(1)概要
以下、本実施形態に係る感震遮断システムの概要について説明する。
本実施形態に係る感震遮断システムは、地震を感知して電路を遮断するためのシステムであり、例えば戸建て住宅等の建物内に設置される分電盤に用いられる。
例えば単相3線式の配電方式であれば、分電盤8は、図1に示すように、第1電圧線(L1)31と第2電圧線(L2)32と中性線(N)33とを有する電力線3に電気的に接続される。そして、分電盤8は、電力線3からの交流電力を、主幹ブレーカ1を介して複数の分岐回路7に分配する。
図1では、複数の分岐回路7のうち、3つの導電バー41~43に対して上側の分岐回路7は、2つの導電バー41,43を介して第1電圧線31及び中性線33に電気的に接続される。また、複数の分岐回路7のうち、3つの導電バー41~43に対して下側の分岐回路7は、2つの導電バー42,43を介して第2電圧線32及び中性線33に電気的に接続される。
本実施形態では、複数の分岐回路7の各々は、分岐ブレーカ2と、負荷5と、分岐ブレーカ2と負荷5とを電気的に接続する給電線61,62と、を有している。負荷5は、電気機器(照明器具、調理家電等)と、配線器具(アウトレット、壁スイッチ等)とのいずれかである。
ところで、本震の後に余震が起こるような状況では、家屋(建物)、家具等が本震によってダメージを受けているため、余震といえども危険性は高く、電路を遮断したほうがよい場合もある。しかしながら、従来の感震遮断システムでは、電路を遮断するか否かを判定するための閾値が一定であり、余震の地震動では閾値を超えない場合が多く、電路を遮断すべき状況であっても電路を遮断できない可能性があった。
本実施形態に係る感震遮断システムは、本震よりも小さい地震動の余震であっても電路を遮断できるように、以下のように構成されている。
本実施形態に係る感震遮断システム10は、図1に示すように、振動検出部11と、記憶部12と、判定部13と、遮断部14と、を備えている。振動検出部11は、地震動の大きさを検出する。記憶部12は、振動検出部11の検出結果に基づく地震動についての履歴情報を記憶する。判定部13は、振動検出部11にて検出される地震動の大きさに基づいて、電路を遮断するか否かを判定する判定処理を行う。遮断部14は、判定部13の判定結果に応じて電路を遮断する。判定部13は、記憶部12に記憶されている履歴情報に基づいて、判定処理の感度を変更するように構成されている。ここでいう「判定処理の感度」とは、判定部13が電路を遮断すると判定するときの感度である。
この構成によれば、記憶部12に記憶されている履歴情報に基づいて判定処理の感度を変更するので、振動検出部11にて本震を検出した後に感度を上げることで、本震よりも小さい地震動の余震であっても電路を遮断することができる。言い換えると、判定処理の感度が一定である場合と比較して安全性を高めることができる。
(2)詳細
以下、本実施形態に係る感震遮断システム10の詳細について、図1を参照して説明する。
本実施形態に係る感震遮断システム10は、図1に示すように、建物100内に設置される分電盤8に用いられ、検出した地震動の大きさに応じて分電盤8内の電路を遮断する。建物100は、例えば戸建て住宅である。
(2.1)構成
本実施形態に係る感震遮断システム10は、図1に示すように、振動検出部11と、記憶部12と、判定部13と、遮断部14と、を備える。また、感震遮断システム10は、演算部15と、接点部16と、を更に備える。
感震遮断システム10は、本実施形態では、系統電源(例えば、商用電源)から複数の分岐回路7への電路を開閉するための主幹ブレーカ1であり、この主幹ブレーカ1は、いわゆる感震ブレーカ(以下、「感震ブレーカ1」ともいう)である。したがって、ここでいう電路は、系統電源と複数の分岐回路7とを電気的に接続する電力線3及び3つの導電バー41~43である。
振動検出部11は、例えば3軸加速度センサを利用した感震センサであり、地震動の大きさを検出し、検出結果を演算部15に出力する。演算部15は、振動検出部11の検出結果に基づいて地震動の継続時間、及び一定期間(例えば、1週間等)における地震動の頻度(回数)を求め、地震動の大きさ、地震動の継続時間、及び地震動の頻度を記憶部12に記憶させる。
