子力上部電極（陰極） 201b側に透過することを抑制する。

[0059] つぎに、電子ブロック層 203を形成する材料について説明する。一般的に、電子ブロック性能の高い材料は、正負のキャリア密度が低いが、電子ブロック層 203を形成する材料としては、電子ブロック性と正孔輸送性能とを有する材料が好ましい。具体的には、たとえば、 a—NPDを用いることが好ましい（特開 2003— 272860号公報参照)。

[0060] つぎに、正孔注入層 202を形成する材料について説明する。正孔注入層 202は、有機材料を主体として形成されている。正孔注入層 202は、下部電極（陽極） 201a の仕事関数と近、最高被占軌道 (HOMO)準位を持ち、正孔輸送性能を有する材料が好ましい。下部電極（陽極） 201aの仕事関数より HOMO準位が大きい場合、下部電極（陽極） 201aからの正孔注入はオーム性となり、整流性のないスムーズなキヤリア注入が可能になる。

[0061] 下部電極（陽極） 201aの仕事関数より HOMO準位が小さ、場合、注入界面のェネルギー障壁を超えて注入される熱拡散正孔注入となる。この場合、正孔がェネルギー障壁を超えるのに必要な電圧を要するとともに、注入界面の正孔注入層 202側に発生した空乏層のためにスムーズな正孔注入が得に《なるため、下部電極（陽極 ) 20 laの材料を特に選ぶ。

[0062] また、別の注入形態として、トンネル注入がある。トンネル注入は、特に、正孔注入層 202の正孔キャリア密度が高い場合に有効である。トンネル注入に際しては、下部電極（陽極） 201aとの界面のバンドが急激に歪み、歪んだ薄い障壁を通して正孔をトンネル注入させる。トンネル注入では、下部電極（陽極） 201aと正孔注入層 202とのエネルギー障壁を考える必要がないため、下部電極（陽極） 201aを形成する材料として多くの材料を選択することができ、これにより正孔注入の効率も高くすることができる。

[0063] 正孔注入層 202を形成する材料としては、正孔注入層 202の正孔キャリア密度を高くするために、正孔輸送性能を有する材料に電子受容性物質 (ァクセプター）がドープされた材料であってもよい。これより以降では、特に、正孔注入層 202の正孔キャリア密度が高、ことを前提に説明する。

[0064] 電子受容性物質 (ァクセプター）がドープされた正孔注入層 202にお、て、正孔キャリア輸送性能を有する材料とは、電子の輸送に比べて、比較的正孔を輸送する性能が高い材料である。一般的に、電子を輸送しにくぐ正孔を輸送しやすいほど性能の良い正孔輸送層であるとされる。

[0065] 電子受容性物質 (ァクセプター）は、正孔注入層 202において電子を受け取ることにより正孔注入層 202に正孔を生じさせる。正孔注入層 202は、たとえば、電子ブロック層 203を形成する材料と同じ材料と、電子受容性材料 (ァクセプター）と、を含む。正孔注入層 202は、電子ブロック層 203を形成する材料とは異なる正孔輸送性能を有する材料と、電子受容性材料 (ァクセプター）と、を含んでいてもよい。

[0066] 正孔注入層 202においてドープされる電子受容性物質としては、ルイス酸ィ匕合物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、フラーレンなどがあげられる。また、これまで下部電極（陽極） 201aと正孔注入層 202とについて説明した力上部電極（陰極） 201bと電子注入輸送層 205に関しても全く同様であり、符号の正負のみ異なる説明ができる。

[0067] つぎに、上部電極（陰極） 201b,電子注入輸送層（電子注入層あるいは電子輸送層でも可） 205を形成する材料について説明する。上部電極（陰極） 201b、電子注入輸送層 205を形成する材料としては、たとえば、電子注入材料として電子輸送性能を有する材料が挙げられ、この電子注入材料にドープする電子供与性物質 (ァクセプター）としてアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、希土類ィ匕合物などが挙げられる。

[0068] ルイス酸ィ匕合物として、具体的には、たとえば、塩化第 2鉄、臭化第 2鉄、ヨウィ匕第 2 鉄、塩ィ匕アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、塩ィ匕ガリウム、臭化ガリゥム、ヨウ化ガリウム、塩化インジウム、臭化インジウム、ヨウ化インジウム、 5塩化アンチモン、 5フッ化砒素、 3フッ化硼素などの無機化合物や、 DDQ (ジシァノージクロロキノン）、 TNF (トリ-トロフルォレノン）、 TCNQ (テトラシァノキノジメタン）、 F4— TC NQ (テトラフルォ口一テトラシァノキノジメタンなどが挙げられる。

[0069] 金属酸化物、金属ハロゲン化物としては、具体的には、たとえば、 V O (5酸化バナ

2 5

ジゥム）または Re O (7酸化レニウム）、 MoO 、 WOなどがある。アルカリ金属、アル

2 7 3 3

カリ土類金属、希土類金属とその化合物として、 Li、 Cs、 Mg、 Ca、 Eu、 LiF、 Li 0、

2

CsF、 NaCl、 KC1、 MgFなどが挙げられる。

2

[0070] また、電子受容性物質 (ァクセプター）としては、たとえば、フッ素を置換基として有する有機物質やシァノ基を置換基として有する有機物もある。なお、電子受容性物質 (ァクセプター）は、上述したこれらの材料に限定されるものではない。

[0071] 電子注入輸送層 205に、トリス（8—ヒドロキシキノリノール）アルミニウムなどの電子輸送性材料を用いた場合は、フラーレン、カーボンナノチューブなどの電子供与性物質をドープしてもよぐ電子供与性物質 (ドナー）そのものを電子注入輸送層 205に用いても良い。ほ力に、正孔注入層 202、電子注入輸送層 205、電子ブロック層 203 を形成する材料としては、有機 EL素子 200の製造に際して一般的に使用されている公知の各種ィ匕合物を適宜用いることができる。

[0072] (第 3の実施の形態）

図 3は、第 3の実施の形態における有機 EL素子の構造の一例を示す断面図である。つぎに、第 3の実施の形態における有機 EL素子の構造の一例について、図 3を参照して説明する。なお、上述した第 1、第 2の実施の形態と同一の構成については同一符号を用いて示し、説明も省略する。

[0073] 第 3の実施の形態における有機 EL素子 300は、基板 106と、電極対 201と、正孔注入輸送層 301と、発光層 204と、正孔ブロック層（バッファ層） 302と、電子注入層 ( ドープ層） 303と、を備える。正孔ブロック層（バッファ層） 302の膜厚は、電子注入層 (ドープ層） 303の膜厚よりも厚!ヽ。

[0074] 有機 EL素子 300は、基板 106、下部電極（陽極） 201a,正孔注入輸送層 301と、発光層 204、正孔ブロック層 302、電子注入層 303、上部電極（陰極） 201b、の順に、各構成を順次積層した構造を有している。以下に、有機 EL素子 300が備える各構成について詳細に説明する。なお、上述した第 1、第 2の実施の形態で説明した構成と同一部分については、適宜説明を省略する。

[0075] 第 3の実施の形態の有機 EL素子 300は、上部電極（陰極） 201bと電子注入層 30 3について、上述した図 2に示した有機 EL素子 200における下部電極（陽極） 201a 、正孔注入層 202およびキャリアの正負の符号を逆にしただけの構造を備える。すなわち、正孔ブロック層（バッファ層） 302の膜厚は、電子注入層（ドープ層） 303の膜厚よりも厚い。図 3に示す有機 EL素子 300は、図 2に示す有機 EL素子 200と全く類似のメカニズムで、順方向および逆方向バイアス電圧によってキャリアが注入 '輸送される。

[0076] 有機 EL素子 300が備える正孔ブロック層 302は、正孔の通過を抑制するとともに、電子の輸送を効率よく行うことができる材料によって形成されて、ることが望ま、。正孔ブロック層 302は、有機 EL素子 300に順方向バイアス電圧が印可された場合に、上部電極 (陰極) 201bから注入された電子を効率よく発光層 204に輸送するとともに、下部電極（陽極） 201aから注入された正孔を正孔ブロック層 302における発光層 204側の面でブロックする。これにより、正負のキャリア再結合を、発光層 204内で有効におこなわせることができる。

[0077] また、正孔ブロック層 302は、有機 EL素子 300に逆方向バイアス電圧（以下、「逆バイアス電圧」という）が印可された場合に、上部電極（陰極） 201bから強制的に注入された正孔が、下部電極（陽極） 201a側に透過することを防ぐ。これにより、逆バイァス電圧を印加した場合における漏れ電流を小さくすることができる。

