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JP7261086B2 - プロセスカートリッジおよび電子写真装置 - Google Patents

プロセスカートリッジおよび電子写真装置 Download PDF

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JP7261086B2 JP2019095308A JP2019095308A JP7261086B2 JP 7261086 B2 JP7261086 B2 JP 7261086B2 JP 2019095308 A JP2019095308 A JP 2019095308A JP 2019095308 A JP2019095308 A JP 2019095308A JP 7261086 B2 JP7261086 B2 JP 7261086B2
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Description

本発明はプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
電子写真装置は近年、長寿命化、高速化が強化されることに伴い、搭載される電子写真感光体(以下、感光体ともいう)は、耐久性向上のために、表面層の改良が検討されてきた。その一例として、特許文献1には電子写真感光体の表面にラジカル重合性の化合物を用い、耐摩耗性(機械的耐久性)を向上させる技術が開示されている。また、特許文献2には電子写真装置の長寿命化に伴って繰り返し使用されることによるトナーの劣化を抑制する技術として、有機ケイ素重合体を含有する表層を有するトナー粒子の技術が開示されている。
また、電子写真装置の繰り返し使用において、プロセスカートリッジでは、クリーニングブレードと感光体の摺擦によるトルク上昇や昇温が問題となる。昇温が顕著であると、不具合を防止するためダウンタイムが生じる。また、トルク上昇によるクリーニング不良やブレードめくれを防止するために、印字時以外にもトナーを感光体に送り、トナーや外添剤による潤滑性を確保する必要があった。
特開2000-66425号公報 特開2014-130242号公報
本発明者らの検討によると、特許文献1に開示されている感光体では、耐摩耗性は十分に改善されているが、繰り返し使用におけるクリーニングブレードと感光体の摺擦によるトルク上昇や昇温の抑制が十分でないことがわかった。また、特許文献2に開示されているトナーは、繰り返し使用における劣化については改善されているが、電子写真感光体との組合せにおいて、クリーニングブレードと感光体の摺擦によるトルク上昇や昇温の抑制が十分ではないことがわかった。
従って、本発明の目的は、繰り返し使用におけるクリーニングブレードと感光体の摺擦によるトルク上昇や昇温が抑制されたプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明の一態様に係るプロセスカートリッジおよび電子写真装置は、電子写真感光体と、
該電子写真感光体に当接し、該電子写真感光体を帯電する帯電手段と、トナーを収容し、かつ該電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー画像を形成するための現像手段と、クリーニングブレードを有し、かつ該電子写真感光体に該クリーニングブレードを当接させて該電子写真感光体上のトナーを除去するためのクリーニング手段と、を有するプロセスカートリッジであって、トナー、着色剤および結着樹脂を含有するトナー母体と、有機ケイ素重合体を含有する表層とを有し、トナー母体に対する有機ケイ素重合体の固着率が85.0%以上99.0%以下であり、電子写真感光体、支持体および表面層を有し、該電子写真感光体の表面層ユニバーサル硬さ値(HU)が210N/mm 以上250N/mm 以下であり、該電子写真感光体の表面層の弾性変形率(We)が37%以上52%以下であることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る電子写真装置は、記載のプロセスカートリッジと、露光手段と、転写手段と、を有する、ことを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る電子写真装置は、電子写真感光体と、露光手段と、該電子写真感光体に当接し、該電子写真感光体を帯電する帯電手段と、トナーを収容し、かつ該電子写真感光体上に形成された静電潜像を該トナーにより現像してトナー画像を形成するための現像手段と、転写手段と、クリーニングブレードを有し、かつ該電子写真感光体に該クリーニングブレードを当接させて該電子写真感光体上の該トナーを除去するためのクリーニング手段と、を有する電子写真装置であって、該トナーが、着色剤および結着樹脂を含有するトナー母体と、有機ケイ素重合体を含有する表層と、を有し、該トナー母体に対する該有機ケイ素重合体の固着率が、85.0%以上99.0%以下であり、該電子写真感光体が、支持体および表面層を有し、該電子写真感光体の表面層のユニバーサル硬さ値(HU)が、210N/mm 以上250N/mm 以下であり、該電子写真感光体の表面層の弾性変形率(We)が、37%以上52%以下である、ことを特徴とする。
本発明によれば、繰り返し使用におけるクリーニングブレードと感光体の摺擦によるトルク上昇や昇温が抑制されたプロセスカートリッジおよび電子写真装置が提供される。
電子写真感光体を有するプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。 電子写真感光体表面の研磨処理を説明するための模式図である。 トナーの断面について走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて取得した画像を示す模式図である。 有機ケイ素重合体を含む凸部の画像解析による計測を説明するための模式図である。
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
上記技術課題を解決するために、特定の表層を有するトナーと特定の表面層を有する電子写真感光体の組合せを用いる点が本発明の特徴である。
本発明におけるトナーは、着色剤および結着樹脂を含有するトナー母体と、有機ケイ素重合体を含有する表層とを有し、かつ、トナー母体に対する有機ケイ素重合体の固着率が85.0%以上99.0%以下である。該固着率は90.0%以上99.0%以下であることがより好ましい。
有機ケイ素重合体の固着率が上記範囲内であれば、表層における有機ケイ素重合体の剥がれや脱離が少なく、カートリッジ内における部材に融着しないため、繰り返し使用においても劣化に伴う現像スジ等の発生が抑制される。また、上記範囲内の固着率であると、本発明の一態様に係る電子写真感光体との組合せにおいて、微量の有機ケイ素重合体の脱離した部分がクリーニングブレードおよび電子写真感光体の表面層に付着する。これにより、プロセスカートリッジのトルクを低減すると共に、クリーニング特性を十分に確保できる。有機ケイ素重合体のトナー母体に対する固着率の測定方法は後述する。
なお、該固着率は、有機ケイ素重合体形成時の製造方法、反応温度、反応時間、反応溶媒およびpHなどにより上記範囲に調整することができる。
また、上記トナーの有機ケイ素重合体は、下記式(B)で表わされる部分構造を有し、有機ケイ素重合体がトナー粒子表層で凸形状を形成することが好ましい。このとき、トナー中の有機ケイ素重合体の含有量が0.5質量%以上5.0質量%以下であり、かつ、該凸形状の凸高さが40nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましい。
-SiO3/2 式(B)
(式中のRは炭素数1以上6以下の炭化水素基を示す。)
さらには、有機ケイ素重合体の含有量は1.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
有機ケイ素重合体は、Si原子の4個の原子価について1個はRと、残り3個はO原子と結合している。O原子は、原子価2個がいずれもSiと結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si-O-Si)を構成する。つまり、1個のO原子は2個のSi原子で共有されているので、Si原子1個あたりのO原子は1/2個となる。有機ケイ素重合体としてのSi原子とO原子を考えると、Si原子は3個のO原子と結合しているので、1個のSi原子は1/2×3個のO原子を有することになる。そのため、-SiO3/2と表現される。この有機ケイ素重合体の-SiO3/2構造は、多数のシロキサン結合で構成されるシリカ(SiO)と類似の性質を有することが考えられる。
有機ケイ素重合体の含有量および構造が上記条件を満たすことで、トナーの耐久性を向上させることができる。有機ケイ素重合体の含有量は、有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類および量、有機ケイ素重合体形成時の製造方法、反応温度、反応時間、反応溶媒およびpHによって制御することができる。有機ケイ素重合体の含有量の測定方法は後述する。
有機ケイ素重合体の含有量および凸高さが上記の範囲内の値を有することで、微量な有機ケイ素重合体の脱離した部分がクリーニングブレードおよび電子写真感光体の表面層にそれぞれ凸の状態で付着する。そのため、クリーニングブレードと感光体の表面層がそれぞれ凸同士で接触することになり、プロセスカートリッジの低トルク化とクリーニング特性の向上の点でより高い効果が得られるので好ましい。
また、上記トナーは、最大荷重2.0×10-4Nの条件で測定した時のマルテンス硬度が、200MPa以上1100MPa以下であることがトナーの耐久性向上およびプロセスカートリッジの低トルク化とクリーニング特性向上のためにより好ましい。これにより、有機ケイ素重合体の凸形状がより維持し易くなる為、トナーの耐久性が向上する。
また、トナーのマルテンス硬度が上記範囲内にあることで、微量の有機ケイ素重合体の脱離した部分がクリーニングブレードおよび電子写真感光体の表面層に長期に渡って付着できる。そのため、プロセスカートリッジの低トルク化とクリーニング特性向上の点でより高い効果が得られる。
トナーの硬度の測定方法としては、粒径が3~10μmであるので、ナノインデンテーション法が好ましく用いられる。また、本発明者らの検討によると本発明の効果を得るための硬度の規定として、引っ掻き硬さを表すマルテンス硬度が適当であった。これは、トナーが現像機内で金属や外添剤などの硬い物質と擦れて引っ掻かれることに対する強さを表し得るのが引っ掻き硬さであるためと考えている。
ナノインデンテーション法にて測定されたトナーのマルテンス硬度はISO14577に準拠した市販の装置にて、ISO14577に規定された押込み試験の手順に従って得られた荷重-変位曲線から算出することができる。本発明においては、上記ISO規格に準拠した装置として超微小押し込み硬さ試験機「ENT-1100b」(株式会社エリオニクス製)を用いた。測定方法は、装置に付属の「ENT1100操作マニュアル」に記載されているが、本発明における具体的な測定方法は以下の通りである。
測定環境は、付属の温調装置にてシールドケース内を30.0℃に保った。雰囲気温度を一定に保つことは熱膨張やドリフトなどによる測定データのバラつき低減に有効である。本発明における温調設定温度は、トナーが摩擦される現像機近辺の温度を想定した30.0℃の条件とした。試料台は装置に付属の標準試料台を用い、トナーを塗布した後にトナーが分散するように微弱なエアーを吹き付け、その試料台を装置にセットして1時間以上保持してから測定を行った。使用圧子は装置に付属の、先端面20μm四方の平面である平圧子を用いて測定した。
トナーの様に小径かつ球形の物体、外添剤が付着している物体、表面に凹凸が存在する物体においては、尖った圧子を用いると測定精度に大きな影響を与えるため平圧子が好ましく用いられる。試験の最大荷重は2.0×10-4Nに設定して行う。この試験荷重に設定することで、現像部においてトナー1粒が受けるストレスに相当する条件で、トナー粒子の表層を破壊せずに測定することが可能である。本発明においては、耐摩擦性が重要であるから表層を破壊せずに維持したまま硬さを測ることが重要である。
次に、本発明の一態様に係る表面層を有する電子写真感光体が上記トナーとの組合せにより、相乗効果で、プロセスカートリッジの低トルク化とクリーニング特性の向上に寄与する理由について説明する。
本発明の一態様に係る電子写真感光体は表面層を有し、該表面層はユニバーサル硬さ値(HU)が210以上250以下(N/mm2)であり、かつ弾性変形率(We)が37%以上52%以下である。これは、ユニバーサル硬さ値(HU)が前述の範囲内であると微量の有機ケイ素重合体が脱離した部分がクリーニングブレードおよび表面層表面に付着した際、クリーニングブレード通過時に表面層が凹む。そのため、付着した有機ケイ素重合体が剥がれるのを抑制できると考えられる。さらに、弾性変形率(We)が前述の範囲内であるとクリーニングブレード通過後に速やかに凹みが解消され、感光体の削れが抑制される。そのため、微量の有機ケイ素重合体が脱離した部分が感光体表面に付着し続けることができ、プロセスカートリッジの低トルク化とクリーニング特性向上の効果が長期的に得られると推察される。表面層が上記範囲の物性を有することは、表面層が後述の部分構造を有すること、感光体の重合条件を適時最適化すること等により達成できる。
