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JP6153857B2 - 車両用制動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両に制動力を発生させる車両用制動装置に関する。
例えば電気自動車では、油圧系統を媒介して制動力を発生させる既存の制動装置に加えて、電気系統を媒介して制動力を発生させる、バイ・ワイヤ(By Wire)式の制動装置が採用されている。かかるバイ・ワイヤ式の制動装置では、運転者によるブレーキペダルの操作量を電気信号に変換して、スレーブシリンダ(以下、“モータシリンダ装置”という。)のピストンを駆動する電動アクチュエータに与える。すると、電動アクチュエータの作動に伴うピストンの駆動によってモータシリンダ装置に液圧が発生する。こうして発生した液圧がホイールシリンダを作動させることにより、液圧による摩擦制動トルクを車両に発生させる(例えば、特許文献1参照)。
こうしたバイ・ワイヤ式の制動装置では、モータシリンダ装置に係る摩擦制動制御の他に、車輪駆動用電動モータに係る回生制動制御が行われる。車輪駆動用電動モータに係る回生制動制御では、車輪駆動用電動モータを発電機として用い、車輪駆動用電動モータに生じる回生制動トルクによって回生制動力を発生させる。回生制動に伴い生じた運動エネルギは、電気エネルギに変換されて車載バッテリに充電される。
また、従来、省エネルギに配慮しつつ、運転者によるブレーキペダル操作に応じた制動力を得るために、車輪駆動用電動モータに係る回生制動制御と、モータシリンダ装置に係る摩擦制動制御とを協調させた制動制御を行う技術が知られている。この回生協調制動制御技術では、モータシリンダ装置に係る摩擦制動制御に対して、車輪駆動用電動モータに係る回生制動制御が優先的に適用される。かかる回生協調制動制御技術によれば、車両の制動制御を、回生による運動エネルギの回収効率を高めながら実現することができる。
前記回生協調制動制御技術を適用したバイ・ワイヤ式の制動装置において、制動時に車輪のロック状態を回避する機能を有するABS(Antilock Brake System)装置などの助勢装置を搭載したものが公知である(特許文献2参照)。特許文献2に係る制動制御技術では、車輪速度センサや加速度センサ等からの信号に基づいて車両の挙動を推定し、この推定結果に基づいて、車両の挙動を安定させるように、助勢装置を用いた摩擦制動制御を行う。
また、モータシリンダ装置に係る摩擦制動制御機能が失陥した場合に、前記助勢装置を用いて摩擦制動制御を行う技術が知られている。さらに、モータシリンダ装置に係る摩擦制動制御機能が失陥した場合、前記回生協調制動制御を禁止し、車輪駆動用電動モータに係る回生制動制御機能を停止する技術も公知である。
要するに、前記従来技術では、モータシリンダ装置に係る摩擦制動制御機能が失陥した場合に、油圧系統を用いた既存の制動装置による摩擦制動制御に加えて、前記助勢装置を用いた摩擦制動制御が遂行される。
特開2009−227023号公報 特開2010−247782号公報
ところが、前記従来技術では、モータシリンダ装置に係る摩擦制動制御機能が失陥した場合に、モータシリンダ装置に係る摩擦制動制御が正常に機能している際と比べて、発生可能な制動力の低下が懸念される。また、仮に、前記回生協調制動制御の禁止によって車輪駆動用電動モータに係る回生制動制御機能が停止されると、回生による運動エネルギの回収効率を向上することができないという課題も生じる。
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、モータシリンダ装置に係る摩擦制動制御機能が失陥した場合であっても、良好な制動フィーリングを与えると共に、回生による運動エネルギの回収効率向上に貢献する車両用制動装置を得ることを目的とする。
上記目的を達成するために、(1)に係る発明は、運転者による制動操作に応じた液圧を発生させる液圧発生装置と、少なくとも運転者による制動操作に応じた電気信号に基づく第1の電動アクチュエータの作動に伴う液圧によって摩擦制動トルクを発生させる第1の電動制動装置と、少なくとも車両の挙動に応じた電気信号に基づく第2の電動アクチュエータの作動に伴う液圧の増加によって摩擦制動トルクを増大させる第2の電動制動装置と、運転者による減速操作に応じた電気信号に基づく第3の電動アクチュエータの作動によって回生制動トルクを発生させる第3の電動制動装置と、前記第1の電動制動装置の異常診断を行う異常診断部と、前記第2の電動制動装置の稼働状態に係る情報を取得する稼働状態取得部と、前記異常診断部により前記第1の電動制動装置が異常状態にある旨の診断が下された場合に、前記稼働状態取得部で取得した前記第2の電動制動装置の稼働状態に係る情報に基づいて、前記第3の電動制動装置で発生させるべき目標回生制動トルクを算出する目標回生制動トルク算出部と、前記異常診断部により前記第1の電動制動装置が異常状態にある旨の診断が下された場合に、前記目標回生制動トルク算出部で算出された前記目標回生制動トルクを、前記第3の電動アクチュエータの作動によって発生させる制御を行う制御部と、を備える。前記制御部は、前記異常診断部により前記第1の電動制動装置が異常状態にある旨の診断が下され、かつ、前記液圧発生装置で発生した前記液圧による摩擦制動トルク、及び、前記目標回生制動トルク算出部で算出された前記目標回生制動トルクの和が、運転者による制動操作に基づく目標制動トルクに満たない場合に、前記第2の電動アクチュエータの作動に伴う液圧の増加によって摩擦制動トルクを増大させる制御を行い、前記目標回生制動トルク算出部は、前記異常診断部により前記第1の電動制動装置が異常状態にある旨の診断が下され、かつ、前記第2の電動制動装置が稼働状態にある際に、前記目標制動トルクから、前記液圧発生装置で発生した前記液圧による摩擦制動トルク、及び、前記第2の電動制動装置の稼働によって増大した前記摩擦制動トルクの和を差し引いた解に基づいて、前記目標回生制動トルクを算出する、ことを最も主要な特徴とする。
(1)に係る発明によれば、第1の電動制動装置に係る摩擦制動制御機能が失陥した場合であっても、良好な制動フィーリングを与えると共に、回生による運動エネルギの回収効率向上に貢献することができる。
また、(2)に係る発明では、(1)に係る発明に記載の車両用制動装置であって、前記目標回生制動トルク算出部は、前記目標回生制動トルクを、車速に応じて変化する、発生可能な回生制動トルクの上限値に係る情報を参照して算出する、ことを特徴とする。
