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JP5687024B2 - 絶縁電線用絶縁樹脂組成物、絶縁電線及びケーブル - Google Patents

絶縁電線用絶縁樹脂組成物、絶縁電線及びケーブル Download PDF

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JP5687024B2
JP5687024B2 JP2010233528A JP2010233528A JP5687024B2 JP 5687024 B2 JP5687024 B2 JP 5687024B2 JP 2010233528 A JP2010233528 A JP 2010233528A JP 2010233528 A JP2010233528 A JP 2010233528A JP 5687024 B2 JP5687024 B2 JP 5687024B2
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Description

本発明は、絶縁電線用絶縁樹脂組成物、絶縁電線及びケーブルに関する。
近年、GHz帯域の周波数を使用した電子機器の開発に伴い、高周波同軸ケーブル、USB3.0ケーブル、HDMIケーブル、インフィニバンドケーブル、マイクロUSBケーブルなどの高速伝送ケーブルなどに対して、GHz帯域において優れた誘電特性を有することが求められている。
このような伝送ケーブルとして、下記特許文献1では、導体を覆う絶縁層として、オレフィン系樹脂に、酸化防止剤としてヒンダードフェノール構造を有しないフェノール系の酸化防止剤を配合してなるものを用いることにより、優れた誘電特性を得ることが提案されている。
特開2009−81132号公報
しかし、上記特許文献1記載の絶縁電線は、以下に示す課題を有していた。
即ち上記特許文献1記載の絶縁電線は、GHz帯域で優れた誘電特性を有するものの、耐熱老化性の点で改良の余地があった。
ここで、耐熱老化性を改良するためには、酸化防止剤をさらに添加すればよいとも考えられるが、酸化防止剤が過剰に添加されると、GHz帯域での誘電特性が低下する。
従って、GHz帯域において誘電特性の低下を十分に抑制しながら優れた耐熱老化性を実現することができる絶縁電線が求められていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、GHz帯域において誘電特性の低下を十分に抑制しながら優れた耐熱老化性を実現することができる絶縁電線用絶縁樹脂組成物、絶縁電線及びケーブルを提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するため検討した結果、オレフィン系樹脂に対して酸化防止剤を所定の配合割合で添加するとともに、酸化防止剤を、フェノール系酸化防止剤からなる1次酸化防止剤と、リン系及び/又はイオウ系酸化防止剤等の2次酸化防止剤とで構成し、酸化防止剤中の2次酸化防止剤の配合割合を所定の範囲にすることで、意外にも、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、オレフィン系樹脂と、酸化防止剤とを含み、前記酸化防止剤が、前記オレフィン系樹脂100質量部に対して0.05〜1.0質量部の割合で配合され、前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール構造と異なる構造を有するフェノール系酸化防止剤からなる1次酸化防止剤と、リン系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる2次酸化防止剤とによって構成され、前記酸化防止剤中の前記2次酸化防止剤の配合率が10〜30質量%であり、前記ヒンダードフェノール構造と異なる構造が、セミヒンダードフェノール構造であり、前記セミヒンダードフェノール構造を有するフェノール系酸化防止剤が下記一般式(1)で表されることを特徴とする絶縁電線用絶縁樹脂組成物である。
Figure 0005687024
(上記一般式(1)式中、R〜Rはメチル基を表し、Rは置換基を表す。)
この絶縁電線用絶縁樹脂組成物によれば、GHz帯域において誘電特性の低下を十分に抑制しながら優れた耐熱老化性を実現することができる。また、ヒンダードフェノール構造と異なる構造が、セミヒンダードフェノール構造又はレスヒンダードフェノール構造でない場合に比べて、周波数による誘電特性への影響を受けにくくなり、誘電特性の低下をさらに十分に抑制することができる。
さらに本発明は、導体と、前記導体を被覆する絶縁層とを備える絶縁電線であって、前記絶縁層が、上記絶縁電線用絶縁樹脂組成物を用いて形成されたものであることを特徴とする絶縁電線、またはこの絶縁電線を有するケーブルである。
本発明によれば、GHz帯域において誘電特性の低下を十分に抑制しながら優れた耐熱老化性を実現することができる絶縁電線用絶縁樹脂組成物、絶縁電線及びケーブルが提供される。