[0078] 第 3の実施の形態の電子注入層 303は、有機材料または無機材料を主体として形成されている。より高い電子キャリア密度を有するために、電子注入層 303に、電荷輸送性を有する材料に電子供与性物質 (ドナー）がドープされていてもよい。このとき電荷輸送性を有する材料は、正孔を輸送する性能に比べて、電子を輸送する性能が比較的高!、電子輸送性能を有する電子輸送性材料である。電子供与性物質は、電子注入層 303において電子を放出することにより電子注入層 303に電子を生じさせる。キャリア密度が高くなると、トンネル注入となるのは正孔注入の場合と同様である。

[0079] 電子注入層 303は、たとえば、正孔ブロック層 302を形成する材料と同じ材料と、電子供与性物質 (ドナー)と、を含む。また、電子注入層 303は、たとえば、正孔ブロック層 302を形成する材料とは異なる電荷輸送性材料と、電子供与性物質 (ドナー)と、を含んでいてもよい。

[0080] 正孔ブロック層 302を形成する材料としては、正孔ブロック性を有する材料が好ましい。正孔ブロック性を有するとともに、電子輸送性能が高い材料として、たとえば、 BC P (2, 9 ジメチル 4、 7 ジフエ-ル一 1、 10フエナント口リン）、 BAlq (l、 1，ビスフエ -ル一 4—ォラートビス（2—メチル 8 キノリノラート一 Nl、 08) )、 BPhen (4、 7— ジフエニノレー 1、 10フエナント口リン）などがある。

[0081] (実施の形態の有機 EL素子と従来の有機 EL素子との差異 (その 1) )

以下に、実施の形態の有機 EL素子と従来の有機 EL素子との差異 (その 1)について説明する。はじめに、実施の形態の有機 EL素子と従来の有機 EL素子との構造上の差異について説明する。ここでは、この発明の実施の形態の有機 EL素子として、上述した図 1に示した第 1の実施の形態の有機 EL素子 100 (あるいは、図 2に示した第 2の実施の形態の有機 EL素子 200でも可)を用いて説明する。

[0082] (従来の有機 EL素子の構造）

図 4は、従来の有機 EL素子の構造の一例を示す断面図である。以下に、従来の有機 EL素子について図 4を参照して説明する。なお、図 4に示す従来の有機 EL素子 4 00〖こおいて、上述した各実施の形態における有機 EL素子 100、 200、 300と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。

[0083] 図 4に示すように、従来の有機 EL素子 400は、電極対 101と、ドープ層 102と、バッファ層 103と、発光層 104と、電荷輸送層 105と、を備える。電極対 101は、下部電極である陽極 101aと上部電極である陰極 101bと、を備える。有機 EL素子 400は、基板 106、陽極 101a、ドープ層 102、バッファ層 103、発光層 104、電荷輸送層 10 5、陰極 101b、の順に、各構成を順次積層した構造を有している。

[0084] 従来の有機 EL素子 400におけるドープ層 102の膜厚は、バッファ層 103の膜厚よりも大きい。従来の有機 EL素子 400では、ドープ層 102における電気伝導に際しては、電導キャリアが正孔であり、バイアス電圧の向きによらない正孔由来の電流が発生する。すなわち、ドープ層 102においては、整流性が失われ、ォーミックに振る舞う

[0085] (挙動の差異 (その 1) )

図 5は、従来の形態の有機 EL素子 400に対して、逆バイアス電圧をかけた場合のキャリアの挙動を示す説明図である。図 6は、この発明の実施の形態の有機 EL素子 100に対して、逆バイアスをかけた場合のキャリアの挙動を示す説明図である。以下に、従来の有機 EL素子 400および有機 EL素子 100に対して、それぞれ逆バイアス電圧をかけた場合の挙動の差異について、図 5および図 6を参照して説明する。

[0086] 図 5および図 6には、従来の有機 EL素子 400および有機 EL素子 100に対して逆ノィァス電圧をかけた場合、どの層にキャリアが多く蓄積しているか力模式的に示されている。通常、有機 EL素子 400、 100を発光させる場合、陽極 101a側に +電圧を印加し、陰極 101b側に—電圧を印加する（この実施の形態では、このような方向に印加するノィァス電圧を、順方向バイアス電圧として説明する。）。

[0087] 逆ノィァス電圧とは、これとは別に、有機 EL素子 400、 100を発光させる際に印加する電圧の方向とは逆方向の電圧である。逆ノィァスは、たとえば、有機 EL素子 40 0、 100の性能が向上するなどの利点から、本来の陽極 101a側に—電圧、本来の陰極 101b側に +電圧を印加することがある。逆ノィァスを印加することにより、有機 EL 素子 400、 100内に蓄積したキャリアを無くすことができると考えられる。

[0088] 逆バイアス電圧を印加する具体的な利用例としては、たとえば、有機 EL素子 400、 100が、基板 106上に複数形成されている自発光パネル（図示省略）において、有機 EL素子 400、 100を走査線方向に沿って線順次駆動する場合が挙げられる。この場合、選択された走査線上に存在する有機 EL素子 400、 100のみに順方向ノィァス電圧を印加し、その他の非選択走査線上に存在する有機 EL素子 400、 100には逆バイアス電圧を印加することを行う。これにより、クロストークのない表示が可能となる。

[0089] また、逆バイアス電圧を印加することにより、発光不良箇所を修復する、いわゆる自己リペアが可能になる。なお、自己リペアについては公知の技術であるため、説明を省略する。

[0090] 図 5および図 6から分力るように、従来およびこの発明の実施の形態の構成の有機 EL素子 400、 100は、いずれも「下部電極 Z正孔注入層 Z電子ブロック層 Z発光層 Z電子注入輸送層 Z上部電極」（符号省略)という素子構造を有している。従来の構成の有機 EL素子 400と、本実施の形態の有機 EL素子 100との構成の違いは、バッファ層（電子ブロック層） 103の厚さである。

[0091] 上述したように、従来の有機 EL素子 400は、ドープ層（正孔注入層） 102の方が、電子ブロック機能を有するバッファ層（電子ブロック層） 103よりも厚い。これに対し、この発明の実施の形態の有機 EL素子 100は、バッファ層（電子ブロック層） 103の方が、ドープ層（正孔注入層） 102よりもはるかに厚い。

[0092] これにより、陰極 101b側から発光層 104内へ注入された電子力発光層 104を透過してバッファ層 103側へ移動することを防止することができるので、上述したように、発光層 104内でのキャリアの再結合を有効におこなわせることができる。

[0093] ここで、通常は、高抵抗率のバッファ層（電子ブロック層） 103を膜厚化すると、抵抗増加にともなう駆動電圧上昇が懸念されるが、発明者らはキャリアの注入がオーム性であれば注入界面のキャリア蓄積が消失し、バッファ層（電子ブロック層） 103を膜厚化しても電圧の上昇が小さ、ことを見出して、る。

[0094] すなわち、この発明の実施の形態の有機 EL素子 100、 200、 300によれば、駆動電圧の増加を抑制しながら、発光層 104、 204内でのキャリアの再結合を有効におこなわせ、有機 EL素子 100、 200、 300を効率よく発光させることができる。

[0095] なお、図 5および図 6に示す有機 EL素子 100、 400においては、下部電極（陽極） 101aは ITOによって形成され、ドープ層（正孔注入層） 102は α— NPDに 4F— TC NQを電子受容性物質 (ァクセプター）として添加することによって形成され、バッファ層（電子ブロック層） 103は α— NPDによって膜厚が Xnmとなるように形成されている。また、 ITOとドープ層（正孔注入層） 102との間には、 CuPcなどのバッファ層を用いることができる。この場合、バッファ層（電子ブロック層） 103とドープ層（正孔注入層 ) 102の界面でトンネル注入が起こると考えられる。 [0096] (挙動の差異 (その 2) )

つぎに、この発明の実施の形態の有機 EL素子と従来の有機 EL素子との差異 (その 2)について、図 7および図 8を参照して説明する。ここでは、この発明の実施の形態の有機 EL素子として、上述した図 3に示した第 3の実施の形態の有機 EL素子 30 0を用いて説明する。

[0097] (従来の有機 EL素子の構造）

図 7は、従来の有機 EL素子に対して、逆バイアス電圧をかけた場合のキャリアの挙動を示す説明図である。以下に、従来の有機 EL素子について図 7を参照して説明する。なお、図 7に示す従来の有機 EL素子 700において、上述した各実施の形態における有機 EL素子 100、 200、 300と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する