(2)に係る発明によれば、目標回生制動トルクを、車速に応じて変化する発生可能な回生制動トルクに係る上限値を参照して算出するため、回生制動トルクの付与時において、車両の挙動が不安定になる事態を未然に回避する効果を期待することができる。
本発明によれば、第1の電動制動装置に係る摩擦制動制御機能が失陥した場合であっても、良好な制動フィーリングを与えると共に、回生による運動エネルギの回収効率向上に貢献する車両用制動装置を得ることができる。
本発明の実施形態に係る車両用制動装置を電気自動車に搭載した例を表す図である。 本発明の実施形態に係る車両用制動装置の概要を表す構成図である。 本発明の実施形態に係る車両用制動装置が有するESB−ECU、VSA−ECU、及び、PDUの周辺構成を表すブロック図である。 本発明の実施形態に係る車両用制動装置が実行する制動制御処理の流れを表すフローチャート図である。 横軸に制動操作量をとり、縦軸に制動トルクをとった際の、目標制動トルクに対する、摩擦制動トルク(助勢なし)、摩擦制動トルク(助勢なし)+回生制動トルクの各特性を対比して表す説明図である。 横軸に制動操作量をとり、縦軸に制動トルクをとった際の、目標制動トルクに対する、摩擦制動トルク(助勢あり)、摩擦制動トルク(助勢あり)+回生制動トルクの各特性を対比して表す説明図である。 横軸に車速をとり、縦軸に制動トルクをとった際の、目標回生制動トルクの上限特性を表す説明図である。
以下、本発明の実施形態に係る車両用制動装置について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に示す図において、共通の機能を有する部材間、又は、相互に対応する機能を有する部材間には、原則として共通の参照符号を付するものとする。また、説明の便宜のため、部材のサイズ及び形状は、変形又は誇張して模式的に表す場合がある。
〔本発明の実施形態に係る車両用制動装置11の電気自動車Vへの搭載例〕
はじめに、本発明の実施形態に係る車両用制動装置11の電気自動車Vへの搭載例について、図1を参照して説明する。
本発明の実施形態に係る説明に先立って、説明の便宜のために用いる符号の付与ルールに言及する。本発明の実施形態に係る車両用制動装置11は、例えば四輪の電気自動車Vに搭載される関係から、共通の部材が四輪のそれぞれの車輪に設けられる場合がある。この場合において、共通の部材間には共通の符号を付与すると共に、進行方向に向かって左前側の車輪に設けられる部材の符号の後に添え字aを、右前側の車輪に設けられる部材の符号の後に添え字bを、左後側の車輪に設けられる部材の符号の後に添え字cを、右後側の車輪に設けられる部材の符号の後に添え字dを、それぞれ付与するものとする。また、共通の部材を総称するときは、添え字を省略する場合があるものとする。
本発明の実施形態に係る車両用制動装置11は、油圧回路を媒介して摩擦制動トルクを発生させる既存の制動装置に加えて、電気回路を媒介して摩擦制動トルクを発生させる、バイ・ワイヤ(By Wire)式の制動装置を備えている。車両用制動装置11は、図1に示すように、電気自動車(本発明の“車両”に相当する)Vに搭載されている。
前記電気自動車Vには、図1に示すように、車輪駆動用の第3の電動モータ92が設けられている。第3の電動モータ92は、本発明の“第3の電動アクチュエータ”に相当する。
第3の電動モータ92には、不図示の動力伝達機構を介して前輪駆動軸15Aが連結されている。前輪駆動軸15Aの両端には、車輪(前輪)17a,17bがそれぞれ設けられている。同様に、後輪従動軸15Bの両端には、従動輪である車輪(後輪)17c,17dがそれぞれ設けられている。
後記する駆動制御用のPDU(Power Drive Unit)33は、第3の電動モータ92を力行状態に制御することで、第3の電動モータ92を本来の用途である電動機として用い、これをもって力行トルクを出力させる機能を有する。その結果、第3の電動モータ92は、車輪17a,17bを駆動するように作用する。
また、PDU33は、第3の電動モータ92を回生状態に制御することで、第3の電動モータ92を本来の用途とは異なる発電機として用い、これをもって回生制動トルクを出力させる機能を有する。その結果、第3の電動モータ92は、車輪17a,17bを制動するように作用する。
つまり、本発明の実施形態に係る車両用制動装置11は、電気自動車Vの制動制御を行うために、摩擦制動トルク及び回生制動トルクの両者を利用可能に構成されている。
電気自動車Vには、第3の電動モータ92の電源として機能する不図示の車載バッテリが搭載されている。車載バッテリとしては、例えばリチウムイオン二次電池を好適に用いることができる。
第3の電動モータ92は、図1に示すように、インバータ19に接続されている。インバータ19は、不図示の通電ケーブルを介して前記車載バッテリに接続されている。インバータ19は、車載バッテリからの直流電力を交流電力に変換する一方、第3の電動モータ92の回生電力(交流電力)を直流電力に変換する機能を有する。
具体的には、第3の電動モータ92を電動機として用いる際には、車載バッテリからの直流電力がインバータ19で交流電力に変換され、この交流電力が第3の電動モータ92に対して供給される。一方、第3の電動モータ92を発電機として用いる際には、第3の電動モータ92からの回生電力(交流電力)がインバータ19で直流電力に変換され、この直流電力が車載バッテリに対して供給される。また、インバータ19を用いて交流電力の電流値や周波数を制御することにより、第3の電動モータ92のトルクや回転速度を制御することができる。
電気自動車Vには、各車輪17a〜17dを制動するための摩擦制動機構24a〜24dが設けられている。この摩擦制動機構24a〜24dは、運転者によるブレーキペダル12(図2参照)の踏み込み操作量(制動操作量)に応じて制動に係る液圧を発生させる制動液圧発生装置26と、制動液圧発生装置26で発生した液圧によって各車輪17a〜17dを制動するキャリパ27a〜27dとを含んで構成されている。
なお、図1に示す例では、摩擦制動機構24としてディスクブレーキ装置を採用したが、本発明はこの例に限定されない。摩擦制動機構24として、ディスクブレーキ装置に代えてドラムブレーキ装置を採用してもよい。
電気自動車Vの駆動制御を行うために、電気自動車Vには、図1に示すように、PDU33が設けられている。PDU33の構成について、詳しくは後記する。