また、前述の表面層は下記式(A-1)で示される構造、および下記式(A-2)で示される構造の両方を有することが好ましい。
(式中のRは水素原子または、メチル基を表わす。nは2以上5以下の整数である。)
Figure 0007261086000001
Figure 0007261086000002
電子写真感光体の表面層が上記構造を有することで適度な架橋密度と電子輸送構造の配置をとることができる。そのため、微量の有機ケイ素重合体が脱離した部分がクリーニングブレードおよび表面層表面に持続的に付着できると思われる。
表面層中の式(A-1)および式(A-2)の構造単位の合計の割合が60質量%以上であると本発明の効果がより高く得られるので好ましい。また、式(A-1)の構造単位に対する式(A-2)の構造単位の割合は20質量%以上70質量%以下であることが適度な架橋密度と電子輸送構造の配置のためにより好ましい。
電子写真感光体の表面層Raが、0.010μm以上0.045μm以下であり電子写真感光体の表面層のSmが、0.005mm以上0.060mm以下の範囲内の形状を有することが好ましい。ここでRaは周方向に掃引して測定した算術平均粗さ、Smは周方向に掃引して測定した平均間隔である。さらに、電子写真感光体の表面層Raは、0.010μm以上0.030μm以下、電子写真感光体の表面層のSmは、0.005mm以上0.060mm以下の範囲内の形状を有することがより好ましい。表面層が上記範囲内の粗さを有することで、クリーニング特性を十分に確保した上で、クリーニングブレードと電子写真感光体の表面の接触面積を低減することが可能となる。そのため、微量の有機ケイ素重合体の脱離した部分が持続的に付着でき、低トルク化の観点でより高い効果を得ることができる。電子写真感光体の表面層の粗さは上記範囲を満たせば高い効果が得られるが、電子写真感光体の周面の母線方向が溝形状を有することがより好ましい。表面層の粗面化手段の一例として、研磨シートを用いた研磨が挙げられる。研磨シートとは、シート基材上に研磨砥粒が結着樹脂中に分散された層を設けてなるシート状の研磨部材のことである。研磨シートと表面層表面に押し当て、シートを送ることで表面層の粗面化を、溝形状を有するように施すことができる。詳しい粗面化方法については後述する。
以上のメカニズムのように、有機ケイ素重合体を表層に有するトナー粒子と特定構造と物性を表面層に有する電子写真感光体の各構成が効果を及ぼし合うことによって、本発明の効果を達成することが可能となる。
[電子写真感光体]
本発明の一態様に係る電子写真感光体は、支持体と、該支持体上に表面層と、を有することを特徴とする。
電子写真感光体を製造する方法としては、後述する各層の塗布液を調製し、所望の層の順番に塗布して、乾燥させる方法が挙げられる。このとき、塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、インクジェット塗布、ロール塗布、ダイ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、ワイヤーバー塗布、リング塗布などが挙げられる。これらの中でも、効率性および生産性の観点から、浸漬塗布が好ましい。
以下、各層について説明する。
<支持体>
本発明において、電子写真感光体は、支持体を有する。本発明において、支持体は導電性を有する導電性支持体であることが好ましい。また、支持体の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。中でも、円筒状支持体であることが好ましい。また、支持体の表面に、陽極酸化などの電気化学的な処理や、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。
支持体の材質としては、金属、樹脂、ガラスなどが好ましい。
金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレスや、これらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。
また、樹脂やガラスには、導電性材料を混合または被覆するなどの処理によって、導電性を付与してもよい。
<導電層>
本発明において、支持体の上に、導電層を設けてもよい。導電層を設けることで、支持体表面の傷や凹凸を隠蔽することや、支持体表面における光の反射を制御することができる。
導電層は、導電性粒子と、樹脂と、を含有することが好ましい。
導電性粒子の材質としては、金属酸化物、金属、カーボンブラックなどが挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などが挙げられる。
これらの中でも、導電性粒子として、金属酸化物を用いることが好ましく、特に、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理したり、金属酸化物にリンやアルミニウムなど元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。
また、導電性粒子は、芯材粒子と、その粒子を被覆する被覆層とを有する積層構成としてもよい。芯材粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などが挙げられる。被覆層としては、酸化スズなどの金属酸化物が挙げられる。
また、導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その体積平均粒径が、1nm以上500nm以下であることが好ましく、3nm以上400nm以下であることがより好ましい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
また、導電層は、シリコーンオイル、樹脂粒子、酸化チタンなどの隠蔽剤などをさらに含有してもよい。
導電層の平均膜厚は、1μm以上50μm以下であることが好ましく、3μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
導電層は、上述の各材料および溶剤を含有する導電層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。導電層用塗布液中で導電性粒子を分散させるための分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
<下引き層>
本発明において、支持体または導電層の上に、下引き層を設けてもよい。下引き層を設けることで、層間の接着機能が高まり、電荷注入阻止機能を付与することができる。
下引き層は、樹脂を含有することが好ましい。また、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基などが挙げられる。
また、下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子などをさらに含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
電子輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電子輸送物質として、重合性官能基を有する電子輸送物質を用い、上述の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。金属としては、金、銀、アルミなどが挙げられる。
また、下引き層は、添加剤をさらに含有してもよい。
下引き層の平均膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.2μm以上40μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
下引き層は、上述の各材料および溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥および/または硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
<感光層>
電子写真感光体の感光層は、主に、(1)積層型感光層と、(2)単層型感光層とに分類される。(1)積層型感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、を有する。(2)単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を共に含有する感光層を有する。
(1)積層型感光層
積層型感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有する。
(1-1)電荷発生層
電荷発生層は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生層中の電荷発生物質の含有量は、電荷発生層の全質量に対して、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂がより好ましい。
また、電荷発生層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤をさらに含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、などが挙げられる。
電荷発生層の平均膜厚は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。
電荷発生層は、上述の各材料および溶剤を含有する電荷発生層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
(1-2)電荷輸送層
電子写真感光体が保護層を有しない場合、電荷輸送層は本発明における表面層である。すなわち、電荷輸送層は、ユニバーサル硬さ値(HU)が210以上250以下(N/mm2)であり、かつ弾性変形率(We)が37%以上52%以下である。
電荷輸送層は、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
電荷輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
電荷輸送層が表面層であるときは、電荷輸送層は電荷輸送物質として上記式(A-1)で示される構造、および上記式(A-2)で示される構造の両方を有することが好ましい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特にポリアリレート樹脂が好ましい。
電荷輸送層が表面層であるとき、電荷輸送層中における式(A-1)および(A-2)の構造単位の合計の割合は60質量%以上であることが好ましい。
電荷輸送層が表面層でないとき、電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。また、電荷輸送物質と樹脂との含有量比(質量比)は、4:10~20:10が好ましく、5:10~12:10がより好ましい。
また、電荷輸送層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
電荷輸送層の平均膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、8μm以上40μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
電荷輸送層は、上述の各材料および溶剤を含有する電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤または芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
(2)単層型感光層
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂および溶剤を含有する感光層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂としては、上記「(1)積層型感光層」における材料の例示と同様である。
電子写真感光体が保護層を有しない場合は、感光層が本発明における表面層となる。すなわち、感光層は、ユニバーサル硬さ値(HU)が210以上250以下(N/mm2)であり、かつ弾性変形率(We)が37%以上52%以下である。
<保護層>
本発明の一態様に係る電子写真感光体は、感光層の上に保護層を有してもよい。電子写真感光体が保護層を有する場合は、保護層が本発明における表面層となる。
先に述べたように、表面層としての保護層は、ユニバーサル硬さ値(HU)が210以上250以下(N/mm2)であり、かつ弾性変形率(We)が37%以上52%以下である。
