(実施形態1)
本実施形態に係る分電盤用キャビネット10は、図2および図3に示すように、キャビネット本体11と、キャビネット本体11に固定され、主幹ブレーカ2から複数の分岐ブレーカ3,3…への電力の経路を形成する導電バー41,42,43とを備えている。
ここでは、配電方式として単相三線式を想定しているので、導電バー41,42,43としては、第1の電圧極(L1相)の導電バー41と、第2の電圧極(L2相)の導電バー42と、中性極(N相)の導電バー43との計3本が設けられている。以下、3本の導電バー41,42,43のうち、着目する第1および第2の電圧極の導電バー41,42をとくに「導電バー」、中性極の導電バー43を「中性極バー」として区別することもある。
第1の電圧極の導電バー41は、図1に示すように、導電バー41の長手方向に並ぶ複数の接続端子411,411…を導電バー41の短手方向の一端部に有している。導電バー41の長手方向の一端部には主幹ブレーカ2が電気的に接続可能であり、且つ複数の接続端子411,411…の各々には複数の分岐ブレーカ3,3…の各々が電気的に接続可能である。
導電バー41は、導電バー41の短手方向に並ぶ第1レーン412と第2レーン413とを含んでいる。第1レーン412および第2レーン413は、複数の接続端子411,411…側から第1レーン412、第2レーン413の順に並んでいる。第1レーン412は、導電バー41の長手方向に流れる電流に対する電気抵抗が第2レーン413より高くなるように構成されている。
第2の電圧極の導電バー42についても、第1の電圧極の導電バー41と同様に、導電バー42の長手方向に並ぶ複数の接続端子421,421…を導電バー42の短手方向の一端部に有している。導電バー42の長手方向の一端部には主幹ブレーカ2が電気的に接続可能であり、且つ複数の接続端子421,421…の各々には複数の分岐ブレーカ3,3…の各々が電気的に接続可能である。
導電バー42は、導電バー42の短手方向に並ぶ第1レーン422と第2レーン423とを含んでいる。第1レーン422および第2レーン423は、複数の接続端子421,421…側から第1レーン422、第2レーン423の順に並んでいる。第1レーン422は、導電バー42の長手方向に流れる電流に対する電気抵抗が第2レーン423より高くなるように構成されている。
すなわち、本実施形態に係る分電盤用キャビネット10は、導電バー41(42)がその短手方向に並ぶ第1レーン412(422)と第2レーン413(423)とを含んでいる。第1レーン412(422)および第2レーン413(423)のうち接続端子411,411…(421,421…)側となる第1レーン412(422)は、長手方向に流れる電流に対する電気抵抗が、第2レーン413(423)よりも高い。
以下、本実施形態に係る分電盤用キャビネット10、およびそれを用いた分電盤1について詳しく説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
なお、本実施形態では、分電盤1が設置される電力の需要家(customer’s facility)が、戸建住宅である場合を例に説明するが、この例に限らず、需要家はたとえば集合住宅の各住戸、事務所、店舗、工場などであってもよい。また、以下では、分電盤1が壁に取り付けられた状態での上下左右(図2の上下左右)を上下左右とし、壁に直交する方向(図2の紙面に直交する方向)を前後方向として説明するが、分電盤1を取り付ける向きを限定する趣旨ではない。
<基本構成>
本実施形態に係る分電盤1は、図2に示すように、分電盤用キャビネット10と、分電盤用キャビネット10に取り付けられる分電盤用内器(以下、単に「内器」という)とを備えている。内器は、少なくとも主幹ブレーカ2および複数の分岐ブレーカ3,3…を含んでおり、本実施形態ではさらに電流計測器5(図3参照)、計測ユニット6、第1通信アダプタ71、第2通信アダプタ72、第3通信アダプタ73、二次連系ブレーカ8を含んでいる。また、分電盤用キャビネット10は、図2に示す内器以外にも、たとえば一次連系ブレーカ(図示せず)などの内器を取り付けるスペースを有している。
まず、分電盤用キャビネット10の基本構成について説明する。
分電盤用キャビネット10は、図2に示すように、正面視が横長の長方形状となり前面が開口した箱状に形成されており、住宅の壁等に取り付けて使用されるキャビネット本体11を備えている。ここでは、キャビネット本体11には、前面の開口を塞ぐ位置と開放する位置との間で開閉可能な外蓋(図示せず)が取り付けられる。
さらに、キャビネット本体11において外蓋の内側には、キャビネット本体11の前面の開口を塞ぐように内蓋(図示せず)が取り付けられる。この内蓋には、少なくとも主幹ブレーカ2および複数の分岐ブレーカ3,3…の一部を前方に露出させる窓孔(図示せず)が形成されている。図2は、外蓋および内蓋が外された状態の分電盤1を示している。なお、外蓋および内蓋はそれぞれ、分電盤用キャビネット10に含まれていてもよいし、分電盤用キャビネット10に含まれていなくてもよい。
キャビネット本体11は、合成樹脂製であって矩形枠状に形成された枠体110と、枠体110の開口部の上下方向における両側間に架け渡された桟部111〜114とを有している。これら4本の桟部111〜114は、右側から順に桟部111,112,113,114の順に並んでおり、桟部112と桟部113は一体に形成されている。この構成では、キャビネット本体11は、枠体110の開口部によって、前後方向に貫通する孔が後壁に形成されており、この孔を通して背面から内部に配線を引き込むことが可能である。
さらに、キャビネット本体11は、一対の桟部111,112に跨って取り付けられた支持板12およびベース台13(図3参照)を有している。支持板12は、たとえばブリキ(スズめっきされた鉄)などの磁性材料にて形成されている。支持板12は、左右方向の両端部が一対の桟部111,112にねじ止めされることによって固定されている。ベース台13は、たとえば合成樹脂などの非磁性材料からなり、支持板12の厚み方向の一面である前面に取り付けられている。なお、支持板12はブリキに限らず、たとえば亜鉛めっき鋼板(SGCC)を用いて構成されていてもよい。