また、電気自動車Vの挙動を安定化させるために、電気自動車Vには、図1に示すように、VSA(Vehicle Stability Assist;ただし、VSAは登録商標)−ECU31が設けられている。VSA−ECU31の構成について、詳しくは後記する。
さらに、摩擦制動機構24などの動作状態を制御するために、電気自動車Vには、図1に示すように、ESB−ECU29が設けられている。ESB−ECU29の構成について、詳しくは後記する。
ESB−ECU29、VSA−ECU31、及び、PDU33の各間は、図1に示すように、通信媒体35を介して相互に情報通信可能に接続されている。通信媒体35としては、例えば、電気自動車V内に構築される、CAN(Controller Area Network)を好適に用いることができる。CANとは、車載機器間の情報通信に用いられる多重化されたシリアル通信網である。CANは、優れたデータ転送速度及びエラー検出能力を有する。以下では、電気自動車V内に構築される通信網として、CAN通信媒体35を採用した例をあげて説明する。
なお、本発明の実施形態に係る車両用制動装置11では、回生により得られる電気エネルギを稼ぐために、第3の電動モータ92に係る回生制動制御が、制動液圧発生装置26に係る摩擦制動制御と比べて優先的に適用される。ここで、“第3の電動モータ92に係る回生制動制御が、制動液圧発生装置26に係る摩擦制動制御と比べて優先的に適用される”とは、第3の電動モータ92に係る回生制動制御を優先的に適用し、第3の電動モータ92に係る回生制動制御を用いて得られる制動トルクの不足分を、制動液圧発生装置26に係る摩擦制動制御を用いて得られる制動トルクで補うことを意味する。
〔本発明の実施形態に係る車両用制動装置11の構成〕
次に、本発明の実施形態に係る車両用制動装置11の構成について、図2及び図3を参照して説明する。
車両用制動装置11は、図2に示す液圧発生装置14、並びに、図3に示す、第1の電動制動装置21、第2の電動制動装置23、及び、第3の電動制動装置25を備えて構成されている。液圧発生装置14は、運転者による制動操作を、ブレーキペダル12(図2参照)を通してマスタシリンダ34により受け付ける機能を有する。第1の電動制動装置21、及び、第2の電動制動装置23は、前記制動液圧発生装置26に相当する。
前記第1の電動制動装置21は、モータシリンダ装置16、ESB−ECU29、及び、第1の電動モータ72を含んで構成されている。モータシリンダ装置16は、図2に示すように、第1及び第2のスレーブピストン88a,88bを備え、少なくとも運転者による制動操作に応じた電気信号に基づく第1の電動モータ72の作動に伴う液圧によって摩擦制動トルクを発生させる機能を有する。第1の電動モータ72は、本発明の“第1の電動アクチュエータ”に相当する。
前記第2の電動制動装置23は、ビークル・スタビリティ・アシスト装置18(以下、“VSA装置18”と省略する。ただし、VSAは登録商標)、VSA−ECU31、及び第2の電動モータ82を含んで構成されている。VSA装置18は、少なくとも車両の挙動に応じた電気信号に基づく第2の電動モータ(図2及び3参照)82の作動に伴うポンプ(図2参照)135の駆動によって摩擦制動に係る液圧を増加させる機能を有する。かかる機能の発揮により、VSA装置18は、制動操作時の車輪ロックを防ぐABS(アンチロック・ブレーキ・システム)機能、加速時等の車輪空転を防ぐTCS(トラクション・コントロール・システム)機能、及び、旋回時の横すべりを抑制する機能を有する。第2の電動モータ82は、本発明の“第2の電動アクチュエータ”に相当する。
前記第3の電動制動装置25は、PDU33、インバータ19、及び、第3の電動モータ92を含んで構成されている。第3の電動モータ92は、本発明の“第3の電動アクチュエータ”に相当する。
液圧発生装置14、モータシリンダ装置16、及び、VSA装置18のそれぞれは、図2に示すように、ブレーキ液を通流させる配管チューブ22a〜22fを介して相互に連通接続されている。
バイ・ワイヤ式の制動装置を構成する液圧発生装置14及びモータシリンダ装置16は、不図示の電線を介して、ESB−ECU29(図1及び図3参照)と電気的に接続されている。また、VSA装置18は、不図示の電線を介して、VSA−ECU31(図1及び図3参照)と電気的に接続されている。液圧発生装置14及びモータシリンダ装置16の内部構成について、詳しくは後記する。
符号Pm,Pp,Phは、配管チューブ22a〜22fの各部で発生したブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧センサである。
図2に符号を付して示すその他の要素については、本発明とは直接関係がないので、その説明を省略する。ただし、前記その他の要素については、後記する作用の説明で引用する。
〔車両用制動装置11の基本動作〕
次に、車両用制動装置11の基本動作について説明する。
車両用制動装置11では、モータシリンダ装置16やバイ・ワイヤの制御を主として行うESB−ECU29(図1及び図3参照)を含む第1の電動制動装置21の正常作動時において、運転者がブレーキペダル12を踏むと、いわゆるバイ・ワイヤ式の制動装置がアクティブになる。
具体的には、正常作動時の車両用制動装置11では、運転者がブレーキペダル12を踏むと、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bが、マスタシリンダ34と各車輪を制動する摩擦制動機構24a〜24dとの連通を遮断した状態で、モータシリンダ装置16が発生するブレーキ液圧を用いて摩擦制動機構24a〜24dのキャリパ27a〜27dを作動させる。
このため、車両用制動装置11では、例えば、電気自動車(燃料電池車を含む)やハイブリッド自動車等のように、内燃機関での負圧発生が少ないか、内燃機関による負圧が存在しない車両、又は、内燃機関自体がない車両に好適に適用することができる。
ちなみに、正常作動時は、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bが遮断される一方、第3遮断弁62が開弁される。このとき、ブレーキペダル12が踏み込み操作されると、ブレーキ液は、マスタシリンダ34からストロークシミュレータ64に流れ込むようになる。このため、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bが遮断されていても、マスタシリンダ34からストロークシミュレータ64へのブレーキ液の流れが生じるため、ブレーキペダル12にストロークが生じるようになる。