また、表面層としての保護層は、式(A-1)で示される構造、および式(A-2)で示される構造の両方を有することが好ましい。表面層としての保護層中の式(A-1)および式(A-2)の構造単位の合計の割合が60質量%以上であると本発明の効果がより高く得られるので好ましい。また、式(A-1)の構造単位に対する式(A-2)の構造単位の割合は20質量%以上70質量%以下であることが適度な架橋密度と電子輸送構造の配置のためにより好ましい。
また、表面層としての保護層は、Ra=0.010μm以上0.045μm以下、Sm=0.005mm以上0.060mm以下の範囲内の形状を有することが好ましい。さらに、表面層としての保護層は、Ra=0.010μm以上0.030μm以下、Sm=0.005mm以上0.060mm以下の範囲内の形状を有することがより好ましい。
保護層は、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として形成してもよい。その際の反応としては、熱重合反応、光重合反応、放射線重合反応などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーとして、電荷輸送能を有する材料を用いてもよい。
電荷輸送能を有する重合性官能基を有するモノマーの例としては以下の化合物が挙げられる。これらの中でも式(A-12)と式(A-25)または式(A-27)の組み合わせで保護層を形成すると本発明の効果がより効果的に発現する観点から特に好ましい。
Figure 0007261086000003
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Figure 0007261086000019
Figure 0007261086000020
保護層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤、などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
保護層は、導電性粒子および/または電荷輸送物質と、樹脂とを含有してもよい。
導電性粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物の粒子が挙げられる。
電荷輸送物質としては、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
保護層の平均膜厚は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上7μm以下であることが好ましい。
保護層は、上述の各材料および溶剤を含有する保護層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥および/または硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
[トナー]
<表層>
本発明の一態様に係るトナー粒子の表層は有機ケイ素重合体を含有する表層であり、上記有機ケイ素重合体のトナー母体に対する固着率が85.0%以上99.0%以下である。上記有機ケイ素重合体は、式(B)で表される部分構造を有することが好ましい。さらに、上記トナー粒子の表面のX線光電子分光分析(ESCA)において、炭素原子の濃度dC、酸素原子の濃度dO、およびケイ素原子の濃度dSiの合計を100.0atomic%とする。このとき、ケイ素原子の濃度dSiが2.5atomic%以上28.6atomic%以下であることが好ましい。
-SiO3/2 式(B)
(Rは炭素数1以上6以下の炭化水素基を示す。)
有機ケイ素重合体は、Si原子の4個の原子価について1個はRと、残り3個はO原子と結合している。O原子は、原子価2個がいずれもSiと結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si-O-Si)を構成する。つまり、1個のO原子は2個のSi原子で共有されているので、Si原子1個あたりのO原子は1/2個となる。有機ケイ素重合体としてのSi原子とO原子を考えると、Si原子は3個のO原子と結合しているので、1個のSi原子は1/2×3個のO原子を有することになる。そのため、-SiO3/2と表現される。この有機ケイ素重合体の-SiO3/2構造は、多数のシロキサン結合で構成されるシリカ(SiO2)と類似の性質を有することが考えられる。従って、従来の有機樹脂により表層形成されたトナー粒子に比べて無機物に近い構造のため、マルテンス硬度を高くすることが可能であると考えられる。
ESCAは、トナー粒子の表面からトナー粒子の中心(長軸の中点)の方向の厚さが数nmで存在する表層の元素分析を行うものである。このトナー粒子の表層におけるケイ素原子の濃度dSiが2.5atomic%以上あることで、表層の表面自由エネルギーを小さくすることができ、流動性が向上し、部材汚染やカブリの発生を抑制することができる。一方、本発明におけるケイ素原子の濃度dSiは帯電性の観点より、28.6atomic%以下であることが好ましい。28.6atomic%以下であればチャージアップを抑制できる。
上記トナー粒子の表層におけるケイ素原子の濃度は、有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類および量によって制御することができる。また、式(B)中のRの構造、有機ケイ素重合体形成時のトナー粒子の製造方法、反応温度、反応時間、反応溶媒およびpHによっても制御することができる。
さらに、本発明におけるトナーは、トナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分の29Si-NMRの測定で得られるチャートにおいて、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する式(B)の構造に帰属されるピーク面積の割合が20%以上である。詳細な測定法は後述するが、これはトナー粒子に含まれる有機ケイ素重合体の中でR-SiO3/2で表される部分構造を、20%以上有していることを近似している。前述の通り、Si原子の4つの原子価のうち、3つが酸素原子と結合し、さらにそれら酸素原子が別のSi原子と結合することが、-SiO3/2の部分構造の意味である。もし、そのうち酸素1つがシラノール基であったとすると、その有機ケイ素重合体の部分構造はR-SiO2/2-OHで表現される。さらに、酸素2つがシラノール基であれば、その部分構造はR-SiO1/2(-OH)となる。これら構造を比較すると、より多くの酸素原子がSi原子と架橋構造を形成するほうが、SiOで表わされるシリカ構造に近い。そのため-SiO3/2骨格が多いほど、トナー粒子表面の表面自由エネルギーを低くすることができるため、環境安定性および耐部材汚染に優れた効果がある。一方、-SiO3/2骨格が少ないほど負帯電性の強いシラノール基が増えることとなり、チャージアップを抑制しきれないことがあるため、R-SiO3/2で表される部分構造は20%以上有している必要がある。帯電性、耐久性の観点からは100%以下であることが好ましく、40%以上80%以下であることがより好ましい。
また、上記部分構造による耐久性と、式(B)中のRの疎水性および帯電性により、表層よりも内部に存在する、染み出しやすい低分子量(Mw1000以下)樹脂、ガラス転移温度Tgが低い(40℃以下)樹脂、および離型剤のブリードが抑えられる。
上記部分構造のピーク面積の割合は、有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類および量、並びに、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、付加重合および縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒およびpHによって制御することができる。
式(B)で表される部分構造において、Rは炭素数が1以上6以下の炭化水素基であることが好ましい。Rの疎水性が大きいと様々な環境において帯電量変動が大きくなる傾向がある。特に環境安定性に優れている、炭素数が1以上5以下の炭化水素基、またはフェニル基が好ましい。
本発明において、上記Rは炭素数が1以上3以下の炭化水素基であることが、帯電性およびカブリ防止のさらなる向上のためにより好ましい。帯電性が良好であると、転写性が良く転写残トナーが少ないためドラム、帯電部材および転写部材の汚染が抑制される。
炭素数が1以上3以下の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、またはビニル基が好ましく例示できる。特に好ましくは、環境安定性と保存安定性の観点から、Rはメチル基である。
本発明に用いることのできる有機ケイ素重合体の代表的な製造例としては、ゾルゲル法と呼ばれる方法が挙げられる。ゾルゲル法は液体原料を出発原料に用いて、加水分解および縮合重合させ、ゾル状態を経て、ゲル化する方法であり、ガラス、セラミックス、有機-無機ハイブリット、ナノコンポジットを合成する方法に用いられる。この製造方法を用いれば、表層、繊維、バルク体、微粒子などの種々の形状の機能性材料を液相から低温で製造することができる。
トナー粒子の表層に存在する有機ケイ素重合体は、具体的には、アルコキシシランに代表されるケイ素化合物の加水分解および縮重合によって生成されることが好ましい。
この有機ケイ素重合体を含有する表層をトナー粒子に設けることによって、環境安定性が向上し、かつ、長期使用時におけるトナーの性能低下が生じにくく、保存安定性に優れたトナーを得ることができる。
さらに、ゾルゲル法は、液体から出発し、その液体をゲル化することによって材料を形成しているため、様々な微細構造および形状をつくることができる。特に、トナー粒子が水系媒体中で製造される場合には、有機ケイ素化合物のシラノール基のような親水基による親水性によってトナー粒子の表面に析出させやすくなる。上記微細構造および形状は反応温度、反応時間、反応溶媒、pHや有機金属化合物の種類および量などによって調整することができる。
本発明における上記有機ケイ素重合体は、下記式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物を縮重合させて得られる物であることが好ましい。
Figure 0007261086000021
(式(Z)中、Rは、炭素数1以上6以下の炭化水素基を表し、R、RおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、または、アルコキシ基を表す。)
の炭化水素基により疎水性を向上することができ、環境安定性に優れたトナー粒子を得ることができる。また、炭化水素基として芳香族炭化水素基であるアリール基、例えばフェニル基を用いることもできる。Rの疎水性が大きい場合、様々な環境において帯電量変動が大きくなる傾向を示すことから、環境安定性を鑑みてRは炭素数1以上3以下の炭化水素基であることがより好ましい。
、RおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、または、アルコキシ基である(以下、反応基ともいう)。これらの反応基が加水分解、付加重合および縮重合により架橋構造を形成し、耐部材汚染および現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。加水分解性が室温で穏やかであり、トナー粒子の表面への析出性と被覆性の観点から、アルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基やエトキシ基であることがより好ましい。また、R、RおよびRの加水分解、付加重合および縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒およびpHによって制御することができる。
本発明に用いられる有機ケイ素重合体を得るには、上記に示す式(Z)中のRを除く一分子中に3つの反応基(R、RおよびR)を有する有機ケイ素化合物(以下、三官能性シランともいう)を1種または複数種を組み合わせて用いるとよい。
上記式(Z)としては以下のものが挙げられる。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のメチルシラン。
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシランのような三官能性のシラン。
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランのような三官能性のフェニルシラン。
また、本発明の効果を損なわない程度に、式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物とともに、以下を併用して得られた有機ケイ素重合体を用いても良い。一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、一分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)または1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)。例えば以下のようなものが挙げられる。
ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン。また、ビニルトリイソシアネートシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシメトキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルエトキシジヒドロキシシラン、ビニルジメトキシヒドロキシシラン、ビニルエトキシメトキシヒドロキシシラン、ビニルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のビニルシランを用いてもよい。
さらに、トナー中の上記有機ケイ素重合体の含有量が0.5質量%以上10.5質量%以下であることが特に好ましい。
上記有機ケイ素重合体の含有量が0.5質量%以上であることで、表層の表面自由エネルギーをさらに小さくすることができ、流動性が向上し、部材汚染やカブリの発生を抑制することができる。10.5質量%以下であることで、チャージアップの発生を抑制することができる。有機ケイ素重合体の含有量は有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類および量、有機ケイ素重合体形成時のトナー粒子の製造方法、反応温度、反応時間、反応溶媒およびpHによって制御することができる。
本発明において、有機ケイ素重合体を含有する表層とコアの部分は、隙間なく接していることが好ましい。これにより、トナー粒子の表層より内部に含有される樹脂成分や離型剤等によるブリードの発生が抑えられ、保存安定性、環境安定性および現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。表層には上記の有機ケイ素重合体の他に、スチレン-アクリル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂や各種添加剤などが含有されていてもよい。
[結着樹脂について]
トナーは、結着樹脂を含有するものである。結着樹脂は特段限定されず、従来公知のものを用いることができる。結着樹脂はビニル系樹脂、ポリエステル樹脂などが好ましく例示できる。ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂およびその他の結着樹脂として、以下の樹脂または重合体が例示できる。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンのようなスチレンおよびその置換体の単重合体;スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体のようなスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。これら結着樹脂は単独或いは混合して使用できる。
本発明においては結着樹脂がカルボキシル基を含有することが帯電性の観点で好ましく、カルボキシル基を含む重合性単量体を用いて製造された樹脂であることが好ましい。例えばα-エチルアクリル酸、クロトン酸などの(メタ)アクリル酸、およびα-アルキル誘導体あるいはβ-アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノアクリロイルオキシエチレンエステル、フタル酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸モノメタクリロイルオキシエチルエステルなどの不飽和ジカルボン酸モノエステル誘導体などが挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、下記に挙げるカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させたものを用いることができる。カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、および、トリメリット酸が挙げられる。アルコール成分としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、および、ペンタエリスリトールが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂は、ウレア基を含有したポリエステル樹脂であってもよい。ポリエステル樹脂としては末端などのカルボキシル基はキャップしないことが好ましい。
本発明の一態様に係るトナーにおいては、高温時におけるトナーの粘度変化の改良を目的として樹脂が重合性官能基を有していてもよい。重合性官能基としては、ビニル基、イソシアナート基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基が挙げられる。
<架橋剤>
トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、架橋剤を添加してもよい。
例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、および以上のアクリレートをメタクリレートに変えたものが挙げられる。
架橋剤の添加量としては、重合性単量体に対して0.001質量%以上15.000質量%以下であることが好ましい。
<離型剤>
本発明において、トナー粒子を構成する材料の1つとして、離型剤を含有することが好ましい。上記トナー粒子に使用可能な離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系ワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックスおよびその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスのような天然ワックスおよびその誘導体、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸のような脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコ-ン樹脂が挙げられる。なお、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。なお、離型剤の含有量は、結着樹脂または重合性単量体100.0質量部に対して5.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
<着色剤>
トナーは、着色剤を含有するものである。着色剤は特段限定されず、例えば以下に示す公知のものを使用することができる。
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180。
橙色顔料としては以下のものが挙げられる。
パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK。
赤色顔料としては、ベンガラ、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドC、レーキッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリラントカーミン3B、エオキシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254。
青色顔料としては、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBGなどの銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66。
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
緑色顔料としては、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGが挙げられる。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛が挙げられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、非磁性フェライト、マグネタイト、上記黄色系着色剤、赤色系着色剤および青色系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。これらの着色剤は、単独または混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。
また、トナーの製造方法によっては、着色剤の持つ重合阻害性や分散媒体移行性に注意を払う必要がある。必要により、重合阻害のない物質による着色剤の表面処理を施して表面改質を行ってもよい。特に、染料やカーボンブラックは、重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。
なお、着色剤の含有量は、結着樹脂または重合性単量体100.0質量部に対して3.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましい。
<荷電制御剤>
本発明において、トナー粒子は荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては、公知のものが使用できる。特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
荷電制御剤として、トナー粒子を負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。
有機金属化合物およびキレート化合物として、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸およびダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノおよびポリカルボン酸およびその金属塩、無水物、またはエステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーンが挙げられる。
一方、トナー粒子を正荷電性に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
ニグロシンおよび脂肪酸金属塩のようなニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩、およびこれらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩およびこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
これら荷電制御剤は単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。これらの荷電制御剤の添加量としては、結着樹脂100.00質量部に対して、0.01質量部以上10.00質量部以下であることが好ましい。
<外添剤>
トナー粒子は、外添せずにトナーを構成することもできるが、流動性、帯電性、クリーニング特性などを改良するために、いわゆる外添剤である流動化剤、クリーニング助剤などを添加してトナーを構成してもよい。
外添剤としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などよりなる無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、光沢処理が行われていることが好ましい。外添剤のBET比表面積は、10m/g以上450m/g以下であることが好ましい。
BET比表面積は、BET法(好ましくはBET多点法)に従って、動的定圧法による低温ガス吸着法により求めることができる。例えば、比表面積測定装置(商品名:ジェミニ2375 Ver.5.0、株式会社島津製作所製)を用いて、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定することにより、BET比表面積(m/g)を算出することができる。
これらの種々の外添剤の添加量は、その合計が、トナー100質量部に対して0.05質量部以上5質量部以下、好ましくは0.1質量部以上3質量部以下とされる。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
本発明において、トナー粒子中およびその表面にポジ帯電粒子を有し、その個数平均粒径が0.10μm以上、1.00μm以下であることが特に好ましい。この様なポジ帯電粒子を有すると、長期使用を通して転写効率が良好であることが明らかとなった。そのメカニズムは、この粒径のポジ帯電粒子であることでトナー表面で転がり可能であり、感光ドラムと転写ベルトの間で摩擦されてトナーのネガ帯電が促進され、結果的に転写バイアス印加によるポジ化を抑制しているためと考えられる。本発明の一態様に係るトナーは表面が硬いことが特徴であり、ポジ帯電粒子がトナー表面に固着することや埋まることが起き難い為に、転写効率を高く維持し易いと推測している。
