[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

JP7501797B2 - 絶縁電線及び情報伝送用ケーブル - Google Patents

絶縁電線及び情報伝送用ケーブル Download PDF

Info

Publication number
JP7501797B2
JP7501797B2 JP2023539157A JP2023539157A JP7501797B2 JP 7501797 B2 JP7501797 B2 JP 7501797B2 JP 2023539157 A JP2023539157 A JP 2023539157A JP 2023539157 A JP2023539157 A JP 2023539157A JP 7501797 B2 JP7501797 B2 JP 7501797B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
insulating layer
mass
parts
resin component
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2023539157A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2023228500A1 (ja
JPWO2023228500A5 (ja
Inventor
太郎 藤田
翔太 町中
祐司 越智
基 松田
優斗 小林
篤子 四野宮
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Electric Industries Ltd filed Critical Sumitomo Electric Industries Ltd
Publication of JPWO2023228500A1 publication Critical patent/JPWO2023228500A1/ja
Publication of JPWO2023228500A5 publication Critical patent/JPWO2023228500A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7501797B2 publication Critical patent/JP7501797B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01BCABLES; CONDUCTORS; INSULATORS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR CONDUCTIVE, INSULATING OR DIELECTRIC PROPERTIES
    • H01B11/00Communication cables or conductors
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01BCABLES; CONDUCTORS; INSULATORS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR CONDUCTIVE, INSULATING OR DIELECTRIC PROPERTIES
    • H01B11/00Communication cables or conductors
    • H01B11/02Cables with twisted pairs or quads
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01BCABLES; CONDUCTORS; INSULATORS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR CONDUCTIVE, INSULATING OR DIELECTRIC PROPERTIES
    • H01B7/00Insulated conductors or cables characterised by their form
    • H01B7/02Disposition of insulation

Landscapes

  • Organic Insulating Materials (AREA)