一方、車両用制動装置11では、第1の電動制動装置21が正常に作動しない異常時において、運転者がブレーキペダル12を踏むと、既存の油圧式の制動装置がアクティブになる。具体的には、異常時の車両用制動装置11では、運転者がブレーキペダル12を踏むと、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bをそれぞれ開弁状態とし、かつ、第3遮断弁62を閉弁状態として、マスタシリンダ34で発生するブレーキ液圧を摩擦制動機構24a〜24dに伝達し、摩擦制動機構24a〜24dのキャリパ27a〜27dを作動させる。
〔本発明の実施形態に係る車両用制動装置11の機能ブロック構成〕
次に、本発明の実施形態に係る車両用制動装置11の機能ブロック構成について、図3を参照して説明する。
〔ESB−ECU29の構成〕
ESB−ECU29には、図3に示すように、入力系統として、イグニッションキースイッチ(以下“IGキースイッチ”と省略する。)121、車速センサ123、ブレーキペダルセンサ125、ホールセンサ127、及び、ブレーキ液圧センサPm,Ppがそれぞれ接続されている。
ただし、ESB−ECU29に接続される入力系統として列挙した前記のスイッチやセンサ類は、ESB−ECU29に対して直接接続されていなくてもよい。具体的には、例えば車速センサ123に関し、車速に係る情報を取得可能であれば、ESB−ECU29に対し、入力系統としての車速センサ123が直接接続されていることを要しない。
IGキースイッチ121は、車両に搭載された電装部品の各部に、車載バッテリ(不図示)を介して電源を供給する際に操作されるスイッチである。IGキースイッチ121がオン操作されると、ESB−ECU29に電源が供給されて、ESB−ECU29が起動される。
車速センサ123は、車両の走行速度(車速)を検出する機能を有する。車速センサ123で検出された車速に係る情報は、ESB−ECU29へと送られる。
ブレーキペダルセンサ125は、運転者によるブレーキペダルの操作量(ストローク量)及び加重(踏力)を検出する機能を有する。ブレーキペダルセンサ125で検出されたブレーキペダルの操作の量及び加重に係る情報は、ESB−ECU29へと送られる。
ただし、ブレーキペダルセンサ125は、単にON(踏まれている)・OFF(踏まれていない)を検出する機能を有するブレーキSWであってもよい。
ホールセンサ127は、第1の電動モータ72の回転角度(スレーブピストン88a,88bの軸線方向における現在位置情報)を検出する機能を有する。ホールセンサ127で検出された第1の電動モータ72の回転角度に係る情報は、ESB−ECU29へと送られる。
ブレーキ液圧センサPm,Ppは、ブレーキ液圧系統における第1遮断弁60aの上流側液圧、第2遮断弁60bの下流側液圧をそれぞれ検出する機能を有する。ブレーキ液圧センサPm,Ppで検出されたブレーキ液圧系統における各部の液圧情報は、ESB−ECU29へと送られる。
一方、ESB−ECU29には、図2に示すように、出力系統として、前記第1の電動モータ72、及び、前記第1〜第3遮断弁60a,60b,62がそれぞれ接続されている。
ESB−ECU29は、図3に示すように、第1の情報取得部71、第1の異常診断部(本発明の“異常診断部”に相当する。)73を有する第1の稼働状態取得部75、目標制動トルク算出部(本発明の“目標回生制動トルク算出部”に相当する。)76、及び、第1の制動制御部(本発明の“制御部”の一部に相当する。)77を有して構成されている。
第1の情報取得部71は、IGキースイッチ121のオン・オフ操作に係る情報、車速センサ123で検出される車速に係る情報、ブレーキペダルセンサ125で検出される制動操作の量及び加重に係る情報、ホールセンサ127で検出される第1の電動モータ72の回転角度情報、及び、ブレーキ液圧センサPm,Ppで検出される各部の制動液圧に係る情報などを取得する機能を有する。
第1の異常診断部73は、第1の情報取得部71で取得した情報に基づいて、モータシリンダ装置16の異常診断を行う機能を有する。ここで、第1の異常診断部73が診断対象とするモータシリンダ装置16とは、ESB−ECU29それ自体、並びに、ESB−ECU29に接続される入力系センサ類及び出力系機器類を含む概念である。具体的には、例えば、第1の電動モータ72の回転異常によりモータシリンダ装置16がブレーキ液圧調整機能を発揮できない場合に、第1の異常診断部73は、モータシリンダ装置16が異常である旨の診断を下す。
第1の稼働状態取得部75は、第1の情報取得部71で取得した情報、VSA−ECU31から送られてくる、VSA装置18の稼働状態に係る情報、及び、第1の異常診断部73の診断結果に係る情報に基づいて、第2の電動制動装置23の稼働状態に係る情報を取得する機能を有する。具体的には、第1の稼働状態取得部75は、モータシリンダ装置16が異常である旨の診断が下された場合に、VSA装置18が正常動作しているか否かに係る情報を取得する機能を有する。
目標制動トルク算出部76は、基本的には、ブレーキペダル12の制動操作量に基づく要求制動量に応じた目標制動トルクを算出する機能を有する。また、目標制動トルク算出部76は、算出した目標制動トルクを、目標摩擦制動トルク及び目標回生制動トルクに配分すると共に、目標摩擦制動トルクを第1の制動制御部77に送る一方、目標回生制動トルクを、CAN通信媒体35を介して、PDU33が有する第3の制動制御部175宛に送るように動作する。
なお、目標制動トルク算出部76は、算出した目標制動トルクを、目標摩擦制動トルク及び目標回生制動トルクに配分するに際し、PDU33が有する後記の回生制動トルク上限値算出部173で算出されて時々刻々と送られてくる回生制動トルクの上限値を参照するように動作する。
ただし、目標制動トルク算出部76は、モータシリンダ装置16が異常である旨の診断を第1の異常診断部73が下した場合に、VSA−ECU31の第2の稼働状態取得部165から取得したVSA装置18の稼働状態に係る情報に基づいて、第3の電動制動装置25で発生させるべき目標回生制動トルクを算出するように動作する。