本発明のケーブルの一実施形態を示す部分側面図である。 図1のII−II線に沿った断面図である。 本発明のケーブルの他の実施形態を示す端面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全図中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付す。
図1は、本発明に係るケーブルの一実施形態を示す部分側面図であり、電線を、ケーブルとしての同軸ケーブルに適用した例を示すものである。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。図1に示すように、ケーブル10は同軸ケーブルを示しており、絶縁電線5と、絶縁電線5を包囲する外部導体3と、外部導体3を被覆するシース4とを備えている。そして、絶縁電線5は、内部導体1と、内部導体1を被覆する絶縁層2とを有している。
ここで、絶縁層2は、絶縁樹脂組成物を用いて形成されたものであり、絶縁樹脂組成物は、オレフィン系樹脂と、酸化防止剤とを含んでいる。ここで、酸化防止剤は、オレフィン系樹脂100質量部に対して0.05〜1.0質量部の割合で配合されている。また酸化防止剤は、ヒンダードフェノール構造と異なる構造を有するフェノール系酸化防止剤からなる1次酸化防止剤と、リン系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる2次酸化防止剤とによって構成されており、酸化防止剤中の2次酸化防止剤の配合率が10〜90質量%となっている。
ケーブル10によれば、上記構成の絶縁層2を用いた絶縁電線5が使用されることで、GHz帯域において誘電特性の低下を十分に抑制しながら優れた耐熱老化性を実現することができる。
次に、ケーブル10の製造方法について説明する。
まず絶縁電線5の製造方法について説明する。
<内部導体>
はじめに内部導体1を準備する。内部導体1としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム等の金属からなる金属線が挙げられる。これらの金属はそれぞれ単独で又は組み合わせて用いることもできる。また、上記金属線を本体部とし、その表面にスズや銀等のめっきを施してメッキ膜を形成したものを内部導体1として用いることもできる。また内部導体1としては、単線または撚線を用いることができる。
<絶縁層>
次に、内部導体1上に絶縁層2を形成する。
絶縁層2を形成するためには、ベース樹脂としてのオレフィン系樹脂、及び酸化防止剤を含む絶縁樹脂組成物を準備する。
(オレフィン系樹脂)
オレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン及びプロピレン系樹脂が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
プロピレン系樹脂とは、プロピレンを構成単位として含む樹脂のことをいい、ホモポリプロピレンのみならず、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体をも含む。他のオレフィンとしては、例えばエチレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ヘキセン、2−ヘキセンなどが挙げられる。他のオレフィンは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、エチレン、1−ブテンが、結晶性を低くすることができ、少量の添加で効率的に融点を下げることができることから好ましく用いられ、より好ましくはエチレンが用いられる。
プロピレン系樹脂は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。この場合、ブロック共重合体を用いた場合と比べて、プロピレン系樹脂の融点がより低下し、絶縁電線5の柔軟性をより向上させることができる。
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、内部導体1との接触によるオレフィン系樹脂の劣化を防止するものである。酸化防止剤は、上記オレフィン系樹脂100質量部に対して0.05質量部〜1.0質量部の割合で配合される。この場合、酸化防止剤を、1.0質量部を超える割合で配合する場合に比べて、絶縁層2の表面に酸化防止剤の粒子が浮き出るいわゆるブルーム現象を十分に抑制することができる。酸化防止剤は、オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.1〜0.7質量部の割合で配合することがより好ましく、0.2〜0.5質量部の割合で配合することがより好ましい。
酸化防止剤は、1次酸化防止剤と、2次酸化防止剤とから構成されている。
1次酸化防止剤は、ヒンダードフェノール構造と異なる構造を有するフェノール系酸化防止剤で構成されている。