Description

本開示は、絶縁電線及び情報伝送用ケーブルに関する。本出願は、2022年5月26日出願の日本出願第2022-086446号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
自動車の自動運転技術や運転アシスト機能のニーズに伴い、車載情報電線ではより一層の情報伝送の容量の増大及び高速化が求められている。信号伝送の高速化のためには、絶縁層の誘電正接を低減する必要がある。
特許文献1(特開2009-81132号公報)においては、ヒンダードフェノール構造を有しないフェノール系の酸化防止剤を含有する電気絶縁材料が開示されている。また、その電気絶縁材料を絶縁体層に用いた通信ケーブルが開示されている。
特開2009-81132号公報
本開示の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、上記導体の外周面に積層される絶縁層とを備え、上記絶縁層が樹脂成分、酸化防止剤及び銅害防止剤を含有し、上記樹脂成分がブロックポリプロピレンであり、上記樹脂成分の全単量体単位に対するエチレン単位の含有量が0.5モル%以上25.0モル%以下であり、上記酸化防止剤がヒンダードフェノール構造を有し、上記酸化防止剤の含有量が上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下であり、上記銅害防止剤がトリアゾール構造又はヒドラジド構造又はヒドラジン構造を有し、上記銅害防止剤の含有量が上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下である。
本開示の他の態様に係る絶縁電線は、複数の線状の導体と、上記複数の線状の導体それぞれの外周面に積層される絶縁層とを備え、上記絶縁層が樹脂成分、酸化防止剤及び銅害防止剤を含有し、上記樹脂成分がブロックポリプロピレンであり、上記樹脂成分の全単量体単位に対するエチレン単位の含有量が0.5モル%以上25.0モル%以下であり、上記酸化防止剤がヒンダードフェノール構造を有し、上記酸化防止剤の含有量が上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下であり、上記銅害防止剤がトリアゾール構造又はヒドラジド構造又はヒドラジン構造を有し、上記銅害防止剤の含有量が上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下である。
図1は、本開示の一実施形態に係る絶縁電線の模式的横断面図である。 図2は、本開示の一実施形態に係るツイナックスケーブルの模式的横断面図である。 図3は、本開示の一実施形態に係る同軸ケーブルの模式的斜視図である。 図4は、図3の同軸ケーブルの模式的横断面図である。 図5は、他の実施形態に係るツイナックスケーブルの模式的断面図である。 図6は、他の実施形態に係る多芯ケーブルの模式的断面図である。
[本開示が解決しようとする課題]
伝送損失(伝送ロス)は、信号の周波数及び信号伝送ケーブルの絶縁層の誘電正接と正の相関を持つため、信号伝送の高速化のためには、絶縁層の誘電正接を低減し、伝送損失を低減して、信号の伝送を安定的に行う必要がある。上述の従来技術では、絶縁層が酸化防止剤等を含有すると誘電正接が大きくなるおそれがある。上記車載情報電線では、伝送線路として信号減衰に対して誘電正接の影響がより大きい。一方、車載情報電線で用いる絶縁材料においては、耐熱性を備えつつ、車載情報電線の配策を行う際の折り曲げ性も重要となる。
本開示は、このような事情に基づいてなされたものであり、耐熱性を有するとともに、伝送損失の低減効果及び折り曲げ性に優れる絶縁電線を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
本開示によれば、耐熱性を有するとともに伝送損失の低減効果及び折り曲げ性に優れる絶縁電線を提供することができる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、上記導体の外周面に積層される絶縁層とを備え、上記絶縁層が樹脂成分、酸化防止剤及び銅害防止剤を含有し、上記樹脂成分がブロックポリプロピレンであり、上記樹脂成分の全単量体単位に対するエチレン単位の含有量が0.5モル%以上25.0モル%以下であり、上記酸化防止剤がヒンダードフェノール構造を有し、上記酸化防止剤の含有量が上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下であり、上記銅害防止剤がトリアゾール構造又はヒドラジド構造又はヒドラジン構造を有し、上記銅害防止剤の含有量が上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下である。
また、本開示の別の一態様に係る絶縁電線は、複数の線状の導体と、上記複数の線状の導体それぞれの外周面に積層される絶縁層とを備え、上記絶縁層が樹脂成分、酸化防止剤及び銅害防止剤を含有し、上記樹脂成分がブロックポリプロピレンであり、上記樹脂成分の全単量体単位に対するエチレン単位の含有量が0.5モル%以上25.0モル%以下であり、上記酸化防止剤がヒンダードフェノール構造を有し、上記酸化防止剤の含有量が上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下であり、上記銅害防止剤がトリアゾール構造又はヒドラジド構造又はヒドラジン構造を有し、上記銅害防止剤の含有量が上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下である。
当該絶縁電線においては、上記絶縁層が樹脂成分としてブロックポリプロピレンを含有し、上記樹脂成分の全単量体単位に対するエチレン単位の含有量が0.5モル%以上25.0モル%以下であることで、耐熱性及び折り曲げ性を向上できる。また、上記絶縁層がヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤を含有し、上記酸化防止剤の含有量が上記範囲であることで、樹脂成分の熱による劣化及び誘電正接の抑制効果が優れ、絶縁層の高温環境下での耐久性の指標となる耐熱性を向上できる。上記絶縁層がトリアゾール構造又はヒドラジド構造又はヒドラジン構造を有する銅害防止剤を含有し、上記銅害防止剤の含有量が上記範囲であることで、銅イオンに起因する上記絶縁層の樹脂成分の酸化劣化の抑制効果が優れ、絶縁層の誘電正接をより低減できる。従って、当該絶縁電線は、耐熱性を有するとともに、伝送損失の低減効果及び折り曲げ性に優れる。ここで、「銅害」とは、一般に、接触する金属の触媒的な作用により、材料の酸化劣化が促進されることをいう。「折り曲げ性に優れる」とは、折り曲げ操作を繰り返しても、割れ、白化等の外観変化を生じ難い性質を意味する。
上記酸化防止剤の分子量が400以上であってもよく、上記銅害防止剤の分子量が500以下であってもよい。上記酸化防止剤の分子量が400以上であることで、酸化防止性能が良好となり、当該絶縁電線の耐熱性を向上できる。また、上記銅害防止剤の分子量が500以下であることで、銅のトラップ性能が良好となり、上記絶縁層の上記樹脂成分の酸化劣化をより抑制できる。上記酸化防止剤及び銅害防止剤の分子量は電界脱離質量分析法等により測定することができる。
上記絶縁層のメルトフローレートが0.10g/10分以上10.00g/10分以下であってもよい。上記絶縁層のメルトフローレートが0.10g/10分以上10.00g/10分以下であることで、上記絶縁層の成型性を向上できる。上記メルトフローレート(MFR)は、樹脂の流動性を表す指標である。MFRは、JIS-K7210-1:2014(A法:質量測定法)に準拠した方法により、測定温度230℃、加重2.16kgをかけ、メルトインデクサーを用いて測定される値である。
上記絶縁層の20℃における弾性率が2000MPa以下であり、150℃における弾性率が1MPa以上であり、10GHzにおける誘電正接が3.0×10-4以下であってもよい。上記絶縁層の20℃における弾性率が2000MPa以下であることで、上記絶縁層の折り曲げ性をより向上できる。上記絶縁層の150℃における弾性率が1MPa以上であることで、上記絶縁層の耐熱性をより向上できる。また、周波数10GHzの高周波電界を印加した場合における上記絶縁層の誘電正接が3.0×10-4以下であってもよい。周波数10GHzの高周波電界を印加した場合における上記絶縁層の誘電正接が上記範囲であることで、伝送損失の低減効果を十分に向上できる。