記憶部12は、データを書き換え可能なメモリであって、特に不揮発性メモリであることが好ましい。記憶部12には、地震動についての履歴情報として、地震動の大きさ、地震動の継続時間、及び一定期間における地震動の頻度が少なくとも記憶される。本実施形態では、記憶部12は、例えば1ヶ月程度の履歴情報を記憶可能な容量を有している。そのため、記憶部12は、時間的に古い履歴情報から順番に削除するように構成されている。
判定部13及び演算部15は、プロセッサ及びメモリを有するマイクロコンピュータで構成されている。つまり、判定部13及び演算部15は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムで実現されている。そして、プロセッサが適宜のプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが判定部13及び演算部15として機能する。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。さらに、プログラムは、記憶部12に予め記録されていてもよい。
判定部13は、振動検出部11にて検出される地震動の大きさに基づいて電路を遮断するか否かを判定する判定処理を行う。判定部13は、判定処理において、振動検出部11にて検出された地震動の大きさが閾値以上であれば電路を遮断すべきと判定し、地震動の大きさが閾値よりも小さければ電路を遮断すべきでないと判定する。言い換えると、判定部13は、判定処理において、地震動の大きさと閾値との大小関係に応じて電路を遮断するか否かを判定する。そして、判定部13は、判定処理において電路を遮断すべきと判定した場合には、電路を遮断するための遮断信号を遮断部14に出力する。
また、判定部13は、記憶部12に記憶されている履歴情報に基づいて、判定処理において振動検出部11にて検出される地震動の大きさと比較するための閾値を変更するように構成されている。言い換えると、判定部13は、記憶部12に記憶されている履歴情報に基づいて判定処理の感度(以下、「感度」という)を変更するように構成されている。ここで、閾値と感度との関係は、閾値が大きくなると感度は下がり、閾値が小さくなると感度は上がる。すなわち、感度を上げる場合には閾値を小さくし、感度を下げる場合には閾値を大きくすることになる。
判定部13は、例えば、履歴情報として記憶部12に記憶されている地震動の大きさが閾値以上であれば、閾値を小さくすることで感度を上げる。一方、判定部13は、記憶部12に記憶されている履歴情報から、一定期間において地震が発生していない場合には、閾値を大きくすることで感度を下げる。なお、詳細については、「(3)判定部の感度変更処理」の欄で詳しく説明する。
演算部15は、上述のように、振動検出部11の検出結果に基づいて、地震動の継続時間、及び一定期間における地震動の頻度(回数)を求める。そして、演算部15は、地震動の履歴情報として、地震動の大きさ、地震動の継続時間、及び一定期間における地震動の頻度を記憶部12に記憶させる。また、演算部15は、振動検出部11にて検出される地震動の大きさに基づいて地震動による振動エネルギE1(図3参照)を演算する機能を有している。演算部15は、例えば地震動の大きさと地震動の継続時間とをもとに振動エネルギE1を演算し、演算結果を記憶部12に記憶させる。振動エネルギE1については、履歴情報に含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。また、演算部15は、振動エネルギE1を演算してもよいし、演算しなくてもよい。
接点部16は、第1電圧線31と導電バー41との間、第2電圧線32と導電バー42との間、及び中性線33と導電バー43との間にそれぞれ挿入された3つの接点を有し、遮断部14からの開信号によって3つの接点を開くように構成されている。また、接点部16は、主幹ブレーカ1の筐体の前面側に設けられたハンドルを操作することによっても3つの接点が開閉するように構成されている。
遮断部14は、判定部13から出力される遮断信号に応じて接点部16を開く開信号を生成し、生成した開信号を接点部16に出力する。言い換えると、遮断部14は、判定部13の判定結果に応じて電路を遮断する機能を有する。
本実施形態では、振動検出部11、記憶部12、判定部13、遮断部14、演算部15及び接点部16は、図1に示すように、主幹ブレーカ1の筐体20内に収納されている。言い換えると、感震遮断システム10は、筐体20内に収納されている。
