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JP7309481B2 - トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法などの画像形成方法に使用されるトナーに関する。
近年プリンターには、より長寿命化、小型化が求められており、プリンターに搭載されるトナーにも種々の性能をより一層向上させることが求められている。例えば、長寿命化の観点からはこれまで以上の長期耐久性の向上が要求され、小型化の観点からは各ユニットの体積をできるだけ小さくすることが求められている。
従来、長期耐久性向上の観点で、画像形成装置の耐久性を向上させる為に、アモルファスシリコン感光体や硬化型樹脂による表面保護層を有する有機感光体のような高耐久性の感光体が使用されるようになってきた。しかしながら、感光体が高耐久化するほど、感光体の表面状態の劣化の影響が画質に大きく影響することが知られている。
画質に影響を及ぼす感光体の表面変化の因子の一つとして大気中に存在する窒素酸化物が挙げられる。窒素酸化物とは、例えば自動車の排気ガスに含まれる気体であり、近年問題となっている大気汚染物質の一つとして挙げられている。
窒素酸化物は水に溶け込んで、硝酸などの電解質水溶液となることが知られている。そのため、感光体表面に水が付着し易い高温高湿環境下において、画像形成装置を一晩使用せずに放置すると、感光体表面に付着した水に窒素酸化物が溶け込んで、電解質水溶液となる。その結果、感光体表面が低抵抗化し、鮮明な静電潜像の形成が妨げられ、画質の劣化(以下、画像流れと表記する)が発生する場合がある。
一方で、小型化の観点からも様々なユニットの小サイズ化が試みられてきた。例えば、感光体ドラム上の転写残トナーを回収する廃トナー容器の小型化であるが、それを阻む課題としては再転写がある。
電子写真方式による画像形成装置において中間転写体を用いてフルカラー画像を形成する場合、中間転写体上に複数の色のトナーが転写される。この時、上流側で中間転写体上に転写されたトナーが、下流側の色の転写時に中間転写体から感光体等の静電荷像担持体上に移動してしまう現象が発生する場合がある。これが再転写である。
この現象は、耐久使用によりチャージアップしたトナーで起きやすく、低温低湿環境でより発生しやすい。再転写トナーは廃トナーとしてクリーニング装置に収容されるため、再転写トナーが多ければ廃トナー容器の小サイズ化は達成できない。また、再転写が起きると、画像濃度が下がる、又は画像に濃淡ムラが起きるなど画質低下につながる面もある。
以上の通り、プリンターの長寿命化、小型化を達成するには、例えば画像流れ及び再転写の抑制の両立が望まれる。
画像流れを抑制するためには、感光体表面への窒素酸化物の付着を防止する、添加材により窒素酸化物を削り取るといった技術が提案されている。例えば、窒素酸化物の付着を防止する手段として、脂肪酸金属塩を外添剤として添加することにより、静電潜像担持体を脂肪酸金属塩で被膜することで窒素酸化物の付着を抑えることが知られている。
特許文献1では、トナー上の脂肪酸金属塩の付着状態を制御したトナーが提案されている。
また、特許文献2では、トナー粒子にシリカ、チタニア、及び脂肪酸金属塩を多段外添させ、脂肪酸金属塩のトナーへの付着率を制御することで、帯電安定性やクリーニング性の両立が提案されている。
さらに、特許文献3では、チタニアとシリカの複合微粒子と脂肪酸金属塩を添加することによる、帯電の適正化とクリーニング性の両立が提案されている。
特許文献4では、体積抵抗率を制御し、脂肪酸金属塩等で処理した酸化チタンを外添剤として添加することによる、帯電安定性の向上が提案されている。
特開2017-116849号公報 特開2013-164477号公報 特開2010-176068号公報 特開2009-003083号公報
しかしながら、例えば、特許文献1のトナーは、画像流れに対しては一定の効果が確認されるが、耐久使用を通したチャージアップ抑制による再転写性の両立といった観点では検討の余地があることがわかった。
このように、上記特許文献のトナーでは、いずれも低温低湿環境下での長期使用における再転写性、及び高温高湿環境下での長期使用における画像流れに関していまだ改善の余地があることがわかった。
本発明の目的は、上記問題点を解消したトナーを提供することにある。すなわち、耐久使用を通じてシャープな帯電分布と脂肪酸金属塩による部材被膜効果を持続させることができ、再転写の抑制と画像流れの抑制を維持することができるトナーを提供する。
本発明者らは、表面近傍に体積抵抗率を制御した微粒子を存在させたトナー粒子に、画像流れを抑制するのに必要な脂肪酸金属塩を特定の被覆率で存在させることで上記課題を解決できることを見出した。
結着樹脂を含有するトナー粒子を含有するトナーであって、
該トナー粒子の表面には、微粒子A及び微粒子Bが存在し、
該微粒子Aは、脂肪酸金属塩であり、
該微粒子Bの体積抵抗率が、5.0×10Ωm以上1.0×10Ωm以下であり、
コールターカウンターによって測定される該トナー粒子の個数平均粒径、粒度分布及び真密度から得られる平均理論表面積をC(m/g)とし、該トナー粒子100質量部に対する該微粒子Aの含有量をD(質量部)とし、該トナー粒子表面の該微粒子Aによる被覆率をE(%)としたとき、下記式(1)及び(2)を満たし、
該微粒子Bの含有量が、該トナー粒子100質量部に対し、0.10質量部以上3.00質量部以下であり、
透過型電子顕微鏡による該トナーの断面観察において、該トナー1粒子の断面に存在する該微粒子Bの占める総面積のうち、該断面の輪郭から該断面の重心に向かって30nm内側までの表面近傍領域に存在する該微粒子Bであって、該微粒子Bと該トナー粒子の接触している部分の長さが該微粒子Bの周囲長の50%以上である該微粒子Bが占める面積の割合Fが、50面積%以上であることを特徴とするトナー。
0.03≦D/C≦1.50 ・・・(1)
E/(D/C)≦50.0 ・・・(2)
本発明によれば、耐久使用を通じてシャープな帯電分布と脂肪酸金属塩による部材被膜効果を持続させることができ、再転写の抑制と画像流れの抑制を維持することができるトナーを提供できる。
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
先に述べたように、画像流れを抑制するためには、感光体表面への窒素酸化物の付着を防止することが重要であり、脂肪酸金属塩で感光体表面を被膜することが効果的であることが知られている。
一方で、従来の脂肪酸金属塩を含有するトナーは、プリンターの高速化により、現像ローラー回転速度や現像剤撹拌速度を増加させた場合に、プロセス条件によっては、脂肪酸金属塩による感光体表面の被膜効果が長期間使用にわたって持続できない場合があることがわかった。この理由は、以下のように考えている。
従来のトナーは、脂肪酸金属塩の他に、シリカやチタニア粒子等の外添剤も併せて添加されている。脂肪酸金属塩は、変形しやすい展延性のある材料であり、シェアを受けることで、トナー粒子表面に延ばされていく。その際に、脂肪酸金属塩がシリカやチタニアを捕集する、つまり、トナー粒子表面からシリカやチタニアなどの外添剤を離脱させやすいために、帯電が不均一となり、カブリ等の画像弊害が発生してしまう。
また、従来の脂肪酸金属塩を含有するトナーは、プリンターの高速化により、再転写が発生しやすいという課題が生じることがわかった。この理由は、以下のように考えている。
ネガトナーの場合、上流側の画像形成部で中間転写体に転写(1次転写)されたトナーが、下流側の画像形成部で感光体の非画像部の電位部を通過する際に放電し、マイナスからプラスに極性が反転することで、トナーが感光体上に再転写してしまうと考えられる。
特に中間転写体上で多層に積層されたトナーにより画像が形成されていると、下層のトナーほど極性反転を起こしやすく、上層のトナーは逆に過剰に帯電(チャージアップ)することが考えられ再転写が発生しやすくなる。特に低温低湿環境下ではトナーの極性反転が過剰になり、再転写がより発生しやすくなる。
以上のように、画像流れを抑制させるために脂肪酸金属塩を使用するトナーにおいて、将来のプリンター高速化及び小型化を想定した場合以下の2点を達成することが重要である。すなわち、(1)脂肪酸金属塩の感光体表面の被膜効果の持続性向上と、(2)脂肪酸金属塩を使用することによる再転写の発生を抑制することである。
まず、脂肪酸金属塩の感光体表面の被膜効果をどう持続させるかを考える。
上述した通り、脂肪酸金属塩は高い展延性を持つため、摺擦強度が高くなると容易に引き延ばされ、シリカやチタニアなどの微粒子を捕集しやすくなる。また、引き延ばされた脂肪酸金属塩は、トナー粒子表面への付着力が高くなることで感光体表面に移行しにくく、感光体表面を十分に被覆することができなくなる。よって、トナー粒子表面には、引き延ばされずになるべく粒子のまま付着させることが重要である。
続いて、本発明者らは、トナーのチャージアップによる再転写を抑制する手法について考えた。トナーは最適な帯電量を有することが必要であるが、長期使用を通じて、最適な帯電量を維持してチャージアップを抑えるためには、過剰な帯電をリークさせる構造を持たせることが重要だと考えた。そのために体積抵抗値を制御した微粒子を活用することを考えた。
しかし外添剤のようにトナー最表面に体積抵抗値を制御した微粒子を配置させると、帯電のリークが起こりやすくなり、最適な帯電量を維持することが難しいことがわかった。そこで、トナー粒子の表面近傍に体積抵抗値を制御した微粒子を特定の量配置させることで、最適な帯電量を維持しながらチャージアップを抑えることができるようになり、長期使用後においても再転写を抑制することができるようになった。
さらに、表面近傍に体積抵抗率を制御した微粒子を配置させると同時に、脂肪酸金属塩
を解砕し引き延ばすことなく粒子のままトナー表面に配置させることで、画像流れと再転写の問題を解決することができる。このような構成により、脂肪酸金属塩が感光体表面に移行する際に、体積抵抗率が制御された微粒子を一部含有することができるため、大幅に画像流れを改善することができたと考えられる。
体積抵抗率が制御された微粒子が、移行する脂肪酸金属塩に一部含まれ複合体となることで、感光体表面での滑り性が大幅に向上し、感光体表面を一様に被膜することができたためと本発明者らは推測している。
このようなトナーにより、低温低湿環境において長期耐久使用した場合においても再転写を抑制でき、高温高湿環境下において、大幅に画像流れが抑制できることを見出し、本発明に至った。
具体的には、結着樹脂を含有するトナー粒子を含有するトナーであって、
該トナー粒子の表面には、微粒子A及び微粒子Bが存在し、
該微粒子Aは、脂肪酸金属塩であり、
該微粒子Bの体積抵抗率が、5.0×10Ωm以上1.0×10Ωm以下であり、
コールターカウンターによって測定される該トナー粒子の個数平均粒径、粒度分布及び真密度から得られる平均理論表面積をC(m/g)とし、該トナー粒子100質量部に対する該微粒子Aの含有量をD(質量部)とし、該トナー粒子表面の該微粒子Aによる被覆率をE(%)としたとき、下記式(1)及び(2)を満たし、
該微粒子Bの含有量が、該トナー粒子100質量部に対し、0.10質量部以上3.00質量部以下であり、
透過型電子顕微鏡による該トナーの断面観察において、該トナー1粒子の断面に存在する該微粒子Bの占める総面積のうち、該断面の輪郭から該断面の重心に向かって30nm内側までの表面近傍領域に存在する該微粒子Bであって、該微粒子Bと該トナー粒子の接触している部分の長さが該微粒子Bの周囲長の50%以上である該微粒子Bが占める面積の割合Fが、50面積%以上であることを特徴とするトナーである。
0.03≦D/C≦1.50 ・・・(1)
E/(D/C)≦50.0 ・・・(2)
微粒子Bの体積抵抗率は、5.0×10Ωm以上1.0×10Ωm以下であることが重要である。体積抵抗率が5.0×10Ωm未満の場合、トナーが適切な帯電力を維持することが難しく、画像濃度低下を招きやすくなる。体積抵抗率が1.0×10Ωmより大きい場合、チャージアップ時に帯電をリークしにくくなり再転写が発生しやすい。
微粒子Bの体積抵抗率は、好ましくは1.0×10Ωm~5.0×10Ωmであり、より好ましくは1.0×10Ωm~5.0×10Ωmである。