[0098] 従来の有機 EL素子 700は、基板 106と、電極対 201aおよび 201bと、正孔注入輸送層 301、発光層 204、正孔ブロック層 302、電子注入層 303と、を備える。従来の有機 EL素子 700は、基板 106、下部電極（陽極） 201a、正孔注入輸送層 301と、発光層 204と、正孔ブロック層 302と、電子注入層 303、上部電極（陰極） 201b、の順に、各構成を順次積層した構造を有している。従来の有機 EL素子 700では、電子注入層（ドープ層） 303の膜厚が、正孔ブロック層（バッファ層） 302の膜厚よりも厚い。

[0099] 図 8は、この発明の実施の形態の有機 EL素子 300に対して、逆バイアスをかけた場合のキャリアの挙動を示す説明図である。以下に、従来の有機 EL素子 700およびこの発明の実施の形態の有機 EL素子 300に対して、それぞれ逆バイアス電圧をかけた場合の挙動の差異について、図 7および図 8を参照して説明する。

[0100] 図 7および図 8には、従来の有機 EL素子 700および有機 EL素子 300に対して逆ノィァス電圧をかけた場合、どの層にキャリアが多く蓄積しているか力模式的に示されている。図 7および図 8から分力るように、従来および本実施の形態の構成の有機 EL素子 700、 300は、いずれも「下部電極 Z正孔注入輸送層 Z発光層 Z正孔ブロック層 Z電子注入層 Z上部電極」（符号省略)という素子構造を有している。従来の構成の有機 EL素子 700と、本実施の形態の有機 EL素子 300との構成の違いは、正孔ブロック層 302の厚さである。 [0101] 従来の構成の有機 EL素子 700は、ドープされた電子注入層 303が厚ぐドープされた電子注入層 303と正孔ブロック層 302との厚さの関係はドープされた電子注入層 303の方が正孔ブロック層 302よりも厚い。これに対し、本実施の形態の有機 EL 素子 300は、正孔ブロック層 302の方が電子注入層 303よりもはるかに厚い。

[0102] これにより、上部電極 201bから注入された電子を電子注入層 303によって効率よく発光層 204側へ注入するとともに、下部電極（陽極） 201aから注入された正孔が発光層 204を透過してバッファ層 302側へ移動することを防止することができるので、上述したように、発光層 204内でのキャリアの再結合を有効におこなわせることができる

[0103] すなわち、この発明の実施の形態の有機 EL素子 100、 200、 300によれば、駆動電圧の増加を抑制しながら、発光層 104、 204内でのキャリアの再結合を有効におこなわせ、有機 EL素子 100、 200、 300を効率よく発光させることができる。

[0104] (第 4の実施の形態）

図 9は、第 4の実施の形態における自発光パネルの一例を示す断面図である。つぎに、第 4の実施の形態の自発光パネルについて図 9を参照して説明する。第 4の実施の形態における自発光パネル 900は、図 1に示した有機 EL素子 100が、基板 106 上で複数マトリクス状に配列された構成を有している。

[0105] 自発光パネル 900は、複数の陽極 101aで形成するデータラインと複数の陰極 101 bで形成する走査ラインが互いに直交し、表示データを表示するパッシブ駆動型の自発光パネルでも良ぐ陽極 101aと駆動トランジスタを接続した構成を有するァクティブ駆動型の自発光パネルでも構わな、。

[0106] 自発光パネル 900では、各有機 EL素子 100が備える陽極 101aに印加する電圧を、有機 EL素子 100毎に制御することによって、有機 EL素子 100単位で発光 Z非発光を制御することができる。マトリクス状に配置された各有機 EL素子 100の発光 Z非発光を個々に制御する技術については、公知の技術であるため、その説明は省略する。図 9中、符号 901は、陽極 101a間を絶縁する絶縁部材である。

[0107] 図 10は、従来の有機 EL素子 400を備える自発光パネルの一例を示す断面図である。以下に、従来の有機 EL素子 400を備える自発光パネル 1000と第 4の実施の形態における自発光パネル 900との差異について説明する。従来の有機 EL素子 400 を備える自発光パネル 1000において、たとえば、有機 EL素子 Aを発光させ、有機 E L素子 Bを消灯させる場合、有機 EL素子 Aに相当する陽極 (以降、必要に応じて陽極 Aとする） 101aに、陽極 101aと陰極 101bとの間に V (V >0、かつ、 Vは閾電圧

A A A

より大きヽ）の電位差を発生させる電圧を印加する。

[0108] 有機 EL素子 Bに相当する陽極 (以降、必要に応じて陽極 Bとする） 101aには、陰極 101bと等電位 (すなわち、 V =0)、または、閾電圧以下の順バイアス電圧、ある

B

いは陰極 101bに対して V (Vく 0)となる逆バイアス電圧を印加する。このとき、陽極

B B

Aと陽極 Bの間の電位差は V -Vである。

A B

[0109] 本来、陽極 Aおよび陽極 Bに印加する電圧をこのように制御することにより、有機 EL 素子 Aのみが発光する。しかしながら、ドープ層 102が導電性を有する場合、陽極 A と陽極 Bはドープ層 102を介して電気的に接続されてしまい、陽極 Aと陽極 B間の抵抗および V -Vに応じた横方向の漏れ電流が発生し、有機 EL素子 Aと有機 EL素

A B

子 Bの間や有機 EL素子 Bが発光してしまう。

[0110] 図 11は、自発光パネル 900または 1000における有機 EL素子 100または 400の配列を示す平面図である。図 11と上述した図 10とを参照して、隣り合う有機 EL素子 A から有機 EL素子 Bへ漏れる漏れ電流について説明する。まず、陽極 Aと陽極 Bとの間の抵抗を R [ Ω ]とした場合、抵抗 R は、下記の（1)式によって表される。

AB AB

[0111] [数 1]

R_{AB ?} [Ω] …（

t x l

ただし

P:ドープ層の抵抗率 [ Q . cm]

d ：隣接する有機 EL素子間の距離 [ cm ] t :ドープ層の膜厚 [ cm ]

I：有機 EL素子の長さ寸法 [ cm ] [0112] 陽極 Aから陽極 Bへ流れ込む電流 (漏れ電流) I [A]は、（1)式を用いて、下記の（

AB

2)式によって表される。

[0113] [数 2]

X _ AB

ΑΒ

P d

： VAB ' 1

d P

= ^ ( σ) [A] 〜(2)

a

ただし

V_{AB :}陽極 A- Bの電位差 [V]

び：ドーブ層の導電率 [Sん m]

[0114] (2)式より、有機 EL素子 Aから隣接する有機 EL素子 Bへ漏れる電流の量は、ドープ層 102の膜厚 tと、ドープ層 102における導電率 σと、に比例することが分かる。導電率 σは、抵抗率 ρの逆数で表される。すなわち、（2)式より、隣接する有機 EL素子 Α力有機 EL素子 Βへの漏れ電流の発生を抑制するためには、ドープ層 102の膜厚 tを薄くするカゝドープ層 102における導電率 σを低く抑えるカゝ、という対応を取る必要がある。

[0115] 漏れ電流 I [Α]が上記の（2)式によって表される場合、有機 EL素子 Βにおける輝

ΑΒ

度 Lは、下記（3)式によって表される。

Β

[0116] [数 3]

4 VAB t

= 10" x a

P d - w

=

A (t .び) cd/m

ただし

a：有機 EL素子の電流輝度効率 [_Gd/A]

S_{B :}有機 EL素子 Bの面積 [cm²]

w :有機 EL素子の幅寸法 [cm]

A=10⁴ x （定数）

[0117] (3)式中、 10⁴は、 cm単位系力も m単位系への面積変換係数である。（3)式において、ドープ層 102における導電率 σと抵抗率 pとの関係は、 lZ /o [ Ω ' cm] = σ [S Zcm]である。なお、 Sは、電気抵抗 [ Ω ]の逆数で表されるコンダクタンスの単位 (ジ一メンス）である。

[0118] (3)式からも、有機 EL素子 Βにおける輝度 Lを低く抑えるには、ドープ層 102の膜

Β

厚 tを薄くする力ドープ層 102における導電率 σを低く抑える力、という対応を取る必要があることが分かる。 F4— TCNQを VOPcにドープした場合の導電率 σの変化は、たとえば、 Applied Physics Letters, Volume73, No. 22, 3202 (1998) , M . Pfeifferらにおける FIG. 1 (a)に記載されている。