ここで、「弾性率」は、JIS-K7161:2014に基づいて測定される値である。具体的には、弾性率とは、短冊状導体及び絶縁フィルムに精密万能試験機(引張試験機)を用いて引張変形を加えた時のSSカーブ(応力-歪み曲線)の立ち上がりの傾きを指す。この弾性率の測定においては、引張試験機のサンプル把持(チャック)間隔を50mmとし、50mm/minで引っ張ることとする。但し、短冊状導体の弾性率測定の際には、試料と試験機のつかみ具との間での滑りの影響を考慮するため、微小変位を測定可能な歪みゲージを試料に取り付け測定するものとする。なお、この弾性率の測定で直接求められるのは(試験力[N]-移動距離[mm]曲線)となるが、下記数式(1)及び(2)に示すようにサンプルサイズ及びチャック間隔を用いて(応力[Pa]-歪み[%]曲線)に変換し、弾性率を求めることができる。また、短冊状導体及び絶縁フィルムが多層構造体である場合においても、上述した方法により弾性率を求めることができる。さらに、「一対の絶縁フィルムの平均弾性率」とは、2枚の絶縁フィルムのそれぞれの弾性率の測定値の平均を意味する。以下、「平均厚さ」又は「弾性率」という場合には同様に定義される。
応力[Pa]=試験力[N]÷幅[mm]÷厚さ[mm]・・・(1)
歪み[%]=移動距離[mm]÷チャック間隔[mm]×100・・・(2)
本開示の他の一態様は、当該絶縁電線を1又は複数備える情報伝送用ケーブルである。
当該情報伝送用ケーブルは、当該絶縁電線を備えるので、耐熱性を有するとともに、伝送損失の低減効果及び折り曲げ性に優れる。従って、当該情報伝送用ケーブルは、高温環境下での耐久性の向上及び伝送性能の向上を図ることができる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態に係る絶縁電線及び情報伝送用ケーブルについて、適宜図面を参照しつつ詳説する。
<絶縁電線>
当該絶縁電線は、線状の導体と、上記導体の外周面に積層される絶縁層とを備える。図1は、本開示の一実施形態に係る絶縁電線の模式的横断面図である。図1に示すように、絶縁電線1は、線状の導体2と、この導体2の外周面に積層される1層の絶縁層3とを備える。
[導体]
導体2は、例えば断面が円形状の丸線とされるが、断面が正方形状の角線又は長方形状の平角線や、複数の素線を撚り合わせた撚り線であってもよい。
導体2の材質としては、導電率が高くかつ機械的強度が大きい金属であってもよい。このような金属としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、銀、軟鉄、鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。導体2は、これらの金属を線状に形成した材料や、このような線状の材料にさらに別の金属で被覆した多層構造のもの、例えばニッケル被覆銅線、銀被覆銅線、銅被覆アルミニウム線、銅被覆鋼線等を用いることができる。
導体2の平均断面積の下限としては、0.01mmであってもよく、0.1mmであってもよい。一方、導体2の平均断面積の上限としては、10mmであってもよく、5mmであってもよい。導体2の平均断面積が上記下限に満たないと、導体2に対する絶縁層3の体積が大きくなり、当該絶縁電線を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。逆に、導体2の平均断面積が上記上限を超えると、誘電率を十分に低下させるために絶縁層3を厚く形成しなければならず、当該絶縁電線が不必要に大径化するおそれがある。なお、導体の「平均断面積」とは、任意の箇所の10本の導体の断面積を測定し、平均した値を意味する。
[絶縁層]
絶縁層3は、導体2の外周面に形成される。導体2の外周面に形成される絶縁層3は1
層の絶縁層で構成されてもよく、また2層以上の複数の絶縁層で構成されてもよい。
絶縁層3は、樹脂成分、酸化防止剤及び銅害防止剤を含有する。
絶縁層3の平均厚さの下限としては、50μmであってもよく、100μmであってもよい。一方、絶縁層3の平均厚さの上限としては、1500μmであってもよく、1000μmであってもよい。絶縁層3の平均厚さが上記下限に満たない場合、絶縁性が低下するおそれがある。逆に、絶縁層3の平均厚さが上記上限を超える場合、当該絶縁電線を用いて形成されるケーブル等の体積効率が低くなるおそれがある。なお、絶縁層の「平均厚さ」とは、任意の箇所の絶縁層の厚さを10点測定し、平均した値を意味する。
絶縁層3の20℃における弾性率の上限としては、2000MPaであってもよく、1900MPaであってもよく、1600MPaであってもよい。絶縁層3の20℃における弾性率が2000MPaを超えると、常温での柔軟性が低下し、絶縁層3の折り曲げ性が低下するおそれがある。一方、絶縁層3の20℃における弾性率の下限としては、500MPaであってもよく、1000MPaであってもよい。絶縁層3の20℃における弾性率が500MPaより小さいと、絶縁層3の耐熱変形性が低下するおそれがある。
絶縁層3の150℃における弾性率の下限としては、1MPaであってもよく、2MPaであってもよい。絶縁層3の150℃における弾性率が1MPaより小さいと、上記絶縁層の耐熱変形性が低下するおそれがある。
周波数10GHzの高周波電界を印加した場合における上記絶縁層の誘電正接の上限としては、3.0×10-4であってもよく、2.9×10-4であってもよい。上記絶縁層の誘電正接の範囲が上記範囲であることで、伝送損失の低減効果を十分に向上できる。
(樹脂成分)
絶縁層3は、樹脂成分としてブロックポリプロピレンを含有する。ブロックポリプロピレンは、主成分としてのホモポリプロピレンの中にエチレン-プロピレンゴム、又は、周りをエチレン-プロピレンゴムに囲まれてポリエチレンが分散して入っている(以下、「ポリエチレン/エチレン-プロピレンゴム」という)。相構造としては、ホモポリプロピレンが海であり、エチレン-プロピレンゴム又はポリエチレン/エチレン-プロピレンゴムを島とする海島構造である。当該絶縁電線においては、上記絶縁層が樹脂成分としてブロックポリプロピレンを含有することで、耐熱性及び折り曲げ性を向上できる。なお、「主成分」とは、最も含有量の多い成分を意味する。
絶縁層3のメルトフローレート(MFR)の下限としては、0.10g/10分であってもよく、0.5g/10分であってもよい。一方、絶縁層3のメルトフローレートの上限としては、10.00g/10分であってもよく、7.0g/10分であってもよい。絶縁層3のメルトフローレートが0.10g/10分より小さいと、流動性の低下により成型性が低下するおそれがある。一方、絶縁層3のメルトフローレートが10.00g/10分を超えると、流動性が高くなり過ぎて成型性が低下するおそれがある。
樹脂成分である上記ブロックポリプロピレンの全単量体単位に対するエチレン単位の含有量の下限としては、0.5モル%であってもよく、1.0モル%であってもよく、1.5モル%であってもよい。一方、上記ブロックポリプロピレンの全単量体単位に対するエチレン単位の含有量の上限としては、25.0モル%であってもよく、20.0モル%であってもよく、18.0モル%であってもよい。上記ブロックポリプロピレンの全単量体単位に対するエチレン単位の含有量が0.5モル%未満の場合、絶縁層3が硬くなり過ぎて、曲げ性能が低下するおそれがある。一方、上記全単量体単位に対するエチレン単位の含有量が25.0モル%を超えると、耐熱変形性が低下するおそれがある。
上記ブロックポリプロピレンにおいては、折り曲げ性向上のため、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン-プロピレンゴムなどを1質量%から40質量%の範囲で添加しても良い。
絶縁層3における樹脂成分の含有量の下限としては、95.0質量%であってもよく、98.0質量%であってもよい。上記樹脂成分の含有量が上記下限に満たないと、絶縁層3の誘電正接を良好に低減することが困難になるおそれがある。一方、樹脂成分の含有量の上限としては、99.95質量%であってもよく、99.90質量%であってもよい。上記樹脂成分の含有量が上記上限を超えると、絶縁層3における酸化防止剤等の含有量が不十分となり、絶縁層3における耐熱性の向上効果が十分に高くならないおそれがある。
絶縁層3は、上記樹脂成分(ブロックポリプロピレン)以外の樹脂を含有してもよい。上記樹脂成分以外の樹脂としては、例えば加工性を改善するために、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、フッ素ゴム等を用いることができる。上記樹脂成分以外の樹脂は、酸化防止剤、銅害防止剤等の添加剤との合計で0.1質量部から5.0質量部の範囲で添加してもよい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、絶縁層3の酸化を防止する。上記酸化防止剤は、ヒンダードフェノール構造を有する。絶縁層3の酸化防止剤の含有量が多くなると、誘電正接が高くなる傾向がある。しかしながら、上記酸化防止剤がヒンダードフェノール構造を有することで、少量の含有量であっても高い酸化防止性能が得られるので、当該絶縁電線は耐熱性に優れる。また、当該絶縁電線は伝送損失の低減効果を得ることができる。
ヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤としては、例えばオクタデシル-3-(3,5-2-tert.-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネイト(分子量531、BASFジャパン株式会社製「イルガノックス1076」)、1,3,5-トリス[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(分子量784、BASFジャパン社製「イルガノックス3114」)、2,2’-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](分子量643、BASFジャパン社製「イルガノックス1035」)、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド](分子量637、BASFジャパン社製「イルガノックス1098」)、オクチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロケイ皮酸(分子量390、BASFジャパン社製「イルガノックス1135」)等が挙げられる。上記酸化防止剤は、一種又は二種以上を使用することができる。
上記酸化防止剤の分子量の下限としては、400であってもよく、500がであってもよい。一方、上記分子量の上限としては、1500であってもよく、1300であってもよい。酸化防止剤の分子量が上記下限未満であると、絶縁層の表面に移動してブルームしやすくなり、絶縁層内の含有率が低下し、酸化防止性能が低下しやすくなる。一方、酸化防止剤の分子量が上記上限を超えると、樹脂分子の酸化劣化部位まで移動し難くなり、酸化防止性能が低下するおそれがある。
絶縁層3における酸化防止剤の含有量の下限としては、上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部であってもよく、0.10質量部であってもよい。上記酸化防止剤の含有量が上記下限に満たないと、樹脂成分の熱による劣化及び誘電正接の増大に対する抑制効果を向上させることが困難になるおそれがある。一方、酸化防止剤の含有量の上限としては、上記樹脂成分100質量部に対して0.50質量部であってもよく、0.40質量部であってもよい。上記酸化防止剤の含有量が上記上限を超えると、誘電正接の増大に対する抑制効果が低下し、当該絶縁電線の伝送性能を損なうおそれがある。
(銅害防止剤)
上記銅害防止剤は、銅イオンをキレート形成により安定化し、銅イオンに起因する樹脂成分の劣化、いわゆる銅害を抑制する。上記絶縁層が銅害防止剤を含有することで、銅害を抑制し、上記樹脂成分の銅害劣化を抑制できる。従って、上記絶縁層の誘電正接をより低減できる。上記銅害防止剤は、トリアゾール構造又はヒドラジド構造又はヒドラジン構造を有する。上記銅害防止剤がトリアゾール構造又はヒドラジド構造又はヒドラジン構造を有することで、銅害の抑制効果が優れる。
上記トリアゾール構造を有する銅害防止剤としては、例えば2-ヒドロキシ-N-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イルベンズアミドを主成分とする複合物(製品名:アデカスタブCDA-1M、分子量204)が挙げられる。
上記ヒドラジド構造を有する銅害防止剤としては、例えばデカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド(製品名:アデカスタブCDA-6S、分子量499)、イソフタル酸ビス(2-フェノキシプロピオニルヒドラジド)(製品名:CUNOX、分子量491)等が挙げられる。
上記ヒドラジン構造を有する銅害防止剤としては、例えばNN’-ビス[3-(3、5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(製品名:イルガノックスMD1024、分子量553)、1,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン(製品名:アデカスタブCDA-10、分子量553)が挙げられる。上記銅害防止剤は、一種又は二種以上を使用することができる。
上記銅害防止剤の含有量の分子量の上限としては、500であってもよく、400であってもよい。一方、上記分子量の下限としては、100であってもよく、200であってもよい。銅害防止剤の分子量が上記下限未満であると、絶縁層3の表面に移動しやすくなり、銅のトラップ性能が低下しやすくなるおそれがある。一方、銅害防止剤の分子量が上記上限を超えると、絶縁層3内を移動しづらくなり、銅のトラップ性能が低下しやすくなるおそれがある。
絶縁層3における銅害防止剤の含有量の下限としては、上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部であってもよく、0.1質量部であってもよい。上記銅害防止剤の含有量が上記下限に満たないと、銅害の抑制効果を向上させることが困難になるおそれがある。一方、銅害防止剤の含有量の上限としては、上記樹脂成分100質量部に対して0.50質量部であってもよく、0.40質量部であってもよい。上記銅害防止剤の含有量が上記上限を超えると、絶縁層3における添加剤が樹脂中から表面に析出して結晶化する、いわゆるブルームを生じ、絶縁層3の品質を損なうおそれがある。
(その他の成分)
絶縁層3は、上記樹脂成分、酸化防止剤及び銅害防止剤以外にその他の成分として、例えば難燃剤、難燃助剤、顔料等を含有してもよい。
上記難燃剤は、絶縁層3に難燃性を付与するものである。難燃剤としては、例えば塩素系難燃剤、臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤の他、水酸化マグネシウムのような金属水酸化物等のノンハロゲン系難燃剤も挙げられる。
難燃助剤は、絶縁層3の難燃性をより向上させるものである。難燃助剤としては、三酸化アンチモン等が挙げられる。
顔料は、絶縁層3を着色するものである。顔料としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば酸化チタン等が挙げられる。
[絶縁電線の製造方法]
次に、当該絶縁電線の製造方法について説明する。当該絶縁電線は、絶縁層3が押出成型により形成される。この絶縁電線の製造方法は、絶縁層形成用樹脂組成物を導体2の外周面に押出被覆する工程(押出工程)を備える。上記絶縁層形成用樹脂組成物の構成は、上述の絶縁層と同様であるので説明を省略する。
当該絶縁電線は、耐熱性を有するとともに、伝送損失の低減効果及び折り曲げ性に優れる。
<情報伝送用ケーブル>
当該情報伝送用ケーブルは、1又は複数の当該絶縁電線を備える。当該情報伝送用ケーブルとしては、例えば差動伝送用ケーブル、同軸ケーブル等が挙げられる。
[差動伝送用ケーブル]
差動伝送用ケーブルは、差動信号を伝送するケーブルとして、高速での通信が求められる分野において好適に使用される。差動伝送用ケーブルとしては、例えばツイナックス構造を有するツイナックスケーブルが挙げられる。
図2は、当該情報伝送用ケーブルの一実施形態であるツイナックスケーブルの模式的横断面図である。図2に示すように、ツイナックスケーブル10は、第1絶縁電線1a及び第2絶縁電線1bからなる一対の絶縁電線を有するツイナックス構造を備える。第1絶縁電線1aは、線状の第1導体2aと、この第1導体2aの外周面に積層される1層の第1絶縁層3aとを備える。第2絶縁電線1bは、線状の第2導体2bと、この第2導体2bの外周面に積層される1層の第2絶縁層3bとを備える。第1絶縁電線1a及び第2絶縁電線1bには、当該絶縁電線が用いられている。また、ツイナックスケーブル10は、第3導体となるドレイン線8と、第1絶縁電線1a、第2絶縁電線1b及びドレイン線8を覆うように配置されるシールドテープ30とを備える。
当該情報伝送用ケーブルとしてツイナックスケーブルを用いた場合、高精度かつ高速での信号伝送を効率よく行うことができる。また、ドレイン線8は接地されることにより、ツイナックスケーブル10における帯電を防止することができる。さらにシールドテープ30を含むことで、外部からの電磁ノイズの干渉を防ぎ、また、一対の絶縁電線における第1導体2a及び第2導体2b間相互の干渉を低減することができる。
シールドテープ30は、ポリ塩化ビニル、難燃ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂からなる絶縁フィルムの片面に導電層を設けたものである。シールドテープ30としては、例えば銅蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)テープなどのテープ状体を用いることができる。本実施の形態においては、シールドテープ30は第1絶縁層3a及び第2絶縁層3bの外周側を被覆するように配置される。シールドテープ30は、第1絶縁電線1aと第2絶縁電線1bとドレイン線8とを包みながら第1絶縁電線1aと第2絶縁電線1bとの位置関係を相対的に固定するように第1絶縁層3a及び第2絶縁層3bの外周側に配置される。