詳しく述べると、目標制動トルク算出部76は、第1の異常診断部73により第1の電動制動装置21(モータシリンダ装置16)が異常状態にある旨の診断が下され、かつ、第2の電動制動装置23(VSA装置18)が稼働状態にある際に、目標制動トルクから、液圧発生装置14で発生した液圧による摩擦制動トルク、及び、第2の電動制動装置23(VSA装置18)の稼働によって増大した摩擦制動トルクの和を差し引いた解に基づいて、第3の電動制動装置25で発生させるべき目標回生制動トルクを算出するように動作する。
第1の制動制御部77は、基本的には、第1の情報取得部71で取得される制動操作に係る情報や各部の制動液圧に係る情報などに基づいて、モータシリンダ装置16で発生する液圧が、目標制動トルク算出部76から送られてきた目標摩擦制動トルクに追従するように、ホイールシリンダ32に与える液圧を制御する機能を有する。
また、第1の制動制御部77は、第1の異常診断部73によるモータシリンダ装置16の異常診断結果に係る情報、及び、目標制動トルク算出部76で算出されかつ配分された目標回生制動トルクに基づいて、VSA装置(VSA−ECU31を含む)18宛に助勢要求を行うか否かを判断する機能を有する。ここで、助勢要求とは、モータシリンダ装置16の失陥時に、VSA装置18による制動液圧増圧機能を用いた制動液圧の助勢を求めることをいう。
前記ESB−ECU29は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、ESB−ECU29が有する、各種の情報取得機能、モータシリンダ装置16の異常診断機能、目標制動トルクの算出及び配分機能、並びに、ホイールシリンダ32に与える制動液圧制御機能を含む各種機能に係る実行制御を行うように動作する。
〔VSA−ECU31の構成〕
VSA−ECU31には、図3に示すように、車輪速度センサ150、アクセルペダルセンサ151、ヨーレイトセンサ152、Gセンサ153、操舵角センサ155、及び、ブレーキ液圧センサPhがそれぞれ接続されている。
車輪速度センサ150a〜150dは、各車輪17a〜17d毎の回転速度(車輪速度)をそれぞれ検出する機能を有する。車輪速度センサ150a〜150dでそれぞれ検出される各車輪17a〜17d毎の回転速度に係る情報は、VSA−ECU31へと送られる。
アクセルペダルセンサ151は、運転者によるアクセルペダルの操作量(ストローク量)を検出する機能を有する。アクセルペダルセンサ151で検出されたアクセルペダルの操作量に係る情報は、VSA−ECU31へと送られる。
ヨーレイトセンサ152は、自車両に発生しているヨーレイトを検出する機能を有する。ヨーレイトセンサ152で検出されたヨーレイトに係る情報は、VSA−ECU31へと送られる。
Gセンサ153は、自車両に発生している前後G(前後加速度)及び横G(横加速度)をそれぞれ検出する機能を有する。Gセンサ153で検出された前後G及び横Gに係る情報は、VSA−ECU31へと送られる。
操舵角センサ155は、ステアリングの操舵量や操舵方向を検出する機能を有する。操舵角センサ155で検出されたステアリングの操舵角に係る情報は、VSA−ECU31へと送られる。
ブレーキ液圧センサPhは、ブレーキ液圧系統のうちVSA装置18内の制動液圧を検出する機能を有する。ブレーキ液圧センサPhで検出されたブレーキ液圧系統のうちVSA装置18内の液圧情報は、VSA−ECU31へと送られる。
一方、VSA−ECU31には、図3に示すように、出力系統として、前記第2の電動モータ82が接続されている。
VSA−ECU31は、ABS(Antilock Brake System)機能を備えている。ABS機能とは、VSA装置18の制動制御を通じて車輪17a〜17dのロックを回避する機能を意味する。
VSA−ECU31は、第2の情報取得部161、スリップ情報演算部163、第2の異常診断部164を有する第2の稼働状態取得部(本発明の“稼働状態取得部”に相当する。)165、及び、第2の制動制御部(本発明の“制御部”の一部に相当する。)167を有して構成されている。
第2の情報取得部161は、車輪速度センサ150a〜150dでそれぞれ検出される各車輪17a〜17d毎の回転速度(車輪速度)に係る情報、アクセルペダルセンサ151で検出されるアクセルペダルの加減速操作量に係る情報、ヨーレイトセンサ152で検出される車両に発生しているヨーレイトに係る情報、Gセンサ153で検出される車両に発生している前後G及び横Gに係る情報、操舵角センサ155で検出されるステアリング操舵角に係る情報、及び、ブレーキ液圧センサPhで検出されるVSA装置18における液圧系統の液圧情報をそれぞれ取得する機能を有する。
また、第2の情報取得部161は、ESB−ECU29からCAN通信媒体35を介して送られてくる、モータシリンダ装置16の異常診断結果に係る情報、車速センサ123による車速に係る情報、及び、助勢要求に係る情報をそれぞれ取得する機能を有する。
スリップ情報演算部163は、自車両の走行時に、第2の情報取得部161で取得した車速に係る情報及び各車輪17a〜17d毎の回転速度(車輪速度)に係る情報に基づいて、各車輪17a〜17d毎のスリップ率(スリップ情報)SRを演算により求める機能を有する。スリップ情報演算部163で求められた各車輪17a〜17d毎のスリップ率に係る情報は、第2の制動制御部167において、ABSの作動要否を判定する際などに適宜参照される。
第2の異常診断部164は、VSA装置18の異常診断を行う機能を有する。ここで、第2の異常診断部164が診断対象とするVSA装置18とは、VSA−ECU31、VSA−ECU31に接続される入力系センサ類及び出力系機器類、並びに、VSA−ECU31宛に送られてくる通信メッセージが流通するCAN通信媒体35を含む概念である。具体的には、例えば、第2の電動モータ82の回転異常によりVSA装置18が制動液圧増圧機能を発揮できない場合に、第2の異常診断部164は、VSA装置18が異常状態にある旨の診断を下す。
第2の稼働状態取得部165は、第2の情報取得部161で取得した情報、及び、第2の異常診断部164の診断結果に係る情報に基づいて、VSA装置18の稼働状態に係る情報を取得する機能を有する。
第2の制動制御部167は、基本的には、スリップ情報演算部163で求められる各車輪17a〜17d毎のスリップ率に係る情報などに基づいて、ABS機能の要否判定を行う。この判定の結果、ABS機能が必要である旨の判定が下された場合、第2の制動制御部167は、各車輪17a〜17dのスリップを抑制するように、VSA装置18による制動液圧調整機能の発揮により各車輪17a〜17d毎の制動制御を行うように動作する。