キャビネット本体11は、ブレーカ等の種々の内器を取り付けるためのスペースを備えている。本実施形態では、キャビネット本体11は、主幹ブレーカ2が配置される第1スペースを一対の桟部112,113間に備えている。さらにキャビネット本体11は、複数の分岐ブレーカ3,3…が配置される第2スペース、および電流計測器5が配置される第3スペースをベース台13に備えている。
ここでは、第1スペースは、キャビネット本体11前面の中心よりも左寄り、且つ下寄りの位置に設けられている。キャビネット本体11は、第1スペースの上方、下方、左方、右方には、それぞれ十分なスペースを確保している。第2スペースおよび第3スペースは、第1スペースの右側に設けられている。詳しくは後述するが、複数の分岐ブレーカ3,3…は中性極バー43の上側と下側とに分かれて、それぞれ複数個(図2の例では11個)ずつ左右方向に並ぶように配置される。そのため、複数の分岐ブレーカ3,3…を取り付けるための第2スペースは、キャビネット本体11における第1スペースの右側であって、中性極バー43の上側と下側とにそれぞれ設けられることになる。電流計測器5を取り付けるための第3スペースは、中性極バー43の後方に設けられる。
このキャビネット本体11は、後述する一次連系ブレーカ(図示せず)が配置される第4スペースを一対の桟部113,114間に備えている。また、キャビネット本体11は、後述する計測ユニット6が配置される第5スペースを第1スペースの下方に備えている。さらに、キャビネット本体11は、後述する第1通信アダプタ71、第2通信アダプタ72、第3通信アダプタ73が配置される第6スペースを桟部114の左方に備えている。
このように、本実施形態の分電盤用キャビネット10は、第3〜第6スペースをキャビネット本体11に備えることにより、主幹ブレーカ2および複数の分岐ブレーカ3,3…以外の種々の内器を付加的に取り付け(後付け)可能である。ただし、キャビネット本体11は、最小限の構成として主幹ブレーカ2が取り付けられる第1スペース、および複数の分岐ブレーカ3,3…が取り付けられる第2スペースを備えていればよく、その他のスペースは適宜省略されていてもよい。
ところで、分電盤用キャビネット10は、図3に示すように、第1の電圧極の導電バー41、第2の電圧極の導電バー42、中性極の導電バー(中性極バー)43をさらに備えている。これら3本の導電バー41,42,43は、それぞれベース台13に取り付けられることによって、キャビネット本体11に固定されている。
より詳細には、ベース台13は、支持板12に取り付けられた背板131と、背板131の前面における左右方向の両端部からそれぞれ前方に突出した一対の支柱132,132(右側の支柱は図4参照)とを有している。一対の支柱132,132は、背板131の前面における上下方向の中央部に配置されている。
さらに、ベース台13は、図4に示すように、背板131の前面の左右方向に沿った中心線から前方に突出した隔壁133と、一対の支柱132,132の間の空間を左右方向において等間隔で仕切る複数の仕切り134,134…とを有している。なお、本実施形態ではベース台13は左右方向において複数(ここでは4つ)に分割可能に構成されているが、この構成に限らず、ベース台13は一体に形成されていてもよい。
中性極バー43は、導電性を有する金属板にて、左右方向に長い長尺板状に形成されており、一対の支柱132,132間に架け渡されるように、左右方向の各端部がそれぞれ支柱132の先端部(前端部)に固定される。ここで、隔壁133は、背板131の前面からの突出高さが支柱132,132および仕切り134,134…に比べて低く、中性極バー43と隔壁133との間には隙間が形成される。
第1の電圧極の導電バー41は、導電性を有する金属板にて形成されており、背板131の前面のうち隔壁133より上側の領域に取り付けられる。この導電バー41は、左右方向に長い長尺板状であって背板131の前面に沿って配置される(第1の)平板414と、平板414の下端縁から前方に突出した(第1の)突出片415とを有している。
ここでは、突出片415は、一対の支柱132,132の間において平板414から隔壁133に沿って前方に立ち上がるように形成されており、且つ左右方向において複数の仕切り134,134…により複数に分断されている。言い換えれば、複数に分断された突出片415,415…は、隣接する支柱132−仕切り134間、あるいは隣接する一対の仕切り134,134間にそれぞれ配置されている。
各突出片415の先端部は二股に分かれており、一方が上向きに突出する(第1の)接続端子411となり、他方が下向きに突出する(第2の)接続端子411となる。下向きに突出する接続端子411は、上向きに突出する接続端子411に比べて前方に位置しており、隔壁133と中性極バー43との間の隙間を通して隔壁133の下側へ突出する。
第2の電圧極の導電バー42は、隔壁133に対して第1の電圧極の導電バー41と略対称となる形状を採用しており、基本的な構成が第1の電圧極の導電バー41と共通している。すなわち、第2の電圧極の導電バー42は、導電性を有する金属板にて形成されており、背板131の前面のうち隔壁133より下側の領域に取り付けられる。この導電バー42は、左右方向に長い長尺板状であって背板131の前面に沿って配置される(第2の)平板424と、平板424の上端縁から前方に突出した(第2の)突出片425とを有している。
突出片425は、左右方向において複数の仕切り134,134…により複数に分断されている。各突出片425の先端部は二股に分かれており、一方が下向きに突出する(第3の)接続端子421となり、他方が上向きに突出する(第4の)接続端子421となる。上向きに突出する接続端子421は、下向きに突出する接続端子421に比べて前方に位置しており、隔壁133と中性極バー43との間の隙間を通して隔壁133の上側へ突出する。
上述した構成により、図5に示すように隔壁133の上側においては、3本の導電バー41,42,43は、前後方向において手前側(壁とは反対側)から中性極バー43、導電バー(接続端子421)42、導電バー(接続端子411)41の順に並ぶ。隔壁133の下側においては、3本の導電バー41,42,43は、前後方向において手前側(壁とは反対側)から中性極バー43、導電バー(接続端子411)41、導電バー(接続端子421)42の順に並ぶ。