なお、振動検出部11、記憶部12、判定部13、遮断部14及び演算部15の動作電源については、主幹ブレーカ1の一次側から供給されるようになっていてもよいし、主幹ブレーカ1の二次側から供給されるようになっていてもよい。
(2.2)分電盤
次に、分電盤8の構成について説明する。
分電盤8は、図1に示すように、電力線3に電気的に接続される主幹ブレーカ(感震ブレーカ)1と、主幹ブレーカ1の二次側端子に電気的に接続される複数の分岐ブレーカ2とをキャビネット80内に備えている。言い換えると、分電盤8は、感震遮断システム10(感震ブレーカ1)と、感震遮断システム10を収納するキャビネット80と、を備えている。
主幹ブレーカ1の一次側端子は、3線式(第1電圧線31、第2電圧線32、及び中性線33)の電力線3を介して、系統電源(例えば、商用電源)に電気的に接続されている。主幹ブレーカ1の二次側端子には、3つの導電バー41~43が接続されている。導電バー41は第1電圧線(L1)31に電気的に接続され、導電バー42は第2電圧線(L2)32に電気的に接続され、導電バー43は中性線(N)33に電気的に接続される。
複数の分岐ブレーカ2のうち、3つの導電バー41~43よりも上側の分岐ブレーカ2(以下、「第1群の分岐ブレーカ2」ともいう)は、L1の導電バー41とNの導電バー43とに電気的に接続されている。また、複数の分岐ブレーカ2のうち、3つの導電バー41~43よりも下側の分岐ブレーカ2(以下、「第2群の分岐ブレーカ2」ともいう)は、L2の導電バー42とNの導電バー43とに電気的に接続されている。これにより、第1群の分岐ブレーカ2は、第1電圧線(L1)31と中性線(N)33とに電気的に接続され、第2群の分岐ブレーカ2は、第2電圧線(L2)32と中性線(N)33とに電気的に接続される。
複数の分岐ブレーカ2の各々には、給電線61,62を介して負荷5が電気的に接続されている。図1では、各分岐ブレーカ2に電気的に接続されている負荷5が1つの場合を例示しているが、2つ以上の負荷5が各分岐ブレーカ2に電気的に接続されていてもよい。複数の分岐ブレーカ2の各々は、負荷5と共に分岐回路7を構成する。言い換えると、複数の分岐回路7の各々は、分岐ブレーカ2と、分岐ブレーカ2に電気的に接続され、分岐ブレーカ2を介して電力が供給される少なくとも1つの負荷5と、を有している。負荷5は、電気機器(照明器具、調理家電等)と、配線器具(アウトレット、壁スイッチ等)とのいずれかである。
(3)判定部の感度変更処理
次に、判定部13が判定処理の感度(閾値)を変更する感度変更処理について、図2を参照して説明する。なお、以下では、履歴情報に含まれている地震動の大きさに基づいて感度(閾値)を変更する場合を例として説明する。
判定部13は、地震動についての履歴情報を記憶部12から取得する(ステップS1)。判定部13は、記憶部12より取得した履歴情報から、一定期間(例えば、1週間等)において地震が起こっているか否かを判定する(ステップS2)。判定部13は、一定期間において地震が起こっている場合には(ステップS2のYes)、この地震による地震動の大きさ(震度)と閾値(例えば、震度5)とを比較する(ステップS3)。そして、判定部13は、地震動の大きさが閾値以上であれば(ステップS3のYes)、今後発生する可能性がある余震等に備えて、例えば震度5から震度4に閾値を下げる。言い換えると、判定部13は、地震動の大きさが閾値以上であれば、判定処理の感度を上げる(ステップS4)。また、判定部13は、地震動の大きさが閾値よりも小さければ(ステップS3のNo)、閾値を変更しない。言い換えると、判定部13は、地震動の大きさが閾値よりも小さければ、感度を維持する(ステップS5)。ここで、判定部13は、一定期間において複数回の地震が発生している場合、地震動の大きさが閾値以上である地震が1回でも発生していれば、感度を上げる。
一方、判定部13は、記憶部12より取得した履歴情報から、一定期間において地震が発生していなければ(ステップS2のNo)、閾値を上げる。言い換えると、判定部13は、一定期間において地震が発生していなければ、感度を下げる(ステップS6)。例えば、判定部13は、現在の閾値が震度4であれば、震度4から震度5に閾値を変更する(上げる)。