1次酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール構造と異なる構造を有するフェノール系酸化防止剤で構成されるものであればいかなるものでも用いることが可能である。ここで、ヒンダードフェノール構造と異なる化学構造を有するフェノール系の酸化防止剤を用いるのは、ヒンダードフェノール構造を有するフェノール系酸化防止剤である場合に比べて、GHz帯域において、誘電特性の低下を十分に抑制することができるためである。
ヒンダードフェノール構造と異なる化学構造を有するフェノール系の酸化防止剤としては、セミヒンダードフェノール系の酸化防止剤やレスヒンダードフェノール系の酸化防止剤のほか、セミヒンダードフェノール系及びレスヒンダードフェノール系以外の構造を有する酸化防止剤などが挙げられる。中でも、セミヒンダードフェノール系の酸化防止剤やレスヒンダードフェノール系の酸化防止剤がより好ましい。
この場合、ヒンダードフェノール構造と異なる構造が、セミヒンダードフェノール構造又はレスヒンダードフェノール構造でない場合に比べて、その立体障害を有する分子構造に起因して、周波数による誘電特性への影響を受けにくくなり、誘電特性の低下をさらに十分に抑制することができる。
セミヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤は下記一般式(1)で表される。
Figure 0005687024
(上記一般式(1)式中、R〜Rはメチル基を表し、Rは置換基を表す。)
セミヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤としては、具体的には、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(例えば、アデカ社のアデカスタブAO−80)、エチレンビス(オキシエチエレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](例えば、BASFジャパン社のイルガノックス245)、トリエチレングリコールビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート](例えば、アデカ社のアデカスタブAO−70)が挙げられる。
レスヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤は下記一般式(2)で表される。
Figure 0005687024
(上記一般式(2)式中、R〜Rはメチル基を表し、Rは置換基を表す。)
レスヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤としては、具体的には、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチル)フェノール(例えば、大内新興化学工業社のノクラック300)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン(例えば、アデカ社のアデカスタブAO−30)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチル)フェノール(例えば、アデカ社のアデカスタブAO−40)が挙げられる。
なお、セミヒンダードフェノール系及びレスヒンダードフェノール系以外の構造を有する酸化防止剤としては、例えばBASFジャパン社製イルガノックス3790のような酸化防止剤(1,3,5−トリス[[4−(1,1−ジメチルエチル)−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル]メチル]1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン)が挙げられる。
2次酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤又はイオウ系酸化防止剤を使用することが可能である。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
リン系酸化防止剤としては、例えばトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト及びトリス[2−[[2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン−6−イル]オキシ]エチル]アミンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
イオウ系酸化防止剤としては、例えばジオクタデシル3,3’−チオジプロピオネート及びジドデシル3,3’−チオジプロピオネートが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
酸化防止剤中の2次酸化防止剤の配合率は、10〜90質量%である。酸化防止剤中の2次酸化防止剤の配合率が10質量%未満では、耐熱老化性に劣る。一方、酸化防止剤中の2次酸化防止剤の配合率が90質量%を超えると、優れた高周波特性が得られなくなる。