[ツイナックスケーブルの製造方法]
当該情報伝送用ケーブルの一実施形態であるツイナックスケーブルの製造方法は、例えば、第1絶縁電線と第2絶縁電線とを束ね、ドレイン線を配置して、その外周にシールドテープを巻くことにより、ツイナックスケーブルが製造される。
[同軸ケーブル]
当該情報伝送用ケーブルの一実施形態である同軸ケーブルは、上述した当該絶縁電線と、上記絶縁電線の周面を被覆する外部導体と、上記外部導体の周面を被覆する外被層とを備え、上記絶縁電線が、1つの上記導体及びこの導体の周面を被覆する1つの上記絶縁層を含む。上記同軸ケーブルの実施形態について、図3及び図4を参照しつつ説明する。
図3及び図4の同軸ケーブル4は、導体2及びこの導体2の周面を被覆する絶縁層3を備える絶縁電線1、絶縁電線1の周面を被覆する外部導体5、並びに外部導体5の周面を被覆する外被層6を備える。すなわち、同軸ケーブル4は、断面形状において、導体2、絶縁層3、外部導体5及び外被層6が同心円状に積層された構成を有する。当該情報伝送用ケーブルが同軸ケーブル4であることで、細径化が可能となる。絶縁電線1、導体2及び絶縁層3は、図1の絶縁電線1と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
外部導体5は、アースとしての役割を果たし、他の回路からの電気的な干渉を防ぐためのシールドとして機能する。この外部導体5は、絶縁層3の外面を被覆している。外部導体5としては、例えば編組シールド、横巻きシールド、テープシールド、導電性プラスチックシールド、金属チューブシールド等が挙げられる。中でも、高周波シールド性の観点からは、編組シールド及びテープシールドが好ましい。なお、外部導体5として編組シールドや金属チューブシールドを使用する場合のシールド数は、使用するシールドや目的とするシールド性に応じて適宜決定すればよく、1重シールドであっても、2重シールドや3重シールド等の多重シールドであってもよい。
外被層6は、導体2や外部導体5を保護し、絶縁性の他、難燃性、耐候性等の機能を付与するものである。この外被層6は、熱可塑性樹脂を主成分として含むとよい。
上記熱可塑性樹脂としては、例えばポリ塩化ビニルや、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、発泡ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリウレタン、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの中で、コスト及び加工容易性の観点から、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルが好ましい。例示した上記熱可塑性樹脂は、単独で使用しても2種以上を併用してもよく、外被層6によって実現すべき機能に応じて適宜選択すればよい。
[同軸ケーブルの製造方法]
同軸ケーブル4は、絶縁電線1を外部導体5及び外被層6により被覆することで形成される。
外部導体5による被覆は、適用するシールド方法に応じた公知の方法により行うことができる。例えば、編組シールドは、チューブ状の編組内に絶縁電線1を挿入した後に編組を縮径させることで形成することができる。横巻きシールドは、例えば銅線等の金属線を絶縁層3に巻き付けることで形成することができる。テープシールドは、アルミニウムとポリエステルのラミネートテープ等の導電性のテープを絶縁層3の周囲に巻き付けることで形成することができる。
外被層6による被覆は、絶縁電線1の絶縁層3による導体2の被覆と同様の方法により行うことができる。また、上記熱可塑性樹脂等を絶縁電線1及び外部導体5の周面に塗布してもよい。
当該情報伝送用ケーブルは、当該絶縁電線を備えるので、耐熱性を有するとともに、伝送損失の低減効果及び折り曲げ性に優れる。従って、当該情報伝送用ケーブルは、高温環境下での耐久性の向上及び伝送性能の向上を図ることができる。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、上記実施形態では、情報伝送用ケーブルとして、図2に示すような一対の導体が一対の絶縁層で被覆された一対の絶縁電線を備えるツイナックスケーブル10を例示したが、ツイナックスケーブルとしては、図5に示すようなツイナックスケーブル12も挙げられる。図5のツイナックスケーブル12は、一対の導体が1つの絶縁層で被覆された1つの絶縁電線を備える。このツイナックスケーブル12について、以下に説明する。
ツイナックスケーブル12は、上述したツイナックスケーブル10と比較して、第3絶縁層3cが第1導体2a及び第2導体2bの両方の周面を被覆するように一体的に形成されて1つの絶縁電線11が形成されている点、この絶縁電線11及びドレイン線8の外周側にシールドテープ30が配置される点、及び表面層として外被層(シース層)50を備えている点で異なる。このツイナックスケーブル12においてツイナックスケーブル10と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、ツイナックスケーブル12は、線状の第1導体2aと、線状の第2導体2bと、第3絶縁層3cと、ドレイン線8と、シールドテープ30と、外被層50とを備える。ツイナックスケーブル12においては、絶縁層は一体的に成形され、第1導体2a及び第2導体2bのそれぞれの周面を被覆するように第3絶縁層3cが配置される。シールドテープ30は、絶縁電線11と、ドレイン線8とを覆うように配置される。
外被層50は、シールドテープ30の外周面を覆うように配置される。外被層50を有することにより第1導体2a、第2導体2b及びドレイン線8が外部環境に曝露されることなく保護される。このように外被層50を有することでツイナックスケーブル12の耐久性や耐候性、難燃性等が高まる。さらに外被層50を有することによりツイナックス構造における形状保持性が高まる。この点より、ツイナックスケーブル12は外被層50を備えるのが好ましい。
第3絶縁層3cは、例えば、以下のように形成される。すなわち、第1導体2a及び第2導体2bを並列に配置した状態で第1導体2a及び第2導体2bを搬送しながら第3絶縁層3cを形成するための上述した当該絶縁層用樹脂組成物を押出成型する。押出成型することにより、第1導体2a及び第2導体2bの両方の周面を被覆するように形成された第3絶縁層3cが得られる。
また、情報伝送用ケーブルは、複数のツイナックスケーブルが、さらに外被層によって被覆されている多芯ケーブルであってもよい。このように情報伝送用ケーブルが多芯ケーブルであることで、ツイナックスケーブルと比較してさらに大容量の信号を伝送することができる。このような多芯ケーブルとしては、例えば図6に示すような多芯ケーブル20が挙げられる。図6の多芯ケーブル20は、複数のサブユニット14と、この複数のサブユニット14を被覆する外被層51とを備え、各サブユニット14がツイナックスケーブルである。外被層51としては、上述した外被層51と同じ構成のものを用いることができる。図6に示す態様では、サブユニット14として、上述したツイナックスケーブル10が用いられている。なお、サブユニット14は、このツイナックスケーブル10に限定されず、その他、上述したツイナックスケーブル12等であってもよい。
当該絶縁電線は、絶縁層を発泡させてもよい。絶縁層を発泡させることで、誘電率を下げることができ、既定の特性インピーダンス(50Ω、100Ωなど)により薄肉の絶縁層で合わせることができ、ケーブルの細径化が可能になる。
導体は、複数の金属線を撚り合わせた撚線から形成することもできる。この場合、複数種の金属線を組み合わせてもよい。撚り数としては、一般に7本以上とされる。
当該絶縁電線は、導体に直接積層されるプライマー層を有していてもよい。このプライマー層としては、金属水酸化物を含有しないエチレン等の樹脂を架橋させたものを好適に用いることができる。このようなプライマー層を設けることによって、絶縁層及び導体の剥離性の経時低下を防いで結線作業の効率低下を防止できる。
以下、実験例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
[絶縁層No.1~No.18]
絶縁層No.1~No.18に用いる絶縁用樹脂組成物は、下記に示す樹脂成分、酸化防止剤及び銅害防止剤を、含有量(質量部)が表1の通りとなるように混合して得た。上記絶縁層用樹脂組成物をプレス成形し、シート状の絶縁層No.1~No.18を作製した。プレス成形の条件は180℃にて5分間予備加熱した後、さらにその温度で加圧し、5分間保持した後に室温まで冷却を行い、取り出した。さらに、No.14は、照射線量200kGyの条件で、電子線架橋を行った。
(樹脂成分)
(1)ブロックポリプロピレンA(エチレン単位の含有量12.0モル%)