また、2種類以上の金属を用いた複合酸化物微粒子を用いることもできるし、1種単独またはこれらの微粒子群の中から任意の組み合わせで選択される2種以上を用いることもできる。
なお、体積抵抗率は、酸化チタンを製造する際の焼成温度や表面処理剤量によって制御することができる。
トナー中の微粒子Bの含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.10質量部以上3.00質量部以下であることが、長期使用を通じて再転写を良好に抑制するために重要である。含有量が0.10質量部未満であると、チャージアップ時に帯電をリークしにくくなり再転写が発生しやすくなり、3.00質量部を超えるとトナーが適切な帯電力を維持することが難しく、画像濃度が低下しやすくなる。
トナー中の微粒子Bの含有量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.30質量部~2.50質量部であり、より好ましくは0.50質量部~2.50質量部である。
透過型電子顕微鏡TEMを用いたトナーの断面観察において、トナー1粒子の断面に存在する微粒子Bの占める総面積のうち、トナー1粒子の断面の輪郭から該断面の重心に向かって30nm内側までの表面近傍領域に存在する微粒子Bであって、微粒子Bとトナー粒子の接触している部分の長さが微粒子Bの周囲長の50%以上である微粒子Bが占める面積の割合Fが、50面積%以上であることが必要である。当該範囲であると、再転写及び画像流れを抑制できる。
割合Fが上記範囲であることは、微粒子Bの大部分はトナー粒子に埋め込まれていて、さらにトナー粒子の表面近傍に存在していることを示している。このような構造であると、長期使用でも帯電をリークして最適な帯電を維持することができるため、再転写を抑制しやすくなる。
Fが50面積%未満の場合は、トナー粒子に埋め込まれていない微粒子Bが多く存在している。そのため、長期使用において、微粒子Bがトナーから脱離したり、微粒子Aである脂肪酸金属塩が感光体表面に移行する際に捕集されやすくなったりするため、トナーがチャージアップしやすくなり、再転写が発生しやすくなる。
割合Fは、好ましくは60面積%以上であり、より好ましくは70面積%以上である。一方、上限は特に制限されないが、好ましくは100面積%以下である。割合Fは、微粒子Bをトナー粒子に添加するときの製造条件、トナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)、微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径を変更することにより制御できる。
微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径は、5nm以上50nm以下であることが、チャージアップ時のリークサイトとして機能するうえで好ましい。より好ましくは5nm以上25nm以下である。
トナー粒子表面に微粒子Cが存在することが好ましい。微粒子Cは、シリカ微粒子であることが好ましい。微粒子Cの一次粒子の個数平均粒径は、5nm以上50nm以下であることが好ましく、5nm以上30nm以下であることがより好ましい。
粒径5nm以上50nm以下のシリカ微粒子は静電凝集しやすく、解砕するのが難しい。しかし、トナー粒子表面に微粒子Bが存在していると、シリカ微粒子の静電凝集を緩和させて、トナー粒子表面でのシリカ微粒子の分散性を向上させやすい。そのため、外添剤Cを外添することで、トナー粒子表面の帯電分布を均一にしやすく、帯電分布をシャープにすることができる。その結果、画像濃度均一性が良化する。
透過型電子顕微鏡TEMによるトナーの断面観察において、トナー1粒子の断面に存在する微粒子Cの占める総面積のうち、トナー1粒子の断面の輪郭から該断面の重心に向かって30nm内側までの表面近傍領域に存在する微粒子Cであって、微粒子Cとトナー粒子の接触している部分の長さが微粒子Cの周囲長の50%以上である微粒子Cが占める面積の割合が、40面積%以下であることが画像濃度の均一性の観点から好ましい。
該面積の割合は、好ましくは35面積%以下であり、より好ましくは28面積%以下である。一方、下限は特に制限されないが、好ましくは0面積%以上である。
つまり微粒子Cの大部分は、トナー粒子に埋め込まれていないことを示している。これにより、トナー粒子表面近傍の微粒子Bと微粒子Cが相互作用して、トナー粒子表面での微粒子Cの分散性が向上し、画像濃度の均一性がより向上する。
微粒子Cによる該面積の割合は、微粒子Cをトナー粒子に添加するときの製造条件、トナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)、微粒子Cの一次粒子の個数平均粒径を変更することにより制御することができる。
微粒子Cの含有量は、トナー粒子100質量部に対し、0.3質量部~2.0質量部であることが好ましい。
微粒子Aについて説明する。微粒子Aは脂肪酸金属塩である。
脂肪酸金属塩は、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、及びリチウムから
なる群から選ばれる少なくとも一の金属の塩が好ましい。また、脂肪酸亜鉛又は脂肪酸カルシウムがより好ましく、脂肪酸亜鉛がさらに好ましい。これらを用いた場合には本発明の効果がより顕著となる。
また、脂肪族金属塩の脂肪酸としては、炭素数8以上28以下(より好ましくは12以上22以下)の高級脂肪酸が好ましい。金属は、2価以上の多価金属が好ましい。すなわち、微粒子Aは、2価以上(より好ましくは2価又は3価、さらに好ましくは2価)の多価金属と炭素数8以上28以下(より好ましくは12以上22以下)の脂肪酸との脂肪酸金属塩であることが好ましい。
炭素数8以上の脂肪酸を用いると遊離脂肪酸の発生を抑えやすい。遊離脂肪酸量としては、0.20質量%以下が好ましい。脂肪酸の炭素数が28以下であれば、脂肪酸金属塩の融点が高くなりすぎず、定着性を阻害しにくい。脂肪酸としては、ステアリン酸が特に好ましい。2価以上の多価金属は、亜鉛を含むことが好ましい。
脂肪酸金属塩の一例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウム等のステアリン酸金属塩、及びラウリン酸亜鉛が例示される。
コールターカウンターによって測定されるトナー粒子の個数平均粒径と粒度分布及び真密度から得られる平均理論表面積をC(m/g)とし、
トナー粒子100質量部に対する微粒子Aの含有量をD(質量部)とし、
該トナー粒子表面の微粒子Aによる被覆率をE(%)としたとき、下記式(1)及び(2)を満たすことが重要である。
0.03≦D/C≦1.50 ・・・(1)
E/(D/C)≦50.0 ・・・(2)
平均理論表面積C(m/g)は、好ましくは0.60~1.50であり、より好ましくは0.90~1.10である。
被覆率E(%)は、好ましくは0.3~40.0であり、より好ましくは0.5~20.0である。
D/Cは、トナー粒子を真球とした場合に、どれだけ微粒子Aがトナー粒子を被覆するかを捉えることのできる式であり、D/Cを「理論的な被覆率」と定義する。E/(D/C)は、その「理論的な被覆率」に対して、実際はどれだけ被覆しているかを表している式である。
D/Cは、0.03以上1.50以下であることが必要である。0.03未満であると、感光体表面への微粒子Aの移行が十分でなく、画像流れを抑制することが困難となる。一方で、1.50を超えると、微粒子Bによるチャージアップ抑制が不十分になり、再転写が発生する。D/Cは、0.05以上1.50以下であることが好ましく、0.10以上1.50以下であることがより好ましい。
E/(D/C)は、50.0以下であることが重要である。E/(D/C)が、50.0以下であるということは、実際の被覆率が「理論的な被覆率」よりも低いということを表しており、上述した通り、脂肪酸金属塩がトナー粒子表面に引き延ばされることなく粒子のまま付着又は固着していることを意味している。
E/(D/C)が、50.0を超えると、外添により脂肪酸金属塩がトナー粒子表面に引き延ばされて存在することになる。そうすると、長期使用後にトナー内部にたまった電荷を効率よく逃がすことができず、再転写が発生する。
E/(D/C)は、好ましくは45.0以下であり、より好ましくは40.0以下である。一方、下限は特に制限されないが、好ましくは3.0以上であり、より好ましくは10.0以上である。
上記(2)式の範囲内に収めるためには、例えば、トナー粒子の設計、及び混合工程条件等の適正化を行うことが挙げられる。
脂肪酸金属塩の添加量(含有量D)は、トナー粒子100質量部に対し0.02質量部以上1.80質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.10質量部以上0.50質量部以下である。添加量が0.02質量部以上であれば、添加効果が得られる。また1.80質量部より少ないと、現像ブレード等への付着が抑えられ、現像スジ等の画像弊害が起きにくい。
脂肪酸金属塩(微粒子A)の体積基準におけるメジアン径(D50s)が0.15μm以上3.00μm以下であることが好ましく、0.30μm以上3.00μm以下であることがより好ましい。0.15μm以上であると感光体表面へ十分に移行され、画像流れを抑制しやすい。また、粒径が3.00μm以下であると、現像ブレード等への付着が抑えられ、現像スジ等の画像弊害が起きにくい。
脂肪酸金属塩は、下記式(4)で定義されるスパン値Bが1.75以下であることが好ましい。
スパン値B=(D95s-D5s)/D50s (4)
D5s:脂肪酸金属塩の体積基準における5%積算径
D50s:脂肪酸金属塩の体積基準における50%積算径
D95s:脂肪酸金属塩の体積基準における95%積算径
スパン値Bとは脂肪酸金属塩の粒度分布を示す指標であり、スパン値Bが1.75以下であると、トナー中に存在する脂肪酸金属塩の粒径のばらつきが小さくなるため、帯電安定性がより得られる。そのため、逆極性に帯電するトナーが減少し、再転写を抑制できる。スパン値Bは1.50以下がより好ましく、より安定した画像が得られる。さらに好ましくは1.35以下である。下限は特に制限されないが、好ましくは0.5以上である。
微粒子Aのトナー粒子に対する固着率をG(%)としたとき、面積の割合FとGとの関係が下記式(3)を満たすことが好ましく、式(3’)を満たすことがより好ましい。
2.0≦(100-G)/(100-F)≦8.0 ・・・(3)
3.0≦(100-G)/(100-F)≦6.0 ・・・(3’)
上記範囲であると、画像流れを大幅に抑制でき、また、現像スジを抑制できる。微粒子Bの埋め込み度合いが高く、脂肪酸金属塩を含有量に対して低被覆率で付着、固着させることで上記範囲を実現できる。
つまり、感光体表面に移行する脂肪酸金属塩に微粒子Bが上記式を満たす形で一部付着して複合体を形成することによって、先述した通り、大幅に画像流れを抑制することができる。さらに、微粒子Aと微粒子Bとが複合体を形成することで、微粒子Aのブレードへの付着力も微粒子Bによって軽減されるため、ブレード融着が軽減され、現像ブレードを通過しやすくなるため、現像スジも抑制することができる。
微粒子Aのトナー粒子に対する固着率G(%)は、好ましくは0.0~8.0であり、より好ましくは0.0~6.0である。
微粒子Aの粒径や、外添工程(トナー粒子と微粒子Aを混合する工程)における機械的衝撃力(攪拌周速や時間)を制御することによって、微粒子Aの固着率Gを好ましい範囲に制御することができる。
微粒子Bについて説明する。微粒子Bは、体積抵抗率が、5.0×10Ωm以上1.0×10Ωm以下であればよく、酸化チタン微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子、及びアルミナ微粒子からなる群から選択される少なくとも一が好ましく用いられる。酸化チタン微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子又はアルミナ微粒子であることがより好ましい。酸化チタン微粒子及びチタン酸ストロンチウム微粒子からなる群から選択される少なくとも一がさらに好ましく、チタン酸ストロンチウムがさらにより好ましく用いられる。
チタン酸ストロンチウムは、六面体形状をしており、トナー粒子との接触面積を大きくすることができるため、耐久使用によってトナー粒子にたまった電荷を効率よく逃がすこ