[0119] ところで、たとえば、 p型有機半導体の層を得るために、有機 EL素子 100において電子受容性物質をドープしたドープ層 102を設けることは、（3)式における σを大きくすることと同意である。すなわち、ノッファ層 103よりもドープ層 102の膜厚の方が大きく形成されている従来の有機 EL素子 400を備える自発光パネル 1000では、有機 EL素子 Bにおける輝度が高くなる傾向にあると言える。

[0120] また、陽極 101aからの正孔注入率を向上させるために電子受容性物質をドープすることにより、ドープ層 102における電子ブロック性能が低下し、有機 EL素子 Aにおける輝度が低下してしまう。

[0121] これに対し、第 1の実施の形態の有機 EL素子 100では、電子受容性物質がドープされたドープ層 102と、電子輸送性が低ぐかつホール輸送性を有するがキャリア密度の低いバッファ層 103と、を備え、かつ、抵抗率が低い（たとえば I X 10⁵ Ω 'cm程度）ドープ層 102の膜厚よりも抵抗率が高 ^ (1 Χ 1Ο¹⁰Ω · cm以上)バッファ層 103の膜厚の方が大き、ため、発光層 104からのドープ層 102への電子の流入を防止して発光層 104に対する正孔注入効率の向上を図るとともに、隣接する画素への横方向の漏れ電流の発生を防止することができる。

[0122] これによつて、駆動電圧の低下、および、有機 EL素子 Aにおける輝度低下の防止の両立を図ることができる。また、有機 EL素子 Aからの漏れ電流の発生を防止し、有機 EL素子 Aにおける画素のにじみ発光を防止することによって、自発光パネル 100 0における表示不良を回避し、鮮明な表示を行うことができる。

[0123] 第 1の実施の形態の有機 EL素子 100は、公知の各種技術を用いて製造することができる。たとえば、ドープ層 102, ノッファ層 103あるいは発光層 104は、抵抗加熱真空成膜法を用いることによって成膜することができる。すなわち、本実施の形態の有機 EL素子 100は、従来の有機 EL素子の製造方法と比較して格別な変更を行うことなく製造することができる。従来の有機 EL素子の製造方法については、公知の技術であるため、説明を省略する。

[0124] (ドープ層およびバッファ層の膜厚と駆動電圧との関係）

図 12は、ドープ層およびバッファ層の膜厚と駆動電圧との関係を示すグラフである。つぎに、ドープ層およびバッファ層の膜厚と駆動電圧との関係について説明する。なお、ここでは、上述した第 1の実施の形態で説明した有機 EL素子 100を例にして説明する。

[0125] 上述した第 1の実施の形態における有機 EL素子 100のように、ノッファ層 103を厚膜ィ匕することによる第 1の効果は、電極間（陽極 101aと陰極 101bとの間）のショートを防止することである。ここで、図 13および図 14は、ノッファ層 103を厚膜ィ匕することによる効果について説明する説明図（その 1)、（その 2)である。

[0126] 真空蒸着を用いてバッファ層 103を成膜する有機 EL素子 100において、図 13に示すように基板 106上に異物 1301が存在したり、図 14に示すように変化率の激ヽ凹凸部 1401が存在したりする場合、蒸着された有機層 103の膜厚が薄い部分が発生する。このような膜厚が薄い部分では、ノッファ層 103の耐厚が低下する。この場合、電極間（101aと 101bとの間）に電圧を印加すると、局所的に耐圧が低下した部分が絶縁破壊し、ショート不良が発生する。

[0127] ノッファ層 103を十分に厚い膜厚にした場合、最も弱い部分の耐圧性も向上し、ショート不良発生率を低減できることがわ力ている。一般的な有機材料は高抵抗率であるため、そのまま厚膜ィ匕した場合、駆動電圧が上昇してしまう。上述した特許文献 3 では、導電性を有するドープ層を厚膜化しており、ドープ層の厚膜化に伴う電圧上昇を防ぐことが記載されて、る。

[0128] しかしながら、導電性の膜を厚膜ィ匕することは、上述したように、横方向の絶縁性を低下させることにつながる。発明者は、実験の結果、導電性の高いドープ層を 10nm 程度挿入することで、導電性の低!ヽ正孔輸送層を厚膜化しても駆動電圧に変化がないことを発見した。

[0129] [表 1]

表 1

表 1は、ドープ層 102およびバッファ層 103の膜厚を、それぞれ複数段階に振り分けた場合における、有機 EL素子 100を用いた自発光パネル 900の駆動電圧を示している。表 1から分力るように、ドープ層 102がない場合 (X=Onm)を除き、ドープ層 102の厚さが一定であれば、ノッファ層 103の膜厚を複数段階に振り分けた場合にも、駆動電圧に大きな変化は見られない。表 1からは、ドープ層 102がない場合 (X= Onm)、バッファ層 103の膜厚の変化は、駆動電圧の変動をもたらすことも分かる。

[0131] これにより第 1の実施の形態の有機 EL素子 100を用いた自発光パネル 900によれば、導電性を低く抑えながら、駆動電圧の上昇を招くことなぐかつ、電極間ショート不良の発生率を低減することができる。

[0132] ノッファ層 103を厚膜ィ匕することによる第 2の効果は、光学的干渉を有効に利用できることである。一般的に、有機 EL素子 100の全体での厚さは、可視光線の波長の数分の 1程度である。有機 EL素子 100における発光層 104からの発光は、導電性酸化物や金属によって形成された陽極 101aや陰極 101b、基板 106、積層された各層の各々の界面からの反射光と放射光との干渉などによって、発光効率が大きく変化する。

[0133] 電極対 101を構成する一方の電極が透明または半透明で、もう一方の電極が高反射性を有する素子構造では、発光層 104を狭持する反射面の反射率がアンバランスな弱い微小光学共振器として働く。厳密には、多層積層体の干渉解析を、光源が積層体中に内在する場合にっ、ておこなえばょ、。

[0134] 双方の電極の反射率が高かったり、明示的に素子中に高反射となったりする部位を設けた場合は強い (Q値の高い)光学共振器となり、共振器中の発光点の位置によらず、特定の波長を増強することができる。この場合の共振条件は、おおまかに下記 (4)式によって表される。

[0135] [数 4]

2ηά = λ(νη - Φ / 2π) ，mは正の整数 ■■■ (4)

ただし

n :光が透過する層の屈折率

d：光が透過する層の合計の厚さ

Φ：光が反射される反射面での位相変化の合計

[0136] 光学的干渉の調整は、透明電極などの導電性の層の膜厚で行えば、表示素子の駆動電圧への影響は少ない。表示パネルの全面が同一色で発光する場合などは透明電極の膜厚で光学的干渉を最適化することが出来る。一方、同一表示パネル上に多色が存在する場合、発光色毎に光学的干渉を最適とする膜厚が異なる。同一基板上で透明電極の膜厚を部位ごとに変えるのは、工程が増えるために望ましくはない。そこで発光色ごとに成膜される素子部の膜厚で光学調整を行う必要がある。

[0137] (4)式より、光学的な最適化を図るために、一般的な有機 EL素子におけるいずれ力ゝの膜厚を増加させた場合、膜厚増加に伴って当該有機 EL素子における抵抗が増加することが分かる。抵抗が増加することにより、駆動電圧が上昇し、有機 EL素子における電力発光効率が低下してしまう。このように、従来の有機 EL素子では、光学的な最適化を図るための膜厚の増加と、駆動電圧の低下と、を両立させることが困難である。

[0138] ここで、図 15は、それぞれ構成が異なる 3種類の有機 EL素子の構造を示す模式図である。図 15中、（a)および (b)は従来の有機 EL素子の構造を例示しており、（c)は第 1の実施の形態における有機 EL素子 100の構造をそれぞれ示している。 (a)に示す有機 EL素子 1510は、有機 EL素子 100と比較して、ドープ層 102を有していない点が異なる。（b)に示す有機 EL素子 1520は、有機 EL素子 100と比較して、ノッファ層 103を有して、な、点が異なる。

[0139] [表 2]

表 2

(馬区動電流フ .SmA/cm²) 表 2は、図 15に示す各有機 EL素子 1510, 1520, 100における各層の膜厚や一定の電流密度における駆動電圧、発光量を示している。表 2から分力るように、第 1の実施の形態の有機 EL素子 100では、バッファ層 103の膜厚を 5〜100nmの範囲で変更した場合にも、駆動電圧に大きな変化が見られないことが分かる。すなわち、第 1の実施の形態の有機 EL素子 100によれば、発光効率の向上を図るためにバッファ層 103の膜厚を調整した場合にも、駆動電圧を増加させることがない。さらに、干渉スペクトルを調整することで、発光スペクトルを調整することもできる。