なお、導電バー41は、導電バー41の短手方向の一端部に、導電バー41の長手方向に並ぶ複数の接続端子411,411…を有していればよく、これら複数の接続端子411,411…は互いに分離(分割)されていなくてもよい。つまり、導電バー41の短手方向の一端部は、導電バー41の長手方向に並ぶ複数の接続端子411,411…に分岐されていることは必須ではなく、分岐ブレーカ3がそれぞれ接続される接続端子411が複数あればよい。導電バー42の複数の接続端子421,421…についても同様である。
次に、分電盤1の内器(キャビネット本体11に取付可能な内器)について説明する。
主幹ブレーカ2は、その一次側端子21に、系統電源(商用電源)の単相三線式の引込線が電気的に接続される。主幹ブレーカ2の二次側端子(図示せず)には、上述した3本の導電バー41,42,43が電気的に接続される。主幹ブレーカ2は、一次側に接続された系統電源からの電力を二次側へ供給する投入状態と、該電力の供給を遮断する開放状態とを切替可能に構成されている。
複数の分岐ブレーカ3,3…は、キャビネット本体11のベース台13の前面において、隔壁133の上側と下側とに分かれて、それぞれ複数個ずつ左右方向に並ぶように配置されている。各分岐ブレーカ3は、一次側端子32(図5参照)と二次側端子(図示せず)とを有しており、一次側端子32が導電バー41,42,43に電気的に接続され、二次側端子には複数の電路(図示せず)の各々が接続される。各分岐ブレーカ3は、協約形寸法に形成されている。ここで、協約形寸法とは「JIS C 8201−2−1」に準拠した電灯分電盤用の回路遮断器の寸法(および形状)をいう。
これら複数の分岐ブレーカ3,3…の各々は、隣接する支柱132−仕切り134間、あるいは隣接する一対の仕切り134,134間にそれぞれ配置される。言い換えれば、各分岐ブレーカ3は、左右方向において仕切り134,134…にて仕切られた各スペースに1つずつ取り付けられることになる。
各分岐ブレーカ3の二次側端子に接続された電路には、たとえば照明器具や給湯設備等の機器、差込接続装置のコンセント(アウトレット)や壁スイッチ等の配線器具が負荷として1つ以上接続され、分岐回路を構成する。つまり、複数の分岐ブレーカ3,3…はそれぞれ分岐回路が電気的に接続され、主幹ブレーカ2からの電力を各分岐回路へ供給する投入状態と、該電力の供給を遮断する開放状態とを切替可能に構成されている。
各分岐ブレーカ3は、各導電バー41,42,43が差し込まれる差込口31(図5参照)を、隔壁133との対向面に有している。差込口31は、各分岐ブレーカ3において前後方向に3個ずつ設けられている。一次側端子32は、これら3個の差込口31,31,31のうち2個の差込口31,31内に露出するように設けられている。これにより、各分岐ブレーカ3は、キャビネット本体11に取り付けられた状態で、差込口31に各導電バー41,42,43が差し込まれ、いずれか一対の導電バー41,42,43に一次側端子32が電気的に接続される。なお、導電バー41に対応する差込口31には接続端子411が差し込まれ、導電バー42に対応する差込口31には接続端子421が差し込
まれる。
第1の電圧極あるいは第2の電圧極と中性極とに接続される分岐ブレーカ(以下、「100V用分岐ブレーカ」ともいう)3は、一次側端子32,32が、3個の差込口31,31,31のうち、両端の2個の差込口31,31内に露出するように設けられている。これにより、100V用分岐ブレーカ3は、隔壁133の上側に取り付けられた状態では、第1の電圧極と中性極とに対して電気的に接続され、隔壁133の下側に取り付けられた状態では、第2の電圧極と中性極とに対して電気的に接続される。
また、第1の電圧極および第2の電圧極に接続される分岐ブレーカ(以下、「200V用分岐ブレーカ」ともいう)3は、一次側端子32,32が、3個の差込口31,31,31のうち、後ろ側の2個の差込口31,31内に露出するように設けられている。これにより、200V用分岐ブレーカ3は、隔壁133の上側および下側のいずれに取り付けられた状態でも、第1の電圧極と第2の電圧極とに対して電気的に接続される。
電流計測器5は、複数の分岐ブレーカ3,3…の各々に接続された負荷(電路)の消費電力を検出するためのセンサである。電流計測器5は、ここでは一対設けられており、図3に示すように隔壁133の上側と下側とにそれぞれ取り付けられている。
隔壁133の上側に取り付けられる電流計測器5は、複数の接続端子411,411…および複数の接続端子421,421…に取り付けられ、接続端子411,411…の各々を流れる電流の値を計測する。この電流計測器5は、隔壁133の上側に取り付けられる分岐ブレーカ3、たとえば第1の電圧極−中性極間に接続された100V用分岐ブレーカ3や、第1の電圧極−第2の電圧極間に接続された200V用分岐ブレーカ3に流れる電流の値を計測する。なお、図3は電流計測器5が取り付けられた状態であって、分岐ブレーカ3が取り外された状態を表している。
隔壁133の下側に取り付けられる電流計測器5は、複数の接続端子411,411…および複数の接続端子421,421…に取り付けられ、接続端子421,421…の各々を流れる電流の値を計測する。この電流計測器5は、隔壁133の下側に取り付けられる分岐ブレーカ3、たとえば第2の電圧極−中性極間に接続された100V用分岐ブレーカ3や、第1の電圧極−第2の電圧極間に接続された200V用分岐ブレーカ3に流れる電流の値を計測する。
次に、電流計測器5の具体的な構成について図3および図4を参照して説明する。電流計測器5は、基板501(図4参照)と、基板501を収納するケース502とを有している。なお、図4では、電流計測器5は、ケース502の図示が省略され、基板501が露出した状態で図示されている。