とができる。また、2種類以上の金属を用いた複合酸化物微粒子を用いることもできるし、これらの微粒子群の中から任意の組み合わせで選択される2種以上を用いることもできる。
微粒子Bは、疎水性を付与する目的で、表面処理されていてもよい。
疎水化処理剤としては、例えば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、t-ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシランなどのクロロシラン類;
テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン類;
ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザンなどのシラザン類;
ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、クロロアルキル変性シリコーンオイル、クロロフェニル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、及び、末端反応性シリコーンオイルなどのシリコーンオイル;
ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどのシロキサン類が挙げられる。
脂肪酸及びその金属塩として、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸、前記脂肪酸と亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウムなどの金属との塩が挙げられる。
これらの中でも、アルコキシシラン類、シラザン類、シリコーンオイルは、疎水化処理を実施しやすいため、好ましく用いられる。これらの疎水化処理剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
微粒子Cについて説明する。微粒子Cはシリカ微粒子であり、ヒュームドシリカのように乾式法で得られたものを用いてもよく、ゾルゲル法のような湿式法で得られたものを用いることもできる。帯電性の観点から、乾式法で得られたものを用いる方が好ましい。
さらに微粒子Cは、疎水性、流動性を付与する目的で、表面処理されていてもよい。疎水化方法としては、シリカ微粒子と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的
に処理する方法が挙げられる。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカを有機ケイ素化合物で処理する。そのような有機ケイ素化合物としては、以下のものが挙げられる。
ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン。
さらには、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α-クロルエチルトリクロルシラン、β-クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレートが挙げられる。
さらには、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1-ヘキサメチルジシロキサンが挙げられる。
さらには、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2~12個のシロキサン単位を有し、末端に位置する単位のSiに水酸基を1つずつ有するジメチルポリシロキサンが例示できる。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
また、シリコーンオイル処理シリカにおいて、好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度が30mm/s以上1000mm/s以下のものが用いられる。
例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α-メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルがある。
シリコーンオイル処理の方法としては、以下の方法が挙げられる。
シランカップリング剤で処理されたシリカとシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーのような混合機を用いて直接混合する方法。
ベースとなるシリカにシリコーンオイルを噴霧する方法。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、シリカを加え混合し溶剤を除去する方法。 シリコーンオイル処理シリカは、シリコーンオイルの処理後にシリカを不活性ガス中で温度200℃以上(より好ましくは250℃以上)に加熱し表面のコートを安定化させることがより好ましい。
好ましいシランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)が挙げられる。
トナーの性能を向上させるために、トナーはさらに他の外添剤を含んでいてもよい。
微粒子A、微粒子B、微粒子Cを添加する好ましい製造方法について説明する。
トナー粒子表面に微粒子Bを埋め込み、一方で微粒子Aの埋め込みを抑えた構造を作り出すためには、微粒子Bと微粒子Aを添加する工程を2段階に分けることが好ましい。すなわち、トナー粒子に微粒子Bを添加する工程及び微粒子Bが添加されたトナー粒子に微粒子A(及び必要に応じて微粒子C)を添加する工程を有することが好ましい。
微粒子Bと微粒子Aをトナー粒子に添加する工程は、乾式法で外添剤として添加してもよいし、湿式法で添加してもよいし、2段階でそれぞれの方法を用いてもよい。特に微粒子Bと微粒子Aの存在状態の制御性から、2段階の外添工程を採用するのがより好ましい。
トナー粒子表面に微粒子Bを埋め込むためには、外添工程(トナー粒子と微粒子Bを混合する工程)で外添装置を温めて、熱により微粒子Bを埋め込むことが好ましい。熱によりわずかに軟らかくなったトナー粒子表面に、機械的衝撃力を加えることで、微粒子Bを
埋め込むことができる。また、外添工程でトナー粒子と微粒子Bを混合させて、その後に同じ装置又は別の装置で加温工程を設けて、微粒子Bを埋め込む方法でもよい。
微粒子Bの埋め込みを達成するには、外添工程の温度を、トナー粒子のガラス転移温度Tg近傍に設定することが好ましい。
微粒子Bの外添工程の温度Tは、トナー粒子のガラス転移温度をTgとした場合、Tg-10℃≦T≦Tg+5℃の条件が好ましい。
また、トナー粒子のガラス転移温度Tgは保存性の観点から、40℃以上70℃以下が好ましく、より好ましくは50℃以上65℃以下である。
微粒子Bの外添工程に用いる装置としては、混合機能と機械的衝撃力を与える機能を有している装置が好ましく、公知の混合処理装置を用いることができる。例えば、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)、及びハイブリダイザー(奈良機械社製)などの公知の混合機を温めて使用することで、トナー粒子に微粒子Bを埋め込むことができる。
微粒子Bのトナー表面における分散度評価指数は、0.4以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、好ましくは0.0以上である。上記範囲であると微粒子Bが帯電のリークサイトとして効果的に働く。微粒子Bの分散性が向上するように外添条件を設定することが好ましい。
続いて、微粒子Bが埋め込まれたトナー粒子に、微粒子Aを添加する好ましい方法について説明する。微粒子Aの大部分がトナー粒子に埋め込まれていないことが重要である。このような構造を達成するためには、微粒子Bの外添工程に用いる装置と同様のものを使用することができる。
微粒子Aを外添する場合は、混合機を温めて使用する必要はなく、微粒子Aの外添工程の温度Tは、トナーのガラス転移温度をTgに対して、T≦Tg-15℃の条件が好ましい。
続いて、微粒子Bが埋め込まれたトナー母体に、微粒子Cを添加する好ましい方法について説明する。微粒子Cは乾式での外添工程で添加するのが好ましく、微粒子Bの外添工程に用いる装置と同様のものを使用することができる。
微粒子Cを外添する場合は、混合機を温めて使用する必要はなく、微粒子Cの外添工程の温度Tは、トナーのガラス転移温度をTgに対して、T≦Tg-15℃の条件が好ましい。微粒子Cを添加するタイミングは、微粒子Bが埋め込まれたトナー粒子に、微粒子Aと微粒子Cを同時に外添してもよいし、微粒子Bが埋め込まれたトナー粒子に微粒子Aが添加された後に、微粒子Cを外添してもよい。
トナー粒子の製造方法について説明する。トナー粒子の製造方法は公知の手段を用いることができ、混練粉砕法や湿式製造法を用いることができる。粒子径の均一化や形状制御性の観点からは湿式製造法を好ましく用いることができる。さらに湿式製造法には懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などを挙げることができ、乳化凝集法を好ましく用いることができる。
乳化凝集法は、まず結着樹脂の微粒子及び必要に応じて着色剤などの材料を、分散安定剤を含有する水系媒体中で分散混合する。水系媒体中には、界面活性剤が添加されていてもよい。その後、凝集剤を添加することによって所望のトナーの粒径となるまで凝集させ、その後又は凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行う。さらに必要に応じて、熱による形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する。
ここで、結着樹脂の微粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とする複数層
で形成された複合粒子とすることもできる。例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法などにより製造、又はいくつかの製法を組み合わせて製造することができる。
トナー粒子中に内添剤を含有させる場合は、樹脂微粒子に内添剤を含有したものとしてもよく、また、別途内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、当該内添剤微粒子を、樹脂微粒子を凝集させる際に共に凝集させてもよい。また、凝集時に組成の異なる樹脂微粒子を時間差で添加して凝集させることにより組成の異なる層構成のトナー粒子を作ることもできる。
分散安定剤としては以下のものを使用することができる。無機分散安定剤として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。
また、有機系分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンが挙げられる。
界面活性剤として、公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を使用することができる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリキオシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、スチリルフェニルポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖などが挙げられる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウムなどの脂肪族石鹸や、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げることができる。
トナー粒子を構成する結着樹脂について説明する。
結着樹脂はビニル系樹脂、ポリエステル樹脂などを好ましく例示できる。ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂及びその他の結着樹脂として、以下の樹脂又は重合体が例示できる。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンのようなスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体のようなスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂
、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。これら結着樹脂は単独或いは混合して使用できる。
ビニル系樹脂の製造に用いることのできる重合性単量体としては、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルなどのメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸;マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸;マレイン酸無水物などの不飽和ジカルボン酸無水物;アクリロニトリルなどのニトリル系ビニル単量体;塩化ビニルなどの含ハロゲン系ビニル単量体;ニトロスチレンなどのニトロ系ビニル単量体;などが挙げられる。
結着樹脂はカルボキシ基を含有することが好ましく、カルボキシ基を含む重合性単量体を用いて製造された樹脂であることが好ましい。
カルボキシ基を含む重合性単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、クロトン酸などのビニル性カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸モノメタクリロイルオキシエチルエステルなどの不飽和ジカルボン酸モノエステル誘導体などが挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、下記に挙げるカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させたものを用いることができる。カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及び、トリメリット酸が挙げられる。アルコール成分としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、及び、ペンタエリスリトールが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂は、ウレア基を含有したポリエステル樹脂であってもよい。ポリエステル樹脂としては末端などのカルボキシ基はキャップしないことが好ましい。
結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、架橋剤を添加してもよい。
例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタク
リレートに変えたもの。
架橋剤の添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.001質量部以上15.000質量部以下であることが好ましい。
トナー粒子は離型剤を含有することが好ましい。トナー粒子が、融点60℃以上90℃
以下(より好ましくは60℃以上80℃以下)のエステルワックスを含有することが好ましい。このようなワックスは、結着樹脂に対する相溶性に優れるため可塑効果が得られやすく、微粒子Bをトナー粒子表面に効率的に埋め込むことができる。
エステルワックスは、例えば、カルナウバワックス、モンタン酸エステルワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナウバワックスなどの脂肪酸エステル類から酸成分の一部又は全部を脱酸したもの;植物性油脂の水素添加等によって得られる、ヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物;ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等の飽和脂肪酸モノエステル類;セバシン酸ジベヘニル、ドデカン二酸ジステアリル、オクタデカン二酸ジステアリル等の飽和脂肪族ジカルボン酸と飽和脂肪族アルコールとのジエステル化物;ノナンジオールジベヘネート、ドデカンジオールジステアレート等の飽和脂肪族ジオールと飽和脂肪族モノカルボン酸とのジエステル化物が挙げられる。
なお、これらのワックスの中でも、分子構造中に2つのエステル結合を有する2官能エステルワックス(ジエステル)を含有していることが好ましい。
2官能のエステルワックスは、2価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、又は、2価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステル化合物である。
脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、べへン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。
脂肪族モノアルコールの具体例としては、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、べへニルアルコール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノールなどが挙げられる。
2価のカルボン酸の具体例としては、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。
2価のアルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-へキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、1,30-トリアコンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、1,4-フェニレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAなどが挙げられる。
他に使用可能な離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスのような天然ワックス及びその誘導体、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸のような脂肪酸、あるいはその化合物が挙げられる。
離型剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して5.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
トナー粒子は着色剤を含有していてもよい。着色剤は特に限定されず、以下に示すよう
な公知のものを使用することができる。
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180。
赤色顔料としては、ベンガラ、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドC、レーキッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリラントカーミン3B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254。
青色顔料としては、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBGなどの銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66。
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラックが挙げられる。これらの着色剤は、単独又は混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。
なお、着色剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して3.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましい。
トナー粒子は荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては、公知のものが使用できる。特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
荷電制御剤として、トナー粒子を負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。
有機金属化合物及びキレート化合物として、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、又はエステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類なども含まれる。
さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーンが挙げられる。
一方、トナー粒子を正荷電性に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩によるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩、及
びこれらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
これら荷電制御剤は単独で又は2種類以上組み合わせて含有することができる。これらの荷電制御剤の添加量としては、重合性単量体100.00質量部に対して、0.01質量部以上10.00質量部以下であることが好ましい。
各種物性の測定方法について以下に説明する。
<微粒子Aのメジアン径とスパン値の測定>
脂肪酸金属塩の体積基準のメジアン径の測定は、JIS Z8825-1(2001年)に準じて測定されるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA-920」(堀場製作所社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、LA-920に付属の専用ソフト「HORIBA LA-920 for Windows(登録商標) WET(LA-920) Ver.2.02」を用いる。また、測定溶媒としては、予め不純固形物などを除去したイオン交換水を用いる。
測定手順は、以下の通りである。
(1)バッチ式セルホルダーをLA-920に取り付ける。
(2)所定量のイオン交換水をバッチ式セルに入れ、バッチ式セルをバッチ式セルホルダーにセットする。
(3)専用のスターラーチップを用いて、バッチ式セル内を撹拌する。
(4)「表示条件設定」画面の「屈折率」ボタンを押し、ファイル「110A000I」(相対屈折率1.10)を選択する。
(5)「表示条件設定」画面において、粒子径基準を体積基準とする。
(6)1時間以上の暖気運転を行った後、光軸の調整、光軸の微調整、ブランク測定を行う。
(7)ガラス製の100ml平底ビーカーに約60mlのイオン交換水を入れる。この中に分散剤として、「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(8)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora 150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(9)前記(7)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(10)前記(9)のビーカー内の水溶液に超音波を照射した状態で、約1mgの脂肪酸金属塩を少量ずつ前記ビーカー内の水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、この際に脂肪酸金属塩がかたまりとなって液面に浮く場合があるが、その場合はビーカーを揺り動かすことでかたまりを水中に沈めてから60秒間の超音波分散を行う。また、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(11)前記(10)で調製した脂肪酸金属塩が分散した水溶液を、気泡が入らないように注意しながら直ちにバッチ式セルに少量ずつ添加して、タングステンランプの透過率が90%~95%となるように調整する。そして、粒度分布の測定を行う。得られた体積基