[0141] このように、第 1の実施の形態の有機 EL素子 100は、電子受容性物質がドープされたドープ層 102と、電子受容性物質がドープされていないバッファ層 103と、を備えるため、ドープ層 102に電子受容性物質をドープすることで駆動電圧の低下を実現するとともに、バッファ層 103の膜厚を調整することで発光効率の向上を図ることができ、さらにバッファ層 103を厚膜にすることで、駆動電圧を維持しながら電極間ショート不良の少ないディスプレイを得ることができる。

[0142] これにより、従来の有機 EL素子 400を備える自発光パネル 1000のように、漏れ電流が発生することによって表示画像のエッジが不鮮明となるなどの表示不良を発生させることがない。

[0143] なお、ここでは、第 1の有機 EL素子 100を例にして、その効果について説明したが、これに限るものではない。第 2の実施の形態の有機 EL素子 200における電子プロック層 203、あるいは、第 3の実施の形態の有機 EL素子 300における正孔ブロック層 302を厚膜ィ匕しても同様の効果を得ることができる。

[0144] (有機 EL素子のダイオード特性）

図 16は、有機 EL素子に順バイアス電圧をかけた後逆バイアス電圧をかけた場合のダイオード特性を示すグラフである。つぎに、有機 EL素子に順バイアス電圧をかけた後逆バイアス電圧をかけた場合のダイオード特性について図 16を参照して説明する。ここでは、第 2の実施の形態の有機 EL素子 200と、図 7に示した従来の有機 EL 素子 700を例にして説明する。

[0145] ここでは、第 2の実施の形態の有機 EL素子 200および従来の有機 EL素子 700における発光層 204が Alqによって形成され、電子注入輸送層 205が LiFによって形成され、上部電極（陰極） 201bが A1によって形成されて、る場合にっ、て説明する。このような有機 EL素子 200、 700に対して、それぞれ、順バイアス電圧を印加した後に、逆バイアス電圧を印加し、そのときのダイオード特性を調べた。図 16は、その結果を示している。

[0146] 図 16から分かるように、電子ブロック層 203の膜厚 Xが X= 5〜50nmの範囲においては、逆バイアス耐圧が非常に悪ぐ—IV程度であることが分かる。これに対し、第 2の実施の形態の有機 EL素子 200のように、膜厚を lOOnmまで大きくした場合、逆バイアス耐圧が改善し、 - 5V程度まで回復して、ることが分かる。

[0147] なお、第 2の実施の形態においては、下部電極（陽極） 201aと発光層 204との間にドープされた正孔注入層 202、および、電子ブロック層 203を備える構成の有機 EL 素子 200に関しての漏れ電流抑制効果について示した力さらに、上部電極（陰極） 20 lbと発光層 204との間にドープされた電子注入層および正孔ブロック層を備える構成の有機 EL素子（図 18参照）に関しての漏れ電流抑制効果についても同様の効果が期待できる。

[0148] 以上説明したように、第 2の実施の形態によれば、下部電極（陽極） 201aと発光層 204との間にドープされた正孔注入層 202を設けることによって、駆動電圧の低下を図ることができる。また、第 2の実施の形態によれば、ドープされた正孔注入層 202と発光層 204との間に電子ブロック層（バッファ層） 203を厚く設けることによって、駆動電圧の上昇を伴うことなくドープされた正孔注入層 202と発光層 204との距離を確保することができる。

[0149] これによつて、駆動電圧の低下を図るとともに、下部電極（陽極） 201aと発光層 204 との間に正孔注入層 202より厚い電子ブロック層 203を設けたことによる逆バイアス耐圧の低下を抑制することができる。すなわち、逆バイアス電圧印加時における漏れ電流の発生を防止することができるので、有機 EL素子 200および有機 EL素子 200 を用いた自発光パネルの駆動に際しての消費電力の低減を図ることができる。

[0150] なお、第 2の実施の形態の有機 EL素子 200を例にして説明したが、第 1の実施の形態の有機 EL素子 100においても同様である。第 1の実施の形態によれば、陽極 1 Olaと発光層 104との間にドープ層 102を設けることによって、駆動電圧の低下を図ることができる。また、第 1の実施の形態によれば、ドープ層 102と発光層 104との間にバッファ層 103を厚く設けることによって、駆動電圧の上昇を伴うことなくドープ層 1 02と発光層 104との距離を確保することができる。 [0151] 同様に、第 3の実施の形態によれば、上部電極（陰極） 201bと発光層 204との間にドープされた電子注入層 303を設けることによって駆動電圧の低下を図るとともに、ドープされた電子注入層 303と発光層 204との距離を正孔ブロック層 302によって確保することによって、上部電極（陰極） 201bと発光層 204との間にドープされた電子注入層 303を設けたことによる逆ノィァス耐圧の低下を抑制することができる。

[0152] これによつて、駆動電圧の低下を図るとともに、逆バイアス電圧印加時における漏れ電流の発生を防止することができるので、有機 EL素子 300および有機 EL素子 30 0を用いた自発光パネルの駆動に際しての消費電力の低減を図ることができる。

[0153] また、第 1の実施の形態によれば、バッファ層 103が、発光層 104からドープ層 102 側へ移動する電荷をブロックする電荷ブロック機能を備えるため、ドープ層 102を設けることによる導電性の増加に伴う電子ブロック性能の低下を抑制し、陰極 101bまたは陽極 101aから注入されたキャリアが発光層 104を通過して発光層 104以外の領域で再結合することを防止できる。これによつて、発光に寄与しない漏れ電流の発生を防止し、電流効率の向上を図ることができる。

[0154] 同様に、第 2あるいは第 3の実施の形態によれば、電子ブロック層 203および正孔ブロック層 302が、高キャリア密度層力も発光層 204への対向キャリアの移動をブロックするキャリアブロッキング性能を備えるため、ドープされた正孔注入層 202、ドープされた電子注入層 303を設けることによる導電性の増加に伴う電子ブロック性能の低下を抑制し、上部電極（陰極） 201bまたは下部電極（陽極） 201aから注入されたキヤリアが発光層 204を通過して発光層 204以外の領域で再結合することを防止できる。これによつて、発光に寄与しない漏れ電流の発生を防止し、電流効率の向上を図ることができる。

[0155] 第 2あるいは第 3の実施の形態によれば、発光層 204と上部電極（陰極） 201bとの間および発光層 204と下部電極（陽極） 201aとの間の少なくともいずれかに、電極対 201に印加された電圧に応じて移動する電荷キャリアの発光層 204への移動をプロックするブロック層を備えるため、上部電極（陰極） 201bまたは下部電極（陽極） 201 aから注入されたキャリアが発光層 204を通過して発光層 204以外の領域で再結合することを防止できる。これによつて、発光に寄与しない漏れ電流の発生を防止し、電流効率の向上を図ることができる。

[0156] また、第 1の実施の形態によれば、有機 EL素子 100において、全ての層の膜厚が、発光層 104で発光された光のうち、電極対 101の対向方向に放射され、積層界面で多重反射される光が強め合うような光学的干渉を生じさせるように調整されているため、発光効率を一層高めることができる。

[0157] 上述したように、発光に寄与しな、漏れ電流の発生を防止することで、有機 EL素子に強い電圧を印加することによる発光不良箇所のリペアを確実に行うことができる。これによつて、自発光パネルの製造に際しての歩留まりの向上を図ることができる。

[0158] また、図示を省略する力このような有機 EL素子 200、 300が、基板 106上に複数配設された自発光パネル (図 9参照）とすることにより、上述したような作用効果を奏する自発光パネルを得ることができる。なお、自発光パネルの構成および製造方法については、第 2あるいは第 3の実施の形態の有機 EL素子 200、 300を用いる以外は従来の技術を用いることが可能であるため、ここでは図示および説明を省略する。

[0159] (第 5の実施の形態）

図 17は、第 5の実施の形態における有機 EL素子の構造を例示する断面図である。以下に、第 5の実施の形態における有機 EL素子について図 17を参照して説明する。第 5の実施の形態における有機 EL素子 1700は、図 1に示した有機 EL素子 100 における陽極 101aと発光層 104との間に、正孔注入層 1701、正孔輸送層 1702およびバッファ層 1703を備える 3HTL構造を有して、る。

[0160] 有機 EL素子 1700によれば、正孔注入層 1701および正孔輸送層 1702によって図 1におけるドープ層 102が実現される。有機 EL素子 1700によれば、ノッファ層 17 03によって図 1におけるバッファ層 103が実現される。