トナー粒子中およびその表面に、ポジ帯電粒子を存在させる手段としては種々の方法が考えられ、いかなる方法でも良いが、外添により付与する方法が特に好ましい。トナーの硬度が上記特定のマルテンス硬度の範囲であれば、ポジ帯電粒子を均一に且つ高固着率でトナー粒子表面に存在させることが可能であることを見出した。ポジ帯電粒子のトナーへの固着率は、5%以上75%以下であることが好ましい。固着率がこの範囲であれば、トナー粒子および表面とポジ帯電粒子の摩擦帯電を促進することによって、転写効率を高く維持することが可能となる。固着率の測定方法は後述する。ポジ帯電粒子の種類としては、ハイドロタルサイト、酸化チタン、およびメラミン樹脂等が好ましい。この中でも特にハイドロタルサイトが好ましい。
また、トナー粒子は、トナー粒子中およびその表面に窒化ホウ素を有することも特に好ましい。窒化ホウ素を有するトナーは、長期使用を通して現像部材、特に現像ローラへのトナーの融着を抑制可能であることが明らかとなった。そのため、長期使用を通してトナーの帯電量を維持することが可能となった。窒化ホウ素は熱伝導率が高い材料である。そのため、現像時に部材との摺擦で発生した熱を逃がし易く、熱によるトナー母体の染み出しを抑制する効果があるものと推察している。
トナー粒子中およびその表面に窒化ホウ素を存在させる手段としては種々の方法が考えられ、いかなる方法でも良いが、外添により付与する方法が特に好ましい。トナーの硬度が上記特定のマルテンス硬度の範囲であれば、窒化ホウ素を均一に且つ高固着率でトナー粒子表面に存在させることが可能であることを見出した。窒化ホウ素はへき開性を有する材料である。上記特定のマルテンス硬度の範囲のトナーであれば、外添操作によって、窒化ホウ素がへき開されると同時にトナー粒子表面に均一に成膜されることが明らかとなった。窒化ホウ素のトナーへの固着率は、80%以上であることが好ましい。固着率がこの範囲であれば、現像ローラへの融着をより効果的に抑制することが可能となる。
<現像剤>
トナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
キャリアとしては、例えば鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、これらの中ではフェライト粒子を用いることが好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。
キャリアとしては、体積平均粒径が15μm以上100μm以下のものが好ましく、25μm以上80μm以下のものがより好ましい。
[トナー粒子の製造方法について]
トナー粒子は、まずトナー粒子を製造するための公知の手段を用いてトナーのコア粒子を製造した後、コア粒子の表面に表層を形成することで製造することができる。トナー粒子を製造するための公知の手段としては、混練粉砕法や湿式製造法を用いることができる。粒径の均一化や形状制御性の観点からは湿式製造法を好ましく用いることができる。さらに湿式製造法には懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などを挙げることができる。
ここでは懸濁重合法について説明する。懸濁重合法においてはまず、結着樹脂を合成するための重合性単量体、着色剤およびサリチル酸系樹脂をボールミル、超音波分散機の如き分散機を用いてこれらを均一に溶解あるいは分散させた重合性単量体組成物を調製する(重合性単量体組成物の調製工程)。このとき、必要に応じて多官能性単量体や連鎖移動剤、また、離型剤としてのワックスや荷電制御剤、可塑剤などを適宜加えることができる。懸濁重合法における重合性単量体として、以下に示すビニル系重合性単量体が好適に例示できる。スチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレンの如きスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2-ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、蟻酸ビニルの如きビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン。
次に、上記重合性単量体組成物を予め用意しておいた水系媒体中に投入し、高せん断力を有する撹拌機や分散機により、重合性単量体組成物からなる液滴を所望のコア粒子のサイズに形成する(造粒工程)。
造粒工程における水系媒体は分散安定剤を含有していることが、コア粒子の粒径制御、粒度分布のシャープ化、製造過程におけるコア粒子の合一を抑制するために好ましい。分散安定剤としては、一般的に立体障害による反発力を発現させる高分子と、静電気的な反発力で分散安定化を図る難水溶性無機化合物とに大別される。難水溶性無機化合物の微粒子は、酸やアルカリにより溶解するため、重合後に酸やアルカリで洗浄することにより溶解させて容易に除去することができるため、好適に用いられる。
難水溶性無機化合物の分散安定剤としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、リンのいずれかが含まれているものが好ましく用いられる。より好ましくは、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、リンのいずれかが含まれていることが望まれる。具体的には、以下のものが挙げられる。
リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ヒドロキシアパタイド。
上記分散安定剤に有機系化合物、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンを併用しても構わない。これら分散安定剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.01質量部以上2.00質量部以下使用することが好ましい。さらに、これら分散安定剤の微細化のため0.001質量%以上0.1質量%以下の界面活性剤を併用してもよい。具体的には市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤が利用できる。例えばドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムが好ましく用いられる。
造粒工程の後、若しくは造粒工程を行いながら、一般的には50℃以上90℃以下の温度に設定して重合を行い、コア粒子分散液を得る(重合工程)。
重合工程では処理液の温度がコア粒子の定着性能に大きな影響を与えるため、一般的には容器内の温度分布が均一になる様に攪拌操作を行う。重合開始剤を添加する場合、任意の時期と所要時間で行うことができる。また、所望の分子量分布を得る目的で重合反応後半に昇温してもよく、さらに、未反応の重合性単量体、副生成物などを系外に除去するために反応後半、または反応終了後に、一部水系媒体を蒸留操作により留去してもよい。蒸留操作は常圧もしくは減圧下で行うことができる。
懸濁重合法において使用する重合開始剤としては、一般的に油溶性開始剤が用いられる。例えば、以下のものが挙げられる。
2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリルのようなアゾ化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシピバレート、クメンヒドロパーオキサイドのようなパーオキサイド系開始剤。
重合開始剤は必要に応じて水溶性開始剤を併用しても良く、以下のものが挙げられる。過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄または過酸化水素。
これらの重合開始剤は単独あるいは併用して使用でき、重合性単量体の重合度を制御するために、連鎖移動剤、重合禁止剤等をさらに添加し用いることも可能である。
コア粒子の粒径は、高精細かつ高解像の画像を得るという観点から重量平均粒径が3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。コア粒子の重量平均粒径は細孔電気抵抗法により測定することができる。例えば「コールター・カウンター Multisizer 3」(ベックマン・コールター株式会社製)用いて測定することができる。こうして得られたコア粒子分散液は、コア粒子と水系媒体を固液分離する濾過工程へと送られる。
得られたコア粒子分散液からコア粒子を得るための固液分離は、一般的な濾過方法で行うことができ、その後コア粒子表面から除去しきれなかった異物を除去するため、リスラリーや洗浄水のかけ洗いなどによってさらに洗浄を行うことが好ましい。十分な洗浄が行なわれた後に、再び固液分離してコア粒子のケーキを得る。その後、公知の乾燥手段により乾燥され、必要であれば分級により所定外の粒径を有する粒子群を分離してコア粒子を得る。このとき分離された所定外の粒径を有する粒子群は最終的な収率を向上させるために再利用しても良い。
続いて、上記により製造したコア粒子の表面に以下の方法で表層を形成することができる。まず、コア粒子を水系媒体に分散し、コア粒子分散液を得る。この時のコア粒子はコア粒子分散液総量に対し、コア粒子の固形分が10質量%以上40質量%以下となる濃度で分散することが好ましい。そして、コア粒子分散液の温度は35℃以上に調整しておくことが好ましい。また、コア粒子分散液のpHは有機ケイ素化合物の縮合が進みにくいpHに調整することが好ましい。有機ケイ素重合体の縮合が進みにくいpHは有機ケイ素化合物によって異なるため、最も反応が進みにくいpHを中心として、±0.5以内が好ましい。
一方、有機ケイ素化合物は加水分解処理を行ったものを用いることが好ましい。例えば、有機ケイ素化合物の前処理として別容器で加水分解しておく。加水分解の仕込み濃度は有機ケイ素化合物の量を100質量部とした場合、イオン交換水やRO水などイオン分を除去した水の量は40質量部以上500質量部以下が好ましく、より好ましい水の量は100質量部以上400質量部以下である。加水分解の条件としては、好ましくはpHが2以上7以下、温度が15℃以上80℃以下、時間が30分以上600分以下である。
得られた加水分解液とコア粒子分散液とを混合して縮合に適したpHに調整することで、有機ケイ素化合物を縮合させながらトナーのコア粒子表面に表層を形成することができる。縮合に適したpHは、好ましくは6以上12以下、または1以上3以下、より好ましくは8以上12以下である。縮合と表層の形成は35℃以上で60分間以上行うことが好ましい。また、縮合に適したpHに調整する前に35℃以上で保持する時間を調整することで表面のマクロ構造を調整可能であるが、時間が長すぎると上記特定のマルテンス硬度を有するトナーが得られにくいため、3分以上120分以下であることが好ましい。
以上のように表層を形成することで反応残基を減らすことができ、また、表層に凸形状を形成させることができる。さらに凸間にネットワーク構造を形成させることができるため、上記特定のマルテンス硬度のトナーを得られやすい。
<トナー中の有機ケイ素重合体の含有量の測定>
トナー中の有機ケイ素重合体の含有量の測定は、例えば、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定および測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いて行うことができる。上記装置を用いた場合の具体的な測定方法について、以下に述べる。
X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
測定サンプルとしては、次のようにして得られる厚さ2mm、直径39mmに成型したペレットを用いる。まず、専用のプレス用アルミリングの中にトナー4gを入れて平らにならす。続いて、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(株式会社前川試験機製作所製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧する。
有機ケイ素重合体を含まないトナー100質量部に対して、シリカ(SiO)微粉末を0.5質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合する。同様にして、シリカ微粉末を5.0質量部、10.0質量部となるようにトナーとそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とする。
それぞれの試料について、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、PETを分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測されるSi-Kα線の計数率(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとする。得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のSiO添加量を横軸として、一次関数の検量線を得る。