また、第2の制動制御部167は、モータシリンダ装置16が異常状態にある旨の異常状態情報を取得した際に、モータシリンダ装置16による制動液圧調整機能が失陥しているとみなして、VSA装置18による制動液圧調整機能の発揮により各車輪17a〜17d毎の制動制御を行うように動作する。
ただし、第2の制動制御部167は、液圧発生装置14で発生した液圧による摩擦制動トルク、及び、ESB−ECU29の目標制動トルク算出部76から送られてきた目標回生制動トルクの和が、ブレーキペダル12の制動操作量に基づく要求制動量に応じた目標制動トルク(運転者による制動操作に基づく目標制動トルク)に満たない場合に、第2の電動モータ82の作動に伴う液圧の増加によって摩擦制動トルクを増大させる制御を行うように動作する。
なお、第2の電動モータ82の作動によって摩擦制動トルクを増大させたのに、摩擦制動トルクが目標制動トルクに満たない場合に、不足分の制動力を回生制動トルクによって補ってもよい。
換言すれば、第2の制動制御部167は、液圧発生装置14で発生した液圧による摩擦制動トルク、及び、ESB−ECU29の目標制動トルク算出部76から送られてきた目標回生制動トルクの和が、運転者による制動操作に基づく目標制動トルクを充足する場合に、第2の電動モータ82の作動に伴う液圧の増加によって摩擦制動トルクを増大させる制御を禁止するように動作する。
〔PDU33の構成〕
PDU33は、図3に示すように、第3の情報取得部171、回生制動トルク上限値算出部173、及び、第3の制動制御部(本発明の“制御部”の一部に相当する。)175を有して構成されている。
第3の情報取得部171は、図3に示すように、アクセルペダルセンサ151で検出されるアクセルペダルの加減速操作量に係る情報を、VSA−ECU31及びCAN通信媒体35をそれぞれ介して取得する機能を有する。第3の情報取得部171で取得されるアクセルペダルの加減速操作量に係る情報は、第3の制動制御部175において、第3の電動モータ92の力行トルクを設定する際などに適宜参照される。
また、第3の情報取得部171は、図3に示すように、車速センサ123で検出される車速に係る情報を取得する機能を有する。第3の情報取得部171で取得される車速に係る情報は、回生制動トルク上限値算出部173において、車速に応じて第3の電動制動装置25で発生させるべき目標回生制動トルクの上限値を算出する際に適宜参照される。
さらに、第3の情報取得部171は、図3に示すように、目標回生制動トルクに係る情報を、ESB−ECU29及びCAN通信媒体35をそれぞれ介して取得する機能を有する。目標回生制動トルクに係る情報は、第3の制動制御部175において、目標回生制動トルクに追従するように、第3の電動モータ92の作動によって制動トルクを発生させる制御を行う際に適宜参照される。
回生制動トルク上限値算出部173は、第3の電動制動装置25で発生させるべき目標回生制動トルクの上限値を、車速センサ123で検出される車速に係る情報、及び、車速の変化に応じて発生可能な目標回生制動トルクの上限特性マップ(図7参照)を参照して算出する機能を有する。
第3の制動制御部175は、車速センサ123で検出される車速に係る情報、第3の情報取得部171で取得されるアクセルペダルの加減速操作量に係る情報、及び、レンジポジションに係る情報などに基づいて、予め定められる力行トルクマップを参照して、第3の電動モータ92の力行トルクを設定する機能を有する。
そして、第3の制動制御部175は、電気自動車Vの出力する制動トルクが、ESB−ECU29の目標制動トルク算出部76から送られてきた目標回生制動トルクに追従するように、第3の電動モータ92の作動によって制動トルクを発生させる制御を行うように動作する。
〔本発明の実施形態に係る車両用制動装置11の動作〕
次に、本発明の実施形態に係る車両用制動装置11の動作について、図4を参照して説明する。図4は、本発明の実施形態に係る車両用制動装置11が実行する制動制御処理の流れを表すフローチャート図である。
図4に示すステップS11において、第1の異常診断部73は、第1の電動制動装置21(例えば、第1の電動モータ72などの、第1の電動制動装置21の構成部材。以下、同じ。)が異常状態に陥っているか否かに係る異常診断を行う。ステップS11の診断の結果、第1の電動制動装置21が正常である旨の診断が下されると(ステップS11の“No”)、ESB−ECU29は、処理の流れを後記のステップS15へとジャンプさせる。
一方、ステップS11の異常診断の結果、第1の電動制動装置21が異常状態に陥っている旨の診断が下されると(ステップS11の“Yes”)、ESB−ECU29は、その診断結果を、CAN通信媒体35を介して、VSA−ECU31及びPDU33宛に送り、処理の流れを次のステップS12へと進ませる。
ステップS12において、ESB−ECU29は、前記診断結果に基づいて、第3の電動モータ92に係る回生制動制御と、モータシリンダ装置16に係る摩擦制動制御とを協調させた回生協調制動制御が不能か否かを判断する。ステップS12の判断の結果、前記回生協調制動制御が可能である旨の判断が下された場合(ステップS12の“No”)、ESB−ECU29は、その判断結果を、CAN通信媒体35を介して、VSA−ECU31及びPDU33宛に送ると共に、処理の流れをステップS15へとジャンプさせる。
一方、ステップS12の判断の結果、前記回生協調制動制御が不能である旨の判断が下された場合(ステップS12の“Yes”)、ESB−ECU29は、その判断結果を、CAN通信媒体35を介して、VSA−ECU31及びPDU33宛に送り、処理の流れを次のステップS13へと進ませる。
ステップS13において、ESB−ECU29は、ステップS11の診断結果に基づいて、目標回生制動トルクを算出可能か否かに係る判断を行う。具体的には、例えば、第1の電動モータ72が異常状態に陥った場合、第1〜第3遮断弁60a,60b,62のいずれかが異常状態に陥った場合、ブレーキ液圧センサPm,Pp,Phのいずれかが異常状態に陥った場合などに、ESB−ECU29は、目標回生制動トルクを算出不能である旨の判断を下す。
ステップS13の判断の結果、目標回生制動トルクを算出不能である旨の判断が下された場合(ステップS13の“No”)、ESB−ECU29は、その判断結果を、CAN通信媒体35を介して、VSA−ECU31及びPDU33宛に送り、一連の処理の流れを終了させる。
一方、ステップS13の判断の結果、目標回生制動トルクを算出可能である旨の判断が下された場合(ステップS13の“Yes”)、ESB−ECU29は、その判断結果を、CAN通信媒体35を介して、VSA−ECU31及びPDU33宛に送り、処理の流れを次のステップS14へと進ませる。