(2)ブロックポリプロピレンB(エチレン単位の含有量1.5モル%)
(3)ブロックポリプロピレンC(エチレン単位の含有量18.0モル%)
(4)ブロックポリプロピレンD(エチレン単位の含有量0.1モル%)
(5)ブロックポリプロピレンE(エチレン単位の含有量26.0モル%)
(6)ホモポリプロピレン(エチレン単位の含有量0モル%)
(7)ランダムポリプロピレン(エチレン単位の含有量21.0モル%)
(8)ポリエチレン(エチレン単位の含有量95.0モル%)
(酸化防止剤)
(1)BASFジャパン株式会社製「イルガノックス1076」
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(分子量531)
オクタデシル-3-(3,5-2-tert.-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネイト
(2)BASFジャパン株式会社製「イルガノックス1135」
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(分子量390)
オクチル-3,5-ジ-tert.-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロケイ皮酸
(銅害防止剤)
(1)アデカ社製「アデカスタブCDA-6S」
ヒドラジド構造を有する銅害防止剤(分子量499)
デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド
(2)アデカ社製アデカスタブCDA-10
ヒドラジン構造を有する銅害防止剤(分子量553)
1,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン
[絶縁電線No.1~No.18]
上記絶縁層No.1~No.18を用いて、表1に示す外径を有する絶縁電線及びツイナックスケーブルを以下の手順で作製した。
ロール混合機(設定温度180℃)にて、表1に記載の樹脂成分に酸化防止剤と銅害防止剤を練り込み、帯状に取り出したものを裁断してペレット状にした樹脂組成物を作製した。これを用いて50mmφ押出機にてダイス2.0mmφ、ポイント0.6mmφを用い、線速50mm/分で、直径0.45mmφのすずめっき軟銅線上に、厚み0.575mmで被覆して、絶縁層の外径が1.6mmφの絶縁電線を作製した。
さらに、作製した二本の絶縁電線を束ね、ドレイン線(直径0.30mmφのすずめっき軟銅線)を配置して、その外周にシールドテープを巻くことにより、図2に示すツイナックス構造を有するツイナックスケーブルを得た。シールドテープとしてはアルミ蒸着PETテープを用いた。
<評価>
以上のようにして得られたNo.1~No.18の絶縁層を備える絶縁電線及びツイナックスケーブルについて、評価を行った。
(絶縁層のメルトフローレート)
各絶縁電線から、絶縁層部分を剥ぎ取り、JIS-K7210-1:2014(A法:質量測定法)に準拠した方法により、測定温度230℃、加重2.16kgをかけ、メルトインデクサーを用いて絶縁層のメルトフローレートを測定した。
(押出加工性)
押出加工性は、押出機で線速50mm/分で押出し、絶縁層の外径変動を測定した。絶縁層の外径変動が1.6mmφ±10%に収まるものを「A」(合格)とし、絶縁層の外径変動が1.6mmφ±10%を越えるもの又は押出時に押出機の圧力上限をオーバーしてしまったものを「B」(不合格)とした。
(弾性率)
20℃における弾性率[Mpa]は、上述したように引張試験機でSSカーブの立ち上がりの傾きを測定した。また、150℃における弾性率[Mpa]は、恒温槽付き引張試験機でSSカーブの立ち上がりの傾きを測定した。
(誘電正接)
絶縁層No.1~No.18について、シート状の試料を作製した。そして、JIS-R1641(2007)に準ずる方法に従って、周波数10GHzの高周波電界を印加した場合における誘電正接(tanσ)を測定した。測定は3回行い、平均値を求めた。
(伝送損失)
ツイナックスケーブルNo.1~No.18について、伝送損失[dB/m]を(ネットワークアナライザを用いて測定した。-4.0dB/mに収まるものを「A」(合格)とし、-4.0dB/mに収まらないものを「B」(不合格)とした。
(耐熱変形試験)
絶縁電線No.1~No.18について、温度150℃の環境下において、100時間保存後に伝送損失をネットワークアナライザで測定した。短期耐熱性(150℃、100時間)の評価基準は、伝送損失の悪化率が10%以内を「A」(合格)とし、伝送損失の悪化率が10%を越えるものを「B」(不合格)とした。
(長期耐熱試験)
(1)長期耐熱性(105℃、1万時間)
絶縁電線No.1~No.18について、JASO-D611規格に準拠して下記の手順で長期耐熱試験を実施した。絶縁電線から導体を引き抜くことにより、チューブ状の各絶縁層を評価した。105℃に設定した恒温槽に10000時間保存後に、引張伸びが100%を切るまでの時間を求め寿命とした。結果を基にアレニウスプロットを行い、10000時間の老化試験で引張伸びが100%となる温度を推定して10000時間耐熱温度とした。長期耐熱性(105℃、1万時間)の評価基準は、耐熱温度が105℃以上のものを「A」、100℃以上のものを「B」、100℃未満のものを「C」とし、「A」及び「B」を合格とした。
(2)長期耐熱性(100℃、3000時間)
絶縁電線No.1~No.18について、JASO-D611規格に準拠して下記の手順で長期耐熱試験を実施した。
絶縁電線No.1~No.18の長期耐熱性(100℃、3000時間)の評価は、ISO6722-1(2011)のLong Term Heat Ageing CLASS B(100℃×3000時間)に準じて行った。具体的には、絶縁電線を100℃に設定した恒温槽に3000時間保存後に、絶縁電線の外径の1.5倍の直径の金属製マンドレルに3回巻き付け、絶縁層の亀裂による導体露出がなく、かつ、耐圧試験(塩水に10分間浸漬後に1kV×1分間)に合格するものを「A」、導体露出は無いが耐圧試験で破壊するものを「B」、導体露出があるものを「C」とし、「A」を合格とした。
(折り曲げ性能)
折り曲げ性能は、引張試験に圧縮試験用治具を装着し、絶縁電線No.1~No.18を治具に固定し、曲げ半径25mmで曲げた時の反力を測定して評価した。折り曲げ性能の評価基準は、曲げ反力が1N以下のものを「A」(合格)とし、曲げ反力が1Nを越えるものを「B」(不合格)とした。
誘電正接の測定並びに耐熱老化試験の結果を表1に示す。
Figure 0007501797000001
Figure 0007501797000002
上記表1及び表2の結果から、樹脂成分がブロックポリプロピレンであり、上記樹脂成分の全単量体単位に対するエチレン単位の含有量が0.5モル%以上25.0モル%以下であり、酸化防止剤がヒンダードフェノール構造を有し、酸化防止剤の含有量が樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下であり、銅害防止剤がトリアゾール構造又はヒドラジド構造又はヒドラジン構造を有し、銅害防止剤の含有量が上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下であるNo.1~No.11の絶縁層を備える絶縁電線は、長期耐熱性及び折り曲げ性が優れていた。また、No.1~No.11の絶縁層を備えるツイナックスケーブルは、伝送損失が少なく、耐熱変形性が優れていた。
一方、上記酸化防止剤の含有量が0.05質量部未満であり、上記銅害防止剤の含有量が0.05質量部未満であるNo.12は、電線の1万時間及び3000時間の長期耐熱性が劣っていた。
上記酸化防止剤の含有量が0.50質量部を超え、上記銅害防止剤の含有量が0.50質量部を超えるNo.13は、ケーブルの伝送損失が大きかった。
上記樹脂成分の全単量体単位に対するエチレン単位の含有量が0.5モル%未満であるNo.14は、電線の折り曲げ性能が劣っていた。
上記樹脂成分の全単量体単位に対するエチレン単位の含有量が25.0モル%を超えるNo.15は、ケーブルの耐熱変形性が大きかった。
上記樹脂成分がホモポリプロピレンを含むNo.16は、電線の3000時間の長期耐熱性及び折り曲げ性能が劣っていた。
上記樹脂成分がランダムポリプロピレンを含むNo.17及び上記樹脂成分がポリエチレンを含むNo.18は、ケーブルの耐熱変形性が測定不能となるまで劣っていた。
以上のことから、本開示の絶縁電線は、耐熱性を有するとともに、伝送損失の低減効果及び折り曲げ性に優れることがわかる。
1、11 絶縁電線
1a 第1絶縁電線
1b 第2絶縁電線
2 導体
2a 第1導体
2b 第2導体
3 絶縁層
3a 第1絶縁層
3b 第2絶縁層
3c 第3絶縁層
4 同軸ケーブル
5 外部導体
6、50、51 外被層
8 ドレイン線
10、12 ツイナックスケーブル
14 サブユニット
20 多芯ケーブル
30 シールドテープ