[0161] なお、第 5の実施の形態では、基板 106上に陽極 101aを設け、この陽極 101a上に各層を順次積層するようにした力これに限るものではない。たとえば、基板 106上に陰極を設け、この陰極上に各層を順次積層するようにしてもよい。この場合、陰極によって下部電極が実現され、陽極によって上部電極が実現される。

[0162] なお、この場合には、陰極上に積層される各層は、図 17に示す各層の積層順序とは反対の順序で積層される。また、これまでの説明は陽極からの正孔注入、正孔輸送、電子ブロックについて行った力陰極からの電子注入、電子輸送、正孔ブロックについても同様である。

[0163] 第 5の実施の形態で使用する基板 106は、陽極 101aをあらカゝじめ形成したものでも良いし、アルカリバリア膜を形成した後に陽極を形成した基板、アクティブ駆動用 T FT基板、カラーフィルタを設けた基板を適宜使用することが可能である。基板 106は透明でなくとも良い。

[0164] 第 5の実施の形態の有機 EL素子 1700に関して、基板 106上に有機 EL素子 170 0を形成した後、この有機 EL素子 1700を封止することにより、有機 EL素子 1700の劣化を防止する。封止の形態としては、従来より知られているような、密封型の封止形態、固体封止の形態、膜封止の形態など、各種の形態がある。

[0165] 密封型の封止とは、封止用基板と基板 106とを、封止用接着剤を用いて貼り合わせることによって有機 EL素子 1700を封止する封止方法である。密封型の封止においては、ソーダガラス、鉛ガラス、硬質ガラスなどのガラス基材、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタタリレートなどのプラスチック基材、アルミニウム、ステンレスなどの金属基材など力もなる封止用基板を用いる。

[0166] 固体封止とは、「榭脂層 Zバリア層」、「榭脂層 Zバリア層 Z榭脂層」、「榭脂層 Zバリア層 Z榭脂層 Zバリア層」のように、榭脂層やバリア層を順次積層することによって有機 EL素子 1700を封止する封止方法である。ここで、ノリア層とは、水分などの浸透を防止する層である。

[0167] 榭脂層は、光ラジカル重合性榭脂、光力チオン重合性榭脂、光硬化性榭脂、熱可塑性榭脂、熱硬化型榭脂などの榭脂材料によって形成される。光ラジカル重合性榭脂は、ポリエステルアタリレート、ポリエーテルアタリレート、エポキシアタリレート、ポリウレタンアタリレートなどの各種アタリレートを主成分とする榭脂である。光力チオン重合性榭脂は、エポキシ、ビュルエーテルなどの榭脂を主成分とする榭脂である。光硬化性榭脂は、チオール'ェン付加型榭脂などの榭脂である。

[0168] 熱可塑性榭脂、熱硬化型榭脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタタリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリル榭脂、ポリアクリル-トリル、ポリビュルァセタール、ポリアミド、ポリイミド、ジアクリルフタレート榭脂、セルロース系プラスチック、ポリ酢酸ビュル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩ィ匕ビユリデンなどの榭脂や、これらの榭脂が 2種類または 3種類以上含まれる共重合体などの榭脂である。バリア層は、ガラスなどのセラミック材料、ステンレスやアルミニウムなどの金属材料によって形成される。

[0169] 膜封止とは、成膜可能な材料によって形成された平坦化層やバリア層を順次積層することによって有機 EL素子 1700を封止する封止方法である。膜封止では、平坦化層は、フッ化リチウムなどの無機材料、重合反応を伴うアタリレート含有のモノマーやオリゴマーなどの成膜可能な榭脂材料などによって構成される。バリア層は、アルミニゥムなどの金属や、窒化珪素、酸化珪素、窒化酸ィ匕珪素などの無機材料のような材料などによって構成される。バリア層は、水分などの浸透を防止する層である。

[0170] (第 6の実施の形態）

図 18は、第 6の実施の形態の有機 EL素子を示す説明図である。つぎに、第 6の実施の形態の有機 EL素子について図 18を参照して説明する。図 18に示す有機 EL素子 1800は、発光層 204よりも下部電極（陽極） 201a側に、電子ブロック層（バッファ層） 203と正孔注入層 202とを備えており、発光層 204よりも上部電極（陰極） 201b 側に正孔ブロック層（バッファ層） 302と電子注入層 303とを備えている。

[0171] このような有機 EL素子 1800とすることにより、上述した図 2および図 3に示した有機 EL素子 200、 300がそれぞれ奏する効果を、単一の有機 EL素子 1800によって実現することができる。

[0172] (第 7の実施の形態）

図 19は、第 7の実施の形態のマルチフオトン素子を示す縦断側面図である。以下に、第 7の実施の形態について図 19を参照して説明する。図 2、図 3および図 18では、単一の発光層 204を備える有機 EL素子 200、 300、 1800について説明したが、これに限るものではなぐ図 19に示すように複数の発光層 204を備える有機 EL素子（以下、「マルチフオトン素子」と、う） 1900であってもよ!/、。

[0173] マルチフオトン素子 1900は、単一の素子において複数の発光層 204を備える構成を有する有機 EL素子である。マルチフオトン素子 1900は、原理的には、単一の発光層 204を備える複数の有機 EL素子 1910、 1920を、有機 EL素子 1910、 1920における各層の積層方向に沿って積層し、直列に接続した構成を有している。

[0174] マルチフオトン素子 1900では、重ね合わされた有機 EL素子 1910と 1920との間に、電荷発生層（図 21参照）を含む中間電極 1901を介在させる。これにより、マルチフオトン素子 1900に電圧を印加した場合に、中間電極 1901から有機 EL素子 1910には正孔を注入し、有機 EL素子 1920には電子を注入することができる。すなわち、マルチフオトン素子 1900では、素子内部で発生したキャリアの分だけ発光量子効率を向上させることができる。

[0175] 中間電極 1901は、つぎのように構成される。下部電極（陽極） 201aが陽極である一般的な有機 EL素子の場合、中間電極 1901の有機 EL素子 1920側には通常の陰極を薄く設け、この薄い陰極上に有機 EL素子 1910側における電荷発生層を積層する。さらに、有機 EL素子 1910の正孔輸送層（正孔注入層（ドープ層） 202および電子ブロック層（バッファ層） 203)を積層し以後発光層 204などを積層してマルチフオトン素子とする。電荷発生層は、通常電子受容性材料 (ァクセプター)からなる膜を用い、または正孔輸送性材料に電子受容性材料 (ァクセプター）をドープしても用いられる。

[0176] (電荷発生層の動作）

図 20は、従来の電荷発生層の動作を示す模式図である。図 21は、この発明の実施の形態における電荷発生層の動作を示す模式図である。以下に、従来の電荷発生層およびこの発明の実施の形態の電荷発生層の動作について図 20および図 21 を参照して説明する。

[0177] 図 20および図 21に示すように、中間電極 1901は、電荷発生層 2001と陰極 2002 とを備えている。電荷発生層 2001の役割は、図 20に示すように、電荷発生層 2001 内で正負の電荷を発生させ、これを有機 EL素子 1910と有機 EL素子 1920とに振り分けると説明されている。

[0178] しかし、実験および考察の結果によれば、電荷発生層 2001の役割は電荷の発生ではなぐ高キャリア密度によるエネルギーバンドの歪みによって、有機 EL素子 192 0に配された陰極 2002の上面からトンネル注入による正孔注入を有効に生じせしめることにあるといえる。 [0179] 図 22は、この発明の実施の形態における中間電極 1901のエネルギーレベルの関係を示す模式図である。以下に、この発明の実施の形態における中間電極 1901のエネルギーレベルの関係について図 22を参照して説明する。図 22においては、この発明の実施の形態における中間電極 1901として、マルチフオトン中間電極部を例にして説明する。

[0180] 図 22においては、正孔密度が高い電荷発生層 2001と陰極 2002との接合界面のエネルギーバンドが局所的に歪み、通常はエネルギー障壁のために注入されることのな、正孔が陰極 2002から電荷発生層 2001に有効に注入されて、ることを示している。このモデルによれば、真に電荷を発生させているのは有機 EL素子 1920の陰極 2002である。この理由により、以下、電荷発生層 2001を適宜高キャリア密度層と称して説明する。

[0181] 電荷発生層（高キャリア密度層） 2001としては、たとえば、有機 EL素子の陽極として一般的に用いることのできる ITOなどを用いることができる。この場合は、有機 EL 素子 1920の陰極 2002と ITOとはオーム性接触をしており、 2組の陽極と陰極のペアを直列に接続して、るに過ぎな、、。