このように、本実施形態に係る感震遮断システム10(感震ブレーカ1)によれば、記憶部12に記憶されている履歴情報(ここでは地震動の大きさ)に基づいて、判定処理の感度を変更することができる。したがって、例えば本震が起こった後に感度を上げる(閾値を下げる)ことで、本震よりも小さい地震動の余震であっても電路を遮断することができる。言い換えると、本実施形態に係る感震遮断システム10(感震ブレーカ1)によれば、判定処理の感度が一定である場合と比較して安全性を高めることができる。
また、本実施形態に係る感震遮断システム10(感震ブレーカ1)によれば、一定期間(例えば、1週間等)において地震が発生していない場合には、判定処理の感度を下げている(閾値を上げている)。言い換えると、判定部13は、所定条件を満たしている場合に、感度を変更前の状態に戻す(下げる)ように構成されている。これにより、小さい地震動の地震によって電路が遮断されにくくなるという利点がある。ここに、変更前の状態とは、現時点での感度の1つ前の状態であってもよいし、初期状態(例えば、工場出荷時の状態)であってもよい。
また、例えば本震の後に余震が続くような状況では、余震が起こるたびに電路が遮断されるため、利便性が低下する可能性がある。そのため、判定部13は、本震の後に余震が続くような状況では、感度の上げ幅を小さくしたり、感度を維持するように構成されていることが好ましい。これにより、本震の後に余震が続くような状況において、安全性を高めながらも利便性を向上することができる。
(4)変形例
上述の実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
(4.1)第1変形例
第1変形例に係る感震遮断システム10の動作について、図3を参照して説明する。上述の実施形態では、判定部13は、一定期間において発生した地震動の大きさに応じて、判定処理の感度(閾値)を変更するように構成されている。これに対して、第1変形例では、判定部13は、演算部15にて演算される振動エネルギE1の積算値に応じて、感度を変更するように構成されている。以下、第1変形例に係る判定部13の感度変更処理について、図3を参照して具体的に説明する。
図3は、所定期間T1(例えば、1週間等)において発生した3回の地震による振動エネルギE1の積算値を表したグラフである。図3におけるEthは、地震動による振動エネルギE1の積算値と比較するための比較値であり、判定部13は、この比較値Ethと振動エネルギE1の積算値との大小関係に応じて、感度を変更するように構成されている。
所定期間T1における1回目の地震による振動エネルギE1はE11であり、比較値Ethよりも小さい。したがって、判定部13は、1回目の地震後においては感度(閾値)を変更しない。所定期間T1における2回の地震による振動エネルギE1の積算値はE12であり、この場合も比較値Ethよりも小さい。したがって、判定部13は、2回目の地震後においても感度(閾値)を変更しない。所定期間T1における3回の地震による振動エネルギE1の積算値はE13であり、比較値Ethよりも大きい。したがって、判定部13は、3回目の地震後において、3回目の地震後に起こり得る余震等に備えて、感度を上げる(閾値を下げる)。
このように、第1変形例の感震遮断システム10によれば、所定期間T1における振動エネルギE1の積算値に応じて感度を変更するので、上述の実施形態と同様に、本震よりも小さい地震動の余震であっても電路を遮断することができる。言い換えると、第1変形例の感震遮断システム10によれば、判定処理の感度が一定である場合と比較して安全性を高めることができる。また、建物100等のダメージは地震動による振動エネルギE1の大きさに依存することから、地震動の大きさ等に応じて感度を変更する場合と比較して、より正確に感度を変更することができる。
(4.2)第2変形例
第2変形例に係る感震遮断システム10について、図4を参照して説明する。上述の実施形態及び第1変形例では、感震遮断システム10が感震ブレーカ1である場合を例として説明したが、感震遮断システム10は感震コンセント9であってもよい。例えば、図4に示すように、複数の分岐ブレーカ2のうちいずれかの分岐ブレーカ2に感震コンセント9が電気的に接続されている場合には、感震コンセント9を介して分岐ブレーカ2に電気的に接続されている電気機器への電路のみを遮断することができる。以下、第2変形例の感震遮断システム10(感震コンセント9)について、図4を参照して具体的に説明する。