Claims (7)

  1. 線状の導体と、
    上記導体の外周面に積層される絶縁層と
    を備え、
    上記絶縁層が樹脂成分、酸化防止剤及び銅害防止剤を含有し、
    上記樹脂成分がブロックポリプロピレンであり、
    上記樹脂成分の全単量体単位に対するエチレン単位の含有量が0.5モル%以上25.0モル%以下であり、
    上記酸化防止剤がヒンダードフェノール構造を有し、
    上記酸化防止剤の含有量が上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下であり、
    上記銅害防止剤がトリアゾール構造又はヒドラジド構造又はヒドラジン構造を有し、
    上記銅害防止剤の含有量が上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下である絶縁電線。
  2. 複数の線状の導体と、
    上記複数の線状の導体それぞれの外周面に積層される絶縁層と
    を備え、
    上記絶縁層が樹脂成分、酸化防止剤及び銅害防止剤を含有し、
    上記樹脂成分がブロックポリプロピレンであり、
    上記樹脂成分の全単量体単位に対するエチレン単位の含有量が0.5モル%以上25.0モル%以下であり、
    上記酸化防止剤がヒンダードフェノール構造を有し、
    上記酸化防止剤の含有量が上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下であり、
    上記銅害防止剤がトリアゾール構造又はヒドラジド構造又はヒドラジン構造を有し、
    上記銅害防止剤の含有量が上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下である絶縁電線。
  3. 上記酸化防止剤の分子量が400以上784以下であり、上記銅害防止剤の分子量が200以上553以下である請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線。
  4. 上記絶縁層のメルトフローレートが0.10g/10分以上10.00g/10分以下である請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線。
  5. 上記絶縁層の20℃における弾性率が1000MPa以上2000MPa以下であり、150℃における弾性率が1MPa以上140Mpa以下であり、10GHzにおける誘電正接が3.0×10-4以下である請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線。
  6. 上記導体の外周面に積層される絶縁層が複数の絶縁層である請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線。
  7. 請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線を1又は複数備える情報伝送用ケーブル。
JP2023539157A 2022-05-26 2023-03-01 絶縁電線及び情報伝送用ケーブル Active JP7501797B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022086446 2022-05-26
JP2022086446 2022-05-26
PCT/JP2023/007537 WO2023228500A1 (ja) 2022-05-26 2023-03-01 絶縁電線及び情報伝送用ケーブル