準の粒度分布のデータを元に、小粒径側からの5%積算径、50%積算径及び95%積算径を算出する。
得られた各値をD5s、D50s、D95sとし、これらよりスパン値を求める。
<トナー粒子の真密度の測定方法>
トナー粒子に外添剤が外添されているトナーにおいてトナー粒子の真密度を測定する場合には、外添剤を取り除く。具体的な方法は、以下の通りである。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに該ショ糖濃厚液31gと、6mLのコンタミノンNを入れ、分散液を作製する。この分散液にトナー1gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカー(いわき産業(株)製「KMShaker」)にて1分当たり350往復の条件で20分間振盪する。振盪後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、3500rpm、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内においては、最上層にはトナー粒子が存在し、下層の水溶液側には外添剤が存在するため、最上層のトナー粒子のみを回収する。
なお、外添剤が十分に取り除ききれていない場合には、必要に応じて遠心分離を繰り返し行い、分離を十分に行った後、トナー液を乾燥しトナー粒子を採集する。
トナー粒子の真密度は、乾式自動密度計オートピクノメーター(ユアサアイオニクス社製)により測定する。条件は下記の通りである。
セル:SMセル(10ml)
サンプル量:約2.0g
この測定方法は、気相置換法に基づいて、固体・液体の真密度を測定するものである。液相置換法と同様、アルキメデスの原理に基づいているが、置換媒体としてガス(アルゴンガス)を用いるため、微細孔への精度が高い。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールターカウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、測定、解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なう。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)ultisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/個数%、グラフ/体積%とそれぞれ設定したときの、分析/個数統計値(算術平均)、分析/体積統計値(算術平均)画面の「算術径」がそれぞれ個数平均粒径(D1)、重量平均粒径(D4)である。
<トナー粒子の単位質量当たりの平均理論表面積Cの計算方法>
上記個数平均粒径(D1)を求めた後、測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、2.0μmから32.0μmまでを12チャンネルに区分けし(2.000~2.520μm、2.520~3.175μm、3.175~4.000μm、4.000~5.040μm、5.040~6.350μm、6.350~8.000μm、8.000~10.079μm、10.079~12.699μm、12.699~16.000μm、16.000~20.159μm、20.159~25.398μm、25.398~32.000μm)、それぞれの粒径範囲におけるトナー粒子の個数割合を求める。
その後、各チャンネルの中央値(例えば、2.000~2.520μmであれば、中央値は2.260μmとなる)を用いて、それぞれの各チャンネル中央値のトナー粒子が真球であると仮定した場合の理論表面積(=4×π×(各チャンネルの中央値))を求める。その理論表面積と、先に求めた各チャンネルに属する粒子の個数割合を掛け合わせることによって、測定したトナー粒子が真球であると仮定した場合のトナー粒子一粒子の平均理論表面積(a)を求める。
次に、同様にして各チャンネルの中央値と測定したトナー粒子の真密度からそれぞれの各チャンネル中央値のトナー粒子が真球であると仮定した場合の理論質量(=4/3×π×(各チャンネルの中央値)×真密度)を求める。その理論質量と、先に求めた各チャンネルに属する粒子の個数割合から、トナー粒子一粒子の平均理論質量(b)を求める。
以上、トナー粒子一粒子の平均理論表面積と平均理論質量より、測定したトナーの単位
質量当たりの平均理論表面積C(m/g)を算出する。
<微粒子Aの被覆率の測定方法>
微粒子Aの被覆率は、ESCA(X線光電子分光分析)(アルバック-ファイ社製 Q
uantum 2000)により測定する。
サンプルホルダーとしては、装置付属の75mm角のプラテン(サンプル固定用の約1mm径のねじ穴が具備されている)を用いた。そのプラテンのネジ穴は貫通しているため、樹脂等で穴をふさぎ、深さ0.5mm程度の粉体測定用の凹部を作製する。その凹部に測定試料(トナー又は微粒子A(脂肪酸金属塩)単体)をスパチュラ等で詰め込み、すり切ることでサンプルを作製する。
ESCAの測定条件は、下記の通りである。
分析方法:ナロー分析
X線源:Al-Kα
X線条件:100μ25W15kV
光電子取り込み角度:45°
PassEnergy:58.70eV
測定範囲:φ100μm
まずトナーの測定を行う。微粒子Aに含有される金属原子の定量値の算出には、C 1
s(B.E.280~295eV)、O 1s(B.E.525~540eV)、Si 2p(B.E.95~113eV)及び、該微粒子Aの金属原子の元素ピークを使用する。ここで得られた金属元素の定量値をX1とする。
次いで同様にして、微粒子A単体の元素分析を行い、ここで得られた該微粒子Aに含有する元素の定量値をX2とする。
上記X1及びX2を用いて下式のように求める。
微粒子Aの被覆率(%)=X1/X2×100
<微粒子A及び微粒子Bのトナー中含有量の測定>
以下の方法により、該トナーの構成成分から微粒子A及びBを分離し、含有量を測定する。
トナー1gをバイアル瓶に入れたクロロホルム31gに添加して分散させる。分散には超音波式ホモジナイザーを用いて30分間処理して分散液を作製する。処理条件は以下の通りである。
超音波処理装置:超音波式ホモジナイザーVP-050(タイテック株式会社製)
マイクロチップ:ステップ型マイクロチップ、先端径φ2mm
マイクロチップの先端位置:ガラスバイアルの中央部、且つバイアル底面から5mmの高さ
超音波条件:強度30%、30分。このとき、分散液が昇温しないようにバイアルを氷水で冷却しながら超音波を掛ける。
分散液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、58.33S-1、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内では、トナーを構成していた材料毎に分離される。各材料を抽出して、真空条件下(40℃/24時間)で乾燥する。本発明に必要な要件を満たしている微粒子A及びBを選別、抽出し、含有量を測定する。
<微粒子Bの体積抵抗率の測定方法>
微粒子Bの体積抵抗率は電位計(ケースレー製6430型サブフェムトアンペア・リモート・ソースメータ)を用いて測定した電流値より算出する。上下電極挟み込み方式のサンプルホルダ(東陽テクニカ製SH2-Z型)に微粒子Bを1.0g充填し、2.0N・mのトルクを加えることで微粒子Bを圧縮する。電極には、上電極直径25mm、下電極
直径2.5mmのものを使用する。サンプルホルダを通して外添剤に10.0Vの電圧を印可し、充電電流を含まない飽和時の電流値から抵抗値を算出し、下記の式にて体積抵抗率を算出する。
トナーから微粒子Bを単離する方法は、トナーをクロロホルムなどの溶媒に分散させ、その後に遠心分離等で比重の差で微粒子Bを単離することができる。なお、微粒子Bを単独で入手できる場合は、微粒子Bを単独で測定することもできる。
体積抵抗率(Ωm)=抵抗値(Ω)・電極面積(m)/サンプル厚さ(m)
<微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径の測定方法>
微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径の測定は、走査型電子顕微鏡「S-4800」(商品名;日立製作所製)を用いて行う。微粒子Bが添加されたトナーを観察して、最大5万倍に拡大した視野において、ランダムに100個の微粒子Bの一次粒子の長径を測定して個数平均粒径を求める。観察倍率は、微粒子Bの大きさによって適宜調整する。
なお、微粒子Bを単独で入手できる場合は、微粒子Bを単独で測定することもできる。
<微粒子Cの一次粒子の個数平均粒径の測定方法>
微粒子Cの個数平均粒径は、微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径の測定方法と同様にして行う。なお、微粒子A及び微粒子Bと区別するには、外添剤の各粒子に対してEDS分析を行い、分析した粒子が微粒子Cであるか否かを判断する。
<埋め込まれた微粒子Bが占める面積の割合の測定方法>
埋め込まれた微粒子Bが占める面積の割合の測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子製JEM-2100)を用い行う。
試料作製は、常温硬化性のエポキシ樹脂中へ観察すべきトナーを十分に分散させる。その後温度35℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を、そのまま、あるいは凍結させてダイヤモンド刃を備えたミクロトームにより薄片状のサンプルとして観察する。
TEMにて観察するトナーは、透過型顕微鏡写真での断面積から円相当径を求め、その値がコールターカウンターを用いる前述の方法により求めたトナー粒子の個数平均粒径の±10%の幅に含まれるものを選択する。100個の断面について以下のトナー断面画像解析を行う。
画像解析には、画像処理ソフト「Image-Pro Plus5.1J」(Medi
aCybernetics社製)を使用する。
埋め込まれた微粒子Bと埋め込まれていない微粒子Bの判別について説明する。微粒子Bの一部だけがトナー粒子に埋め込まれている場合は、微粒子Bとトナー粒子の接触している部分の長さが、その微粒子Bの周囲長の50%以上であるときに、その微粒子Bは埋め込まれているとする。微粒子Bとトナー粒子の接触している部分の長さが、その微粒子Bの周囲長の50%未満であるときに、その微粒子Bは埋め込まれていないとする。
トナー断面において、画像解析に用いる領域について説明する。トナーの断面の輪郭は、トナーの最表面とする。トナー1粒子において、微粒子AやBが最表面となる部分もあれば、トナー粒子が最表面となる部分もある。トナーの断面の輪郭から該断面の重心に向かって30nm内側までの領域を、表面近傍領域とする。トナー粒子に埋め込まれた微粒子Bの一部又は全部が、表面近傍領域よりもトナー内部側に含まれた場合は、その部分の面積は埋め込まれた微粒子Bの面積には含めない。
トナー1粒子の断面に存在する微粒子Bの占める総面積を基準とした、表面近傍領域の埋め込まれた微粒子Bが占める面積の割合Fを算出する。
100個の断面を観察し、その相加平均値を採用する。
<埋め込まれた微粒子Cが占める面積の割合の測定方法>
埋め込まれた微粒子Bが占める面積の割合の測定方法と同様にして、埋め込まれた微粒子Cの占める面積の割合を算出する。
なお、微粒子A及び微粒子Bを区別するには、外添剤の各粒子に対してEDS分析を行い、分析した粒子が微粒子Cであるか否かを判断する。
<微粒子Aのトナー粒子に対する固着率Gの測定>
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50ml)に上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカー(いわき産業(株)製「KM Shaker」)にて
350spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(容量50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。
トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを含む水溶液を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥する。乾燥品をスパチュラで解砕し、蛍光X線で微粒子Aに含有される金属元素量を測定する。上記分散液で処理したトナーと初期のトナーの測定対象の当該元素量比から固着率(%)を計算する。
各元素の蛍光X線の測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は10mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリング直径10mmの中に上記分散液で処理したトナー又は初期のトナーを約1g入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで60秒間加圧し、厚さ約2mmに成型したペレットを用いる。
上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)からその濃度を算出する。
トナー中の定量方法を、例えば、微粒子Aがステアリン酸亜鉛である場合を例に説明する。トナー粒子100質量部に対して、ステアリン酸亜鉛微粉末を0.5質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合する。同様にして、ステアリン酸亜鉛を1.0質量部、2.0質量部となるようにトナー粒子とそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とする。
それぞれの試料について、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、肪酸金属塩の金属元素のKα線ネット強度を測定する。得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中の脂肪酸金属塩添加量を横軸として、一次関数の検量線を得る。
次に、分析対象のトナーのペレットを用いて、その脂肪酸金属塩の金属元素のKα線ネット強度を測定する。そして、上記の検量線からトナー中の脂肪酸金属塩の含有量を求める。上記方法により算出した初期のトナーの元素量に対して、上記分散液で処理したトナーの元素量の比率を求め固着率G(%)とする。
<微粒子Bの分散度評価指数の測定方法>
トナー表面における微粒子Bの分散度評価指数の算出は走査型電子顕微鏡「S-4800」を用いて行う。1万倍に拡大した視野で、微粒子Bが外添されたトナーを、同一視野で加速電圧1.0kVで観察した。観察した画像から、画像処理ソフト「Image-Pro Plus5.1J」(MediaCybernetics社製)を使用し、以下の
ように算出する。
微粒子Bのみが抽出されるように2値化し、微粒子Bの個数n、全微粒子Bに対し重心座標を算出し、各微粒子Bに対する最近接の微粒子Bとの距離dn minを算出する。画像内の微粒子B間の最近接距離の平均値をdaveとすると、分散度は下記式で示される。
Figure 0007309481000001
ランダムに観察した50個のトナーについて上記の手順にて分散度をもとめ、その平均値を分散度評価指数とする。分散度評価指数の小さい方が、分散性が良いことを示す。
<ワックスの融点、トナー粒子のガラス転移温度Tgの測定方法>
ワックスの融点、トナー粒子のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料(ワックス、トナー粒子)約3mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いる。これらを、測定温度範囲30℃以上200℃以下の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。なお、測定においては、一度200℃まで昇温速度10℃/minで昇温させ、続いて30℃まで降温速度10℃/minで降温し、その後に再度、昇温速度10℃/minで昇温を行う。
この2度目の昇温過程において得られたDSC曲線を用いて、物性を求める。このDSC曲線において、温度30~200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを示す温度を、試料の融点とする。このDSC曲線において、比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線とDSC曲線との交点を、ガラス転移温度Tgとする。
<トナー粒子の平均円形度の測定>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2mL加える。
さらに測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃~40℃となる様に適宜冷却する。
超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
測定には、対物レンズとして「LUCPLFLN」(倍率20倍、開口数0.40)を搭載したフロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用する。前記手順に従い調製した分散液をフロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて2000個のトナー粒子を計測する。
そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.977μm以上39.54μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5100A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに制約されるものではない。実施例中で使用する部は特に断りのない限り質量基準である
以下、実施例6~8、11,18、19、21、22及び24はそれぞれ参考例6~8、11、18、19、21、22及び24とする。これらの参考例は、出願当初明細書の実施例であり、請求項1の範囲に整合させるように参考例としたものである。
<トナー粒子1の製造例>
トナー粒子1の製造例について説明する。
<結着樹脂粒子分散液の調製>
スチレン89.5部、アクリル酸ブチル9.2部、アクリル酸1.3部、n-ラウリルメルカプタン3.2部を混合し溶解させた。この溶液にネオゲンRK(第一工業製薬社製)1.5部のイオン交換水150部の水溶液を添加して、分散させた。さらに10分間ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.3部のイオン交換水10部の水溶液を添加した。窒素置換をした後、70℃で6時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が12.5質量%、体積基準のメジアン径が0.2μmの樹脂粒子分散液を得た。
<離型剤分散液の調製>
離型剤(ベヘン酸ベヘニル、融点:72.1℃)100部、ネオゲンRK15部をイオン交換水385部に混合させ、湿式ジェットミル JN100((株)常光製)を用いて約1時間分散して離型剤分散液を得た。離型剤分散液の濃度は20質量%であった。
<着色剤分散液の調製>
着色剤としてカーボンブラック「Nipex35(オリオンエンジニアドカーボンズ社製)」100部、ネオゲンRK15部をイオン交換水885部に混合させ、湿式ジェットミル JN100を用いて約1時間分散して着色剤分散液を得た。
<トナー粒子の調製>
樹脂粒子分散液265部、離型剤分散液10部、着色剤分散液10部をホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させた。撹拌しながら容器内の温度を30℃に調整して、1mol/Lの塩酸を加えてpH=5.0に調整した。3分間放置した後に昇温を開始し、50℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った。
その状態で、「コールターカウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定した。重量平均粒径が6.2μmになった時点で、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=8.0に調整して粒子成長を停止させた。
その後、95℃まで昇温して会合粒子の融着と球形化を行った。平均円形度が0.980に到達した時点で降温を開始し、30℃まで降温してトナー粒子分散液1を得た。
得られたトナー粒子分散液1に塩酸を添加してpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。
得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行った。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。さらにコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットし、トナー粒子1を得た。諸物性を表1に示す。
<トナー粒子2の製造例>
トナー粒子1の製造例の会合粒子の生成工程における粒子成長停止タイミングを変更した以外は、トナー粒子1の製造例と同様にしてトナー粒子2を得る。諸物性を表1に示す。
<トナー粒子3の製造例>
トナー粒子1の製造例の離型剤分散液の調製において、ベヘン酸ベヘニル(融点:72.1℃)の代わりに、パラフィンワックス(融点:75.4℃)を使用した以外は、トナー粒子1の製造例と同様にしてトナー粒子3を得る。諸物性を表1に示す。
Figure 0007309481000002
<脂肪酸金属塩微粒子A1の製造>
攪拌装置付きの受け容器を用意し、攪拌器を350rpmで回転させた。この受け容器に0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液500部を投入し、液温を85℃に調整した。次に、この受け容器に0.2質量%硫酸亜鉛水溶液525部を、15分かけて滴下した。全量仕込み終了後、反応時の温度状態で10分間熟成し、反応を終結した。
次に、このようにして得られた脂肪酸金属塩スラリーを濾過洗浄した。得られた洗浄後の脂肪酸金属塩ケーキを粗砕後、連続瞬間気流乾燥機を用いて105℃で乾燥した。その後、ナノグラインディングミル〔NJ-300〕(サンレックス社製)にて風量6.0m3/min、処理速度80kg/hの条件で粉砕した後、リスラリーして湿式遠心分級機を用いて微粒子、粗粒子の除去を行った。その後、連続瞬間気流乾燥機を用いて80℃で乾燥して脂肪酸金属塩微粒子A1を得た。
得られた脂肪酸金属塩微粒子A1の体積基準におけるメジアン径(D50s)は0.45μm、スパン値Bは0.92であった。脂肪酸金属塩微粒子A1の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩微粒子A2の製造>
脂肪酸金属塩微粒子A1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を1.0質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液に変更し、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.7質量%塩化カルシウム水溶液に変更した。また、5分間の熟成で反応を終結させた。さらに、粉砕の条件を風量5.0m/minに変更し、粉砕後は風力式の分級機で微粗粉を取り除き、脂肪酸金属塩微粒子A2を得た。
得られた脂肪酸金属塩微粒子A2の体積基準におけるメジアン径(D50s)は0.5