感震コンセント9は、図4に示すように、振動検出部91と、記憶部92と、判定部93と、遮断部94と、演算部95と、接点部96と、を備えている。なお、振動検出部91、記憶部92、判定部93、遮断部94、演算部95及び接点部96は、それぞれ、上述の実施形態にて説明した振動検出部11、記憶部12、判定部13、遮断部14、演算部15及び接点16と同様であり、ここでは詳細な説明を省略する。第2変形例では、振動検出部91、記憶部92、判定部93、遮断部94、演算部95及び接点部96は、図4に示すように、感震コンセント9の筐体90内に収納されている。言い換えると、感震遮断システム10は、筐体90内に収納されている。
図4に示す例では、分岐ブレーカ2に対して、感震コンセント9と並列に複数(図示例では2つ)の負荷5が電気的に接続されている。この場合、地震によって感震コンセント9が機能した場合でも、複数の負荷5への電路は遮断されず、感震コンセント9を介して分岐ブレーカ2に電気的に接続されている電気機器への電路のみが遮断されることになる。したがって、この場合には、例えば冷蔵庫、照明器具等のように地震後においても電源を確保すべき電気機器については、負荷5のように、分岐ブレーカ2に対して直接接続することで、地震後においても継続して動作させることができる。
(4.3)その他の変形例
以下、その他の変形例について列挙する。
例えば、図1に示すように、感震遮断システム10が、建物100内の人の存否を検出する人検出部17を備えている場合には、判定部13は、人検出部17の検出結果に応じて判定処理の感度(閾値)を変更するように構成されていてもよい。人検出部17は、例えば、赤外線、超音波、可視光等を用いた人感センサである。判定部13は、人検出部17にて人が検出されない状況では、電路を遮断しても利便性は低下しないため、安全性を考慮して感度を上げる(閾値を下げる)ことが好ましい。また、判定部13は、人検出部17にて人が検出されている状況では、安全性を高めながらも利便性を向上することができるように、感度の上げ幅を小さくしたり、感度を維持したりすることが好ましい。この構成によれば、建物100内の人の存否(在宅状況)に応じて感度を調整することができる。
また、人検出部17は、人感センサのように直接的に人の存否を検出するだけでなく、例えば分電盤8に対してHEMS(Home Energy Management System)が接続されている場合には、HEMSから人の存否情報を取得するように構成されていてもよい。HEMSでは、建物100内の消費(使用)電力量を計測しており、この消費電力量から建物100内における人の存否を判定することができる。例えば、建物100内に人が居る場合には電力が消費されるため、消費電力量が所定値以上となっていれば、建物100内に人が居ると判定することができる。また、HEMSにて計測される分岐電流から、人の存否情報を取得したり、各部屋の家電機器の動作を判別することもできる。ここに、本実施形態では、HEMSにより電力計測システムが構成されている。
また、振動検出部11、記憶部12、判定部13及び演算部15(感震機能)については、本実施形態のように、遮断部14及び接点部16(遮断機能)と一体に構成されていてもよいし、別体に構成されていてもよい。
本実施形態では、分電盤8が、商用電源からの交流電力を複数の分岐回路7に分配する場合を例として説明したが、複数の分岐回路7に分配する電力は交流電力に限らず、直流電力であってもよい。また、本実施形態では、配電方式が単相3線式である場合を例として説明したが、配電方式は単相3線式に限らず、例えば単相2線式であってもよいし、三相3線式であってもよい。
本実施形態では、遮断部14は、判定部13の判定結果に応じて主幹ブレーカ1の接点部16を開くように構成されている。これに対して、遮断部14は、判定部13の判定結果に応じて複数の分岐ブレーカ2の各々の接点部を開くように構成されていてもよい。この場合、遮断部14は、複数の分岐ブレーカ2を個別に遮断するように構成されていることが好ましい。また、判定部13は、複数の分岐ブレーカ2と一対一に対応付けられている複数の感度を有し、複数の感度を個別に変更するように構成されていることが好ましい。