基板501には、複数の電流センサ503,503…が実装されている。複数の電流センサ503,503…は、それぞれ複数の分岐ブレーカ3,3…の各々を流れる電流の値を計測するように構成されている。この電流計測器5には、基板501およびケース502を基板501の厚み方向に貫通する透孔504,504…が、接続端子411および接続端子421に対応する各位置にそれぞれ形成されている。これにより、電流計測器5は、複数の透孔504,504…に、複数の接続端子411,411…および複数の接続端子421,421…が差し込まれた状態で、接続端子411,411…および接続端子421,421…に取り付けられることになる。この状態で、第1の電圧極の導電バー41の各接続端子411、および第2の電圧極の導電バー42の各接続端子421は、電流計測器5の各透孔504,504…を通って分岐ブレーカ3に接続されることになる。
電流計測器5は、基板501における各透孔504の周囲にそれぞれ電流センサ503が形成されている。各電流センサ503は、変流器(カレントトランス)、ホール素子、磁気抵抗素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子、シャント抵抗などのセンサが用いられる。一例として、ここでは各電流センサ503は、コアを用いない(コアレスの)空芯コイルからなり、透孔504内を通過する電流に応じた出力を生じるロゴスキコイルである。電流計測器5は、各電流センサ503の出力に基づいて、複数の分岐ブレーカ3,3…の各々を流れる電流の値を算出する。複数の分岐ブレーカ3,3…の各々を流れる電流の値は、これら複数の分岐ブレーカ3,3…に接続された複数の電路の各々を流れる電流の値と同じである。
ただし、電流センサ503は、全ての透孔504,504…の周囲に設けられている必要はなく、本実施形態では、前後方向に並ぶ一対の透孔504,504のうち後側(壁側)の透孔504の周囲にのみ設けられている。すなわち、本実施形態では、矩形状に開口した透孔504と円形状に開口した透孔504とが前後方向に並んで形成されているが、このうち後側(壁側)となる円形状の透孔504の周囲にのみ、電流センサ503が設けられている。これにより、電流センサ503は、電流計測器5が隔壁133の上側に取り付けられたときには第1の電圧極の電流の値を計測し、隔壁133の下側に取り付けられたときには第2の電圧極の電流の値を計測することになる。
本実施形態においては、透孔504は、基板501の厚み方向に直交する平面内で円形状や矩形状に開口するように形成されているが、これらの形状に限定する趣旨ではない。つまり、各透孔504は、基板501の厚み方向に貫通していればよく、該厚み方向に直交する平面内における開口形状が、円形や矩形以外の形状であってもよく、たとえばU字状のように一方向に開放された形状であってもよい。
さらに、本実施形態では、電流計測器5は、各電流センサ503の出力を用いて、複数の電路の各々の瞬時電力を演算する演算装置505を基板501に有している。演算装置505は、複数の電路の各々の線間電圧の値を示す電圧情報を計測ユニット6から取得し、各電流センサ503の出力から求まる電流の値と、電圧情報とに基づいて、瞬時電力の値を分岐回路の電力情報として求めるように構成されている。電流計測器5は、計測ユニット6を介して第1通信アダプタ71に電気的に接続されており、計測ユニット6を通して第1通信アダプタ71へ分岐回路の電力情報を送信する。
計測ユニット6は、上述した3本の導電バー41,42,43に電気的に接続されており、導電バー41,42,43からの電力を受けて、電流計測器5や第1通信アダプタ71を含む内器の動作用電源を生成する電源回路(図示せず)を有している。さらに、計測ユニット6は、導電バー41,42,43間の電圧を計測し、計測された電圧の値を電圧情報として電流計測器5へ出力する機能を有している。
また、計測ユニット6は、電流計測器5での計測対象である分岐回路以外の特定回路について、電力を計測するように構成されている。具体的には、計測ユニット6は、カレントトランス(CT)からなる電流センサ(図示せず)が電気的に接続され、この電流センサによって、たとえば主幹ブレーカ2を通過する電流の値を計測する。そして、計測ユニット6は、計測された電流の値と、電圧情報とに基づいて、瞬時電力の値を特定回路の電力情報として求めるように構成されている。計測ユニット6は、第1通信アダプタ71と電気的に接続されており、特定回路の電力情報を第1通信アダプタ71へ送信する。
なお、電流計測器5および計測ユニット6は、本実施形態ではそれぞれ電力情報を求めるように構成されているが、この例に限らず、少なくとも各電路(分岐回路または特定回路)に流れる電流の値を計測する構成であればよい。たとえば、電流計測器5および計測ユニット6は、計測した電流値を第1通信アダプタ71へ送信する構成であってもよい。
第1通信アダプタ71は、機器(図示せず)の制御を行うコントローラ(図示せず)との通信機能を有する。ここでいう機器はHEMS(Home Energy Management System)対応機器である。HEMS対応機器は、消費電力の管理対象であれば足り、たとえば、HEMSにおいて重要な8機器(スマートメータ、太陽光発電装置、蓄電装置、燃料電池、電気自動車、エアコン、照明器具、給湯装置)などを含む。さらに、HEMS対応機器は、4大電力消費源の他の2つ、冷蔵庫、テレビ受像機などを含んでもよい。ただし、HEMS対応機器をこれらの機器に限定する趣旨ではない。
また、第1通信アダプタ71は、電流計測器5からは分岐回路の電力情報を受信し、計測ユニット6からは特定回路の電力情報を受信するように構成されている。第1通信アダプタ71は、これらの電力情報を取得することによって、複数の電路の各々の瞬時電力のデータを収集する機能を有している。さらに、第1通信アダプタ71は、複数の電路の各々について、瞬時電力を所定時間に亘って積算した電力量を演算する機能を有していてもよい。
第1通信アダプタ71は、これらの電力情報(瞬時電力あるいは電力量)をコントローラへ送信する。コントローラは、電力情報を用いて(HEMS対応)機器を制御するように構成されている。これにより、コントローラは、複数の電路の各々での消費電力に基づいて機器を制御することができる。
ここで、コントローラは、HEMSのコントローラである。HEMSのコントローラは、表示端末(図示せず)を制御して電力情報を可視化(見える化)したり、電力情報に基づいて(HEMS対応)機器を制御したりする機能を有しており、分電盤1外に設置されている。このコントローラによれば、機器での電力消費の状況を管理することが可能になり、電力の無駄な消費を抑えることができる。