ここで、酸化防止剤中の2次酸化防止剤の配合率は、過酸化物(ハイドロパーオキサイド)を効率よく分解させることと優れた誘電特性を両立させることができることから、20〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。
上記絶縁層2は、上述した絶縁樹脂組成物を押出機に投入し押出機中の絶縁樹脂組成物を溶融混練して押し出し、この押出物で内部導体1を被覆することにより得られる。
絶縁層2の外径は、40mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることが特に好ましい。
さらに絶縁層2の厚さは、0.4mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがより好ましく、0.2mm以下であることが更に好ましい。特にオレフィン系樹脂がプロピレン系樹脂である場合、プロピレン系樹脂は一般に脆く、常温よりも低温で更に脆くなる傾向があるため、ケーブル10が曲げられると、絶縁層2にクラック等が生じやすくなる。この点、絶縁層2の厚さが0.4mm以下であると、0.4mmを超える場合に比べて、脆化の問題、特に低温脆化の問題が顕著に起こりにくくなる。但し、絶縁層2の厚さは通常は、0.1mm以上である。
もっとも、絶縁層2の厚さは、0.4mmより大きくてもよい。この場合でも、ケーブル10が、曲げがほとんど加えられない用途、例えば固定配線材などに用いられるならば、低温脆化の問題は生じ難くなる。但し、敷設時の作業性(重量)が悪くなることや使用銅量を不必要に増量することも好ましくないことから、絶縁層2の厚さは通常は、6mm以下である。
絶縁電線5においては、絶縁層2は非発泡体でも発泡体でもよいが、非発泡体であることが好ましい。絶縁層2が非発泡体である場合、発泡体の場合に比べて製造が容易である。このため、絶縁層2の外径変動などによるスキューの悪化、VSWRの悪化およびそれに伴う減衰量の増大が起こりにくくなる。このことは、特に絶縁層2が細径化されるほど、具体的には絶縁層2の外径が0.7mm以下になると顕著になる。
なお、絶縁層2が発泡体である場合にはその発泡度は30〜60%であることが好ましい。ここで、発泡度は、以下の式に基づいて算出されるものである。
Figure 0005687024
この場合、GHz帯域で使用されるケーブル用の電線として、絶縁層2のベース樹脂としてプロピレン系樹脂を使用したものを用いても発泡セルが粗大化することを抑制でき、微細且つ均一な発泡セルを有する発泡状態の絶縁層2を得ることができる。また絶縁電線5を使用したケーブル10は、外径変動が小さく、絶縁層2を薄くしても潰れの問題が少なく、減衰量の劣化等のバラツキが十分に抑制される。
絶縁層2を発泡絶縁層とする場合、発泡絶縁層は、絶縁樹脂組成物中に化学発泡剤などの発泡剤を配合することで得ることができる。
また絶縁層2と内部導体1との間に、未発泡樹脂からなる薄層、いわゆる内層を介在させることが好ましい。これにより絶縁層2と内部導体1との密着性を向上させることができる。特に未発泡樹脂がポリエチレンからなる場合、さらに熱老化特性を向上させることができる。また上記内層は、内部導体1中の銅による絶縁層2の劣化(脆化)を防止することもできる。なお、薄層の厚さは例えば0.01〜0.1mmとすればよい。
さらに絶縁層2と外部導体3との間に、薄層、いわゆる外層を介在させることが好ましい。伝送ケーブルでは色付が必要な場合が多い。この場合、薄層として未発泡樹脂を用いると、外層なしで色付けを行う場合に比べて、顔料による電気特性悪化を抑制し容易に色付けを行うことができる。また、発泡樹脂からなる薄層を、絶縁層2と外部導体3との間に介在させると、電線5の外観や特性が改善される。即ち電線5の外径変動が小さくなり、スキューやVSWRが向上し、また、耐つぶれ性が向上し、電線5の外径を小さくすることもできる。なお、薄層の厚さは例えば0.02〜0.2mmとすればよい。
さらに絶縁層2は、絶縁樹脂組成物を溶融混練して内部導体1に押出被覆した後、その押出物に架橋処理を行って得られるものでもよい。この場合、架橋処理は、例えば電子線照射によって行うことができるが、絶縁樹脂組成物が有機過酸化物や硫黄などの架橋剤を含む場合には加熱することによっても行うことができる。但し、電気特性の向上の点からは、電子線照射によって行う方が好ましい。
<外部導体>
次に、上記のようにして得られた絶縁電線5を包囲するように外部導体3を形成する。外部導体3としては、従来より使用されている公知のものを使用することができる。例えば外部導体3は、導線や、導電シートを樹脂シートの間に挟んで構成したテープなどを絶縁層2の外周に沿って巻くことなどによって形成することができる。また、外部導体3は、コルゲート加工、即ち波形成形した金属管で構成することもできる。
<シース>
最後にシース4を形成する。シース4は、外部導体3を物理的又は化学的な損傷から保護するものであり、シース4を構成する材料としては、例えばフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂が挙げられるが、環境性等の観点からポリエチレン樹脂等のハロゲンフリー材料が好ましく用いられる。