次に、錠剤成型圧縮機を用いて分析対象のトナーを上記のようにしてペレットとし、そのSi-Kα線の計数率を測定する。そして、上記の検量線からトナー中の有機ケイ素重合体含有量を求める。
<有機ケイ素重合体のトナー母体に対する固着率の算出方法>
以下に有機ケイ素重合体のトナー母体に対する固着率を算出する方法の具体的な例を示す。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学株式会社製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50mL)に上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業株式会社(現:富士フィルム和光純薬工業株式会社)製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20分間で振とうして水洗する。
振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。
トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラなどで採取する。採取されたトナーを含む水溶液を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥する。
乾燥品をスパチュラで解砕し、蛍光X線で有機ケイ素重合体の量を測定する。水洗後のトナーと初期のトナーの測定対象の元素量比から固着率(%)を計算する。
ケイ素についての蛍光X線による測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定および測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。
なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は10mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリング直径10mmの中に水洗後のトナーと初期のトナーを約1g入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(株式会社前川試験機製作所製)を用いて、20MPaで60秒間加圧し、厚さ約2mmに成型したペレットを用いる。
上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)からその濃度を算出する。
トナー中の有機ケイ素重合体の定量方法としては、トナー100質量部に対して、例えば、シリカ(SiO)微粉末を0.5質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合する。同様にして、シリカ微粉末を2.0質量部、5.0質量部となるようにトナーとそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とする。
それぞれの試料について、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、PETを分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測されるSi-Kα線の計数率(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとする。得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のSiO添加量を横軸として、一次関数の検量線を得る。次に、分析対象のトナーを、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにしてペレットとし、そのSi-Kα線の計数率を測定する。そして、上記の検量線からトナー中の有機ケイ素重合体の含有量を求める。上記方法により算出した初期のトナーの元素量に対して、水洗後のトナーの元素量の比率を求め、トナー母体に対する固着率(%)とした。
<式(B)で表される構造の確認方法>
式(B)で表される構造における、ケイ素原子に結合する炭化水素基などの構造は、13C-NMR(固体)により確認することができる。
以下に装置、測定条件および試料の調製方法の具体的な例を示す。
13C-NMR(固体)の測定条件」
装置:JEOL RESONANCE製 JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:NMR測定用のトナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分 150mg
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:1024回
当該方法にて、ケイ素原子に結合しているメチル基(Si-CH)、エチル基(Si-C)、プロピル基(Si-C)、ブチル基(Si-C)、ペンチル基(Si-C11)、ヘキシル基(Si-C13)、フェニル基(Si-C-)などに起因するシグナルの有無により、式(B)のRで表わされる炭化水素基を確認することができる。
なお、上記式(B)で表される部分構造をさらに詳細に確認する必要がある場合、上記13C-NMRの測定に加えて1H-NMRの測定を行って同定してもよい。
<トナー粒子中の有機ケイ素重合体の凸高さの測定>
トナー粒子中の有機ケイ素重合体の凸高さは、トナーの断面を作製した後、得られたトナーの断面について走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて画像を取得し、さらに得られた画像について画像解析することで測定することができる。
トナーの断面の作製手順を以下に説明する。
カバーガラス(松波硝子株式会社、角カバーグラス;正方形No.1)上にトナーを一層となるように散布し、オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を施す。
次に、PTFE製のチューブ(Φ1.5mm×Φ3mm×3mm)に光硬化性樹脂D800(日本電子株式会社)を充填し、チューブの上に上記カバーガラスをトナーが光硬化性樹脂D800に接するような向きで静かに置く。この状態で光を照射して樹脂を硬化させた後、カバーガラスとチューブを取り除くことで、最表面にトナーが包埋された円柱型の樹脂を形成する。
超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで、円柱型の樹脂の最表面からトナーの半径(例えば、重量平均粒径(D4)が8.0μmの場合は4.0μm)の長さだけ切削して、トナー中心部の断面を出す。
次に、膜厚100nmとなるように切削し、トナーの断面の薄片サンプルを作製する。以上のようにして、トナー中心部の断面を得ることができる。
STEMを用いた画像の取得は、例えば条件を以下のようにして行うことができる。
・プローブサイズ:1nm
・画像サイズ:1024×1024pixel
・明視野像のDetector Controlパネル
Contrast:1425
Brightness:3750
・Image Controlパネル
Contrast:0.0
Brightness:0.5
Gammma:1.00
・画像倍率:100,000倍
STEM画像21は、例えば図3に示すように、トナーの断面のうち、トナーの球状部22の外周23が4分の1程度収まるようにして取得する。STEM画像21はトナーの断面のうち、トナーの球状部22の外周23が4分の1から2分の1程度収まるようにして取得することが好ましい。
得られたSTEM画像21について、例えば画像処理ソフト(イメージJ)を用いて画像解析を行い、有機ケイ素重合体を含む凸部の計測をすることができる。画像解析は、例えばSTEM画像21の30箇所について行うことができる。
画像解析は、例えば次のようにして行うことができる。まず、ライン描画ツールにてトナーの球状部22の外周23に沿ってラインを描く。続いて、描いた曲線のラインを直線となるように画像を変換する。このとき、トナーの球状部22を形成する球の中心から、凸形状の有機ケイ素重合体の表面までの距離が変化しないように変換を行う。その後、変換後の画像中の、凸形状の各有機ケイ素重合体について、例えば図4に示すように、凸形状の有機ケイ素重合体24の、直線に変換したラインからの最長距離を計測し、有機ケイ素重合体の凸高さHとする。
[プロセスカートリッジ、電子写真装置]
本発明の一態様に係るプロセスカートリッジは、これまで述べてきた電子写真感光体と、該電子写真感光体に当接して該電子写真感光体を帯電する帯電手段と、該電子写真感光体上にトナーにより現像してトナー画像を形成する現像手段と、該電子写真感光体にブレードを当接し該電子写真感光体上のトナーを除去するクリーニング手段と、を有する。
また、本発明の一態様に係る電子写真装置は、これまで述べてきた電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする。
図1に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
電子写真感光体1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1の表面は、帯電手段3により、正または負の所定電位に帯電される。電された電子写真感光体1の表面には、露光手段(不図示)から露光光4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内に収容されたトナーで現像され、電子写真感光体1の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により、転写材7に転写される。トナー像が転写された転写材7は、定着手段8へ搬送され、トナー像の定着処理を受け、電子写真装置の外へプリントアウトされる。電子写真装置は、転写後の電子写真感光体1の表面に残ったトナーなどの付着物を除去するための、クリーニング手段9を有していてもよい。子写真装置は、電子写真感光体1の表面を、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理する除電機構を有していてもよい。また、本発明の一態様に係るプロセスカートリッジ11を電子写真装置本体に着脱するために、レールなどの案内手段12を設けてもよい。
本発明の一態様に係る電子写真感光体は、レーザービームプリンタ、LEDプリンタ、複写機、ファクシミリ、および、これらの複合機などに用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例中および比較例中の各材料の「部」および「%」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
<トナー1の製造>
(水系媒体1の調製工程)
反応容器中のイオン交換水300.0部に、リン酸ナトリウム(ラサ工業株式会社製・12水和物)4.2部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。
これに、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水3.0部に2.8部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に10質量%塩酸を投入し、pHを6.0に調整し、水系媒体1を得た。
(重合性単量体組成物の調製工程)
・スチレン:60.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 :6.5部
上記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料分散液を調製した。
上記顔料分散液に下記材料を加えた。
・スチレン:20.0部
・n-ブチルアクリレート:20.0部
・架橋剤 ジビニルベンゼン:0.3部
・飽和ポリエステル樹脂:5.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度Tg=68℃、重量平均分子量Mw=10000、分子量分布Mw/Mn=5.12)
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃):7.0部
これを65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
(表層用有機ケイ素化合物の加水分解工程)
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10wt%の塩酸を用いてpHを3.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を70℃にした。その後、メチルトリエトキシシラン40.0部を添加して2時間撹拌して表層用有機ケイ素化合物の加水分解を行った。加水分解の終点は目視にて油水が分離せず1層になったことで確認を行い、冷却して表層用有機ケイ素化合物の加水分解液を得た。