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JPWO2023228500A1 JPWO2023228500A1 (ja) 2023-11-30
JPWO2023228500A5 JPWO2023228500A5 (ja) 2024-05-08
JP7501797B2 true JP7501797B2 (ja) 2024-06-18

Family

ID=88918951

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023539157A Active JP7501797B2 (ja) 2022-05-26 2023-03-01 絶縁電線及び情報伝送用ケーブル

Country Status (3)

Country Link
JP (1) JP7501797B2 (ja)
CN (1) CN118830032A (ja)
WO (1) WO2023228500A1 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007063343A (ja) 2005-08-30 2007-03-15 Fujikura Ltd 耐磨耗性難燃樹脂組成物及び絶縁電線
WO2019198403A1 (ja) 2018-04-09 2019-10-17 住友電気工業株式会社 絶縁層用樹脂組成物、絶縁電線及びケーブル
WO2021015121A1 (ja) 2019-07-23 2021-01-28 住友電気工業株式会社 絶縁層用樹脂組成物、絶縁電線及びケーブル
JP2022060751A (ja) 2020-10-05 2022-04-15 矢崎総業株式会社 ツイスト線及びこれを含むケーブル

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007063343A (ja) 2005-08-30 2007-03-15 Fujikura Ltd 耐磨耗性難燃樹脂組成物及び絶縁電線
WO2019198403A1 (ja) 2018-04-09 2019-10-17 住友電気工業株式会社 絶縁層用樹脂組成物、絶縁電線及びケーブル
WO2021015121A1 (ja) 2019-07-23 2021-01-28 住友電気工業株式会社 絶縁層用樹脂組成物、絶縁電線及びケーブル
JP2022060751A (ja) 2020-10-05 2022-04-15 矢崎総業株式会社 ツイスト線及びこれを含むケーブル

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2023228500A1 (ja) 2023-11-30
WO2023228500A1 (ja) 2023-11-30
CN118830032A (zh) 2024-10-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
RU2305873C2 (ru) Кабель с пенопластовой изоляцией, содержащей полимерный материал сверхвысокой степени разбухания экструдата
US10763012B2 (en) Shielded cable
JP4916590B1 (ja) 伝送ケーブル用絶縁電線及び伝送ケーブル
JP2008287948A (ja) シールドツイストペアケーブル
JP7259848B2 (ja) 絶縁層用樹脂組成物、絶縁電線及びケーブル
JP5227609B2 (ja) 高電圧電子機器用ケーブル
WO2012074002A1 (ja) 絶縁電線、同軸ケーブル及び多心ケーブル
US20230141502A1 (en) Vehicle cable
JP2009093900A (ja) 多芯フラット絶縁電線およびその製造方法
JP4916574B1 (ja) 伝送ケーブル用絶縁電線及び伝送ケーブル
WO2021015121A1 (ja) 絶縁層用樹脂組成物、絶縁電線及びケーブル
JP6113823B2 (ja) GHz帯域の周波数の信号を伝送する絶縁電線用絶縁樹脂組成物、絶縁電線及びケーブル
JP7501797B2 (ja) 絶縁電線及び情報伝送用ケーブル
JP5687024B2 (ja) 絶縁電線用絶縁樹脂組成物、絶縁電線及びケーブル
CN113508441B (zh) 通信用屏蔽电线
JP2022060751A (ja) ツイスト線及びこれを含むケーブル
US12112860B2 (en) Shielded twisted pair cable
JP7524734B2 (ja) 絶縁電線及び情報伝送用ケーブル
JP5326775B2 (ja) 同軸電線及びその製造方法
JP4951704B1 (ja) 伝送ケーブル用絶縁電線及び伝送ケーブル
JP2012087184A (ja) 樹脂組成物、電線及びケーブル
WO2022113900A1 (ja) 絶縁電線及び情報伝送用ケーブル
WO2023157766A1 (ja) 絶縁電線および車載用ケーブル
JP5926827B2 (ja) 絶縁電線用絶縁樹脂組成物、絶縁電線及びケーブル
CN117954162A (zh) 电缆

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230705

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20230705

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230726

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20231010

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20231127

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20231219

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240208

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20240507

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20240520

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7501797

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150