ステップS14において、VSA−ECU31の第2の異常診断部164は、助勢装置としての機能を有するVSA装置18が正常に稼働しているか否かを診断する。ステップS14の診断の結果、VSA装置18が正常に稼働していない旨の診断が下された場合(ステップS14の“No”)、VSA−ECU31は、その診断結果を、CAN通信媒体35を介して、ESB−ECU29及びPDU33宛に送り、処理の流れをステップS16へとジャンプさせる。
一方、ステップS14の診断の結果、VSA装置18が正常に稼働している旨の判断が下された場合(ステップS14の“Yes”)、VSA−ECU31は、その診断結果を、CAN通信媒体35を介して、ESB−ECU29及びPDU33宛に送り、処理の流れをステップS17へとジャンプさせる。
ステップS11の診断の結果、第1の電動制動装置21が正常である旨の診断が下される(ステップS11の“No”)か、又は、ステップS12の判断の結果、回生協調制動制御が可能である旨の判断が下された(ステップS12の“No”)場合、ステップS15において、ESB−ECU29の目標制動トルク算出部76は、回生協調制動制御に係る公知の手順に従い目標回生制動トルクを算出し、算出した目標回生制動トルクを、PDU33の第3の制動制御部175宛に送る。
また、前記のようにステップS14の診断の結果、VSA装置18が正常に稼働していない旨の診断が下された場合(ステップS14の“No”)、ステップS16において、ESB−ECU29の目標制動トルク算出部76は、助勢装置としてのVSA装置18が非稼働時の目標回生制動トルクを算出し、算出した目標回生制動トルクを、PDU33の第3の制動制御部175宛に送る。
そして、ステップS14の診断の結果、VSA装置18が正常に稼働している旨の診断が下された場合(ステップS14の“Yes”)、ステップS17において、ESB−ECU29の目標制動トルク算出部76は、助勢装置としてのVSA装置18が稼働時の目標回生制動トルクを算出し、算出した目標回生制動トルクを、PDU33の第3の制動制御部175宛に送る。
ステップS18において、PDU33の第3の制動制御部175は、電気自動車Vの出力する制動トルクが、ステップS15〜S17のうちいずれかで算出された目標回生制動トルクに追従するように、第3の電動モータ92の作動によって制動トルクを発生させる制御を行う。その後、PDU33は、一連の処理の流れを終了させる。
〔本発明の実施形態に係る車両用制動装置11の作用効果〕
次に、本発明の実施形態に係る車両用制動装置11の作用効果について、図5〜図7を参照して説明する。
第1の観点(請求項1に対応)に基づく車両用制動装置11では、目標制動トルク算出部76(目標回生制動トルク算出部)は、第1の異常診断部(異常診断部)73により第1の電動制動装置21が異常状態にある旨の診断が下された場合に、第2の稼働状態取得部(稼働状態取得部)165で取得した第2の電動制動装置23の稼働状態に係る情報に基づいて、第3の電動制動装置25で発生させるべき目標回生制動トルクを算出する。
具体的には、目標回生制動トルク算出部は、第2の電動制動装置(例えば、助勢装置として機能するVSA装置18)23が稼働していない場合に、助勢装置が非稼働時の目標回生制動トルクを算出する一方、第2の電動制動装置23が稼働している場合に、助勢装置が稼働時の目標回生制動トルクを算出する
また、制御部77,167,175は、異常診断部73により第1の電動制動装置21が異常状態にある旨の診断が下され、かつ、液圧発生装置14で発生した液圧による摩擦制動トルク、及び、目標回生制動トルク算出部は、で算出された目標回生制動トルクの和が、運転者による制動操作に基づく目標制動トルクに満たない場合に、第2の電動アクチュエータ82の作動に伴う液圧の増加によって摩擦制動トルクを増大させる制御を行う。
さらに、目標回生制動トルク算出部は、は、異常診断部73により第1の電動制動装置21が異常状態にある旨の診断が下され、かつ、第2の電動制動装置23が稼働状態にある際に、目標制動トルクから、液圧発生装置14で発生した液圧による摩擦制動トルク、及び、第2の電動制動装置23の稼働によって増大した摩擦制動トルクの和を差し引いた解に基づいて、目標回生制動トルクを算出する、構成を採用することとした。
これにより、第2の電動制動装置(助勢装置)23が稼働していない場合の電気自動車Vの出力する制動トルクとして、図5の実線で示す目標制動トルクを超えない範囲に収束する、図5の一点鎖線で示す特性の制動トルク(摩擦制動トルク+回生制動トルク)が与えられる。ちなみに、図5の点線で示す特性の制動トルクは、バイ・ワイヤ式の制動装置のバックアップとして位置付けられる、油圧式の制動装置が発揮する助勢なしの摩擦制動トルクである。この場合、図5の一点鎖線で示す特性の制動トルクと、図5の点線で示す特性の制動トルクとの差分が、第3の電動制動装置25で発生させられる回生制動トルクである。
また、第2の電動制動装置(助勢装置)23が稼働している場合の電気自動車Vの出力する制動トルクとして、図6の実線で示す目標制動トルクを超えない範囲に収束する、図6の一点鎖線で示す特性の制動トルク(摩擦制動トルク+回生制動トルク)が与えられる。ちなみに、図6の点線で示す特性の制動トルクは、バイ・ワイヤ式の制動装置のバックアップとして位置付けられる、油圧式の制動装置が発揮する摩擦制動トルクと、第2の電動制動装置(助勢装置)23の稼働により増大させられる摩擦制動トルクとの和である。この場合、図6の一点鎖線で示す特性の制動トルクと、図6の点線で示す特性の制動トルクとの差分が、第3の電動制動装置25で発生させられる回生制動トルクである。
第1の観点に基づく車両用制動装置11によれば、第1の電動制動装置21に係る摩擦制動制御機能が失陥した場合であっても、良好な制動フィーリングを与えると共に、回生による運動エネルギの回収効率向上に貢献することができる。
また、第1の電動制動装置21が異常状態に陥った場合の、運転者による制動操作に基づく目標制動トルクを充足するために適用される制動トルクの優先順位として、回生制動トルクが摩擦制動トルクに優先する旨を規定したため、回生による運動エネルギの回収効率向上に一層貢献することができる。
さらに、第1の電動制動装置21が異常状態に陥っており、かつ、第2の電動制動装置23が稼働状態にある際の、目標回生制動トルクの具体的な算出手順について規定したため、本発明の円滑かつ適確な実施に貢献することができる。