以上のようにしてケーブル10が得られる。
図3は、上記絶縁電線5を有するTwinaxタイプのケーブルを示す端面図である。図3に示すように、Twinaxタイプのケーブル20は、2本の絶縁電線5と、ドレンワイヤ6と、ラミネートテープ7と、2本の電力線8と、アルミテープ層及び編組層からなる積層体層9と、シース4とを備えている。ここで、2本の絶縁電線5は互いに平行に配置されており、これらは信号線として使用される。またラミネートテープ7は絶縁電線5及びドレインワイヤ6を巻回しており、シース4は積層体層9を包囲するように積層体層9上に形成されている。ラミネートテープ7は例えばアルミニウム箔とポリエチレンテレフタレートフィルムとの積層体で構成され、シース4は、例えばリケンテクノス社製のANA9897N等のオレフィン系ノンハロ材などで構成される。なお、絶縁電線5及び絶縁層2としては上記実施形態で述べたものを用いることができる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、絶縁電線5が、ケーブルとしての同軸ケーブルやTwinaxタイプのケーブルに適用された例が示されているが、絶縁電線5は、USB3.0ケーブル、HDMIケーブル、インフィニバンドケーブル、マイクロUSBケーブルなどの高速ケーブルなどにも適用可能である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず表1に示すオレフィン系樹脂、1次酸化防止剤および2次酸化防止剤を表1に示す配合割合で混合し絶縁樹脂組成物を用意した。次に、この絶縁樹脂組成物を、押出機(製品名:ラボプラストミル4C150、二軸セグメント押出機2D30W2、スクリュー径(D):φ25mm、有効スクリュー長(L):750mm、東洋精機製作所社製)に投入し、溶融混練して押出成形を行った。このとき、溶融混練温度は200℃とした。また表1において、1次酸化防止剤および2次酸化防止剤の配合量は、100質量部のオレフィン系樹脂に対して配合される量(単位は質量部)であり、「2次AO比率」とは、酸化防止剤(AO)中の2次酸化防止剤の配合割合(質量割合)を百分率で示したものである。
そして、押出機から押出物をチューブ状に押し出し、このチューブ状の押出物で、素線径0.60mmの銅線を被覆した。こうして、導体と、導体を被覆する絶縁層とからなる絶縁電線を作製した。このとき、押出物は、絶縁層の外径が2.1mm、厚さ0.75mmとなるように押し出した。
こうして得られた絶縁電線を、アルミニウム層とポリエチレンテレフタレート層との積層体からなる厚さ25μmのラミネートテープで巻回した。次に、これを、厚さ0.4mmのPVC(ポリ塩化ビニル)からなるシースで被覆した。こうして、非発泡および非架橋で、インピーダンスが50Ωである同軸ケーブルを作製した。
(実施例2〜12及び比較例1〜4)
オレフィン樹脂100質量部に対して表1に示す1次酸化防止剤及び2次酸化防止剤を表1に示す割合(単位は質量部)で配合して絶縁組成物を用意したこと以外は実施例1と同様にして同軸ケーブルを作製した。
なお、表1に示されているオレフィン系樹脂、1次酸化防止剤および2次酸化防止剤としては具体的には以下のものを用いた。
(1)オレフィン系樹脂
(1−1) エチレンプロピレンランダム共重合体
商品名:WFW4(日本ポリプロ株式会社製)、融点:136℃
(1−2) エチレンプロピレンブロック共重合体
商品名:BC3RA(日本ポリプロ株式会社製)、融点:165℃
(1−3) ホモポリプロピレン
商品名:MA3(日本ポリプロ株式会社製)、融点:165℃
(1−4) ポリエチレン(高密度ポリエチレン)
商品名:2070(宇部丸善ポリエチレン株式会社製)、融点:134℃
(2)酸化防止剤
(2−1)1次酸化防止剤(セミヒンダードフェノール系酸化防止剤)
商品名:アデカスタブAO−80(アデカ社製)
一般名:3,9−ビス[2−{3−(3−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン
(2−2)1次酸化防止剤(レスヒンダードフェノール系酸化防止剤)
商品名:アデカスタブAO−40(アデカ社製)
一般名:4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチル)フェノール
(2−3)1次酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
商品名:Ir3114(イルガノックス3114)(BASFジャパン社製)
一般名:(1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン)
(2−4)2次酸化防止剤(リン系酸化防止剤)
商品名:168(IRGAFOS 168)(BASFジャパン社製)
一般名:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト
(2−5)2次酸化防止剤(イオウ系酸化防止剤)
商品名:802 FD(IRGANOX PS 802 FD)(BASFジャパン社製)