遮断部14が主幹ブレーカ1の接点部16を開くように構成されている場合、接点部16が開かれることですべての分岐ブレーカ2への給電が遮断されることになる。そのため、冷蔵庫、照明器具等のように地震後においても電源を確保すべき電気機器が接続される分岐ブレーカ2(以下、「対象ブレーカ2」ともいう)への給電も遮断されることになり、電源を確保することができない。
これに対して、遮断部14が複数の分岐ブレーカ2を個別に遮断するように構成されている場合、対象ブレーカ2への給電を確保しながら、対象ブレーカ2を除いた残りの分岐ブレーカ2への給電を遮断することができる。この場合、判定部13は、対象ブレーカ2に対応付けられている感度を、対象ブレーカ2を除いた残りの分岐ブレーカ2に対応付けられている感度よりも低くする。
この構成によれば、複数の分岐ブレーカ2と複数の感度とが一対一に対応付けられているので、分岐ブレーカ2(分岐回路7)ごとに電路を遮断することができる。
また、遮断部14が複数の分岐ブレーカ2を遮断する場合でも、複数の分岐ブレーカ2に対して1つの感度が対応付けられていてもよい。この場合には、複数の分岐ブレーカ2を一括で遮断することができる。
本実施形態では、一定期間が1週間である場合を例として説明したが、一定期間は1週間に限らず、1日、1ヶ月等、任意の期間に設定することができる。また、第1変形例に係る所定期間T1についても一例であり、所定期間T1は、1日、1ヶ月等、任意の期間に設定することができる。
本実施形態では、判定部13は、履歴情報として記憶部12に記憶されている地震動の大きさに基づいて感度を変更する場合を例として説明した。これに対して、判定部13は、履歴情報として記憶部12に記憶されている地震動の継続時間又は地震動の頻度に基づいて感度を変更するように構成されていてもよい。例えば、判定部13が地震動の継続時間に基づいて感度を変更する場合、地震動の継続時間が長くなるほど次の地震による危険度が高まるため、判定部13は、地震動の継続時間が長くなるほど感度を上げるように構成されていることが好ましい。また、判定部13が地震動の頻度に基づいて感度を変更する場合、地震動の頻度が高くなるほど次の地震による危険度が高くなるため、判定部13は、地震動の頻度が高くなるほど感度を上げるように構成されていることが好ましい。
また、判定部13は、地震動の大きさ、地震動の継続時間、及び地震動の頻度を組み合わせて感度を変更するように構成されていてもよい。
また、判定処理の感度を変更前の状態に戻すための所定条件は、例えば利用者(住居人)による手動操作であってもよい。言い換えると、判定部13は、利用者による所定の手動操作が行われると、感度を変更前の状態に戻す(下げる)ように構成されていてもよい。例えば、感度を戻すための押スイッチが主幹ブレーカ1に設けられている場合、この押スイッチを利用者が押すことによって感度を戻すことができる。この構成によれば、利用者の意思によって感度を戻すことができる。
また、感震遮断システム10は、系統電源の停電時において、振動検出部11、記憶部12、判定部13及び演算部15を動作させることができるように、電池を備えていることが好ましい。これにより、系統電源の停電時においても、振動検出部11にて地震動の大きさを検出することができ、さらに地震動についての履歴情報についても記憶部12に記憶させることができる。したがって、判定部13は、系統電源の停電時に記憶部12に記憶される履歴情報も考慮して、判定処理の感度を変更することができる。
また、感震遮断システム10の各部の動作電源を主幹ブレーカ1の一次側から供給するように構成されている場合には、主幹ブレーカ1が遮断した状態であっても、感震遮断システム10の各部を動作させることができる。そのため、主幹ブレーカ1が遮断した状態でも、振動検出部11にて地震動の大きさを検出することができ、さらに地震動についての履歴情報についても記憶部12に記憶させることができる。したがって、判定部13は、主幹ブレーカ1の遮断時に記憶部12に記憶される履歴情報も考慮して、判定処理の感度を変更することができる。
また、判定部13が判定処理の感度を変更する際に、例えば建物100の築年数等を組み合わせてもよく、これにより余震等に対してより安全性を高めることができる。
また、感震遮断システム10は、判定処理の感度、余震の有無等を表示するための表示部を備えていてもよい。一例として、表示部は、複数のLEDを有し、複数のLEDのうち点灯させるLEDの数によって感度を表示する。また、表示部は、本震時において少なくとも1つのLEDを点灯させ、余震時において少なくとも1つのLEDを点滅させる。このように、感震遮断システム10に表示部を設けることで、現在の感度、現在起こっている地震等について利用者(住居人)に知らせることができる。