コントローラは、宅内に設置されており、たとえば電波を媒体とした無線通信、あるいは有線LAN(Local Area Network)などの有線通信によって、第1通信アダプタ71と通信したり、宅内の(HEMS対応)機器を制御したりする。なお、コントローラは、インターネットなどのネットワーク(図示せず)に接続され、該ネットワークを介した通信により、第1通信アダプタ71と通信したり、宅内の(HEMS対応)機器を制御したりする構成であってもよい。
なお、第1通信アダプタ71は、上述したコントローラに相当する機能を有していてもよい。これにより、第1通信アダプタ71は、複数の電路の各々での消費電力に基づいて機器を制御することができる。
第2通信アダプタ72は、通信機能を有する電力メータ(図示せず)と通信する機能を有している。第2通信アダプタ72は、第1通信アダプタ71と機械的に結合され、且つ電気的に接続される。本実施形態では、第1通信アダプタ71と第2通信アダプタ72とは、各々の一部が前後方向に重なった状態で、基板対基板(board to board)接続によって接続されている。そのため、第1通信アダプタ71が取り付けられる第6スペースの一部は、第2通信アダプタ72の取り付けスペースを兼ねることになる。
ここでいう電力メータは、所謂スマートメータであって、需要家での使用電力量を計測し、配電線に接続されているコンセントレータ(図示せず)と通信を行うことにより遠隔検針等を可能にする。さらにまた、供給事業者である電力会社、あるいは節電事業者によって運営されているサーバから各需要家の電力メータに、電力の消費を抑制するための要請である要請情報が送信される場合がある。電力メータは、第2通信アダプタ72との通信により、計量値(使用電力量)や要請情報などを第2通信アダプタ72へ送ることができる。
第3通信アダプタ73は、ガスメータ、水道メータ、太陽光発電装置、蓄電装置、電気自動車に電気的に接続される電力変換装置の少なくとも1つからなるエネルギー管理装置(図示せず)との通信機能を有している。ここでいう電力変換装置は、分電盤1側から電気自動車への単方向充電を行うための電力変換の他、双方向に電力変換を行うことで電気自動車の蓄電池の充電と放電との両方に用いられる構成であってもよい。ただし、電力変換装置は、蓄電池との間で電力の授受を行う構成であればよく、蓄電池の充電と放電とのいずれか一方のみを行う構成であってもよい。
第3通信アダプタ73は、第1通信アダプタ71と機械的に結合され、且つ電気的に接続される。本実施形態では、第1通信アダプタ71と第3通信アダプタ73とは、各々の一部が前後方向に重なった状態で、基板対基板接続によって接続されている。そのため、第1通信アダプタ71が取り付けられる第6スペースの一部は、第3通信アダプタ73の取り付けスペースを兼ねることになる。
第1通信アダプタ71とコントローラとの間の通信方式は、たとえば920MHz帯の特定小電力無線、Zigbee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の電波を媒体とした無線通信であってもよい。さらに、第1通信アダプタ71とコントローラとの間の通信方式は、有線LANなどの有線通信であってもよい。また、第1通信アダプタ71とコントローラとの間の通信における通信プロトコルは、たとえばEthernet(登録商標)、ECHONET(登録商標)Liteなどを用いてもよい。なお、有線通信には、電力線を伝送媒体に用いて通信を行う電力線搬送通信(PLC:Power Line Communications)も含む。
同様に、第2通信アダプタ72と電力メータとの間の通信方式についても、無線通信、有線通信を問わず適宜の方式が適用可能である。さらに、第3通信アダプタ73とエネルギー管理装置との間の通信方式についても、無線通信、有線通信を問わず適宜の方式が適用可能である。
また、一次連系ブレーカ(図示せず)は、主幹ブレーカ2の一次側端子21に電気的に接続され、且つ電力系統への逆潮流が許容されている分散電源(図示せず)に電気的に接続される。この種の分散電源としては、たとえば太陽光発電装置などがある。また、太陽光発電装置と蓄電装置とが一体となり、太陽電池の発電電力を蓄電池に蓄え、蓄電池の電力を分電盤1に接続された機器へ供給するように構成された所謂、創蓄連携システムが分散電源として一次連系ブレーカに接続されてもよい。
一次連系ブレーカは、主幹ブレーカ2の一次側と、分散電源との間に電気的に接続されることになる。これにより、一次連系ブレーカは、たとえば系統電源からの電力供給が停止したときや、系統電源あるいは分散電源に異常が生じたときなどに、分散電源を電力系統から切り離す(解列する)ように動作する。一次連系ブレーカは、一次側端子(図示せず)と二次側端子(図示せず)とを有しており、一次側端子が主幹ブレーカ2の一次側端子21に電気的に接続され、二次側端子に分散電源が接続される。一次連系ブレーカは、3P3E(極数3、素子数3)で、左右方向の寸法が分岐ブレーカ3の複数個分(3個分)の大きさのブレーカである。
二次連系ブレーカ8は、導電バー41,42,43に電気的に接続され、且つ電力系統への逆潮流が許容されていない分散電源(図示せず)に電気的に接続される。この種の分散電源としては、たとえば燃料電池、ガス発電装置、蓄電装置などがある。二次連系ブレーカ8は、主幹ブレーカ2の二次側端子と、分散電源との間に電気的に接続されることになる。これにより、二次連系ブレーカ8は、たとえば系統電源からの電力供給が停止したときや、系統電源あるいは分散電源に異常が生じたときなどに、分散電源を電力系統から切り離す(解列する)ように動作する。
二次連系ブレーカ8は、分岐ブレーカ3と同様に一次側端子(図示せず)と二次側端子81とを有しており、一次側端子が導電バー41,42,43に電気的に接続され、二次側端子81に分散電源が接続される。二次連系ブレーカ8は、3P3E(極数3、素子数3)で、左右方向の寸法が分岐ブレーカ3の複数個分(3個分)の大きさのブレーカである。この二次連系ブレーカ8は、図2の例では、隔壁133の下側に取り付けられた複数の分岐ブレーカ3,3…のうち右から3個目までの分岐ブレーカ3,3,3に代えて、キャビネット本体11に取り付けられる。つまり、二次連系ブレーカ8は、第2スペースのうち隔壁133の下側の一部に取り付けられることになる。