(造粒工程)
水系媒体1の温度を70℃、撹拌装置の回転数を12000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート9.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて12000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
(重合工程)
高速撹拌装置からプロペラ撹拌羽根に撹拌機を代え、150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行い、トナー粒子のスラリーを得た。その後、スラリーの温度を70℃に冷却してpHを測定したところ、pH=5.0だった。70℃で撹拌を継続したまま、表層用有機ケイ素化合物の加水分解液を20.0部添加してトナー粒子の表層形成を開始した。そのまま90分保持した後に、水酸化ナトリウム水溶液を用いてスラリーの縮合を完結させるためにpH=9.0に調整してさらに300分保持して表層を形成させた。
(洗浄、乾燥工程)
重合工程終了後、トナー粒子のスラリーを冷却し、トナー粒子のスラリーに塩酸を加えpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)にて乾燥を行い、さらにコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットしてトナー粒子1を得た。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。トナー粒子1の断面TEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在すること、有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合が、20.0%以下であることを確認した。以降の実施例および比較例においても、有機ケイ素重合体を含有する表層は同様のケイ素マッピングで表層に均一なケイ素原子が存在すること、表層の厚み2.5nm以下である分割軸の数の割合が20.0%以下であることを確認した。本実施例においては、得られたトナー粒子1を外添せずにそのままトナー1として用いた。
<トナー2~16、比較トナー1~3の製造>
トナー1の製造において、加水分解液の添加条件および加水分解液後の保持時間をそれぞれ表1に示すように変更した。それ以外はトナー1と同様にしてトナー2~16、比較トナー1~3を製造した。
<比較トナー4>
比較トナー4として、市販のキヤノン株式会社製レーザービームプリンタLBP712Ciのプロセスカートリッジに充填されているシアントナーを用いた。
<トナー17の製造>
トナー1の製造において、加水分解液の添加条件および加水分解液後の保持時間をそれぞれ表1に示すように変更した。それ以外はトナー1と同様にしてトナーを製造した。さらに得られたトナーに対して、外添剤としてチタン酸ストロンチウム0.2部をトナー100gに対して秤量し、SUPERMIXER PICCOLO SMP-2(株式会社カワタ製)に投入して、3000rpmで10分間混合を行い、トナー17を得た。
<電子写真感光体1の製造>
直径24mm、長さ257mmのアルミニウムシリンダー(JIS-A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)とした。
(導電層の形成)
次に、以下の材料を用意した。
・金属酸化物粒子としての酸素欠損型酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子(平均一次粒径230nm)214部
・結着材料としてのフェノール樹脂(フェノール樹脂のモノマー/オリゴマー)(商品名:プライオーフェンJ-325、大日本インキ化学工業株式会社(現:DIC株式会社)製、樹脂固形分:60質量%)132部
・溶剤としての1-メトキシ-2-プロパノール98部を、直径0.8mmのガラスビーズ450部
これらを用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、分散処理時間:4.5時間、冷却水の設定温度:18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。続いて、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、平均粒径2μm)を分散液に添加した。シリコーン樹脂粒子の添加量は、ガラスビーズを取り除いた後の分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して10質量%になるようにした。また、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング株式会社製)を分散液に添加した。次に、メタノールと1-メトキシ-2-プロパノールの混合溶剤(質量比1:1)を分散液に添加し、攪拌することによって、導電層用塗布液を調製した。混合溶剤の添加量は、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料と表面粗し付与材の合計質量(すなわち、固形分の質量)が分散液の質量に対して67質量%になるようにした。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを30分間150℃で加熱することによって、膜厚が30.0μmの導電層を形成した。
(下引き層の形成)
以下の材料を用意した。
・下記式(E)で示される電子輸送物質4部
・ブロックイソシアネート(商品名:デュラネートSBN-70D、旭化成ケミカルズ株式会社製)5.5部
・ポリビニルブチラール樹脂(エスレックKS-5Z、積水化学工業株式会社製)0.3部・触媒としてのヘキサン酸亜鉛(II)(三津和化学薬品株式会社製)0.05部
これらを、テトラヒドロフラン50部と1-メトキシ-2-プロパノール50部の混合溶媒に溶解して下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを30分間170℃で加熱することによって、膜厚が0.7μmの下引き層を形成した。
Figure 0007261086000022
(電荷発生層の形成)
次に、CuKα特性X線回折より得られるチャートにおいて、7.5°および28.4°の位置にピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部とポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX-1、積水化学工業株式会社製)5部を用意した。これらをシクロヘキサノン200部に添加し、直径0.9mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で6時間分散し、これにシクロヘキサノン150部と酢酸エチル350部をさらに加えて希釈して電荷発生層用塗布液を得た。得られた塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、95℃で10分間乾燥することにより、膜厚が0.20μmの電荷発生層を形成した。なお、X線回折の測定は、次の条件で行ったものである。
[粉末X線回折測定]
使用測定機:理学電気株式会社製、X線回折装置RINT-TTRII
X線管球:Cu
管電圧:50KV
管電流:300mA
スキャン方法:2θ/θスキャン
スキャン速度:4.0°/min
サンプリング間隔:0.02°
スタート角度(2θ):5.0°
ストップ角度(2θ):40.0°
アタッチメント:標準試料ホルダー
フィルター:不使用
インシデントモノクロ:使用
カウンターモノクロメーター:不使用
発散スリット:開放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
平板モノクロメーター:使用
カウンター:シンチレーションカウンター。
(電荷輸送層の形成)
次に、以下の材料を用意した。
・下記式(C-1)で示される化合物(電荷輸送物質(正孔輸送性化合物))6部
・下記式(C-2)で示される化合物(電荷輸送物質(正孔輸送性化合物))3部
・下記式(C-3)で示される化合物(電荷輸送物質(正孔輸送性化合物))1部
・ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)10部
・(C-4)と(C-5)の共重合ユニットを有するポリカーボネート樹脂0.02部(x/y=9/1:Mw=20000)
これらをo-キシレン25部/安息香酸メチル25部/ジメトキシメタン25部の混合溶剤に溶解させることによって電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を30分間120℃で乾燥させることによって、膜厚が12μmの電荷輸送層を形成した。
Figure 0007261086000023
Figure 0007261086000024
Figure 0007261086000025
Figure 0007261086000026
Figure 0007261086000027
(保護層の形成)
以下に示す材料を用意した。
・下記式(A-12)で示される化合物10部
・下記式(A-25)で示される化合物10部
・1-プロパノール25部
・シクロヘキサン50部
これらを混合し、撹拌した。その後ポリフロンフィルター(商品名:PF-020、アドバンテック東洋株式会社製)でこの溶液を濾過することによって、保護層用塗布液を調製した。
Figure 0007261086000028
Figure 0007261086000029
この保護層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を6分間50℃で乾燥させた。その後、窒素雰囲気下にて、支持体(被照射体)を200rpmの速度で回転させながら、加速電圧70kV、ビーム電流5.0mAの条件で1.6秒間電子線を塗膜に照射した。なお、このときの電子線の吸収線量を測定したところ、15kGyであった。その後、窒素雰囲気下にて、塗膜の温度が25℃から117℃になるまで30秒かけて昇温させ、塗膜の加熱を行った。電子線照射から、その後の加熱処理までの酸素濃度は15ppm以下であった。次に、大気中において、塗膜の温度が25℃になるまで自然冷却し、塗膜の温度が105℃になる条件で30分間加熱処理を行い、膜厚3.0μmの保護層を形成した。このようにして、支持体、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層をこの順に有する円筒状(ドラム状)の実施例1の電子写真感光体1を製造した。
<電子写真感光体2および3の製造>
電子写真感光体1の製造において、保護層を形成する際の、加速電圧、電子線照射時間を表2に示すように変更した。それ以外は、電子写真感光体1と同様にして電子写真感光体2および3を製造した。
<電子写真感光体4の製造>
電子写真感光体1の製造において、保護層を形成した後、電子写真感光体の表面を、図2に示す研磨装置を用いて研磨し、粗面化処理を行った。
図2において、研磨シート18は巻き取り機構(不図示)で矢印方向に巻き取られる。電子写真感光体19は矢印方向に回転する。バックアップローラ20は矢印方向に回転する。
研磨シート18として理研コランダム株式会社製の研磨シート(商品名:GC#3000、基層シート厚:75μm)を用いた。また、バックアップローラ20としては硬度20°のウレタンローラ(外径:50mm)を用いた。研磨条件としては、侵入量:2.5mm、シート送り量:400mm/sとし、研磨シートの送り方向と電子写真感光体の回転方向を同一として、5秒間研磨した。このようにして電子写真感光体4を製造した。
<電子写真感光体5~7、10~15の製造>
電子写真感光体4の製造において、保護層を形成する際の、加速電圧、電子線照射時間、および保護層を研磨する際の研磨時間を表2に示すように変更した。また、感光体11と13は表2に示す化合物に変更した。それ以外は電子写真感光体4と同様にして電子写真感光体5~7を製造した。
<電子写真感光体8の製造>
電子写真感光体1の製造において、保護層の形成に用いる化合物を、上記式(A-12)で示される化合物8.2部、上記式(A-25)で示される化合物1.8部、および電荷輸送機能を有さない下記式(O-1)で示される化合物12部に変更した。それ以外は、電子写真感光体1と同様にして電子写真感光体8を製造した。
Figure 0007261086000030
<電子写真感光体9の製造>
電子写真感光体1の製造において、保護層の形成に用いる化合物を、上記式(A-12)で示される化合物2.5部、上記式(A-25)で示される化合物7.5部、および電荷輸送機能を有さない下記式(O-1)で示される化合物12部に変更した。また、保護層を形成する際の加速電圧を表2に示すように変更した。それ以外は、電子写真感光体1と同様にして電子写真感光体9を製造した。
<電子写真感光体16の製造>