8μm、スパン値は1.73であった。脂肪酸金属塩微粒子A2の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩微粒子A3の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.3質量%塩化リチウム水溶液に変更した以外は同様にして、脂肪酸金属塩微粒子3を得た。得られた脂肪酸金属塩微粒子3の体積基準におけるメジアン径(D50s)は0.33μm、スパン値Bは0.85であった。脂肪酸金属塩微粒子3の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩微粒子A4の製造>
脂肪酸金属塩微粒子A1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を0.5質量%ラウリン酸ナトリウム水溶液に変更し、また、粉砕の条件を風量10.0m/minに変更し、更に粉砕工程を3回行うように変更した。得られた脂肪酸金属塩微粒子A4の体積基準におけるメジアン径(D50s)は0.18μm、スパン値は1.34であった。脂肪酸金属塩微粒子A4の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩微粒子A5の製造>
脂肪酸金属塩微粒子A1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を0.05質量%ステアリン酸ナトリウムに変更し、また0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.02質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。また、粉砕の条件を風量10.0m/minに変更し、3回粉砕工程を施した。その後、分級工程は行わず、メッシュを通過させることにより粗粒を除去し、脂肪酸金属塩微粒子A5を得た。
得られた脂肪酸金属塩微粒子A5の体積基準におけるメジアン径(D50s)は0.12μm、スパン値は1.05であった。脂肪酸金属塩微粒子A5の物性を表2に示す。
<脂肪酸金属塩微粒子A6の製造>
市販されているステアリン酸亜鉛(SZ2000 堺化学工業製)を脂肪酸金属塩微粒子A6とする。体積基準におけるメジアン径(D50s)は5.30μm、スパン値は1.84であった。脂肪酸金属塩微粒子A6の物性を表2に示す。
Figure 0007309481000003
<微粒子B1の製造例>
TiO相当分を50質量%含有しているイルメナイト鉱石を、150℃で3時間乾燥した後、硫酸を添加して溶解させ、TiOSOの水溶液を得た。得られた水溶液を濃縮した後、ルチル結晶を有するチタニアゾルをシードとして10部添加した後、170℃で加水分解を行い、不純物を含有するTiO(OH)のスラリーを得た。このスラリーをpH5~6で繰り返し洗浄を行い、硫酸、FeSO及び不純物を十分に除去することで、高純度のメタチタン酸〔TiO(OH)〕のスラリーを得た。
このスラリーを濾過した後、炭酸リチウム(LiCO)を0.5部添加し、250
℃で3時間焼成した後、ジェットミルによる解砕処理を繰り返し行い、ルチル型結晶を有する酸化チタン微粒子を得た。得られた酸化チタン微粒子をエタノール中に分散させて撹拌しながら、酸化チタン微粒子100部に対して、表面処理剤としてイソブチルトリメトキシシランを5部滴下混合して反応させた。乾燥した後、170℃で3時間加熱処理し、酸化チタンの凝集体が無くなるまでジェットミルで繰り返し解砕処理を行い、酸化チタン微粒子である微粒子B1を得た。物性を表3に示す。
<微粒子B2の製造例>
微粒子B1の製造例において、焼成温度を240℃として、表面処理剤のイソブチルトリメトキシシランを15部に変更した以外は、微粒子B1と同様にして酸化チタン微粒子である微粒子B2を得た。物性を表3に示す。
<微粒子B3の製造例>
微粒子B1の製造例において、焼成温度を260℃に変更した以外は、微粒子B1と同様にして酸化チタン微粒子である微粒子B3を得た。物性を表3に示す。
<微粒子B4の製造例>
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えpH9.0とし、脱硫処理を行い、その後、塩酸によりpH5.8まで中和し、ろ過水洗を行った。洗浄済みケーキに水を加えTiOとして1.85モル/Lのスラリーとした後、塩酸を加えpH1.0とし解膠処理を行った。
脱硫・解膠を行ったメタチタン酸をTiOとして1.88モルを採取し、3Lの反応容器に投入した。該解膠メタチタン酸スラリーに、塩化ストロンチウム水溶液を、Sr/Ti(モル比)で1.15となるよう2.16モル添加した後、TiO濃度1.039モル/Lに調整した。
次に、撹拌混合しながら90℃に加温した後、10モル/L水酸化ナトリウム水溶液440mLを45分間かけて添加し、その後、95℃で1時間撹拌を続け反応を終了した。当該反応スラリーを50℃まで冷却し、pH5.0となるまで塩酸を加え1時間撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄した。
当該沈殿を含むスラリーを40℃に調整し、塩酸を加えpH2.5に調整した後、固形分に対して4.0質量%のn-オクチルトリエトキシシランを添加し10時間撹拌保持を続けた。5モル/L水酸化ナトリウム溶液を加えpH6.5に調整し1時間撹拌を続けた後、ろ過・洗浄を行い得られたケーキを120℃の大気中で8時間乾燥し、チタン酸ストロンチウム微粒子である微粒子B4を得た。物性を表3に示す。
<微粒子B5の製造例>
燃焼器に酸素を50Nm/h、アルゴンガスを2Nm/hで供給し、アルミニウム粉末の着火用の場を形成した。次いでアルミニウム粉末(平均粒径約45μm、供給量20kg/h)をアルミニウム粉末供給装置から窒素ガス(供給量3.5Nm/h)と共に燃焼器を通過させて反応炉へ供給した。
反応炉内にて、アルミニウム粉末を酸化させることにより、アルミナ粒子とした。反応炉内を通過後に得られたアルミナ粒子を分級して微粗粉を除去し、アルミナ微粒子である微粒子B5を得た。物性を表3に示す。
<微粒子B6の製造例>
固形分に対して6.0質量%のn-オクチルトリエトキシシランを添加した以外は、微粒子B4と同様にしてチタン酸ストロンチウム微粒子である微粒子B6を得た。物性を表3に示す。
Figure 0007309481000004
<微粒子C1~C2>
微粒子Cは表4に示したものを使用した。
Figure 0007309481000005
<トナー1の製造例>
まず第1工程として、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製FM10C型)を使用して、トナー粒子1と微粒子B1を混合した。
FMミキサーのジャケット内の水温が50℃±1℃で安定した状態で、トナー粒子1:100部、微粒子B1:1.00部を投入した。回転羽根の周速38m/secで混合を開始し、槽内温度が50℃±1℃で安定するように、ジャケット内の水温と流量を制御しながら、7分間混合して、トナー粒子1と微粒子B1の混合物を得た。
続いて、第2工程として、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製FM10C型)を使用して、トナー粒子1と微粒子B1の混合物に、微粒子A1と微粒子C1を添加した。FMミキサーのジャケット内の水温が25℃±1℃で安定した状態で、トナー粒子1:100部に対して、微粒子A1:0.20部、微粒子C1:0.80部を投入した。回転羽根の周速20m/secで混合を開始し、槽内温度が25℃±1℃で安定するように、ジャケット内の水温と流量を制御しながら5分間混合した後、目開き75μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。
トナー1の製造条件を表5-1,5-2に、トナー1の諸物性を表6に示す。
Figure 0007309481000006
Figure 0007309481000007
<トナー2~29、比較トナー1~12の製造例>
トナー1の製造例において、表5-1,5-2に示すトナー粒子、第1工程、第2工程及び第3工程で添加する微粒子A~Cと添加部数、混合条件を変更すること以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー2~29、比較トナー1~12を得た。物性は表6に示す。
Figure 0007309481000008
[電子写真感光体の製造例]
直径24mm、長さ257.5mmのアルミニウムシリンダー(JIS-A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)とした。
(導電層の形成)
次に、金属酸化物粒子としての酸素欠損型酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子(平均一次粒子径230nm)214部、結着材料としてのフェノール樹脂(フェノール樹脂のモノマー/オリゴマー)(商品名:プライオーフェンJ-325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分:60質量%)132部、及び溶剤としての1-メトキシ-2-プロパノール98部を、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、分散処理時間:4.5時間、冷却水の設定温度:18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。
ガラスビーズを取り除いた後の分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して10質量%になるように、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(株)製、平均粒径2μm)を分散液に添加し、また、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28
PA、東レ・ダウコーニング(株)製)を分散液に添加した。
次に、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料と表面粗し付与材の合計質量(すなわち、固形分の質量)が分散液の質量に対して67質量%になるように、メタノールと1-メトキシ-2-プロパノールの混合溶剤(質量比1:1)を分散液に添加し、攪拌することによって、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを30分間150℃で加熱することによって、膜厚が30.0μmの導電層を形成した。
(下引き層の形成)
電子輸送物質(E)4部、ブロックイソシアネート(商品名:デュラネートSBN-7
0D、旭化成ケミカルズ(株)製)5.5部、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックKS-5Z、積水化学工業(株)製)0.3部、及び触媒としてのヘキサン酸亜鉛(II)(三津和化学薬品(株)製)0.05部を、テトラヒドロフラン50部と1-メトキシ-2-プロパノール50部の混合溶媒に溶解して下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを30分間170℃で加熱することによって、膜厚が0.7μmの下引き層を形成した。
Figure 0007309481000009
(電荷発生層の形成)
次に、CuKα特性X線回折より得られるチャートにおいて、7.5°及び28.4°の位置にピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部とポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX-1、積水化学工業社製)5部をシクロヘキサノン200部に添加し、直径0.9mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で6時間分散した。これにシクロヘキサノン150部と酢酸エチル350部を更に加えて希釈して電荷発生層用塗布液を得た。
得られた塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、95℃で10分間乾燥することにより、膜厚が0.20μmの電荷発生層を形成した。なお、X線回折の測定は、次の条件で行ったものである。