<特徴構成>
本実施形態に係る分電盤用キャビネット10は、第1の電圧極の導電バー41、第2の電圧極の導電バー42、中性極の導電バー43のうち、第1の電圧極および第2の電圧極の導電バー41,42について、以下に説明するような構成を採用している。なお、第1の電圧極の導電バー41と第2の電圧極の導電バー42とは基本的な構成が共通しており、上下方向において略対称となる形状を採用している。そのため、以下では導電バー41および導電バー42のうち、第2の電圧極の導電バー42に着目して説明するが、とくに断りがなければ第2の電圧極の導電バー42の構成は第1の電圧極の導電バー41にも共通することとする。
図1に示すように、導電バー42は、導電バー42の短手方向(上下方向)に並ぶ第1レーン422と第2レーン423とを含んでいる。第1レーン422および第2レーン423は、接続端子421,421…側(上側)から第1レーン422、第2レーン423の順に並んでいる。第1レーン422は、導電バー42の長手方向に流れる電流に対する電気抵抗が第2レーン423より高くなるように構成されている。
具体的には、導電バー42は、平板424の短手方向において、平板424が第1レーン422と第2レーン423とに分割されている。ただし、第1レーン422と第2レーン423とは物理的に分離されているのではなく、1枚の金属板から一体に形成されている。ここでは、第1レーン422と第2レーン423との境界線上に複数の透孔426,426…が等間隔で形成されている。つまり、導電バー42は、平板424のうち、複数の透孔426,426…よりも隔壁133側(上側)の領域が第1レーン422を構成し、複数の透孔426,426…を挟んで第1レーン422と反対側(下側)の領域が第2レーン423を構成する。
なお、第2レーン423には、導電バー42をベース台13に固定するための取付孔427が形成されている。さらに、第1レーン422のうち、導電バー42の長手方向における主幹ブレーカ2側(左側)の端部には、主幹ブレーカ2の二次側端子を接続するための接続孔428が形成されている。
ここにおいて、第1レーン422は、複数の接続端子421,421…のうち隣接する一対の接続端子421,421の間に、第2レーン423に比べて電気抵抗率の高い高抵抗部420を有している。これにより、第1レーン422は、導電バー42の長手方向に流れる電流に対する電気抵抗が第2レーン423に比べて高くなる。すなわち、第1レーン422には、複数の高抵抗部420,420…が平板424の長手方向(左右方向)に等間隔で形成されている。これら複数の高抵抗部420,420…の各々は、複数の接続端子421,421…のうち隣接する一対の接続端子421,421間に形成されている。
ここで、高抵抗部420は、全ての隣接する一対の接続端子421,421の間に設けられていてもよいが、この構成は必須ではない。つまり、高抵抗部420は、全ての接続端子421,421…に対して一対一で設けられている必要はない。本実施形態では、下向きに突出する接続端子421と上向きに突出する接続端子421とを1組として、各組の接続端子421,421ごとに1つの高抵抗部420が設けられている。
本実施形態では、高抵抗部420は導電バー42を厚み方向に貫通する孔である。さらに詳しくは、高抵抗部420は、第1レーン422の短手方向の接続端子421,421…側(上側)の端縁から第2レーン423(下側)側の端縁に向けて切り込まれたスリットからなる。この高抵抗部420は第1レーン422の短手方向に長く、その幅寸法は隣接する一対の接続端子421,421間の間隔よりも小さく設定されている。このように孔からなる高抵抗部420は、孔内が空気で満たされることによって、当然ながら第2レーン423を構成する金属材料よりも電気抵抗率が高くなる。
そして、第1レーン422は、導電バー42の長手方向(左右方向)における高抵抗部420が形成された箇所において、左右方向に直交する断面の面積が、他の箇所に比べて小さくなる。したがって、第1レーン422は、導電バー42の長手方向に流れる電流に対する電気抵抗が第2レーン423に比べて高くなる。
高抵抗部420は、導電バー42がベース台13に取り付けられた状態(図4参照)で、複数の仕切り134,134…に突き合わされる各位置に形成されている。つまり、各高抵抗部420と各仕切り134とは左右方向における位置が揃えられている。そのため、複数の分岐ブレーカ3,3…の各々は、隣接する一対の高抵抗部420,420間にそれぞれ配置されることになる。
図1の例では、高抵抗部420は、第1レーン422の短手方向の両端間の略全幅に亘って形成されているが、この例に限らず、高抵抗部420は、第1レーン422の短手方向の少なくとも一部に形成された孔であればよい。すなわち、高抵抗部420は、たとえば第1レーン422の短手方向の中央に形成された丸孔などであってもよい。
また、第1の電圧極の導電バー41と第2の電圧極の導電バー42とは、上述したように上下方向において略対称となる形状を採用しているので、導電バー41は、上、下が逆になるものの、導電バー42と基本的な構成が共通する。
すなわち、導電バー41は、第1レーン412と第2レーン413とを含んでおり、第1レーン412は、導電バー41の長手方向に流れる電流に対する電気抵抗が第2レーン413より高くなるように構成されている。さらに、第1レーン412と第2レーン413との境界線上には複数の透孔416,416…が等間隔で形成されている。
なお、第2レーン413には、導電バー41をベース台13に固定するための取付孔417が形成されている。さらに、第1レーン412のうち、導電バー41の長手方向における主幹ブレーカ2側(左側)の端部には、主幹ブレーカ2の二次側端子を接続するための接続孔418が形成されている。
第1レーン412は、複数の接続端子411,411…のうち隣接する一対の接続端子411,411の間に、第2レーン413に比べて電気抵抗の高い高抵抗部410を有している。これにより、第1レーン412は、導電バー41の長手方向に流れる電流に対する電気抵抗が第2レーン413に比べて高くなる。本実施形態では、高抵抗部410は導電バー41を厚み方向に貫通する孔である。