電子写真感光体4の製造において、保護層の形成に用いる化合物を、上記式(A-12)で示される化合物7部および上記式(A-25)で示される化合物13部に変更した。また、保護層を形成する際の加速電圧、電子線照射時間、および保護層を研磨する際の研磨時間を表2に示すように変更した。それ以外は、電子写真感光体4と同様にして電子写真感光体16を製造した。
<電子写真感光体17の製造>
電子写真感光体8の製造において、保護層を形成する際の、加速電圧を表2に示すように変更した。さらに、研磨時間を15秒とした以外は電子写真感光体4と同様にして粗面化処理を行った。それ以外は、電子写真感光体8と同様にして電子写真感光体17を製造した。
<電子写真感光体18の製造>
電子写真感光体9の製造において、保護層を形成する際の、加速電圧を表2に示すように変更した。さらに、研磨時間を55秒とした以外は電子写真感光体4と同様にして粗面化処理を行った。それ以外は、電子写真感光体9と同様にして電子写真感光体18を製造した。
<比較電子写真感光体1の製造>
電子写真感光体1の製造において、保護層用塗布液を調製に用いる材料を以下のように変更した。
・下記式(A-14)で示される化合物20部
・ポリテトラフルオロエチレン粒子(商品名:ルブロンL-2、ダイキン工業株式会社製)15部
・1-プロパノール50部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン株式会社製)40部
これらを超高圧分散機に入れ、分散混合することによって、保護層用塗料液を調製した。それ以外は電子写真感光体1と同様にして比較電子写真感光体1を製造した。
Figure 0007261086000031
<比較電子写真感光体2の製造>
比較電子写真感光体1の製造において、保護層用塗布液の調製にポリテトラフルオロエチレン粒子を用いなかった。また、保護層を形成する際の、加速電圧を表2に示すように変更した。それ以外は比較電子写真感光体1と同様にして比較電子写真感光体2を製造した。
<比較電子写真感光体3の製造>
比較電子写真感光体2の製造において、保護層の形成に用いる化合物を、電子写真感光体として、比較例2における保護層の形成工程において、上記式(A-14)で示される化合物10部、下記記式(O-2)で示される化合物10部とした。それ以外は比較電子写真感光体2と同様にして比較電子写真感光体3を製造した。
Figure 0007261086000032
<比較電子写真感光体4の製造>
比較電子写真感光体3の製造において、保護層を形成する際の、加速電圧を表2に示すように変更した。さらに、研磨時間を30秒とした以外は電子写真感光体4と同様にして粗面化処理を行った。それ以外は、比較電子写真感光体3と同様にして比較電子写真感光体4を製造した。
<比較電子写真感光体5の製造>
電子写真感光体1の製造において、保護層を形成しなかった。また、研磨時間を30秒とした以外は電子写真感光体4と同様にして粗面化処理を行った。それ以外は、電子写真感光体1と同様にして比較電子写真感光体5を製造した。
[トナーおよび電子写真感光体の評価]
上記製造により得られたトナーについて、先に述べた方法により表層の、マルテンス硬度、トナー中の有機ケイ素重合体の含有量、有機ケイ素重合体のトナー母体に対する固着率、トナー粒子中の有機ケイ素重合体の凸高さを測定した。評価結果を表3に示す。
また上記製造により得られた電子写真感光体について、以下に示すようにして表面層の硬度および粗さを測定した。およびプロセスカートリッジについて行った評価について、その方法を以下に述べる。
<電子写真感光体表面層の硬度の測定>
ユニバーサル硬さ値(HU)および弾性変形率は、25℃/50%RH環境下、微小硬さ測定装置フィシャースコープH100V(Fischer社製)を用いて測定した。
測定条件は、フィッシャー硬度計(商品名:H100VP-HCU、フィッシャー社製)を用いて、温度23℃湿度50%RHの環境下にて測定した。圧子として対面角136°のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を使用し、測定対象の保護層表面に該ダイヤモンド圧子を押し込み、7秒かけて2mNまで荷重をかけた後、7秒かけて徐々に減少させて荷重が0mNになるまでの押し込み深さを連続的に測定した。その結果から、ユニバーサル硬さ値(HU)および弾性変形率(We)を求めた。
<電子写真感光体表面層の粗さの測定>
研磨した後の電子写真感光体の保護層の表面粗さは、表面粗さ測定機(商品名:SE700,SMB-9、株式会社小坂研究所製)を用いて、下記の条件で測定した。測定はJIS B 0601-2001規格で、周方向に掃引して測定した十点平均面粗さ(Rzjis)、周方向に掃引して測定した平均間隔(RSm)について行った。
電子写真感光体の長手方向に、塗布上端から30、70、150、210mmの位置において測定した、また、120°手前に回転させた後、同様にして塗布上端から30、70、150、210mmの位置において測定した。さらに、120°手前に回転させた後、同様にして測定し、計12点の測定の平均値よりRzjisおよびRSmを求めた。測定条件は、測定長さ:2.5mm、カットオフ値:0.8mm、送り速さ:0.1mm/s、フィルタ特性:2CR、レベリング:直線(全域)とした。
評価結果を表4に示す。
[プロセスカートリッジおよび電子写真装置の評価]
市販のキヤノン株式会社製レーザービームプリンタLBP712Ciの改造機を用いた。改造点は、評価機本体のギアおよびソフトウェアを変更することにより、現像ローラの回転数をドラムに対して2倍の周速で回転するように設定したこと、プロセススピードを300mm/secに変更したことである。
LBP712Ciのプロセスカートリッジに、表5に示すトナーを60gを装填し、また、表5に示す電子写真感光体を取り付け、実施例1~29、比較例1~11に係るプロセスカートリッジとした。同様にしてイエロー、マゼンター、シアン、ブラック全てのプロセスカートリッジを変更した。
各プロセスカートリッジを高温高湿(30℃/80%RH)の環境下で24時間放置した。各環境下で24時間放置後のプロセスカートリッジを上記LBP712Ciに4色共に取り付け、実施例1~29、比較例1~11に係る電子写真装置とした。各電子写真装置を用い、30℃/80%RHの環境下でフルカラー1.0%の印字率画像をA4用紙横方向で5,000枚までプリントアウトした。
<トナー現像特性評価>
5000枚通紙後、LETTERサイズのXEROX4200用紙(XEROX社製、75g/m2)にシアンのハーフトーン(トナーの載り量:0.2mg/cm2)の画像をプリントアウトし、トナー耐久性の指標として現像スジの評価をした。基準Bまでが実用上問題のないレベルである。
(評価基準)
A:現像ローラ上および画像上のいずれにも排紙方向の縦スジは見られない。
B:現像ローラの両端に周方向の細いスジが5本以下見られる。または画像上に排紙方向の縦スジがほんの少し見られる。しかし、画像処理で消せる程度である。
C:現像ローラの両端に周方向の細いスジが6本以上20本以下見られる。または画像上にも細かいスジが数本見られる。画像処理でも消せない。
D:現像ローラ上と画像上に21本以上のスジが見られ、画像処理でも消せない。
<トルクの評価>
初期10枚通紙後と5,000枚通紙後、上記評価装置中で、現像機を離間させた状態で300mm/secでクリーニングブレードに対してカウンター方向回転させ60秒後のシアンのプロセスカートリッジのトルク測定を行った。
<クリーニング特性の評価>
トナーの載り量が0.2mg/cmであるハーフトーン画像を5枚印刷し、評価した。
A:クリーニング不良画像なし、帯電ローラ汚れなし。
B:クリーニング不良画像なし、帯電ローラ汚れあり。
C:ハーフトーン画像上にクリーニング不良が少し確認できる。
D:ハーフトーン画像上にクリーニング不良が目立つ。
<クリーニングブレードびびり・捲れの評価>
クリーニング特性評価終了後、10秒間の停止期間をおいてから、次のジョブを開始するという間欠モードで、ベタ白画像を100枚出力した。その際、クリーニングブレードのびびり・捲れを以下の評価項目に従い評価を行った。
A:ブレードのびびり・捲れは発生しない。
B:90枚出力後、感光体の回転開始時および停止時に、若干びびりが発生した。
C:50枚出力後、感光体の回転開始時および停止時に、びびりが発生した。
D:ブレード回転時、停止時に、頻繁にびびり・捲れが発生したため実用は難しい。
評価結果を表5に示す。
Figure 0007261086000033
Figure 0007261086000034
Figure 0007261086000035
Figure 0007261086000036
Figure 0007261086000037
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段
21 STEM画像
22 トナーの球状部
23 外周
24 凸形状の有機ケイ素重合体
H 有機ケイ素重合体の凸高さ

Claims (7)

  1. 電子写真感光体と、
    該電子写真感光体に当接し、該電子写真感光体を帯電する帯電手段と、
    トナーを収容し、かつ該電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー画像を形成するための現像手段と、
    クリーニングブレードを有し、かつ該電子写真感光体に該クリーニングブレードを当接させて該電子写真感光体上のトナーを除去するためのクリーニング手段と、
    を有するプロセスカートリッジであって、
    トナー
    着色剤および結着樹脂を含有するトナー母体と、
    有機ケイ素重合体を含有する表層と
    を有し、
    トナー母体に対する有機ケイ素重合体の固着率が85.0%以上99.0%以下であり、
    電子写真感光体、支持体および表面層を有し、
    該電子写真感光体の表面層ユニバーサル硬さ値(HU)が210N/mm 以上250N/mm 以下であり、
    該電子写真感光体の表面層の弾性変形率(We)が37%以上52%以下である
    ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
  2. 前記電子写真感光体の表面層が下記式(A-1)で示される構造および下記式(A-2)で示される構造を有する、
    Figure 0007261086000038
    Figure 0007261086000039
    (式(A-1)および(A-2)Rは水素原子または、メチル基を表す。nは2以上5以下の整数である。)
    請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
  3. 前記有機ケイ素重合体は、下記式(B)で表される部分構造を有し、
    -SiO 3/2 式(B)
    (式(B)中、R は、炭素数1以上6以下の炭化水素基を示す。)
    前記トナー中の前記有機ケイ素重合体の含有量が0.5質量%以上5.0質量%以下であり、
    前記有機ケイ素重合体が、前記表層で凸形状を形成し、
    該凸形状の凸高さが、40nm以上100nm以下である、
    請求項1または2に記載のプロセスカートリッジ。
  4. 前記電子写真感光体の表面層Raが、0.010μm以上0.045μm以下であり
    前記電子写真感光体の表面層のSmが、0.005mm以上0.060mm以下である、
    請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
  5. 前記トナー、最大荷重2.0×10-4Nの条件で測定したときのマルテンス硬度が、200MPa以上1100MPa以下である請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジと、
    露光手段
    転写手段と
    を有することを特徴とする電子写真装置。
  7. 電子写真感光体と、
    露光手段と、
    該電子写真感光体に当接し、該電子写真感光体を帯電する帯電手段と、
    トナーを収容し、かつ該電子写真感光体上に形成された静電潜像を該トナーにより現像してトナー画像を形成するための現像手段と、
    転写手段と、
    クリーニングブレードを有し、かつ該電子写真感光体に該クリーニングブレードを当接させて該電子写真感光体上の該トナーを除去するためのクリーニング手段と、
    を有する電子写真装置であって、
    該トナーが、
    着色剤および結着樹脂を含有するトナー母体と、
    有機ケイ素重合体を含有する表層と、
    を有し、
    該トナー母体に対する該有機ケイ素重合体の固着率が、85.0%以上99.0%以下であり、
    該電子写真感光体が、支持体および表面層を有し、
    該電子写真感光体の表面層のユニバーサル硬さ値(HU)が、210N/mm 以上250N/mm 以下であり、
    該電子写真感光体の表面層の弾性変形率(We)が、37%以上52%以下である、
    ことを特徴とする電子写真装置。
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