[粉末X線回折測定]
使用測定機:理学電気(株)製、X線回折装置RINT-TTRII
X線管球:Cu
管電圧:50KV
管電流:300mA
スキャン方法:2θ/θスキャン
スキャン速度:4.0°/min
サンプリング間隔:0.02°
スタート角度(2θ):5.0°
ストップ角度(2θ):40.0°
アタッチメント:標準試料ホルダー
フィルター:不使用
インシデントモノクロ:使用
カウンターモノクロメーター:不使用
発散スリット:開放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
平板モノクロメーター:使用
カウンター:シンチレーションカウンター。
(電荷輸送層の形成)
次に、下記式(C-1)で示される化合物(電荷輸送物質(正孔輸送性化合物))6部、下記式(C-2)で示される化合物(電荷輸送物質(正孔輸送性化合物))3部、下記式(C-3)で示される化合物(電荷輸送物質(正孔輸送性化合物))1部、ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部、及び、(C-4)と(C-5)の共重合ユニットを有するポリカーボネート樹脂0.02部(x/y=9/1:Mw=20000)、o-キシレン25部/安息香酸メチル25部/ジメトキシメタン25部の混合溶剤に溶解させることによって電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を30分間120℃で乾燥させることによって、膜厚が12μmの電荷輸送層を形成した。
Figure 0007309481000010
(保護層の形成)
次に、下記式(O-1)で示される化合物10部、及び下記式(O-2)で示される化合物10部を1-プロパノール50部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)製)25部を混合し、撹拌した。
その後ポリフロンフィルター(商品名:PF-020、アドバンテック東洋(株)製)でこの溶液を濾過することによって、保護層用塗布液を調製した。
Figure 0007309481000011
この保護層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を6分間50℃で乾燥させた。その後、窒素雰囲気下にて、加速電圧70kV、ビーム電流5.0mAの条件で支持体(被照射体)を200rpmの速度で回転させながら、5.0秒間電子線を塗膜に照射した。なお、このときの電子線の吸収線量を測定したところ、15kGyであった。
その後、窒素雰囲気下にて、塗膜の温度が25℃から117℃になるまで30秒かけて昇温させ、塗膜の加熱を行った。電子線照射から、その後の加熱処理までの酸素濃度は15ppm以下であった。次に、大気中において、塗膜の温度が25℃になるまで自然冷却し、塗膜の温度が105℃になる条件で30分間加熱処理を行い、膜厚3μmの保護層を形成した。このようにして、保護層を有する電子写真感光体を作製した。
このようにして、支持体、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層をこの順に有する円筒状(ドラム状)の電子写真感光体1を製造した。
<実施例1>
市販のキヤノン製レーザービームプリンタLBP9950Ciの改造機を用いた。改造点は、評価機本体のギア及びソフトウェアを変更することにより、現像ローラーの回転数をドラムに対して2倍の周速で回転するように設定した事、プロセススピードを330mm/secに変更した事である。LBP9950Ciのトナーカートリッジの中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、評価するトナー180gを装填した。
また、電子写真感光体を取り除き、新たに上記電子写真感光体1をセットした。この表面保護層が硬化した硬い感光体を使用することで、窒素酸化物が削り取られにくく、画像流れには厳しい条件となる。そして、トナーカートリッジを、それぞれ低温低湿L/L(10℃/15%RH)、高温高湿H/H(30℃/80%RH)の環境下で5日間放置した。
低温低湿L/L環境下5日間放置後のトナーカートリッジをLBP9950Ciのシアンステーションに取り付け、1.0%の印字比率の画像を20,000枚までプリントアウトして、初期と20,000枚出力時(耐久後)の再転写、現像スジ、画像濃度均一性(L/L)の評価を行った。
<再転写の評価>
初期と20,000枚印字後において、ブラックステーションにトナーを入れていないカートリッジをセットし、シアンステーションに評価するトナーを充填したカートリッジをセットした。そしてトナーの載り量が0.6mg/cmとなるように現像電圧を調整
し、全ベタ画像を出力した。
次いでブラックステーションのカートリッジの感光体に再転写したトナーをマイラーテープでテーピングして剥ぎ取った。その後、該テープとテーピングしていないテープをLETTERサイズのXEROX 4200用紙(XEROX社製、75g/m2)に貼り付けた。それぞれのテープの反射率(%)を「REFLECTOMETER MODELT
C-6DS」((有)東京電色製)で測定した。
そしてテーピングしていないテープの反射率(%)からテーピングしたテープの反射率(%)を差し引いた数値(再転写)(%)を用いて評価した。再転写の数値が小さいほど、再転写が抑制されていることになる。C以上を良好と判断した。
A:再転写が2.0%未満である。
B:再転写が2.0%以上5.0%未満である。
C:再転写が5.0%以上10.0%未満である。
D:再転写が10.0%以上である。
<現像スジの評価>
20,000枚印字後において、ハーフトーン画像をプリントアウトした。プリントアウトしたハーフトーン画像について、下記基準に従い評価した。B以上を良好と判断した。
A:ハーフトーン画像上にスジが0~1本ある。
B:ハーフトーン画像上にスジが2~4本ある。
C:ハーフトーン画像上にスジが5本以上ある。
<画像濃度均一性の評価>
画像濃度均一性の評価は、再転写の影響を大きく受けるため、再転写に対してより厳しいと想定される低温低湿環境(温度15.0℃、相対湿度10%)で行った。評価にはラフ紙であるFOX RIVER BOND紙(110g/m)を用いた。
画像濃度の評価において、長期耐久試験の1枚目及び20,000枚目のプリント後、先端余白5mm、左右余白5mmで、左、右、中央の3箇所、さらにこれを長手方向に30mm間隔で3箇所、合計で9箇所に5mm×5mmのベタ黒パッチ画像を有する画像を出力した。
画像の9箇所のベタ黒パッチ画像部分の画像濃度を測定し、すべての濃度の最大値と最小値の差を求めた。画像濃度は反射濃度計であるマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して測定した。最大値と最小値の数値差が小さい方が、画像濃度均一性が良いことを示す。B以上を良好と判断した。
A:画像濃度の最大値と最小値の数値差が0.05以下である。
B:画像濃度の最大値と最小値の数値差が0.06以上0.10以下である。
C:画像濃度の最大値と最小値の数値差が0.11以上である。
<画像流れの評価>
高温高湿環境下5日間放置後のトナーカートリッジをLBP9500Cのシアンステーションに取り付け、1ドット2スペース横罫線A4画像を1枚間欠で20,000枚の通紙耐久を行った。
その後、H/H環境にて72時間放置した後、1ドット2スペース横罫線A4画像を出力した。72時間の放置前の画像に対する放置後の画像の罫線幅細り(%)を下記の基準で評価した。なお、画像の罫線の太さは、1枚の画像における複数の罫線の太さの平均値とする。また、罫線幅細り(%)は下記式によって算出される。C以上を良好と判断した。
罫線幅細り(%)={(放置前の画像の罫線の太さ-放置後の画像の罫線の太さ)/放置の画像の罫線の太さ}×100
A:罫線幅細りが10%未満である。
B:罫線幅細りが10%以上25%未満である。
C:罫線幅細りが25%以上40%未満である。
D:罫線幅細りが40%以上である。
Figure 0007309481000012
<実施例2~29、比較例1~12>
実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表7に示す。

Claims (12)

  1. 結着樹脂を含有するトナー粒子を含有するトナーであって、
    該トナー粒子の表面には、微粒子A及び微粒子Bが存在し、
    該微粒子Aは、
    (i)脂肪酸金属塩であり、
    (ii)含有量がトナー粒子100質量部に対して0.20質量部以上1.80質量部以下であり、
    (iii)トナー粒子に対する固着率が0.0%~8.0%であり、
    該微粒子Bの体積抵抗率が、5.0×10Ωm以上1.0×10Ωm以下であり、
    コールターカウンターによって測定される該トナー粒子の個数平均粒径、粒度分布及び真密度から得られる平均理論表面積をC(m/g)とし、該トナー粒子100質量部に対する該微粒子Aの含有量をD(質量部)とし、該トナー粒子表面の該微粒子Aによる被覆率をE(%)としたとき、下記式(1)及び(2)を満たし、
    該微粒子Bの含有量が、該トナー粒子100質量部に対し、0.10質量部以上3.00質量部以下であり、
    透過型電子顕微鏡による該トナーの断面観察において、該トナー1粒子の断面に存在する該微粒子Bの占める総面積のうち、該断面の輪郭から該断面の重心に向かって30nm内側までの表面近傍領域に存在する該微粒子Bであって、該微粒子Bと該トナー粒子の接触している部分の長さが該微粒子Bの周囲長の50%以上である該微粒子Bが占める面積の割合Fが、50面積%以上であることを特徴とするトナー。
    0.03≦D/C≦1.50 ・・・(1)
    E/(D/C)≦50.0 ・・・(2)
  2. 前記微粒子Aのトナー粒子に対する固着率をG(%)としたとき、
    該Gと前記面積の割合Fとの関係が、下記式(3)を満たす請求項1に記載のトナー。
    2.0≦(100-G)/(100-F)≦8.0 ・・・(3)
  3. 前記微粒子Bの前記トナー表面における分散度評価指数が、0.4以下である請求項1
    又は2に記載のトナー。
  4. 前記トナー粒子表面に、微粒子Cが存在し、
    該微粒子Cはシリカ微粒子であり、
    透過型電子顕微鏡による該トナーの断面観察において、該トナー1粒子の断面に存在する該微粒子Cの占める総面積のうち、該断面の輪郭から該断面の重心に向かって30nm内側までの表面近傍領域に存在する該微粒子Cであって、該微粒子Cと該トナー粒子の接触している部分の長さが該微粒子Cの周囲長の50%以上である該微粒子Cが占める面積の割合が、40面積%以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
  5. 前記微粒子Aの体積基準におけるメジアン径が、0.15μm以上3.00μm以下である請求項1~4のいずれか一項に記載のトナー。
  6. 前記微粒子Aは、2価以上の多価金属と炭素数8以上28以下の脂肪酸との脂肪酸金属塩である請求項1~5のいずれか一項に記載のトナー。
  7. 前記2価以上の多価金属が、亜鉛を含む請求項6に記載のトナー。
  8. 前記微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径が、5nm以上50nm以下である請求項1~7のいずれか一項に記載のトナー。
  9. 前記トナー粒子が、融点60℃以上90℃以下のエステルワックスを含有する請求項1~8のいずれか一項に記載のトナー。
  10. 前記トナー粒子表面に、微粒子Cが存在し、
    該微粒子Cは、一次粒子の個数平均粒径が、5nm以上50nm以下であるシリカ微粒子である請求項1~9のいずれか一項に記載のトナー。
  11. 前記微粒子Bは、酸化チタン微粒子及びチタン酸ストロンチウム微粒子からなる群から選択される少なくとも一である請求項1~10のいずれか一項に記載のトナー。
  12. 前記微粒子Aのトナー粒子に対する固着率が0.0%~3.1%である請求項1~11のいずれか一項に記載のトナー。
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