また、第2の観点(請求項2に対応)に基づく車両用制動装置11では、目標回生制動トルク算出部は、は、第3の電動制動装置25で発生させるべき目標回生制動トルクを、車速に応じて変化する、発生可能な回生制動トルクの上限値に係る情報(図7参照)を参照して算出する、構成を採用することとした。
図7に示す上限特性のうち、車速が0〜60km/hに属する低速領域では、ほぼ一定となる特性の制動トルクが対応付けられる。前記の低速領域では、発生可能な回生制動トルクの大きさに特別な考慮をしなくとも、回生制動トルクの付与が、電気自動車Vの挙動を乱す要因となるおそれはないからである。
これに対し、図7に示す上限特性のうち、車速が60km/hを超える高速領域では、車速の増加に伴って漸減する特性の制動トルクが対応付けられる。前記の高速領域では、発生可能な回生制動トルクの大きさについて、ほぼ一定となる特性を採用すると、回生制動トルクの付与が、電気自動車Vの挙動(乗り心地)を乱す要因となるおそれがあるからである。
第2の観点に基づく車両用制動装置11によれば、目標回生制動トルクを、車速に応じて変化する発生可能な回生制動トルクに係る上限値を参照して算出するため、回生制動トルクの付与時において、電気自動車(車両)Vの挙動が不安定になる事態を未然に回避する効果を期待することができる。
〔その他の実施形態〕
以上説明した複数の実施形態は、本発明の具現化の例を示したものである。したがって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
例えば、本発明に係る実施形態において、ESB−ECU29、VSA−ECU31、及び、VSA−ECU31の各間を、CAN通信媒体35を介して相互に情報交換可能に接続する例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。ESB−ECU29、VSA−ECU31、及び、VSA−ECU31が有する各種の機能部を、ひとつのECUに集約する構成を採用してもよい。この場合において、例えば、情報取得部、異常診断部、稼働状態取得部、制動制御部を含む各種の機能部は、それぞれの機能を集約するように構成すればよい。
また、本発明に係る実施形態において、動力源として第3の電動モータ92を搭載した電気自動車Vに対して、本発明の実施形態に係る車両用制動装置11を適用する例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。動力源として第3の電動モータ92及びレシプロエンジンを搭載したハイブリッド車両に対して、本発明を適用してもよい。
また、本発明に係る実施形態において、VSA装置18として、第2の電動モータ82の作動に伴うポンプ135の駆動によって摩擦制動に係る液圧を増加させる態様を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。アキュームレータやモータとギヤを用いて摩擦制動に係る液圧を増加させる態様のVSA装置18を採用してもよい。
11 車両用制動装置
14 液圧発生装置
21 第1の電動制動装置
23 第2の電動制動装置
25 第3の電動制動装置
72 第1の電動モータ(第1の電動アクチュエータ)
73 第1の異常診断部(異常診断部)
76 目標制動トルク算出部(目標回生制動トルク算出部)
77 第1の制動制御部(制御部)
82 第2の電動モータ(第2の電動アクチュエータ)
92 第3の電動モータ(第3の電動アクチュエータ)
165 第2の稼働状態取得部(稼働状態取得部)
167 第2の制動制御部(制御部)
175 第3の制動制御部(制御部)

Claims (2)

  1. 運転者による制動操作に応じた液圧を発生させる液圧発生装置と、
    少なくとも運転者による制動操作に応じた電気信号に基づく第1の電動アクチュエータの作動に伴う液圧によって摩擦制動トルクを発生させる第1の電動制動装置と、
    少なくとも車両の挙動に応じた電気信号に基づく第2の電動アクチュエータの作動に伴う液圧の増加によって摩擦制動トルクを増大させる第2の電動制動装置と、
    運転者による減速操作に応じた電気信号に基づく第3の電動アクチュエータの作動によって回生制動トルクを発生させる第3の電動制動装置と、
    前記第1の電動制動装置の異常診断を行う異常診断部と、
    前記第2の電動制動装置の稼働状態に係る情報を取得する稼働状態取得部と、
    前記異常診断部により前記第1の電動制動装置が異常状態にある旨の診断が下された場合に、前記稼働状態取得部で取得した前記第2の電動制動装置の稼働状態に係る情報に基づいて、前記第3の電動制動装置で発生させるべき目標回生制動トルクを算出する目標回生制動トルク算出部と、
    前記異常診断部により前記第1の電動制動装置が異常状態にある旨の診断が下された場合に、前記目標回生制動トルク算出部で算出された前記目標回生制動トルクを、前記第3の電動アクチュエータの作動によって発生させる制御を行う制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記異常診断部により前記第1の電動制動装置が異常状態にある旨の診断が下され、かつ、前記液圧発生装置で発生した前記液圧による摩擦制動トルク、及び、前記目標回生制動トルク算出部で算出された前記目標回生制動トルクの和が、運転者による制動操作に基づく目標制動トルクに満たない場合に、前記第2の電動アクチュエータの作動に伴う液圧の増加によって摩擦制動トルクを増大させる制御を行い、
    前記目標回生制動トルク算出部は、前記異常診断部により前記第1の電動制動装置が異常状態にある旨の診断が下され、かつ、前記第2の電動制動装置が稼働状態にある際に、前記目標制動トルクから、前記液圧発生装置で発生した前記液圧による摩擦制動トルク、及び、前記第2の電動制動装置の稼働によって増大した前記摩擦制動トルクの和を差し引いた解に基づいて、前記目標回生制動トルクを算出する、
    ことを特徴とする車両用制動装置。
  2. 請求項1に記載の車両用制動装置であって、
    前記目標回生制動トルク算出部は、前記目標回生制動トルクを、車速に応じて変化する、発生可能な回生制動トルクの上限値に係る情報を参照して算出する、
    ことを特徴とする車両用制動装置。
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