また、建物100は戸建て住宅に限らず、マンション等の集合住宅の各住戸であってもよいし、工場、病院、オフィスビル等の非住宅であってもよい。
また、本実施形態では、判定部13は、一定期間において複数回の地震が発生している場合、地震動の大きさが閾値以上である地震が1回でも発生していれば判定処理の感度を上げる場合を例として説明した。これに対して、判定部13は、一定期間において複数回の地震が発生している場合、地震動の大きさが閾値以上である地震の回数が所定回数以上であれば感度を上げるように構成されていてもよい。また、判定部13は、一定期間において複数回の地震が発生している場合、複数回の地震のうち地震動の大きさが閾値以上である地震の割合が所定値以上であれば感度を上げるように構成されていてもよい。
また、記憶部12に記憶される履歴情報は、地震動についての情報であればよく、地震動の大きさ、地震動の継続時間、及び地震動の頻度以外の情報であってもよい。
また、振動エネルギE1の積算値に応じて判定処理の感度を変更する第1変形例において、地震が発生していない期間では時間の経過と共に振動エネルギE1の積算値を減少させるように構成されていてもよい。
(まとめ)
以上述べた実施形態から明らかなように、第1の態様に係る感震遮断システム(10)は、振動検出部(11,91)と、記憶部(12,92)と、判定部(13,93)と、遮断部(14,94)と、を備える。振動検出部(11,91)は、地震動の大きさを検出する。記憶部(12,92)は、振動検出部(11,91)の検出結果に基づく地震動についての履歴情報を記憶する。判定部(13,93)は、振動検出部(11,91)にて検出される地震動の大きさに基づいて電路を遮断するか否かを判定する判定処理を行う。遮断部(14,94)は、判定部(13,93)の判定結果に応じて電路を遮断する。判定部(13,93)は、記憶部(12,92)に記憶されている履歴情報に基づいて判定処理の感度を変更するように構成されている。
第1の態様によれば、記憶部(12,92)に記憶されている履歴情報に基づいて判定処理の感度を変更するので、例えば本震の後に感度を上げることで、本震よりも小さい地震動の余震であっても電路を遮断することができる。言い換えると、第1の態様によれば、判定処理の感度が一定である場合と比較して安全性を高めることができる。
第2の態様に係る感震遮断システム(10)では、第1の態様において、判定部(13,93)は、地震動の大きさ、地震動の継続時間、及び地震動の頻度のうち少なくとも1つに基づいて感度を変更するように構成されている。地震動の大きさ、地震動の継続時間、及び地震動の頻度は、履歴情報として記憶部(12,92)に記憶されている。
第2の態様によれば、地震動の大きさ、地震動の継続時間、及び地震動の頻度のうち少なくとも1つに基づいて判定処理の感度を変更することができる。また、振動検出部(11,91)の検出結果から比較的算出しやすいパラメータであるため、演算部(15,95)の処理負担を低減することもできる。
第3の態様に係る感震遮断システム(10)では、第1又は2の態様において、判定部(13,93)は、所定条件を満たしている場合に、感度を変更前の状態に戻すように構成されている。
第3の態様によれば、例えば一定期間において地震が起こっていない場合に判定処理の感度を戻す(下げる)ことで、小さい地震動の地震によって電路が遮断されにくくなるという利点がある。
第4の態様に係る感震遮断システム(10)では、第1~3のいずれかの態様において、判定部(13,93)は、履歴情報に基づいて感度を上げるように構成されている。
第4の態様によれば、履歴情報に基づいて判定処理の感度を上げることで、本震の後に余震が起こるような状況において、本震よりも小さい地震動の余震であっても電路を遮断することができる。
第5の態様に係る感震遮断システム(10)では、第1~4のいずれかの態様において、振動検出部(11,91)は、遮断部(14,94)にて電路を遮断した後においても地震動の大きさを検出するように構成されている。記憶部(12,92)は、遮断部(14,94)にて電路を遮断した後においても履歴情報を記憶するように構成されている。