<効果>
以上説明した本実施形態の分電盤用キャビネット10によれば、導電バー42は、その短手方向に並ぶ第1レーン422と第2レーン423とを含んでいる。第1レーン422および第2レーン423のうち複数の接続端子421,421…側となる第1レーン422は、導電バー42の長手方向に流れる電流に対する電気抵抗が、第2レーン423よりも高くなるように構成されている。
ここで、導電バー42の長手方向の一端部には主幹ブレーカ2が接続され、複数の接続端子421,421…の各々には複数の分岐ブレーカ3,3…が接続されるので、複数の分岐ブレーカ3,3…に流れる電流の合計電流が導電バー42を通ることになる。ただし、導電バー42の長手方向に流れる電流に対する電気抵抗は、第1レーン422よりも第2レーン423の方が低いので、導電バー42を流れる電流は、第1レーン422よりも第2レーン423に流れやすくなる。
したがって、上記構成の導電バー42は、短手方向において複数の接続端子421,421…とは反対側となる第2レーン423に集中的に電流を流すことができ、主たる電流経路を複数の接続端子421,421…から離れた位置に形成できる。言い換えれば、導電バー42は、電流を第2レーン423側に迂回させることで、主たる電流経路を複数の接続端子421,421…から遠ざけることができる。その結果、複数の分岐ブレーカ3,3…に流れる電流の合計電流が大きくなっても、この電流に起因して導電バー42の周囲に生じる磁界は、複数の接続端子421,421…には作用しにくくなる。
図6は、導電バー42に流れる電流を模式的に示している。導電バー42には、主に導電バー42の長手方向に沿って主電流I1が流れ、この主電流I1の一部が、分岐電流I2として分岐ブレーカ3に分岐されることになる。導電バー42には、第1レーン422と第2レーン423とが設定されているが、導電バー42の長手方向に流れる電流は第1レーン422よりも第2レーン423の方が通りやすいので、主電流I1は主に第2レーン423に流れることになる。
すなわち、導電バー42のうち、導電バー42の短手方向において複数の接続端子421,421…寄り(図6では左寄り)の部位は、高抵抗部420が形成されて第1レーン422となる。そのため、主電流I1は、導電バー42の短手方向において複数の接続端子421,421…とは反対寄り(図6では右寄り)の部位、つまり高抵抗部420が形成されていない第2レーン423を主に流れることになる。そして、第2レーン423を流れる主電流I1の一部が分岐され、分岐電流I2として第1レーン422および接続端子421を介して分岐ブレーカ3に流れることになる。
同様に、導電バー41についても、短手方向において複数の接続端子411,411…とは反対側となる第2レーン413に集中的に電流を流すことができ、主たる電流経路を複数の接続端子411,411…から離れた位置に形成できる。言い換えれば、導電バー41は、電流を第2レーン413側に迂回させることで、主たる電流経路を複数の接続端子411,411…から遠ざけることができる。その結果、複数の分岐ブレーカ3,3…に流れる電流の合計電流が大きくなっても、この電流に起因して導電バー41の周囲に生じる磁界は、複数の接続端子411,411…には作用しにくくなる。
要するに、本実施形態の分電盤用キャビネット10は、導電バー41(42)に電流が流れたときに生じる磁界が接続端子411,411…(421,421…)に作用しにくい、という利点がある。
また、複数の接続端子411,411…(421,421…)には、本実施形態のように、複数の接続端子411,411…(421,421…)の各々を流れる電流を磁束に基づいて計測する電流計測器5が取り付けられることが好ましい。この構成によれば、導電バー41(42)に電流が流れたときに生じる磁界は電流計測器5に影響しにくくなる。そのため、電流計測器5は、複数の接続端子411,411…(421,421…)の各々を流れる電流を計測する際に、外部磁界の影響を受けにくくなり、計測精度が向上する。
また、第1レーン412(422)は、本実施形態のように、複数の接続端子411,411…(421,421…)のうち隣接する一対の接続端子411,411(421,421)の間に、高抵抗部410(420)が形成されていることが好ましい。高抵抗部410(420)は、第2レーン413(423)に比べて電気抵抗が高い。これにより、第1レーン412(422)は、導電バー41(42)の長手方向に流れる電流に対する電気抵抗が高くなっている。
この構成によれば、第1レーン412(422)は、局所的に形成された高抵抗部410(420)によって、導電バー41(42)の長手方向に流れる電流に対する電気抵抗が高くなる。そのため、第1レーン412(422)は、第2レーン413(423)−接続端子411(421)間には高抵抗部410(420)を介在させずに、第2レーン413(423)−接続端子411(421)間を流れる電流の損失を小さく抑えることができる。つまり、第1レーン412(422)全体が、第2レーン413(423)に比べて電気抵抗率の高い材料で構成されることも考えられるが、この場合には、第2レーン413(423)−接続端子411(421)間を流れる電流について損失が生じることになる。これに対して、本実施形態の構成によれば、高抵抗部410(420)以外の部分は、第1レーン412(422)であっても第2レーン413(423)と電気抵抗率を同じにすることができるので、損失を小さく抑えることができる。
また、高抵抗部410(420)は、本実施形態のように、導電バー41(42)を厚み方向に貫通する孔であることが好ましい。この構成によれば、導電バー41(42)は、電気抵抗率の異なる材料を用いることなく1つの部材で形成できるので、製造コストを低く抑えることができる。
さらに、本実施形態に係る分電盤1は、分電盤用キャビネット10と、導電バー41,42に電気的に接続される主幹ブレーカ2と、複数の接続端子411,411…(421,421…)の各々に電気的に接続される複数の分岐ブレーカ3,3…とを備える。この構成によれば、分電盤1は、導電バー41(42)に電流が流れたときに生じる磁界が接続端子411,411…(421,421…)に作用しにくい、という利点がある。