一般名:ジドデシル3,3’−チオジプロピオネート
[特性評価]
実施例1〜12及び比較例1〜4で得られた同軸ケーブルについて、以下の特性を評価した。
(1)誘電特性(tanδ)
誘電特性は誘電正接(tanδ)を測定することにより調べた。ここで、誘電正接(tanδ)は、実施例1〜12及び比較例1〜4の同軸ケーブルのうち絶縁層の製造に使用した絶縁樹脂組成物を、直径φ2mm、長さ10cmの棒状に成形し、このサンプルについて、サムテック社製SUM-TM0m0の測定プログラムを用いたマイクロ波測定システムにて、測定周波数3.0GHz、6.9GHz、10.7GHzおよび14.6GHzの各周波数にて測定した。なお、誘電率の測定も行った。結果を表2に示す。各周波数ごとのtanδの合格基準については、以下の通りである。
3.0GHz・・・・1.30×10−4以下
6.9GHz・・・・1.50×10−4以下
10.7GHz・・・1.80×10−4以下
14.6GHz・・・2.10×10−4以下
(2)ケーブル減衰量及び特性インピーダンス
実施例1〜12及び比較例1〜4で得られた同軸ケーブルについて、ネットワークアナライザー(8722ES アジレントテクノロジー社製)を用いて、周波数が3.0GHz、6.9GHz、10.7GHzおよび14.6GHzの場合のそれぞれについて減衰量及び特性インピーダンスを測定した。結果を表2に示す。なお、特性インピーダンスは、実施例1〜12及び比較例1〜4の各々において周波数によらず略一定であった。
(3)耐熱老化特性
耐熱老化特性は以下のようにして評価した。即ちまず、実施例1〜12及び比較例1〜4で得られた同軸ケーブルについて引張試験を行い、引張強度および伸び残率を測定した。以下、それぞれ「初期引張強度」及び「初期伸び残率」という。次に、同軸ケーブルを恒温槽にて120℃で放置し、定期的に取り出して引張試験を行い、引張強度および伸び残率を測定した。そして、この引張強度が初期引張強度の50%となる、または伸び残率が初期伸び残率の50%となった時間を、「120℃寿命」として算出した。結果を表2に示す。なお、耐熱老化特性については、120℃寿命が7250h以上であれば合格とし、7250h未満であれば不合格とした。
(4)ブルーム(ブルーミング)
ブルームは、長さ3mに切断した同軸ケーブルからシース及びラミネートテープを取り除き、50℃、3ヶ月放置した後、露出した絶縁層の表面を観察し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
◎・・・マイクロスコープにて100倍で拡大し、表面に異物が全く確認できない
○・・・マイクロスコープにて100倍で拡大し、表面に異物が確認できる。
△・・・マイクロスコープにて25倍で拡大し、表面に異物が確認できる
×・・・目視で表面に明確に異物が確認できる

Figure 0005687024


Figure 0005687024
表2に示す結果より、実施例1〜12のいずれも、誘電特性及び耐熱老化性の点で合格基準に達していた。これに対し、比較例1は、耐熱老化特性及び高周波における誘電特性の点で合格基準に達しなかった。また比較例2及び比較例3は、誘電特性の点では合格基準に達したものの、耐熱老化性の点では合格基準に達しなかった。比較例4は、高周波における湯誘電特性の点で合格基準に達しなかった。
以上より、本発明の絶縁樹脂組成物によれば、GHz帯域において誘電特性の低下を十分に抑制しながら優れた耐熱老化性を実現することができることが確認された。
1…内部導体(導体)、2…絶縁層、5…絶縁電線、10,20…ケーブル。

Claims (3)

  1. オレフィン系樹脂と、
    酸化防止剤とを含み、
    前記酸化防止剤が、前記オレフィン系樹脂100質量部に対して0.05〜1.0質量部の割合で配合され、
    前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール構造と異なる構造を有するフェノール系酸化防止剤からなる1次酸化防止剤と、リン系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる2次酸化防止剤とによって構成され、
    前記酸化防止剤中の前記2次酸化防止剤の配合率が10〜30質量%であり、
    前記ヒンダードフェノール構造と異なる構造が、セミヒンダードフェノール構造であり
    前記セミヒンダードフェノール構造を有するフェノール系酸化防止剤が下記一般式(1)で表されること、
    を特徴とする絶縁電線用絶縁樹脂組成物。
    Figure 0005687024
    (上記一般式(1)式中、R〜Rはメチル基を表し、Rは置換基を表す。)
  2. 導体と、
    前記導体を被覆する絶縁層とを備える絶縁電線であって、
    前記絶縁層が、請求項1に記載の絶縁電線用絶縁樹脂組成物を用いて形成されたものであること、
    を特徴とする絶縁電線。
  3. 請求項2記載の絶縁電線を有するケーブル。
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