第5の態様によれば、電路を遮断した後においても振動検出部(11,91)にて地震動の大きさを検出し、かつ記憶部(12,92)にて履歴情報を記憶している。そのため、判定部(13,93)は、電路が遮断されている間に記憶部(12,92)に記憶されている履歴情報も考慮したうえで、判定処理の感度を変更することができる。
第6の態様に係る感震遮断システム(10)は、第1~5のいずれかの態様において、地震動による振動エネルギ(E1)を演算する演算部(15,95)を更に備える。判定部(13,93)は、所定期間における演算部(15,95)の演算結果である振動エネルギ(E1)の積算値に応じて感度を変更するように構成されている。
第6の態様によれば、所定期間における振動エネルギ(E1)の積算値、言い換えると所定期間において建物等が受けたダメージに応じて判定処理の感度を変更することができる。
第7の態様に係る感震遮断システム(10)は、第1~6のいずれかの態様において、電力線(3)に電気的に接続され、電力線(3)からの電力を複数の分岐回路(7)に分配する分電盤(8)に用いられる。複数の分岐回路(7)の各々は、分岐ブレーカ(2)と、分岐ブレーカ(2)に電気的に接続され、分岐ブレーカ(2)を介して電力が供給される少なくとも1つの負荷(5)と、を有する。電路は、複数の分岐回路(7)の各々における分岐ブレーカ(2)から少なくとも1つの負荷(5)への給電線(61,62)である。遮断部(14,94)は、複数の分岐ブレーカ(2)を個別に遮断するように構成されている。判定部(13,93)は、複数の分岐ブレーカ(2)と一対一に対応付けられた複数の感度を個別に変更するように構成されている。
第7の態様によれば、複数の分岐ブレーカ(2)と複数の感度とが一対一に対応付けられているので、分岐回路(7)ごとに電路を遮断することができる。
第8の態様に係る感震遮断システム(10)は、第1~7のいずれかの態様において、建物(100)内の人の存否を検出する人検出部(17)を更に備える。判定部(13、93)は、人検出部(17)の検出結果に応じて感度を変更するように構成されている。
第8の態様によれば、例えば建物(100)内に人が居る状況では、判定処理の感度を維持したり、感度の上げ幅を小さくしたりすることで、安全性を高めながらも利便性を向上させることができる。
第9の態様に係る感震遮断システム(10)では、第1~7のいずれかの態様において、判定部(13、93)は、建物(100)で消費される電力を計測する電力計測システム(HEMS)の計測結果に応じて感度を変更するように構成されている。
第9の態様によれば、電力計測システムの計測結果に応じて感度を変更することができる。
第10の態様に係る感震ブレーカ(1)は、第1~9のいずれかの態様の感震遮断システム(10)と、感震遮断システム(10)を収納する筐体(20)と、を備える。
第10の態様によれば、記憶部(12)に記憶されている履歴情報に基づいて判定処理の感度を変更するので、例えば本震の後に感度を上げることで、本震よりも小さい地震動の余震であっても電路を遮断することができる。言い換えると、第10の態様によれば、判定処理の感度が一定である場合と比較して安全性を高めることができる。
第11の態様に係る感震コンセント(9)は、第1~9のいずれかの態様の感震遮断システム(10)と、感震遮断システム(10)を収納する筐体(90)と、を備える。
第11の態様によれば、記憶部(92)に記憶されている履歴情報に基づいて判定処理の感度を変更するので、例えば本震の後に感度を上げることで、本震よりも小さい地震動の余震であっても電路を遮断することができる。言い換えると、第11の態様によれば、判定処理の感度が一定である場合と比較して安全性を高めることができる。
第12の態様に係る分電盤(8)は、第1~9のいずれかの態様の感震遮断システム(10)と、感震遮断システム(10)を収納するキャビネット(80)と、を備える。
第12の態様によれば、記憶部(12,92)に記憶されている履歴情報に基づいて判定処理の感度を変更するので、例えば本震の後に感度を上げることで、本震よりも小さい地震動の余震であっても電路を遮断することができる。言い換えると、第12の態様によれば、判定処理の感度が一定である場合と比較して安全性を高めることができる。
第2~9の態様に係る構成については、感震遮断システム(10)の必須の構成ではなく、適宜省略可能である。