ところで、本実施形態では、3本の導電バー41,42,43のうち、第1および第2の電圧極の導電バー41,42についてのみ、第1レーン412(422)、第2レーン413(423)が設定された構成を示したが、この構成に限らない。すなわち、中性極バー43についても、第1レーン、第2レーンが設定されていてもよい。この場合、中性極バー43についても、本実施形態の導電バー41,42と同様に、主たる電流経路を第2レーンに迂回させることで、主たる電流経路を接続端子411,411…(421,421…)からから遠ざけることができる。その結果、複数の分岐ブレーカ3,3…に流れる電流の合計電流が大きくなっても、この電流に起因して中性極バー43の周囲に生じる磁界は、複数の接続端子421,421…に影響しにくくなる。
なお、中性極バー43は、その短手方向の両側に分岐ブレーカ3が接続されるので、その短手方向において中央に第2レーンが形成され、第2レーンの両側に第1レーンが形成されることが好ましい。つまり、中性極バー43は、その短手方向の両端部に高抵抗部が形成され、第1レーンが設定されることが好ましい。
(実施形態2)
本実施形態に係る分電盤用キャビネット10は、図7に示すように、高抵抗部410(420)が第2レーン413(423)に比べて導電バー41(42)の厚み寸法を小さくした薄肉部である点で、実施形態1の分電盤用キャビネット10と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
すなわち、本実施形態では、高抵抗部410は、導電バー41を厚み方向に貫通する孔ではなく、導電バー41の高抵抗部410以外の部位よりも厚み寸法を小さくした薄肉部である。導電バー42についても同様に、高抵抗部420は、導電バー42を厚み方向に貫通する孔ではなく、導電バー42の高抵抗部420以外の部位よりも厚み寸法を小さくした薄肉部である。
第1レーン412(422)は、導電バー41(42)の長手方向(左右方向)における薄肉の高抵抗部410(420)が形成された箇所において、左右方向に直交する断面の面積が、他の箇所に比べて小さくなる。したがって、第1レーン412(422)は、導電バー41(42)の長手方向に流れる電流に対する電気抵抗が第2レーン413(423)に比べて高くなる。
この構成によれば、導電バー41(42)は、高抵抗部410(420)が孔である場合に比べて、剛性を高く保つことができるという利点がある。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
(実施形態3)
本実施形態に係る分電盤用キャビネット10は、図8に示すように、高抵抗部410(420)が第2レーン413(423)に比べて電気抵抗率の高い材料で形成されている点で、実施形態2の分電盤用キャビネット10と相違する。以下、実施形態2と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
本実施形態では、高抵抗部410は、導電バー41の高抵抗部410以外の部位と同じ厚み寸法を有しつつ、導電バー41の高抵抗部410以外の部位とは異材である。導電バー42についても同様に、高抵抗部420は、導電バー42の高抵抗部420以外の部位と同じ厚み寸法を有しつつ、導電バー42の高抵抗部420以外の部位とは異材である。
第1レーン412(422)は、導電バー41(42)の長手方向(左右方向)における異材の高抵抗部410(420)が形成された箇所において、電気抵抗率が他の箇所に比べて高くなる。したがって、第1レーン412(422)は、導電バー41(42)の長手方向に流れる電流に対する電気抵抗が第2レーン413(423)に比べて高くなる。
この構成によれば、導電バー41(42)は、高抵抗部410(420)が薄肉部である場合に比べて、剛性をさらに高く保つことができるという利点がある。
その他の構成および機能は実施形態2と同様である。
(変形例)
上記各実施形態の変形例として、複数の接続端子411,411…(421,421…)と第1レーン412(422)との間の距離を広げるように、導電バー41(42)の形状を変更することが考えられる。なお、図9,10では第1の電圧極の導電バー41を例示するが、第2の電圧極の導電バー42についても同様の構成が採用されるので、以下では、導電バー42についての説明は省略する。
具体的には、導電バー41は、たとえば図9に示すように、第1レーン412が突出片415の後端から後方に延長され、その先端が上方に延長され、その先端が前方に延長されて略C字状に形成されている。これにより、導電バー41は、複数の接続端子411,411…と第1レーン412との前後方向における間隔を広げることができる。
この構成によれば、導電バー41を流れる電流に起因して生じる磁界が接続端子411,411…へ一層作用しにくくなる。すなわち、基本的に、導電バー41は、短手方向において複数の接続端子411,411…とは反対側となる第2レーン413に集中的に電流を流すことができるが、第1レーン412にも電流が流れない訳ではない。導電バー41は、図9のような形状を採用することで、第1レーン412を流れる電流に起因して生じる磁界が接続端子411,411…へ作用しにくくなる。
また、他の例として、導電バー41は、図10に示すように、第1レーン412が突出片415の後端から後方に延長され、その先端が上方に延長されて略L字状に形成されていてもよい。これにより、導電バー41は、複数の接続端子411,411…と第1レーン412との前後方向における間隔だけでなく、複数の接続端子411,411…と第2レーン413との間隔も広げることができる。
この構成によれば、導電バー41は、集中的に電流が流れる第2レーン413と接続端子411,411…との距離が広がることで、第2レーン413を流れる電流に起因して生じる磁界が接続端子411,411…へ作用しにくくなる。その結果、導電バー41を流れる電流に起因して生じる磁界が接続端子411,411…へより一層作用しにくくなる。
なお、変形例の構成は、実施形態1〜3のそれぞれと組み合わせ可能である。