[0182] ところで、 ITOは導電性が高く、発光エリアとして規定して、な、部位も発光してしまうため、通常の発光パネルには使用できない。し力しながら、上述したように、マルチフオトン素子 1900の中間電極 1901部分には、 p型または n型の電荷発生層（高キャリア密度層） 2001と、電荷発生層（高キャリア密度層） 2001に対応するキャリアを注入できる電極とが必要である。

[0183] 電荷発生層（高キャリア密度層） 2001の導電性が高、場合には、上述した逆バイァス電圧印加時の漏れ電流や、順方向バイアス電圧印加時の有効なキャリア閉じこめによる発光効率を改善するために、適宜好ま、キャリアブロック層を設ける。

[0184] 図 23は、この発明の実施の形態のマルチフオトン素子を示す縦断側面図である。

以下に、この発明の実施の形態のマルチフオトン素子について図 23を参照して説明する。なお、上述した各実施の形態において説明した構成と同一の構成については同一の符号で示し、説明も省略する。

[0185] 図 23に示すように、この発明の実施の形態のマルチフオトン素子 2300は、下部電極（陽極） 201aと，下部電極に最も近い発光層 204との間に、高キャリア密度層である正孔注入層（ドープ層） 202と、低キャリア密度層である電子ブロック層（バッファ層 ) 203とを備えている。

[0186] 同様に、マルチフオトン素子 2300は、上部電極（陰極） 201bと上部電極（陰極） 20 lbに最も近い発光層 204との間に、高キャリア密度層である電子注入層（ドープ層） 303と、低キャリア密度層である正孔ブロック層（バッファ層） 302と、を備えている。

[0187] このように、複数の発光層を電子ブロック層 203と正孔ブロック層 302とによって挟むことで、順方向電圧を印力 Πした場合に、キャリアが対向電極まで突き抜けたり、発光層 204以外の層で再結合したりすることを防ぐことができる。また、逆バイアス電圧を印加した場合に、ブロックされて界面に蓄積された電荷どうしの間隔を広く取ることができる。

[0188] これによつて、耐久性の高いマルチフオトン素子 2300を得ることができる。特に、マルチフオトン素子 2300においては、電子ブロック層 203と正孔ブロック層 302とを厚くすることで、蓄積電荷の距離をより広くとることができる。

[0189] さらに、 2つの発光層 204の内側に、電子ブロック層 203と正孔ブロック層 302とを設けることで、発光層 204内のキャリア閉じ込めが有効に機能し、発光量子効率を改善することができる。

[0190] 図 24は、この発明の別の実施の形態のマルチフオトン素子を示す縦断側面図である。以下に、この発明の別の実施の形態のマルチフオトン素子について図 24を参照して説明する。この発明の別の実施の形態のマルチフオトン素子 2400は、単一の発光層 204を備える有機 EL素子を、電圧の印加方向に沿って 3つ積層した構成を有している。本実施の形態のマルチフオトン素子 2400においても、単一の発光層 204を備える有機 EL素子を電圧の印加方向に沿って 2つ積層したマルチフオトン素子 230 0と、基本的には同様の構成を有している。

[0191] この実施の形態のマルチフオトン素子 2400は、下部電極（陽極） 201aと発光層 20 4との間に高キャリア密度層である正孔注入層（ドープ層） 202を備えている。マルチフオトン素子 2400において発光層 204と発光層 204との間には、高キャリア密度層である電子注入層（ドープ層） 303、低キャリア密度層である正孔ブロック層（バッファ層） 302、および陰極 2002、電荷発生層（高キャリア密度層） 2001、電子ブロック層 (バッファ層） 203が設けられて!/、る。

[0192] 上述したよう【こマノレチフ才トン素子 1900、 2300、 2400【こよれ ίま、、電極対 201の対向方向に沿って複数の発光層 204を有して!/、る有機 EL素子 2300、 2400にお!/、て、下部電極（陽極） 201aと上部電極（陰極） 201bと、これら電極 201a、 201bに最も近い発光層 204との間に、対応するキャリアをブロックする層を設けることで、高キヤリァ密度層 2001や電子注入層（ドープ層） 303、正孔注入層（ドープ層） 202を設けることによって懸念されるキャリアブロック性能の低下を抑制し、電流効率の向上と逆バィァス電圧印加時の漏れ電流特性の改善を図ることができる。

実施例

[0193] つぎに、実施例における有機 EL素子について説明する。実施例における有機 EL 素子の構造は、上述した第 1の実施の形態で説明した有機 EL素子 100と同様である。このため、上述した第 1の実施の形態における有機 EL素子 100と同一部分は同一符号で示し、図示および説明を省略する。ここでは、各層を形成する材料などについて具体的に説明する。

[0194] 電極（陽極 101a)は、たとえば、ガラスのような、透明かつ絶縁性の基板に設けられている。電極（陽極 101a)としては、酸化錫，酸化インジウム，酸ィ匕錫インジウム (ITO )などの導電性酸化物、あるいは、金，銀，クロムなどの金属やヨウ化銅，硫化銅などの無機導電性物質、などを用いることができる。電極 (陽極 101a)を形成する材料としては、これらに限るものではない。

[0195] ドープ層 102においてドープされる電子受容性物質としては、ルイス酸ィ匕合物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、希土類ィ匕合物などが挙げられる。ルイス酸化合物として、塩化第 2鉄、臭化第 2鉄、ヨウ化第 2鉄、塩化アルミニウム、臭化ァルミ-ゥム、ヨウ化アルミニウム、塩ィ匕ガリウム、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウム、塩化インジゥム、臭化インジウム、ヨウ化インジウム、 5塩化アンチモン、 5フッ化砒素、 3フツイ匕硼素などの無機化合物や、 DDQ (ジシァノージクロロキノン）、 TNF (トリ-トロフルォレノン）、 TCNQ (テトラシァノキノジメタン）、 F4— TCNQ (テトラフルォローテトラシァノキノジメタン、などがある。

[0196] 金属酸化物、金属ハロゲン化物としては、具体的には、たとえば、 V O (5酸化バナ

2 5 ジゥム）または Re O (7酸化レニウム）、 MoO、 WOなどがある。アルカリ金属、アル

2 7 3 3

2

CsF、 NaCl、 KC1、 MgFなどが挙げられる。

2

[0197] また、電子受容性物質として、フッ素を置換基として有する有機物質やシァノ基を置換基として有する有機物もあり、これらの材料に限定されるものではないし、バッファ層 103を構成する材料にも使用することができる。一方、ドープ層 102にトリス（8— ヒドロキシキノリノール)アルミニウムなどの電子輸送性材料を用いた場合は、フラーレン、カーボンナノチューブなどの電子供与性物質をドープしてもよ、。

[0198] 他に、ドープ層 102およびバッファ層 103を形成する材料としては、一般的に有機 EL素子の製造に使用されている公知の各種ィ匕合物を適宜用いることができる。発光層 104および電荷輸送層 105については、ここでは説明を省略する力発光層 104 および電荷輸送層 105を形成する公知の各種材料を用いることが可能である。

[0199] 電極（陰極 101b)は、アルミニウム、銅、銀、金などの単体またはマグネシウムと銀、リチウムと銀などの合金、酸化錫インジウム (ITO)などの導電性酸化物を使用することがでさる。

[0200] (具体例）

つぎに、有機 EL素子 100および有機 EL素子 100を用いた自発光パネル 900の具体例について説明する。この具体例では、以下のような手順に基づき作成した有機 E L素子 100および有機 EL素子 100を用いた自発光パネル 900について説明する。図示を省略するが、本具体例の有機 EL素子 100および有機 EL素子 100を用ヽた自発光パネル 900の製造に際しては、まず、ガラス基板上に l lOnmの ITOをスパッタ法により成膜した。

[0201] つぎに、フォトレジスト AZ6112 (東京応化工業製）を、 ITO膜上に 2mmの幅でパターン形成した。レジストをパターン形成した基板を、塩化第 2鉄水溶液と塩酸の混合液中に浸漬させた。これにより、レジストに覆われていない部分の ITO膜がエツチングされた。エッチングされたガラス基板を、アセトン中に浸漬させた。これにより、レジストが除去され、 2mmの幅に設けられた ITO電極のストライプパターンが形成された

[0202] ITO電極のストライプパターンが形成されたガラス基板を、界面活性剤にて洗浄する。その後、サムコインターナショナル研究所製 UVオゾンストリッパー UV—1を用いて、 UVオゾン洗浄を 10分間行った。 UVオゾン洗浄を行ったガラス基板を、真空槽に投入した。真空槽における真空度が 1 X 10— ⁶Τοπ:に達してから、抵抗加熱蒸着を用いて、正孔注入層としての CuPcを毎秒 0. 5nmの成膜速度にて 25nmの厚さに成膜した。

[0203] つづ!/、て、電子受容性物質（ァクセプター）をドープした α NPDを、ドープ層 10 2として、上述と同様に毎秒 0. 5nmの成膜速度にて成膜した。成膜に際しては、真空とした雰囲気中で、成膜に用いる材料を抵抗体を用いて加熱させて蒸発させた（抵抗加熱真空成膜)。このとき、電子受容性物質の分子である 4F— TCNQも同時に加熱蒸発させ、 a—NPDと F4— TCNQの成膜速度比が 10 : 1となるようにして混合膜を成膜した。同様に、膜の厚さを xnmとし， x= 10, 50, lOOnmの 3種類の異なる膜厚のサンプルを作製した。

[0204] つづいて、 a NPDのみを用いて、上述と同様に、毎秒 0. 5nmの成膜速度で抵抗加熱真空成膜した。このときの膜の厚さを ynmとすると、 y= 10, 50, lOOnmの 3 種類の異なる膜厚のサンプルを製造した。上述のように有機 EL素子を形成することにより、膜厚 Xと膜厚 yの組合せで複数種類のサンプルとした。

[0205] つづいて、上記の複数種類の各サンプルに、発光層 104として Alqを毎秒 0. 5nm

3

の成膜速度で、 60nmの厚さになるまで抵抗加熱真空成膜した。 Alq上に、 LiFを、

3

電子注入添加剤として、毎秒 0. Olnmの成膜速度で 0. 5nmの厚さになるまで抵抗加熱真空成膜した。このように製造された発光層 104と電荷輸送層 105は、既に形成されている ITO膜のストライプを覆うように形成され、一貫して 1 X 10— ⁶Torr以下の高真空で成膜した。

[0206] 電荷輸送層 105上に、真空中にて陰極用のシャドウマスクを施し、アルミニウムを毎秒 lnmの速度で lOOnmの厚さに抵抗加熱真空成膜した。このとき、アルミニウムの膜は、 ITO膜のストライプと直交するような方向で、 2mm幅のストライプ状に成膜した。このようにして作成した自発光パネル 900においては、 ITO膜によって形成された陽極 101aとアルミニウムによって形成された陰極 101bとが交差する部分によって確定される、有機 EL素子 100の大きさが 2mm X 2mmであった。

[0207] (比較例）

つぎに、上述した具体例に対する比較例としての有機 EL素子について説明する。図示を省略するが、比較例としての有機 EL素子は、上述した具体例として説明した有機 EL素子における電子受容性物質がドープされたドープ層 102の成膜工程以外は、具体例と全て同様にして製造した。ドープ層 102の成膜工程においては、 x=0n m、 y= 10、 50、 lOOnmとした。

[0208] このようにして作製した具体例および比較例の各サンプルに対して、 7. 5mA/cm 2の電流を流すために必要な印加電圧とバッファ層 103の厚さ yとの関係を調べた。この結果、比較例では、バッファ層 103の厚さによって駆動電圧が所定の割合で増加した。これに対し、電子受容性物質をドープしたドープ層 102を設けた具体例では、ノッファ層 103の厚さによる駆動電圧の上昇が見られな力つた (上記実施の形態における図 12および表 1参照）。

[0209] なお、バッファ層 103の厚さに応じた駆動電圧の増加に関しては、 α NPDと F4 — TCNQの混合層を、陽極 101aの上に直接成膜した場合にも、 CuPcを介して成膜した場合にも、同様の効果が現れるのを確認した。すなわち、電子受容性物質をドープしたドープ層 102を設けた具体例では、バッファ層 103の厚さの違いによる駆動電圧の上昇は確認されなかった。なお、 α— NPDと F4— TCNQとの混合比を、 10 0： 5〜： L00： 50の範囲で割り振った限りにお!/、ては、バッファ層 103の厚さの違いによる駆動電圧の上昇は生じな、ことを確認した。

[0210] (比較例）

つぎに、上述した具体例に対する別の比較例としての有機 EL素子にっ、て説明する。上述した具体例に対する比較例として、低キャリア密度層の膜厚を 5、 20、 50η mとした以外は、上述した具体例と全く同様な有機 EL素子を製造した。その結果、これら素子のダイオード特性を測定したところ、逆バイアス耐圧は約 IVであり非常に低かった。

Claims

請求の範囲

[1] 下部電極および当該下部電極に対向する上部電極を備える電極対と、

前記電極対の間に設けられた発光層と、

前記発光層と前記下部電極との間に設けられて、電子受容性物質がドープされたドープ層と、

前記ドープ層と前記発光層との間に設けられて、前記電極対の対向方向に沿った寸法 (以下、膜厚とする）が前記ドープ層の膜厚よりも大きいバッファ層と、

を備えることを特徴とする自発光素子。

[2] 下部電極および当該下部電極に対向する上部電極を備える電極対と、

前記電極対の間に設けられた発光層と、

前記発光層と前記上部電極との間に設けられて、電子受容性物質がドープされたドープ層と、

前記ドープ層と前記発光層との間に設けられて、前記膜厚が前記ドープ層の膜厚よりも大きいバッファ層と、

を備えることを特徴とする自発光素子。

[3] 前記バッファ層は、前記発光層から前記ドープ層側へ移動する電荷をブロックする電荷ブロック機能を備えることを特徴とする請求項 1または 2に記載の自発光素子。

[4] 前記バッファ層は、前記発光層で発光される光が前記発光層上に積まれる層の面において反射する第 1の反射光と、前記発光層で発光され前記バッファ層を透過して前記ドープ層側の面で反射する第 2の反射光と、が強め合うような光干渉を生じさせる膜厚に設けられていることを特徴とする請求項 3に記載の自発光素子。

[5] 前記ドープ層は、前記バッファ層を形成する材料と同じ材料と、前記電子受容性物質と、を含むことを特徴とする請求項 1または 2に記載の自発光素子。

[6] 前記ドープ層は、前記バッファ層を形成する材料とは異なる材料と、前記電子受容性物質と、を含むことを特徴とする請求項 1または 2に記載の自発光素子。

[7] 下部電極および当該下部電極に対向する上部電極を備える電極対と、

前記電極対の間に設けられた発光層と、

前記発光層と前記下部電極との間に設けられて、電子供与性物質がドープされたドープ層と、

を備えることを特徴とする自発光素子。

[8] 下部電極および当該下部電極に対向する上部電極を備える電極対と、

前記電極対の間に設けられた発光層と、

前記発光層と前記上部電極との間に設けられて、電子供与性物質がドープされたドープ層と、

を備えることを特徴とする自発光素子。

[9] 前記バッファ層は、前記発光層から前記ドープ層側へ移動する電荷をブロックする電荷ブロック機能を備えることを特徴とする請求項 7または 8に記載の自発光素子。

[10] 前記バッファ層は、前記発光層で発光される光が前記発光層上に積まれる層の面において反射する第 1の反射光と、前記発光層で発光され前記バッファ層を透過して前記ドープ層側の面で反射する第 2の反射光と、が強め合うような光干渉を生じさせる膜厚に設けられていることを特徴とする請求項 9に記載の自発光素子。

[11] 前記ドープ層は、前記バッファ層を形成する材料と同じ材料と、前記電子供与性物質と、を含むことを特徴とする請求項 7または 8に記載の自発光素子。

[12] 前記ドープ層は、前記バッファ層を形成する材料とは異なる材料と、前記電子供与性物質と、を含むことを特徴とする請求項 7または 8に記載の自発光素子。

[13] 前記自発光素子は、有機 EL素子であることを特徴とする請求項 1、 2、 7または 8の V、ずれか一つに記載の自発光素子。

[14] 下部電極と当該下部電極に対向する上部電極とを備える電極対と、前記電極対の間に設けられた発光層と、前記発光層と前記下部電極との間に設けられて、電子受容性物質または電子供与性物質がドープされたドープ層と、前記ドープ層と前記発光層との間に設けられて、前記膜厚が前記ドープ層の膜厚よりも大きいバッファ層と、を備える自発光素子が、基板上に複数配設されていることを特徴とする自発光パネル。

下部電極と当該下部電極に対向する上部電極とを備える電極対と、前記電極対の間に設けられた発光層と、前記発光層と前記上部電極との間に設けられて、電子受容性物質または電子供与性物質がドープされたドープ層と、前記ドープ層と前記発光層との間に設けられて、前記膜厚が前記ドープ層の膜厚よりも大きいバッファ層と、を備える自発光素子が、基板上に複数配設されていることを特徴とする自発光パネノレ